説明

負荷制御装置

【課題】 温度が上昇しても負荷駆動素子の発熱増大を抑制し、装置の小型化を可能とする。
【解決手段】 開示される負荷制御装置では、三角波生成回路1は、定電圧Vcに接続された、トランジスタQ2〜Q4からなるカレントミラー回路(定電流源)、トランジスタQ5〜Q7からなるカレントミラー回路(定電流源)及び抵抗R2により得られる定電流に基づいて、コンパレータCP1がコンデンサC1の電圧VC1と基準電圧Vt1とを比較することにより、コンデンサC1の充放電を切り換えて三角波信号を生成している。この負荷制御装置では、カレントミラー回路(定電流源)を構成するトランジスタQ2に対して、温度の上昇に伴ってその特性が変化するダイオードD1を付加している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のランプ等の負荷を制御する負荷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の負荷制御装置には、三角波生成手段と、設定電圧生成手段と、比較手段と、駆動制御手段とを備えたものがある。固定入力に対応した一定レベルであって、負荷の駆動を命令する駆動命令信号が供給された場合、三角波生成手段は、三角波を生成する。設定電圧生成手段は、三角波の最大電圧と最小電圧との間に設定された第2設定電圧を保持して生成する。比較手段は、三角波と第2設定電圧とを比較する。これにより、駆動制御手段は、比較手段の比較結果に基づいて、一定の周波数及びデューティでレベルが変化する駆動制御信号を生成する。
【0003】
一方、固定入力に対応した一定レベルであって、負荷の駆動の停止を命令する駆動命令信号が供給された場合、三角波生成手段は、三角波を生成する。設定電圧生成手段は、第2設定電圧より低い第3設定電圧を保持して生成する。比較手段は、三角波と第3設定電圧とを比較する。これにより、駆動制御手段は、比較手段の比較結果に基づいて、一定の周波数及びデューティでレベルが変化する駆動制御信号を生成する。
【0004】
また、パルス入力に対応した所定の周波数及びデューティでレベルが変化する駆動命令信号が供給された場合、三角波生成手段は、第2設定電圧と第3設定電圧との間に設定された第1設定電圧を生成する。設定電圧生成手段は、駆動命令信号の周波数及びデューティに対応して第2設定電圧と第3設定電圧とを切り換えて生成する。比較手段は、第1設定電圧と第2設定電圧又は第3設定電圧とを比較する。これにより、駆動制御手段は、駆動命令信号と同じ周波数及びデューティでレベルが変化する駆動制御信号を生成する(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−148294号公報(請求項1,[0019]〜[0053]、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の負荷制御装置では、温度が変動した場合でも、駆動制御手段は、一定の周波数及びデューティでレベルが変化する駆動制御信号を生成して出力する。しかし、負荷駆動素子であるパワーMOSFETのオン抵抗は温度にほぼ比例するので、温度の上昇により発熱が増大する。そのため、想定される最大動作温度で発熱が許容されるように放熱設計を行う必要がある。その結果、装置が大型化してしまうという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような課題を解決することができる負荷制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明に係る負荷制御装置は、定電流源から供給される定電流に基づいてコンデンサに充放電することにより三角波信号を生成し、前記三角波信号に基づいて負荷を制御する負荷制御装置に係り、前記定電流源に温度の上昇に伴ってその特性が変化する温度補償素子を付加したことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の発明に係る負荷制御装置は、定電流源から供給される定電流に基づいてコンデンサに充放電することにより三角波信号を生成する三角波生成回路と、前記三角波信号に基づいてパルス幅変調波信号を生成するパルス幅変調波生成回路と、前記パルス幅変調波信号に基づいて負荷に負荷電流を供給する負荷駆動素子とを備え、前記定電流源に温度の上昇に伴ってその特性が変化する温度補償素子を付加したことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の負荷制御装置に係り、前記温度補償素子は、温度の上昇に伴って逆方向リーク電流が増加する特性を有するダイオードであることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、請求項1又は2に記載の負荷制御装置に係り、前記温度補償素子は、温度の上昇に伴って抵抗値が低下する特性を有するサーミスタであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、常温時には通常通り動作するとともに、温度が動作限界に近づいた時にはパルス幅変調波信号の周波数が補正されて発熱が減少するようになる。このため、従来のように、想定される最大動作温度で発熱が許容されるように放熱設計を行う必要がない。その結果、放熱手段が簡略化されて負荷制御装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る負荷制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態1の負荷制御装置は、三角波生成回路1と、パルス幅変調波(PWM:Pulse Width Modulation)生成回路2と、オアゲート3と、駆動回路4と、負荷駆動素子5とから概略構成されている。三角波生成回路1は、外付けされる周波数設定用のコンデンサC1の充放電を切り換えることにより所定周波数及び所定形状の三角波信号を生成する。
【0013】
PWM生成回路2は、三角波生成回路1から供給される三角波信号に基づいて、PWM信号(”H”レベル又は”L”レベル)を生成する。オアゲート3は、外部から供給される制御信号(”H”レベル又は”L”レベル)と、PWM生成回路2から供給されるPWM信号(”H”レベル又は”L”レベル)との論理和をとった論理値(”H”レベル又は”L”レベル)を駆動回路4に供給する。駆動回路4は、オアゲート3から供給される論理値を増幅するとともに、反転して駆動電圧を負荷駆動素子5に印加する。負荷駆動素子5は、駆動回路4から駆動電圧が印加されることにより、負荷6に負荷電流を供給する。
【0014】
図2は、図1に示す負荷制御装置のブロック図を具体的に実現した回路図である。図2において、1点鎖線で囲まれた部分が負荷制御装置を構成している。また、負荷制御装置のうち、トランジスタQ1〜Q10、抵抗R1〜R12、コンパレータCP1、CP2、オアゲート3、駆動回路4及び定電圧電源21は、ICにより構成されている。即ち、コンデンサC1及び、負荷駆動素子5であるNチャンネル型のMOSFET22は、上記ICの外付け部品である。
【0015】
この例の負荷制御装置は、負荷駆動素子5であるNチャンネル型のMOSFET22を負荷6であるランプ11の下流側に設けた装置(ロー・サイド・スイッチング装置)である。また、この例の負荷制御装置は、例えば、自動車に搭載されるものであり、図1に示す負荷6として、図2では、例えば、ヘッドランプに利用されるランプ11を示している。ランプ11は、負荷制御装置の電源端子Tbと出力端子Toとの間に接続されている。図2では、電源として、自動車に搭載されたバッテリ12が用いられており、バッテリ電圧Vbatが負荷制御装置の電源端子Tbと接地端子Tgとの間に接続されている。
【0016】
さらに、図2では、自動車に搭載された車載電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)13から出力される制御信号(”H”レベル又は”L”レベル)(固定入力)が負荷制御装置に供給される。ECUは、自動車のエンジンの燃料噴射量や点火時期等を決定してエンジンを制御したり、オートマチック・トランスミッションやトラクションコントロールなどを制御するものである。
【0017】
図2において、PNP型のトランジスタQ1〜Q4、PNP型のトランジスタQ5〜Q10、抵抗R1〜R9、コンパレータCP1及びコンデンサC1は、図1に示す三角波生成回路1を構成している。トランジスタQ2〜Q4は、カレントミラー回路(定電流源)を構成している。トランジスタQ2〜Q4のエミッタ面積は、いずれも等しい。従って、トランジスタQ2〜Q4のそれぞれのコレクタに流れるコレクタ電流I2〜I4は、いずれも等しい。即ち、式(1)を満足している。
【0018】
I2=I3=I4 ・・・(1)
ここで、抵抗R2に流れる電流I0は、定電圧Vc、トランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧VBE2及び抵抗R2を用いて、式(2)で表される。
I0=(Vc−VBE2)/R2 ・・・(2)
【0019】
また、トランジスタQ1は、増幅用である。ダイオードD1は、PN接合を有し、温度の上昇に伴って逆方向リーク電流が増加する特性を有している。抵抗R1に流れる電流I1は、電流I0の一部をトランジスタQ2からバイパスする電流である。従って、ダイオードD1の逆方向リーク電流をIrd1、トランジスタQ1の直流電流増幅率をhfeq1とすると、トランジスタQ1が飽和していない状態では、電流I1は、式(3)で表される。
I1=Ird1×hfeq1 ・・・(3)
【0020】
上記した式(2)及び式(3)より、電流I2は、式(4)で表される。
I2=I0−I1={(Vc−VBE2)/R2}−Ird1×hfeq1 ・・・(4)
上記コレクタ電流I2〜I4は、コンデンサC1を充放電するための基準となる定電流である。また、上記コレクタ電流I4は、コンデンサC1に電荷を充電するための電流となる。
【0021】
トランジスタQ5〜Q7は、カレントミラー回路(定電流源)を構成している。抵抗R3は、トランジスタQ5のベース電流を補償するために設けられている。トランジスタQ5のエミッタ面積と、トランジスタQ6及びQ7の合計されたエミッタ面積との比が1:2である。また、トランジスタQ5のコレクタに流れるコレクタ電流は、トランジスタQ3のコレクタ電流I3に等しい。さらに、式(1)より、トランジスタQ3のコレクタ電流I3は、トランジスタQ2のコレクタ電流I2に等しい。
【0022】
従って、トランジスタQ6のコレクタに流れるコレクタ電流I6は、トランジスタQ2〜Q4のそれぞれのコレクタ電流I2〜I4の2倍である。即ち、式(5)を満足する。
I6=2×I2=2×I3=2×I4 ・・・(5)
上記コレクタ電流I6は、コンデンサC1に蓄積された電荷を放電するための電流となる。
【0023】
トランジスタQ8は、オンすることにより、コレクタ電流I6の供給を停止させるために設けられている。トランジスタQ8及び抵抗R4〜R6は、上記三角波信号を生成するための基準電圧Vt1を生成する。抵抗R7は、トランジスタQ9のベースとコンパレータCP1の出力端との間に接続されたベース抵抗である。
【0024】
トランジスタQ10、抵抗R8及びR9は、コンパレータCP1の出力信号によりトランジスタQ8をオン・オフするための回路である。三角波生成回路1は、定電圧Vcに接続された、トランジスタQ2〜Q4からなるカレントミラー回路(定電流源)、トランジスタQ5〜Q7からなるカレントミラー回路(定電流源)及び抵抗R2により得られる定電流に基づいて、コンパレータCP1がコンデンサC1の電圧VC1と基準電圧Vt1とを比較することにより、コンデンサC1の充放電を切り換えて三角波信号を生成する。
【0025】
コンパレータCP2、抵抗R10及びR11は、図1に示すPWM生成回路2を構成している。抵抗R10及びR11は、上記PWM信号を生成するための基準電圧Vkを生成する。基準電圧Vkは、式(6)で表される。
Vk=Vc×R11/(R10+R11) ・・・(6)
PWM生成回路2は、コンパレータCP2が三角波生成回路1から供給される三角波信号と、基準電圧Vkとを比較することにより、PWM信号を生成する。
【0026】
抵抗R12は、電源Vcと入力端子Tiとの間に介挿され、ECU13から供給された制御信号の電位を安定に保持するプルアップ抵抗としての機能を有している。定電圧電源21は、バッテリ12から供給されたバッテリ電圧Vbatから定電圧Vcを生成して負荷制御装置の各部に供給する。MOSFET22は、ゲートが駆動回路4の出力端子に接続され、ドレインが負荷制御装置の出力端子Toに接続され、ソースが接地されている。
【0027】
次に、上記構成の負荷制御装置の動作について、図3に示すタイミングチャートを参照して説明する。まず、図3(d)に示すように、ECU13から供給される制御信号が”H”レベルの場合には、オアゲート3の出力信号は、常に”H”レベルである。従って、駆動回路4は、オアゲート3から供給される”H”レベルの論理値を増幅するとともに、反転して”L”レベルの駆動電圧をMOSFET22に印加する。駆動回路4から”L”レベルの駆動電圧が印加されている間は、MOSFET22は、ゲート電圧が”L”レベルであるので、オフしている。この場合、MOSFET22のソース電圧は、ほぼバッテリ電圧Vbatに等しいので、図3(e)に示すように、負荷6、今の場合、ランプ11に負荷電流が流れない。
【0028】
一方、図3(d)に示すように、ECU13から供給される制御信号が”L”レベルの場合には、PWM生成回路2を構成するコンパレータCP2の出力信号がそのままオアゲート3の出力信号となる。
ある時刻に、コンデンサC1の電圧VC1が基準電圧Vt1より低い場合には、コンパレータCP1の出力信号は”L”レベルとなり、トランジスタQ9及びQ10はいずれもオフする。トランジスタQ9がオフした状態では、基準電圧Vt1は、図3(a)に示すように、三角波信号の上限電圧Vbとなる。上限電圧Vbは、式(7)で表される。
Vb=Vc×R5/(R4+R5) ・・・(7)
【0029】
一方、トランジスタQ10がオフすると、抵抗R9からトランジスタQ8のベースに電流が流れ込むので、トランジスタQ8がオンする。トランジスタQ8がオンすると、コレクタ電流I6の供給が停止される。その結果、コレクタ電流I4が流れることにより、コンデンサC1に電荷が充電され、コンデンサC1の端子間電圧は大きくなっていく。従って、コンデンサC1の電圧VC1は、上昇していく。
【0030】
コンデンサC1の電圧VC1が上限電圧Vbをわずかでも超えると、コンパレータCP1の出力信号は”H”レベルとなり、トランジスタQ9及びQ10はいずれもオンする。トランジスタQ9がオンした状態では、基準電圧Vt1は、トランジスタQ9の飽和電圧を無視すると、抵抗R5及びR6の合成抵抗値と抵抗R4の抵抗値との抵抗分割となり、図3(a)に示すように、三角波信号の下限電圧Vaとなる。下限電圧Vaは式(8)で表される。
Va=Vc×(R5×R6)/(R4×R5+R4×R6+R5×R6) ・・・(8)
【0031】
一方、トランジスタQ10がオンすると、抵抗R9からトランジスタQ8のベースに電流が流れなくなるので、トランジスタQ8がオフする。トランジスタQ8がオフすると、コレクタ電流I6の供給が開始される。上記したように、コレクタ電流I6は、コレクタ電流I4の2倍であるので、コレクタ電流I6からコレクタ電流I4を差し引きした電流値でコンデンサC1に蓄積された電荷が放電される。コンデンサC1に蓄積された電荷が放電されると、コンデンサC1の端子間電圧が小さくなっていく。従って、コンデンサC1の電圧VC1は、下降していく。コンデンサC1の電圧VC1が下限電圧Vaをわずかでも下回ると、コンパレータCP1の出力信号は、”L”レベルに反転する。以上説明した動作が繰り返されることにより、図3(b)に示す三角波信号が生成される。
【0032】
三角波生成回路1から供給される三角波信号、即ち、コンデンサC1の電圧VC1が基準電圧Vkを上回ると、PWM生成回路2を構成するコンパレータCP2の出力信号は”L”レベルとなる。一方、コンデンサC1の電圧VC1が基準電圧Vkを下回ると、コンパレータCP2の出力信号は”H”レベルとなる。以上説明した動作が繰り返されることにより、図3(c)に示すPWM信号が生成される。
【0033】
コンパレータCP2の出力信号、即ち、PWM信号は、オアゲート3を経て駆動回路4に供給される。駆動回路4は、オアゲート3から供給されるPWM信号の論理値を増幅するとともに、反転して駆動電圧をMOSFET22に印加する。駆動回路4からの駆動電圧が”H”レベルの場合には、MOSFET22は、ゲート電圧が”H”レベルであるので、オンする。これにより、MOSFET22のソース電圧は、ほぼ接地電圧に等しいので、図3(e)に示すように、負荷6、今の場合、ランプ11に負荷電流が流れる。
【0034】
一方、駆動回路4からの駆動電圧が”L”レベルの場合には、MOSFET22は、オフする。これにより、MOSFET22のソース電圧は、ほぼバッテリ電圧Vbatに等しくなるまで上昇するので、図3(e)に示すように、負荷6、今の場合、ランプ11に負荷電流が流れなくなる。
以上説明した動作が繰り返されることにより、ランプ11は、供給された駆動電圧に基づいて点滅点灯するように駆動される。
【0035】
次に、三角波信号の周期Tについて説明する。まず、トランジスタQ1が飽和していない状態では、電流I1は、上記した式(3)で表される。従って、三角波信号の周期Tは、式(9)で表される。
T=2×(Vb−Va)×C1/I2
=[2×Vc×{(R5/(R4+R5)−(R5×R6)/(R4×R5+R4×R6+R5×R6)}×C1]/[{(Vc−VBE2)/R1}−Ird1×hfeq1] ・・・(9)
【0036】
ここで、トランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧VBE2は、例えば、2mV/℃程度の温度特性であるので、ほぼ一定と見なすことができる。そのため、三角波信号の周期Tは、ダイオードD1のリーク電流Ird1とトランジスタQ1の直流電流増幅率hfeq1の影響を受ける。ダイオードD1の逆方向リーク電流Ird1もトランジスタQ1の直流電流増幅率hfeq1も温度の上昇に伴って増加する特性を有している。従って、温度が上昇すると、三角波信号の周期Tは、式(9)より、長くなる。言い換えれば、三角波信号の周波数は、低くなる。
【0037】
一方、電流I1が増加してトランジスタQ1が飽和すると、飽和電圧がほぼ0Vとなるので、電流I1は、式(10)で表される。
I1=VBE2/R1 ・・・(10)
そのため、ダイオードD1の逆方向リーク電流Ird1が大きくなってトランジスタQ1が飽和した場合には、電流I1は、上記式(3)に換えて、上記式(10)を適用する必要がある。これにより、三角波信号の周期Tは、式(11)で表されるように一定となる。このため、異常にダイオードD1の逆方向リーク電流Ird1が増加したようなときでも、三角波信号の周期Tが必要以上に長くなってしまうことはない。
【0038】
T=2×(Vb−Va)×C1/I2
=[2×Vc×{(R5/(R4+R5)−(R5×R6)/(R4×R5+R4×R6+R5×R6)}×C1]/[{(Vc−VBE2)/R1}−VBE2/R1] ・・・(11)
【0039】
図4は、ある定格のランプを上記構成を有する負荷制御装置により実際に駆動した場合と、従来例により実際に駆動した場合とで比較した結果の一例を示している。この比較実験では、温度が25℃の時にPWM信号の周波数が実施の形態1の場合も従来例も100Hzとなるように設定している。また、PWM信号のデューティ比を50%とし、負荷駆動素子5であるMOSFETの25℃におけるオン抵抗を30mΩ、上記MOSFETのオン抵抗温度係数を0.8%/℃としている。
【0040】
また、図4において、スイッチング発熱とは、MOSFETのターンオンの時及びターンオフの時にそれぞれ発生する発熱の合計をいう。また、オン発熱とは、MOSFETがターンオン期間を過ぎてオン状態となり、ターンオフ期間に移行するまでの期間における発熱をいう。トータル発熱とは、スイッチング発熱及びオン発熱の合計であり、実際のMOSFETの発熟である。図4からは、従来例では、温度の上昇に伴ってトータル発熱が増大しているが、本実施の形態1では、動作限界温度の125℃においてかえってトータル発熱が減少していることが分かる。
【0041】
このように、本発明の実施の形態1によれば、カレントミラー回路(定電流源)を構成するトランジスタQ2に対して、温度の上昇に伴って逆方向リーク電流が増加する特性を有しているダイオードD1、固定抵抗R1及び増幅用のトランジスタQ1を付加している。従って、常温時には通常通り動作するとともに、温度が75℃を超えて動作限界に近づいた時にはPWM信号の周波数が補正されて発熱が減少するようになる。このため、従来のように、想定される最大動作温度で発熱が許容されるように放熱設計を行う必要がない。その結果、放熱手段が簡略化されて負荷制御装置の小型化を図ることができる。
【0042】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、PN接合を有するダイオードD1を用いる例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、ダイオードD1に換えて、ショットキー・バリア・ダイオードを用いても良い。このショットキー・バリア・ダイオードの温度の上昇に伴って流れる高温リーク電流が十分大きい場合には、図5に示すように、PNP型のトランジスタQ1を省略することができる。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態2に係る負荷制御装置の構成を示す回路図である。図5において、図2の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図5に示す負荷制御装置が図2に示す負荷制御装置と異なる点は、PN接合を有するダイオードD1に換えて、ショットキー・バリア・ダイオードD2が新たに設けられている点と、PNP型のトランジスタQ1が取り除かれている点とである。なお、この例における負荷制御装置の動作については、上述した実施の形態1の場合と略同様であるので、その説明を省略する。
【0044】
このように、本発明の実施の形態2によれば、カレントミラー回路(定電流源)を構成するトランジスタQ2に対して、温度の上昇に伴って高温リーク電流が十分大きく増加する特性を有しているショットキー・バリア・ダイオードD2及び固定抵抗R1を付加している。従って、上述した実施の形態1と略同様の効果が得られる。
【0045】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3に係る負荷制御装置の構成を示す回路図である。図6において、図2の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図6に示す負荷制御装置が図2に示す負荷制御装置と異なる点は、PNP型のトランジスタQ1に換えて、サーミスタTH1が新たに設けられている点と、ダイオードD1が取り除かれている点とである。
【0046】
サーミスタTH1は、温度の上昇に伴って抵抗値が低下する特性を有している。サーミスタTH1は、NTC(negative temperature coefficient) サーミスタと呼ばれ、温度と抵抗値の変化が比例的である。サーミスタTH1は、例えば、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等の酸化物を混合して焼結するなどして作製されている。
【0047】
図6において、サーミスタTH1、トランジスタQ2〜Q10、抵抗R1〜R9、コンパレータCP1及びコンデンサC1は、図1に示す三角波生成回路1を構成している。トランジスタQ2〜Q4は、カレントミラー回路(定電流源)を構成している。トランジスタQ2〜Q4のエミッタ面積は、いずれも等しい。従って、トランジスタQ2〜Q4のそれぞれのコレクタに流れるコレクタ電流I2〜I4は、いずれも等しい。即ち、式(1)を満足している。
【0048】
I2=I3=I4 ・・・(1)
ここで、抵抗R2に流れる電流I0は、定電圧Vc、トランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧VBE2及び抵抗R2を用いて、式(2)で表される。
I0=(Vc−VBE2)/R2 ・・・(2)
【0049】
抵抗R1に流れる電流I1は、電流I0の一部をトランジスタQ2からバイパスする電流である。従って、サーミスタTH1の抵抗値をRth1とすると、電流I1は、式(12)で表される。
I1=VBE2/(Rth1+R1) ・・・(12)
【0050】
上記した式(2)及び式(12)より、電流I2は、式(13)で表される。
I2=I0−I1={(Vc−VBE2)/R2}−{VBE2/(Rth1+R1)} ・・・(13)
上記コレクタ電流I2〜I4は、コンデンサC1を充放電するための基準となる定電流である。また、上記コレクタ電流I4は、コンデンサC1に電荷を充電するための電流となる。
【0051】
なお、本実施の形態3における負荷制御装置のトランジスタQ5以降の構成は、上述した実施の形態1に係る負荷制御装置の対応する部分の構成(図2参照)と同様であるので、その説明を省略する。また、上記構成の負荷制御装置の動作についても、上述した実施の形態1において、図3に示すタイミングチャートを参照して説明した負荷制御装置の動作と略同様である。
【0052】
ただし、三角波生成回路1が生成する三角波信号の周期Tは、式(14)で表される。
T=2×(Vb−Va)×C1/I2
=[2×Vc×{(R5/(R4+R5)−(R5×R6)/(R4×R5+R4×R6+R5×R6)}×C1]/[{(Vc−VBE2)/R1}−VBE2/(Rth1+R1)] ・・・(14)
【0053】
ここで、トランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧VBE2は、例えば、2mV/℃程度の温度特性であるので、ほぼ一定と見なすことができる。そのため、三角波信号の周期Tは、サーミスタTH1の抵抗値Rth1のみの影響を受ける。サーミスタTH1は、温度の上昇に伴って抵抗値が低下する特性を有している。従って、温度が上昇すると、三角波信号の周期Tは、式(14)より、長くなる。言い換えれば、三角波信号の周波数は、低くなる。
【0054】
図7は、ある定格のランプを上記構成を有する負荷制御装置により実際に駆動した場合と、従来例により実際に駆動した場合とで比較した結果の一例を示している。この比較実験では、サーミスタTH1には、温度が25℃の時の抵抗値Rth1が100kΩであり、B定数が4500であるNTC サーミスタを用いている。なお、それ以外の条件及び図7に示す言葉の意味については、上述した実施の形態1において、図4を参照して説明したものと同様である。図7からは、従来例では、温度の上昇に伴ってトータル発熱が増大しているが、本実施の形態3では、温度が上昇してもトータル発熱増大が抑制されていることが分かる。
【0055】
このように、本発明の実施の形態3によれば、カレントミラー回路(定電流源)を構成するトランジスタQ2に対して、温度の上昇に伴って抵抗値が低下する特性を有しているサーミスタTH1及び固定抵抗R1を付加している。従って、上述した実施の形態1と略同様の効果が得られる。
【0056】
実施の形態4.
上述した各実施の形態では、コンパレータCP2がヒステリシスを有していない例を示したが、これに限定されず、コンパレータCP2がヒステリシスを有していても良い。図8は、コンパレータCP2にヒステリシス回路31を付加した場合のコンパレータCP2及びその周辺回路の構成の一例を示す回路図である。
【0057】
ヒステリシス回路31は、インバータINVと、PNP型のトランジスタQ21と、抵抗R21及びR22とから構成されている。インバータINVは、コンパレータCP2の出力信号、即ち、PWM信号を反転する。抵抗R22は、トランジスタQ21のベースとインバータINVの出力端との間に接続されたベース抵抗である。PNP型のトランジスタQ21は、抵抗R22を介して供給されるインバータINVの”H”レベルの出力信号によりオンすることにより、基準電圧Vkを変更する。なお、負荷制御装置の構成のうち、上記コンパレータCP2及びその周辺回路以外の部分の構成については、上述した実施の形態1では図2の構成を、上述した実施の形態2では図5の構成を、上述した実施の形態3では図6の構成を、それぞれそのまま適用することができる。
【0058】
次に、上記構成の負荷制御装置のうち、コンパレータCP2及びその周辺回路の動作について、図9に示すタイミングチャートを参照して説明する。
ある時刻に、三角波生成回路1から供給される三角波信号が基準電圧Vkより高い場合には、PWM生成回路2を構成するコンパレータCP2の出力信号は”L”レベルとなる。これにより、インバータINVの出力信号は”H”レベルとなり、トランジスタQ21はオンする。
【0059】
トランジスタQ21がオンした状態では、基準電圧Vkは、トランジスタQ21の飽和電圧を無視すると、抵抗R11及びR21の合成抵抗値と抵抗R10の抵抗値との抵抗分割となり、図9(b)に示すように、第2基準電圧Vk2となる。第2基準電圧Vk2は式(15)で表される。
Vk2=Vc×{(R11×R21)/(R11+R21)}/{R10+(R11×R21)/(R11+R21)} ・・・(15)
【0060】
次に、上記三角波信号が第2基準電圧Vk2を下回ると、コンパレータCP2の出力信号は”H”レベルとなる。これにより、インバータINVの出力信号は”L”レベルとなり、トランジスタQ21はオフする。トランジスタQ21がオフした状態では、基準電圧Vkは、図9(b)に示すように、上記した式(6)で表される値に変化する。即ち、コンパレータCP2がヒステリシスを有している。以上説明した動作が繰り返されることにより、図9(c)に示すように、上述した各実施の形態と比較して、幅が広いPWM信号が生成される。このように、本発明の実施の形態4によれば、コンパレータCP2がヒステリシスを有しているので、上述した各実施の形態と比較して、ノイズに対する耐性を高めることができる。
【0061】
実施の形態5.
上述した各実施の形態では、本発明を負荷駆動素子5であるNチャンネル型のMOSFET22を負荷6であるランプ11の下流側に設けた装置(ロー・サイド・スイッチング装置)に適用する例を示したが、これに限定されない。例えば、本発明は、負荷駆動素子5であるNチャンネル型のMOSFET22を負荷6であるランプ11の上流側に設けた装置(ハイ・サイド・スイッチング装置)に適用しても良い。この場合、負荷駆動素子5として、Nチャンネル型のMOSFET22に換えて、Pチャネル型のMOSFETを用いても良い。
【0062】
実施の形態6.
上述した各実施の形態では、負荷駆動素子5としてNチャンネル型のMOSFET22又はPチャネル型のMOSFETを用いる例を示したが、これに限定されない。負荷駆動素子5としては、例えば、バイポーラトランジスタ、サイリスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、SIT(Static Induction Transistor)等のどのようなスイッチング素子を用いても良い。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、上述の各実施の形態では、定電圧電源21を設ける例を示したが、これに限定されず、定電圧源21を設けなくても良い。この場合、実施の形態1では、トランジスタQ1〜Q4の各エミッタ、抵抗R4、R9、R10、R12の各一端は、直接電源端子Tbに接続される。また、実施の形態2では、トランジスタQ2〜Q4の各エミッタ、ショットキー・バリア・ダイオードD2のカソード、抵抗R4、R9、R10、R12の各一端は、直接電源端子Tbに接続される。さらに、実施の形態3では、トランジスタQ2〜Q4の各エミッタ、サーミスタTH1、抵抗R4、R9、R10、R12の各一端は、直接電源端子Tbに接続される。なお、実施の形態3では、サーミスタTH1と抵抗R1の接続位置を交換しても良い。
【0064】
また、上述した各実施の形態では、本発明に係る負荷制御装置を車両に搭載し、負荷6がヘッドランプに利用されるランプ11である例を示したが、これに限定されない。本発明は、例えば、生成したPWM信号に基づいて負荷を制御する装置一般に適用することができる。
また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態1に係る負荷制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す負荷制御装置の構成を具体的に実現した回路図である。
【図3】図1に示す負荷制御装置の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】ある定格のランプを実施の形態1に係る負荷制御装置により実際に駆動した場合と、従来例により実際に駆動した場合とで比較した結果の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る負荷制御装置の構成を示す回路図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る負荷制御装置の構成を示す回路図である。
【図7】ある定格のランプを実施の形態3に係る負荷制御装置により実際に駆動した場合と、従来例により実際に駆動した場合とで比較した結果の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態4に係る負荷制御装置のコンパレータCP2及びその周辺回路の構成の一例を示す回路図である。
【図9】図8に示すコンパレータCP2及びその周辺回路の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 三角波生成回路
2 PWM生成回路(パルス幅変調波生成回路)
3 オアゲート
4 駆動回路
5 負荷駆動素子
6 負荷
11 ランプ
12 バッテリ
13 ECU
21 定電圧電源
22 MOSFET
31 ヒステリシス回路
C1 コンデンサ
CP1,CP2 コンパレータ
D1 ダイオード(温度補償素子)
D2 ショットキー・バリア・ダイオード(温度補償素子)
I0〜I4,I6 電流
INV インバータ
Q1〜Q10,Q21 トランジスタ
R1〜R12,R21,R22 抵抗
Tb 電源端子
Tg 接地端子
TH1 サーミスタ(温度補償素子)
Ti 入力端子
To 出力端子
Va 下限電圧
Vb 上限電圧
bat バッテリ電圧
Vc 定電圧
VC1 コンデンサC1の電圧
Vt1,Vk 基準電圧
Vk2 第2基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流源から供給される定電流に基づいてコンデンサに充放電することにより三角波信号を生成し、前記三角波信号に基づいて負荷を制御する負荷制御装置において、
前記定電流源に温度の上昇に伴ってその特性が変化する温度補償素子を付加したことを特徴とする負荷制御装置。
【請求項2】
定電流源から供給される定電流に基づいてコンデンサに充放電することにより三角波信号を生成する三角波生成回路と、
前記三角波信号に基づいてパルス幅変調波信号を生成するパルス幅変調波生成回路と、
前記パルス幅変調波信号に基づいて負荷に負荷電流を供給する負荷駆動素子とを備え、
前記定電流源に温度の上昇に伴ってその特性が変化する温度補償素子を付加したことを特徴とする負荷制御装置。
【請求項3】
前記温度補償素子は、温度の上昇に伴って逆方向リーク電流が増加する特性を有するダイオードであることを特徴とする請求項1又は2に記載の負荷制御装置。
【請求項4】
前記温度補償素子は、温度の上昇に伴って抵抗値が低下する特性を有するサーミスタであることを特徴とする請求項1又は2に記載の負荷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−335932(P2007−335932A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161873(P2006−161873)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】