説明

超電導モータ装置及び電動車両

【課題】超電導モータ装置及び電動車両において、モータの駆動源として大きな電力源を設けずに済む構造を実現することである。
【解決手段】超電導モータ装置24は、超電導モータ26と、切り替え制御ユニット48とを備える。超電導モータ26は、ロータ54に設けられる超電導電機子コイル66と、ステータ52に設けられる超電導界磁コイル50とを有する。切り替え制御ユニット48は、入力される信号に対応して、超電導界磁コイル50と超電導電機子コイル66との間でのエネルギの受け渡しを可能とする。切り替え制御ユニット48は、超電導モータ26の力行または回生を可能とする超電導モータ作動状態と、超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との間でのエネルギの受け渡しを阻止するとともに、超電導界磁コイル50にエネルギを超電導状態で貯蔵するエネルギ貯蔵状態とを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導モータと、制御部とを備える超電導モータ装置、及び、電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車またはハイブリッド車両等のモータを搭載した電動車両が知られている。電気自動車は、モータを駆動源として車両の左右両側の車輪である、左右車輪を駆動する。ハイブリッド車両は、モータと内燃機関とを備え、モータと内燃機関とのうち、少なくとも一方を主駆動源として、車両の左右両側の車輪である、左右車輪を駆動する。
【0003】
このような電動車両は、モータに電力を供給するための電力源である二次電池やインバータが必要となる。このため、車両に二次電池搭載用の空間が必要になり、車両の部品配置上の制限がある。特に、電動車両がハイブリッド車両である場合には、左右車輪の動力源として内燃機関であるエンジンと、燃料タンクとが必要になるため、車両に対する部品配置の制限がさらに厳しくなる。例えばハイブリッド車両では、エンジンルームにモータ及びインバータが搭載され、荷室やフロアパネル下側に二次電池が搭載される場合が多い。このため、従来から製造されている単なるエンジン付車、すなわち、左右車輪の駆動源としてエンジンのみを使用する車両の構造の大部分をそのまま使用して、モータ、二次電池、インバータ等多くの部品をさらに備えるハイブリッド車両とすることは難しい。
【0004】
また、ハイブリッド車両では、トランスミッション等を含む動力伝達部等の基幹ユニットをハイブリッド車両専用に変更する必要がある。例えば、基幹ユニットとして、従来から車両走行停止時に自動でエンジンを停止させるアイドルストップ機能や、無段変速装置(CVT)の機能を有するものを使用する場合がある。このような事情から、従来から、開発に要する資力や工程が膨大になることが、ハイブリッド車両のさらなる車種増加と市場へのさらなる普及拡大とを行う面からの超えるべき点となっている。ただし、動力伝達部等のハイブリッド車両用の基幹ユニットの機能の少なくとも一部を、エンジン付車でも備えるようにすることは、比較的容易に開発できる可能性がないとはいえない。
【0005】
これに対して、特許文献1には、内燃機関エンジンとモータとを組み合わせて車両を駆動させるハイブリッド自動車の車両駆動システムであって、モータとして超電導モータを用い、該超電導モータは二次電池から供給される電力で稼働される構成としている車両駆動システムが記載されている。また、特許文献2には、内燃機関と燃料電池と蓄電手段とモータと、内燃機関とモータとの少なくとも一方により駆動される車輪とを有するハイブリッド電気自動車であって、蓄電手段がバッテリーまたはキャパシターまたはSMES(超電導磁気エネルギー貯蔵装置)あるいはこれらの組み合わせであるハイブリッド電気自動車が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−20913号公報
【特許文献2】特開2004−229480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、特許文献1に記載されたハイブリッド自動車のように、単に車輪駆動用のモータとして、二次電池から供給される電力により稼働される超電導モータを使用しただけでは、二次電池が必要になる状況、及び、車両に二次電池設置用の空間を確保する必要があることは、モータを超電導モータとしない場合と同じであり、車両に関する空間の利用効率を向上させる面から改良の余地がある。
【0008】
また、特許文献2に記載されたハイブリッド電気自動車の場合、蓄電手段としてSMESを使用しているが、モータとは別にSMESを設ける必要があるため、蓄電手段として二次電池を使用する場合に比べて、車両のエンジンルームや、荷室等に二次電池の代わりにSMESを設置する空間が必要になり、車両の空間効率を向上させる面からやはり改良の余地がある。
【0009】
なお、上記のような不都合は、ハイブリッド車両の場合だけでなく、二次電池の大きな搭載空間が必要となる電動車両の場合も同様である。このため、従来から、モータ装置において、モータの駆動源として大きな二次電池等の電力源を設けずに済む構造の実現が望まれている。
【0010】
本発明の目的は、超電導モータ装置及び電動車両において、モータの駆動源として大きな電力源を設けずに済む構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る超電導モータ装置は、超電導モータと、切り替え制御ユニットとを備え、超電導モータは、ステータとロータとのうちの一方に設けられて、回転磁界を生成する電機子コイルと、ステータとロータとのうちの他方に設けられて、電機子コイルに対向配置された超電導界磁コイルと、を有し、切り替え制御ユニットは、入力される信号に対応して、超電導界磁コイルと電機子コイルとの間でのエネルギの受け渡しを可能とするとともに、電機子コイルと超電導界磁コイルとを相互作用させることにより、超電導モータの力行または回生を可能とする超電導モータ作動状態と、電機子コイルと超電導界磁コイルとの間でのエネルギの受け渡しを阻止するとともに、短絡路により超電導界磁コイルを短絡した状態で超電導界磁コイルに電流を循環させ続けることにより、エネルギを超電導状態で貯蔵するエネルギ貯蔵状態と、を切り替えることを特徴とする超電導モータ装置である。
【0012】
また、本発明に係る超電導モータ装置において、好ましくは、超電導界磁コイルに並列に接続される短絡路を備え、さらに、切り替え制御ユニットは、短絡路に断接可能に設けられる切り替え手段と、界磁電流制御部とを備え、界磁電流制御部は、入力される信号に対応して回生制動時と力行時とモータ作動停止状態とのいずれであるかを判定するモータ作動状態判定手段と、モータ作動状態判定手段の判定結果に対応して、切り替え手段の断接の切り替えを制御する切り替え制御手段と、を有する。
【0013】
また、本発明に係る超電導モータ装置において、好ましくは、超電導界磁コイルと電機子コイルとの間に接続されたインバータと、インバータを制御するインバータ制御部と、インバータの超電導界磁コイル側の入力電圧であるシステム電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、検出されたシステム電圧を一定または一定の範囲とするように、インバータを制御する。
【0014】
また、本発明に係る超電導モータ装置において、好ましくは、超電導界磁コイルと電機子コイルとの間に接続されたインバータと、インバータを制御するインバータ制御部と、超電導界磁コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、を備え、切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、電流検出手段により検出された電流検出値と、入力される超電導モータのトルク指令値とに対応してトルク電流目標値を決定し、トルク電流目標値に対応してインバータを制御する。
【0015】
また、本発明に係る超電導モータ装置において、好ましくは、超電導界磁コイルと電機子コイルとの間に接続されたインバータと、インバータを制御するインバータ制御部と、超電導界磁コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、超電導モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、インバータの超電導界磁コイル側の入力電圧であるシステム電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、電流検出手段により検出された電流検出値と、回転速度検出手段により検出された回転速度検出値とから超電導モータが発生する誘起電圧を算出し、誘起電圧が小さいときにシステム電圧を小さくし、誘起電圧が大きいときにシステム電圧を大きくするように、インバータを制御する。
【0016】
また、本発明に係る電動車両は、超電導モータ装置を備え、超電導モータ装置を駆動源として、左右車輪を駆動する電動車両であって、超電導モータ装置は、上記の本発明に係る超電導モータ装置であることを特徴とする電動車両である。
【0017】
また、本発明に係る電動車両において、好ましくは、内燃機関を備え、超電導モータ装置と内燃機関とのうち、少なくとも一方を主駆動源として、左右車輪を駆動し、ハイブリッド車両として使用される。
【0018】
また、本発明に係る電動車両において、好ましくは、超電導モータ装置は、左右車輪のそれぞれに対応して車両の左右両側に少なくとも1個ずつ設けられている。
【0019】
また、本発明に係る電動車両において、好ましくは、左右車輪をそれぞれ駆動する2個の超電導モータ装置の少なくとも一部は、左右車輪のそれぞれの内側に配置されている。
【0020】
また、本発明に係る電動車両において、好ましくは、補機に電力を供給する二次電池を備え、二次電池は、昇圧コンバータを介して電機子コイルと超電導界磁コイルとの少なくとも一方への電力の供給を可能に接続されている。
【0021】
また、本発明に係る電動車両において、好ましくは、電機子コイルと超電導界磁コイルとの間と、昇圧コンバータまたは二次電池との間に設けられ、電機子コイルと超電導界磁コイルとの間と、昇圧コンバータとの間の断接を切り替える第2切り替え手段と、超電導界磁コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段により検出された電流検出値が予め設定された所定電流値以下の場合に、第2切り替え手段を接続する第2切り替え制御手段と、を備え、第2切り替え制御手段は、超電導界磁コイルを流れる電流が不足している場合に、二次電池から超電導界磁コイルへの電力の供給を可能とする。
【0022】
また、本発明に係る電動車両において、好ましくは、第2切り替え制御手段は、電流検出手段により検出された電流検出値が予め設定された第2の所定電流値以上の場合に、第2切り替え手段を切断し、超電導界磁コイルを流れる電流が十分である場合に、二次電池から超電導界磁コイルへの電力の供給を阻止する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る超電導モータ装置及び電動車両によれば、モータの駆動源として大きな電力源を設けずに済む構造を実現できる。すなわち、超電導界磁コイルと電機子コイルとの相互作用により、超電導モータの力行または回生が可能となり、超電導界磁コイルから電機子コイルに供給されるエネルギにより電機子コイルに回転磁界生成用の電流が流れ、超電導界磁コイルに蓄積されるエネルギにより、超電導界磁コイルが励磁される。このため、超電導界磁コイルが、モータの界磁コイルとしての機能だけでなく、エネルギ貯蔵部と電機子コイルへの電力供給源との機能も有し、超電導モータにエネルギ貯蔵機能を持たせることができる。したがって、超電導モータとは別に大きな二次電池を設ける必要がなくなる。この結果、超電導モータ装置の小型化及び軽量化を図れる。また、電動車両のように、車輪を駆動するモータとして超電導モータを使用する車両に本発明を適用する場合に、車両に大きな二次電池設置用の空間を設ける必要がなくなり、車両に関する空間の利用効率の向上を図れる。
【0024】
また、超電導界磁コイルと電機子コイルとの間に接続されたインバータと、インバータを制御するインバータ制御部と、インバータの超電導界磁コイル側の入力電圧であるシステム電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、検出されたシステム電圧を一定または一定の範囲とするように、インバータを制御する構成によれば、電機子コイルと超電導界磁コイルとの間での入出力される電力をより有効にバランスさせることができる。このため、電機子コイルと超電導界磁コイルとの間での入出力される電力をより有効にバランスさせることができ、インバータの超電導界磁コイル側にコンデンサを設ける場合でも、コンデンサ両端に印加される電圧が過大や過小になることをより有効に防止できる。すなわち、電機子コイルに流す電流と、超電導界磁コイルに流す電流とのそれぞれを、電力制御により制御することも考えられるが、このような電力制御の場合には、制御誤差が生じた場合に、電機子コイルと超電導界磁コイルとの間での入出力される電力がバランスしないで、コンデンサ両端に印加される電圧が過大や過小になる可能性がある。これに対して、上記のように、切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、検出されたシステム電圧を一定または一定の範囲とするように、インバータを制御する構成によれば、上記の不都合を防止でき、インバータの超電導界磁コイル側にコンデンサを設ける場合でも、コンデンサ両端に印加される電圧が過大や過小になることをより有効に防止できる。この場合、例えば、電機子コイルに流す電流は、トルク制御により制御する。この構成によれば、超電導界磁コイルに供給される電力が成り行きとなり、電力のアンバランスを抑制できる。また、超電導モータの磁気回路と磁気エネルギ貯蔵部とが同じ超電導界磁コイルを共用するのにもかかわらず、トルク指令に対応する超電導モータの出力トルクをより有効に高精度に制御することができる。
【0025】
また、超電導界磁コイルと電機子コイルとの間に接続されたインバータと、インバータを制御するインバータ制御部と、超電導界磁コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、を備え、切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、電流検出手段により検出された電流検出値と、入力される超電導モータのトルク指令値とに対応してトルク電流目標値を決定し、トルク電流目標値に対応してインバータを制御する構成によれば、超電導界磁コイルの貯蔵エネルギの変化により、超電導状態で流れる電流が変化する場合でも、トルク指令に対応して電機子コイルに流れるトルク電流を変化させることができ、より有効に超電導モータの性能向上を図れる。
【0026】
また、本発明に係る超電導モータ装置において、超電導界磁コイルと電機子コイルとの間に接続されたインバータと、インバータを制御するインバータ制御部と、超電導界磁コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、超電導モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、インバータの超電導界磁コイル側の入力電圧であるシステム電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、電流検出手段により検出された電流検出値と、回転速度検出手段により検出された回転速度検出値とから超電導モータが発生する誘起電圧を算出し、誘起電圧が小さいときにシステム電圧を小さくし、誘起電圧が大きいときにシステム電圧を大きくするように、インバータを制御する構成によれば、超電導界磁コイルに貯蔵される貯蔵エネルギ量や、超電導モータの動作状態の変化にかかわらず、より有効にシステム全体の効率を高くできる。
【0027】
また、本発明に係る電動車両において、内燃機関を備え、超電導モータ装置と内燃機関とのうち、少なくとも一方を主駆動源として、左右車輪を駆動し、ハイブリッド車両として使用される構成によれば、単にエンジンのみを駆動源として左右車輪を駆動するエンジン付車の構造の多くを共通化して利用することができ、コストを大幅に低減できるとともに、大きな二次電池を設ける必要がなくなる。また、大きな二次電池に対応する高電圧用のケーブルを設ける必要がなくなる。ハイブリッド車両の車室や荷室をより有効に広くしやすくなる。
【0028】
また、超電導モータ装置は、左右車輪のそれぞれに対応して車両の左右両側に少なくとも1個ずつ設けられている構成において、左右車輪をそれぞれ駆動する2個の超電導モータ装置の少なくとも一部は、左右車輪のそれぞれの内側に配置されている構成によれば、単にエンジンのみを駆動源として左右車輪を駆動するエンジン付車の構造のより多くを共通化して利用することができ、コストをより大幅に低減できる。また、エンジン付車のエンジンルーム内の部品配置の制限をより有効に少なくでき、より多くの車種のエンジン付車を、ハイブリッド車両に変更しやすくなる。
【0029】
また、補機に電力を供給する二次電池を備え、二次電池は、昇圧コンバータを介して電機子コイルと超電導界磁コイルとの少なくとも一方への電力の供給を可能に接続されている構成によれば、超電導モータ装置での貯蔵電力が零になった場合に、超電導界磁コイルの界磁がなくなり、超電導モータを力行または回生のいずれにも作動できなくなる傾向となるのにもかかわらず、二次電池により超電導界磁コイルに界磁のための電流を流すことができ、その後、内燃機関による車両走行開始後に回生制動により徐々に超電導界磁コイルに貯蔵される貯蔵電力を大きくして、通常の動作状態へ移行できる。このため、電動車両に過度に大きな二次電池を設けることなく、超電導界磁コイルの貯蔵電力が零等、超電導モータ装置の貯蔵電力が低下した状態からでも、車両を安定して始動させるとともに、安定して通常走行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図6は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1は、本実施の形態の超電導モータ装置を備える電動車両である、ハイブリッド車両の略構成図である。図2は、本実施の形態のハイブリッド車両のブロック図である。図3は、本実施の形態の超電導モータ装置の略構成図である。図4は、界磁電流制御部の構成要素を示す図である。図5は、本実施の形態の超電導モータ装置の略断面図である。図6は、図5のA−A断面図である。
【0031】
図1に示すように、ハイブリッド車両10は、内燃機関であるエンジン12と、前側、後側の車輪14,16と、変速機(T/M)18と、差動装置(ディファレンシャル装置)20とを備える。前側の左右の車輪14に左右の車軸22を結合している。差動装置20は、左右の車軸22の間に設けている。エンジン12からの動力は、変速機18と、差動装置20と、左右の車軸22とを介して、左右の車輪14に伝達される。このため、エンジン12の駆動により、左右の車輪14が回転駆動される。また、左右の車軸22の端部に2個の超電導モータ装置24を設けることにより、それぞれの超電導モータ装置24を構成する超電導モータ26(図2、図3参照)の駆動によっても、左右の車輪14が回転駆動されるようにしている。また、エンジン12の周辺部に、エンジン12の出力軸の回転に伴って発電する発電機(オルタネータ)28と、エンジン12の始動時に図示しない起動スイッチの操作に対応して、エンジン12の出力軸を回転させる補機である始動装置(スタータ)30とを設けている。
【0032】
図2に示すように、ハイブリッド車両10は、車両コントローラ32と、左右の車輪14にそれぞれ対応する2個の超電導モータ装置24とを備える。車両コントローラ32は、エンジンルーム34(図1)内に配置されて、車両を駆動するための動力を分配制御する機能を有する。車両コントローラ32には、図示しないアクセルペダルの操作量に対応するアクセル開度を検出するアクセル開度センサ36と、車速を検出するレゾルバ等により構成する車速センサ38と、シフトポジションを検出するシフトセンサ40と、ブレーキペダルの踏み込み量、またはブレーキペダルのオンオフを検出するブレーキペダルセンサ42とからの検出信号を、それぞれ車両コントローラ32に入力している。車両コントローラ32は、CPU、メモリであるRAM、ROM等を有するマイクロコンピュータである。
【0033】
エンジン12に、車両コントローラ32からの制御信号が入力されることにより、燃料噴射制御、点火制御、吸入空気量調節制御等の運転制御が行われるようにしている。また、エンジン12からは、エンジン12の回転数等のエンジン12の運転状態を表す信号を車両コントローラ32に出力している。なお、車両コントローラ32とエンジン12との間にエンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)を設けて、車両コントローラ32からの信号により、エンジンECUを介してエンジン12を運転制御し、また、エンジン12からの運転状態を表す信号をエンジンECUに出力することもできる。
【0034】
一方、2個の超電導モータ装置24は、それぞれインバータ制御部であるモータコントローラ44と、インバータ46と、超電導モータ26とを備える。超電導モータ26の回転軸を、左右の車輪14に連結することにより、超電導モータ26の回転により左右の車輪14が回転駆動されるようにしている。超電導モータ26の駆動状態は、車両コントローラ32から信号を入力される各モータコントローラ44により制御している。各モータコントローラ44は、インバータ46に、スイッチング素子のスイッチングを制御するための信号をそれぞれ出力する。すなわち、各モータコントローラ44は、CPU、メモリであるRAM、ROM等を有するマイクロコンピュータであり、インバータ46を制御する。また、各モータコントローラ44は、切り替え制御ユニット48(図3参照)に、超電導モータ26を構成する超電導界磁コイル50(図3参照)からの電流をインバータ46に送ることを指示する信号を出力する。この結果、インバータ46は、対応する超電導モータ26を駆動する。このようなハイブリッド車両10は、超電導モータ26を駆動源として、左右の車輪14を駆動可能とする。すなわち、ハイブリッド車両10は、超電導モータ装置24とエンジン12とのうち、少なくとも一方を主駆動源として、左右の車輪14(図1)を駆動する。
【0035】
図3、図4に示すように、1個の超電導モータ装置24を構成する超電導モータ26は、2個のステータ52(図3ではステータ52を1個のみ図示する。)と、ロータ54とを軸方向に対向させたアキシャル型の同期モータである。すなわち、図5に示すように、超電導モータ26は、回転軸56に外嵌固定したロータ54と、ケース58の内側にロータ54を介して軸方向に対向させた2個のステータ52とを備える。ロータ54は、2個の非磁性材製の円板状のロータ要素60の間の円周方向複数個所等間隔位置に、それぞれ鉄心等の磁性材からなるロータコア64と、ロータコア64の周囲に巻装したU相、V相、W相の3相のロータ巻線である、超電導電機子コイル66とを備える。各超電導電機子コイル66は、例えば、酸化物超電導材料のイットリウム系、ビスマス系、タリウム系、ネオジウム系等の超電導材料により造っている。
【0036】
また、車輪14(図1)の回転にかかわらず回転しない部分にケース58を固定するとともに、ケース58に、インバータ制御部一体ユニット68を固定している。インバータ制御部一体ユニット68は、ユニットケース70の内側に、図3に示す、インバータ46と、モータコントローラ44と、切り替え制御ユニット48とを収容している。図5に戻り、各超電導電機子コイル66には、図示しない整流子とブラシ等を介して、インバータ46(図3)から3相の交流電流が送られるようにしている。超電導電機子コイル66は、3相の交流電流が流れることにより、ロータ54に回転磁界を生成する。
【0037】
また、図6に示すように、各ステータ52は、それぞれ円周方向複数個所等間隔位置に配置した鉄心等の磁性材からなるステータコア72と、ステータコア72の周囲に巻装したステータ巻線である、超電導界磁コイル50とを備える。各ステータ52は、超電導電機子コイル66に、ロータ要素60を介して対向させている。各超電導界磁コイル50も、上記の各超電導電機子コイル66と同様に、超電導材料により造っている。各超電導界磁コイル50は、周方向に隣り合うもの同士で、巻き方向を異ならせることにより、各超電導界磁コイル50に直流電流が流れることに伴って、図6に示すように、ステータ52の周方向複数個所にN極とS極とが交互に配置されるようにしている。このように超電導モータ26は、ロータ54に設けられて回転磁界を生成する超電導電機子コイル66と、ステータ52に設けられて、超電導電機子コイル66にロータ要素60を介して対向配置された超電導界磁コイル50とを有する。
【0038】
このように構成するため、図3に示すように、インバータ46から3相の超電導電機子コイル66に3相の交流電流が流れることにより、ロータ54が生成する回転磁界と、超電導界磁コイル50が生成する磁界との相互作用により、ロータ54が回転し、回転軸56(図5、図6)が回転する。なお、ロータ54に超電導電機子コイル66を設ける構成は、図5に示したような構成に限定するものではなく、例えば、超電導電機子コイル66は、ロータ54の軸方向全長にわたって設け、その軸方向両端を直接ステータ52に対向させることもできる。また、超電導界磁コイル50の数及び配置も図5、図6に示す構成のような数及び配置に限定するものではなく、種々の数及び配置とすることもできる。
【0039】
図3に戻って、本実施の形態では、超電導モータ26へ電力を供給するための二次電池は設けていない。超電導モータ26を力行状態で回転駆動する場合には、超電導界磁コイル50で貯蔵したエネルギを、インバータ46を介して超電導電機子コイル66に供給する。インバータ46は、超電導界磁コイル50から供給される直流電圧を交流電圧に変換して超電導電機子コイル66に供給する。すなわち、インバータ46は、超電導界磁コイル50と超電導電機子コイル66との間に接続されている。また、車両の制動時に、超電導モータ26で制動エネルギを吸収し、すなわち発電させることにより得たエネルギを、ロータ54の超電導電機子コイル66側からインバータ46を介してステータ52の超電導界磁コイル50側へ送ることで、超電導界磁コイル50にエネルギを貯蔵させるようにしている。
【0040】
このために、切り替え制御ユニット48は、インバータ46と、超電導界磁コイル50との間に接続している。なお、図3では、1個の超電導界磁コイル50のみが切り替え制御ユニット48に接続されているかのような図示をしているが、実際には、複数の超電導界磁コイル50のすべてが切り替え制御ユニット48に接続されている。切り替え制御ユニット48は、超電導界磁コイル50を短絡する短絡路74と、界磁電流制御部76とを備える。短絡路74は、超電導界磁コイル50に並列に接続されている。また、インバータ46の超電導界磁コイル50側にコンデンサ77を接続している。
【0041】
短絡路74に、断接可能な切り替え手段である、超電導スイッチ78を設けている。超電導スイッチ78は、上記で説明したような超電導材料により造ったもので、周囲温度が常温になることで両端間が切断される一方、超電導材料が超電導状態になる低温に低下することで両端が電気抵抗零で短絡されるようにしている。このような超電導スイッチ78の断接を制御するために、図示しない温度調節部により周辺温度を調節可能としている。温度調節部は、加温と冷却との少なくとも一方の温度変化を行えるようにしている。例えば、加温のみの機能を有する場合には、温度調節部をヒータ部により構成する。そして、液体窒素や液体ヘリウム等の寒材を充填した部分により周囲の温度を低下させるとともに、温度調節部により加温することにより、超電導スイッチ78周囲の温度を調節可能とする。すなわち、超電導モータの超電導スイッチ78周囲に供給する寒材の温度は、外部に設けた、寒材と外気との熱交換を可能とする熱交換部を有する冷却システムにより、超電導スイッチ78周囲に供給する寒材が温度上昇する傾向となった場合でも冷却して、超電導スイッチ78周囲に供給する寒材を一定の低温に調節可能とする。そして、温度調節部に、界磁電流制御部76から制御信号を入力することにより、温度調節部が必要時に温度上昇して、超電導スイッチ78周囲の温度を調節可能とする。
【0042】
界磁電流制御部76は、超電導モータ26の回生制動時に、超電導電機子コイル66から回収したエネルギが超電導界磁コイル50に蓄積されることを可能とし、超電導モータ26の力行時には、超電導界磁コイル50に蓄積されたエネルギが超電導電機子コイル66に放出されることを可能とする。すなわち、界磁電流制御部76は、入力される信号に対応して、超電導界磁コイル50と超電導電機子コイル66との間でのエネルギの受け渡しを可能とする。このために、図4に示すように、界磁電流制御部76は、入力される信号に対応して、回生制動時と力行時とモータ作動停止状態とのいずれであるかを判定するモータ作動状態判定手段80と、モータ作動状態判定手段80の判定結果に対応して、超電導スイッチ78の断接の切り替えを制御する切り替え制御手段82と、を有する。回生制動時には、モータ作動状態判定手段80が、車両コントローラ32にアクセル開度センサ36(図2)やブレーキペダルセンサ42(図2)から信号が入力され、車両コントローラ32が、超電導モータ26による車両の走行時に、アクセルペダルのオフや、ブレーキペダルの作動、すなわち、ブレーキペダルが踏まれたことを検出したことに対応して、回生制動時であると判定し、これに対応する信号がモータコントローラ44に入力され、モータコントローラ44は、超電導モータ26が発電した交流電圧を直流電圧に変換するための信号を生成し、インバータ46に出力する。
【0043】
なお、インバータ46と超電導界磁コイル50との間にDC/DCコンバータを設けて、超電導界磁コイル50からの直流電圧を昇圧してインバータ46に供給することを可能とするとともに、インバータ46からの直流電圧を降圧して超電導界磁コイル50に供給することを可能とする構成としてもよい。
【0044】
また、モータコントローラ44に、インバータ46から超電導モータ26が発電状態であることを表す信号が入力された場合、または、車両コントローラ32から超電導モータ26が発電した交流電圧を直流電圧に変換させる指令を表す信号が入力された場合に、モータコントローラ44は、界磁電流制御部76に制御信号を出力し、界磁電流制御部76のモータ作動状態判定手段80は、回生制動時であると判定し、切り替え制御手段82が、温度調節部に制御信号を入力することにより、超電導スイッチ78を切断、すなわち開放状態に切り替える。この結果、超電導電機子コイル66からインバータ46を介して超電導界磁コイル50に流れる界磁電流が増大し、超電導モータ26が回生状態となる。
【0045】
また、モータコントローラ44に、インバータ46から超電導モータ26が力行状態であることを表す信号が入力された場合、または、車両コントローラ32(図2)から超電導界磁コイル50からの直流電圧を交流電圧に変換させる指令を表す信号が入力された場合に、モータコントローラ44は、界磁電流制御部76に制御信号を出力し、モータ作動状態判定手段80は、力行時であると判定し、切り替え制御手段82が、超電導スイッチ78を切断、すなわち開放状態に切り替える。この結果、超電導界磁コイル50からインバータ46を介して超電導電機子コイル66に電流が流れて、超電導モータ26が力行状態となる。この場合、超電導界磁コイル50に蓄積されたエネルギがインバータ46を介して超電導電機子コイル66に供給される。また、モータコントローラ44は、車両コントローラ32から、超電導モータ26を回生させるための信号を入力されて、インバータ46に、トルク指令値及びモータ回転数に基づいて、インバータ46のスイッチング素子を制御するための信号を生成し、インバータ46に出力する。この結果、超電導電機子コイル66に電流が流れることによりステータ52に発生する磁界と、超電導界磁コイル50に電流が流れることによりロータ52に発生する磁界との相互作用により、超電導モータ26が同期モータとして作用して、超電導モータ26が回転する。
【0046】
また、車両の走行停止時、またはエンジン12(図2)による車両の走行時等に、車両コントローラ32からモータコントローラ44にモータ作動停止状態で、エネルギ貯蔵指示状態であることを表す信号が入力された場合に、モータコントローラ44は、界磁電流制御部76に制御信号を出力し、モータ作動状態判定手段80は、モータ作動停止状態であると判定し、切り替え制御手段82が、温度調節部に制御信号を入力することにより、超電導スイッチ78を接続状態に切り替える。この結果、超電導界磁コイル50と短絡路74との間で電流が超電導状態で循環して、超電導界磁コイル50にエネルギが貯蔵される。このために、例えば、超電導界磁コイル50及び超電導電機子コイル66を含む超電導モータ26と、超電導スイッチ78とを含む部分は、上記の寒材と冷却システムにより、超電導状態が維持される低温に維持する。このように超電導界磁コイル50にエネルギが超電導状態で貯蔵される場合でも、超電導界磁コイル50に電流が超電導状態で流れるため、励磁されて、ステータ52にN極及びS極が周方向に交互に配置される状態が維持される。
【0047】
このように界磁電流制御部76は、入力される信号に対応して、超電導界磁コイル50と超電導電機子コイル66との間でのエネルギの受け渡しを可能とするとともに、超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50とを相互作用させることにより、超電導モータ26の力行または回生を可能とする超電導モータ作動状態と、超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との間でのエネルギの受け渡しを阻止するとともに、短絡路74により超電導界磁コイル50を短絡した状態で超電導界磁コイル50に電流を循環させ続けることにより、エネルギを超電導状態で貯蔵するエネルギ貯蔵状態と、を切り替える機能を有する。
【0048】
なお、図3では、インバータ46とモータコントローラ44とが別体のような図示をしているが、インバータ46とモータコントローラ44とを単一のケース内に収容してインバータユニットを構成することもできる。
【0049】
また、本実施の形態では、「超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との間の電力バランス制御」を行っている。このために、超電導モータ装置24は、インバータ46の超電導界磁コイル50側の入力電圧であるシステム電圧を検出する電圧検出手段である電圧センサ84を備える。電圧センサ84の検出信号は、界磁電流制御部76に入力している。また、界磁電流制御部76は、検出されたシステム電圧が予め設定される一定値または一定の範囲(例えば一定電圧に対して5%以下から5%以上までの範囲)となるように、インバータ46を、モータコントローラ44を介して、例えば、フィードバック制御により制御している。この場合、超電導電機子コイル66に流す電流は、トルク制御により制御する。「トルク制御」は、超電導電機子コイル66に流す電流を、モータコントローラ44に入力されるトルク指令に応じて変えるように、モータコントローラ44によりインバータ46の駆動を制御することである。例えば、検出されたシステム電圧が、トルク指令に応じて設定されるシステム電圧目標値よりも高い場合には、界磁電流制御部76がモータコントローラ44に制御信号を出力し、超電導モータ26の回生量を大きくするように、超電導界磁コイル50に流れる電流を増大させて、超電導電機子コイル66側から超電導界磁コイル50側にエネルギが吸収されるようにする。これに対して、検出されたシステム電圧がシステム電圧目標値よりも低い場合には、界磁電流制御部76がモータコントローラ44に制御信号を出力し、超電導モータ26の回生量を少なくするように、超電導界磁コイル50に流れる電流を減少させて、超電導界磁コイル50側から超電導電機子コイル66側へエネルギが放出されるようにする。
【0050】
このような超電導モータ装置24は、図1に示すように、左右の車輪14のそれぞれに対応して、ハイブリッド車両10の左右両側に1個ずつ設けられている。また、左右の車輪14をそれぞれ駆動する2個の超電導モータ装置24の少なくとも一部は、左右の車輪14のそれぞれの内側に配置されている。
【0051】
このような超電導モータ装置24及びハイブリッド車両10によれば、超電導モータ26の駆動源として大きな電力源を設けずに済む構造を実現できる。すなわち、超電導界磁コイル50と超電導電機子コイル66との相互作用により、超電導モータ26の力行または回生が可能となり、超電導界磁コイル50から供給されるエネルギにより超電導電機子コイル66に回転磁界生成用の電流が流れ、超電導界磁コイル50に蓄積されるエネルギにより、超電導界磁コイル50が励磁される。このため、超電導界磁コイル50が、超電導モータ26の界磁コイルとしての機能だけでなく、エネルギ貯蔵部と超電導電機子コイル66への電力供給源との機能も有し、超電導モータ26にエネルギ貯蔵機能を持たせることができる。すなわち、本実施の形態の超電導モータ装置24は、超電導磁気エネルギ貯蔵装置(SMES)を有するような構造となる。したがって、超電導モータ26とは別に大きな二次電池を設ける必要がなくなる。この結果、超電導モータ装置24の小型化及び軽量化を図れる。
【0052】
また、本実施の形態の場合には、界磁電流制御部76は、検出されたシステム電圧が一定値または一定の範囲となるように、インバータ46を制御している。また、超電導電機子コイル66に流す電流は、トルク制御により制御する。このため、超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との間での入出力される電力をより有効にバランスさせることができ、本実施の形態のように、インバータ46の超電導界磁コイル50側にコンデンサ77を設ける場合でも、コンデンサ77両端に印加される電圧が過大や過小になることをより有効に防止できる。すなわち、本実施の形態の場合と異なり、超電導電機子コイル66に流す電流を、モータコントローラ44に入力されるトルク指令に応じて変える「トルク制御」すなわち「インバータ46についての電力制御」により制御するとともに、超電導界磁コイル50に流す電流を、検出された電流値を用いて制御する電力制御により制御することも考えられる。ただし、このようにインバータ46と超電導界磁コイル50との両方を電力制御により制御する場合には、センサの検出誤差等による制御誤差が生じた場合に、超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との間での入出力される電力がバランスしないで、コンデンサ77両端に過電圧が印加されたり、コンデンサ77両端に印加される電圧が過小になり、インバータ46を有効に高精度に制御することが困難になる可能性がある。これに対して、本実施の形態のように、切り替え制御ユニット48は、検出されたシステム電圧が一定値または一定の範囲となるように、インバータ46を制御する構成によれば、上記の不都合を防止でき、本実施の形態のように、インバータ46の超電導界磁コイル50側にコンデンサ77を設ける場合に、コンデンサ77両端に印加される電圧が過大や過小になることをより有効に防止できる。この構成によれば、超電導界磁コイル50に供給される電力が成り行きとなり、電力のアンバランスを抑制できる。また、超電導モータ26の磁気回路と磁気エネルギ貯蔵部とが同じ超電導界磁コイル50を共用するのにもかかわらず、トルク指令に対応する超電導モータ26の出力トルクをより有効に高精度に制御することができる。
【0053】
なお、電圧センサ84からの検出信号を直接モータコントローラ44に入力し、モータコントローラ44は、電圧センサ84により検出されたシステム電圧が一定値または一定の範囲となるように、インバータ46を制御することもできる。
【0054】
また、本実施の形態のハイブリッド車両10のように、車輪14を駆動するモータを使用する車両に本発明を適用する場合に、ハイブリッド車両10に大きな二次電池設置用の空間を設ける必要がなくなり、ハイブリッド車両10に関する空間の利用効率の向上を図れる。図7は、従来から考えられているエンジンと走行用モータとのうち、一方を車輪14の主駆動源として使用する従来型ハイブリッド車両88の1例を示している。従来型ハイブリッド車両88は、車両後側の荷室90または荷室90付近に大きな二次電池92が設けられている。また、車両前側のエンジンルーム34に図示しないエンジンや、変速装置等の動力伝達装置の他に、モータジェネレータ装置(MG)94と、コントロールユニット(PCU)96とが設けられている。モータジェネレータ装置94は、図示しない走行用モータと発電機とを含む。
【0055】
図7に示した従来型ハイブリッド車両88と、図1に示した本実施の形態のハイブリッド車両10とを比較すれば明らかなように、本実施の形態のハイブリッド車両10の場合には、従来型ハイブリッド車両88に対して、図7に斜線部で示すモータジェネレータ装置94のうち、少なくとも走行用モータと、大きな容量を有する二次電池92とをなくすことができる。なお、図1に示すように、本実施の形態のハイブリッド車両10の場合には、エンジンルーム34に小型の補機用二次電池98を設けているが、この補機用二次電池98は、12V等の低電圧の補機駆動用であり、図7に示す従来型ハイブリッド車両88の場合と異なり、走行用モータに電力を供給するための二次電池92のように大きくする必要がなく、補機用二次電池98(図1)は十分に小さくでき、ハイブリッド車両10の空間の利用効率の向上を図れる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、ハイブリッド車両10ではない、従来から多く製造されているエンジンにより車両を駆動するエンジン付車両において、左右の車輪の内側に超電導モータ装置24(図1等)の少なくとも一部を設ける等により、エンジン付車両の構造の多くを使用しながら、ハイブリッド車両10を実現でき、部品の共用化によるコスト低減を図れる。すなわち、エンジン付車両に施す改造や変更を少なく抑えながら、制動時にエネルギを回収する回生機能と、車輪14の電動駆動の機能とを有するハイブリッド車両10を容易に実現できる。また、多くの車種へハイブリッド車両10を展開することをより容易に行える。
【0057】
[第2の発明の実施の形態]
図8は、本発明に係る第2の実施の形態において、超電導モータ装置を示す、図3に対応する図である。本実施の形態の超電導モータ装置24aでは、超電導界磁コイル50の貯蔵エネルギが変化して、超電導界磁コイル50が有する界磁量が変化する場合でも、超電導電機子コイル66に流すトルク電流が一定であれば、超電導モータ26の発生トルクが一定になるようにすることを目的としている。すなわち、本実施の形態は、超電導界磁コイル50の貯蔵エネルギが変化した場合に、超電導界磁コイル50が有する界磁量が変化し、超電導電機子コイル66に流すトルク電流が一定であっても、超電導モータ26の発生トルクが変化してしまう不都合をなくすべく考えられたものである。このために、本実施の形態では、「貯蔵エネルギの変化に対応するトルク制御」を行っている。すなわち、超電導モータ装置24aに、超電導界磁コイル50に流れる電流を検出するための電流検出手段である電流センサ100を設けている。また、各モータコントローラ44は、電流センサ100により検出された電流検出値と、入力される超電導モータ26のトルク指令値とに対応して超電導電機子コイル66に流すトルク電流目標値を決定し、トルク電流目標値に対応してインバータ46を制御する。すなわち、各モータコントローラ44は、超電導界磁コイル50の貯蔵エネルギの変化に応じて、そのときの超電導界磁コイル50が有する界磁量から後述するトルク定数Ktを算出し、トルク定数Ktに対応する電機子電流目標値であるトルク電流目標値を決定する。
【0058】
具体的には、貯蔵エネルギEは、次の(1)式により算出される。
E=L×I2/2・・・(1)
ここで、Lは超電導界磁コイル50のインダクタンスであり、Iは超電導界磁コイル50に流れる電流である界磁電流である。Lは、予め定数として設定することができる。このため、超電導界磁コイル50に流れる電流Iを電流センサ100により検出することにより、貯蔵エネルギEを算出することができる。
【0059】
また、超電導界磁コイル50が有する界磁量Φは、次の(2)式により算出される。
Φ=L×I・・・(2)
【0060】
また、トルク定数Ktは、次の(3)式により算出される。
Kt=P×Φ・・・(3)
ここで、Pは、ステータ52の極対数である。このため、上記の(1)、(2)、(3)式から、電流センサ100の検出値から界磁量Φが求められ、界磁量Φからトルク定数Ktが算出される。
【0061】
さらに、超電導モータ26のトルク電流目標値Iqは、次の(4)式により算出される。
Iq=Ta/Kt・・・(4)
ここで、Taは、モータコントローラ44に入力されるトルク指令である。このため、上記の(4)式と、上記の(3)式で決定されたトルク定数Ktとからトルク指令Taに対応するトルク電流目標値Iqが決定される。すなわち、電流センサ100の検出値から、トルク指令Taに対応するトルク電流目標値Iqが決定される。モータコントローラ44は、決定されたトルク電流目標値Iqにしたがって、インバータ46を制御し、超電導モータ26を駆動する。
【0062】
このような本実施の形態によれば、インバータ46を制御するモータコントローラ44と、超電導界磁コイル50に流れる電流を検出する電流センサ100とを備え、モータコントローラ44は、電流センサ100により検出された電流検出値Iと、入力される超電導モータ26のトルク指令値Taとに対応してトルク電流目標値Iqを決定し、トルク電流目標値Iqに対応してインバータ46を制御する。このため、超電導界磁コイル50の貯蔵エネルギの変化により、超電導状態で流れる電流が変化する場合でも、トルク指令に対応して超電導電機子コイル66に流すトルク電流を変化させることができ、より有効に超電導モータ26の性能向上を図れる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する図示及び説明を省略する。
【0063】
なお、界磁電流制御部76に電流センサ100からの検出信号を入力し、界磁電流制御部76は、電流検出値Iと、トルク指令値Taとに対応してトルク電流目標値Iqを決定し、界磁電流制御部76は、モータコントローラ44を介して、トルク電流目標値Iqに対応してインバータ46を制御することもできる。
【0064】
[第3の発明の実施の形態]
図9は、本発明に係る第3の実施の形態において、超電導モータ装置を示す、図3に対応する図である。図10は、第3の実施の形態において、システム電圧を制御する方法を説明するための誘起電圧とシステム電圧との関係を示す図である。なお、上記の図1から図6に示した第1の実施の形態と同じ要素には同一符号を付して説明する。本実施の形態の超電導モータ装置24bでは、超電導界磁コイル50の貯蔵エネルギ量や、超電導モータ26の動作状態にかかわらず、システム全体の効率をより高くすることを目的としている。すなわち、本実施の形態は、次のような不都合をなくすべく考えられたものである。すなわち、インバータ46の超電導界磁コイル50側の入力電圧であるシステム電圧が高くなると、システム電圧の大きさに比例するインバータ46のスイッチング損失が増大し、システムである超電導モータ装置24b全体の効率が悪化する原因となる。このため、従来からシステム電圧を低くすることが考えられているが、システム電圧が過度に低くなると、超電導モータ26が発生する誘起電圧(逆起電圧)がシステム電圧よりも高くなって、超電導モータ26側で勝手に発電し、超電導電機子コイル66に超電導モータ26の駆動のために適切な電流を流すことが困難になる可能性がある。
【0065】
また、誘起電圧Vrは、超電導モータ26の角速度をωとし、超電導界磁コイル50の磁束量をΦとした場合に、次の(4)式で表される。
Vr=ω×Φ・・・(4)
【0066】
このことから、超電導モータ26の誘起電圧Vrは、超電導モータ26の回転数が高くなるほど大きくなることが分かる。このため、超電導モータ26の回転数が高くなる場合には、上記のように超電導電機子コイル66に適切な電流を流すことが困難になるという、不都合が生じる可能性がさらに高くなる。従来から考えられている永久磁石付同期電動モータにおいて、電動モータの駆動源として二次電池を使用し、二次電池からの直流電流をインバータにより交流電流に変換する構造の場合には、例えば、電動モータの回転数が高くなる場合に、永久磁石から出る磁束を減じるように電機子コイルに流れる電流の位相を調整することにより、電動モータの誘起電圧を減らす、「弱め界磁制御」を行うことが考えられている。ただし、このような弱め界磁制御を行うことは、トルクに寄与しない電流を電機子コイルに流すことになるため、システムの効率が悪化する原因になる。また、本実施の形態では、超電導モータ26の駆動源が超電導界磁コイル50であり、超電導モータ26の駆動により超電導界磁コイル50の磁束量が変化して、誘起電圧も変化するため、これを考慮する必要もある。本実施の形態は、このような事情を考慮して、超電導界磁コイル50の貯蔵エネルギ量や、超電導モータ26の動作状態にかかわらず、システム全体の効率をより高くすることを目的として考えられたものである。
【0067】
すなわち、本実施の形態では、図9に示すように、界磁電流制御部76が、超電導モータ26の誘起電圧に応じてシステム電圧が変化するようにインバータ46を制御する、「最適システム電圧制御」を行っている。具体的には、超電導モータ装置24bは、上記の第1の実施の形態と同様に、インバータ46を制御するモータコントローラ44を備える。また、超電導モータ装置24bは、超電導界磁コイル50に流れる電流を検出する電流センサ100と、超電導モータ26の回転速度を検出する回転速度センサ102と、インバータ46のシステム電圧を検出する電圧センサ84とを備える。
【0068】
また、切り替え制御ユニット48が有する界磁電流制御部76は、電流センサ100により検出された電流検出値と、回転速度センサ102により検出された回転速度検出値とから超電導モータ26が発生する誘起電圧を算出し、誘起電圧が小さいときにシステム電圧を小さくし、誘起電圧が大きいときにシステム電圧を大きくするように、インバータ46を、モータコントローラ44を介して制御し、超電導モータ26による回生量を調整する。より具体的には、図10に示すように、界磁電流制御部76は、システム電圧が誘起電圧(ωΦ)の増加に対して直線的に比例して大きくなるように制御している。このような図10に示す関係は、マップのデータとして、界磁電流制御部76に記憶させている。また、回転速度検出値から超電導モータ26の回転各速度ωが求められ、電流検出値から超電導界磁コイル50の磁束量が求められるため、回転速度検出値と電流検出値とから誘起電圧ωΦに対応するシステム電圧が設定される。なお、図10に示すように、誘起電圧がある値以上でシステム電圧が一定値になっているが、この一定値は、インバータ46を構成するスイッチング素子の耐電圧に対応して設定される。
【0069】
このような本実施の形態によれば、入力される超電導モータ26のトルク指令値に対応してインバータ46を制御するモータコントローラ44と、超電導界磁コイル50に流れる電流を検出する電流センサ100と、超電導モータ26の回転速度を検出する回転速度センサ102と、インバータ46の超電導界磁コイル50側の入力電圧であるシステム電圧を検出する電圧センサ84とを備える。また、界磁電流制御部76は、電流センサ100により検出された電流検出値と、回転速度センサ102により検出された回転速度検出値とから超電導モータ26が発生する誘起電圧を算出し、誘起電圧が小さいときにシステム電圧を小さくして、誘起電圧が大きいときにシステム電圧を大きくするように、インバータ46を制御して、超電導モータ26による回生量を調整する。このため、超電導界磁コイル50の界磁量が大きくなった場合や、超電導モータ26の回転速度が高くなった場合に、誘起電圧が高くなる場合でも、システム電圧が誘起電圧よりも過度に下回ることを防止でき、しかも超電導モータ26の回転速度が低くなり、かつ、超電導界磁コイル50の界磁量が小さい場合に、システム電圧を小さくして、スイッチング損失の低減をはかれる。また、超電導界磁コイル50の界磁量が大きくなった場合や、超電導モータ26の回転速度が高くなった場合に、システム電圧が高くなるので、弱め界磁制御を行う必要がなくなる。この場合、システム電圧が高くなるのでスイッチング損失は増大するが、弱め界磁制御を行う場合に比べてシステム全体の効率を高くできる。この結果、超電導界磁コイル50に貯蔵される貯蔵エネルギ量や、超電導モータ26の動作状態の変化にかかわらず、より有効にシステム全体の効率を高くできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図6に示した第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する図示及び説明を省略する。
【0070】
なお、電圧センサ84、電流センサ100、回転速度センサ102からの検出信号を直接モータコントローラ44に入力し、モータコントローラ44は、電流センサ100により検出された電流検出値と、回転速度センサ102により検出された回転速度検出値とから超電導モータ26が発生する誘起電圧を算出し、誘起電圧が小さいときにシステム電圧を小さくし、誘起電圧が大きいときにシステム電圧を大きくするように、インバータ46を制御することもできる。
【0071】
[第4の発明の実施の形態]
図11は、本発明に係る第4の実施の形態において、超電導モータ装置を示す、図3に対応する図である。本実施の形態の超電導モータ装置24cでは、ハイブリッド車両10(図1等参照)に過度に大きな二次電池を設けることなく、超電導界磁コイル50の貯蔵電力が零等、超電導モータ装置24cの貯蔵電力が低下した状態からでも、車両を安定して始動させるとともに、安定して通常走行させることができるようにすることを目的としている。すなわち、貯蔵電力が零である状態では、超電導界磁コイル50の界磁量も零になるので、何ら工夫しない場合には、超電導モータ26が力行も回生もいずれも行えなくなってしまい、超電導モータ装置24が正常な機能を発揮できない可能性がある。これに対して、本実施の形態では、上記の図1から図6に示した第1の実施の形態において、超電導モータ装置24cに、超電導界磁コイル50に流れる電流を検出する電流センサ100を設けている。また、超電導モータ装置24cに、インバータ46を制御するためのモータコントローラ44(図3等参照)を設けている。
【0072】
また、本実施の形態のハイブリッド車両10(図1等参照)は、エンジン12(図1等参照)を始動する始動装置30(図1参照)等の補機に電力を供給する12V等の低電圧の補機用二次電池98を設けている。また、補機用二次電池98は、昇圧コンバータであるDC−DCコンバータ104を介して、超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との少なくとも一方への電力の供給を可能に接続されている。また、ハイブリッド車両10は、第2切り替え手段である第2スイッチ106と、第2切り替え制御手段である、第2スイッチ制御部108とを備える。第2スイッチ106は、超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との間と、DC/DCコンバータ104との間に設けられ、超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との間と、DC/DCコンバータ104との間の断接を切り替える。第2スイッチ制御部108は、CPU、メモリ等を有するマイクロコンピュータであり、電流センサ100により検出された電流検出値が予め設定された所定電流値以下の場合に、第2スイッチ106を接続するように、第2スイッチ106の接続状態を制御する。このため、第2スイッチ制御部108は、超電導界磁コイル50を流れる電流が不足している場合に、補機用二次電池98から超電導界磁コイル50への電力の供給を可能とする。
【0073】
また、第2スイッチ制御部108は、電流センサ100により検出された電流検出値が予め設定された第2の所定電流値以上の場合に、第2スイッチ106を切断し、超電導界磁コイル50を流れる電流が十分である場合に、補機用二次電池98から超電導界磁コイル50への電力の供給を阻止する。
【0074】
このような本実施の形態によれば、エンジン12(図1等参照)を始動する始動装置に電力を供給する補機用二次電池98を備え、補機用二次電池98は、DC/DCコンバータ104を介して超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との少なくとも一方への電力の供給を可能に接続されている。このため、超電導モータ装置24での貯蔵電力が零になった場合に、超電導界磁コイル50の界磁がなくなり、超電導モータ26を力行または回生のいずれにも作動できなくなる傾向となるのにもかかわらず、補機用二次電池98により超電導界磁コイル50に界磁のための電流を流すことができる。この界磁のための電流である界磁電流は、回生動作を可能とするだけの小さいもので済む。そして、その後、エンジン12による車両走行開始後の回生制動により徐々に超電導界磁コイル50に貯蔵される貯蔵電力を大きくして、すなわち超電導界磁コイル50の界磁量を回復させて、通常の動作状態へ移行できる。界磁量が少ない場合には、回生電力も少ないが、界磁量が徐々に大きくなることにより、回生電力を急激に増大させて回復させることができる。このように最初の界磁量は少なくて済むので、超電導界磁コイル50に電流を送るための補機用二次電池98は、低電圧でよく、200V〜300V等の過度に大きな二次電池とする必要はない。このため、ハイブリッド車両10(図1等参照)に過度に大きな二次電池を設けることなく、超電導モータ装置24cの貯蔵電力が低下した場合でも、車両を安定して始動させるとともに、安定して通常走行させることができる。その他の構成および作用は、上記の図1から図6に示した第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する図示及び説明を省略する。
【0075】
なお、第2スイッチ106は、超電導電機子コイル66と超電導界磁コイル50との間と、DC/DCコンバータ104との間ではなく、補機用二次電池98とDC/DCコンバータ104との間の接続部に設けることもできる。また、界磁電流制御部76や、モータコントローラ44や、車両コントローラ32に、第2スイッチ制御部108の機能を持たせるようにして、第2スイッチ制御部108を省略することもできる。
【0076】
また、上記の各実施の形態では、超電導界磁コイル50をステータ52側に、超電導電機子コイル66をロータ54側に、それぞれ設けているが、超電導界磁コイル50をロータ側に、超電導電機子コイル66をステータ側に、それぞれ設けることもできる。
【0077】
また、上記の各実施の形態では、超電導モータ26に超電導電機子コイル66を設けているが、超電導電機子コイル66を、非超電導材料等の従来から一般的に使用されている材料製の電機子コイルとすることもできる。また、超電導材料として、常温で使用できる材料を使用する場合には、超電導界磁コイル50及び超電導電機子コイル66を含む部分を、寒材により温度低下させる必要がなくなる。また、超電導界磁コイル50を短絡する短絡路74に設ける超電導スイッチ78は、界磁電流制御部76により制御可能な別の切り替えスイッチとすることもできる。
【0078】
また、上記の各実施の形態において、車両コントローラ32とモータコントローラ44とを単一の制御ユニットとして、エンジン12からの信号、及び、アクセル開度センサ36(図2参照)及びブレーキペダルセンサ44(図2参照)からの信号を、直接単一の制御ユニットに入力して、制御ユニットがインバータ46と切り替え制御ユニット48とを制御する構成とすることもできる。また、超電導モータ装置24は、後側の車輪16(図1参照)の内側に少なくとも一部を設けて、後側の車輪16を駆動する構成とすることもできる。
【0079】
また、上記の各実施の形態では、2個の車輪14の内側のそれぞれに少なくとも超電導モータ装置24,24a、24b、24cの一部を設ける場合について説明したが、2個の車輪14(または16)の内側に超電導モータ装置24,24a、24b、24cを設けず、エンジンルーム34(図1)に1個の超電導モータ装置を設け、エンジン12(図1等参照)の動力と超電導モータ装置の動力とのうちのいずれかを、変速機18、差動装置20、車軸22等を介して車輪14に伝達するハイブリッド車両とすることもできる。このような構成の場合も、従来から一般的に知られているハイブリッド車両の構成に比べて、大きな二次電池を設けずに済む構造を実現できる。
【0080】
また、上記の各実施の形態では、電動車両がハイブリッド車両10である場合を説明したが、本発明の超電導モータ装置を設ける電動車両は、車輪14(または16)を駆動する駆動源として、単に超電導モータ装置のみを設け、エンジン12を使用しない電気自動車とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施の形態の超電導モータ装置を備える電動車両である、ハイブリッド車両の略構成図である。
【図2】第1の実施の形態のハイブリッド車両のブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の超電導モータ装置の略構成図である。
【図4】界磁電流制御部の構成要素を示す図である。
【図5】第1の実施の形態の超電導モータ装置の略断面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】従来から考えられているエンジンと走行用モータとのうち、一方を車輪の主駆動源として使用する従来型ハイブリッド車両の1例を示す図である。
【図8】本発明に係る第2の実施の形態において、超電導モータ装置を示す、図3に対応する図である。
【図9】本発明に係る第3の実施の形態において、超電導モータ装置を示す、図3に対応する図である。
【図10】第3の実施の形態において、システム電圧を制御する方法を説明するための誘起電圧とシステム電圧との関係を示す図である。
【図11】本発明に係る第4の実施の形態において、超電導モータ装置を示す、図3に対応する図である。
【符号の説明】
【0082】
10 ハイブリッド車両、12 エンジン、14,16 車輪、18 変速機(T/M)、20 差動装置、22 車軸、24,24a,24b,24c 超電導モータ装置、26 超電導モータ、28 発電機、30 始動装置、32 車両コントローラ、34 エンジンルーム、36 アクセル開度センサ、38 車速センサ、40 シフトセンサ、42 ブレーキペダルセンサ、44 モータコントローラ、46 インバータ、48 切り替え制御ユニット、50 超電導界磁コイル、52 ステータ、54 ロータ、56 回転軸、58 ケース、60 ロータ要素、64 ロータコア、66 超電導電機子コイル、68 インバータ制御一体ユニット、70 ユニットケース、72 ステータコア、74 短絡路、76 界磁電流制御部、77 コンデンサ、78 界磁電流制御部、80 モータ作動状態判定手段、82 切り替え制御手段、84 電圧センサ、88 エンジン、90 荷室、92 二次電池、94 モータジェネレータ装置(MG)、96 コントロールユニット(PCU)、98 補機用二次電池、100 電流センサ、102 回転速度センサ、104 DC/DCコンバータ、106 第2スイッチ、108 第2スイッチ制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導モータと、切り替え制御ユニットとを備え、
超電導モータは、
ステータとロータとのうちの一方に設けられて、回転磁界を生成する電機子コイルと、
ステータとロータとのうちの他方に設けられて、電機子コイルに対向配置された超電導界磁コイルと、を有し、
切り替え制御ユニットは、
入力される信号に対応して、超電導界磁コイルと電機子コイルとの間でのエネルギの受け渡しを可能とするとともに、電機子コイルと超電導界磁コイルとを相互作用させることにより、超電導モータの力行または回生を可能とする超電導モータ作動状態と、電機子コイルと超電導界磁コイルとの間でのエネルギの受け渡しを阻止するとともに、短絡路により超電導界磁コイルを短絡した状態で超電導界磁コイルに電流を循環させ続けることにより、エネルギを超電導状態で貯蔵するエネルギ貯蔵状態と、を切り替えることを特徴とする超電導モータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導モータ装置において、
超電導界磁コイルに並列に接続される短絡路を備え、
さらに、切り替え制御ユニットは、
短絡路に断接可能に設けられる切り替え手段と、
界磁電流制御部と、を備え、
界磁電流制御部は、
入力される信号に対応して回生制動時と力行時とモータ作動停止状態とのいずれであるかを判定するモータ作動状態判定手段と、
モータ作動状態判定手段の判定結果に対応して、切り替え手段の断接の切り替えを制御する切り替え制御手段と、を有することを特徴とする超電導モータ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の超電導モータ装置において、
超電導界磁コイルと電機子コイルとの間に接続されたインバータと、
インバータを制御するインバータ制御部と、
インバータの超電導界磁コイル側の入力電圧であるシステム電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、
切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、検出されたシステム電圧を一定または一定の範囲とするように、インバータを制御することを特徴とする超電導モータ装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の超電導モータ装置において、
超電導界磁コイルと電機子コイルとの間に接続されたインバータと、
インバータを制御するインバータ制御部と、
超電導界磁コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、を備え、
切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、電流検出手段により検出された電流検出値と、入力される超電導モータのトルク指令値とに対応してトルク電流目標値を決定し、トルク電流目標値に対応してインバータを制御することを特徴とする超電導モータ装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の超電導モータ装置において、
超電導界磁コイルと電機子コイルとの間に接続されたインバータと、
インバータを制御するインバータ制御部と、
超電導界磁コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、
超電導モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
インバータの超電導界磁コイル側の入力電圧であるシステム電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、
切り替え制御ユニットまたはインバータ制御部は、電流検出手段により検出された電流検出値と、回転速度検出手段により検出された回転速度検出値とから超電導モータが発生する誘起電圧を算出し、誘起電圧が小さいときにシステム電圧を小さくし、誘起電圧が大きいときにシステム電圧を大きくするように、インバータを制御することを特徴とする超電導モータ装置。
【請求項6】
超電導モータ装置を備え、
超電導モータ装置を駆動源として、左右車輪を駆動する電動車両であって、
超電導モータ装置は、請求項1から請求項5のいずれか1に記載した超電導モータ装置であることを特徴とする電動車両。
【請求項7】
請求項6に記載の電動車両において、
内燃機関を備え、
超電導モータ装置と内燃機関とのうち、少なくとも一方を主駆動源として、左右車輪を駆動し、ハイブリッド車両として使用されることを特徴とする電動車両。
【請求項8】
請求項7に記載の電動車両において、
超電導モータ装置は、左右車輪のそれぞれに対応して車両の左右両側に少なくとも1個ずつ設けられていることを特徴とする電動車両。
【請求項9】
請求項8に記載の電動車両において、
左右車輪をそれぞれ駆動する2個の超電導モータ装置の少なくとも一部は、左右車輪のそれぞれの内側に配置されていることを特徴とする電動車両。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか1に記載の電動車両において、
補機に電力を供給する二次電池を備え、
二次電池は、昇圧コンバータを介して電機子コイルと超電導界磁コイルとの少なくとも一方への電力の供給を可能に接続されていることを特徴とする電動車両。
【請求項11】
請求項10に記載の電動車両において、
電機子コイルと超電導界磁コイルとの間と、昇圧コンバータまたは二次電池との間に設けられ、電機子コイルと超電導界磁コイルとの間と、昇圧コンバータとの間の断接を切り替える第2切り替え手段と、
超電導界磁コイルに流れる電流を検出する電流検出手段と、
電流検出手段により検出された電流検出値が予め設定された所定電流値以下の場合に、第2切り替え手段を接続する第2切り替え制御手段と、を備え、
第2切り替え制御手段は、超電導界磁コイルを流れる電流が不足している場合に、二次電池から超電導界磁コイルへの電力の供給を可能とすることを特徴とする電動車両。
【請求項12】
請求項11に記載の電動車両において、
第2切り替え制御手段は、電流検出手段により検出された電流検出値が予め設定された第2の所定電流値以上の場合に、第2切り替え手段を切断し、超電導界磁コイルを流れる電流が十分である場合に、二次電池から超電導界磁コイルへの電力の供給を阻止することを特徴とする電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−219332(P2009−219332A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63477(P2008−63477)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】