車両のサスペンション装置
【課題】本発明は、サスペンションクロスメンバーと、コイルスプリングとを備えた車両のサスペンション装置において、サスペンション装置の組付け作業性を向上しつつ、車体組付け後のサスペンションクロスメンバーの剛性を維持して、車両の操安性を向上できる車両のサスペンション装置の提供を目的とする。
【解決手段】サスペンションクロスメンバー10の上方側には、コイルスプリング8を、車体組付け前にサスペンションクロスメンバー10にサブアッシー(仮組み固定)するサブアッシー部材20を設けている。
【解決手段】サスペンションクロスメンバー10の上方側には、コイルスプリング8を、車体組付け前にサスペンションクロスメンバー10にサブアッシー(仮組み固定)するサブアッシー部材20を設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のサスペンション装置に関し、特に、サスペンションクロスメンバーに支持されたロアアームと車体との間に、コイルスプリングを配設した車両のサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、サスペンションアーム等を支持するため、車体下部にサスペンションクロスメンバーを取付けることが知られている。また、車輪からの衝撃を緩和するため、ロアアームと車体との間にコイルスプリングを設置することが知られている。
【0003】
ところで、こうしたコイルスプリングを備えたサスペンション装置を、車体に組付ける場合には、予め、コイルスプリングを除いたサスペンション装置を車体に組付け、その後に、専用治具等で圧縮したコイルスプリングを組付ける場合がある。
【0004】
しかし、こうした組付け方法を採用すると、車体組立ラインのタクト(1工程当りの作業時間)が長くなってしまい、車体組立の効率化が図れないという問題がある。
【0005】
そこで、サスペンションクロスメンバーに、コイルスプリングの上部受け部を設けて、予め、コイルスプリングをサスペンションクロスメンバーにサブアッセンブリー(仮組み)することで、別途コイルスプリングを組付ける作業を行わなくてもよい構造を採用することが考えられる。
【0006】
しかし、こうした構造を採用すると、走行時にコイルスプリングから路面荷重をサスペンションクロスメンバーで受ける必要が生じるため、上部受け部を含めたサスペンションクロスメンバーの剛性を、路面からの衝撃荷重にも充分に耐えうる程度に高める必要があり、これにより、結果的にサスペンションクロスメンバーの重量が増加するといった問題が生じる。
【0007】
こうした問題に対しては、例えば、下記特許文献1に記載されているように、サスペンションクロスメンバーに対して上部受け部を、上下方向に着脱移動可能に構成して、コイルスプリングをサスペンションクロスメンバーにサブアッセンブリーしつつも、車体組付け後には、上部受け部を上昇させて、サスペンションクロスメンバーから切り離し、コイルスプリングを直接車体に支持させるサスペンション装置が知られている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−56311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、サスペンションクロスメンバーは、サスペンションアーム等を支持するため、ある程度の剛性が必要である。このサスペンションクロスメンバーの剛性が低下すると、サスペンションアームの取付け位置が変化して、車輪のアライメントが変化することになり、車両の操安性が悪化するおそれがあるからである。
【0010】
この点、前述の特許文献1記載の構造では、コイルスプリングを支持する上部受け部を、車体組付け後に、サスペンションクロスメンバーから切り離す構造であるため、サスペンションクロスメンバーの剛性が、車体組付け前に比して低下してしまい、車両の操安性が悪化するおそれがある。
【0011】
また、この特許文献1記載の構造では、サスペンション装置を車体に組付ける際に、別途上部受け部を上昇させる作業等が必要となり、サスペンション装置の組付け作業を簡便化することができない。
【0012】
そこで、本発明は、サスペンションクロスメンバーと、コイルスプリングとを備えた車両のサスペンション装置において、サスペンション装置の組付け作業性を向上しつつ、車体組付け後のサスペンションクロスメンバーの剛性を維持して、車両の操安性を向上できる車両のサスペンション装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による車両のサスペンション装置は、サスペンションクロスメンバーに支持されたロアアームと車体との間にコイルスプリングを配設した車両のサスペンション装置であって、前記サスペンションクロスメンバーを、少なくとも前後左右の四箇所に設けた取付け部で、車体下部に組付けるように構成して、該取付け部のうち前後二箇所の取付け部同士を連結し、中間位置に前記コイルスプリングの上端を支持するスプリング受け部を備える仮組み部材を設け、車体組付け時に、前記コイルスプリングの上端を、スプリング受け部を介して車体に当接するように構成したものである。
【0014】
上記構成によれば、仮組み部材を設けることで、車体組付け前にコイルスプリングを、サスペンションクロスメンバーを含めたサスペンション装置にサブアッセンブリーすることができる。そして、このサブアッセンブリーしたサスペンション装置を、下方から車体に組付けることにより、コイルスプリングの上端が車体で支持されることになる。
このため、サスペンションクロスメンバーを車体下部に組付けるだけで、コイルスプリングを含めたサスペンション装置を組付けることができ、組付け作業をより簡略化できる。
また、サスペンションクロスメンバーとは、異なる別の仮組み部材を用いてコイルスプリングをサブアッセンブリーしているため、サスペンションクロスメンバーの剛性が車体組付け後に低下することもない。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションクロスメンバーを、ラバー部材を介して車体に組付けており、前記仮組み部材を、前記車体とラバー部材との間に介装したものである。
上記構成によれば、仮組み部材を、車体とラバー部材との間に介装しているため、仮組み部材で当接支持されるコイルスプリングからの入力荷重が、直接車体側に伝達されることになる。
このため、コイルスプリングから車体への入力荷重と、ラバー部材を介して車体に入力されるサスペンションクロスメンバーからの入力荷重が、それぞれ独立して車体に伝達され、いわゆる、入力分離を図ることができる。
よって、コイルスプリングの弾性力の調整(チューニング)と、ラバー部材の弾性力の調整(チューニング)が容易になり、車両のサスペンション性能をより高めることができる。
なお、前述の「車体とラバー部との間」とは、弾性支持モデルにおける「間」であって、具体的な配置構造における「間」を意味するものではない。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記左右の仮組み部材を車幅方向に延びて連結する連結部材を設けたものである。
上記構成によれば、左右の仮組み部材を車幅方向に延びる連結部材で連結することで、左右の仮組み部材が車幅方向で一体となり、この一体となった仮組み部材によって、前後左右の四箇所の取付け部を連結することができる。
よって、車体及びサスペンションクロスメンバーの車幅方向の剛性を高めることができ、全体として車体剛性を高めることができ、結果的にサスペンション装置の支持剛性も高めることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記連結部材を、車体前後方向に傾斜するように設けたものである。
上記構成によれば、連結部材が車体前後方向で傾斜しているため、連結部材の仮組み部材の結合力が捩じれ方向でも高まることになる。
よって、車体及びサスペンションクロスメンバーの捩じれ剛性を高めることができ、さらに車体剛性、サスペンション装置の支持剛性を高めることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションクロスメンバーを、フロアパネルの下方で車体前後方向に延びる左右一対の車体フレームに組付け、前記連結部材を、該左右一対の車体フレームを架渡すように設置したものである。
上記構成によれば、左右一対の車体フレームに対して連結部材を、架渡すように設置していることで、車体フレームの倒れ方向の変形を抑制できる。
よって、車体フレームの剛性を高めることができ、サスペンション装置の支持剛性を確実に高めることができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記連結部材を、前記サスペンションクロスメンバーのラバー部材の上側位置に設けたものである。
上記構成によれば、ラバー部材の上側位置に連結部材を設けたため、連結部材を、車体フレームに近接した位置で連結固定することができる。
よって、車体フレームの剛性を確実に高めることが可能となり、車体剛性を高めることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記連結部材を、前記サスペンションクロスメンバーのラバー部材の下側位置に設けたものである。
上記構成によれば、ラバー部材の下側位置に連結部材を設けたため、ラバー部材の上側を車体、下側を連結部材(仮組み部材)で、それぞれ支持することができ、ラバー部材を両持ち支持で支持することができる。
よって、サスペンションクロスメンバーを取り付ける締結ボルト等の倒れを抑制できるため、さらに、サスペンション装置の支持剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、サスペンションクロスメンバーを車体下部に組付けるだけで、コイルスプリングを含めたサスペンション装置を組付けることができ、組付け作業をより簡略化できる。
また、サスペンションクロスメンバーとは、異なる別の仮組み部材を用いてコイルスプリングをサブアッセンブリーしているため、サスペンションクロスメンバーの剛性が車体組付け後に低下することもない。
よって、サスペンションクロスメンバーと、コイルスプリングとを備えた車両のサスペンション装置において、サスペンション装置の組付け作業性を向上しつつ、車体組付け後のサスペンションクロスメンバーの剛性を維持して、車両の操安性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の実施形態を、以下図面に基づいて詳述する。
図1は第一実施形態の車両のサスペンション装置を車体構造を含めて示した全体平面図、図2はこのサスペンション装置の全体側面図、図3はサブアッシー部材を示した平面図である。なお、図1、図2では右側のサスペンション装置のみを示しているが、左側のサスペンション装置も同様に、左右対称構造で構成している。
【0023】
本実施形態のサスペンション装置1は、図1に示すように、後輪Tを懸架するリアサスペンションであり、複数のリンクで後輪Tを支持する、いわゆるマルチリンク式のサスペンション装置である。
【0024】
具体的に、車輪(後輪)Tを支持するホイールサポート2は、車輪Tの車体前方側で車体前後方向に延びるトレーリングアーム3と、車幅方向に延びて車輪上方側に配置されるアッパーアーム4と、車幅方向に延びて車輪下方側前部に配置されるフロントロアアーム5と、車幅方向に延びて車輪下方側後部に配置されるリヤロアアーム6とによって、上下方向に揺動自在に支持されている。
【0025】
そして、このホイールサポート2は、車輪上方側で上下方向に延びるショックアブソーバー7と、リヤロアアーム6と車体Bとの間で上下方向に延びるコイルスプリング8とによって、路面からの衝撃を緩衝するようにして、車体Bに懸架されている。
【0026】
なお、9は、車幅方向に延びて、リアデフ(図示せず)から後輪Tに駆動力を伝達するドライブシャフトである。
【0027】
これらアッパーアーム4等のサスペンションアーム(4,5,6)を車体側で支持するように、サスペンション装置1の車幅方向内方には、サスペンションクロスメンバー10を設置している。
【0028】
このサスペンションクロスメンバー10は、車幅方向に延びる略円筒形状のフロントメンバー部11と、このフロントメンバー部11の両側部から車両後方側に延びて車幅外方側に屈曲する略円筒形状のサイドメンバー部12,12と、このサイドメンバー部12,12の屈曲部間を車幅方向に延びて連結する矩形断面のリアメンバー部13と、によって構成した、平面視「略鳥居形状」の枠体で構成している。
【0029】
このサスペンションクロスメンバー10は、フロントメンバー部11両側端のフロントマウント部14,14と、サイドメンバー部12、12両側端のリヤマウント部15,15の、前後左右の合計四箇所で、車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームB1,B1に、締結固定されている。
【0030】
このフロントマウント部14とリヤマウント部15は、共に、上下方向に延びる軸心L1、L2(図2参照)を有する円筒型マウントで構成しており、外筒部材15a(14a)と、内筒部材15b(14b)と、この間に介装したラバー部材15c(14c)とを備えている(図5参照)。
【0031】
このように構成することで、外筒部材15aがサスペンションクロスメンバー10側からサスペンション荷重を受けても、内筒部材15bへは、直接伝達されることがない。このため、サスペンション荷重が車体側(B1)に直接伝達されることはない。
【0032】
そして、このサスペンションクロスメンバー10の上方側には、コイルスプリング8を、車体組付け前にサスペンションクロスメンバー10にサブアッシー(仮組み固定)するサブアッシー部材20を設けている。
【0033】
このサブアッシー部材20は、図3に示すように、左右一対で車体前後方向に延びる仮組み固定部21A,21Bと、車幅方向に延びて左右の仮組み固定部21A,21Bを、中間位置で連結する中央連結部22と、車体前後方向に傾斜して延び、左右の仮組み固定部21A,21Bを前端位置と後端位置でそれぞれ連結する交差する二本の傾斜連結部23A,23Bと、左右の仮組み固定部21A,21Bの後端位置を連結する後端連結部24と、を備えている。
【0034】
以下、これら各構成要素について、詳述する。
前述の仮組み固定部21A,21Bは、中間位置に後述するスプリング受け部25を形成した長板状のガセット部材によって構成しており、図2に示すように、その前側部分を大きく下方側に屈曲するように形成している。これは、アッパーアーム4の揺動軌跡に干渉しないようにするためである。
【0035】
そして、仮組み固定部21A,21Bの前端と後端には、それぞれサスペンションクロスメンバー10のフロントマウント部14とリヤマウント部15に対応するように、ボルト挿通穴26,26,27,27を形成している(図1参照)。
【0036】
このボルト挿通穴26,27の詳細構造について、図4、図5を利用して説明する。
図4は左側後部のボルト挿通穴付近を示したサブアッシー部材の傾斜図、図5は図4のA−A線矢視断面に相当する縦断面図である。
【0037】
ボルト挿通穴27は、仮組み固定部21Aの平板部28に形成されており、リヤマウント部15の内筒部材15bが挿通可能な径で穿設している。
【0038】
そして、この挿通される内筒部材15bの上端には、外周側に拡張したカシメ部29を三箇所形成することで、この内筒部材15bをボルト挿通穴27にカシメ固定している。
【0039】
すなわち、図5に示すように、リヤマウント部15から上方に突出する内筒部材15bを、ボルト挿通穴27に挿通して、この上端を外方側にカシメることで、リヤマウント部15をボルト挿通穴27に係止固定しているのである。
【0040】
このため、サスペンションクロスメンバー10とサブアッシー部材20とを、このボルト挿通穴27を利用して一体化することができ、また、このボルト挿通穴を設けたことで、リヤマウント部15を締結固定する締結ボルト30(図5参照)で、サブアッシー部材20もリヤサイドフレームB1に締結固定することができる。
【0041】
なお、このカシメ部29のカシメ作業は、コイルスプリング8を含めたサスペンション装置1に仮組み固定する際に行なう。また、この固定方法もカシメ固定に限定されず、例えば、溶接等であってもよい。
【0042】
仮組み固定部21A,21Bの中間位置には、図3に示すように、平面視略円形状に膨出したスプリング受け部25を設けている。
【0043】
このスプリング受け部の詳細構造について、図6、図7を利用して説明する。
図6は左側のスプリング受け部付近を示したサブアッシー部材の傾斜図、図7は図6のB−B線矢視断面に相当する縦断面図である。
【0044】
スプリング受け部25は、図6に示すように、前後方向に延びる断面ハット状の凸部31を、前述のように略円形状に膨らませて、略キャップ形状となるように形成している。
【0045】
そして、このスプリング受け部25の下面において、コイルスプリング8の上端を受けることで(図2参照)、コイルスプリング8を仮組み状態で維持できるように構成している。
【0046】
スプリング受け部25の上面には、薄い円形状のラバー製シート部材32を貼設している。
このシート部材32を貼設することで、図7に示すように、車体組付け時に、スプリング受け部25がリヤサイドフレームB1に当接しても、コイルスプリング8の衝撃等で、リヤサイドフレームB1とスプリング受け部25との間に、異音が生じないようにしている。
【0047】
また、図6に示すように、スプリング受け部25とシート部材32の中央には、円形の貫通穴33,34を形成している。
【0048】
この貫通穴33,34は、図7に示すように、リヤサイドフレームB1に下方に突出するように設けた位置決めピン35を、この貫通穴33,34を挿通させることで、コイルスプリング8の組付け位置を規定するために設けている。
【0049】
こうして、スプリング受け部25は、仮組み固定時にコイルスプリング8を支持すると共に、車体組付け時には、コイルスプリング8の組付け位置も規定するように構成している。
【0050】
このように、仮組み固定部21A,21Bを構成することで、サスペンション装置の仮組み状態で、コイルスプリング8を車体組付け時と同様に支持することができる。
【0051】
前述の中央連結部22は、図6に示すように、断面略ハット状のメンバー部材によって構成しており、その側端部22aを、前述のスプリング受け部25に接合している。
【0052】
具体的には、スプリング受け部25の側壁面25aに、中央連結部22の側端部22aを突き当てて溶接することで、接合固定している。
【0053】
このように、中央連結部22を接合することで、左右のスプリング受け部25,25を連結して、左右のスプリング受け部25,25の位置(左右の間隔)や傾斜角度等を、常に一定に保っている。
【0054】
前述の傾斜連結部23A,23Bは、それぞれ断面円柱状のロッド部材によって構成しており、その両端を、左右の仮組み固定部21A,21Bに、接合固定している。この接合位置は、それぞれ対角に位置するボルト挿通穴26,27同士を、連結する位置関係で接合している。
【0055】
具体的には、図4に示すように、ロッド部材(23B)の両側端部に、上下面を切削加工した平板状の接合部23Baを設け、この接合部23Baをボルト挿通穴27近傍の平板部28に、アーク溶接等で接合固定することで、傾斜連結部23Bを連結固定している。
【0056】
このように、傾斜連結部23A,23Bを構成することで、左右の仮組み固定部21A,21Bの位置を、常に一定に保つことができる。また、左右の仮組み固定部21A,21Bの捩じれ方向の動きについても規制することができる。
【0057】
前述の後端連結部24は、断面円柱状のロッド部材によって構成しており、その両側端を、左右の仮組み固定部21A,21Bに接合固定している。この接合位置は、後側のボルト挿通穴27,27同士を連結する位置関係で接合している。
【0058】
この後端連結部24の構造も、図4に示すように、ロッド部材(24)の端部に平板状の接合部24aを設け、この接合部24aをボルト挿通穴27近傍の平板部28に接合固定している。
【0059】
このように、後端連結部24を構成することで、後側のボルト挿通穴27,27同士の位置を確実に規定することができる。また、左右の仮組み固定部21A,21Bの位置も確実に規定することができる。
【0060】
以上のようにして、仮組み固定部21A,21Bと、中央連結部22と、二本の傾斜連結部23A,23Bと、後端連結部24とによってサブアッシー部材20を構成している。
特に、図3に示すように、仮組み固定部21A,21Bと中央連結部22とで平面視略H形状を形成するように構成し、さらに、二本の傾斜連結部23A,23Bを平面視略X形状を形成するように構成することで、サブアッシー部材20を、ある程度剛性のあるものとして構成している。
【0061】
もっとも、コイルスプリング8の仮組み状態を保持できればよいため、さほど強固な剛性は有さず、重量も軽量に構成できる。
【0062】
次に、図8を利用して、このサブアッシー部材20を用いたサスペンション装置の組付け方法について説明する。図8は、サスペンション装置の組付け方法のフローチャートである。
【0063】
まず初めに、S1では、サスペンションクロスメンバー10にリヤロアアーム6を組付けて、このリヤロアアーム6にコイルスプリング8を載置する。この作業は、車体組立ラインとは別のサブラインにおいて行なう。また、このS1では、その他のサスペンションアーム(4,5)やホイールサポート2等、他の構成要素も組付ける。
【0064】
その後、S2では、コイルスプリング8上方にサブアッシー部材20が位置するように仮組み固定を行なう。すなわち、サブアッシー部材20のスプリング受け部25でコイルスプリング8上端を受けて、サブアッシー部材20のボルト挿通穴26,27に、フロントマウント部14とリヤマウント部15の内筒部材14b,15bをカシメることで、サブアッシー部材20をサスペンションクロスメンバー10に係止固定するのである。
【0065】
このように、サブアッシー部材20を係止固定することで、コイルスプリング8を他のサスペンション装置と一体化(サブアッセンブリー)することができる。こうして、一体化することで、以下の組付け作業を、容易に行なうことができる。なお、このS2も、サブラインにおいて行なう。
【0066】
さらにその後、S3では、仮組み固定(サブアッセンブリー)したサスペンション装置を車体下方から上昇させる。これにより、コイルスプリング8を仮組みしたサスペンション装置を単に上昇させていくだけで、車体下部にサスペンション装置を組付けることが可能となる。この作業以降は、車体組立ラインにおいて行なう。
【0067】
次に、S4では、サブアッシー部材20のスプリング受け部25をリヤサイドフレームB1に当接させる。これにより、コイルスプリング8の上端がサブアッシー部材20だけでなく、車体側部材のリヤサイドフレームB1によっても支持されることになる。
【0068】
そして最後に、S5では、サスペンションクロスメンバー10のマウント部14,15をリヤサイドフレームB1に締結固定する。これにより、サスペンションクロスメンバー10とサブアッシー部材20をリヤサイドフレームB1に固定することができ、サスペンション装置1を車体下部へ組付ける組付け作業が完了する。
【0069】
こうして、サブアッシー部材20を用いてサスペンション装置を車体へ組付けることで、コイルスプリング8をその後の別工程で組付ける必要がないため、車体組立ラインの作業を簡略化することができ、車体組立ラインのタクトを短縮化できる。
【0070】
特に、仮組み固定したサスペンション装置1を、単に上昇させるだけで、コイルスプリング8の当接支持を、サブアッシー部材20からリヤサイドフレームB1に変化させるため、サスペンション装置1全体の組付け作業を、より容易に行なうことができる。
【0071】
また、サブアッシー部材20は、車体組付け後には、コイルスプリング8からの衝撃荷重を直接支持しないため、剛性をさほど高める必要がなく、比較的軽量に構成することができる。
【0072】
次に、このように構成した第一実施形態の車両のサスペンション装置の作用・効果について、説明する。
この実施形態の車両のサスペンション装置1は、サスペンションクロスメンバー10を、前後左右の四箇所に設けたフロントマウント部14とリヤマウント部15で、車体下部に組付けるように構成して、このフロントマウント部14とリヤマウント部15のうち前後二箇所のマウント部同士を連結し、中間位置にコイルスプリング8の上端を支持するスプリング受け部25を備えるサブアッシー部材20を設け、車体組付け時に、コイルスプリング8の上端を、スプリング受け部25を介してリヤサイドフレームB1に当接支持させるように構成している。
【0073】
これにより、単に、サブアッシー部材20を設けるだけで、車体組付け前にコイルスプリング8を、サスペンションクロスメンバー10を含めたサスペンション装置1にサブアッセンブリーすることができる。
【0074】
そして、このサブアッセンブリーしたサスペンション装置1を、下方から車体に組付けることにより、コイルスプリング8が車体側部材で支持されることになる。
このため、サスペンションクロスメンバー10を車体下部に組付けるだけで、コイルスプリング8を含めたサスペンション装置1を組付けることができ、組付け作業をより簡略化できる。
また、サスペンションクロスメンバー10とは、異なる別のサブアッシー部材20を用いてコイルスプリング8をサブアッセンブリーしているため、サスペンションクロスメンバー10の剛性が車体組付け後に低下することもない。
【0075】
よって、サスペンションクロスメンバー10と、コイルスプリング8とを備えた車両のサスペンション装置1において、サスペンション装置1の組付け作業性を向上しつつ、車体組付け後のサスペンションクロスメンバー10の剛性を維持して、車両の操安性を向上できる。
【0076】
また、この実施形態では、サスペンションクロスメンバー10を、ラバー部材14c,15cを備えたフロントマウント部14、リヤマウント部15を介してリヤサイドフレームB1に組付けて、サブアッシー部材20を、リヤサイドフレームB1とラバー部材14c,15cとの間の内筒部材14b,15bに固定している。
【0077】
これにより、サブアッシー部材20は、車体側部材(B1)とラバー部材14c,15cとの間に介装されることになるため、コイルスプリング8からの入力荷重(路面からの衝撃荷重)は、ラバー部材14c,15cを介することなく、直接車体B側に伝達されることになる。
このため、コイルスプリング8からの入力荷重と、サスペンションクロスメンバー10からの入力荷重は、それぞれ独立して車体Bに伝達されることになり、いわゆる、入力分離を図ることができる。
よって、コイルスプリング8の弾性力の調整(チューニング)と、マウント部14,15のラバー部材14c,15cの弾性力の調整(チューニング)が容易になり、車両のサスペンション性能をより高めることができる。
【0078】
具体的には、コイルスプリング8の弾性力は、上下方向の路面荷重に対応するように設定すればよく、ラバー部材14c,15cの弾性力は、サスペンションクロスメンバー10からの振動に対応するように設定すればよい。
【0079】
また、この実施形態では、サブアッシー部材20に、左右の仮組み固定部21A,21Bを車幅方向に延びて連結する中央連結部22を設けている。
これにより、サブアッシー部材20の左右の仮組み固定部21A,21Bが車幅方向で一体となり、この一体となった仮組み固定部21A,21Bによって、前後左右のフロントマウント部14とリヤマウント部15を連結することができる。
よって、車体B及びサスペンションクロスメンバー10の車幅方向の剛性を高めることができ、全体として、車体剛性を高めることができ、結果的にサスペンション装置1の支持剛性も高めることができる。
【0080】
また、この実施形態では、サブアッシー部材20に、車体前後方向に傾斜する傾斜連結部23A,23Bを設けている。
これにより、サブアッシー部材20の仮組み固定部21A,21Bの結合力が捩じれ方向でも高まることになる。
よって、車体及びサスペンションクロスメンバー10の捩じれ剛性を高めることができ、さらに車体剛性、サスペンション装置1の支持剛性を高めることができる。
【0081】
また、この実施形態では、サスペンションクロスメンバー10を、フロアパネルB2(図5参照)下方で、左右一対のリヤサイドフレームB1,B1に組付け、傾斜連結部23A,23Bと後端連結部24を、この左右一対のリヤサイドフレームB1,B1を架渡すように設置している。
これにより、傾斜連結部23A,23Bと後端連結部24によって、リヤサイドフレームB1の倒れ方向の変形を抑制できる。
よって、リヤサイドフレームB1の剛性を高めることができ、サスペンション装置1の支持剛性を、確実に高めることができる。
【0082】
また、この実施形態では、サブアッシー部材20を、サスペンションクロスメンバー10のマウント部14,15よりも上側位置に設けている。
これにより、サブアッシー部材20を、リヤサイドフレームB1に、より近接した位置で連結固定することができる。
よって、リヤサイドフレームB1の剛性を確実に高めることが可能となり、サブアッシー部材20を利用して車体剛性を高めることができる。
【0083】
次に、第二実施形態について、図9、図10、図11を利用して説明する。図9は第二実施形態の車両のサスペンション装置を車体構造を含めて示した全体平面図、図10はサスペンション装置の全体側面図、図11はA−A線矢視断面に相当する縦断面図である。なお、第一実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
この実施形態は、第一実施形態と異なり、サブアッシー部材120を、サスペンションクロスメンバー10の下方側に設置している。
具体的には、仮組み固定部121A,121Bの前端と後端の平板部128,128を、フロントマウント部14とリヤマウント部15の下方側に位置させて、傾斜連結部123A,123Bと後端連結部124を、サスペンションクロスメンバー10下方側に設置している(図9、図10参照)。
【0085】
もっとも、スプリング受け部125,125は、コイルスプリング8の上方側に位置させる必要があるために、本実施形態のサブアッシー部材120では、図10に示すように、前部と後部を、下方に大きく屈曲するように形成している。
【0086】
また、中央連結部122も、サスペンションクロスメンバー10よりも上方側に位置するように設置している。
【0087】
こうして、スプリング受け部125と中央連結部122を、上方側に設置することで、サブアッシー部材20をサスペンションクロスメンバー10より下方側に設置したとしても、コイルスプリング8を仮組み状態で確実に保持することができる。
【0088】
このように、サブアッシー部材120を、サスペンションクロスメンバー10の下方側に設置することによって、仮組み固定部121A,121Bは、フロントマウント部14とリヤマウント部15に対して、車体下方側から組み付けられることになる。
【0089】
このため、図11に示すように、リヤマウント部15の内筒部材15bは、上部が車体側のリヤサイドフレームB1に支持され、下部がボルト挿通穴127にカシメ固定されて仮組み固定部121Aに支持されることで、両持ち支持されることになる。
【0090】
よって、内筒部材15bの「倒れ」等が抑制され、サスペンションクロスメンバー10を取り付ける締結ボルト30の倒れを抑制することができる。
【0091】
また、仮組み固定部121A,121Bを、フロントマウント部14とリヤマウント部15の下側に設置することで、コイルスプリング8を仮組み固定した際の、コイルスプリング8の反発力によって生じる仮組み固定部21A,21Bの上向きの動きを、各マウント部の外筒部材14a,15aで抑えることができる。
【0092】
このため、ラバー部材15cに圧入されている内筒部材15bの抜けを防止することができ、コイルスプリング8の仮組み状態も確実に維持できる。
【0093】
以上のように、この実施形態では、サブアッシー部材20を、サスペンションクロスメンバー10の各マウント部14,15の下側位置に設けている。
これにより、各マウント部14,15を、上側を車体(B1)、下側を仮組み固定部121A,121Bで、それぞれ支持することになり、両持ち支持で支持することができる。
よって、サスペンションクロスメンバー10を、取り付ける締結ボルト30等の倒れを抑制できるため、さらに、サスペンション装置1の支持剛性を高めることができる。
【0094】
以上、本発明の構成と、前述の実施形態の対応において、
この発明の取付け部は、実施形態のフロントマウント部14、リヤマウント部15に対応し、
以下、同様に、
仮組み部材は、仮組み固定部21A,21B,121A,121Bに対応し、
連結部材は、中央連結部22、傾斜連結部23A,23B、後端連結部24、中央連結部122、傾斜連結部123A,123B、後端連結部124、に対応し、
車体フレームは、リヤサイドフレームB1に対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではない。
例えば、サブアッシー部材の中央連結部、傾斜連結部、後端連結部等を、円筒パイプやハット型メンバー等で構成しても良いし、また、各部材の溶接固定を、締結固定等で行なってもよい。
【0095】
さらに、仮組み固定部も、こうしたガセット部材に限定されるものではなく閉断面形状のメンバー部材等で構成してもよい。また、中央連結部、傾斜連結部、後端連結部を備えることなく、左右の仮組み固定部だけでサブアッシー部材を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】第一実施形態の車両のサスペンション装置を車体構造を含めて示した全体平面図。
【図2】第一実施形態のサスペンション装置の全体側面図。
【図3】サブアッシー部材を示した平面図。
【図4】左側後部のボルト挿通穴付近を示したサブアッシー部材の傾斜図。
【図5】図4のA−A線矢視断面に相当する縦断面図。
【図6】左側のスプリング受け部付近を示したサブアッシー部材の傾斜図。
【図7】図6のB−B線矢視断面に相当する縦断面図。
【図8】サスペンション装置の組付け方法のフローチャート
【図9】第二実施形態の車両のサスペンション装置を車体構造を含めて示した全体平面図。
【図10】第二実施形態のサスペンション装置の全体側面図。
【図11】図4のA−A線矢視断面に相当する縦断面図。
【符号の説明】
【0097】
1…サスペンション装置
6…リヤロアアーム
8…コイルスプリング
10…サスペンションクロスメンバー
14…フロントマウント部
15…リヤマウント部
20,120…サブアッシー部材
21A、21B、121A、121B…仮組み固定部
25,125…スプリング受け部
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のサスペンション装置に関し、特に、サスペンションクロスメンバーに支持されたロアアームと車体との間に、コイルスプリングを配設した車両のサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、サスペンションアーム等を支持するため、車体下部にサスペンションクロスメンバーを取付けることが知られている。また、車輪からの衝撃を緩和するため、ロアアームと車体との間にコイルスプリングを設置することが知られている。
【0003】
ところで、こうしたコイルスプリングを備えたサスペンション装置を、車体に組付ける場合には、予め、コイルスプリングを除いたサスペンション装置を車体に組付け、その後に、専用治具等で圧縮したコイルスプリングを組付ける場合がある。
【0004】
しかし、こうした組付け方法を採用すると、車体組立ラインのタクト(1工程当りの作業時間)が長くなってしまい、車体組立の効率化が図れないという問題がある。
【0005】
そこで、サスペンションクロスメンバーに、コイルスプリングの上部受け部を設けて、予め、コイルスプリングをサスペンションクロスメンバーにサブアッセンブリー(仮組み)することで、別途コイルスプリングを組付ける作業を行わなくてもよい構造を採用することが考えられる。
【0006】
しかし、こうした構造を採用すると、走行時にコイルスプリングから路面荷重をサスペンションクロスメンバーで受ける必要が生じるため、上部受け部を含めたサスペンションクロスメンバーの剛性を、路面からの衝撃荷重にも充分に耐えうる程度に高める必要があり、これにより、結果的にサスペンションクロスメンバーの重量が増加するといった問題が生じる。
【0007】
こうした問題に対しては、例えば、下記特許文献1に記載されているように、サスペンションクロスメンバーに対して上部受け部を、上下方向に着脱移動可能に構成して、コイルスプリングをサスペンションクロスメンバーにサブアッセンブリーしつつも、車体組付け後には、上部受け部を上昇させて、サスペンションクロスメンバーから切り離し、コイルスプリングを直接車体に支持させるサスペンション装置が知られている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−56311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、サスペンションクロスメンバーは、サスペンションアーム等を支持するため、ある程度の剛性が必要である。このサスペンションクロスメンバーの剛性が低下すると、サスペンションアームの取付け位置が変化して、車輪のアライメントが変化することになり、車両の操安性が悪化するおそれがあるからである。
【0010】
この点、前述の特許文献1記載の構造では、コイルスプリングを支持する上部受け部を、車体組付け後に、サスペンションクロスメンバーから切り離す構造であるため、サスペンションクロスメンバーの剛性が、車体組付け前に比して低下してしまい、車両の操安性が悪化するおそれがある。
【0011】
また、この特許文献1記載の構造では、サスペンション装置を車体に組付ける際に、別途上部受け部を上昇させる作業等が必要となり、サスペンション装置の組付け作業を簡便化することができない。
【0012】
そこで、本発明は、サスペンションクロスメンバーと、コイルスプリングとを備えた車両のサスペンション装置において、サスペンション装置の組付け作業性を向上しつつ、車体組付け後のサスペンションクロスメンバーの剛性を維持して、車両の操安性を向上できる車両のサスペンション装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明による車両のサスペンション装置は、サスペンションクロスメンバーに支持されたロアアームと車体との間にコイルスプリングを配設した車両のサスペンション装置であって、前記サスペンションクロスメンバーを、少なくとも前後左右の四箇所に設けた取付け部で、車体下部に組付けるように構成して、該取付け部のうち前後二箇所の取付け部同士を連結し、中間位置に前記コイルスプリングの上端を支持するスプリング受け部を備える仮組み部材を設け、車体組付け時に、前記コイルスプリングの上端を、スプリング受け部を介して車体に当接するように構成したものである。
【0014】
上記構成によれば、仮組み部材を設けることで、車体組付け前にコイルスプリングを、サスペンションクロスメンバーを含めたサスペンション装置にサブアッセンブリーすることができる。そして、このサブアッセンブリーしたサスペンション装置を、下方から車体に組付けることにより、コイルスプリングの上端が車体で支持されることになる。
このため、サスペンションクロスメンバーを車体下部に組付けるだけで、コイルスプリングを含めたサスペンション装置を組付けることができ、組付け作業をより簡略化できる。
また、サスペンションクロスメンバーとは、異なる別の仮組み部材を用いてコイルスプリングをサブアッセンブリーしているため、サスペンションクロスメンバーの剛性が車体組付け後に低下することもない。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションクロスメンバーを、ラバー部材を介して車体に組付けており、前記仮組み部材を、前記車体とラバー部材との間に介装したものである。
上記構成によれば、仮組み部材を、車体とラバー部材との間に介装しているため、仮組み部材で当接支持されるコイルスプリングからの入力荷重が、直接車体側に伝達されることになる。
このため、コイルスプリングから車体への入力荷重と、ラバー部材を介して車体に入力されるサスペンションクロスメンバーからの入力荷重が、それぞれ独立して車体に伝達され、いわゆる、入力分離を図ることができる。
よって、コイルスプリングの弾性力の調整(チューニング)と、ラバー部材の弾性力の調整(チューニング)が容易になり、車両のサスペンション性能をより高めることができる。
なお、前述の「車体とラバー部との間」とは、弾性支持モデルにおける「間」であって、具体的な配置構造における「間」を意味するものではない。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記左右の仮組み部材を車幅方向に延びて連結する連結部材を設けたものである。
上記構成によれば、左右の仮組み部材を車幅方向に延びる連結部材で連結することで、左右の仮組み部材が車幅方向で一体となり、この一体となった仮組み部材によって、前後左右の四箇所の取付け部を連結することができる。
よって、車体及びサスペンションクロスメンバーの車幅方向の剛性を高めることができ、全体として車体剛性を高めることができ、結果的にサスペンション装置の支持剛性も高めることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記連結部材を、車体前後方向に傾斜するように設けたものである。
上記構成によれば、連結部材が車体前後方向で傾斜しているため、連結部材の仮組み部材の結合力が捩じれ方向でも高まることになる。
よって、車体及びサスペンションクロスメンバーの捩じれ剛性を高めることができ、さらに車体剛性、サスペンション装置の支持剛性を高めることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションクロスメンバーを、フロアパネルの下方で車体前後方向に延びる左右一対の車体フレームに組付け、前記連結部材を、該左右一対の車体フレームを架渡すように設置したものである。
上記構成によれば、左右一対の車体フレームに対して連結部材を、架渡すように設置していることで、車体フレームの倒れ方向の変形を抑制できる。
よって、車体フレームの剛性を高めることができ、サスペンション装置の支持剛性を確実に高めることができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記連結部材を、前記サスペンションクロスメンバーのラバー部材の上側位置に設けたものである。
上記構成によれば、ラバー部材の上側位置に連結部材を設けたため、連結部材を、車体フレームに近接した位置で連結固定することができる。
よって、車体フレームの剛性を確実に高めることが可能となり、車体剛性を高めることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記連結部材を、前記サスペンションクロスメンバーのラバー部材の下側位置に設けたものである。
上記構成によれば、ラバー部材の下側位置に連結部材を設けたため、ラバー部材の上側を車体、下側を連結部材(仮組み部材)で、それぞれ支持することができ、ラバー部材を両持ち支持で支持することができる。
よって、サスペンションクロスメンバーを取り付ける締結ボルト等の倒れを抑制できるため、さらに、サスペンション装置の支持剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、サスペンションクロスメンバーを車体下部に組付けるだけで、コイルスプリングを含めたサスペンション装置を組付けることができ、組付け作業をより簡略化できる。
また、サスペンションクロスメンバーとは、異なる別の仮組み部材を用いてコイルスプリングをサブアッセンブリーしているため、サスペンションクロスメンバーの剛性が車体組付け後に低下することもない。
よって、サスペンションクロスメンバーと、コイルスプリングとを備えた車両のサスペンション装置において、サスペンション装置の組付け作業性を向上しつつ、車体組付け後のサスペンションクロスメンバーの剛性を維持して、車両の操安性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の実施形態を、以下図面に基づいて詳述する。
図1は第一実施形態の車両のサスペンション装置を車体構造を含めて示した全体平面図、図2はこのサスペンション装置の全体側面図、図3はサブアッシー部材を示した平面図である。なお、図1、図2では右側のサスペンション装置のみを示しているが、左側のサスペンション装置も同様に、左右対称構造で構成している。
【0023】
本実施形態のサスペンション装置1は、図1に示すように、後輪Tを懸架するリアサスペンションであり、複数のリンクで後輪Tを支持する、いわゆるマルチリンク式のサスペンション装置である。
【0024】
具体的に、車輪(後輪)Tを支持するホイールサポート2は、車輪Tの車体前方側で車体前後方向に延びるトレーリングアーム3と、車幅方向に延びて車輪上方側に配置されるアッパーアーム4と、車幅方向に延びて車輪下方側前部に配置されるフロントロアアーム5と、車幅方向に延びて車輪下方側後部に配置されるリヤロアアーム6とによって、上下方向に揺動自在に支持されている。
【0025】
そして、このホイールサポート2は、車輪上方側で上下方向に延びるショックアブソーバー7と、リヤロアアーム6と車体Bとの間で上下方向に延びるコイルスプリング8とによって、路面からの衝撃を緩衝するようにして、車体Bに懸架されている。
【0026】
なお、9は、車幅方向に延びて、リアデフ(図示せず)から後輪Tに駆動力を伝達するドライブシャフトである。
【0027】
これらアッパーアーム4等のサスペンションアーム(4,5,6)を車体側で支持するように、サスペンション装置1の車幅方向内方には、サスペンションクロスメンバー10を設置している。
【0028】
このサスペンションクロスメンバー10は、車幅方向に延びる略円筒形状のフロントメンバー部11と、このフロントメンバー部11の両側部から車両後方側に延びて車幅外方側に屈曲する略円筒形状のサイドメンバー部12,12と、このサイドメンバー部12,12の屈曲部間を車幅方向に延びて連結する矩形断面のリアメンバー部13と、によって構成した、平面視「略鳥居形状」の枠体で構成している。
【0029】
このサスペンションクロスメンバー10は、フロントメンバー部11両側端のフロントマウント部14,14と、サイドメンバー部12、12両側端のリヤマウント部15,15の、前後左右の合計四箇所で、車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームB1,B1に、締結固定されている。
【0030】
このフロントマウント部14とリヤマウント部15は、共に、上下方向に延びる軸心L1、L2(図2参照)を有する円筒型マウントで構成しており、外筒部材15a(14a)と、内筒部材15b(14b)と、この間に介装したラバー部材15c(14c)とを備えている(図5参照)。
【0031】
このように構成することで、外筒部材15aがサスペンションクロスメンバー10側からサスペンション荷重を受けても、内筒部材15bへは、直接伝達されることがない。このため、サスペンション荷重が車体側(B1)に直接伝達されることはない。
【0032】
そして、このサスペンションクロスメンバー10の上方側には、コイルスプリング8を、車体組付け前にサスペンションクロスメンバー10にサブアッシー(仮組み固定)するサブアッシー部材20を設けている。
【0033】
このサブアッシー部材20は、図3に示すように、左右一対で車体前後方向に延びる仮組み固定部21A,21Bと、車幅方向に延びて左右の仮組み固定部21A,21Bを、中間位置で連結する中央連結部22と、車体前後方向に傾斜して延び、左右の仮組み固定部21A,21Bを前端位置と後端位置でそれぞれ連結する交差する二本の傾斜連結部23A,23Bと、左右の仮組み固定部21A,21Bの後端位置を連結する後端連結部24と、を備えている。
【0034】
以下、これら各構成要素について、詳述する。
前述の仮組み固定部21A,21Bは、中間位置に後述するスプリング受け部25を形成した長板状のガセット部材によって構成しており、図2に示すように、その前側部分を大きく下方側に屈曲するように形成している。これは、アッパーアーム4の揺動軌跡に干渉しないようにするためである。
【0035】
そして、仮組み固定部21A,21Bの前端と後端には、それぞれサスペンションクロスメンバー10のフロントマウント部14とリヤマウント部15に対応するように、ボルト挿通穴26,26,27,27を形成している(図1参照)。
【0036】
このボルト挿通穴26,27の詳細構造について、図4、図5を利用して説明する。
図4は左側後部のボルト挿通穴付近を示したサブアッシー部材の傾斜図、図5は図4のA−A線矢視断面に相当する縦断面図である。
【0037】
ボルト挿通穴27は、仮組み固定部21Aの平板部28に形成されており、リヤマウント部15の内筒部材15bが挿通可能な径で穿設している。
【0038】
そして、この挿通される内筒部材15bの上端には、外周側に拡張したカシメ部29を三箇所形成することで、この内筒部材15bをボルト挿通穴27にカシメ固定している。
【0039】
すなわち、図5に示すように、リヤマウント部15から上方に突出する内筒部材15bを、ボルト挿通穴27に挿通して、この上端を外方側にカシメることで、リヤマウント部15をボルト挿通穴27に係止固定しているのである。
【0040】
このため、サスペンションクロスメンバー10とサブアッシー部材20とを、このボルト挿通穴27を利用して一体化することができ、また、このボルト挿通穴を設けたことで、リヤマウント部15を締結固定する締結ボルト30(図5参照)で、サブアッシー部材20もリヤサイドフレームB1に締結固定することができる。
【0041】
なお、このカシメ部29のカシメ作業は、コイルスプリング8を含めたサスペンション装置1に仮組み固定する際に行なう。また、この固定方法もカシメ固定に限定されず、例えば、溶接等であってもよい。
【0042】
仮組み固定部21A,21Bの中間位置には、図3に示すように、平面視略円形状に膨出したスプリング受け部25を設けている。
【0043】
このスプリング受け部の詳細構造について、図6、図7を利用して説明する。
図6は左側のスプリング受け部付近を示したサブアッシー部材の傾斜図、図7は図6のB−B線矢視断面に相当する縦断面図である。
【0044】
スプリング受け部25は、図6に示すように、前後方向に延びる断面ハット状の凸部31を、前述のように略円形状に膨らませて、略キャップ形状となるように形成している。
【0045】
そして、このスプリング受け部25の下面において、コイルスプリング8の上端を受けることで(図2参照)、コイルスプリング8を仮組み状態で維持できるように構成している。
【0046】
スプリング受け部25の上面には、薄い円形状のラバー製シート部材32を貼設している。
このシート部材32を貼設することで、図7に示すように、車体組付け時に、スプリング受け部25がリヤサイドフレームB1に当接しても、コイルスプリング8の衝撃等で、リヤサイドフレームB1とスプリング受け部25との間に、異音が生じないようにしている。
【0047】
また、図6に示すように、スプリング受け部25とシート部材32の中央には、円形の貫通穴33,34を形成している。
【0048】
この貫通穴33,34は、図7に示すように、リヤサイドフレームB1に下方に突出するように設けた位置決めピン35を、この貫通穴33,34を挿通させることで、コイルスプリング8の組付け位置を規定するために設けている。
【0049】
こうして、スプリング受け部25は、仮組み固定時にコイルスプリング8を支持すると共に、車体組付け時には、コイルスプリング8の組付け位置も規定するように構成している。
【0050】
このように、仮組み固定部21A,21Bを構成することで、サスペンション装置の仮組み状態で、コイルスプリング8を車体組付け時と同様に支持することができる。
【0051】
前述の中央連結部22は、図6に示すように、断面略ハット状のメンバー部材によって構成しており、その側端部22aを、前述のスプリング受け部25に接合している。
【0052】
具体的には、スプリング受け部25の側壁面25aに、中央連結部22の側端部22aを突き当てて溶接することで、接合固定している。
【0053】
このように、中央連結部22を接合することで、左右のスプリング受け部25,25を連結して、左右のスプリング受け部25,25の位置(左右の間隔)や傾斜角度等を、常に一定に保っている。
【0054】
前述の傾斜連結部23A,23Bは、それぞれ断面円柱状のロッド部材によって構成しており、その両端を、左右の仮組み固定部21A,21Bに、接合固定している。この接合位置は、それぞれ対角に位置するボルト挿通穴26,27同士を、連結する位置関係で接合している。
【0055】
具体的には、図4に示すように、ロッド部材(23B)の両側端部に、上下面を切削加工した平板状の接合部23Baを設け、この接合部23Baをボルト挿通穴27近傍の平板部28に、アーク溶接等で接合固定することで、傾斜連結部23Bを連結固定している。
【0056】
このように、傾斜連結部23A,23Bを構成することで、左右の仮組み固定部21A,21Bの位置を、常に一定に保つことができる。また、左右の仮組み固定部21A,21Bの捩じれ方向の動きについても規制することができる。
【0057】
前述の後端連結部24は、断面円柱状のロッド部材によって構成しており、その両側端を、左右の仮組み固定部21A,21Bに接合固定している。この接合位置は、後側のボルト挿通穴27,27同士を連結する位置関係で接合している。
【0058】
この後端連結部24の構造も、図4に示すように、ロッド部材(24)の端部に平板状の接合部24aを設け、この接合部24aをボルト挿通穴27近傍の平板部28に接合固定している。
【0059】
このように、後端連結部24を構成することで、後側のボルト挿通穴27,27同士の位置を確実に規定することができる。また、左右の仮組み固定部21A,21Bの位置も確実に規定することができる。
【0060】
以上のようにして、仮組み固定部21A,21Bと、中央連結部22と、二本の傾斜連結部23A,23Bと、後端連結部24とによってサブアッシー部材20を構成している。
特に、図3に示すように、仮組み固定部21A,21Bと中央連結部22とで平面視略H形状を形成するように構成し、さらに、二本の傾斜連結部23A,23Bを平面視略X形状を形成するように構成することで、サブアッシー部材20を、ある程度剛性のあるものとして構成している。
【0061】
もっとも、コイルスプリング8の仮組み状態を保持できればよいため、さほど強固な剛性は有さず、重量も軽量に構成できる。
【0062】
次に、図8を利用して、このサブアッシー部材20を用いたサスペンション装置の組付け方法について説明する。図8は、サスペンション装置の組付け方法のフローチャートである。
【0063】
まず初めに、S1では、サスペンションクロスメンバー10にリヤロアアーム6を組付けて、このリヤロアアーム6にコイルスプリング8を載置する。この作業は、車体組立ラインとは別のサブラインにおいて行なう。また、このS1では、その他のサスペンションアーム(4,5)やホイールサポート2等、他の構成要素も組付ける。
【0064】
その後、S2では、コイルスプリング8上方にサブアッシー部材20が位置するように仮組み固定を行なう。すなわち、サブアッシー部材20のスプリング受け部25でコイルスプリング8上端を受けて、サブアッシー部材20のボルト挿通穴26,27に、フロントマウント部14とリヤマウント部15の内筒部材14b,15bをカシメることで、サブアッシー部材20をサスペンションクロスメンバー10に係止固定するのである。
【0065】
このように、サブアッシー部材20を係止固定することで、コイルスプリング8を他のサスペンション装置と一体化(サブアッセンブリー)することができる。こうして、一体化することで、以下の組付け作業を、容易に行なうことができる。なお、このS2も、サブラインにおいて行なう。
【0066】
さらにその後、S3では、仮組み固定(サブアッセンブリー)したサスペンション装置を車体下方から上昇させる。これにより、コイルスプリング8を仮組みしたサスペンション装置を単に上昇させていくだけで、車体下部にサスペンション装置を組付けることが可能となる。この作業以降は、車体組立ラインにおいて行なう。
【0067】
次に、S4では、サブアッシー部材20のスプリング受け部25をリヤサイドフレームB1に当接させる。これにより、コイルスプリング8の上端がサブアッシー部材20だけでなく、車体側部材のリヤサイドフレームB1によっても支持されることになる。
【0068】
そして最後に、S5では、サスペンションクロスメンバー10のマウント部14,15をリヤサイドフレームB1に締結固定する。これにより、サスペンションクロスメンバー10とサブアッシー部材20をリヤサイドフレームB1に固定することができ、サスペンション装置1を車体下部へ組付ける組付け作業が完了する。
【0069】
こうして、サブアッシー部材20を用いてサスペンション装置を車体へ組付けることで、コイルスプリング8をその後の別工程で組付ける必要がないため、車体組立ラインの作業を簡略化することができ、車体組立ラインのタクトを短縮化できる。
【0070】
特に、仮組み固定したサスペンション装置1を、単に上昇させるだけで、コイルスプリング8の当接支持を、サブアッシー部材20からリヤサイドフレームB1に変化させるため、サスペンション装置1全体の組付け作業を、より容易に行なうことができる。
【0071】
また、サブアッシー部材20は、車体組付け後には、コイルスプリング8からの衝撃荷重を直接支持しないため、剛性をさほど高める必要がなく、比較的軽量に構成することができる。
【0072】
次に、このように構成した第一実施形態の車両のサスペンション装置の作用・効果について、説明する。
この実施形態の車両のサスペンション装置1は、サスペンションクロスメンバー10を、前後左右の四箇所に設けたフロントマウント部14とリヤマウント部15で、車体下部に組付けるように構成して、このフロントマウント部14とリヤマウント部15のうち前後二箇所のマウント部同士を連結し、中間位置にコイルスプリング8の上端を支持するスプリング受け部25を備えるサブアッシー部材20を設け、車体組付け時に、コイルスプリング8の上端を、スプリング受け部25を介してリヤサイドフレームB1に当接支持させるように構成している。
【0073】
これにより、単に、サブアッシー部材20を設けるだけで、車体組付け前にコイルスプリング8を、サスペンションクロスメンバー10を含めたサスペンション装置1にサブアッセンブリーすることができる。
【0074】
そして、このサブアッセンブリーしたサスペンション装置1を、下方から車体に組付けることにより、コイルスプリング8が車体側部材で支持されることになる。
このため、サスペンションクロスメンバー10を車体下部に組付けるだけで、コイルスプリング8を含めたサスペンション装置1を組付けることができ、組付け作業をより簡略化できる。
また、サスペンションクロスメンバー10とは、異なる別のサブアッシー部材20を用いてコイルスプリング8をサブアッセンブリーしているため、サスペンションクロスメンバー10の剛性が車体組付け後に低下することもない。
【0075】
よって、サスペンションクロスメンバー10と、コイルスプリング8とを備えた車両のサスペンション装置1において、サスペンション装置1の組付け作業性を向上しつつ、車体組付け後のサスペンションクロスメンバー10の剛性を維持して、車両の操安性を向上できる。
【0076】
また、この実施形態では、サスペンションクロスメンバー10を、ラバー部材14c,15cを備えたフロントマウント部14、リヤマウント部15を介してリヤサイドフレームB1に組付けて、サブアッシー部材20を、リヤサイドフレームB1とラバー部材14c,15cとの間の内筒部材14b,15bに固定している。
【0077】
これにより、サブアッシー部材20は、車体側部材(B1)とラバー部材14c,15cとの間に介装されることになるため、コイルスプリング8からの入力荷重(路面からの衝撃荷重)は、ラバー部材14c,15cを介することなく、直接車体B側に伝達されることになる。
このため、コイルスプリング8からの入力荷重と、サスペンションクロスメンバー10からの入力荷重は、それぞれ独立して車体Bに伝達されることになり、いわゆる、入力分離を図ることができる。
よって、コイルスプリング8の弾性力の調整(チューニング)と、マウント部14,15のラバー部材14c,15cの弾性力の調整(チューニング)が容易になり、車両のサスペンション性能をより高めることができる。
【0078】
具体的には、コイルスプリング8の弾性力は、上下方向の路面荷重に対応するように設定すればよく、ラバー部材14c,15cの弾性力は、サスペンションクロスメンバー10からの振動に対応するように設定すればよい。
【0079】
また、この実施形態では、サブアッシー部材20に、左右の仮組み固定部21A,21Bを車幅方向に延びて連結する中央連結部22を設けている。
これにより、サブアッシー部材20の左右の仮組み固定部21A,21Bが車幅方向で一体となり、この一体となった仮組み固定部21A,21Bによって、前後左右のフロントマウント部14とリヤマウント部15を連結することができる。
よって、車体B及びサスペンションクロスメンバー10の車幅方向の剛性を高めることができ、全体として、車体剛性を高めることができ、結果的にサスペンション装置1の支持剛性も高めることができる。
【0080】
また、この実施形態では、サブアッシー部材20に、車体前後方向に傾斜する傾斜連結部23A,23Bを設けている。
これにより、サブアッシー部材20の仮組み固定部21A,21Bの結合力が捩じれ方向でも高まることになる。
よって、車体及びサスペンションクロスメンバー10の捩じれ剛性を高めることができ、さらに車体剛性、サスペンション装置1の支持剛性を高めることができる。
【0081】
また、この実施形態では、サスペンションクロスメンバー10を、フロアパネルB2(図5参照)下方で、左右一対のリヤサイドフレームB1,B1に組付け、傾斜連結部23A,23Bと後端連結部24を、この左右一対のリヤサイドフレームB1,B1を架渡すように設置している。
これにより、傾斜連結部23A,23Bと後端連結部24によって、リヤサイドフレームB1の倒れ方向の変形を抑制できる。
よって、リヤサイドフレームB1の剛性を高めることができ、サスペンション装置1の支持剛性を、確実に高めることができる。
【0082】
また、この実施形態では、サブアッシー部材20を、サスペンションクロスメンバー10のマウント部14,15よりも上側位置に設けている。
これにより、サブアッシー部材20を、リヤサイドフレームB1に、より近接した位置で連結固定することができる。
よって、リヤサイドフレームB1の剛性を確実に高めることが可能となり、サブアッシー部材20を利用して車体剛性を高めることができる。
【0083】
次に、第二実施形態について、図9、図10、図11を利用して説明する。図9は第二実施形態の車両のサスペンション装置を車体構造を含めて示した全体平面図、図10はサスペンション装置の全体側面図、図11はA−A線矢視断面に相当する縦断面図である。なお、第一実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
この実施形態は、第一実施形態と異なり、サブアッシー部材120を、サスペンションクロスメンバー10の下方側に設置している。
具体的には、仮組み固定部121A,121Bの前端と後端の平板部128,128を、フロントマウント部14とリヤマウント部15の下方側に位置させて、傾斜連結部123A,123Bと後端連結部124を、サスペンションクロスメンバー10下方側に設置している(図9、図10参照)。
【0085】
もっとも、スプリング受け部125,125は、コイルスプリング8の上方側に位置させる必要があるために、本実施形態のサブアッシー部材120では、図10に示すように、前部と後部を、下方に大きく屈曲するように形成している。
【0086】
また、中央連結部122も、サスペンションクロスメンバー10よりも上方側に位置するように設置している。
【0087】
こうして、スプリング受け部125と中央連結部122を、上方側に設置することで、サブアッシー部材20をサスペンションクロスメンバー10より下方側に設置したとしても、コイルスプリング8を仮組み状態で確実に保持することができる。
【0088】
このように、サブアッシー部材120を、サスペンションクロスメンバー10の下方側に設置することによって、仮組み固定部121A,121Bは、フロントマウント部14とリヤマウント部15に対して、車体下方側から組み付けられることになる。
【0089】
このため、図11に示すように、リヤマウント部15の内筒部材15bは、上部が車体側のリヤサイドフレームB1に支持され、下部がボルト挿通穴127にカシメ固定されて仮組み固定部121Aに支持されることで、両持ち支持されることになる。
【0090】
よって、内筒部材15bの「倒れ」等が抑制され、サスペンションクロスメンバー10を取り付ける締結ボルト30の倒れを抑制することができる。
【0091】
また、仮組み固定部121A,121Bを、フロントマウント部14とリヤマウント部15の下側に設置することで、コイルスプリング8を仮組み固定した際の、コイルスプリング8の反発力によって生じる仮組み固定部21A,21Bの上向きの動きを、各マウント部の外筒部材14a,15aで抑えることができる。
【0092】
このため、ラバー部材15cに圧入されている内筒部材15bの抜けを防止することができ、コイルスプリング8の仮組み状態も確実に維持できる。
【0093】
以上のように、この実施形態では、サブアッシー部材20を、サスペンションクロスメンバー10の各マウント部14,15の下側位置に設けている。
これにより、各マウント部14,15を、上側を車体(B1)、下側を仮組み固定部121A,121Bで、それぞれ支持することになり、両持ち支持で支持することができる。
よって、サスペンションクロスメンバー10を、取り付ける締結ボルト30等の倒れを抑制できるため、さらに、サスペンション装置1の支持剛性を高めることができる。
【0094】
以上、本発明の構成と、前述の実施形態の対応において、
この発明の取付け部は、実施形態のフロントマウント部14、リヤマウント部15に対応し、
以下、同様に、
仮組み部材は、仮組み固定部21A,21B,121A,121Bに対応し、
連結部材は、中央連結部22、傾斜連結部23A,23B、後端連結部24、中央連結部122、傾斜連結部123A,123B、後端連結部124、に対応し、
車体フレームは、リヤサイドフレームB1に対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではない。
例えば、サブアッシー部材の中央連結部、傾斜連結部、後端連結部等を、円筒パイプやハット型メンバー等で構成しても良いし、また、各部材の溶接固定を、締結固定等で行なってもよい。
【0095】
さらに、仮組み固定部も、こうしたガセット部材に限定されるものではなく閉断面形状のメンバー部材等で構成してもよい。また、中央連結部、傾斜連結部、後端連結部を備えることなく、左右の仮組み固定部だけでサブアッシー部材を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】第一実施形態の車両のサスペンション装置を車体構造を含めて示した全体平面図。
【図2】第一実施形態のサスペンション装置の全体側面図。
【図3】サブアッシー部材を示した平面図。
【図4】左側後部のボルト挿通穴付近を示したサブアッシー部材の傾斜図。
【図5】図4のA−A線矢視断面に相当する縦断面図。
【図6】左側のスプリング受け部付近を示したサブアッシー部材の傾斜図。
【図7】図6のB−B線矢視断面に相当する縦断面図。
【図8】サスペンション装置の組付け方法のフローチャート
【図9】第二実施形態の車両のサスペンション装置を車体構造を含めて示した全体平面図。
【図10】第二実施形態のサスペンション装置の全体側面図。
【図11】図4のA−A線矢視断面に相当する縦断面図。
【符号の説明】
【0097】
1…サスペンション装置
6…リヤロアアーム
8…コイルスプリング
10…サスペンションクロスメンバー
14…フロントマウント部
15…リヤマウント部
20,120…サブアッシー部材
21A、21B、121A、121B…仮組み固定部
25,125…スプリング受け部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションクロスメンバーに支持されたロアアームと車体との間にコイルスプリングを配設した車両のサスペンション装置であって、
前記サスペンションクロスメンバーを、少なくとも前後左右の四箇所に設けた取付け部で、車体下部に組付けるように構成して、
該取付け部のうち前後二箇所の取付け部同士を連結し、中間位置に前記コイルスプリングの上端を支持するスプリング受け部を備える仮組み部材を設け、
車体組付け時に、前記コイルスプリングの上端を、スプリング受け部を介して車体に当接するように構成した
車両のサスペンション装置。
【請求項2】
前記サスペンションクロスメンバーを、ラバー部材を介して車体に組付けており、
前記仮組み部材を、前記車体とラバー部材との間に介装した
請求項1記載の車両のサスペンション装置。
【請求項3】
前記左右の仮組み部材を、車幅方向に延びて連結する連結部材を設けた
請求項1又は2記載の車両のサスペンション装置。
【請求項4】
前記連結部材を、車体前後方向に傾斜するように設けた
請求項3記載の車両のサスペンション装置。
【請求項5】
前記サスペンションクロスメンバーを、フロアパネルの下方で車体前後方向に延びる左右一対の車体フレームに組付け、
前記連結部材を、該左右一対の車体フレームを架渡すように設置した
請求項3又は4記載の車両のサスペンション装置。
【請求項6】
前記連結部材を、前記サスペンションクロスメンバーのラバー部材の上側位置に設けた
請求項5記載の車両のサスペンション装置。
【請求項7】
前記連結部材を、前記サスペンションクロスメンバーのラバー部材の下側位置に設けた
請求項5記載の車両のサスペンション装置。
【請求項1】
サスペンションクロスメンバーに支持されたロアアームと車体との間にコイルスプリングを配設した車両のサスペンション装置であって、
前記サスペンションクロスメンバーを、少なくとも前後左右の四箇所に設けた取付け部で、車体下部に組付けるように構成して、
該取付け部のうち前後二箇所の取付け部同士を連結し、中間位置に前記コイルスプリングの上端を支持するスプリング受け部を備える仮組み部材を設け、
車体組付け時に、前記コイルスプリングの上端を、スプリング受け部を介して車体に当接するように構成した
車両のサスペンション装置。
【請求項2】
前記サスペンションクロスメンバーを、ラバー部材を介して車体に組付けており、
前記仮組み部材を、前記車体とラバー部材との間に介装した
請求項1記載の車両のサスペンション装置。
【請求項3】
前記左右の仮組み部材を、車幅方向に延びて連結する連結部材を設けた
請求項1又は2記載の車両のサスペンション装置。
【請求項4】
前記連結部材を、車体前後方向に傾斜するように設けた
請求項3記載の車両のサスペンション装置。
【請求項5】
前記サスペンションクロスメンバーを、フロアパネルの下方で車体前後方向に延びる左右一対の車体フレームに組付け、
前記連結部材を、該左右一対の車体フレームを架渡すように設置した
請求項3又は4記載の車両のサスペンション装置。
【請求項6】
前記連結部材を、前記サスペンションクロスメンバーのラバー部材の上側位置に設けた
請求項5記載の車両のサスペンション装置。
【請求項7】
前記連結部材を、前記サスペンションクロスメンバーのラバー部材の下側位置に設けた
請求項5記載の車両のサスペンション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−166796(P2009−166796A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10049(P2008−10049)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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