説明

車両の下部車体構造

【課題】大きなフレーム補強を必要とせず、シートスライドレールを利用しつつホイールハウスに荷重を伝達し、該荷重を分散し、前後方向の車体剛性、後突耐力の向上を図り、車両の強度向上とエネルギ分散との両立を図る車両の下部車体構造を提供する。
【解決手段】フロアパネル側部の車輪と対応した位置に、車室内方向に膨出されたホイールハウス5を設け、ホイールハウス5とシートスライドレール16とを連結する連結部材31を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられて乗員が着座可能なシートとを備えたような車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両の下部車体構造としては特許文献1に開示された構造がある。
すなわち、フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールを設け、このシートスライドレールを車幅方向に一対配設すると共に、該シートスライドレールで第2列目の後席シートと第3列目の後席シートとを摺動すべく、このシートスライドレールをロングレールに設定して、多様な座席配列パターンを形成することができるように構成したものである。
しかしながら、この従来構造において下部車体剛性を向上させるためには、大きなフレーム補強が必要となる問題点があった。
【0003】
特に、上述のような第3列目の後席シートのシートバックとバックドア等の車両背面部との間の空間が少ない車両においては、後突に対する車体剛性を、過大な質量増加を招くことなく、向上させることが要請される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−146120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、フロアパネル側部の車輪と対応した位置において車室内方向に膨出されたホイールハウスとシートスライドレールとを連結部材で連結することにより、大きなフレーム補強を必要とせず、シートスライドレールを利用しつつホイールハウスに荷重を伝達し、該荷重を分散(後突エネルギの分散)することができ、前後方向の車体剛性および後突耐力の向上を図って、車両の強度向上とエネルギ分散との両立を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車両の下部車体構造は、車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシートとを備えた車両において、上記フロアパネル側部の車輪と対応した位置には、車室内方向に膨出されたホイールハウスが設けられ、上記ホイールハウスと上記シートスライドレールとを連結する連結部材が設けられたものである。
上記構成によれば、フロアパネルに沿って前後方向に配設されたシートスライドレールと、ホイールハウスとを連結部材で連結したので、大きなフレーム補強(過大な質量増加)を必要とすることなく、上記シートスライドレールを利用しながらホイールハウスに荷重を伝達し、該荷重を分散(後突エネルギの分散)することができ、前後方向の車体剛性および後突耐力の向上を図って、車両の強度向上とエネルギ分散との両立を図ることができる。
【0007】
この発明の一実施態様においては、上記ホイールハウスに対して上記シートスライドレールは近接して前後方向に延設され、上記連結部材は該シートスライドレールの後部と上記ホイールハウスの後ろ側面とを接続するように前後方向に延設されたものである。
上記構成によれば、連結部材はホイールハウス後部のデッドスペースを利用して配設することができ、前後方向の車体剛性向上、後突耐力の向上と、レイアウト性確保との両立を図ることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記連結部材は上記シートスライドレールの側面部に接続され、該連結部材の一部がシートスライドレールに並設されたものである。
上記構成によれば、連結部材の一部がシートスライドレールに並設され、該一部がシートスライドレールの側面部に接続されて、シートスライドレールに沿って平行かつ前後方向に延びるので、前後方向の荷重に対する耐力を確実に向上させることができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記車室内には前後方向に複数のシートが配設され、上記シートは後列シートであって、上記ホイールハウスは後部フロアパネルに設けられたリヤホイールハウスであることを特徴とする。
上記構成によれば、多人数乗車が達成できるシートレイアウトの確保と、後突耐力の向上との両立を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記ホイールハウスおよび上記シートスライドレールは車幅方向に一対配設され、該シートスライドレールは同じシートを支持しているものである。
上記構成によれば、シートスライドレールで同じシートを支持しているので、該シートそれ自体を車体剛性の向上に寄与させることができ、またシートの支持剛性を向上することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記シートスライドレールは前列シートと後列シートとで共用されるものである。
上記構成によれば、シートスライドレールを前列、後列のシートで共用するので、部品点数、組付け工数の低減を図りつつ、シート支持剛性の確保を図ることができ、しかも、上述のシートスライドレールを前後方向に長いロングレールと成すことができるので、荷重(特に後突荷重)を広範囲に分散させることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記シートスライドレールの間を車幅方向に連結する連結フレーム部材を設け、該連結フレーム部材をフロアパネルに固定したものである。
上記構成によれば、車体の前後方向の耐力向上と併せて、上述の連結フレーム部材により車体の左右方向の耐力向上を図ることができ、特に車体のねじり剛性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
そこで、この発明によれば、フロアパネル側部の車輪と対応した位置において車室内方向に膨出されたホイールハウスとシートスライドレールとを連結部材で連結したので、大きなフレーム補強を必要とせず、シートスライドレールを利用しつつホイールハウスに荷重を伝達し、該荷重を分散(後突エネルギの分散)することができ、前後方向の車体剛性および後突耐力の向上を図って、車両の強度向上とエネルギ分散との両立を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
シートスライドレールを利用してホイールハウスに荷重を伝達し、荷重分散を図り、前後方向の車体剛性および後突耐力の向上を図って、車両強度向上とエネルギ分散との両立を図るという目的を、車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシートとを備えた車両において、上記フロアパネル側部の車輪と対応した位置に、車室内方向に膨出されたホイールハウスを設け、上記ホイールハウスと上記シートスライドレールとを連結する連結部材を設けるという構成にて実現した。
【実施例】
【0015】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はモノコック型の車両の下部車体構造を示し、図1〜図4において、車室の底部を形成するフロアパネル1を設け、このフロアパネル1の後部には段部2を介して後部フロアパネルとしてのリヤフロア3を連設し、このリヤフロア3の後部における車幅方向中間部にはスペアタイヤパン4を一体に段下げ(凹設)形成している。
【0016】
上述のリヤフロア3の左右両側部の車輪(つまり後輪)と対応した位置には車室内方向に膨出された左右のリヤホイールハウス5,5が設けられている。
一方、上述のフロアパネル1の車幅方向中央には、車室内方に突出したトンネル部6を設けている。
このトンネル部6はダッシュロアパネル(ダッシュパネル)と上記段部2との間にわたって車両の前後方向に延びるもので、該トンネル部6は車体剛性の中心となる。
また、上述のフロアパネル1およびリヤフロア3前部の左右両外側部には、前後方向に延びる左右のサイドシル7,7が設けられている。
【0017】
このサイドシル7は図15に示すように、サイドシルインナ8とサイドシルアウタ9とを接合固定して、前後方向に延びるサイドシル閉断面10を備えた車体剛性部材である。
【0018】
図2、図3に示すように、上述の各サイドシル7,7の後部には上下方向に延びる左右の各リヤピラー11,11の下部が配設されている。このリヤピラー111,11は、図2,図3に示すように、リヤピラーインナ12とリヤピラーアウタ13とを接合固定して、上下方向に延びるリヤピラー閉断面14を備えた車体剛性部材である。
【0019】
また、上述のトンネル部6における左右の縦壁部とサイドシル7の左右のサイドシルインナ8,8との間には、フロアパネル1に接合固定して、車幅方向に延びる車体剛性部材としてのクロスメンバ15,15を接続している。ここで、該クロスメンバ15とフロアパネル1との間には車幅方向に延びる閉断面を形成して、下部車体剛性を確保すべく構成している。
【0020】
さらに、図3に示すように、リヤホイールハウス5とスペアタイヤパン4との間において、リヤフロア3の車室内側には、該リヤフロア3に沿って前後方向に延びるシートスライドレールとしての左右一対のロングレール16,16(ロアレール)を、車幅方向に離間して、平行に配設している。
【0021】
これら左右一対のロングレール16,16の前端部は、上述の段部2よりも前方に位置し、ロングレール16,16の後端部はスペアタイヤパン4の前後方向中間位置で、かつ、リヤホイールホウス5の後ろ側面5aよりも、さらに後方に位置するものである。
【0022】
また、上述の左右一対のロングレール16,16間には、トンネル部6の左右の縦壁部外方位置に対応すべく、リヤフロア3の車室内側において、該リヤフロア3に沿って前後方向に延びるシートスライドレールとしての左右一対のショートレール17,17(ロアレール)を、車幅方向に離間して平行に配設している。
【0023】
これら左右一対のショートレール17,17の前端部は、上記ロングレール16,16の前端部と同一位置に位置し、ショートレール17,17の後端部は、スペアタイヤパン4の前部に位置するものである。
要するに、上記シートスライドレールは、一対のロングレール16,16と、該ロングレール16,16の間に配設された一対のショートレール17,17とから構成されている。ロングレール16は図3に平面図で示すように、後述するリヤサイドフレーム24に沿って重合するように配設されている。
【0024】
そして、上述のシートスライドレール(ロングレール16、ショートレール17参照)には、乗員が着座可能なシートとして第2列目シート18,18(前席シート)と、第3列目シート19(後席シート)との複数のシートを前後方向に摺動可能に配設している。
【0025】
図1〜図4に示すように、車室内において前後方向に配設した複数のシート18,19のうち、第2列目シート18は、左右独立したセパレートシートが用いられ、第3列目シート19は、3人乗車が可能なベンチシートが用いられており、これら前後のシート18,19および図示しない運転席シート、助手席シートとで、多人数乗車が達成できるシートレイアウトを確保すべく構成している。
【0026】
ここで、上述の第2列目シート18は、図2、図4に示すように、ロングレール16とショートレール17とに対して摺動可能に構成された複数のアッパレール20と、シート支持部材21とにより支持されており、この第2列目シート18は、シートクッション18Cと、シートバック18Bと、ヘッドレスト18Hと、アームレスト18Aとを、それぞれ備えている。
【0027】
また、上述の第3列目シート19は、図2、図4に示すように、車幅方向のスパンが長い左右一対のロングレール16,16に対して摺動可能に構成された一対のアッパレール22と、シート支持部材23とにより支持されており、この第3列目シート19は、シートクッション19Cと、シートバック19Bと、2つのヘッドレスト19H,19Hとを備えている。
【0028】
上述の第2列目シート18,18は、左右のそれぞれのシート18,18がロングレール16とショートレール17とに沿って前後方向に摺動可能に形成され、また第3列目シート19は車幅方向のスパンが長く、かつ、前後方向の長さも長い左右一対のロングレール16,16に沿って前後方向に摺動可能に形成されている。
【0029】
要するに、上述のロングレール16,16は前席シート(第2列目シート18参照)と後席シート(第3列目シート19参照)とで共用するように構成したものであり、また、この左右一対のロングレール16,16は同じシートとしての第3列目シート19を支持している。
【0030】
一方、図4、図5(但し、図5は図3のA−A線に沿う要部拡大断面図)に示すように、リヤフロア3の下面つまり車室外側において該リヤフロア3の左右の両側部を車両の前後方向に延びる車体フレーム(車体剛性部材)としてのリヤサイドフレーム24を車幅方向に離間して一対設けている。
このリヤサイドフレーム24はリヤフロア3の下面に接合固定され、これら両者24,3間には前後方向に延びるリヤサイド閉断面25が形成されている。
【0031】
上述の左右一対のロングレール16,16は、この一対のリヤサイドフレーム24,24に沿って配設されたものであり、車室外側に位置するリヤサイドフレーム24と、車室内側に位置するロングレール16とは、図5に示すように、リヤフロア3を介して上下に重合されて車両の前後方向に延設配置されたものである。なお、図5においては車両左側の重合構造のみを示すが、車両右側においても同様に構成されている。
【0032】
また、この実施例においては、図5に示すように、ロングレール16の車幅方向の中心部と、リヤサイドフレーム24の車幅方向の中心部とが、リヤフロア3を介して上下に一致または略一致するように、これら両者16,24を上下にオーバラップさせている。
【0033】
図5に示すように、上述のロングレール16はその前後複数箇所がボルト、ナット等の締結部材26を用いてリヤフロア3に固定されている。
しかも、車室内側のロングレール16と、車室外側のリヤサイドフレーム24とを上下に連結する一対の連結部材27,27を設けている。
【0034】
図5の実施例においては、リヤフロア3に開口部28を形成し、この開口部28を介して連結部材27を車室内側と車室外側との両側に位置させて、該連結部材27の上片27aとロングレール16の側片16aとを溶接手段により接合固定すると共に、連結部材27の下片27bとリヤサイドフレーム24の縦壁部24aとを、ボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定することにより、連結部材27でリヤフロア3を介してリヤサイドフレーム24とロングレール16とを連結して、車体の前後方向の耐力向上を図ると共に、後突に対する耐力の向上を図るように構成している。この連結部材27を設ける位置は可及的後方が望ましい。
【0035】
図5に示す連結構造に代えて、図6に示す連結構造を採用してもよい。
【0036】
すなわち、図6に示す連結構造は、上記連結部材27をアッパ連結部材27Uと、ロア連結部材27Lとに2分割し、アッパ連結部材27Uの上片27cとロングレール16の側片16aとを溶接手段により接合固定し、ロア連結部材27Lの下片27dとリヤサイドフレーム24の縦壁部24aとを、ボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定し、さらにアッパ連結部材27Uの下片27eと、ロア連結部材27Lの上片27fとを、リヤフロア3を挟持した状態において、ボルト、ナット等の締結部材30を用いて共締め固定することにより、上下の各連結部材27U,27Lでリヤフロア3を介してリヤサイドフレーム24とロングレール16とを連結したものである。
【0037】
このように構成すると、図5の連結構造に対して部品点数が多くなるが、リヤフロア3に形成される開口部は、例えば、ボルト孔のみでよく、該リヤフロア3に対する開口面積を少なくすることができる。
【0038】
ところで、上述のリヤホイールハウス5は、図2、図3に示すように左右の後輪と対応して車幅方向に一対設けられている。図7は図3の右側要部の斜視図であって、右側のリヤホイールハウス5と同側のロングレール16との連結構造を示すが、左側の連結構造は右側のそれと同様に構成されている。
【0039】
図7に示すように、リヤホイールハウス5に対して上述のロングレール16は近接して前後方向に延設配置されていて、このロングレール16の後部とリヤホイールハウス5の後ろ側面5aとを、そのデッドスペースを有効利用して、連結部材31で連結し、車体の前後方向の耐力および後突に対する耐力の向上を図るように構成している。換言すれば、後面衝突時にその衝突荷重をリヤホイールハウス5に伝達すべく構成したものである。
【0040】
上述の連結部材31は、ロングレール16後部の側片16aにおけるリヤホイールハウス5側の側面部(つまり車外側の側面部)に沿って並設される後部31Rと、該側面部からリヤホイールハウス5の後ろ側面5aに至るように滑らかに湾曲する前部31Fとを有し、ロングレール16の後部と、リヤホイールハウス5の後ろ側面5aとを接続するように前後方向に延設されている。
【0041】
また、上述の連結部材31の前端部には複数の接合フランジ部31aが一体形成されており、これら複数の接合フランジ部31aがリヤホイールハウス5の後ろ側面5aに溶接手段等により接合固定されている。
【0042】
さらに、上述の連結部材31における少なくとも後部31Rは閉断面32構造に形成されており、該連結部材31をそれ自体の剛性向上を確保する一方、ロングレール16に並設されて前後方向に延びる該連結部材31の後部31Rは、図8に示すように、ボルト、ナット等の締結部材33を用いて、該ロングレール16のリヤホイールハウス5側の側片16aの外側面部に接続されている。この締結部材33による接続箇所は1箇所または複数箇所に設定することができる。
【0043】
図7、図8に示す連結構造に代えて、図9、図10または図11に示す連結構造を採用してもよい。
すなわち、図9に示す連結構造は、上述の連結部材31の前端部に該連結部材31とは別体で、かつリヤホイールハウス5の後ろ側面5aの曲面形状に対応する接合フランジ34を予め接合固定し、この接合フランジ34をリヤホイールハウス5の後ろ側面5aに連結し、図7の構造に対して両者5a,34の接合面積を増大すべく構成したものである。
【0044】
図10に示す連結構造は、連結部材31の下面がリヤフロア3上面に当接するように、該連結部材31として閉断面32が大きいものを用い、この連結部材31の剛性向上を図ったものである。
【0045】
図11に示す連結構造は、図10の構成に加えて、ボルト、ナット等の締結部材33Aを用いて、連結部材31と、リヤフロア3と、リヤサイドフレーム24の接合フランジ部24bとの三者を共締め固定し、前後方向の剛性をさらに向上させたものである。
【0046】
図9、図10、図11においても、その他の構成については図7、図8と同様あるから、図9〜図11において前図と同一の部分には同一符号を付している。
【0047】
一方、図3に示すように、左右の各ロングレール16とショートレール17との間を接続して車幅方向に延びる第1の連結フレーム部材35,36,37を、前後方向に離間して複数かつ平行に配設し、これらの各第1の連結フレーム部材35,36,37をリヤフロア3に固定している。
【0048】
また、同図に示すように、左右の各ショートレール17,17間を接続して車幅方向に延びる第2の連結フレーム部材38,39,40を、前後方向に離間して複数かつ平行に配設し、これらの各第2の連結フレーム部材38,39,40をリヤフロア3に固定している。
【0049】
ここで、左右両側に位置する第1の連結フレーム部材35,36,37と、中央に位置する第2の連結フレーム部材38,39,40とは車幅方向に一直線状に並ぶように配設されている。
【0050】
すなわち、図3に仮想線で示す前後のシート18,19のノーマル状態下(シート18,19を前後方向にシートスライドさせない状態下)において、第2列目シート18のシートクッション18C下方と対応する部位においては、各連結フレーム部材35,38,35を車幅方向に一直線状に配置し、第2列目シート18のシートバック18B下方と対応する部位においては、各連結フレーム部材36,39,36を車幅方向に一直線状に配置し、第3列目シート19のシートクッション19Cの前部下方と対応する部位においては、各連結フレーム部材37,40,37を車幅方向に一直線状に配置して、平面から見て各レール16,17と各連結フレーム部材35〜40とを井型状に組合わせ、擬似ラダーフレーム(ladder frame)構造と成して、車体の前後方向および左右方向の耐力の向上、車体のねじり剛性の向上を図るように構成している。
【0051】
図12は図3のC−C線に沿う要部拡大断面図であって、ロングレール16と連結フレーム部材36とは、ボルト、ナット等の締結部材41により固定されている。ここで、締結部材41による両者16,36の固定構造に代えて、溶接による両者16,36の固定構造を採用してもよい。なお、各レール16,17と各連結フレーム部材35〜40の他の固定箇所についても、図12と同様に締結固定(または溶接固定)することができる。
【0052】
図12に示す構造に代えて、図13の構造、または、図14の構造を採用してもよい。
すなわち、図13に示す構造は、図12の構造に加えて、ロングレール16の車外側の側片16aと、リヤサイドフレーム24の車外側の縦壁部24aとを上下に連結する連結部材27を設け、該連結部材27の上片27aとロングレール16とを、ボルト、ナット等の締結部材42を用いて固定し、連結部材27の下片27bと、リヤサイドフレーム24の車外側の縦壁部24aとをボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定し、また、連結フレーム部材36の下部とロア連結部材27Lの上片27fとを、リヤフロア3を挟持した状態において、ボルト、ナット等の締結部材43を用いて共締め固定し、さらに、ロア連結部材27Lの下片27dと、リヤサイドフレーム24の車内側の縦壁部24aとを、ボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定し、図5の構造と類似する連結構造と成したものである。
【0053】
このように、ロングレール16、連結フレーム部材36、リヤフロア3、リヤサイドフレーム24を、連結部材27,27Lおよび締結部材29,41,42,43で相互連結することにより、車体剛性のさらなる向上を図るように構成している。
【0054】
図14に示す構造は、図13における車外側の連結部材27を上下に2分割し、アッパ連結部材27Uの上片27cとロングレール16とを、ボルト、ナット等の締結部材42で固定し、ロア連結部材27Lの下片27dとリヤサイドフレーム24とを、ボルト、ナット等の締結部材29で固定し、アッパ連結部材27Uの下片27eと、ロア連結部材27Lの上片27fとを、リヤフロア3を挟持した状態において、ボルト、ナット等の締結部材30を用いて共締め固定し、図6の構造と類似する連結構造と成して、車体剛性の向上を図るように構成したものである。なお、図14において図13と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0055】
ここで、ロングレール16と他の連結フレーム部材35,37との連結構造についても、図13または図14と同様の連結構造を採用することができる。
一方、図3に示すように、左右一対のロングレール16,16の後端部相互間にも、車幅方向に延びる連結フレーム部材44を横架固定することができるが、スペアタイヤパン4にスペアタイヤを格納する場合には、この連結フレーム部材44は省略するとよい。
【0056】
ところで、図3のD−D線矢視断面図を図15に示すように、フロアパネル1および後部フロアパネルとしてのリヤフロア3の外側部に設けられたサイドシル7と、ロングレール16とを車幅方向に接続する連結部材45を設けている。
【0057】
図15に示すように、上述の連結部材45は、車幅方向内方の立上がり片45aと、車幅方向外方の立上がり片45bと、これら両立上がり片45a,45bを連結する底片45cとを凹形状に一体形成したもので、内方の立上がり片45aとロングレール16とを、ボルト、ナット等の締結部材46で固定し、外方の立上がり片45bとサイドシルインナ8とを溶接手段等によって接合固定し、底片45cはリヤフロア3に固定している。
【0058】
また、図3に示すように上述の連結部材45は連結フレーム部材35と対応した位置に設けられている。
この実施例では、図3に平面図で示すように、左側の連結部材45と、左側の連結フレーム部材35と、中央の連結フレーム部材38と、右側の連結フレーム部材35と、右側の連結部材45とが車幅方向に一直線状に延びるように配置されていて、車体全体の剛性および側突剛性の向上を図るように構成している。
【0059】
図15に示す凹状の連結部材45に代えて、図16に示すように閉断面45dをもった偏平なボックス形状の連結部材45を設け、この連結部材45の左右両端部を、ロングレール16およびサイドシルインナ8に溶接手段等により接合固定してもよい。また、サイドシルインナ8とサイドシルアウタ9との間には、サイドシルレインフォースメント47を設けてもよい。
さらに図15に示す構造に代えて、図17の構造を採用してもよい。
【0060】
図17に示す構造は、ハイドロフォーム成形品(ハイドロフォーム成形によるパイプ部材)により連結部材45を形成したもので、この連結部材45は車幅方向に延びる閉断面45dと、両サイドの立上がり片45a,45bとを備えており、ボルト、ナット等の締結部材48を用いて一方の立上がり片45aと、ロングレール16とを連結固定すると共に、ボルト、ナット等の締結部材49を用いて他方の立上がり片45bと、サイドシルインナ8とを連結固定したものであって、図16、図17に示す実施例においてはいずれも閉断面構造の連結部材45を用いているので、図15の構造に対して側突剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0061】
なお、図4において50はルーフ部、51はバックドアである。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印OUTは車両外方を示し、矢印INは車両内方を示す。
【0062】
このように、上記実施例の車両の下部車体構造は、車室の底部を形成するフロアパネル(フロアパネル1とリヤフロア3参照)と、該フロアパネル(リヤフロア3参照)に沿って前後方向に配設されるシートスライドレール(ロングレール16、ショートレール17参照)と、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシート18,19とを備えた車両において、上記フロアパネル(リヤフロア3参照)側部の車輪と対応した位置には、車室内方向に膨出されたホイールハウス(リヤホイールハウス5参照)が設けられ、上記ホイールハウス(リヤホイールハウス5参照)と上記シートスライドレール(ロングレール16参照)とを連結する連結部材31が設けられたものである。
この構成によれば、フロアパネル(リヤフロア3参照)に沿って前後方向に配設されたシートスライドレール(ロングレール16参照)と、ホイールハウス(リヤホイールハウス5参照)とを連結部材31で連結したので、大きなフレーム補強(過大な質量増加)を必要とすることなく、上記シートスライドレール(ロングレール16参照)を利用しながらホイールハウス(リヤホイールハウス5参照)に荷重を伝達し、該荷重を分散(後突エネルギの分散)することができ、前後方向の車体剛性および後突耐力の向上を図って、車両の強度向上とエネルギ分散との両立を図ることができる。
【0063】
また、上記ホイールハウス(リヤホイールハウス5参照)に対して上記シートスライドレール(ロングレール16参照)は近接して前後方向に延設され、上記連結部材31は該シートスライドレール(ロングレール16参照)の後部と上記ホイールハウス(リヤホイールハウス5参照)の後ろ側面5aとを接続するように前後方向に延設されたものである。
この構成によれば、連結部材31はホイールハウス後部(リヤホイールハウス後部参照)のデッドスペースを利用して配設することができ、前後方向の車体剛性向上、後突耐力の向上と、該連結部材31のレイアウト性確保との両立を図ることができる。
【0064】
さらに、上記連結部材31は上記シートスライドレール(ロングレール31参照)の側面部に接続され、該連結部材31の一部がシートスライドレール(ロングレール31参照)に並設されたものである。
この構成によれば、連結部材31の一部がシートスライドレール(ロングレール31参照)に並設され、該一部がシートスライドレール(ロングレール31参照)の側面部に接続されて、シートスライドレール(ロングレール31参照)に沿って平行かつ前後方向に延びるので、前後方向の荷重に対する耐力を確実に向上させることができる。
【0065】
加えて、上記車室内には前後方向に複数のシート18,19が配設され、上記シートは後列シートであって、上記ホイールハウスは後部フロアパネル(リヤフロア3参照)に設けられたリヤホイールハウス5であることを特徴とする。
この構成によれば、多人数乗車が達成できるシートレイアウトの確保と、後突耐力の向上との両立を図ることができる。
【0066】
また、上記ホイールハウス(リヤホイールハウス5参照)および上記シートスライドレール(ロングレール16参照)は車幅方向に一対配設され、該シートスライドレール(ロングレール16参照)は同じシート19を支持しているものである。
この構成によれば、シートスライドレール(ロングレール16参照)で同じシート19を支持しているので、該シート19それ自体を車体剛性の向上に寄与させることができ、またシート19の支持剛性を向上することができる。
【0067】
さらに、上記シートスライドレール(ロングレール16参照)は前列シート(第2列目シート18参照)と後列シート(第3列目シート19参照)とで共用されるものである。
この構成によれば、シートスライドレール(ロングレール16参照)を前列、後列のシート18,19で共用するので、部品点数、組付け工数の低減を図りつつ、シート支持剛性の確保を図ることができ、しかも、上述のシートスライドレールを前後方向に長いロングレール16と成すことができるので、荷重(特に後突荷重)を広範囲に分散させることができる。
【0068】
加えて、上記シートスライドレール(ロングレール16参照)の間を車幅方向に連結する連結フレーム部材(35〜40のうち少なくとも35〜37)を設け、該連結フレーム部材をフロアパネル(リヤフロア3参照)に固定したものである。
この構成によれば、車体の前後方向の耐力向上と併せて、上述の連結フレーム部材35〜37により車体の左右方向の耐力向上を図ることができ、特に車体のねじり剛性が向上する。
【0069】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のシートスライドレールは、実施例のロングレール16に対応し、
以下同様に、
シートスライドレールが配設されるフロアパネルは、リヤフロア3に対応し、
ホイールハウスは、リヤホイールハウス5に対応し、
前列シートは、第2列目シート18に対応し、
後列シートは、第3列目シート19に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の車両の下部車体構造を示す斜視図
【図2】車両の下部車体構造を示す平面図
【図3】シートを取外した状態の平面図
【図4】図2の要部側面図
【図5】図3のA−A線に沿う要部拡大断面図
【図6】連結構造の他の実施例を示す断面図
【図7】図3の部分斜視図
【図8】図7のB−B線矢視断面図
【図9】ロングレールとホイールハウスとの連結構造の他の実施例を示す部分斜視図
【図10】連結部材の他の実施例を示す断面図
【図11】連結部材取付け構造の他の実施例を示す断面図
【図12】図3のC−C線に沿う要部拡大断面図
【図13】連結構造の他の実施例を示す断面図
【図14】連結構造のさらに他の実施例を示す断面図
【図15】図3のD−D線矢視断面図
【図16】サイドシルとロングレールとの連結構造の他の実施例を示す断面図
【図17】サイドシルとロングレールとの連結構造のさらに他の実施例を示す断面図
【符号の説明】
【0071】
3…リヤフロア(フロアパネル)
5…リヤホイールハウス(ホイールハウス)
5a…後ろ側面
16…ロングレール(シートスライドレール)
18,19…シート
31…連結部材
35〜37…連結フレーム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシートとを備えた車両において、
上記フロアパネル側部の車輪と対応した位置には、車室内方向に膨出されたホイールハウスが設けられ、
上記ホイールハウスと上記シートスライドレールとを連結する連結部材が設けられた
車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記ホイールハウスに対して上記シートスライドレールは近接して前後方向に延設され、
上記連結部材は該シートスライドレールの後部と上記ホイールハウスの後ろ側面とを接続するように前後方向に延設された
請求項1記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
上記連結部材は上記シートスライドレールの側面部に接続され、該連結部材の一部がシートスライドレールに並設された
請求項1または2記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記車室内には前後方向に複数のシートが配設され、
上記シートは後列シートであって、上記ホイールハウスは後部フロアパネルに設けられたリヤホイールハウスである
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記ホイールハウスおよび上記シートスライドレールは車幅方向に一対配設され、
該シートスライドレールは同じシートを支持している
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記シートスライドレールは前列シートと後列シートとで共用される
請求項4または5記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
上記シートスライドレールの間を車幅方向に連結する連結フレーム部材を設け、
該連結フレーム部材をフロアパネルに固定した
請求項1〜6の何れか1に記載の車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−68735(P2008−68735A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249195(P2006−249195)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】