説明

車両の制動制御装置、及び車両の制動制御方法

【課題】制動装置全体の消費電力の増加を抑制しつつ、ブレーキロータ及びブレーキパッドの偏摩耗の発生を抑制できる車両の制動制御装置、及び車両の制動制御方法を提供する。
【解決手段】ECUは、路面判定処理を実行して車両の走行する路面の悪路指数を演算する(ステップS10)。そして、ECUは、ステップS10にて演算した悪路指数に基づき、車両の走行する路面が凹凸度合の比較的大きな悪路から凹凸度合の比較的小さな良路に変わったか否かを判定する(ステップS11)。この判定結果が肯定判定である場合、ECUは、路面が悪路から良路に変わったと判断し、モータを駆動させてホイールシリンダ内にブレーキ液を流入させる(ステップS13)。すると、各ブレーキパッドがブレーキロータに摺接する結果、ブレーキロータの各ブレーキパッドに対する傾斜が解消される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された車輪に制動力を付与するための車両の制動制御装置、及び車両の制動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に搭載されるディスクブレーキは、車輪と一体に回転するブレーキロータと、該ブレーキロータの摺接面に圧接可能なブレーキパッドとを備えている。そして、ブレーキパッドは、車輪に対応するホイールシリンダ内の液圧が増圧される場合にはブレーキロータに接近する方向に移動する一方、ホイールシリンダ内の液圧が減圧される場合にはブレーキロータから離間する方向に移動するようになっている。
【0003】
ところで、このようなディスクブレーキを搭載した車両では、路面の凹凸具合が大きい悪路を走行する場合や旋回走行する場合に、車輪が路面から反力を受け、ブレーキロータがブレーキパッドに対して傾斜してしまうことがある。このように傾斜したブレーキロータがブレーキパッドに接触してしまった場合には、ブレーキパッドがブレーキロータから離間する方向に移動するノックバックという現象が発生することがある。そして、ノックバックが発生した状態で運転手がブレーキペダルを操作した場合、ノックバックが発生していない場合に比して操作量が多くなり、運転手に対してブレーキペダルの操作に起因した違和感を与えてしまうおそれがあった。そこで、このようなノックバックの発生を回避する方法として、例えば特許文献1に記載の制動装置が従来から提案されている。
【0004】
この特許文献1に記載の制動装置は、運転手によるブレーキペダルの操作具合に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダとホイールシリンダとを連結する液圧回路と、該液圧回路上に配置され、ホイールシリンダ内のブレーキ液圧を保持する際に駆動する保持弁とを備えている。そして、このような制動装置では、運転手によるブレーキペダルの操作が解消された後、ホイールシリンダ内のブレーキ液圧を保持すべく保持弁が駆動する。そのため、車両の走行中に路面が悪路であることなどの原因でブレーキロータがブレーキパッドに対して傾斜し、ブレーキロータがブレーキパッドに接触しても、保持弁の駆動によりホイールシリンダ内のブレーキ液圧が保持される結果、ブレーキパッドのブレーキロータから離間する方向への移動が回避されていた。
【特許文献1】特開平7―12145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の制動装置では、ブレーキペダルが操作されていない場合には、ホイールシリンダ内のブレーキ液圧を保持すべく保持弁が駆動し続けることになる。そのため、制動装置全体の消費電力が非常に多くなるという問題があった。
【0006】
また、車両の走行中にブレーキロータがブレーキパッドに対して傾斜してしまった場合には、ブレーキパッドがブレーキロータから離間する方向に移動しない。そのため、ブレーキロータの一部がブレーキパッドに接触した状態で車両が走行した場合には、ブレーキロータ及びブレーキパッドに偏摩耗がそれぞれ発生する。こうしたブレーキロータ及びブレーキパッドの偏摩耗が大きく成長した場合には、車両の制動時に車体が振動する、いわゆるブレーキジャダーが発生するおそれがあった。さらに、ブレーキロータが傾斜しないようにするための制動装置の駆動は、可能な限り経済的に行うことが望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、制動装置全体の消費電力の増加を抑制しつつ、ブレーキロータ及びブレーキパッドの偏摩耗の発生を抑制できる車両の制動制御装置、及び車両の制動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、車両の制動制御装置にかかる請求項1に記載の発明は、車輪(FR,FL,RR,RL)と一体に回転するブレーキロータ(50)と、該ブレーキロータ(50)に対して接離する方向に相対的に移動可能なブレーキパッド(51,52)と、該ブレーキパッド(51,52)を前記ブレーキロータ(50)に相対的に接近させるべく駆動力を付与する制動装置(13)とを有する車両に搭載され、前記制動装置(13)の駆動を制御する車両の制動制御装置(14)であって、車両の走行する路面の凹凸度合を悪路指数(Nrw)として予め設定された所定周期(T)毎に演算する悪路指数演算手段(14、S20、S50)と、該悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前記悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御する制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、車両の走行する路面の悪路指数が小さくなる毎に、ブレーキパッドは、ブレーキロータに相対的に接近する。その結果、車両の悪路走行中に該悪路からの反力を車輪が受けたことに起因してブレーキロータがブレーキパッドに対して傾斜した場合であっても、ある程度定期的にブレーキロータの傾斜が解消される。しかも、こうした制動装置は、車両の悪路走行中、駆動し続けるわけではないため、車両の走行中、制動装置が駆動し続ける場合に比して、制動装置全体の消費電力が低減する。したがって、制動装置全体の消費電力の増加を抑制しつつ、ブレーキロータ及びブレーキパッドの偏摩耗の発生を抑制できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動制御装置において、前記制御手段(14、S13,S14,S15)は、前記悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された悪路指数(Nrw)が、前記路面が凹凸度合の比較的大きい悪路であるか又は凹凸度合の比較的小さい良路であるかを判断する基準値として予め設定された悪路指数閾値(KNrw)以上である状態から該悪路指数閾値(KNrw)未満になった場合に、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御することを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、車両の走行する路面が悪路から良路に変わった場合に、ブレーキパッドは、ブレーキロータに相対的に接近する。すなわち、悪路指数が悪路を示す数値から良路を示す数値まで低下した場合に、ブレーキパッドを、ブレーキロータに相対的に接近させる制動制御が実行される。その結果、車両の悪路走行中に該悪路からの反力を車輪が受けたことに起因してブレーキロータがブレーキパッドに対して傾斜した場合であっても、車両の悪路走行終了後にブレーキロータの傾斜が解消される。そのため、車両の走行中にブレーキロータの一部がブレーキパッドに接触し続けることが回避される結果、ブレーキロータ及びブレーキパッドの偏摩耗の発生が抑制される。しかも、車両の走行する路面が悪路から良路に変わってからブレーキロータの傾斜を解消させるため、制動装置を必要最低限度だけ駆動させるだけでブレーキロータの傾斜を解消できると共に、該ブレーキロータの姿勢を良好に維持できる。また、車両の悪路走行が未経験である場合及び悪路を走行している場合には、制動装置の駆動が規制されるため、車両の走行中、制動装置が駆動し続ける場合に比して、制動装置全体の消費電力が低減する。したがって、制動装置全体の消費電力の増加を抑制しつつ、ブレーキロータ及びブレーキパッドの偏摩耗の発生を抑制できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の制動制御装置において、前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、予め設定された所定時間(KTm)の間、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御することを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、車両の走行する路面の悪路指数の低下に基づきブレーキパッドをブレーキロータに接近させるために制動装置が駆動する時間は、予め設定された所定時間だけである。そのため、制動装置を駆動させるタイミングになってから継続的に制動装置が駆動し続ける場合に比して、制動装置全体の消費電力の低減に貢献できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、該前回の悪路指数(Nrw_b)に応じた大きさ以上の駆動力が前記ブレーキパッド(51,52)に付与されるように前記制動装置(13)の駆動を制御することを要旨とする。
【0015】
一般に、車両の走行する路面の悪路指数、即ち、凹凸度合が大きいほど、車輪が路面から受ける反力が大きくなり、ブレーキロータのブレーキパッドに対する傾斜度合も大きくなる。すなわち、ブレーキロータのブレーキパッドから離間する方向への移動量も多くなる。この点、本発明では、車両の走行する路面の悪路指数が低下した場合には、低下前における悪路指数の大きさに対応する大きさ以上の駆動力がブレーキパッドに付与される。そのため、車両が走行する路面の凹凸度合に関係なく、ブレーキパッドをブレーキロータに確実に接触させて該ブレーキロータの傾斜を解消させることが可能になる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の車両の制動制御装置において、前記制御手段(14、S13,S14,S15)は、前記悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された悪路指数(Nrw)が前記悪路指数閾値(KNrw)以上である状態から該悪路指数閾値(KNrw)未満になった場合に、車両の悪路走行中に前記悪路指数演算手段(14、S20)によって演算された悪路指数(Nrw)の最大値(Nrw_max)が大きいほど、前記ブレーキパッド(51,52)に付与される駆動力が大きくなるように前記制動装置(13)の駆動を制御することを要旨とする。
【0017】
一般に、車両の走行する路面の悪路指数、即ち、凹凸度合が大きいほど、車輪が路面から受ける反力が大きくなり、ブレーキロータのブレーキパッドに対する傾斜度合も大きくなる。すなわち、ブレーキパッドのブレーキパッドから離間する方向への移動量も多くなる。この点、本発明では、車両の悪路走行中における悪路指数の最大値が大きいほど、ブレーキパッドに付与される駆動力が大きくなる。そのため、車両が走行した路面の凹凸度合に関係なく、ブレーキパッドをブレーキロータに確実に接触させて該ブレーキロータの傾斜を解消させることが可能になる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、前記ブレーキパッド(51,52)が前記ブレーキロータ(50)に接触するように予め設定された所定駆動力を前記ブレーキパッド(51,52)に付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御することを要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、車両の悪路走行中における悪路指数の大きさによって駆動力を変更する場合に比して、制御手段の制御負荷が低減される。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さくなってから、前記制動装置(13)の駆動が開始するタイミングになるまでの間に、車輪(FR,FL,RR,RL)に制動力が付与された場合には、前記制動装置(13)の駆動を規制することを要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、車両の走行する路面の悪路指数の低下が確認されてから、ブレーキロータのブレーキパッドに対する傾斜を解消させるべく制動装置が駆動を開始する前までに、車輪に制動力が付与された場合、ブレーキロータのブレーキパッドに対する傾斜が解消された可能性が高い。そのため、こうした場合には、制動装置の駆動が規制される。したがって、ブレーキロータの傾斜が解消されているにも関わらず、制動装置を不必要に駆動させることが回避される。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項2又は請求項5に記載の車両の制動制御装置において、前記制御手段(14、S13,S14,S15)は、前記悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された悪路指数(Nrw)が前記悪路指数閾値(KNrw)以上になってから、悪路指数(Nrw)が前記悪路指数閾値(KNrw)未満になって前記制動装置(13)の駆動が開始するタイミングになるまでの間に、車輪(FR,FL,RR,RL)に制動力が付与された場合には、前記制動装置(13)の駆動を規制することを要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、車両の悪路走行中や悪路走行後に車輪に制動力が付与された場合、悪路走行が開始してから制動装置の駆動が開始するタイミングまでの間に、ブレーキパッドがブレーキロータに一度は接触したことになる。すなわち、ブレーキロータのブレーキパッドに対する傾斜が解消された可能性が高い。そのため、車両の悪路走行中や悪路走行後に車輪に制動力が付与された場合には、制動装置の駆動が規制される。したがって、ブレーキロータの傾斜が解消されているにも関わらず、制動装置を不必要に駆動させることが回避される。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、車両の車体速度(VS)を演算する車体速度演算手段(14、S35、S63)をさらに備え、前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合において、前記車体速度演算手段(14、S35、S63)にて演算された車体速度(VS)が予め設定された車体速度閾値(KVS)以上であるときに、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御することを要旨とする。
【0024】
一般に、車両の車体速度が車体速度閾値未満である場合には、ブレーキパッドをブレーキロータに接触させることにより発生した制動力が非常に小さくても、運転手に減速感、いわゆる引きずり感を与えてしまうことがある。この点、本発明では、車両の走行する路面の悪路指数が低下した場合であっても、車体速度が車体速度閾値未満である場合には、ブレーキパッドの傾斜を解消させるための制動装置の駆動が規制される。そのため、運転手に不必要に減速感を与えてしまうことが抑制される。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、車両の横方向加速度(Gy)を演算する横方向加速度演算手段(14、S37、S65)をさらに備え、前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合において、前記横方向加速度演算手段(14、S37、S65)にて演算された横方向加速度(Gy)が予め設定された横方向加速度閾値(KGy)以下であるときに、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御することを要旨とする。
【0026】
上記構成によれば、車両の走行する路面の悪路指数が低下した場合において車両の横方向加速度が横方向加速度閾値以下であるとき、即ち、車両の挙動が安定しているときに、ブレーキパッドをブレーキロータに接触させる。
【0027】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、車両の進行方向における減速度(Gx)を演算する減速度演算手段(14、S39、S67)をさらに備え、前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合において、前記減速度演算手段(14、S39、S67)にて演算された進行方向における減速度(Gx)が予め設定された減速度閾値(KGx)以下であるときに、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御することを要旨とする。
【0028】
上記構成によれば、車両の走行する路面の悪路指数が低下した場合において車両の減速度が減速度閾値以下であるときには、運転手に車両を加速させる意志があると判断し、ブレーキパッドをブレーキロータに接触させる。すなわち、車両の加速時にブレーキパッドをブレーキロータに接触させるため、ブレーキパッドをブレーキロータに接触させることに起因した減速感を運転手に与えることが回避される。
【0029】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜請求項11のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置において、前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合において、車両を加速させるべくアクセルペダル(10)が操作されていることを検出したときに、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御することを要旨とする。
【0030】
上記構成によれば、運転手によるアクセルペダルの操作に基づき運転手に車両を加速させる意志があると判断された場合には、ブレーキパッドをブレーキロータに接触させる。すなわち、車両の加速時にブレーキパッドをブレーキロータに接触させるため、ブレーキパッドをブレーキロータに接触させることに起因した減速感を運転手に与えることが回避される。
【0031】
一方、車両の制動制御方法にかかる請求項13に記載の発明は、車輪(FR,FL,RR,RL)と一体に回転するブレーキロータ(50)と、該ブレーキロータ(50)に対して接離する方向に相対的に移動可能なブレーキパッド(51,52)と、該ブレーキパッド(51,52)を前記ブレーキロータ(50)に相対的に接近させるべく駆動力を付与する制動装置(13)とを有する車両において、前記ブレーキパッド(51,52)を前記ブレーキロータ(50)に接近する方向に移動させるべく前記制動装置(13)を制御する車両の制動制御方法であって、車両の走行する路面の凹凸度合が悪路指数(Nrw)として予め設定された所定周期(T)毎に演算される悪路指数演算ステップ(S20、S50)と、該悪路指数演算ステップ(S20、S50)で演算した今回の悪路指数(Nrw)が、前記悪路指数演算ステップ(S20、S50)で演算した前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、前記ブレーキパッド(51,52)が前記ブレーキロータ(50)に相対的に接近するように前記制動装置(13)を駆動させる駆動ステップ(S13,S14,S15、S54,S55,S56)と、を有することを要旨とする。
【0032】
上記構成によれば、請求項1に記載の発明と同等の作用効果を得ることができる。
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の車両の制動制御方法において、前記駆動ステップ(S13,S14,S15)では、悪路指数演算ステップ(S20)で演算した悪路指数(Nrw)が、前記路面が凹凸度合の比較的大きい悪路であるか又は凹凸度合の比較的小さい良路であるかを判断する基準値として予め設定された悪路指数閾値(KNrw)以上である状態から該悪路指数閾値(KNrw)未満になった場合に、前記ブレーキパッド(51,52)が前記ブレーキロータ(50)に相対的に接近するように前記制動装置(13)を駆動させることを要旨とする。
【0033】
上記構成によれば、請求項2に記載の発明と同等の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図9に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
【0035】
図1に示すように、本実施形態の車両は、右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RLを有する自動四輪車両であって、運転手によるアクセルペダル10の踏込み操作に基づいた駆動力が駆動輪(例えば後輪RR,RL)に伝達されることにより走行する。このような車両には、運転手によるブレーキペダル11の踏込み操作に基づいた液圧としてのブレーキ液圧を発生させる液圧発生装置12と、該液圧発生装置12に接続され、各車輪FL,FR,RL,RRに制動力を付与するための制動装置13とが設けられており、該制動装置13は、その駆動が制動制御装置としての電子制御装置(以下、「ECU」という。)14によって制御される。また、車両には、運転手によるブレーキペダル11の踏込み操作又は制動装置13の駆動に基づき車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与するディスクブレーキ装置15が車輪FR,FL,RR,RL毎に設けられている。
【0036】
初めに、液圧発生装置12について、図2に基づき説明する。
図2に示すように、液圧発生装置12には、運転手によるブレーキペダル11の踏力を倍力するためのブースタ16と、該ブースタ16によって倍力された運転手によるブレーキペダル11の踏力に応じたブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ17とが設けられている。そして、マスタシリンダ17内で発生したブレーキ液圧は、制動装置13側に供給される。すなわち、マスタシリンダ17からは、運転手によるブレーキペダル11の踏込み量に対応した量のブレーキ液が制動装置13側に供給される。また、液圧発生装置12には、ブレーキスイッチSW1が設けられ、該ブレーキスイッチSW1からは、ブレーキペダル11の操作状況に応じた信号がECU14に出力される。
【0037】
次に、制動装置13について図1及び図2に基づき説明する。
図1及び図2に示すように、制動装置13は、マスタシリンダ17に接続される2つの液圧回路18,19を備え、各液圧回路18,19とマスタシリンダ17とを連結する連結流路20,21には、比例差圧弁22,23がそれぞれ設けられている。これら各比例差圧弁22,23は、常開型の比例電磁弁24,25(「圧力調整弁」ともいう。)と、該比例電磁弁24,25と並列関係をなすリリーフ弁26,27とからそれぞれ構成されている。本実施形態の比例電磁弁24,25を構成する図示しない弁座と弁との間の通路は、比例電磁弁24,25のマスタシリンダ17側と該マスタシリンダ17の反対側との間で圧力差を発生させるために、連結流路20,21よりも幅狭となるオリフィスになっている。
【0038】
また、第1液圧回路18には、右前輪FRに制動力を付与するためのホイールシリンダ28aと、左後輪RLに制動力を付与するためのホイールシリンダ28dとが接続されている。また、第2液圧回路19には、左前輪FLに制動力を付与するためのホイールシリンダ28bと、右後輪RRに制動力を付与するためのホイールシリンダ28cとが接続されている。そして、各ホイールシリンダ28a〜28d内のブレーキ液圧の変化に応じて、各ディスクブレーキ装置15がそれぞれ駆動する。
【0039】
また、第1液圧回路18には、ホイールシリンダ28aに接続される右前輪用経路29aと、ホイールシリンダ28dに接続される左後輪用経路29bとが形成されている。同様に、第2液圧回路19には、ホイールシリンダ28bに接続される左前輪用経路30aと、ホイールシリンダ28cに接続される右後輪用経路30bとが形成されている。そして、これら各経路29a,29b,30a,30b上には、ホイールシリンダ28a〜28d内のブレーキ液圧の増圧を規制する際に駆動する常開型の第1電磁弁31,32,33,34(「保持弁」ともいう。)と、ホイールシリンダ28a〜28d内のブレーキ液圧を減圧させる際に駆動する常閉型の第2電磁弁35,36,37,38(「減圧弁」ともいう。)がそれぞれ設けられている。
【0040】
また、各液圧回路18,19上には、各ホイールシリンダ28a〜28d内から第2電磁弁35〜38を介して流出したブレーキ液を一時貯留するためのリザーバ39,40と、モータMの回転に基づき駆動するポンプ41,42とがそれぞれ設けられている。これら各ポンプ41,42は、吸入用流路43,44を介してリザーバ39,40に接続されると共に、供給用流路45,46を介して液圧回路18,19における第1電磁弁31〜34と比例差圧弁22,23との間の部位にそれぞれ接続されている。また、各吸入用流路43,44には、マスタシリンダ17側に向けて分岐された分岐液圧路47,48がそれぞれ形成されている。そして、ポンプ41,42は、モータMが回転した場合に、リザーバ39,40及びマスタシリンダ17側から吸入用流路43,44を介してブレーキ液を吸引し、該ブレーキ液を供給用流路45,46内に吐出する。
【0041】
次に、ディスクブレーキ装置15について図3(a)(b)に基づき説明する。なお、車輪FR,FL,RL,RR毎に設けられたディスクブレーキ装置15は、互いに略同一構成であるため、左前輪FL用のディスクブレーキ装置15についてのみ説明し、他の車輪FR.RR,RL用のディスクブレーキ装置15については、その説明を省略するものとする。
【0042】
図3(a)(b)に示すように、ディスクブレーキ装置15は、左前輪FLと一体に回転するブレーキロータ50と、該ブレーキロータ50の第1摺接面50aに対向した状態で配置されるブレーキパッド51と、ブレーキロータ50の第2摺接面50bに対向した状態で配置されるブレーキパッド52とを備えている。これら各ブレーキパッド51,52は、ホイールシリンダ28a内に制動装置13側からブレーキ液が流入しない場合、それぞれが対向する摺接面50a,50bとの間に所定間隔のクリアランスCが介在した状態でそれぞれ配置されている。
【0043】
その一方、各ブレーキパッド51,52は、ホイールシリンダ28a内に制動装置13側からブレーキ液が流入した場合、そのブレーキ液の流入量に対応した駆動力が付与されることにより、ブレーキロータ50に相対的に接近するようにそれぞれ構成されている。そして、各ブレーキパッド51,52がブレーキロータ50の各摺接面50a,50bに摺接した状態でブレーキ液がホイールシリンダ28a内にさらに流入した場合、各ブレーキパッド51,52がブレーキロータ50を互いに押圧する。その結果、左前輪FLには、ホイールシリンダ28a内のブレーキ液量、即ち、ブレーキ液圧に対応した大きさの制動力が付与される。
【0044】
このようなディスクブレーキ装置15のブレーキロータ50には、車両の走行する路面からの反力が左前輪FLを介して付与される。こうした路面からの反力が大きい場合には、図4に示すように、ブレーキロータ50が各ブレーキパッド51,52に対して傾斜することがある。そして、ブレーキロータ50の傾斜度合が大きい場合、ブレーキパッド51は、各ブレーキパッド51,52のうち少なくとも一方がブレーキロータ50に押圧され、該ブレーキロータ50から離間する方向に移動する。この状態で各ブレーキパッド51,52をブレーキロータ50の摺接面50a,50bに摺接させるためには、ブレーキパッド51がブレーキロータ50に押圧されない場合に比して、ホイールシリンダ28a内に多くのブレーキ液を流入させる必要がある。
【0045】
次に、ECU14の構成について図1及び図2に基づき説明する。
図1及び図2に示すように、ECU14の図示しない入力側インターフェースには、ブレーキスイッチSW1、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を演算するための車輪速度センサSE1,SE2,SE3,SE4及びアクセルペダル10の開度を演算するためのアクセル開度センサSE5が電気的に接続されている。また、入力側インターフェースには、車両の前後方向における減速度を演算するための前後方向減速度センサSE6、及び車両の横方向加速度を演算するための横方向加速度を演算するための横方向加速度センサSE7が電気的に接続されている。なお、前後方向減速度センサSE6は、車両が前方向に減速している場合には正の値を示す信号を出力する一方、加速している場合には負の値を示す信号を出力するように設定されている。
【0046】
また、ECU14の図示しない出力側インターフェースには、各比例電磁弁24,25、各第1電磁弁31〜34、各第2電磁弁35〜38及びモータMが電気的に接続されている。そして、ECU14は、ブレーキスイッチSW1及び各種センサSE1〜SE7からの入力信号に基づき、各比例電磁弁24,25、各第1電磁弁31〜34、各第2電磁弁35〜38及びモータMの駆動を個別に制御する。
【0047】
ECU14には、CPU55、ROM56及びRAM57が設けられている。ROM56には、各種制御処理(後述するブレーキ液供給制御処理など)、各種マップ(図5に示すマップなど)及び各種閾値(後述する所定時間、第1分散閾値、第2分散閾値、第3分散閾値、悪路指数閾値、車体速度閾値、横方向加速度閾値、減速度閾値、開度閾値など)が予め記憶されている。また、RAM57には、車両の図示しないイグニッションスイッチが「オン」である間、適宜書き換えられる各種情報(後述する車輪加速度、フィルタ後車輪加速度、分散値、悪路指数、悪路指数最大値、車体速度、横方向加速度、前後方向減速度、アクセルペダル10の開度、駆動時間、駆動フラグ、悪路フラグなど)が一時記憶される。
【0048】
次に、ROM56に記憶されるマップについて図5に基づき説明する。
図5に示すマップは、車両の走行する路面が凹凸度合の比較的大きな悪路から凹凸度合の比較的小さい良路に変わった場合に、モータMの駆動態様を設定するためのマップであって、車両の悪路走行時における悪路指数Nrwとポンプ41,42からの単位時間あたりのブレーキ液の吐出量Sとの関係を示している。なお、「悪路指数Nrw」とは、路面の凹凸度合を数値的に示したものであって、その値が大きいほど凹凸度合が大きいことになる。
【0049】
図5に示すマップにおいて、ポンプ41,42からの単位時間あたりのブレーキ液の吐出量Sが、悪路指数Nrwが大きいほど大きくなるように設定される。具体的には、車両の走行した路面の悪路指数Nrwが「0(零)」である場合、車両が、路面から車輪FR,FL,RR,RLが受ける反力が非常に小さい良路を走行していたため、吐出量Sは、「0(零)」に設定される。また、車両の走行した路面の悪路指数Nrwが「1」である場合、路面が良路である場合に比して路面から車輪FR,FL,RR,RLが受ける反力が大きかったため、吐出量Sは、第1吐出量S1に設定される。この第1吐出量S1は、各ホイールシリンダ28a〜28d内のブレーキ液圧を「0.1MPa」に調圧可能な吐出量である。
【0050】
また、車両の走行した路面の悪路指数Nrwが「2」である場合、路面の悪路指数Nrwが「1」である場合に比して路面から車輪FR,FL,RR,RLが受ける反力が大きかったため、吐出量Sは、第1吐出量S1よりも多い第2吐出量S2に設定される。この第2吐出量S2は、各ホイールシリンダ28a〜28d内のブレーキ液圧を「0.3MPa」に調圧可能な吐出量である。また、車両の走行した路面の悪路指数Nrwが「3」である場合、路面の悪路指数Nrwが「2」である場合に比して路面から車輪FR,FL,RR,RLが受ける反力が大きかったため、吐出量Sは、第2吐出量S2よりも多い第3吐出量S3に設定される。この第3吐出量S3は、各ホイールシリンダ28a〜28d内のブレーキ液圧を「0.5MPa」に調圧可能な吐出量である。
【0051】
なお、本実施形態において、悪路指数Nrwが「0(零)」の路面とはアスファルトなどで舗装された路面であり、悪路指数Nrwが「1」の路面とは砂利道である。また、悪路指数Nrwが「2」の路面とは石畳であり、悪路指数Nrwが「3」の路面とは凹凸度合が非常に大きな路面である。そして、本実施形態では、悪路指数Nrwが「1」以上の路面のことを悪路という。ただし、悪路指数Nrwが「1」の路面上を車両が走行する際、車輪FR,RL,RR,RLが路面から受ける反力は比較的小さく、ブレーキロータ50の各ブレーキパッド51,52に対する傾斜角は、非常に小さい。
【0052】
次に、ECU14が実行する各種制御処理のうち、上述したようなブレーキロータ50の各ブレーキパッド51,52に対する傾斜を解消させるためのブレーキ液供給制御処理ルーチンについて図6〜図8に示すフローチャート、及び図9(a)(b)に示すタイミングチャートに基づき説明する。
【0053】
さて、ECU14は、ブレーキ液供給制御処理ルーチンを所定周期毎(例えば「0.01秒」毎)に実行する。そして、このブレーキ液供給制御処理ルーチンにおいて、ECU14は、図7にて詳述する路面判定処理を実行する(ステップS10)。このステップS10では、車両の走行する路面の悪路指数Nrwが演算されると共に、該演算結果に基づき車両の走行する路面が悪路であるか又は良路であるかが判定される。続いて、ECU14は、図8にて詳述するブレーキ液供給処理を実行する(ステップS11)。このステップS11では、ホイールシリンダ28a〜28d内にブレーキ液を供給するための条件が揃っているか否かが判定されると共に、ポンプ41,42からの単位時間あたりのブレーキ液の吐出量S、即ち、モータMの駆動態様が設定される。
【0054】
そして、ECU14は、上記ステップS11の実行に基づき、モータMの駆動を許可するか否かを判断するための駆動フラグFLG1が「1」にセットされているか否かを判定する(ステップS12)。この駆動フラグFLG1は、ホイールシリンダ28a〜28d内にブレーキ液を供給するための条件が揃っている場合には「1」にセットされる一方、条件が揃っていない場合には「0(零)」にセットされるフラグである。ステップS12の判定結果が否定判定(FLG1=「0」)である場合、ECU14は、車両が悪路走行中であるか又は悪路走行を未経験であると判断し、ブレーキ液供給制御処理ルーチンを一旦終了する。
【0055】
一方、ステップS12の判定結果が肯定判定(FLG1=「1」)である場合、ECU14は、ステップS11にて設定された吐出量Sのブレーキ液をポンプ41,42から吐出させるべくモータMの駆動が制御する(ステップS13)。そして、ECU14は、モータMの駆動が開始されてからの経過時間である駆動時間Tmが予め設定された所定時間KTm(例えば「2秒」)以上であるか否かを判定する(ステップS14)。この所定時間KTmは、各ブレーキパッド51,52をブレーキロータ50の摺接面50a,50bに摺接させ、ブレーキロータ50の各ブレーキパッド51,52の傾斜を解消させるために必要な時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。また、ブレーキロータ50と各ブレーキパッド51,52とが接触する時間が長すぎると、該接触に基づく車輪FR,FL,RR,RLへの制動力の付与が運転手に気付かれる可能性が高くなる。そのため、所定時間KTmは、ブレーキロータ50と各ブレーキパッド51,52との接触が運転手に気付かれない程度の短時間(「3秒」以下)に設定することが望ましい。
【0056】
ステップS14の判定結果が否定判定(Tm<KTm)である場合、ECU14は、ステップS14の判定結果が肯定判定になるまでステップS13,S14の各処理を繰り返し実行する。一方、ステップS14の判定結果が肯定判定(Tm≧KTm)である場合、ECU14は、モータMの駆動を停止させる(ステップS15)。したがって、この点で、本実施形態では、ECU14が、制御手段としても機能する。また、ステップS13,S14,S15により、駆動ステップが構成される。
【0057】
そして、ECU14は、駆動フラグFLG1を「0(零)」にリセットし(ステップS16)、後述する悪路指数最大値Nrw_maxを初期値(本実施形態では「0(零)」)にリセットする(ステップS17)。続いて、ECU14は、車両が悪路走行を経験したか否かを判断するための悪路フラグFLG2を「0(零)」にリセットする(ステップS18)。この悪路フラグFLG2は、悪路走行を経験した場合には「1」にセットされる一方、悪路走行が未経験である場合には「0(零)」にセットされるフラグである。その後、ECU14は、ブレーキ液供給制御処理ルーチンを一旦終了する。
【0058】
次に、上記ステップS10の路面判定処理ルーチン(路面判定処理)について図7に示すフローチャート及び図9(a)(b)に示すタイミングチャートに基づき説明する。
さて、路面判定処理ルーチンにおいて、ECU14は、路面の凹凸度合を示す悪路指数Nrwを演算する(ステップS20)。具体的には、ECU14は、各車輪速度センサSE1〜SE4からの信号に基づき各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を演算し、該車輪速度を微分することにより各車輪FR,FL,RR,RLの車輪加速度DVW(図9(a)(b)参照)を演算する。そして、ECU14は、車輪加速度DVWの高周波成分を取り出すフィルタリング処理を行うことにより、低周波成分が除去されたフィルタ後車輪加速度DVWFを車輪FR,FL,RR,RL毎に取得する。
【0059】
すなわち、図9(a)に示すように、フィルタリング処理前の車輪FR,FL,RR,RLの車輪加速度DVWには、本来の車輪FR,FL,RR,RLの加速度成分と、路面から受ける反力に基づく振動成分とが含まれている。このような振動成分の変動を示す振動周波数は、加速度成分の変動を示す加速度周波数に比して高周波になる。そこで、本実施形態では、上記フィルタリング処理、即ち、ハイパスフィルタを用いることにより、図9(b)に示すように、フィルタ後車輪加速度DVWFが車輪加速度DVWから取り出される。
【0060】
その後、所定サンプル数のフィルタ後車輪加速度DVWFを車輪FR,FL,RR,RL毎に取得した場合、ECU14は、フィルタ後車輪加速度DVWFの分散値を車輪FR,FL,RR,RL毎に演算する。これら分散値は、各フィルタ後車輪加速度DVWFを2乗した値を積算し、該積算値をサンプル数で除算した値である。そして、ECU14は、車輪FR,FL,RR,RL毎の各分散値の中の最大値(例えば左前輪FLに対応する分散値)が予め設定された第1分散閾値未満であった場合には悪路指数Nrwを「0(零)」と設定し、各分散値の中の最大値が第1分散閾値以上であって且つ該第1分散閾値よりも大きな値に予め設定された第2分散閾値未満であった場合には悪路指数Nrwを「1」に設定する。また、ECU14は、車輪FR,FL,RR,RL毎の各分散値の中の最大値が第2分散閾値以上であって且つ該第2分散閾値よりも大きな値に予め設定された第3分散閾値未満である場合には悪路指数Nrwを「2」に設定し、各分散値の中の最大値が第3分散閾値以上である場合には悪路指数Nrwを「3」に設定する。各分散閾値は、分散値の大きさによって悪路指数Nrwを「0(零)」〜「3」に設定するための値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。したがって、この点で、本実施形態では、ECU14が、悪路指数演算手段としても機能する。また、ステップS20が、悪路指数演算ステップに相当する。
【0061】
続いて、ECU14は、ステップS20にて演算した悪路指数Nrwが予め設定された悪路指数閾値KNrw(本実施形態では「1」)以上であるか否かを判定する(ステップS21)。この悪路指数閾値KNrwは、車両の走行する路面が悪路であるか良路であるかを判断するための基準値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS21の判定結果が否定判定(Nrw<KNrw)である場合、ECU14は、車両が良路を走行中であると判定し、ブレーキ液供給制御処理ルーチンを終了する。
【0062】
一方、ステップS21の判定結果が肯定判定(Nrw≧KNrw)である場合、ECU14は、ステップS20にて演算した悪路指数NrwがRAM57に記憶されている悪路指数最大値Nrw_maxよりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。この判定結果が否定判定(Nrw≦Nrw_max)である場合、ECU14は、その処理を後述するステップS24に移行する。一方、ステップS22の判定結果が肯定判定(Nrw>Nrw_max)である場合、ECU14は、悪路指数最大値Nrw_maxをステップS20にて演算した悪路指数Nrwに更新し(ステップS23)、その後、その処理を次のステップS24に移行する。
【0063】
ステップS24において、ECU14は、悪路フラグFLG2を「1」にセットし、その後、ブレーキ液供給制御処理ルーチンを終了する。
次に、上記ステップS11のブレーキ液供給制御判定処理ルーチン(ブレーキ液供給制御判定処理)について図8に示すフローチャートに基づき説明する。
【0064】
さて、ブレーキ液供給制御判定処理ルーチンにおいて、ECU14は、悪路フラグFLG2が「1」にセットされているか否かを判定する(ステップS30)。続いて、ECU14は、上記ステップS20にて演算した現在の悪路指数Nrwが悪路指数閾値KNrw未満であるか否かを判定する(ステップS31)。すなわち、ステップS30,S31では、車両の走行する路面が悪路から良路に変わったか否かが判定される。そして、ECU14は、各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも一つの車輪に制動力が付与されていないか否かを判定する(ステップS32)。具体的には、ECU14は、運転手によってブレーキペダル11が踏込み操作されている場合及びモータMが駆動中である場合に、各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも一つの車輪に制動力が付与されていると判定する。
【0065】
ステップS32の判定結果が否定判定である場合、ECU14は、悪路指数最大値Nrw_maxを初期値(本実施形態では「0(零)」)にリセットする(ステップS33)。続いて、ECU14は、悪路フラグFLG2を「0(零)」にセットし(ステップS34)、その後、ブレーキ液供給制御判定処理ルーチンを終了する。
【0066】
一方、ステップS32の判定結果が肯定判定である場合、ECU14は、各車輪速度センサSE1〜SE4からの各信号に基づき各車輪FR,FL、RL,RRの車輪速度を演算し、これら各車輪速度を用いて車両の車体速度VSを演算する(ステップS35)。この点で、本実施形態では、ECU14が、車体速度演算手段としても機能する。そして、ECU14は、ステップS35にて演算した車両の車体速度VSが予め設定された車体速度閾値KVS(本実施形態では「30km/h」)以上であるか否かを判定する(ステップS36)。この車体速度閾値KVSは、上記ステップS13の処理に基づくポンプ41,42の駆動に基づきホイールシリンダ28a〜28d内にブレーキ液が流入して各ブレーキパッド51,52がブレーキロータ50に摺接したことに起因した減速感を運転手に感じさせない最低限の速度であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0067】
ステップS36の判定結果が否定判定(VS<KVS)である場合、ECU14は、ブレーキ液供給制御判定処理ルーチンを終了する。一方、ステップS36の判定結果が肯定判定(VS≧KVS)である場合、ECU14は、横方向加速度センサSE7からの信号に基づき車両の横方向加速度Gyを演算する(ステップS37)。この点で、本実施形態では、ECU14が、横方向加速度演算手段としても機能する。続いて、ECU14は、ステップS37にて演算した横方向加速度Gyの絶対値が予め設定された横方向加速度閾値KGy以下であるか否かを判定する(ステップS38)。この横方向加速度閾値KGyは、車両の旋回に起因して車両の挙動が不安定であるか否かを判断するための値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0068】
ステップS38の判定結果が否定判定(Gyの絶対値>KGy)である場合、ECU14は、車両の挙動が不安定であると判断し、ブレーキ液供給制御判定処理ルーチンを終了する。一方、ステップS38の判定結果が肯定判定(Gyの絶対値≦KGy)である場合、ECU14は、前後方向減速度センサSE6からの信号に基づき車両の前後方向減速度Gxを演算する(ステップS39)。この点、本実施形態では、ECU14が、減速度演算手段としても機能する。続いて、ECU14は、ステップS39にて演算した前後方向減速度Gxが予め設定された減速度閾値KGx(本実施形態では「0(零)」)以下であるか否かを判定する(ステップS40)。この減速度閾値KGxは、車両が前方向に減速していないか否かを判断するための値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0069】
ステップS40の判定結果が否定判定(Gx>KGx)である場合、ECU14は、車両が減速中であると判断し、ブレーキ液供給制御判定処理ルーチンを終了する。一方、ステップS40の判定結果が肯定判定(Gx≦KGx)である場合、ECU14は、アクセル開度センサSE5からの信号に基づきアクセルペダル10の開度OPを演算する(ステップS41)。続いて、ECU14は、ステップS41にて演算した開度OPが予め設定された開度閾値KOP以上であるか否かを判定する(ステップS42)。この開度閾値KOPは、運転手に車両を加速させる意志があるか否かを判断するための値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0070】
ステップS42の判定結果が否定判定(OP<KOP)である場合、ECU14は、運転手に車両を加速させる意志がないと判断し、ブレーキ液供給制御判定処理ルーチンを終了する。一方、ステップS42の判定結果が肯定判定(OP≧KOP)である場合、ECU14は、RAM57に一時記憶されている悪路指数最大値Nrw_max(例えば「2」)に対応するポンプ41,42の単位時間あたりのブレーキ液の吐出量S(例えば第2吐出量S1)を、図5に示すマップから読み出す(ステップS43)。続いて、ECU14は、駆動フラグFLG1を「1」にセットし(ステップS44)、その後、ブレーキ液供給制御判定処理ルーチンを終了する。
【0071】
次に、本実施形態における車両の制動制御方法について説明する。なお、前提として、車両の悪路走行中における悪路指数最大値Nrw_maxは「3」であるものとし、悪路走行中にはブレーキペダル11が踏込み操作されなかったものとする。
【0072】
さて、車両が悪路を走行している場合、車輪FR,FL,RR,RLには、路面の悪路指数Nrwに対応した大きさの反力が路面から付与される。すると、車輪FR,FL,RR,RLと一体回転するブレーキロータ50は、路面からの反力に基づき各ブレーキパッド51,52に対して傾斜してしまう(図4参照)。このようにブレーキロータ50が傾斜した場合には、ブレーキロータ50がブレーキパッド51に接触し、該ブレーキパッド51は、ブレーキロータ50から離間する方向に移動する。この際、ブレーキロータ50の傾斜度合は、路面の悪路指数Nrwが大きいほど大きくなるため、車両の走行する路面の悪路指数Nrwが大きいほど、ブレーキロータ50から離間する方向へのブレーキパッド51の移動量が多くなる。
【0073】
そして、車両の走行する路面の悪路指数Nrwが「1」から「0(零)」に変わると、車両の悪路走行が終了したと判断され、モータMの駆動態様が設定される。すなわち、悪路指数Nrwが「1」,「2」,「3」の何れかの状態から悪路指数Nrwが「0(零)」の状態まで低下すると、制動装置13の駆動態様が設定される。この際、悪路走行中における悪路指数最大値Nrw_maxは「3」であるため、各ポンプ41,42から単位時間あたりのブレーキ液の吐出量Sが第3吐出量S3となるように、モータMの駆動態様が設定される。すなわち、各ポンプ41,42から単位時間あたりのブレーキ液の吐出量Sは、前回の悪路指数Nrw(この場合、「1」)に対応する吐出量(この場合、第1吐出量S1)よりも多い吐出量に設定される。そして、車両の車体速度VSが車体速度閾値KVS以上であること、車両の横方向加速度Gyの絶対値が横方向加速度閾値KGy以下であること、車両の前後方向減速度Gxが減速度閾値KGx以下であること、及びアクセルペダル10の開度OPが開度閾値KOP以上であることが確認されると、モータMが駆動し始める。
【0074】
すると、各ポンプ41,42からは、モータMの駆動に基づきブレーキ液が供給用流路45,46内に吐出される。そして、供給用流路45,46内のブレーキ液は、その一部が第1開閉弁31〜34を介してホイールシリンダ28a〜28d内に流入する一方、その残りが比例電磁弁24,25を介してマスタシリンダ17側に流動する。その結果、各ホイールシリンダ28a〜28d内におけるブレーキ液量が徐々に増加するため、その増加に伴いブレーキパッド51がブレーキロータ50に接近する。
【0075】
さらに各ホイールシリンダ28a〜28d内にブレーキ液が流入すると、ブレーキパッド51が、傾斜しているブレーキロータ50を押圧することにより、該ブレーキロータ50の傾斜が徐々に解消される。そして、さらに各ホイールシリンダ28a〜28d内にブレーキ液が流入すると、各ブレーキパッド51,52がブレーキロータ50の各摺接面50a,50bにそれぞれ摺接した状態になり、ブレーキロータ50の傾斜が解消される。この際、各車輪FR,FL,RR,RLには、制動力がほとんど付与されていない。そのため、車両の運転手は、減速感、即ち、引きずり感を感じることなく、車両を走行させることになる。
【0076】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)車両の走行する路面が悪路から良路に変わった場合に、ホイールシリンダ28a〜28dから駆動力が付与されることにより、ブレーキパッド51,52は、ブレーキロータ50に相対的に接近する。その結果、車両の悪路走行中に該悪路からの反力を車輪FR,FL,RR,RLが受けたことに起因してブレーキロータ50がブレーキパッド51,52に対して傾斜した場合であっても、車両の悪路走行終了後にブレーキロータ50の傾斜が解消される。そのため、車両の走行中にブレーキロータ50の一部がブレーキパッド51,52に接触し続けることが回避される結果、ブレーキロータ50及びブレーキパッド51,52の偏摩耗の発生が抑制される。しかも、車両の走行する路面が悪路から良路に変わってからブレーキロータ50の傾斜を解消させるため、制動装置13を必要最低限度だけ駆動させるだけでブレーキロータ50の傾斜を解消できると共に、該ブレーキロータ50の姿勢を良好に維持できる。また、車両の悪路走行中及び悪路走行が未経験である場合には制動装置13が駆動しない構成であるため、車両の走行中、制動装置13が駆動し続ける場合に比して、制動装置13全体の消費電力が低減する。したがって、制動装置13全体の消費電力の増加を抑制しつつ、ブレーキロータ50及びブレーキパッド51,52の偏摩耗の発生を抑制できる。
【0077】
(2)車両の悪路走行終了後にブレーキパッド51,52をブレーキロータ50に相対的に接近させるために制動装置13が駆動する時間は、予め設定された所定時間KTmだけである。そのため、車両の悪路走行が終了してから継続的に制動装置13が駆動し続ける場合に比して制動装置13の駆動時間が短縮される分だけ、制動装置13全体の消費電力の低減に貢献できる。
【0078】
(3)一般に、車両の走行する路面の悪路指数Nrwが大きいほど、車輪FR,FL,RR,RLが路面から受ける反力が大きくなり、ブレーキロータ50のブレーキパッド51,52に対する傾斜度合も大きくなる。すなわち、ブレーキパッド51のブレーキロータ50から離間する方向への移動量も多くなる。この点、本実施形態では、車両の悪路走行中における悪路指数Nrwの最大値である悪路指数最大値Nrw_maxが大きいほど、ホイールシリンダ28a〜28d内への単位時間あたりのブレーキ液の流入量が多くなる結果、ブレーキパッド51に付与される駆動力が大きくなる。そのため、ブレーキパッド51,52をブレーキロータ50に確実に接触させ、該ブレーキロータ50の傾斜を解消させることができる。
【0079】
(4)車両の悪路走行終了後においてブレーキロータ50の傾斜を解消すべく制動装置13を駆動させる前までに車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与された場合には、車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与するときにブレーキパッド51,52がブレーキロータ50に接触するため、ブレーキロータ50の傾斜が解消された可能性が高い。そのため、本実施形態では、車両の悪路走行終了後に車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力が付与された場合には、ブレーキロータ50の傾斜を解消するための制動装置13の駆動が規制される。したがって、ブレーキロータ50の傾斜が解消されているにも関わらず、制動装置13が不必要に駆動することを回避できる。
【0080】
(5)車両の車体速度VSが車体速度閾値KVS未満である場合には、ブレーキパッド51,52をブレーキロータ50に摺接させることによる制動力が非常に小さくても、運転手に減速感、いわゆる引きずり感を与えてしまうことがある。この点、本実施形態では、上記各ステップS13,S14,S15の各処理の開始タイミング時における車体速度VSが車体速度閾値KVS未満である場合、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるための制動装置13の駆動が規制される。そのため、運転手に不必要に減速感を与えてしまうことを抑制できる。
【0081】
(6)上記各ステップS13,S14,S15の各処理の開始タイミング時において車両の横方向加速度Gyの絶対値が横方向加速度閾値KGyを超えた場合には、ブレーキパッド51,52をブレーキロータ50に摺接させることにより、車両の挙動の不安定さを助長させるおそれがある。この点、本実施形態では、車両の横方向加速度Gyが横方向加速度閾値KGyを超えた場合、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるための制動装置13の駆動が規制される。そのため、ブレーキ液供給制御処理ルーチンの実行によって車両の挙動が不安定になることを回避できる。
【0082】
(7)上記各ステップS13,S14,S15の各処理の開始タイミング時において車両の前後方向減速度Gxが減速度閾値KGx以下であるときには、運転手に車両を加速させる意志があると判断され、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるために制動装置13が駆動する。そのため、車両の減速中にブレーキロータ50の傾斜を解消させるべく制動装置13が駆動する場合とは異なり、ブレーキパッド51,52をブレーキロータ50に接触させることに起因した減速感を運転手に与えることを抑制できる。
【0083】
(8)運転手によるアクセルペダル10の踏込み操作に基づき運転手に車両を加速させる意志があると判断された場合には、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるために制動装置13が駆動する。そのため、運転手に車両を加速させる意志がない場合にブレーキロータ50の傾斜を解消させるべく制動装置13が駆動する場合とは異なり、ブレーキパッド51,52をブレーキロータ50に接触させることに起因した減速感を運転手に与えることを抑制できる。
【0084】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図10〜図12に従って説明する。なお、第2の実施形態は、ブレーキ液供給制御処理ルーチンの内容の一部が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0085】
本実施形態において、ECU14が実行するブレーキ液供給制御処理ルーチンについて図10及び図11に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、ECU14は、ブレーキ液供給制御処理ルーチンを所定周期T毎(図12参照)に実行する。そして、このブレーキ液供給制御処理ルーチンにおいて、ECU14は、上記ステップS20の処理と同等の処理を行い、車両の走行する路面の現時点の悪路指数(以下、「今回の悪路指数」という。)Nrwを演算する(ステップS50)。したがって、本実施形態では、ステップS50が、悪路指数演算ステップに相当する。
【0086】
続いて、ECU14は、ステップS50にて演算した今回の悪路指数Nrwが予め設定された悪路大閾値KNrwmax(本実施形態では「3」)以上であるか否かを判定する(ステップS51)。この悪路大閾値KNrwmaxは、このタイミングでブレーキロータ50の各ブレーキパッド51,52に対する傾斜を解消させるような制動制御を行っても、直ぐにブレーキロータ50が各ブレーキパッド51,52に対して傾斜してしまうような路面を走行しているか否かを判断するための基準値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。そして、ステップS51の判定結果が肯定判定(Nrw≧KNrwmax)である場合、ECU14は、このタイミングで上記制動制御の実行を規制すべく、その処理を後述するステップS58に移行する。
【0087】
一方、ステップS51の判定結果が否定判定(Nrw<KNrwmax)である場合、ECU14は、図11にて詳述するブレーキ液供給処理を実行する(ステップS52)。このステップS52では、ホイールシリンダ28a〜28d内にブレーキ液を供給するための条件が揃っているか否かが判定されると共に、ポンプ41,42からの単位時間あたりのブレーキ液の吐出量S、即ち、モータMの駆動態様が設定される。
【0088】
そして、ブレーキ液供給処理が終了した後、ECU14は、上記各ステップS12,S13,S14,S15,S16に相当するステップS53,S54,S55,S56,S57の各処理を順に実行する。したがって、本実施形態では、ステップS54,S55,S56により、駆動ステップが構成される。その後、ECU14は、その処理を次のステップS58に移行する。
【0089】
ステップS58において、ECU14は、前回の悪路指数Nrw_bをステップS50にて演算した今回の悪路指数Nrwに更新する。そして、ECU14は、ブレーキ液供給制御処理ルーチンを一旦終了する。なお、前回の悪路指数Nrw_bとは、前回のブレーキ液供給制御処理ルーチンの実行時に上記ステップS50で演算された悪路指数のことである。
【0090】
次に、上記ステップS52のブレーキ液供給処理(ブレーキ液供給処理ルーチン)について図11に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、ブレーキ液供給処理ルーチンにおいて、ECU14は、今回の悪路指数Nrwが前回の悪路指数Nrw_bよりも小さいか否かを判定する(ステップS60)。この判定結果が否定判定(Nrw≧Nrw_b)である場合、ECU14は、車両の走行する路面の凹凸度合が小さくなる傾向が見られないと判断し、ブレーキ液供給処理ルーチンを終了する。一方、ステップS60の判定結果が肯定判定(Nrw<Nrw_b)である場合、ECU14は、車両の走行する路面の凹凸度合が小さくなる傾向が見られると判断し、前回の悪路指数Nrw_bが「1」よりも大きいか否かを判定する(ステップS61)。この判定結果が否定判定(Nrw_b≦「1」)である場合、ECU14は、ブレーキロータ50が各ブレーキパッド51,52に対して傾斜していない、又はその傾斜角度が非常に小さくいわゆるノックバックが発生していないと判断し、ブレーキ液供給処理ルーチンを終了する。
【0091】
一方、ステップS61の判定結果が肯定判定(Nrw_b>「1」)である場合、ECU14は、ノックバックが発生している可能性があると判断し、上記ステップS32の判定処理に相当するステップS62の判定処理を実行する。この判定結果が否定判定である場合、ECU14は、車両の走行する路面の凹凸度合が小さくなる傾向が見られてから車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力が付与されたと判断し、ブレーキ液供給処理ルーチンを終了する。
【0092】
一方、ステップS62の判定結果が肯定判定である場合、ECU14は、上記ステップS35,S36,S37,S38,S39,S40,S41,S42,S43,S44の各処理に相当するステップS63,S64,S65,S66,S67,S68,S69,S70,S71,S72の各処理を順に実行する。その後、ECU14は、ブレーキ液供給処理ルーチンを終了する。
【0093】
次に、本実施形態における車両の制動制御方法について図12(a)(b)に示すタイミングチャートを用いて説明する。なお、図12(a)(b)では、所定周期Tは、本来、所定時間KTmに比して十分に短い時間であるが、明細書の説明理解の便宜上、所定周期Tが長めに図示されている。
【0094】
さて、図12に示すように、車両の走行中には、該車両の走行する路面の悪路指数Nrwが所定周期T毎に演算される。そして、路面の悪路指数Nrwが「1」である第1のタイミングt1の次の周期で路面の悪路指数Nrwが「0(零)」である第2タイミングt2では、悪路指数Nrwの低下を検出しても、前回の悪路指数Nrw_b(この場合、第1のタイミングt1での悪路指数)が「1」であるため、ブレーキロータ50の傾斜を解消させる制動制御が実行されない。
【0095】
その後、車両の走行する路面の悪路指数Nrwが段階的に大きくなり、悪路指数Nrwが「2」から「1」に低下した第3タイミングt3では、前回の悪路指数Nrw_bが「2」であるため、ブレーキロータ50の傾斜を解消させる制動制御が所定時間KTmだけ実行される。すなわち、前回の悪路指数Nrw_bが「2」であるため、制動装置13において、各ポンプ41,42は、それらの単位時間あたりのブレーキ液の各吐出量Sが第2吐出量S2となるように駆動する。その結果、悪路指数Nrwが「2」となるような路面の走行に基づきブレーキロータ50がブレーキパッド51,52に対して傾斜したとしても、該傾斜は解消される。なお、その後、悪路指数Nrwが「1」から「0(零)」に低下した場合には、上記制動制御が実行されない(第4のタイミングt4)。
【0096】
そして、悪路指数Nrwが「3」となるような路面を走行した後に、走行する路面の悪路指数Nrwが「2」となる第5のタイミングt5では、前回の悪路指数Nrw_bが「3」であるため、ブレーキロータ50の傾斜を解消させる制動制御が所定時間KTmだけ実行される。すなわち、制動装置13において、各ポンプ41,42は、それらの単位時間あたりのブレーキ液の各吐出量Sが第3吐出量S3となるように駆動する。その結果、悪路指数Nrwが「2」となるような路面の走行に基づきブレーキロータ50がブレーキパッド51,52に対して傾斜したとしても、該傾斜は一時的に解消される。その後、悪路指数Nrwが「2」となる路面を車両が走行することにより、ブレーキロータ50がブレーキパッド51,52に対して傾斜したとしても、その傾斜度合は、第5のタイミングt5で上記制動制御が実行される前の傾斜度合に比して小さい。
【0097】
その後、車両の走行する路面の悪路指数Nrwが「2」から「0(零)」に低下した場合には、悪路指数Nrwが「2」である場合の駆動態様で制動装置13が駆動する結果、ブレーキロータ50の傾斜が良好に解消される。
【0098】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(2)、(5)〜(8)に加えて以下に示す効果を得ることができる。
(9)車両の走行する路面の悪路指数Nrwが小さくなる毎に、ブレーキパッド51,52は、ブレーキロータ50に相対的に接近する。その結果、車両の悪路走行中に該悪路からの反力を車輪が受けたことに起因してブレーキロータ50がブレーキパッド51,52に対して傾斜した場合であっても、ある程度定期的にブレーキロータ50の傾斜が解消される。しかも、こうした制動装置13は、車両の悪路走行中、駆動し続けるわけではないため、車両の走行中、制動装置13が駆動し続ける場合に比して、制動装置13全体の消費電力が低減する。したがって、制動装置13全体の消費電力の増加を抑制しつつ、ブレーキロータ50及びブレーキパッド51,52の偏摩耗の発生を抑制できる。
【0099】
(10)一般に、車両の走行する路面の悪路指数Nrwが大きいほど、車輪FR,FL,RR,RLが路面から受ける反力が大きくなり、ブレーキロータ50のブレーキパッド51,52に対する傾斜度合も大きくなる。すなわち、ブレーキパッド51のブレーキロータ50から離間する方向への移動量も多くなる。この点、本実施形態では、前回の悪路指数Nrw_bが大きいほど、ホイールシリンダ28a〜28d内への単位時間あたりのブレーキ液の流入量が多くなる結果、ブレーキパッド51に付与される駆動力が大きくなる。そのため、ブレーキパッド51,52をブレーキロータ50に確実に接触させ、該ブレーキロータ50の傾斜を解消させることができる。
【0100】
(11)車両の走行する路面の悪路指数Nrwが小さくなってから、上記ステップS54,S55,S56の各処理の実行が開始される前までに車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与された場合には、ブレーキロータ50の傾斜を解消するための制動装置13の駆動が規制される。したがって、ブレーキロータ50の傾斜が解消されているにも関わらず、制動装置13が不必要に駆動することを回避できる。
【0101】
(12)ブレーキロータ50がブレーキパッド51,52に対して傾斜するような悪路を車両が走行する又は走行した際において、悪路指数Nrwの低下が検出された場合に、ブレーキロータ50の傾斜を解消するために制動装置13が駆動する。そのため、ブレーキロータ50がブレーキパッド51,52に対して傾斜しないような路面(この場合、悪路指数Nrwが「1」となる路面)を車両が走行する際に、悪路指数Nrwの低下が検出された場合、即ち、悪路指数Nrwが「1」から「0(零)」になった場合には、ブレーキロータ50が傾斜していないと判断され、制動装置13の駆動が規制される。したがって、制動装置13を不必要に駆動させない分、制動装置13全体の消費電力の低下に貢献できる。
【0102】
なお、各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・第1の実施形態において、ステップS41,S42の各処理を省略してもよい。同様に、第2の実施形態において、ステップS69,S70の各処理を省略してもよい。このように構成しても、駆動ステップ(ステップS13,S14,S15、S54,S55,S56)は、ステップS40,S68の判定結果が肯定判定である場合に実行されるため、車両の運転手が駆動ステップの実行に基づく減速感を感じてしまうことを抑制できる。
【0103】
・第1の実施形態において、ステップS39,S40の各処理を省略してもよい。同様に、第2の実施形態において、ステップS67,S68の各処理を省略してもよい。すなわち、悪路走行終了後における車両の前後方向減速度Gxに関係なく、駆動ステップを実行する構成であってもよい。
【0104】
・各実施形態において、車両のヨーレート(Yaw Rate)を演算し、該ヨーレートの大きさを用いて車両の挙動が安定であるか否かを判断するようにしてもよい。また、車両のステアリングホイールの操舵角を演算し、該操舵角の大きさを用いて車両の挙動が安定であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0105】
また、悪路走行終了後における車両の旋回に起因した該車両の挙動が安定であるか否かに関係なく、駆動ステップを実行する構成であってもよい。
・第1の実施形態において、ステップS35,S36の各処理を省略してもよい。同様に、第2の実施形態において、ステップS63,S64の各処理を省略してもよい。すなわち、悪路走行終了後における車両の車体速度VSに関係なく、駆動ステップを実行する構成であってもよい。
【0106】
・各実施形態において、駆動ステップ(ステップS13,S14,S15、S54,S55,S56)の開始タイミングになってから駆動ステップが実際に開始される前までに制動力が付与された車輪(例えば左後輪RL)に対しては、ブレーキロータ50の傾斜を解消させる制御の実行を規制する一方で、制動力が付与されていない他の車輪(例えば、右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR)に対しては、ブレーキロータ50の傾斜を解消させる制御を実行するようにしてもよい。
【0107】
・第1の実施形態において、悪路走行中に制動力が付与された車輪(例えば左後輪RL)に対しては、悪路走行終了後にブレーキロータ50の傾斜を解消させる制御の実行を規制するようにしてもよい。また、悪路走行中に少なくとも一つの車輪に対して制動力が付与された場合には、悪路走行終了後に全ての車輪に対してブレーキロータ50の傾斜を解消させる制御の実行を規制するようにしてもよい。
【0108】
・第2の実施形態において、ステップS62の判定処理を省略してもよい。このように構成すると、他の制動制御や運転手によるブレーキペダル11の操作の有無に関係なく、駆動フラグFLG1が「1」にセットされた際に駆動ステップが実行されることになる。
【0109】
・各実施形態において、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるためにポンプ41,42からの単位時間あたりのブレーキ液の吐出量Sは、悪路走行中における悪路指数最大値Nrw_max又は前回の悪路指数Nrw_bの大きさに関係なく、予め設定された所定量であってもよい。このように構成すると、上記各実施形態の場合に比して、ECU14の制御負荷を低減できる。なお、上記所定量を、悪路指数Nrwが「3」(即ち、最大)である路面を走行した場合であっても、各ブレーキパッド51,52をブレーキロータ50に摺接させることができる吐出量に設定することが望ましい。
【0110】
・各実施形態において、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるためにポンプ41,42からの単位時間あたりのブレーキ液の吐出量Sは、ブレーキロータ50の傾斜度合を少しでも小さくすることが可能な吐出量であれば、任意の吐出量であってもよい。
【0111】
・各実施形態では、路面の悪路指数Nrwを「0(零)」〜「3」の4段階で分類しているが、悪路指数Nrwを路面の凹凸度合に応じてより細かく(例えば、50段階)分類するようにしてもよい。この場合、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるためにポンプ41,42からの単位時間あたりのブレーキ液の吐出量Sを、悪路走行中における悪路指数最大値Nrw_max又は前回の悪路指数Nrw_bが大きいほど多くなるように設定することが望ましい。
【0112】
・各実施形態において、路面の悪路指数Nrwを、車輪FR,FL,RR,RLの車輪加速度DVWではなく、車両の前後方向減速度Gxに基づき演算してもよい。
また、車両に上下方向の加速度を演算するためのセンサが設けられた場合には、該センサからの信号に基づく車両の上下方向加速度に基づき路面の悪路指数Nrwを演算してもよい。
【0113】
・各実施形態において、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるための制御は、前輪FR,FLに対してのみ実行するようにしてもよい。
また、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるための制御は、車輪FR,FL,RR,RL毎に個別に実行するようにしてもよい。
【0114】
・各実施形態において、ステップS14又はステップS55にて用いられる所定時間KTmを、悪路走行中における悪路指数最大値Nrw_maxの大きさ又は前回の悪路指数Nrw_bの大きさに応じて変更するようにしてもよい。
【0115】
・各実施形態において、ブレーキロータ50の傾斜を解消させるための制御では、モータMだけではなく、比例電磁弁24,25、第1電磁弁31〜34及び第2電磁弁35〜38などを駆動させるようにしてもよい。この場合、モータMの駆動態様が変更されなくても、ホイールシリンダ28a〜28d内へのブレーキ液の流入量を変更させることができる。
【0116】
・各実施形態では、制動装置13を油圧式の制動装置に具体化したが、電動式の制動装置に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1の実施形態における制動装置が搭載された車両のブロック図。
【図2】第1の実施形態における制動装置のブロック図。
【図3】(a)はブレーキロータとブレーキパッドとが当接していない状態を示す概略単面図、(b)はブレーキロータとブレーキパッドとが摺接した状態を示す概略単面図。
【図4】ブレーキロータがブレーキパッドに対して傾斜した状態を示す概略単面図。
【図5】悪路指数とポンプの単位時間あたりのブレーキ液の吐出量との関係を示すマップ。
【図6】第1の実施形態におけるブレーキ液供給制御処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図7】第1の実施形態における路面判定処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図8】第1の実施形態におけるブレーキ液供給制御判定処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図9】(a)車輪の車輪加速度の変動を示すタイミングチャート、(b)はフィルタ後車輪加速度の変動を示すタイミングチャート。
【図10】第2の実施形態におけるブレーキ液供給制御処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図11】第2の実施形態におけるブレーキ液供給制御判定処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図12】(a)(b)は第2の実施形態において車輪に制動力が付与されるタイミングを示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0118】
10…アクセルペダル、13…制動装置、14…制動制御装置、悪路指数演算手段、制御手段、車体速度演算手段、横方向加速度演算手段、減速度演算手段としてのECU、50…ブレーキロータ、51,52…ブレーキパッド、FR,FL,RR,RL…車輪、Gx…前後方向減速度、Gy…横方向加速度、KGx…減速度閾値、KGy…横方向加速度閾値、KNrw…悪路指数閾値、KTm…所定時間、KVS…車体速度閾値、Nrw…今回の悪路指数としての悪路指数、Nrw_b…前回の悪路指数、Nrw_max…悪路指数最大値、T…所定周期、VS…車体速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪(FR,FL,RR,RL)と一体に回転するブレーキロータ(50)と、該ブレーキロータ(50)に対して接離する方向に相対的に移動可能なブレーキパッド(51,52)と、該ブレーキパッド(51,52)を前記ブレーキロータ(50)に相対的に接近させるべく駆動力を付与する制動装置(13)とを有する車両に搭載され、前記制動装置(13)の駆動を制御する車両の制動制御装置(14)であって、
車両の走行する路面の凹凸度合を悪路指数(Nrw)として予め設定された所定周期(T)毎に演算する悪路指数演算手段(14、S20、S50)と、
該悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前記悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御する制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)と、
を備えた車両の制動制御装置。
【請求項2】
前記制御手段(14、S13,S14,S15)は、前記悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された悪路指数(Nrw)が、前記路面が凹凸度合の比較的大きい悪路であるか又は凹凸度合の比較的小さい良路であるかを判断する基準値として予め設定された悪路指数閾値(KNrw)以上である状態から該悪路指数閾値(KNrw)未満になった場合に、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御する請求項1に記載の車両の制動制御装置。
【請求項3】
前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、予め設定された所定時間(KTm)の間、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御する請求項1又は請求項2に記載の車両の制動制御装置。
【請求項4】
前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、該前回の悪路指数(Nrw_b)に応じた大きさ以上の駆動力が前記ブレーキパッド(51,52)に付与されるように前記制動装置(13)の駆動を制御する請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項5】
前記制御手段(14、S13,S14,S15)は、前記悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された悪路指数(Nrw)が前記悪路指数閾値(KNrw)以上である状態から該悪路指数閾値(KNrw)未満になった場合に、車両の悪路走行中に前記悪路指数演算手段(14、S20)によって演算された悪路指数(Nrw)の最大値(Nrw_max)が大きいほど、前記ブレーキパッド(51,52)に付与される駆動力が大きくなるように前記制動装置(13)の駆動を制御する請求項2に記載の車両の制動制御装置。
【請求項6】
前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、前記ブレーキパッド(51,52)が前記ブレーキロータ(50)に接触するように予め設定された所定駆動力を前記ブレーキパッド(51,52)に付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御する請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項7】
前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さくなってから、前記制動装置(13)の駆動が開始するタイミングになるまでの間に、車輪(FR,FL,RR,RL)に制動力が付与された場合には、前記制動装置(13)の駆動を規制する請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項8】
前記制御手段(14、S13,S14,S15)は、前記悪路指数演算手段(14、S20)にて演算された悪路指数(Nrw)が前記悪路指数閾値(KNrw)以上になってから、悪路指数(Nrw)が前記悪路指数閾値(KNrw)未満になって前記制動装置(13)の駆動が開始するタイミングになるまでの間に、車輪(FR,FL,RR,RL)に制動力が付与された場合には、前記制動装置(13)の駆動を規制する請求項2又は請求項5に記載の車両の制動制御装置。
【請求項9】
車両の車体速度(VS)を演算する車体速度演算手段(14、S35、S63)をさらに備え、
前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合において、前記車体速度演算手段(14、S35、S63)にて演算された車体速度(VS)が予め設定された車体速度閾値(KVS)以上であるときに、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御する請求項1〜請求項8のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項10】
車両の横方向加速度(Gy)を演算する横方向加速度演算手段(14、S37、S65)をさらに備え、
前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合において、前記横方向加速度演算手段(14、S37、S65)にて演算された横方向加速度(Gy)が予め設定された横方向加速度閾値(KGy)以下であるときに、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御する請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項11】
車両の進行方向における減速度(Gx)を演算する減速度演算手段(14、S39、S67)をさらに備え、
前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合において、前記減速度演算手段(14、S39、S67)にて演算された進行方向における減速度(Gx)が予め設定された減速度閾値(KGx)以下であるときに、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御する請求項1〜請求項10のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項12】
前記制御手段(14、S13,S14,S15、S54,S55,S56)は、前記悪路指数演算手段(14、S20、S50)にて演算された今回の悪路指数(Nrw)が前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合において、車両を加速させるべくアクセルペダル(10)が操作されていることを検出したときに、前記ブレーキパッド(51,52)に駆動力を付与すべく前記制動装置(13)の駆動を制御する請求項1〜請求項11のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項13】
車輪(FR,FL,RR,RL)と一体に回転するブレーキロータ(50)と、該ブレーキロータ(50)に対して接離する方向に相対的に移動可能なブレーキパッド(51,52)と、該ブレーキパッド(51,52)を前記ブレーキロータ(50)に相対的に接近させるべく駆動力を付与する制動装置(13)とを有する車両において、前記ブレーキパッド(51,52)を前記ブレーキロータ(50)に接近する方向に移動させるべく前記制動装置(13)を制御する車両の制動制御方法であって、
車両の走行する路面の凹凸度合が悪路指数(Nrw)として予め設定された所定周期(T)毎に演算される悪路指数演算ステップ(S20、S50)と、
該悪路指数演算ステップ(S20、S50)で演算した今回の悪路指数(Nrw)が、前記悪路指数演算ステップ(S20、S50)で演算した前回の悪路指数(Nrw_b)よりも小さい場合に、前記ブレーキパッド(51,52)が前記ブレーキロータ(50)に相対的に接近するように前記制動装置(13)を駆動させる駆動ステップ(S13,S14,S15、S54,S55,S56)と、
を有する車両の制動制御方法。
【請求項14】
前記駆動ステップ(S13,S14,S15)では、悪路指数演算ステップ(S20)で演算した悪路指数(Nrw)が、前記路面が凹凸度合の比較的大きい悪路であるか又は凹凸度合の比較的小さい良路であるかを判断する基準値として予め設定された悪路指数閾値(KNrw)以上である状態から該悪路指数閾値(KNrw)未満になった場合に、前記ブレーキパッド(51,52)が前記ブレーキロータ(50)に相対的に接近するように前記制動装置(13)を駆動させる請求項13に記載の車両の制動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−202860(P2009−202860A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260933(P2008−260933)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】