説明

車両の制御装置

【課題】エンジンと電気加熱式の触媒装置(EHC)とを備えた車両において、エンジンおよび触媒装置を効率よく暖機する。
【解決手段】エンジンとEHCとを備えた車両において、ECUは、エンジンおよびEHCを暖機する際、エンジン水温THwが温度T1未満である場合は、エンジンの点火時期を遅角させて触媒暖機を促進する触媒暖機制御を行ないつつ、EHCを非通電とする。一方、エンジン水温THwが温度T1以上である場合、ECUは、エンジンの点火時期を進角させてエンジン暖機を促進するエンジン暖機制御を行ないつつ、EHCを通電させる。さらに、ECUは、エンジン水温THwが温度T2未満である場合は、エンジンの間欠停止を禁止し、エンジン水温THwが温度T2以上である場合は、エンジンの間欠停止を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気を浄化する電気加熱式触媒(Electrical Heated Catalyst、以下「EHC」ともいう)を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を備えた車両には、一般的に、内燃機関の排気ガスを浄化する触媒が備えられている。この触媒が活性温度に達していないと排気を十分に浄化することができない。そこで、従来から、電気ヒータなどによって触媒を電気的に加熱可能に構成されたEHCが提案されている。
【0003】
特開2009−35226号公報(特許文献1)には、エンジン、EHC、モータ、バッテリを有するハイブリッド車両において、車両要求駆動力とバッテリ残存蓄電量とに基づいてエンジンの運転が必要と判断されたときに、EHC温度とバッテリ残存蓄電量とに基づいてエンジン始動前後におけるEHCの通電制御およびエンジンの運転制御を行なう点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−35226号公報
【特許文献2】特開2001−130351号公報
【特許文献3】特開2009−127579号公報
【特許文献4】特開平10−252453号公報
【特許文献5】特開平11−210448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたEHCの通電制御およびエンジンの運転制御は、あくまでEHC温度とバッテリ残存蓄電量とに基づくものであり、エンジン本体の温度に基づくものではない。そのため、エンジン始動時において、EHCは通電により暖められた状態であるが、エンジン本体そのものは冷えた状態である場合も想定される。このような場合、エンジン始動後からしばらくの間はエンジン本体が冷えた状態でエンジンの運転が継続されることになり、燃費が悪化してしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エンジンと電気加熱式の触媒装置とを備えた車両において、エンジンおよび触媒装置を効率よく暖機することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る制御装置は、エンジンと、エンジンの排気を浄化する電気加熱可能な触媒装置とを備えた車両を制御する。制御装置は、エンジンの水温を検出する検出部と、
エンジンの点火時期および触媒装置の通電量を制御する制御部とを備える。制御部は、エンジンおよび触媒装置を暖機する際、水温に応じて点火時期と通電量とを関連付けて変化させる。
【0008】
好ましくは、制御部は、水温が第1温度未満である場合は点火時期を基準値よりも遅角させる触媒暖機制御を行ないつつ通電量を第1通電量とし、水温が第1温度以上である場合は点火時期を基準値よりも進角させるエンジン暖機制御を行ないつつ通電量を第1通電量よりも大きくする。
【0009】
好ましくは、制御部は、水温が第1温度未満である場合は第1通電量を略零として触媒装置の通電を停止させる。
【0010】
好ましくは、車両は、エンジンとともに車両駆動力を発生するモータをさらに備える。制御部は、水温が第1温度よりも高い第2温度未満である場合はエンジンを間欠的に停止する間欠運転を禁止し、水温が第2温度以上である場合は間欠運転を許容する。
【0011】
好ましくは、制御部は、点火時期の遅角量と通電量とを水温に応じて連続的に変化させる。
【0012】
好ましくは、車両は、触媒装置およびモータに供給するための電力を蓄える蓄電装置をさらに備える。制御部は、水温が第1温度以上である場合に、蓄電装置の出力許容電力が所定電力以下であるという条件、蓄電装置の蓄電量が所定量以下であるという条件、触媒装置の電気抵抗が所定値以下であるという条件の少なくともいずれかの条件を含む停止条件が成立したときは、触媒装置の通電を停止させる。
【0013】
好ましくは、制御部は、停止条件が成立したことに応じて触媒装置の通電が停止された場合、水温が第1温度以上であるときは、エンジンの制御態様をエンジン暖機制御から触媒暖機制御に変更する。
【0014】
好ましくは、制御部は、水温が第1温度以上である場合に、触媒装置の電気抵抗が所定値以上であるときは、エンジンの制御態様をエンジン暖機制御から触媒暖機制御に変更する。
【0015】
好ましくは、制御部は、触媒装置の温度が所定温度以上である場合、水温に関わらず触媒装置の通電を停止するとともに、水温が第1温度未満であるときは、エンジンの制御態様を触媒暖機制御からエンジン暖機制御に変更する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エンジンと電気加熱式の触媒装置とを備えた車両において、エンジンおよび触媒装置を効率よく暖機することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両の全体ブロック図である。
【図2】ECUの機能ブロック図である。
【図3】ECUの暖機制御態様をまとめた図である。
【図4】ECUの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】エンジン水温THwおよび触媒温度THehcの時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態による車両1の全体ブロック図である。車両1は、エンジン10と、モータジェネレータ(Motor Generator、以下「MG」という)20と、動力分割装置40と、減速機50と、パワーコントロールユニット(Power Control Unit、以下「PCU」という)60と、バッテリ70と、駆動輪80と、電子制御ユニット(Electronic Control Unit、以下「ECU」という)200と、を備える。
【0020】
エンジン10は、燃焼室に吸入された空気と燃料との混合気を燃焼させたときに生じる燃焼エネルギによってクランクシャフトを回転させる駆動力を発生する内燃機関である。エンジン10の点火時期、燃料噴射量、吸入空気量などは、ECU200からの制御信号に応じて制御される。
【0021】
MG20は、第1MG21と、第2MG22とを含む。第1MG21および第2MG22は、交流電動機であり、たとえば、三相交流同期電動機である。なお、以下の説明では、第1MG21と第2MG22とを区別して説明する必要がない場合には、第1MG21と第2MG22とを区別することなくMG20と記載する。
【0022】
車両1は、エンジン10および第2MG21の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行するハイブリッド車両である。エンジン10が発生する駆動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。すなわち、一方は減速機50を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、もう一方は第1MG21へ伝達される経路である。
【0023】
動力分割装置40は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車から成る。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランクシャフトに連結される。サンギヤは、第1MG21の回転軸に連結される。リングギヤは第2MG22の回転軸および減速機50に連結される。
【0024】
PCU60とバッテリ70とは、正極線PL1および負極線GL1で接続される。PCU60は、ECU200からの制御信号に応じて作動し、バッテリ70からMG20に供給される電力、あるいは、MG20からバッテリ70に供給される電力を制御する。バッテリ70は、MG20を駆動するための電力を蓄える。バッテリ70は、代表的には、ニッケル水素またはリチウムイオン等の直流の二次電池から成る。バッテリ70の出力電圧は、たとえば200ボルト程度である。なお、バッテリ70に代えて、大容量のキャパシタを用いてもよい。
【0025】
エンジン10から排出される排気ガスは、車両1のフロア下に設けられた排気通路130を通って大気に排出される。排気通路130は、エンジン10から車両1の後端部まで延在している。
【0026】
排気通路130の途中には、EHC(電気加熱式触媒)140が設けられる。EHC140は、排気ガスを浄化する触媒と、触媒を電気加熱可能に構成されたヒータと含んでで構成される。なお、EHC140には、種々の公知の構成を適用することができる。
【0027】
PCU60とEHC140とは、正極線PL2および負極線GL2で接続される。EHC140は、PCU60を介してバッテリ70からの電力が供給される。正極線PL2および負極線GL2には、EHC電源100が設けられる。なお、バッテリ70とEHC140との接続関係は図1に示すものに限定されない。
【0028】
EHC電源100は、内部にリレーを備えており、ECU200からの制御信号に基づいてEHC140とPCU60との接続状態を切り替える。EHC電源100内部のリレーが閉じられると、EHC140とPCU60とが接続され、EHC140内のヒータが通電される(以下「EHC通電」ともいう)。このEHC通電によって、EHC140内の触媒が暖機される。EHC電源100内部のリレーが開かれると、EHC140とPCU60との接続が遮断され、EHC通電が停止される。このように、ECU200がEHC電源100を制御することによってEHC140内のヒータの通電量(以下「EHC通電量」ともいう)が制御される。
【0029】
さらに、車両1は、電流センサ152、電圧センサ153、水温センサ154を備える。監視ユニット151は、バッテリ70の状態(電流、電圧、温度など)を監視する。電流センサ152は、EHC140を流れる電流Iehcを検出する。電圧センサ153は、EHC140に印加される電圧Vehcを検出する。水温センサ154は、エンジン冷却水の温度(エンジン水温)THwを検出する。監視ユニット151の監視結果、電流センサ152、電圧センサ153、水温センサ154の検出結果は、ECU200に入力される。
【0030】
ECU200は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵し、当該メモリに記憶されたマップおよびプログラムと各センサの検出結果とに基づいて所定の演算処理を実行し、その演算処理の結果で車両1が所望の状態となるように、エンジン10およびMG20を制御する。
【0031】
車両1は、上述したように、エンジン10および第2MG21の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行可能である。そのため、ECU200は、燃費向上を目的として、必要に応じてエンジン10を間欠的に停止させる「間欠停止」を許容する。
【0032】
ところで、EHCを備えない車両においては、触媒温度が活性温度(触媒が目標とする浄化性能を発揮する温度)に達していない場合、一般的に、触媒の暖機を促進するためにエンジンの点火時期を基準値よりも遅角させた状態でエンジンを運転させる制御(以下「触媒暖機制御」という)が実行される。この触媒暖機制御が実行された場合、通常制御時に比べて、触媒暖機が促進される一方、燃料の燃焼効率が悪く燃費が悪化する。また、触媒暖機が優先されて上述したエンジンの間欠停止も禁止されるため、さらに燃費が悪化する。
【0033】
これに対し、本実施の形態による車両1のように、EHCを備える車両においては、触媒を電気加熱可能であるため、触媒暖機のためにエンジンを起動させる必要はなく、燃費向上が期待できる。その一方で、エンジンの起動頻度が減りエンジンそのものが暖機される機会が減るため、エンジン始動後からしばらくの間は、エンジンが冷えた状態でエンジンを運転せざるを得ない状況が生じる可能性がある。エンジンが冷えた状態(エンジン水温が低い状態)でエンジンを運転させると、冷損やフリクション増加、さらには冷間時の燃料増量制御などの影響で燃費が悪化してしまうことも考えられる。また、排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置を備えたエンジンにおいては、エンジン水温が低い場合にEGR装置の作動を遅らせる場合があるが、このような場合にはEGR装置による燃費向上効果を十分に得られないことも考えられる。
【0034】
そこで、本実施の形態によるECU200は、エンジン10およびEHC140の暖機のためにエンジン10を運転させる際、エンジン水温THwに応じてエンジン点火時期とEHC通電量とを関連付けて変化させることで、エンジン10およびEHC140を効率よく暖機して燃費最適化を実現する。具体的には、エンジン水温THwが温度T1(たとえば0℃)未満である場合、上述した触媒暖機制御(点火時期遅角)を行なうことでエンジン10およびEHC140を暖機し、EHC通電は停止させる。一方、エンジン水温THwが温度T1以上である場合、エンジン10の点火時期を基準値よりも進角させた状態でエンジン10を運転させる制御(以下「エンジン暖機制御」という)を行なうことでエンジン10本体を効率よく暖機しつつ、EHC通電を行なって触媒暖機を促進させる。この点が本発明の最も特徴的な点である。
【0035】
図2は、ECU200が暖機制御を行なう場合のECU200の機能ブロック図である。図2に示した各機能ブロックは、ハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0036】
ECU200は、点火時期制御部210と、EHC通電制御部220と、間欠制御部230とを含む。
【0037】
点火時期制御部210は、エンジン10およびEHC140の暖機のためにエンジン10を運転させる際、水温センサ154が検出したエンジン水温THwに応じて、点火時期を変化させる。具体的には、点火時期制御部210は、エンジン水温THwが温度T1未満である場合、点火時期を基準値よりも遅角させる上述した触媒暖機制御を行なう。この触媒暖機制御によって点火時期を遅角させることにより、点火時期を遅角させない場合よりも、EHC140の暖機が促進される。また、触媒暖機制御によってエンジン10そのものも暖機されるが、点火時期を遅角させない場合に比べて燃料の燃焼効率が悪くエンジン水温THwの上昇速度は遅くなる。したがって、触媒暖機制御は、エンジン暖機よりも触媒暖機を重視した制御といえる。
【0038】
一方、エンジン水温THwが温度T1以上である場合、点火時期制御部210は、点火時期を基準値よりも進角させる上述したエンジン暖機制御を行なう。このエンジン暖機制御は、エンジン10の通常運転時と同様の制御であり、触媒暖機制御時に比べて燃料の燃焼効率が良くエンジン水温THwの上昇速度は速くなるためエンジン暖機効果は高まる一方、触媒暖機効果は低下する。したがって、エンジン暖機制御は、触媒暖機よりもエンジン暖機を重視した制御といえる。
【0039】
EHC通電制御部220は、エンジン水温THwに応じてEHC通電量を制御する。具体的には、EHC通電制御部220は、エンジン水温THwが温度T1未満である場合、エンジン制御態様が上述した触媒暖機制御でありエンジン10によって触媒暖機が促進されていることを加味して、EHC電源100を制御してEHC通電を停止させる(EHC通電量を略零にする)。なお、この際、EHC通電量を連続的に制御可能であれば、EHC通電量を略零とするのではなく、通常よりも低い電流をEHCに通電させてもよい。いずれにしても、触媒暖機制御によって触媒暖機がエンジン10によって促進されていることを加味して、EHC通電量(EHC140の消費電力)を抑制することが望ましい。また、エンジン水温THwが温度T1未満であるような極寒時には、バッテリ70の温度も非常に低くバッテリ70の出力許容電力も制限されていることが想定されるため、バッテリ70を保護する観点からもEHC通電量を抑制することが望ましい。
【0040】
一方、エンジン水温THwが温度T1以上である場合、EHC通電制御部220は、エンジン制御態様が触媒暖機制御からエンジン暖機制御に変更されている(すなわちエンジン10による触媒暖機効果が低下している)ことを加味して、EHC電源100を制御してEHC140を通電させる。これにより、触媒暖機がEHC通電によって促進される。
【0041】
EHC通電制御部220は、触媒温度THehcの推定値が活性温度Ttagに達した場合には、EHC通電を停止させる。触媒温度THehcの推定値は、たとえば、EHC140を流れる電流Iehcの履歴およびエンジン10の運転履歴などから算出すればよい。
【0042】
間欠制御部230は、エンジン水温THwが温度T1よりも高い温度T2(たとえば40℃)未満である場合、エンジン暖機の促進を継続させるために、エンジン10の間欠停止を禁止する。一方、エンジン水温THwが温度T2以上である場合は、エンジン10が暖機されたものとして、エンジン10の間欠停止を許容する。
【0043】
図3は、上述した機能に基づくECU200の暖機制御態様をまとめた図である。ECU200は、エンジン10およびEHC140を暖機する際、エンジン水温THwが温度T1未満である場合は、点火時期を遅角させて触媒暖機を促進する触媒暖機制御を行ないつつ、EHC140を非通電とする。触媒暖機制御によって、触媒だけでなくエンジン10も暖機されるが、点火時期を遅角している分だけエンジン暖機効果は低くなるため、エンジン水温THwの上昇速度は遅い。
【0044】
一方、エンジン水温THwが温度T1以上である場合、ECU200は、点火時期を進角させてエンジン暖機を促進するエンジン暖機制御を行ないつつ、EHC140を通電させる。エンジン暖機制御によってエンジン暖機効果が高まるため、エンジン水温THwの上昇速度は速くなる。この際、点火時期を進角している分だけ触媒暖機効果が低下するため、EHC通電によって触媒暖機を促進する。これにより、触媒暖機を促進しつつ、エンジン10を効率的にかつ早期に暖機することができる。
【0045】
さらに、ECU200は、エンジン水温THwが温度T2未満である場合は、エンジン10の間欠停止を禁止し、エンジン水温THwが温度T2以上である場合は、エンジン10の間欠停止を許可する。上述したエンジン暖機制御によってエンジン10が早期に暖機されるため、エンジン水温THwが早期に温度T2に到達し、エンジン10の間欠停止が早期に許可されることになる。したがって、エンジン10の間欠停止による燃費向上も期待できる。
【0046】
図4は、上述の機能を実現するためのECU200の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、触媒を暖機する必要がある場合に予め定められた周期で繰り返し実行される。
【0047】
ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10にて、ECU200は、エンジン水温THwが温度T1未満であるか否かを判定する。また、エンジン水温THwが温度T1未満でない場合(S10にてNO)、ECU200は、S14にてエンジン水温THwが温度T1以上かつ温度T2未満であるか否かを判定する。
【0048】
エンジン水温THwが温度T1未満である場合(S10にてYES)、ECU200は、S11にて点火時期を遅角させて上述した触媒暖機制御を行ない、S12にてEHC140を非通電とし、S13にてエンジン10の間欠停止を禁止する。
【0049】
エンジン水温THwが温度T1以上かつ温度T2未満である場合(S14にてYES)、ECU200は、S15にて点火時期を進角させて上述したエンジン暖機制御を行ない、S16にてEHC140を通電させ、S17にてエンジン10の間欠停止を禁止する。
【0050】
エンジン水温THwが温度T2以上である場合(S14にてNO)、ECU200は、S18にて上述したエンジン暖機制御を行なう。この際、後述するS20にてエンジン10の間欠停止が許可されるため、必要に応じてエンジン10を停止させることが可能となる。その後、ECU200は、S19にてEHC140を通電させる。この際、触媒温度THehcの推定値が活性温度Ttagに達した場合には、EHC通電は停止される。その後、ECU200は、S20にてエンジン10の間欠停止を許可する。
【0051】
図5は、上述したECU200の暖機制御を実行した場合のエンジン水温THwおよび触媒温度THehcの時間変化を示す図である。
【0052】
時刻t1で暖機制御を開始する際、エンジン水温THwが温度T1よりも低いため、触媒暖機制御が行なわれる。これにより、触媒温度THehcが上昇し始める。この際、少し遅れてエンジン水温THwも上昇し始める。
【0053】
時刻t2でエンジン水温THwが温度T1を超えると、触媒暖機制御に代えてエンジン暖機制御が行なわれるとともに、EHC通電が開始される。これにより、エンジン10の暖機が促進されエンジン水温THwの上昇速度が増加するとともに、EHC通電によって触媒温度THehcの上昇速度も増加する。なお、図3では、時刻t3で触媒温度THehcが活性温度Ttagに達したためEHC通電が停止されている。
【0054】
その後の時刻t4でエンジン水温THwが温度T2に達すると、エンジン10の間欠停止が許可されて、エンジン10が停止される。
【0055】
仮に時刻t1以前の暖機制御(触媒暖機制御かつEHC非通電)を時刻t2以降も継続させた場合(一点鎖線参照)、エンジン水温THwおよび触媒温度THehcは、一点鎖線に示す態様で推移する。この場合、図5に示すように、触媒温度THehcが活性温度Ttagに達する時刻(EHC通電を停止させる時刻)は時刻t5となり、エンジン水温THwが温度T2に達する時刻(エンジン10の間欠停止が許可される時刻)は時刻t6となる。
【0056】
しかしながら、本実施の形態においては、時刻t2で触媒暖機制御に代えてエンジン暖機制御を行なうとともにEHC通電を開始するため、エンジン水温THwの上昇速度を増加させつつ、触媒温度THehcの上昇速度も増加させることができる。そのため、触媒温度THehcが活性温度Ttagに達する時刻を時刻t5から時刻t3に短縮することができるとともに、エンジン水温THwが温度T2に達する時刻を時刻t6から時刻t4に短縮することができる。すなわち、エンジン10およびEHC140を効率よく暖機して燃費最適化を実現することができる。
【0057】
以上のように、本実施の形態によるECU200は、エンジン水温THwが温度T1未満である場合は触媒暖機制御(点火時期の遅角)によって触媒を暖機しつつEHC非通電とし、エンジン水温THwが温度T1以上である場合はエンジン暖機制御(点火時期の進角)によってエンジンそのものを効率よく暖機しつつEHCを通電させて触媒を暖機する。そのため、エンジン早期暖機促進と触媒暖機とを両立させて燃費最適化を実現することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、通常のハイブリッド車両に本発明を適用したが、エンジンの停止頻度がより高く触媒暖機の必要性がより高いプラグイン型のハイブリッド車両に本発明を適用してもよい。また、駆動源としてのエンジンを備えるハイブリッド車両ではなく、駆動源以外の用途でエンジンを備える電動車両に本発明を適用してもよい。
【0059】
<変形例1>
上述の実施の形態において、EHC通電量を連続的に制御可能にEHC電源100を構成した上で、エンジン点火時期およびEHC通電量をエンジン水温THwに応じて連続的に変化させるようにしてもよい。たとえば、エンジン水温THwの上昇に応じて点火時期の遅角量を連続的に小さくしつつEHC通電量を連続的に大きくするようにしてもよい。また、EHC通電量に対する点火時期の遅角量の割合(=点火時期遅角量/EHC通電量)をエンジン水温THwの上昇に応じて連続的に小さくするようにしてもよい。
【0060】
このような変形によって、エンジン暖機に消費されるエネルギと触媒暖機に消費されるエネルギのバランスをより細かく調整することができ、燃費の更なる向上を期待できる。
【0061】
<変形例2>
上述の実施の形態において、エンジン水温THwが温度T1以上である場合に、(i)監視ユニット151の監視結果から算出されたバッテリ70の出力許容電力が所定電力以下であるという条件、(ii)監視ユニット151の監視結果から算出されたバッテリ70の蓄電量が所定量以下であるという条件、(iii)EHC140の電気抵抗(=電圧Vehc/電流Iehc)が通常範囲の下限値(短絡故障を判定するためのしきい値)以下であるという条件、のうちの少なくともいずれかの条件を含む停止条件が成立したとき、EHC140とバッテリ70とを切り離してEHC通電を停止させるとともに、停止条件が成立したことに応じてEHC通電を停止した場合にはエンジン制御態様をエンジン暖機制御から触媒暖機制御に変更するようにしてもよい。
【0062】
このような変形によって、EHC140の短絡故障が生じた場合においてもバッテリ70を適切に保護しつつ触媒暖機を促進することができる。
【0063】
<変形例3>
上述の実施の形態において、エンジン水温THwが温度T1以上である場合に、EHC140の電気抵抗(=電圧Vehc/電流Iehc)が正常範囲の上限値(オープン故障を判定するためのしきい値)以上であるときは、EHC140に十分な電流が流れず触媒加熱不足が懸念されるため、エンジン制御態様をエンジン暖機制御から触媒暖機制御に変更するようにしてもよい。このような変形によって、EHC140のオープン故障が生じた場合においても触媒を適切に暖機することができる。
【0064】
<変形例4>
上述の実施の形態において、触媒温度THehcの推定値が活性温度Ttag以上である場合はEHC通電は停止されるが、この際、エンジン水温THwが温度T1未満であるときは、触媒暖機不要として、エンジン制御態様を触媒暖機制御からエンジン暖機制御に変更するようにしてもよい。このような変形によって、エンジン10を効率的に暖機して燃費向上を図ることができる。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 車両、10 エンジン、20 モータジェネレータ、40 動力分割装置、50 減速機、70 バッテリ、80 駆動輪、100 EHC電源、130 排気通路、140 EHC、151 監視ユニット、152 電流センサ、153 電圧センサ、154 水温センサ、200 ECU、210 点火時期制御部、220 通電制御部、230 間欠制御部、GL1,GL2 負極線、PL1,PL2 正極線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの排気を浄化する電気加熱可能な触媒装置とを備えた車両の制御装置であって、
前記エンジンの水温を検出する検出部と、
前記エンジンの点火時期および前記触媒装置の通電量を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記エンジンおよび前記触媒装置を暖機する際、前記水温に応じて前記点火時期と前記通電量とを関連付けて変化させる、車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記水温が第1温度未満である場合は前記点火時期を基準値よりも遅角させる触媒暖機制御を行ないつつ前記通電量を第1通電量とし、前記水温が前記第1温度以上である場合は前記点火時期を前記基準値よりも進角させるエンジン暖機制御を行ないつつ前記通電量を前記第1通電量よりも大きくする、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記水温が前記第1温度未満である場合は前記第1通電量を略零として前記触媒装置の通電を停止させる、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記車両は、前記エンジンとともに車両駆動力を発生するモータをさらに備え、
前記制御部は、前記水温が前記第1温度よりも高い第2温度未満である場合は前記エンジンを間欠的に停止する間欠運転を禁止し、前記水温が前記第2温度以上である場合は前記間欠運転を許容する、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記点火時期の遅角量と前記通電量とを前記水温に応じて連続的に変化させる、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記触媒装置および前記モータに供給するための電力を蓄える蓄電装置をさらに備え、
前記制御部は、前記水温が前記第1温度以上である場合に、前記蓄電装置の出力許容電力が所定電力以下であるという条件、前記蓄電装置の蓄電量が所定量以下であるという条件、前記触媒装置の電気抵抗が所定値以下であるという条件の少なくともいずれかの条件を含む停止条件が成立したときは、前記触媒装置の通電を停止させる、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記停止条件が成立したことに応じて前記触媒装置の通電が停止された場合、前記水温が前記第1温度以上であるときは、前記エンジンの制御態様を前記エンジン暖機制御から前記触媒暖機制御に変更する、請求項6に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記水温が前記第1温度以上である場合に、前記触媒装置の電気抵抗が所定値以上であるときは、前記エンジンの制御態様を前記エンジン暖機制御から前記触媒暖機制御に変更する、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記触媒装置の温度が所定温度以上である場合、前記水温に関わらず前記触媒装置の通電を停止するとともに、前記水温が前記第1温度未満であるときは、前記エンジンの制御態様を前記触媒暖機制御から前記エンジン暖機制御に変更する、請求項4に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−224147(P2012−224147A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91911(P2011−91911)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】