説明

車両の自動変速装置

【課題】シフトロッドをモータでシフト制御する際に、シフトモータ等の回転角を正確に検出できる車両の自動変速装置を提供する。
【解決手段】自動変速装置のシフトロッド32のシフトをモータで行うための車両の自動変速装置において、回転運動を往復直線運動に変換してシフトロッド32をシフト操作する回転・直動変換機構80と、回転・直動変換機構80に回転を伝達するドリブンギア58と、ドリブンギア58にそれぞれ噛合されると共にドリブンギア58に対して減速比が異なる一対のドライブギア61、63と、異なる減速比に対応して一対のドライブギア61の回転数を制御して駆動すると共に、内部に回転数を検出するホールIC65、66を有する一対のシフトモータ60、62と、一対のシフトモータの各ホールIC65、66の検出値が入力され、その検出値の位相差から回転・直動変換機構80の回転角を検出するTCM73とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動変速装置に係り、特にシフト操作のアクチュエータをモータで行うようにした車両の自動変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の自動変速装置(Gear Shift Unit:以下GSUと略)は、マニュアルトランスミッションを自動変速化する装置である。
【0003】
GSUの作動は、1)マニュアルトランスミッションの操作である車両軸方向の作動=ギアを入れたり抜いたりする作動と、2)車両幅方向の作動=ギアを入れるゲートを選択する作動に分かれる。
【0004】
上記1)、2)の作動について、1)と2)には各々独立したアクチュエータが1つないし2つで構成され、上記アクチュエータを各々制御して、マニュアルトランスミッションの操作に相当する1)と2)の作動を行う。
【0005】
上記アクチュエータはTCM(Transmission Control Module)と呼ばれる制御装置と位置センサによって制御され、作動目標位置に達するまでアクチュエータが推力を出力し、作動目標に達した場合に推力を停止させることで作動を行う。
【0006】
現行GSUは、特許文献1等に示されるようにアクチュエータにソレノイドを使用しており、ソレノイドの制御に対する推力の発生の応答性が遅い問題がある。
【0007】
そこで、特許文献2に示されるようにモータによってギアシフト機構を作動させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−197772号公報
【特許文献2】特開2002−349697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2は、モータと差動遊星歯車によってシャフトを回転し、そのシャフトに連結したシフトヨークを回動し、そのシフトヨークの回動でシフトロッドを直線的に往復動させてシフトするため、シフト操作量がシフトヨークの回転角(±10°程度)で決定され、モータの回転角を精度よく検出することは困難であり、またモータの減速比を大きくしない限り、シフト操作量を、速度制御しながら正確に制御することは困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、シフトロッドをモータでシフト制御する際に、シフトモータ等の回転角を正確に検出できる車両の自動変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、自動変速装置のシフトロッドのシフトをモータで行うための車両の自動変速装置において、回転運動を往復直線運動に変換して前記シフトロッドをシフト操作する回転・直動変換機構と、該回転・直動変換機構に回転を伝達するドリブンギアと、該ドリブンギアにそれぞれ噛合されると共に前記ドリブンギアに対して減速比が異なる一対のドライブギアと、異なる減速比に対応して前記一対のドライブギアの回転数を制御して駆動すると共に、内部に回転数を検出する回転センサを有する一対のシフトモータと、その一対のシフトモータの各回転センサの検出値が入力され、その検出値の位相差から前記回転・直動変換機構の回転角を検出するTCMとを備えたことを特徴とする車両の自動変速装置である。
【0012】
請求項2の発明は、前記一対のシフトモータが、それぞれ出力電圧可変のシフトモータドライバで駆動される請求項1記載の車両の自動変速装置である。
【0013】
請求項3の発明は、前記一対のシフトモータの前記回転センサは、ホールICからなり、両ホールICの出力電圧差から前記回転・直動変換機構の回転角度を検出する請求項1又は2記載の車両の自動変速装置である。
【0014】
請求項4の発明は、前記シフトロッドはインターナルレバでシフトされ、そのインターナルレバが、シフトブロックに係合し、そのシフトブロックが、前記回転・直動変換機構にてシフト方向に移動される請求項1〜3のいずれかに記載の車両の自動変速装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、シフトロッドのシフト操作を、一対のシフトモータから回転・直動変換機構にて行うに際し、各シフトモータに設けたドライブギアを、回転・直動変換機構に回転を伝達するドリブンギアと減速比を異らせ、シフトモータ内に設けられた各回転センサの位相差を検出することで、回転・直動変換機構の回転位置を正確に検出することが可能となるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の車両の自動変速装置におけるセレクトモータと第1シフトモータと第2シフトモータでインターナルレバを駆動する回転・直動変換機構の要部斜視図である。
【図2】図1において、回転・直動変換機構としてのボールスクリュとインターナルレバの関係を示す斜視図である。
【図3】図1において、回転・直動変換機構としてのボールスクリュとインターナルレバの関係を示す側面図である。
【図4】本発明において、TCMとモータドライバとモータのブロック図を示す図である。
【図5】本発明において、セレクトモータと第1シフトモータと第2シフトモータでインターナルレバを駆動してシフトチェンジを操作する駆動系を説明する概略図である。
【図6】本発明において、回転・直動変換機構としてのボールスクリュの回転角度(位置)と回転センサの出力変化を説明する図である。
【図7】本発明の自動変速装置のスケルトン図である。
【図8】本発明における回転・直動変換機構の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図9】図8に示した回転・直動変換機構の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
先ず、図7により、自動変速装置10のスケルトンを説明する。
【0019】
自動変速装置10は、エンジン(図示せず)にクラッチCLを介して自動変速装置10の主入力軸11が接続され、自動変速装置10の出力軸12が、図示していないプロペラシャフト、ディファレンシャル等を介して後輪に連結される。
【0020】
この自動変速装置10は、主入力軸11と同軸上に副入力軸13が設けられ、主入力軸11と副入力軸13に、平行にカウンタ軸14が設けられ、主入力軸11とカウンタ軸14の入力側に3rdギア段15が設けられ、主入力軸11の回転が3rdギア段15を介してカウンタ軸14に伝達され、カウンタ軸14から各段のギアを介して副入力軸13に伝達されるようになっている。
【0021】
副入力軸13とカウンタ軸14には、入力側から出力側にかけて4thギア段16、2ndギア段17、1stギア段18、1stより低速のクローラCのギア段19と、リバースRのギア段20とが設けられる。3rdギア段15と4thギア段16のスプライン15s、16s間と、2ndギア段17と1stギア段18のスプライン17s、18s間と、1stギア段18とクローラCのギア段19のスプライン18s、19s間とに位置した副入力軸13にはそれぞれスプライン13a、13b、13cが設けられる。スプライン13aには、3rdギア段15と4thギア段16のスプライン15s、16sと選択的に係合するシフトスリーブ21aが設けられ、スプライン13bには、2ndギア段17と1stギア段18のスプライン17s、18sに選択的に係合するシフトスリーブ21bが設けられ、スプライン13cには、クローラCのギア段19とリバースRのギア段20のスプライン19s、20sに選択的に係合するシフトスリーブ21cが設けられ、これらシフトスリーブ21a、21b、21cが、各段のスプライン15s〜20sに選択的に係合することで、主入力軸11の回転が、所定のギア比でスプライン13a〜13cを介して副入力軸13に伝達される。
【0022】
副入力軸13は、遊星歯車装置22を介して出力軸12と連結される。遊星歯車装置22は、副入力軸13の端部に連結されたサンギア23と、サンギア23の外周に噛合する複数のプラネタリギア24と、プラネタリギア24の外周に噛合するリングギア25とからなり、複数のプラネタリギア24を支持するキャリア12cが出力軸12に一体に連結される。
【0023】
リングギア25には、出力軸12を覆って二重となる管軸26が設けられ、その管軸26にスプライン26sが設けられ、そのスプライン26sを境に、ミッションケース27に固定された固定スプライン27sと、出力軸12に設けられたスプライン12sが設けられる。またスプライン26sには、固定スプライン27sと出力軸12のスプライン12sと選択的に係合するレンジギア用シフトスリーブ28が設けられる。このレンジギア用シフトスリーブ28は、シフトフォーク29を介して油圧シリンダや電磁ソレノイドからなるアクチュエータ30で駆動され、レンジギア用シフトスリーブ28が、固定スプライン27sと係合した位置では、1st〜4thのローギア段となり、出力軸12のスプライン12sと係合した位置では、5〜8thのハイギア段となる。
【0024】
クローラC、リバースR、1st〜4thからなるメインギアをシフトするシフトスリーブ21a、21b、21cは、3本のシフトフォーク31a、31b、31cで、それぞれ係合位置に移動される。シフトフォーク31a、31b、31cは、シフトロッド32a、32b、32cに連結され、シフトロッド32a、32b、32cにシフトブロック33a、33b、33cが連結され、そのシフトブロック33a、33b、33cのいずれかにインターナルレバ34が係合するように回動してシフトチェンジするギア段をセレクトする。その後、インターナルレバ34がシフト方向に移動されることで、シフトブロック33a、33b、33cを介してシフトロッド32a、32b、32cが軸方向に移動され、シフトフォーク31a、31b、31cを介してシフトスリーブ21a、21b、21cを中立位置から係合位置に移動してシフトチェンジが行えるようになっている。
【0025】
シフトロッド32a、32b、32cの両端は、支持筒35、35で軸方向移動自在に設けられ、シフトロッド32a、32b、32cの端部には3つのディテント溝36が形成され、その端部を支持する支持筒35には、ディテント溝36に係合するディテントボールとスプリングからなるディテント機構38が設けられ、シフトスリーブ21a、21b、21cの中立位置と、シフトスリーブ21a、21b、21cのシフト係合位置を保持できるようになっている。
【0026】
なお、後述するがシフト操作は、出力軸12に設けた出力軸回転センサ37の検出値がTCMに入力され、そのTCMにより自動変速されるが、TCMが、クラッチCLを断としてシフトスリーブ21a、21b、21cを、スプライン15s〜20sに係合する際に、カウンタ軸14側の4thギア段16に設けたカウンタ軸回転センサ40の検出値に基づいて、カウンタ軸14に設けたカウンタシャフトブレーキ39にてシンクロ制御してシフト段のスプライン15s〜20sの回転を主入力軸11、副入力軸13のスプライン13a〜13cに一致させるように制御する。
【0027】
本発明においては、インターナルレバ34のセレクト方向の回動とシフト方向の往復移動をモータで行うようにしたものであり、これを図1〜図3により説明する。
【0028】
先ずインターナルレバ34のセレクト方向の回動を説明する。
【0029】
図1、図3に示すように、インターナルレバ34は、そのボス34bがインターナル軸41に回動自在にかつ軸方向移動自在に設けられる。インターナルレバ34のボス34bには、回動用溝42が設けられる。この回動用溝42にはセレクトレバ43が係合し、そのセレクトレバ43がセレクト軸44に連結される。セレクト軸44は、セレクトギア装置59を介してセレクトモータ46にて回転される。すなわち、セレクト軸44には、扇状の回動用ギア45が設けられ、その回動用ギア45が、セレクトモータ46に連結したセレクトギア47に噛合されてセレクトギア装置59が構成される。セレクトレバ43はリターンスプリング48にて、図で見て反時計方向に付勢され、セレクトモータ46が、リターンスプリング48に抗してセレクトギア装置59(セレクトギア47及び回動用ギア45)を介してセレクトレバ43を時計方向に回動する。このセレクトレバ43の回動位置は、セレクトセンサ49にて検出され、インターナルレバ34が、どのシフトブロック33a、33b、33cに係合しているかの位置を検出できるようになっている。すなわち、図3に示すように、インターナルレバ34のレバー部は、回動に伴って、C−Rのシフトブロック33c、3rd−4thのシフトブロック33a、2nd−1stのシフトブロック33bに順次係合すると共にその回転位置がセレクトセンサ49で検出される。
【0030】
次に、インターナルレバ34のシフト方向の往復動を行う回転・直動変換機構を説明する。
【0031】
図1〜図3に示すように、インターナルレバ34のボス34bには、係合ブロック50が設けられ、この係合ブロック50にシフトレバ51の係合爪52が係合して設けられる。シフトレバ51はシフトレバロッド53に移動自在かつ回転自在に設けられる。
【0032】
シフトレバ51をシフト方向に往復動を行う回転・直動変換機構80は、シフトレバロッド53と平行に、ボールナット55を有するボールスクリュ54が設けられて構成され、そのボールスクリュ54に螺合したボールナット55が、シフトレバ51の溝部56に係合して設けられる。
【0033】
ボールスクリュ54は、複数のシフトモータ、図では第1シフトモータ60と第2シフトモータ62により減速歯車装置57を介して回転される。すなわち、ボールスクリュ54には、ドリブンギア58が設けられ、そのドリブンギア58が、第1シフトモータ60の第1ドライブギア61と第2シフトモータ62の第2ドライブギア63とに噛合されて減速歯車装置57が構成され、第1シフトモータ60と第2シフトモータ62より、第1ドライブギア61と第2ドライブギア63にてドリブンギア58が駆動され、ボールスクリュ54が回転されるようになっている。この第1シフトモータ60と第2シフトモータ62で、ボールスクリュ54を回転することで、いずれかのモータが失陥したときでもシフト駆動することが可能となる。またドリブンギア58に対して第1ドライブギア61と第2ドライブギア63の歯数は小さくされると共に、第1ドライブギア61と第2ドライブギア63の歯数が異なるように設定される。
【0034】
第1シフトモータ60と第2シフトモータ62は、第1ドライブギア61と第2ドライブギア63の歯数比に応じて、その回転数が設定され、第1シフトモータ60から第1ドライブギア61を介してドリブンギア58を、また第2シフトモータ62から第2ドライブギア63を介してドリブンギア58を、同じ回転速度となるように減速してボールスクリュ54を回転する。
【0035】
このボールスクリュ54の正逆回転で、ボールナット55がシフト方向に移動し、シフトレバ51の係合爪52を介してインターナルレバ34をシフト方向に移動するようになっている。
【0036】
次に、セレクトモータ46と第1シフトモータ60と第2シフトモータ62の駆動系を図5により説明する。
【0037】
セレクトモータ46と第1シフトモータ60と第2シフトモータ62は、それぞれ、セレクトモータドライバ70、第1シフトモータドライバ71、第2シフトモータドライバ72で駆動される。このセレクトモータドライバ70、第1シフトモータドライバ71、第2シフトモータドライバ72は、TCM73でその出力周波数が制御されるようになっている。
【0038】
第1シフトモータ60と第2シフトモータ62には、回転センサとしての第1及び第2ホールIC65、66が内蔵される。ホールIC65、66は、磁気センサであるホール素子と、そのホール素子の出力信号をデジタル信号に変換するICとが1パッケージ化されてなる。このホールIC65、66の検出値はTCM73に入力される。また、TCM73には、セレクトセンサ49の検出値が入力される。
【0039】
TCM73は、セレクトセンサ49の検出値でセレクトモータドライバ70を制御し、またホールIC65、66の検出値からその位相差を検出し、これにより第1シフトモータ60と第2シフトモータ62の回転角度(位置)を求め、減速歯車装置57の各減速比からボールスクリュ54の回転位置を検出してシフト量を求め、これに基づいて第1シフトモータドライバ71、第2シフトモータドライバ72を制御する。
【0040】
図4は、図5に示した各モータドライバ70〜72をTCM73で制御して各モータ46、60、62の回転を制御するブロック図を示したものである。
【0041】
各モータドライバ70〜72は、インバータからなり、直流の電源(バッテリ)74をデューティ制御(パルス幅のHとLのデューティ比を制御)して、出力周波数可変の三相交流に変換して各モータドライバ70〜72を回転数可変に駆動するもので、TCM73が、センサ49、回転センサ(ホールIC65、66)の検出値に基づいて各モータドライバ70〜72に指令デューティ比を出力し、それに基づいて各モータドライバ70〜72がデューティ制御されて各モータ46、60、62の回転数を制御するようになっている。
【0042】
TCM73には、図示していないがエンジン回転数と、図7で説明した出力軸回転センサ37とカウンタ軸回転センサ40の検出値が入力され、これ基づいて変速時のシフト段を決定する。シフト操作は、セレクト方向を制御し、その後シフト方向を制御するが、セレクト方向は、セレクトセンサ49の検出値からシフトモータ46の回転を制御して、インターナルレバ34の回転位置を制御してレバー部34lがシフト段のシフトブロック33a、33b、33cに係合するように位置させる。
【0043】
次に回転・直動変換機構80のシフト方向の制御を説明する。
【0044】
図6は、ボールスクリュ54の回転角度(位置)に対する回転センサである第1及び第2ホールIC65、66の出力電圧変化を示したものである。図6に示すように第1及び第2ホールIC65、66の出力電圧は、第1及び第2シフトモータ60、62の回転でその出力電圧変化がサイン曲線で変化する。
【0045】
この図6で、例えば、第1ドライブギア61と第2ドライブギア63のギア比を3:4とし、第1ドライブギア61とドリブンギア58のギア比が1:2とすると、第2ドライブギア63とドリブンギア58のギア比は(4/3):2となり、第1シフトモータ60の2回転、第2シフトモータ62の3/2回転で、ボールスクリュ54が1回転となり、第1ホールIC65の出力電圧が0のときには、ボールスクリュ54は、0°、90°、180°、270°、360°で、第2ホールIC65の出力電圧が0のときには、0°、120°、240°、360°となる。この関係は第1ドライブギア61と第2ドライブギア63のギア比の最小公倍数(12)に至るまで、すなわち第1シフトモータ60が4回転、第2シフトモータが3回転するまで、両者の位相差が変化し、その後はまた同じ位相差の変化となる。
【0046】
従って、ホールIC65、66の出力電圧差を検出することで、ボールスクリュ54の回転角度(位置)を正確に求めることが可能となる。
【0047】
ここでシフトレバ51によるシフトロッド32a、32b、32cのシフト量は、中立位置から±14mmであり、ボールスクリュ54の回転でボールナット55が±14mm移動するには、そのボールスクリュ54のネジピッチで決定される。このネジピッチと減速歯車装置57の減速比で、第1及び第2シフトモータ60、62の回転数を、数回転〜数十回転に設定すると、第1及び第2シフトモータ60、62を小型化できると共にボールスクリュ54の回転角度を検出しながら精度のよいシフト制御が行える。すなわち、第1及び第2シフトモータ60、62の回転速度は自由に設定でき、そのシフト位置の検出も精度よく行えるため、シフト開始当初は、第1及び第2シフトモータ60、62の回転速度を速くし、シフトロッド32a、32b、32cの係合位置では、シフトスリーブ21a、21b、21cとスプライン15s〜20sとが突き当たって噛合する位置近くで、その速度を遅くする制御が可能となる。これにより、所定のシフト量に達してシフトロッド32a、32b、32cが上述したディテント機構38で停止するときに第1及び第2シフトモータ60、62を停止させることで、シフトスリーブ21a、21b、21cとスプライン15s〜20sとが突き当たって異音が発生することも防止できる。
【0048】
この第1及び第2シフトモータ60、62の回転数と、減速歯車装置57の両減速比は、自由に設定できるため、そのシフト操作の出力特性も設定自由度を増やすことができる。また、シフトモータは、小型化できるため、複数台設置しても省スペースに設計でき、さらに、いずれかのモータが失陥しても他のモータでバックアップすることが可能となる。
【0049】
上述の実施の形態においては、シフトモータ60、62の回転を、シフトロッド32a〜32cのシフト方向に往復移動させ回転・直動変換機構80として、ボールスクリュ54の例で説明したが、本発明では、ボールスクリュ54の他にラック&ピニオンなど種々の機構を用いることができる。
【0050】
図8、図9は、回転・直動変換機構80の他の変形例を示したものである。
【0051】
本実施の形態においては、ドリブンギア58で回転される回転軸84にドラム85が一体に設けられ、そのドラム85の外周に溝87が形成され、他方シフトレバロッド53に移動自在にかつ回転自在に設けられるシフトレバ51には、ドラム85の溝87に係合するボスピン83が設けられて回転・直動変換機構80が構成される。
【0052】
また図1〜図3と同様に、インターナルレバ34のボス34bには、係合ブロック50が設けられ、この係合ブロック50にシフトレバ51の係合爪52が係合して設けられる。
【0053】
この実施の形態において、図には示していないが、回転・直動変換機構80の回転軸84にドリブンギア58が設けられ、図1〜図3と同様に、ドリブンギア58が、第1シフトモータ60の第1ドライブギア61と第2シフトモータ62の第2ドライブギア63とに噛合されて減速歯車装置57が構成され、第1シフトモータ60と第2シフトモータ62より、第1ドライブギア61と第2ドライブギア63にてドリブンギア58が駆動され(図1〜図3参照)、ドラム85が回転されるようになっている。ドラム85に形成される溝87は、図ではドラム85の円周に対して180°程度となっているが360°或いは溝87が軸方向に重ならなければそれ以上に形成してもよい。またドリブンギア58と第1ドライブギア61と第2ドライブギア63で構成される減速歯車装置57は、減速比を大きく、例えば、図1〜図3で説明したように第1ドライブギア61と第2ドライブギア63のギア比を3:4とした場合、第1ドライブギア61とドリブンギア58のギア比が1:10、或いはそれ以上にするとよい。
【0054】
これにより、図8、図9の回転・直動変換機構80でも図6で説明したように第1シフトモータ60と第2シフトモータ62の回転が、回転センサである第1及び第2ホールIC65、66で検出され、ドラム85の回転角度(位置)が検出されてシフトロッド32a〜32cのシフト方向の制御が正確に行える。
【符号の説明】
【0055】
32a〜32c シフトロッド
34 インターナルレバ
51 シフトブロック
54 ボールスクリュ
55 ボールナット
57 減速歯車装置
60、62 第1及び第2シフトモータ
65、66 回転センサ(ホールIC)
71、72 モータドライバ
73 TCM
80 回転・直動変換機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速装置のシフトロッドのシフトをモータで行うための車両の自動変速装置において、回転運動を往復直線運動に変換して前記シフトロッドをシフト操作する回転・直動変換機構と、該回転・直動変換機構に回転を伝達するドリブンギアと、該ドリブンギアにそれぞれ噛合されると共に前記ドリブンギアに対して減速比が異なる一対のドライブギアと、異なる減速比に対応して前記一対のドライブギアの回転数を制御して駆動すると共に、内部に回転数を検出する回転センサを有する一対のシフトモータと、その一対のシフトモータの各回転センサの検出値が入力され、その検出値の位相差から前記回転・直動変換機構の回転角を検出するTCMとを備えたことを特徴とする車両の自動変速装置。
【請求項2】
前記一対のシフトモータが、それぞれ出力電圧可変のシフトモータドライバで駆動される請求項1記載の車両の自動変速装置。
【請求項3】
前記一対のシフトモータの前記回転センサは、ホールICからなり、両ホールICの出力電圧差から前記回転・直動変換機構の回転角度を検出する請求項1又は2記載の車両の自動変速装置。
【請求項4】
前記シフトロッドはインターナルレバでシフトされ、そのインターナルレバが、シフトブロックに係合し、そのシフトブロックが、前記回転・直動変換機構にてシフト方向に移動される請求項1〜3のいずれかに記載の車両の自動変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207684(P2012−207684A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71923(P2011−71923)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】