説明

車両の運行管理システム及び車両の運行管理方法

【課題】一定のエリア内を移動する各車両を管理対象として、各車両に補正計算機能付きの高価なGPSレシーバを設けることなく、各車両と位置補正サーバとの間の位置データを補正するための無線のやり取りも行なうことなく、車両台数にかかわらず、簡単かつ安価に管理端末側で各車両の位置の精度の高い管理が行なえるようにする。
【解決手段】運行管理エリア8内の各車両6のGPSレシーバ7a及び基準点9のGPSレシーバ7bの受信位置データが無線伝送される運行管理サーバ10の位置補正部10bにより、基準点9の受信位置データと真位置データとの誤差に基づいて運行管理エリア8内に存在する各車両6の受信位置データの誤差を補正し、運行管理サーバ10のデータ配信処理手段により、各車両6の管理端末装置5に各車両6それぞれの補正後の位置データを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の運行管理エリアを移動する管理対象の各車両にGPSレシーバを搭載し、その受信位置データに基き、各車両の位置を管理端末側で管理する車両の運行管理システム及び車両の運行管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の位置情報を得るため、いわゆる全地球測位システム(GPS)が用いられるが、GPS衛星の受信信号に基くGPSレシーバの受信位置データは、周知のように誤差を含んでいる。
【0003】
そのため、運送や福祉等の分野において、管理対象の各車両の位置を運行管理側で精度よく把握して管理する場合、いわゆるDGPS(Differential GPS)の車両の運行管理システムが用いられる。
【0004】
このDGPSの一般的な車両の運行管理システムは、管理対象の各車両にGPSレシーバだけでなくFM多重放送受信機等も搭載して構築され、位置の分かっている基準局が発信する位置補正情報のFM多重放送電波を各車両のFM多重放送受信機により受信し、各車両により、受信した位置補正情報によりそれぞれのGPSレシーバの受信位置データの誤差を修正し、各車両から運行管理サーバを介して各事業所や営業所等の端末装置に各車両の補正後の位置データを送り、補正後の各位置データにより、各端末装置によって各車両の時々刻々の位置を精度よく管理するものである。
【0005】
しかしながら、前記従来の運行管理システムは、各車両にGPSレシーバだけでなくFM多重放送受信機等も搭載する必要があり、高価である。
【0006】
そこで、各車両に前記のFM多重放送受信機を搭載しなくてよいようにした運行管理システムが提案され、このシステムは例えば図2に示すように構築される。
【0007】
この図2のシステムは、管理対象の各車両1にGPSレシーバを搭載し、各車両1と位置補正サーバ2との間で無線送受信によってデータをやり取りし、各車両のGPSレシーバの受信位置データ(測位データ)を位置補正サーバ2に送り、この位置補正サーバ2により、その記憶手段3に保持された位置補正サーバ2の基準点データ(真位置データ)と、位置補正サーバ2のGPS受信位置データとの誤差に基き、各車両1から送られてきた受信位置データを補正して各車両1に送る。
【0008】
さらに、各車両1から補正後の自車位置データを共通の運行管理サーバ4に無線伝送し、この運行管理サーバ4から1または複数個の管理端末装置(事務所PC(PC:パソコン))5に各車両1の補正後の自車位置データを有線又は無線で提供し、補正後のこれらの自車位置データに基き、各管理端末装置5により各車両1の位置を精度よく把握して管理する。
【0009】
なお、各管理端末装置5は例えば各車両1それぞれの事業所や営業所に設けられ、運行管理サーバ4は各事業所等が共用する。
【0010】
そして、前記図2の運行管理システムにあっては、位置補正サーバ2によって各車両1の受信位置データの誤差が補正されるため、各車両から高価なFM多重放送受信機が省ける。
【0011】
ところで、従来の車両の運行管理システムには、ほぼ前記図2の各車両1と位置補正サーバ2とにより構築され、補正された各車両1の位置を各車両1側で把握等するようにしたものもある(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
【特許文献1】特開2001−209895号公報(段落[0001]−[0007]、[0009]−[0010]、[0019]、[0026]、図1、図2、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記図2の従来システムの場合、各車両1aにFM多重放送受信機を搭載しなくてもよいが、各車両1は、それぞれGPSレシーバの受信位置データを位置補正サーバ2に送り、さらに、位置補正サーバ2で補正された自車位置データを受信してその後運行管理サーバ4aに送る必要があり、複雑な運行管理の処理を要するだけでなく、車両1毎に、位置補正サーバ2の補正後の自車位置データを受信し、運行管理サーバ4aに送る送受信装置が必要であり、車両台数が多くなる程、システムコストがかかるとともに、各車両1と位置補正サーバ2との無線通信量が多くなって複雑化する問題がある。
【0014】
本発明は、一定のエリア内を移動する各車両を管理対象としてなされたものであり、各車両に補正計算機能付きの高価なGPSレシーバを設けることなく、各車両と位置補正サーバとの間で位置データを補正するための無線のやり取りも行なうことなく、車両台数にかかわらず、簡単かつ安価に管理端末側で各車両の位置の精度の高い管理が行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、本発明の車両の運行管理システムは、GPSレシーバを搭載した管理対象の各車両と、運行管理エリア内に設けられてGPSレシーバが設置された基準点と、前記各車両及び前記基準点の前記GPSレシーバの受信位置データが無線伝送される運行管理サーバとを備え、前記運行管理サーバに、前記基準点の受信位置データと真位置データとの誤差に基づいて前記運行管理エリア内に存在する前記各車両の受信位置データの誤差を補正する補正処理手段と、前記各車両の管理端末装置に前記各車両それぞれの補正後の位置データを提供するデータ配信処理手段とを設けたことを特徴としている(請求項1)。
【0016】
また、本発明の車両の運行管理システムは、運行管理サーバに、各車両それぞれの受信位置データと基準点の受信位置データとから前記各車両それぞれの前記基準点からの距離を算出して前記各車両が運行管理エリア内に存在するか否かを判別する判別手段を設けたことも特徴としている(請求項2)。
【0017】
つぎに、本発明の車両の運行管理方法は、管理対象の各車両及び所定の管理エリア内の基準点それぞれにGPSレシーバを設け、前記各車両及び前記基準点の前記GPSレシーバの受信位置データを運行管理サーバに取り込み、前記運行管理サーバにより、前記基準点の前記受信位置データと真位置データとの誤差に基づいて前記各車両の前記受信位置データの誤差を補正し、前記運行管理サーバから前記各車両の管理端末装置に前記各車両それぞれの補正後の位置データを提供することを特徴としている(請求項3)。
【0018】
また、本発明の車両の運行管理方法は、運行管理サーバにより、各車両それぞれの受信位置データと基準点の受信位置データとから前記各車両それぞれの前記基準点からの距離を算出して前記各車両が運行管理エリア内に存在するか否かを判別することも特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0019】
まず、請求項1、3の構成によれば、管理対象の車両が一定の運行管理エリア内を移動する車両に限られ、これらの車両には補正計算機能のない安価なGPSレシーバが搭載され、これらのGPSレシーバの受信位置データがそのまま運行管理サーバに送られて取り込まれる。
【0020】
また、運行管理エリアの適当な基準点に設置されたGPSレシーバの受信位置データも運行管理サーバに取り込まれる。
【0021】
そして、運行管理サーバにより、基準点のGPSレシーバの受信位置データとその基準点の真位置データとの誤差に基づいて各車両の受信位置データが補正され、補正後の各車両の位置データが、運行管理サーバから各車両の管理端末装置に提供される。
【0022】
したがって、各車両での受信位置データの補正計算が不要で、各車両に補正計算機能付きの高価なGPSレシーバを設ける必要がなく、しかも、運行管理サーバによって各車両の受信位置データが補正されるため、従来のような各車両と位置補正サーバとの間の位置データを補正するための無線のやり取りも不要であり、管理対象の車両の台数によらず従来より極めて簡単かつ安価である。
【0023】
さらに、各車両の移動範囲に相当する運行管理エリア内の基準点の位置の受信位置データの誤差に基いて各車両の受信位置データが補正されるため、従来の全国に数個所しかない基準局の補正情報に基いて補正する場合より補正精度が高く、管理端末側で、各車両の時々刻々の位置を従来より精度よく把握して管理することができる。
【0024】
そのため、一定のエリア内を移動する各車両を管理対象として、車両台数にかかわらず、簡単かつ安価に管理端末側で各車両の位置の精度の高い管理を行なうことができる。
【0025】
つぎに、請求項2、4の構成によれば、各車両それぞれの受信位置データと基準点の受信位置データとに基き、運行管理サーバにより、各車両が運行管理エリア内に存在することを確認して各車両の受信位置データを適切に補正することができる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、その一実施形態について、図1にしたがって詳述する。
【0027】
図1は車両の運行管理システムの模式的なブロック図であり、同図において、6は図2の車両1に相当する管理対象の各車両であり、それぞれ補正計算機能が付いていない安価なGPSレシーバ7aを搭載する。8は所定の運行管理エリアであり、例えば市内又は2,3の市町村、あるいはそれらよりさらに狭い範囲をカバーする大きさであり、好ましくはほぼ円形のエリアである。9は運行管理エリア8内の基準点であり、運行管理エリア8内の適当な位置に設定されるが、各車両6が運行管理エリア内に存在するか否かを判別するため、運行管理エリア8のほぼ中心に設定することが好ましい。7bは基準点9に設置されたGPSレシーバであり、GPSレシーバ7aと同様の補正計算機能が付いていない安価なGPSレシーバに無線送信機能を設けて形成されている。
【0028】
10は図2の運行管理サーバ4に相当する運行管理サーバであり、そのソフトウエア処理の実行により、データ配信管理サーバの機能を有する運行管理部10a及び位置補正の演算機能を有する位置補正部10bを構成し、運行管理部10aはデータ配信処理手段を形成して各車両6の管理端末装置5に各車両6それぞれの補正後の位置データを提供し、位置補正部10bは補正処理手段を形成し、基準点9の受信位置データ(受信基準点データ)と、書き換え自在の不揮発性の記憶手段11に保持された基準点9の真位置データとの誤差に基づいて運行管理エリア8内に存在する各車両6の受信位置データの誤差を補正する。
【0029】
12は位置補正部10bの誤差演算手段であり、前記の基準点9の受信位置データと真位置データとの誤差を演算して各車両6の位置補正用の補正情報を生成する。13は位置補正部10bの補正計算手段であり、各車両6の受信位置データ(補正前データ)の誤差を前記補正情報に基づいて補正し、各車両6の補正後の位置情報(補正後データ)を運行管理部10aに出力する。
【0030】
ところで、この実施形態においては例えば補正計算手段13に判別手段も設け、この判別手段により、各車両6それぞれの受信位置データと基準点9の受信位置データとから各車両6それぞれの基準点9からの距離を算出し、算出した距離が例えば運行管理エリア8のほぼ半径の距離以下か否かによって各車両6が運行管理エリア8内に存在するか否かを判別し、運行管理エリア8内の各車両6についてのみ基準点9に基く補正情報によって受信位置データを補正する。
【0031】
以上の構成に基き、この実施形態の車両の運行管理システムは、つぎに説明する運行管理方法で各車両6の運行を管理する。
【0032】
まず、各車両6のGPSレシーバ7a、基準点9のGPSレシーバ7bが運行管理サーバ10の運行管理部10aに周期的にそれぞれの未補正の受信位置データを無線通信あるいは無線電話網を通して無線伝送する。
【0033】
そして、運行管理部10aに伝送された基準点9のGPSレシーバ7bの受信位置データが位置補正部10bの誤差演算手段12に取り込まれ、この演算手段12は、取り込んだ基準点9の受信位置データと記憶手段11に保持された真位置データとの誤差を演算し、この誤差の最新の補正情報を書き換え保持する。
【0034】
また、運行管理部10aに伝送された各車両6のGPSレシーバ7aの受信位置データが補正計算手段13に取り込まれ、この計算手段13は、まず、取り込んだ各車両6の受信位置データの位置と基準点9の最新の受信位置データの位置とから各車両6の位置の基準点9の位置からの距離を算出し、算出した距離が例えば前記のほぼ半径の距離以下であれば各車両6が運行管理エリア8内に存在すると判別し、算出した距離が前記のほぼ半径の距離より長ければ各車両6が運行管理エリア8外に存在すると判別し、運行管理エリア8内の各車両6を補正対象とする。運行管理エリア8外の車両については、基準点9の位置を基準にした補正を施すと、却って補正の誤差が生じるおそれがあるからであり、さらには、隣の運行管理エリアの基準点の位置を基準として補正するほうが好ましいからである。
【0035】
さらに、補正計算手段13により、運行管理エリア8内に存在する車両6についてのみ各車両6の受信位置データを補正して各車両6の時々刻々の補正後の位置データを算出する。
【0036】
そして、各車両6の時々刻々の補正後の位置データを運行管理部10aから、例えば無線の電話網、データ伝送網等を介してそれぞれの管理端末装置5に提供する。
【0037】
したがって、この実施形態の場合、各車両6は補正計算機能のない安価なGPSレシーバ7aを搭載すればよく、また、基準点9にも補正計算機能のない安価なGPSレシーバ7bを設ければよく、各車両6及び基準点9での受信位置データの補正計算は不要であり、さらに、各車両6は図2の従来システムの位置補正サーバ2等との位置データを補正するための無線のやり取りが不要であり、各車両6にそのための送受信装置を備える必要がなく、その上、管理対象の車両6の台数によらず、運行管理サーバ10は1つ設ければよく、管理対象の車両の台数によらず従来より極めて簡単かつ安価にシステムを構築することができる。
【0038】
また、各車両6の移動範囲に相当する運行管理エリア8内の基準点9の受信位置データの誤差に基いて各車両6の受信位置データが補正され、このとき、とくに各車量6が近距離運送の車両や福祉車両等の移動範囲が限られた車両であれば、運行管理エリア8は狭く、各車両6の位置が基準点9の位置に近く、基準点9の位置の補正情報を各車両6の位置の補正情報に用いて精度の高い補正を行なうことができ、従来システムのように全国に数個所しかない基準局の補正情報に基いて補正する場合より補正精度が高く、管理端末側で、各車両の時々刻々の位置を従来より精度よく把握して管理することができる。
【0039】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、運行管理エリア8の大きさや形状等はどのようであってもよく、基準点9は運行管理エリア8の大きさや形状等に基いて適当に設定してよいのは勿論である。
【0040】
また、管理対象の車両6もどのようであってもよく、運行管理サーバ10の構成等が実施形態と異なっていてもよいのも勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の一実施形態のブロック図である。
【図2】従来システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
5 管理端末装置
6 車両
7a、7b GPSレシーバ
8 運行管理エリア
9 基準点
10 運行管理サーバ
10a 運行管理部
10b 位置補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPSレシーバを搭載した管理対象の各車両と、
運行管理エリア内に設けられてGPSレシーバが設置された基準点と、
前記各車両及び前記基準点の前記GPSレシーバの受信位置データが無線伝送される運行管理サーバとを備え、
前記運行管理サーバに、前記基準点の受信位置データと真位置データとの誤差に基づいて前記運行管理エリア内に存在する前記各車両の受信位置データの誤差を補正する補正処理手段と、
前記各車両の管理端末装置に前記各車両それぞれの補正後の位置データを提供するデータ配信処理手段とを設けたことを特徴とする車両の運行管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両の運行管理システムにおいて、
運行管理サーバに、各車両それぞれの受信位置データと基準点の受信位置データとから前記各車両それぞれの前記基準点からの距離を算出して前記各車両が運行管理エリア内に存在するか否かを判別する判別手段を設けたことを特徴とする車両の運行管理システム。
【請求項3】
管理対象の各車両及び所定の管理エリア内の基準点それぞれにGPSレシーバを設け、
前記各車両及び前記基準点の前記GPSレシーバの受信位置データを運行管理サーバに取り込み、
前記運行管理サーバにより、前記基準点の前記受信位置データと真位置データとの誤差に基づいて前記各車両の前記受信位置データの誤差を補正し、
前記運行管理サーバから前記各車両の管理端末装置に前記各車両それぞれの補正後の位置データを提供することを特徴とする車両の運行管理方法。
【請求項4】
請求項3記載の車両の運行管理方法において、
運行管理サーバにより、各車両それぞれの受信位置データと基準点の受信位置データとから前記各車両それぞれの前記基準点からの距離を算出して前記各車両が運行管理エリア内に存在するか否かを判別することを特徴とする車両の運行管理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−276941(P2006−276941A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90677(P2005−90677)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】