説明

車両の電子制御システムおよびその制御方法

【課題】メインコントローラと少なくとも一つのローカルコントローラとの間に通信を行うと共に、相互間の情報を考慮して、制動装置および懸架装置を制御することにより、各コントローラの固有特性をさらに改善し、かつ、活性化させることができるのみならず、システムも単純化させることができる車両の電子制御システムおよびその制御方法を提供すること。
【解決手段】車両の情報を受信し、車両の制動制御信号および懸架制御信号を生成して出力するメインコントローラと、メインコントローラにより出力された懸架制御信号に応じて、各車輪のダンパを制御する少なくとも一つのローカルコントローラと、メインコントローラとローカルコントローラとの間のデータ通信を行うインターフェース部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電子制御システムおよびその制御方法に関し、特に、メインコントローラと少なくとも一つのローカルコントローラとの間に通信を行うと共に、相互間の情報を考慮して、制動装置および懸架装置を制御することにより、各コントローラの固有特性をさらに改善し、かつ、活性化させることができるのみならず、システムも単純化させることができる車両の電子制御システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電子制御システムは、現在、開発メーカでの重要な関心事項であり、多くの研究開発が進行されている。
【0003】
このような電子制御システムは、図1に示すように、制動装置用のESP(Electronic Stability Program)コントローラ10と、懸架装置用のCDC(Continuous Damping Control)コントローラ20と、タイヤ空気圧低下警報システム用のTPMS(Tire Pressure Monitoring System)コントローラ30と、各コントローラ10、20、30間の通信を行うためのインタフェース部40とを備えている。
【0004】
ここで、ESPコントローラ10は、車輪速センサ1、操舵角センサ2、ヨーレートセンサ3、横加速度センサ4、ブレーキ圧力センサ5から情報の入力を受けて、制動制御部6およびエンジン制御部7を制御する。
【0005】
懸架装置用のCDCコントローラ20は、車体加速度センサ21、車輪加速度センサ22、操舵角センサ23、または、横加速度センサ24から情報を受けて、ダンパ制御部25を制御する。
【0006】
タイヤ空気圧低下警報システム用のTPMSコントローラ30は、タイヤ圧力センサ31により、タイヤの空気圧情報をRF(Radio Frequency)伝送方式を通じて、受信機を備えた制御器に伝送し、ディスプレイ部32に表示する。これにより、運転者は、タイヤ空気圧情報を確認することができる。
【0007】
このように、電子制御システムは、各コントローラ10、20、30に連結されたセンサにより受信された情報を互いに授受する程度に過ぎないため、各コントローラ10、20、30が装着されているにもかかわらず、互いの性能に影響を与えていない。すなわち、電子制御システムは、各コントローラ10、20、30の固有特性を、該当センサで受信された情報を用いて個別に動作させる。
【0008】
これにより、各コントローラにおいて必要とする情報を、各コントローラに連結されたセンサにより、それぞれ受信して処理するため、共有可能なセンサ(例えば、操舵角センサまたは横加速度センサ、車輪速センサ等)の重複使用により、システムのコストが上昇することになる。
【0009】
また、各コントローラにおいて必要とするセンサが重複設置され、各コントローラが個別に動作するために、個別コントローラ(例えば、CDCコントローラ)が設置されているため、システムの内部が複雑となり、その信号処理においても重複して行われるため、効率的ではない。
【0010】
また、多くのTPMSは、制御器にRF受信機を装着し、各車輪の圧力センサから情報を伝達されるが、各国毎に周波数割当帯域が異なるので、微弱な周波数を割り当てられる場合は、受信率が低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、メインコントローラと少なくとも一つのローカルコントローラとの間に通信を行うと共に、相互間の情報を考慮して、制動装置および懸架装置を制御することにより、各コントローラの固有特性をさらに改善し、かつ、活性化させることができるのみならず、システムも単純化させることができる車両の電子制御システムおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、タイヤ圧力センサに近接したローカルコントローラから圧力情報を受信することにより、受信率の効率性を向上させることができる車両の電子制御システムおよびその制御方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明の実施の形態に係る車両の電子制御システムは、車両の情報を受信し、前記車両の制動制御信号および懸架制御信号を生成して出力するメインコントローラと、前記メインコントローラにより出力された懸架制御信号に応じて、各車輪のダンパを制御する少なくとも一つのローカルコントローラと、前記メインコントローラと前記ローカルコントローラとの間のデータ通信を行うインターフェース部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記メインコントローラは、操舵角センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ、ブレーキ圧力センサで感知された車両の情報を受信し、前記ローカルコントローラは、車輪速センサ、タイヤ圧力センサで感知された車両の車輪情報を受信することを特徴とする。
【0015】
より好ましくは、前記車両の情報を表示するディスプレイ部をさらに備え、前記メインコントローラは、前記タイヤ圧力センサに連結された前記ローカルコントローラから圧力情報を受信し、前記ディスプレイ部に表示させることを特徴とする。
【0016】
さらに好ましくは、前記ローカルコントローラは、前記車輪速センサで感知される車輪速度情報を、前記インターフェース部を介して前記メインコントローラに伝達することを特徴とする。
【0017】
さらに好ましくは、前記メインコントローラは、前記車両の各種のセンサから受信された車両の状態情報および/または前記ローカルコントローラから受信された車両の車輪情報を用いて決定されたダンパの制御量を前記ローカルコントローラに伝達し、前記ローカルコントローラは、前記メインコントローラから受信された制御量に応じてダンパを制御することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の実施の形態に係る車両の電子制御システムの制御方法は、メインコントローラに連結されたセンサから車両の状態情報とローカルコントローラに連結されたセンサから車両の車輪情報を受信するステップと、前記受信された車両の情報に基づいて、前記車両の制動制御信号および懸架制御信号を生成して出力するステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
好ましくは、タイヤ圧力センサに連結された前記ローカルコントローラから圧力情報を受信して表示するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0020】
より好ましくは、前記ローカルコントローラは、前記出力された懸架制御信号を受信し、各車輪のダンパを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、メインコントローラと少なくとも一つのローカルコントローラとの間に通信を行うと共に、相互間の情報を考慮して、制動装置および懸架装置を制御することにより、各コントローラの固有特性をさらに改善し、かつ、活性化させることができるという効果がある。
【0022】
また、各コントローラにおいて必要とする情報を共有し、その情報を用いて制動制御信号および懸架制御信号を生成して出力することにより、システムの作製費用を最小化し、システムも単純化することができる。
【0023】
すなわち、メインコントローラとローカルコントローラに重複してセンサが設置されず、ダンパを制御するためのCDCコントローラも設置されないので、原価を節減するのみならず、システムも単純化することができる。
【0024】
また、タイヤ圧力センサに近接したローカルコントローラから入力された圧力情報を受信することにより、受信率の効率性を向上させることができるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面に基づいて詳しく説明する。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態に係る車両の電子制御システムを説明するためのブロック図である。
【0027】
図2を参照すると、本発明に係る車両の電子制御システムは、メインコントローラ100と、メインコントローラ100に連結されている第1乃至第4のローカルコントローラ210、220、230、240(以下、「ローカルコントローラ」という。)と、メインコントローラ100とローカルコントローラ210、220、230、240との間の通信を行うインターフェース部300と、を備える。ここで、インターフェース部300は、CAN(Controller Area Network)のことをいう。
【0028】
また、本発明に係る車両の電子制御システムは、車両の情報状態を表示するディスプレイ部400をさらに備える。
【0029】
メインコントローラ100は、車両の情報を受信し、車両の制動制御信号および懸架制御信号を生成して出力する。
【0030】
より詳述すると、メインコントローラ100は、車体加速度センサ100a、操舵角センサ100b、ヨーレートセンサ100c、横加速度センサ100d、ブレーキ圧力センサ100eで感知された車両の情報と、ローカルコントローラ210、220、230、240で受信された車両の車輪情報(例えば、車輪速度情報、圧力情報)を用いて、制動制御信号および懸架制御信号を生成する。
【0031】
また、メインコントローラ100は、生成した制動制御信号および懸架制御信号を制動制御部110、エンジン制御部120、およびダンパ制御のためのローカルコントローラ210、220、230、240に出力する。
【0032】
これにより、制動制御部110は、メインコントローラ100から出力された制動制御信号に応じて、各車輪の制動圧力を調節し、エンジン制御部120は、メインコントローラ100から出力された制動制御信号に応じて、エンジントルク量を調節して、EMS(Engine Management System)122に提供し、ローカルコントローラ210、220、230、240は、メインコントローラ100から出力された懸架制御信号に応じて、各車輪のダンパの制御量を調節する。
【0033】
また、メインコントローラ100は、タイヤ空気圧情報を感知するタイヤ圧力センサ210c、220c、230c、240cに連結されたローカルコントローラ210、220、230、240から圧力情報を受信して、ディスプレイ部400に表示する。この際、タイヤ圧力センサに近接したローカルコントローラからタイヤ圧力情報を受信することにより、受信率の効率性を向上させることができる。
【0034】
ローカルコントローラ210、220、230、240は、各車輪毎に構成されるダンパの独立的な制御装置で、メインコントローラ100の制御に応じて、各車輪のダンパを制御する。
【0035】
また、各車輪毎に構成されるローカルコントローラ210、220、230、240は、メインコントローラ100との関係で、フェイル発生の際に、フェイルセーフ機能を行う。
【0036】
より詳述すると、ローカルコントローラ210、220、230、240は、車輪速センサ210a、220a、230a、240a、車輪加速度センサ210b、220b、タイヤ圧力センサ210c、220c、230c、240cで感知された車両の車輪情報をインターフェース部300を経てメインコントローラ100に伝達する。
【0037】
すると、メインコントローラ100は、自体に直接連結されているセンサで感知された車両の状態情報と、ローカルコントローラ210、220、230、240から受信された車両の車輪情報とを用いて、ダンパの制御量を決定し、決定された制御量をローカルコントローラ210、220、230、240に伝達する。
【0038】
これにより、ローカルコントローラ210、220、230、240は、メインコントローラ100から受信された制御量を、ダンパ制御部215、225、235、245に出力してダンパを制御する。
【0039】
インターフェース部300は、ローカルコントローラ210、220、230、240から車両の車輪情報と、メインコントローラ100で生成した制御信号をインターフェースするために、メインコントローラ100とローカルコントローラ210、220、230、240との間に互いにデータ通信可能に構成される。
【0040】
このようにすることにより、メインコントローラとローカルコントローラとの間の通信を通じて、相互間の情報を考慮して、制動装置および懸架装置を制御することにより、原価を節減することができ、システムも単純化することができる。
【0041】
すなわち、図1のESPコントローラと、CDCコントローラと、ダンパ制御部とで構成された部分が、メインコントローラと、ダンパ制御部とで代替されることにより、システムが単純化し、図1のCDCコントローラと車輪加速度センサとからなる部分が、ローカルコントローラで構成されることにより、原価を節減することができる。
【0042】
以下、このような構成を有する本発明に係る車両の電子制御システムの制御方法について説明する。
【0043】
図3は、本発明の実施の形態に係る車両の電子制御システムにおける、メインコントローラの制御方法を説明するための動作流れ図である。
【0044】
図3を参照すると、メインコントローラ100は、車両の状態情報と車両の車輪情報を受信する(S110)。
【0045】
すなわち、メインコントローラ100は、メインコントローラ100そのものに直接連結されているセンサで感知された車両の状態情報を受信し、メインコントローラ100とデータ通信を行うローカルコントローラ210、220、230、240から車両の車輪情報(例えば、車輪速度、タイヤ圧力等)を受信する。
【0046】
次に、メインコントローラ100は、受信された車両の状態情報と車輪情報を用いて、制動制御信号と懸架制御信号を生成する(S120)。
【0047】
次に、メインコントローラ100は、生成した制動制御信号を制動制御部110およびエンジン制御部120に出力し、懸架制御信号をインタフェース部300を経てローカルコントローラ210、220、230、240に出力する(S130)。
【0048】
このように出力された制動制御信号に応じて、制動制御部110は、各車輪の制動圧力を調節し、エンジン制御部120は、エンジントルク量を調節する。
【0049】
また、ローカルコントローラ210、220、230、240については、後述する図4を参照して説明する。
【0050】
このようにすることにより、メインコントローラとローカルコントローラとの間の情報を相互考慮して、制動装置および懸架装置を制御することができる。これにより、各コントローラにおいて必要とするセンサを重複して設置しなくても、各コントローラにおいて必要とする情報を用いることができるので、原価を節減することができるのみならず、システムの内部構成も単純化することができる。
【0051】
図4は、本発明の実施の形態に係る車両の電子制御システムにおける、ローカルコントローラの制御方法を説明するための動作流れ図である。
【0052】
図4を参照すると、ローカルコントローラ210、220、230、240は、ローカルコントローラ210、220、230、240そのものに直接連結されているセンサから車両の車輪情報を感知し、感知された車両の車輪情報をインターフェース部300を経てメインコントローラ100に伝送する(S210)。
【0053】
次に、ローカルコントローラ210、220、230、240は、メインコントローラ100から懸架制御信号が受信されたか否かを判断する(S220)。
【0054】
前記ステップS220の判断の結果、メインコントローラ100から懸架制御信号が受信されていない場合、ローカルコントローラ210、220、230、240は、所定の時間、待ち状態を維持する。
【0055】
前記ステップS220の判断の結果、メインコントローラ100から懸架制御信号が受信された場合、ローカルコントローラ210、220、230、240は、受信された懸架制御信号に応じて、各車輪のダンパを制御する(S230)。
【0056】
これにより、別途のCDCコントローラを設置しなくても、メインコントローラにおいて懸架制御信号を受信したローカルコントローラを通じてダンパを制御することができる。これにより、原価を節減することができる。
【0057】
以上の本発明は、上述した実施の形態に限定されず、当業者により、様々な変形および変更が可能であり、これは、請求の範囲において定義される本発明の趣旨と範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来の電子制御システムを説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両の電子制御システムを説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両の電子制御システムにおける、メインコントローラの制御方法を説明するための動作流れ図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両の電子制御システムにおける、ローカルコントローラの制御方法を説明するための動作流れ図である。
【符号の説明】
【0059】
100 メインコントローラ
210、220、230、240 第1乃至第4のローカルコントローラ
300 インターフェース部
400 ディスプレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動装置、懸架装置を備える車両の電子制御システムにおいて、
車両の情報を受信し、前記車両の制動制御信号および懸架制御信号を生成して出力するメインコントローラと、
前記メインコントローラにより出力された懸架制御信号に応じて、各車輪のダンパを制御する少なくとも一つのローカルコントローラと、
前記メインコントローラと前記ローカルコントローラとの間のデータ通信を行うインターフェース部と、
を備えることを特徴とする車両の電子制御システム。
【請求項2】
前記メインコントローラは、
操舵角センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ、ブレーキ圧力センサで感知された車両の情報を受信し、
前記ローカルコントローラは、
車輪速センサ、タイヤ圧力センサで感知された車両の車輪情報を受信することを特徴とする請求項1に記載の車両の電子制御システム。
【請求項3】
前記車両の情報を表示するディスプレイ部をさらに備え、
前記メインコントローラは、
前記タイヤ圧力センサに連結された前記ローカルコントローラから圧力情報を受信し、前記ディスプレイ部に表示させることを特徴とする請求項2に記載の車両の電子制御システム。
【請求項4】
前記ローカルコントローラは、
前記車輪速センサで感知される車輪速度情報を、前記インターフェース部を介して前記メインコントローラに伝達することを特徴とする請求項2に記載の車両の電子制御システム。
【請求項5】
前記メインコントローラは、
前記車両の各種のセンサから受信された車両の状態情報および/または前記ローカルコントローラから受信された車両の車輪情報を用いて決定されたダンパの制御量を前記ローカルコントローラに伝達し、
前記ローカルコントローラは、
前記メインコントローラから受信された制御量に応じてダンパを制御することを特徴とする請求項2に記載の車両の電子制御システム。
【請求項6】
制動装置、懸架装置を備える車両の電子制御システムの制御方法であって、
メインコントローラに連結されたセンサから車両の状態情報とローカルコントローラに連結されたセンサから車両の車輪情報を受信するステップと、
前記受信された車両の情報に基づいて、前記車両の制動制御信号および懸架制御信号を生成して出力するステップと、
を含むことを特徴とする車両の電子制御システムの制御方法。
【請求項7】
タイヤ圧力センサに連結された前記ローカルコントローラから圧力情報を受信して表示するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の車両の電子制御システムの制御方法。
【請求項8】
前記ローカルコントローラは、
前記出力された懸架制御信号を受信し、各車輪のダンパを制御することを特徴とする請求項6に記載の車両の電子制御システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−302226(P2007−302226A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46999(P2007−46999)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(505385907)株式会社萬都 (11)
【Fターム(参考)】