説明

車両用サスペンション装置

【課題】第2減衰力発生装置をコンパクトかつシンプルに構成しつつ、第2減衰力発生装置によって逐次必要とされる減衰力を得易い車両用サスペンション装置を提供すること
【解決手段】サスペンション装置SPの第1減衰力発生装置A1は、バネ上部材SUに組付けられるモータ20を備える。第2減衰力発生装置A2は、バネ下部材SDに組付けられるシリンダ部材50と、ボールネジ軸31に連設されシリンダ部材50に対して上下方向に相対移動可能な軸部材51と、軸部材51に組付けられていてシリンダ部材50と軸部材51の上下方向の相対移動によって弾性変形する上下一対の上方ブッシュ54U,下方ブッシュ54Dとを備える。上方ブッシュ54Uの上方および下方ブッシュ54Dの下方にシリンダ部材50と軸部材51により区画されて連通路51cを通して互いに連通する上下一対の上方エアチャンバ56U,下方エアチャンバ56Dが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスペンション装置に関し、特に、バネ上部材とバネ下部材の間にバネ上部材とバネ下部材の接近動作または離間動作に対して減衰力を発生させる第1減衰力発生装置および第2減衰力発生装置が直列に配置された車両用サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用サスペンション装置は、例えば、下記特許文献1に記載されている。下記特許文献1に記載されている車両用サスペンション装置においては、第1減衰力発生装置が、バネ上部材に組付けられるモータと、ボールネジナット(回転部材)とボールネジ軸(直動部材)とを有しモータの回転出力に伴うボールネジナットの回転運動をボールネジ軸の直線運動に変換するボールネジ機構(変換機構)とを備えている。このため、下記特許文献1に記載されている第1減衰力発生装置においては、モータが、バネ上部材とバネ下部材の振動に応じて直動部材を直線運動(上下動)させることができ、バネ上部材とバネ下部材の接近動作または離間動作に対して減衰力だけでなく、バネ上部材とバネ下部材を積極的に相対動作させる推進力をも作用させることが可能である。
【0003】
また、下記特許文献1に記載されている車両用サスペンション装置においては、第2減衰力発生装置が、バネ下部材に組付けられていて上下方向(軸方向)に延在するシリンダ部材と、ボールネジ機構のボールネジ軸に連設されシリンダ部材内に配置されていてシリンダ部材に対して上下方向に相対移動可能な軸部材とを備えている。また、この第2減衰力発生装置は、軸部材に固定されている内筒と、この内筒の外周に配置されシリンダ部材に固定されている外筒と、この外筒と内筒とを弾性的に連結する上下一対の上方ゴム弾性体および下方ゴム弾性体と、上方ゴム弾性体の下方および下方ゴム弾性体の上方に作動液が充填されている上下一対の液室と、作動液の流れを制限しつつ各液室を連通する連通路とを備えている。
【0004】
下記特許文献1に記載されている車両用サスペンション装置においては、外筒と内筒(シリンダ部材と軸部材)が上下方向に相対移動すると、各ゴム弾性体が弾性変形し、各液室内の容積が変化する。これにより、一方の液室内の作動液が連通路を通って他方の液室内へ流れるときに、作動液の流通が連通路によって制限されて、外筒と内筒の上下方向の相対移動に対して抵抗力(減衰力)が作用する。このため、下記特許文献1に記載されている第2減衰力発生装置においては、各ゴム弾性体の弾性変形によりバネ上部材とバネ下部材の接近動作または離間動作に対して減衰力を作用させることができ、特に第1減衰力発生装置では効果的な減衰が困難である高周波数の振動(例えば10Hz以上の振動)を、減衰させることが可能である。加えて、第2減衰力発生装置が両液室および両ゴム弾性体を備えた構成であるため、第2減衰力発生装置がダンパ装置およびコイルスプリングを備えた構成に比して、第2減衰力発生装置をコンパクトかつシンプルに構成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247054号公報
【発明の概要】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載された車両用サスペンション装置においては、第2減衰力発生装置が作動液(油等)を用いて減衰力を発生させているため、作動液の温度変化および劣化により作動液の粘性特性が変化し易く、所期の減衰力が得難い。また、上記した第2減衰力発生装置では、各ゴム弾性体の弾性変形と、両液室間での連通路を通した液流通とが連係していて、シリンダ部材と軸部材の相対速度が所定値(作動液の粘性や連通路の大きさ等によって定まる値)以上に大きくなると、両液室間での液流動が上記相対速度に追従し得なくなって、各ゴム弾性体の弾性変形も上記相対速度に追従し得なくなり、上記相対速度に応じた所期の減衰力が得られなくなる。したがって、上記特許文献1に記載された車両用サスペンション装置においては、第2減衰力発生装置の構成はコンパクトかつシンプルであるものの、第2減衰力発生装置によって逐次必要とされる減衰力が得られないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記した課題に対処すべくなされたものであり、その目的は、第2減衰力発生装置をコンパクトかつシンプルに構成しつつ、第2減衰力発生装置によって逐次必要とされる減衰力を得易い車両用サスペンション装置を提供することにある。
【0008】
上記した課題を達成するために、本発明は、バネ上部材とバネ下部材の間にバネ上部材とバネ下部材の接近動作または離間動作に対して減衰力を発生させる第1減衰力発生装置および第2減衰力発生装置が直列に配置されていて、前記第1減衰力発生装置は、バネ上部材に組付けられるモータと、回転部材と直動部材とを有し前記モータの回転出力に伴う前記回転部材の回転運動を前記直動部材の直線運動に変換する変換機構とを備え、前記第2減衰力発生装置は、バネ下部材に組付けられていて上下方向に延在するシリンダ部材と、前記変換機構の前記直動部材に連設され前記シリンダ部材内に配置されていて前記シリンダ部材に対して上下方向に相対移動可能な軸部材と、この軸部材と前記シリンダ部材の間に直列に組付けられていて前記シリンダ部材と前記軸部材の上下方向の相対移動によって弾性変形する上方粘弾性体(ゴム、ウレタン等)および下方粘弾性体(ゴム、ウレタン等)とを備えた車両用サスペンション装置において、前記上方粘弾性体の上方および前記下方粘弾性体の下方に、前記シリンダ部材と前記軸部材とにより区画されて連通路を通して互いに連通する上下一対のエアチャンバが形成されていることに特徴がある。
【0009】
本発明における車両用サスペンション装置においては、車両走行時にバネ上部材およびバネ下部材の振動に応じて、モータが電子制御装置により制御されて回転駆動し、変換機構により回転部材の回転運動が直動部材の直線運動(上下動)に変換される。また、このとき、シリンダ部材と軸部材の上下動(相対移動)に応じて、上方粘弾性体および下方粘弾性体が弾性変形し得る。このため、モータの回転駆動により、第1減衰力発生装置にて減衰力を得ることができるとともに、上方粘弾性体および下方粘弾性体の弾性変形により、第2減衰力発生装置にて減衰力を得ることができ、バネ上部材とバネ下部材の振動を抑制することが可能である。
【0010】
ここで、バネ上部材およびバネ下部材の振動が低周波数の振動(例えば、5Hz以下の振動)であるとき、上記した低周波数の振動に対してモータ(第1減衰力発生装置)が十分に追従することができて、第1減衰力発生装置にて必要十分な減衰力(抵抗力)を得ることができる。しかし、このとき、シリンダ部材が軸部材とともに上下動して、上方粘弾性体および下方粘弾性体が弾性変形しなくて、第2減衰力発生装置にて減衰力が得られない。
【0011】
一方、バネ上部材およびバネ下部材の振動が高周波数の振動(例えば、10Hz以上の振動)であるとき、上記した高周波数の振動に対してモータが追従し難くなるため、第1減衰力発生装置にて必要十分な減衰力が得られない。しかし、このとき、シリンダ部材が軸部材に対して上下方向に相対移動し、上方粘弾性体および下方粘弾性体が弾性変形して、第2減衰力発生装置にて減衰力を得ることができる。
【0012】
また、シリンダ部材と軸部材が上下方向に相対移動するとき(バネ上部材およびバネ下部材の振動が高周波数の振動であるとき)、上方粘弾性体および下方粘弾性体の弾性変形により、各エアチャンバ内の容積が変化する。このため、このときには、各エアチャンバ内の加圧エア(高圧エア)が連通路を流動し、シリンダ部材と軸部材の相対移動に対して抵抗力(減衰力)が作用して、第2減衰力発生装置にて更に減衰力を得ることができる。
【0013】
ところで、本発明における車両用サスペンション装置においては、第2減衰力発生装置がエアを用いて減衰力を発生させているため、エアの温度変化および劣化を考慮する必要がなくて、所期の減衰力を得易い。また、上方粘弾性体および下方粘弾性体の弾性変形に連係する作動流体がエアであって、作動流体として作動液(例えば油)を採用した場合に比して粘性が低いため、シリンダ部材と軸部材の相対速度が大きくなっても、両エアチャンバ間でエア(作動流体)の流動が上記相対速度に十分追従し得る。更に、エアが各エアチャンバ内にて圧縮可能な圧縮性流体であるため、仮に、両エアチャンバ間でエアの流動が上記相対速度に追従し得なくなった場合には、各エアチャンバ内でエアの圧縮によって上方粘弾性体および下方粘弾性体の弾性変形が保証されるため、この場合にも上記相対速度に応じた所期の減衰力が得られる。したがって、第2減衰力発生装置によって逐次必要とされる減衰力を得易くすることが可能である。
【0014】
また、第2減衰力発生装置が両エアチャンバおよび両粘弾性体を備えた構成であり、第2減衰力発生装置にダンパ装置およびコイルスプリングが設けられていない。このため、第2減衰力発生装置がダンパ装置およびコイルスプリングを備えた構成に比して、第2減衰力発生装置(シリンダ部材)をコンパクトかつシンプルに構成することが可能である。したがって、サスペンション装置の軸方向長さおよび径方向長さを小さくすることができ、サスペンション装置の軽量化および低コスト化を図ることが可能である。
【0015】
また、本発明の実施に際して、前記第1減衰力発生装置と前記第2減衰力発生装置の外周には、加圧エアが封入されたエア室とこのエア室に加圧エアを給排可能なエア給排手段とを有しバネ上部材とバネ下部材にバネ力を作用させるエアスプリング装置が配設されていて、このエアスプリング装置の前記エア室と前記各エアチャンバの何れか一方とを連通させる連通手段を設けることも可能である。この場合には、仮に各エアチャンバに微小なエア漏れが発生しても、エア給排手段がエア室に加圧エアを供給することで、エア室から連通手段を通ってエアチャンバ内に加圧エアを供給することが可能である。したがって、エア室および各エアチャンバの内圧を常に所期の圧力に保つことが可能である。
【0016】
また、この場合には、例えば孔径が小さい連通手段(連通孔、連通管等)を設けると、シリンダ部材と軸部材の相対速度が大きいときには、連通手段を流動する加圧エアの流量が小さくなって、両エアチャンバの内圧に差が生じ易い。一方、シリンダ部材と軸部材の相対速度が小さいときには、連通手段を流動する加圧エアの流量が大きくなって、両エアチャンバの内圧に差が生じ難い。このため、シリンダ部材と軸部材の相対速度が大きいときには、大きな減衰力を発生させることができ、シリンダ部材と軸部材の相対速度が小さいときには、小さな減衰力を発生させることが可能である。したがって、連通手段によって、第2減衰力発生装置により発生させる減衰力をシリンダ部材と軸部材の相対速度に対応して容易に変化させることが可能である。
【0017】
また、本発明の実施に際して、バネ上部材に組付けられていて前記モータを支持する支持部材に、前記シリンダ部材の外周にまで上下方向に延在する筒部を連設して、この筒部と前記シリンダ部材の間に軸受けを設けることも可能である。この場合には、バネ下部材の一部であるロアアームに横力(軸直方向の外力)が作用すると、この横力が、シリンダ部材から軸受けに伝達されて、主に軸受けにて受承される。そして、この軸受けは、バネ下部材に組付けられているシリンダ部材と、同シリンダ部材の外周にまで上下方向に延在する支持部材の筒部との間に設けられたものであるため、ロアアームから軸受けまでの上下方向距離が短い。したがって、横力を受承する部材(軸受け)に生じる回転モーメント(こじりモーメント)を小さくすることができ、横力を受承する部材の信頼性を高めることが可能である。
【0018】
また、本発明の実施に際して、前記モータはアッパーサポートを介してバネ上部材に弾性的に連結されていて、前記アッパーサポートは環状の弾性部を有し、この弾性部の内孔の径は前記モータの外周の径より小さいことも可能である。この場合には、例えば上記特許文献1に記載されているようにアッパーサポートの弾性部がモータに貫通されないため、上記特許文献1に比して、アッパーサポートの弾性部の容積を増やすことが可能で、アッパーサポートの弾性部のバネ定数(バネ特性)を小さくすることが可能である。したがって、アッパーサポートの弾性部のバネ定数を小さくすることにより、高周波数の振動(ごつごつを感じる振動)に対する乗り心地を向上させるとともに、ノイズやバイブレーションを低減させることができ、また、バネ下部材の突き上げによる衝撃を緩和することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明における車両用サスペンション装置の第1実施形態を示した正面断面図である。
【図2】図1の下方側を拡大した正面断面図である。
【図3】本発明における車両用サスペンション装置の第2実施形態を示した正面断面図である。
【図4】本発明における車両用サスペンション装置の第3実施形態を示した正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の各実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本発明における車両用サスペンション装置の第1実施形態を示していて、このサスペンション装置SPは、車両の前後左右の車輪毎に設けられていて、マウント部HAとロアアームLAとの間に設けられている。なお、マウント部HAやマウント部HAに支持されている車体などが、バネ上部材SUであり、ロアアームLAやロアアームLAにナックルを介して連結されている車輪などが、バネ下部材SDである。
【0021】
サスペンション装置SPは、図1に示したように、バネ上部材SUとバネ下部材SDの接近動作または離間動作に対して減衰力を発生させる第1減衰力発生装置A1および第2減衰力発生装置A2と、バネ上部材SUとバネ下部材SDにバネ力を作用させるエアスプリング装置A3と、ロアアームLAに作用する横力(軸直方向の外力)を受承する横力ガイド機構A4とを備えている。第1減衰力発生装置A1と第2減衰力発生装置A2は、直列に配置されていて、第1減衰力発生装置A1は、上方(バネ上部材SU側)に設けられていて、第2減衰力発生装置A2は、下方(バネ下部材SD側)に設けられている。
【0022】
第1減衰力発生装置A1は、図1に示したように、マウント部HAに組付けられているホルダ10と、このホルダ10に支持されているモータ20と、このモータ20の回転出力を直線運動に変換するボールネジ機構30と、ホルダ10に設けられているボールスプライン機構40とを備えていて、モータ20の回転駆動により減衰力を発生させるものである。
【0023】
ホルダ10は、アッパーサポート11を介してバネ上部材SUに弾性的に連結されていて、上下方向(軸方向)に延在している。また、ホルダ10は、モータ20およびボールネジ機構30を収容するホルダ本体10aを有し、下方にボールスプライン機構40を収容する小径筒部10bを有している。ホルダ本体10aの下端部には、横力ガイド機構A4における上方筒部材70(筒部)が連設されている。
【0024】
アッパーサポート11は、上方金具11aと、下方金具11bと、弾性部11cとを有している。上方金具11aは、環状に形成されていて、三個のボルトBTを用いてマウント部HAに固定されている。下方金具11bは、環状に形成されていて、ホルダ本体10aの上端部に固定されている。この下方金具11bの内孔11b1に、キャップ12が組付けられている。このキャップ12により、モータ20は配線13を除いてホルダ10とアッパーサポート11の中に封入されている。弾性部11cは、環状に形成されていて、上方金具11aと下方金具11bの間に介装されている。この弾性部11cの内孔11c1の径は、モータ20の外周の径より小さくなっている。
【0025】
モータ20は、アッパーサポート11を介してマウント部HAに弾性的に連結されている。このモータ20は、電子制御装置(図示省略)により回転駆動を制御されて回転駆動するものであり、モータ軸21を備えている。モータ軸21は、中空状に形成されていて、ベアリング(図示省略)を介してホルダ本体10aに回転可能に支持されている。このモータ軸21は、電子制御装置から出力される駆動電流に応じて、ホルダ本体10に対して回転する。
【0026】
ボールネジ機構30は、直動部材としてのボールネジ軸31と、回転部材としてのボールネジナット32と、複数のボール(図示省略)とを備えていて、モータ20の回転出力に伴うボールネジナット32の回転運動をボールネジ軸31の直線運動に変換するものである。ボールネジ軸31は、モータ軸21内を貫通していて、雄ネジ溝31aと外スプライン溝31bとを有している。ボールネジナット32は、筒状に形成されていて、ベアリングBr1を介してホルダ本体10aに回転可能に支持されている。また、ボールネジナット32は、モータ軸21に一体回転可能(トルク伝達可能)に連結されている。このボールネジナット32は、内周に雌ネジ溝(図示省略)を有していて、このボールネジナット32の雌ネジ溝とボールネジ軸31の雄ネジ溝31aの間に複数のボールが介装されている。これにより、ボールネジナット32が回転すると、ボールネジ軸31が上下方向に移動可能である。
【0027】
ボールスプライン機構40は、ボールスプラインナット41と、複数のボール(図示省略)とを備えていて、ボールネジ軸31をホルダ10に対して回転不能かつ上下方向に移動可能に支持するものである。ボールスプラインナット41は、筒状に形成されていて、ホルダ10の小径筒部10bにキー42を用いて固定されている。また、ボールスプラインナット41は、内周に内スプライン溝(図示省略)を有していて、このボールスプラインナット41の内スプライン溝とボールネジ軸31の外スプライン溝31bの間に複数のボールが介装されている。
【0028】
上記した第1減衰力発生装置A1では、バネ上部材SUとバネ下部材SDの振動に応じて、電子制御装置がモータ20を回転駆動させ、ボールネジナット32の回転運動がボールネジ軸31の直線運動(上下動)に変換される。このため、モータ20は、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動に応じてボールネジ軸31が上下動するとき、ボールネジナット32を回転させて、ボールネジ軸31の上下動に抵抗力(減衰力)を作用させることが可能である。
【0029】
第2減衰力発生装置A2は、図1および図2に示したように、ロアアームLAに組付けられているシリンダ部材50と、ボールネジ軸31に連設されている軸部材51と、カラー52、上下一対の環状プレート53U,53D、上下一対の上方ブッシュ54U(上方粘弾性体)および下方ブッシュ54D(下方粘弾性体)と、ナット55とを備えていて、各ブッシュ54U,54Dの弾性変形により減衰力を発生するものである。
【0030】
シリンダ部材50は、上下方向(軸方向)に延在していて、有底筒状に形成されている。また、シリンダ部材50は、軸部材51、カラー52、各環状プレート53U,53D、各ブッシュ54U,54D、ナット55を収容していて、上下方向の中間部に内向フランジ部50aを有している。このシリンダ部材50の底部50bは、ロアブッシュ(図示省略)を介してロアアームLAに固定されている。シリンダ部材50の上部50cは、ホルダ10の小径筒部10b外周および横力ガイド機構A4における上方筒部材70内周に対して、上下方向に相対移動可能である。
【0031】
軸部材51は、ボールネジ軸31と同軸的に延在していて、シリンダ部材50内に配置されている。また、軸部材51は、上方に大径軸部51aを有し、下方に小径軸部51bを有している。この軸部材51には加圧エアが流動可能な連通路51cが形成されている。小径軸部51bは、シリンダ部材50の内向フランジ部50aを貫通していて、小径軸部51bの下端部には、ナット55と螺合するためのネジが形成されている。連通路51cの一端は大径軸部51aの周面に設けられ、連通路51cの他端は小径軸部51bの下端に設けられている。なお、軸部材51は、ボールネジ軸31と一体で構成されていてもよく、別体で構成されていてもよい。
【0032】
カラー52は、上方の環状プレート53Uと下方の環状プレート53Dの間の上下方向の距離を規定するためのものであり、軸部材51の小径軸部51bの外周に組付けられている。上方の環状プレート53Uは、軸部材51の小径軸部51bに貫通されていて、軸部材51の大径軸部51aと上方ブッシュ54Uに挟持されている。下方の環状プレート53Dは、軸部材51の小径軸部51bに貫通されていて、ナット55と下方ブッシュ54Dに挟持されている。
【0033】
上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dは、粘弾性体(減衰性能を有する弾性体)であるゴムであり、筒状に形成されている。また、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dは、それぞれ弾性圧縮変形量を調整するための隙間54U1,54D1(図2参照)を有している。これら上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dは、軸部材51の小径軸部51bとシリンダ部材50の間に直列に組付けられていて、所定量弾性圧縮変形した状態で、シリンダ部材50の内向フランジ部50aを挟持している。上方ブッシュ54Uの下面とシリンダ部材50の内向フランジ部50aの上面の間では、加圧エアが流動不能であり、下方ブッシュ54Dの上面とシリンダ部材50の内向フランジ部50aの下面の間でも、加圧エアが流動不能である。
【0034】
ここで、上記のように構成されている第2減衰力発生装置A2の組付け手順を説明する。まず、軸部材51の小径軸部51bの上端に上方の環状プレート53Uを組付けて、小径軸部51bの上方部外周に上方ブッシュ54Uを組付ける。次に、軸部材51の外周にシリンダ部材50を組付けて、上方ブッシュ54Uを上方の環状プレート53Uとシリンダ部材50の内向フランジ部50aで挟持する。そして、軸部材51の小径軸部51bの下方部外周に下方ブッシュ54Dを組付けて、小径軸部51bの外周と各ブッシュ54U,54Dの内周の間にカラー52を組付ける。最後に、軸部材51の小径軸部51bの下端部外周に下方の環状プレート53Dを組付けて、各ブッシュ54U,54Dを所定量弾性圧縮変形させた状態で、小径軸部51bに形成されているネジにナット55を螺合させる。このナット55の螺合量は、カラー52の軸方向長さ(上下方向長さ)を調整することにより、適宜調整可能である。このため、ナット55の螺合量を調整することで、各ブッシュ54U,54Dの弾性圧縮量を調整し、各ブッシュ54U,54Dのバネ定数を調整することが可能である。なお、ナット55を小径軸部51bのネジに螺合することに換えて、固定部材を小径軸部51bの下端部にかしめてもよい。
【0035】
上記した第2減衰力発生装置A2では、上方ブッシュ54Uの上方に、シリンダ部材50と軸部材51とにより区画された上方エアチャンバ56Uが形成されている。この上方エアチャンバ56Uには、加圧エアが封入されている。また、下方ブッシュ54Dの下方に、シリンダ部材50と軸部材51とにより区画された下方エアチャンバ56Dが形成されている。この下方エアチャンバ56Dには、加圧エアが封入されている。上方エアチャンバ56Uと下方エアチャンバ56Dは、軸部材51に形成された連通路51cを通して互いに連通している。この第2減衰力発生装置A2によって発生させる減衰力は、各ブッシュ54U,54Dの形状、材質、軸部材51の連通路51cの径を変更するだけでなく、各エアチャンバ56U,56Dの内圧、各エアチャンバ56U,56Dの容積を変更することで、容易に調整することが可能である。
【0036】
エアスプリング装置A3は、図1に示したように、第1減衰力発生装置A1と第2減衰力発生装置A2の外周に配設されていて、エア外筒60と、エア内筒61と、ダイヤフラム62と、エア給排手段63とを有している。エア外筒60は、上下方向に延在する筒体であり、ホルダ10およびアッパーサポート11を介してマウント部HAに連結されている。エア内筒61は、上下方向に延在する有底筒体であり、エア内筒61の底部がシリンダ部材50の外周に固定されている。ダイヤフラム62は、円環状に形成されていて、径外方端部62aがエア外筒60の下端部に固定されていて、径内方端部62bがエア内筒61の上端部に固定されている。これにより、エア外筒60とエア内筒61とダイヤフラム62とホルダ本体10aと上方筒部材70と後述する下方筒部材71とによって区画されたエア室64が形成されていて、このエア室64に加圧エアが封入されている。
【0037】
エア給排手段63は、エア外筒60に接続されている給排制御弁63aと、この給排制御弁63aに接続されているポンプ(図示省略)と、圧力センサ(図示省略)等を有していて、エア室64に加圧エアを給排可能である。このため、エアスプリング装置A3は、エア給排手段63を用いてエア室64内の加圧エアの容量を調整し、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDに作用させるバネ力を調整するとともに、バネ上部材SUとバネ下部材SDの間の距離を調整(車高を調整)することが可能である。
【0038】
横力ガイド機構A4は、図1および図2に示したように、ホルダ本体10aに固定されている上方筒部材70と、この上方筒部材70に固定されている下方筒部材71と、上方筒部材70に組付けられている上方滑り軸受72と、下方筒部材71に組付けられている下方滑り軸受け73とを有している。なお、上方筒部材70および下方筒部材71は、ホルダ本体10aと一体的に構成されていてもよい。
【0039】
上方筒部材70は、ホルダ本体10aの下端部からシリンダ部材50の中間部外周にまで上下方向(軸方向)に延在していて、上端部にエアスプリング装置A3のエア室64と上方エアチャンバ56Uとを連通させる連通孔70a(連通手段)を有している。エア室64から連通孔70aを通って上方筒部材70内に流動した加圧エアは、ホルダ10の小径筒部10b外周とシリンダ部材50の上部50c内周の間に形成されている環状孔50c1(連通手段)を通って上方エアチャンバ56Uに流動可能である。連通孔70aは、同連通孔70aの孔径が軸部材51の連通路51cの孔径より小さくなるように、形成されている。また、上述した環状孔50c1は、同環状孔50c1を流動する加圧エアの流量が軸部材51の連通路51cを流動する加圧エアの流量より少なくなるように、形成されている。
【0040】
上方滑り軸受け72は、円環状に形成されていて、上方筒部材70の取付け部70bに圧入等によって固定されている。下方滑り軸受け73は、円環状に形成されていて、下方筒部材71の取付部71aに圧入等によって固定されている。これら上方滑り軸受け72,下方滑り軸受け73は、シリンダ部材50を上方筒部材70,下方筒部材71に対して円滑に上下方向に移動させることができるとともに、シリンダ部材50に作用する横力(軸直方向の外力)を受承することが可能である。
【0041】
上記のように構成した第1実施形態においては、車両走行時にバネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動に応じて、モータ20が電子制御装置により制御されて回転駆動し、ボールネジ機構30によりボールネジナット32の回転運動がボールネジ軸31の直線運動(上下動)に変換される。また、このとき、シリンダ部材50と軸部材51の上下動(相対移動)に応じて、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dが弾性変形し得る。このため、モータ20の回転駆動により、第1減衰力発生装置A1にて減衰力を得ることができるとともに、上方粘弾性体および下方粘弾性体が弾性変形することにより、第2減衰力発生装置にて減衰力を得ることができ、バネ上部材SUとバネ下部材SDの振動を抑制することが可能である。
【0042】
ここで、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が低周波数の振動(例えば、5Hz以下の振動)であるとき、上記した低周波数の振動に対してモータ20が十分に追従すること(モータ20の回転駆動に応じてボールネジ軸31および軸部材51が円滑に上下動すること)ができて、第1減衰力発生装置A1にて必要十分な減衰力(抵抗力)を得ることができる。しかし、このとき、シリンダ部材50のフランジ部50aが軸部材51の小径軸部51bとともに上下動して、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dが弾性変形しなくて、第2減衰力発生装置A2にて減衰力が得られない。
【0043】
一方、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が高周波数の振動(例えば、10Hz以上の振動)であるとき、上記した高周波数の振動に対してモータ20が追従し難くなるため、第1減衰力発生装置A1にて必要十分な減衰力が得られない。しかし、このとき、シリンダ部材50のフランジ部50aが軸部材51の小径軸部51bに対して上下方向に相対移動する。この相対移動により、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dの一方が伸長されるとともに、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dの他方が圧縮されて、第2減衰力発生装置A2にて減衰力を得ることができる。
【0044】
また、シリンダ部材50のフランジ部50aと軸部材51の小径軸部51bが上下方向に相対移動するとき(バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が高周波数の振動であるとき)、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dの弾性変形により、各エアチャンバ56U,56D内の容積が変化する。このため、このときには、各エアチャンバ56U,56D内の加圧エア(高圧エア)が軸部材51の連通路51cを流動し、シリンダ部材50と軸部材51の相対移動に対して抵抗力(減衰力)が作用して、第2減衰力発生装置にて更に減衰力を得ることができる。
【0045】
ところで、この第1実施形態においては、第2減衰力発生装置A2がエアを用いて減衰力を発生させているため、エアの温度変化および劣化を考慮する必要がなくて、所期の減衰力を得易い。また、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dの弾性変形に連係する作動流体がエアであって、作動流体として作動液(例えば油)を採用した場合に比して粘性が低いため、シリンダ部材50と軸部材51の相対速度が大きくなっても、両エアチャンバ56U,56D間でエアの流動が上記相対速度に十分追従し得る。更に、エアが各エアチャンバ56U,56D内にて圧縮可能な圧縮性流体であるため、仮に、両エアチャンバ56U,56D間でエアの流動が上記相対速度に追従し得なくなった場合には、各エアチャンバ56U,56D内でエアの圧縮によって上方ブッシュ56Uおよび下方ブッシュ56Dの弾性変形が保証されるため、この場合にも上記相対速度に応じた所期の減衰力が得られる。したがって、第2減衰力発生装置A2によって逐次必要とされる減衰力を得易くすることが可能である。
【0046】
また、この第1実施形態においては、サスペンション装置SPにエアスプリング装置A3が配設されていて、このエアスプリング装置A3のエア室64と上方エアチャンバ56Uとを連通させる連通孔70aおよび環状孔50c1(連通手段)が設けられている。このため、仮に、各エアチャンバ56U,56Dに微小なエア漏れが発生しても、エア給排手段63からエア室64に加圧エアが供給されることで、エア室64から連通孔70aおよび環状孔50c1を通って上方エアチャンバ56U内に加圧エアを供給することが可能である。したがって、エア室64および各エアチャンバ56U,56Dの内圧を常に所期の圧力に保つことが可能である。
【0047】
また、この第1実施形態においては、連通孔70aは、同連通孔70aの孔径が軸部材51に形成された連通路51cの孔径に比して小さくなるように形成されていて、環状孔50c1は、同環状孔50c1を流動する加圧エアの流量が軸部材51の連通路51cを流動する加圧エアの流量より少なくなるように、形成されている。これにより、シリンダ部材50と軸部材51の相対速度が大きいとき、すなわち、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が高周波数の振動であるとき、連通孔70aおよび環状孔50c1を流動する加圧エアの流量が少なく(ほぼゼロに)なって、両エアチャンバ56U,56Dの内圧に差が生じ易い。一方、シリンダ部材50と軸部材51の相対速度が小さいとき、すなわち、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が低周波数の振動であるとき、連通孔70aおよび環状孔50c1を流動する加圧エアの流量が多くなって、両エアチャンバ56U,56Dの内圧に差が生じ難い。
【0048】
このため、シリンダ部材50と軸部材51の相対速度が大きいときには、大きな減衰力を発生させることができ、シリンダ部材50と軸部材51の相対速度が小さいときには、小さな減衰力を発生させることが可能である。したがって、連通孔70aおよび環状孔50c1によって、第2減衰力発生装置A2により発生させる減衰力をシリンダ部材50と軸部材51の相対速度に対応して容易に変化させることが可能である。
【0049】
ところで、第1減衰力発生装置A1がモータ20の回転駆動により減衰力を発生させるサスペンション装置(電動アクティブサスペンション装置)においては、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が低周波数の振動であるとき(シリンダ部材50と軸部材51の相対速度が小さいとき)、モータ20(第1減衰力発生装置A1)は上記した低周波数の振動に対して十分に追従することができて、大きな減衰力を発生させることができる。しかしながら、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が高周波数の振動であるとき(シリンダ部材50と軸部材51の相対速度が大きいとき)、モータ20は上記した高周波数の振動に対して追従し難くなり、第1減衰力発生装置A1により発生する減衰力が小さくなる。このため、電動アクティブサスペンション装置においては、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が高周波数の振動であるとき、第2減衰力発生装置A2により発生する減衰力に頼る比率が大きくなる。
【0050】
したがって、上述したように、連通孔70aおよび環状孔50c1(連通手段)を用いた第2減衰力発生装置A2の減衰力特性(バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が高周波数の振動であるときには、大きな減衰力を発生し、バネ上部材SUおよびバネ下部材SDの振動が低周波数の振動であるときには、小さな減衰力を発生する減衰力特性)は、電動アクティブサスペンション装置にとって、好ましい減衰力特性である。
【0051】
また、この第1実施形態においては、ホルダ10に上方筒部材70および下方筒部材71(筒部)が連設されていて、上方筒部材70とシリンダ部材50の間に上方滑り軸受け72が設けられ、下方筒部材71とシリンダ部材50の間に下方滑り軸受け73が設けられている。このため、バネ下部材SDの一部であるロアアームLAに横力(軸直方向の外力)が作用すると、この横力が、シリンダ部材50から上方滑り軸受け72および下方滑り軸受け73に伝達されて、主に上方滑り軸受け72および下方滑り軸受け73にて受承される。そして、これら上方滑り軸受け72,下方滑り軸受け73は、バネ下部材SDに組付けられているシリンダ部材50と、ホルダ10からシリンダ部材50の外周にまで上下方向に延在する上方筒部材70,下方筒部材71との間に設けられたものであるため、ロアアームLAから上方滑り軸受け72,下方滑り軸受け73までの上下方向距離が、小さい。したがって、横力を受承しながら摺動する部材(上方滑り軸受け72,下方滑り軸受け73)に生じる回転モーメント(こじりモーメント)を低減させることができ、横力を受承する部材の信頼性を高めることが可能である。
【0052】
また、この第1実施形態においては、アッパーサポート11における弾性部11cの内孔11c1の径がモータ20の外周の径より小さい。このため、例えば上記特許文献1に記載されているようにアッパーサポートの弾性部がモータに貫通されないため、アッパーサポート11の弾性部11cの容積を増やすことが可能で、アッパーサポート11の弾性部11cのバネ定数(バネ特性)を小さくすることが可能である。したがって、アッパーサポート11の弾性部11cのバネ定数を小さくすることにより、高周波数の振動(ごつごつを感じる振動)に対する乗り心地を向上させるとともに、ノイズやバイブレーションを低減させることができ、また、バネ下部材SDの突き上げによる衝撃を緩和することが可能である。
【0053】
なお、アッパーサポート11における弾性部11cのバネ定数を小さくすることで、サスペンション装置SPの下端側がサスペンション装置SPの上端側に対して傾動(首振り)し易くなる。このため、横力がロアアームLAに作用するとき、サスペンション装置SPの各構成部品に集中的な荷重が作用することを低減できて、サスペンション装置SPの各構成部品の信頼性を高めることが可能である。
【0054】
また、この第1実施形態においては、アッパーサポート11における下方金具11bの内孔11b1に、キャップ12が組付けられていて、このキャップ12により、モータ20は配線13を除いてホルダ10とアッパーサポート11の中に封入されている。このため、モータ20の作動音を低減させることが可能である。また、この第1実施形態においては、第2減衰力発生装置A2が各ブッシュ54U,54Dおよび加圧エアを用いた構成であるため、第2減衰力発生装置が例えば油圧式のダンパ装置を用いた構成に比して、第2減衰力発生装置をリサイクル性などを考慮した環境に適した構成とすることが可能である。
【0055】
上記のように構成した第1実施形態においては、上方筒部材70とシリンダ部材50の間に上方滑り軸受け72を設け、下方筒部材71とシリンダ部材50の間に下方滑り軸受け73を設けて実施したが、図3に示した第2実施形態のように、筒部材170とシリンダ部材50の間に転がり軸受け172を設けて実施することも可能である。
【0056】
この第2実施形態においては、図3に示したように、筒部材170は、ホルダ本体10aの下端部からシリンダ部材50の外周にまで上下方向に延在していて、単一の部材で構成されている。上記した第2実施形態の構成以外の構成は、上記した第1実施形態の構成と実質的に同一であるため、対応する部位に同一の符合を付してその説明を省略する。
【0057】
上記した第2実施形態においては、筒部材170とシリンダ部材50の間に転がり軸受け172が設けられているため、上記した第1実施形態(各滑り軸受け72,73が設けられている場合)に比して、シリンダ部材50に対する摺動抵抗を小さくすることができ、シリンダ部材50を筒部材170に対して円滑に軸方向に移動させることが可能である。しかしながら、シリンダ部材50が転がり軸受け172に対して点接触するため、上記した第1実施形態(シリンダ部材50が各滑り軸受け72,73に対して線接触または面接触する場合)比して、横力が作用したときのシリンダ部材に作用する荷重(面圧)が大きくなる。その他の第2実施形態の作用効果は、上記した第1実施形態の作用効果と実質的に同一であるため、省略する。
【0058】
上記のように構成した第2実施形態においては、ホルダ10にシリンダ部材50の外周まで上下方向に延在する筒部材170(筒部)を連設して、この筒部材170とシリンダ部材50の間に転がり軸受け172を設けて実施したが、図4に示した第3実施形態のように、シリンダ部材50にホルダ10の外周まで上下方向に延在する筒部270を連設して、この筒部270とホルダ10の間に転がり軸受け272を設けて実施することも可能である。
【0059】
この第3実施形態においては、上記したエアスプリング装置A3におけるエア内筒61が設けられておらず、ダイヤフラム262の径外方端部262aがエア外筒60の下端部に固定されていて、ダイヤフラム262の径内方端部262aがシリンダ部材50に固定されている。上記した第3実施形態の構成以外の構成は、上記した第2実施形態の構成と実質的に同一であるため、対応する部位に同一の符合を付してその説明を省略する。
【0060】
上記した第3実施形態においては、シリンダ部材50の外周にホルダ10から上下方向に延在する筒部が設けられておらず、かつ、シリンダ部材50の外周にエアスプリング装置A3におけるエア内筒が設けられていないため、上記した第2実施形態に比して、ダイヤフラム262の外径を小さくすることができ、エアスプリング装置A3のバネ定数を小さくすることが可能である。しかしながら、横力を受承する転がり軸受け272とロアアームLAの間の上下方向距離が、上記した第2実施形態の転がり軸受け172とロアアームLAの間の上下方向距離に比して大きくなるため、上記した第2実施形態に比して、転がり軸受け272に作用する回転モーメント(ねじりモーメント)が大きくなる。その他の第3実施形態の作用効果は、上記した第2実施形態の作用効果と実質的に同一であるため、省略する。
【0061】
上記した各実施形態においては、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dを、粘弾性体(減衰性能を有する弾性体)であるゴムで構成して実施したが、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dは粘弾性体であればよく、例えば、上方ブッシュ54Uおよび下方ブッシュ54Dを、発泡ウレタン、硬質ウレタンで構成して実施することも可能である。
【0062】
また、上記した各実施形態においては、上方エアチャンバ56Uと下方エアチャンバ56Dとを連通する連通路56cを、軸部材51に設けて実施したが、上方エアチャンバ56Uと下方エアチャンバ56Dとを連通する連通路を、シリンダ部材50の周壁に設けて実施することも可能である。また、上方エアチャンバ56Uと下方エアチャンバ56Dを接続する連通管を設けて、上方エアチャンバ56Uと下方エアチャンバ56Dとを連通する連通路を設けて実施することも可能である。
【0063】
また、上記した各実施形態においては、エアスプリング装置A3のエア室64と上方エアチャンバ56Uを連通させる連通孔70aおよび環状孔50c1(連通手段)を設けて実施したが、エアスプリング装置A3のエア室64と下方エアチャンバ56Dを連通させる連通手段を設けて実施することも可能である。
【0064】
また、上記した各実施形態においては、第1減衰力発生装置A1と第2減衰力発生装置A2の外周に、バネ上部材SUとバネ下部材SDにバネ力を作用させるエアスプリング装置A3を配設して実施したが、このエアスプリング装置A3に換えて、バネ上部材SUとバネ下部材SDにバネ力を作用させるコイルスプリングを配設して実施することも可能である。
【0065】
また、上記した各実施形態においては、第1減衰力発生装置A1を上方に設け(モータ20をバネ上部材SUに組付けて)、第2減衰力発生装置A2を下方に設けて(シリンダ部材50をバネ下部材SDに組付けて)実施したが、第1減衰力発生装置を下方に設け(モータをバネ下部材SDに組付けて)、第2減衰力発生装置A2を上方に設けて(シリンダ部材をバネ上部材SUに組付けて)実施することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
SP…サスペンション装置、SU…バネ上部材、SD…バネ下部材、HA…マウント部、LA…ロアアーム、A1…第1減衰力発生装置、A2…第2減衰力発生装置、A3…エアスプリング装置、A4…横力ガイド機構、10…ホルダ、11…アッパーサポート、11c…弾性部、11c1…内孔、12…キャップ、20…モータ、30…ボールネジ機構、31…ボールネジ軸、32…ボールネジナット、40…ボールスプライン機構、41…ボールスプラインナット、50…シリンダ部材、50a…内向フランジ部、50c1…環状孔、51…軸部材、51c…連通路、52…カラー、53U,53D…環状プレート、54U…上方ブッシュ、54D…下方ブッシュ、55…ナット、56U…上方エアチャンバ、56D…下方エアチャンバ、60…エア外筒、61…エア内筒、62…ダイヤフラム、63…エア給排手段、63a…給排制御弁、64…エア室、70…上方筒部材、70a…連通孔、71…下方筒部材、72…上方滑り軸受け、73…下方滑り軸受け、170…筒部材、172…転がり軸受け、262…ダイヤフラム、270…筒部、272…転がり軸受け


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ上部材とバネ下部材の間にバネ上部材とバネ下部材の接近動作または離間動作に対して減衰力を発生させる第1減衰力発生装置および第2減衰力発生装置が直列に配置されていて、
前記第1減衰力発生装置は、バネ上部材に組付けられるモータと、回転部材と直動部材とを有し前記モータの回転出力に伴う前記回転部材の回転運動を前記直動部材の直線運動に変換する変換機構とを備え、
前記第2減衰力発生装置は、バネ下部材に組付けられていて上下方向に延在するシリンダ部材と、前記変換機構の前記直動部材に連設され前記シリンダ部材内に配置されていて前記シリンダ部材に対して上下方向に相対移動可能な軸部材と、この軸部材と前記シリンダ部材の間に直列に組付けられていて前記シリンダ部材と前記軸部材の上下方向の相対移動によって弾性変形する上方粘弾性体および下方粘弾性体とを備えた車両用サスペンション装置において、
前記上方粘弾性体の上方および前記下方粘弾性体の下方に、前記シリンダ部材と前記軸部材とにより区画されて連通路を通して互いに連通する上下一対のエアチャンバが形成されていることを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用サスペンション装置において、
前記第1減衰力発生装置と前記第2減衰力発生装置の外周には、加圧エアが封入されたエア室とこのエア室に加圧エアを給排可能なエア給排手段とを有しバネ上部材とバネ下部材にバネ力を作用させるエアスプリング装置が配設されていて、
このエアスプリング装置の前記エア室と前記各エアチャンバの何れか一方とを連通させる連通手段が設けられていることを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用サスペンション装置において、
バネ上部材に組付けられていて前記モータを支持する支持部材に、前記シリンダ部材の外周にまで上下方向に延在する筒部を連設して、この筒部と前記シリンダ部材の間に軸受けが設けられていることを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の車両用サスペンション装置において、
前記モータはアッパーサポートを介してバネ上部材に弾性的に連結されていて、
前記アッパーサポートは環状の弾性部を有し、この弾性部の内孔の径は前記モータの外周の径より小さいことを特徴とする車両用サスペンション装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−106488(P2011−106488A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259437(P2009−259437)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】