説明

車両用パドルスイッチ

【課題】簡単な構成により、プッシュまたはプル操作時においてバネ力及び節度感を付与することのできる車両用パドルスイッチを提供する。
【解決手段】回転支点の回りにそれぞれ揺動可能な2つの作用部112A,113A、112B,113Bとを有し、車両のステアリングコラムポスト3の周辺に設けられた左パドルレバー10A及び右パドルレバー10Bと、2つの作用部112A,113A、112B,113Bに対応して設けられた固定接点部としての接点パターン212A,213A、212B,213Bを有する基板210A、210Bと、それぞれの作用部と固定接点部の間に設けられ、作用部の移動により固定接点部に接触する可動接点部226A,227A、226B,227Bが装着されたコンタクトラバー220A,220Bにより構成される2つの接点部202A,203A、202B,203Bを備えたスイッチ部20A、20Bを有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用パドルスイッチに関し、特に、車両のステアリングホイール周辺に設けられ、変速操作等に用いられる車両用パドルスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、変速操作のシフトスイッチをステアリングホイール周辺に配置して、運転者がステアリングホイールから手を離さずにシフト操作を可能とする変速操作装置としての車両用パドルスイッチを備えたものがある。
【0003】
例えば、操作パドルが運転者の手指によってプッシュまたはプル操作できるようになっており、これらプッシュ/プル操作によって出力される2種類のオン信号に基づいて、シフトアップとシフトダウンという2つの制御切換えを行なうようになっている車両用パドルスイッチがある(特許文献1)。
【0004】
この車両用パドルスイッチは固定側の支持部材と可動側の操作パドルとを備えており、この操作パドルは支持部材に連結ピンを介して回動可能に軸支されている。操作パドルの自由端側はパッド部の裏面から空間部内に突出するようになっている。操作パドル本体には連結ピンが挿通される軸孔が穿設されており、操作パドル部本体の下部には軸孔の軸線と直交する方向に延びる凹部が設けられている。この凹部内にはホルダの一部が挿入・固定されており、ホルダにはボールとスプリングが収納されている。ボールはスプリングからの弾発力を受けて支持部材のカム面に圧接されており、操作パドル部が連結ピンを中心に回動すると、ボールはスプリングを圧縮しながらカム面の谷部から山部へと移行するようになっている。これにより、プッシュまたはプル操作時において節度感が付与される。
【特許文献1】特開2002−166832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示される車両用パドルスイッチは、ボール及びスプリングによりプッシュまたはプル操作時において節度感を付与する構成とされているので、部品点数が増えると共に、組み付けに工数がかかるという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、簡単な構成により、プッシュまたはプル操作時においてバネ力及び節度感を付与することのできる車両用パドルスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、上記目的を達成するために、一端に操作パドルを有すると共に、回転支点の回りに揺動可能な2つの作用部とを有し、車両のステアリングコラムポストの周辺に設けられたパドルレバーと、前記それぞれ2つの作用部に対応して設けられた固定接点部を有する基板と、前記それぞれの作用部と前記固定接点部の間に設けられ、前記作用部の移動により前記固定接点部に接触する可動接点部が装着されたコンタクトラバーにより構成される2つの接点部を備えたスイッチ部、を有し、前記スイッチ部は、前記パドルレバーの異なる方向への回転操作により、一方の接点部が接触する方向にあるときは、他方の接点部が離間する方向となるように配置されていることを特徴とする車両用パドルスイッチを提供する。
【0008】
[2]前記コンタクトラバーは、前記可動接点部が前記固定接点部に接触する動作状態では互いに離間させる方向へバネ力として作用すると共に、節度感を付与することを特徴とする前記[1]に記載の車両用パドルスイッチであってもよい。
【0009】
[3]前記コンタクトラバーは、シリコンゴムにより形成されていることを特徴とする前記[1]に記載の車両用パドルスイッチであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、簡単な構成により、プッシュまたはプル操作時においてバネ力及び節度感を付与することのできる車両用パドルスイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[本発明の実施の形態に係る車両用パドルスイッチ]
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用パドルスイッチの配置位置を示す斜視図である。図2は、ステアリングホイールを運転者側から見た平面図である。図3は、車両用パドルスイッチを示す分解斜視図であり、図1の助手席側からA方向(右方向)を見た状態を示している。図4は、パドルスイッチ10の右パドルレバー10B側について図3のB方向から見た上平面図である。図5(a)は、右パドルレバー10Bの図3におけるC−C断面図であり、(b)は、基板210Bを右パドルレバー10B側から見た平面図である。
【0012】
図1に示すように、ステアリングホイール2は、運転席の前方のインストルメントパネルから突出するステアリングコラムポスト3に回転可能に支持されていると共に、ステアリングホイール2の周辺には車両の運転操作に必要な種々の操作装置が配置されており、例えば、方向指示装置、ワイパー装置、変速操作装置等に関連する方向指示用レバー、ワイパー用レバー、左パドルレバー10A及び右パドルレバー10B等が、運転者により容易に操作できる位置に配置されている。更に、ステアリングコラムポスト3の内部には、パドルスイッチ10の主要部が設置されている。
【0013】
(パドルスイッチ10の構成)
パドルスイッチ10は、一端に左操作パドル110A及び右操作パドル110Bを有すると共に、回転支点としてのシャフト121A、121Bの回りにそれぞれ揺動可能な2つの作用部112A,113A、112B,113Bとを有し、車両のステアリングコラムポスト3の周辺に設けられた左パドルレバー10A及び右パドルレバー10Bと、それぞれ2つの作用部112A,113A、112B,113Bに対応して設けられた固定接点部としての接点パターン212A,213A、212B,213Bを有する基板210A、210Bと、それぞれの作用部と固定接点部の間に設けられ、作用部の移動により固定接点部に接触する可動接点部226A,227A、226B,227Bが装着されたコンタクトラバー220A,220Bにより構成される2つの接点部202A,203A、202B,203Bを備えたスイッチ部20A、20Bを有して構成されている。
【0014】
この左,右パドルレバー10A,10Bは、例えば、運転者の手動操作により車両1に搭載される自動変速機を変速させるためのレバーであり、アルミニウム及びその合金、ステンレス等の金属により形成されている。図3に示すように、左,右パドルレバー10A,10Bは、シャフト孔111A,111Bにそれぞれシャフト121A、121Bによりスイッチ本体12のハウジング120の左右に回転可能に取付けられている。また、スイッチ部20A、20Bが、左,右パドルレバー10A,10Bそれぞれに対応して、同様にハウジング120の左右にネジにより取付けられている。
【0015】
以下では、図3、4に示す右パドルレバー10Bとスイッチ部20Bの右側部分について説明する。尚、左側部分については右側部分と左右対称に構成されている。
【0016】
右パドルレバー10Bは、シャフト孔111Bを中心に回転可能なレバーであって、パドル本体11Bの一端にパドル操作するための右操作パドル110Bが設けられ、パドル本体11Bの回転運動によりスイッチ部20Bのスイッチ操作を行なう作用部112B,113Bがシャフト孔111Bを中心に揺動可能に設けられている。すなわち、作用部112Bと113Bは、右パドルレバー10Bが回転運動する場合、スイッチ部20Bに対して一方が接近し、他方が離間する揺動運動を行なうように、シャフト孔111Bに対して略対称に構成されている。尚、作用部112Bと113Bは、スイッチ部20Bに対して一方が接近し、他方が離間する揺動運動を行なうように構成されていればよく、例えば、右操作パドル110Bのプッシュ操作(D方向)よりもプル操作(E方向)の操作力を小さく設定するために、シャフト孔111Bに対して非対称に構成することも可能である。
【0017】
コンタクトラバー220Bは、右パドルレバー10Bの作用部112B、113Bと基板210Bの間に設けられ、図3〜5に示すように、基板210Bの接点部側を覆う形状に形成されている。図5(a)に示すように、コンタクトラバー220Bの周囲であって基板210Bの表面211Bに当接する枠部221Bと、作用部112Bおよび113Bに接触、押圧される凸形状に形成された突設部222B、223Bと、突設部222B、223Bから枠部221Bへドーム状に形成されて突設部222B、223Bを支持する支持部224B、225Bから構成されている。突設部222Bと支持部224B、及び、突設部223Bと支持部225Bのそれぞれの内空部には、それぞれ導電性材料で形成された可動接点部226B,227Bが天井部に装着されている。
【0018】
コンタクトラバー220Bは、例えば、シリコン等の弾性材料で形成されている。そして、作用部112Bおよび113Bに接触、押圧されることにより、バネ力を発生させると共に、変形途中において上記バネ力が変化する節度感を付与する。このバネ力及び節度感を発生させるには、上記説明した支持部224B、225Bがドーム形状には限られず、直線状、あるいは、階段状等に形成された構成でも可能である。
【0019】
基板210Bは、例えばガラスエポキシ材により板状に形成され、その表面211Bに固定接点部としての接点パターン212B、213Bが形成されている。接点パターン212Bについて説明すると、接点パターン212Bは、互いに所定の距離で離間して形成されたパターン2120B、2121Bで構成され、図5(b)に示すように、接点パターン212Bに対してコンタクトラバー220Bの可動接点部226Bが接触すると、パターン2120Bと2121Bは電気的に接続される。パターン2120B、2121Bの端部は、図示しないコネクタ等により外部に接続され、ロールコネクタ等を介して車両本体側の制御ECUに接続される。
【0020】
(パドルスイッチ10の操作)
左,右パドルレバー10A,10Bは、図2に示すように、ステアリングホイール2の左右の下側(ステアリングコラムポスト3側)に設けられ、運転者がステアリングホイール2のリング部2aを手で把持した状態から指先で左操作パドル110A及び右操作パドル110Bをプッシュ操作(D方向)又はプル操作(E方向)することができるように構成されている。
【0021】
例えば、右パドルレバー10Bの右操作パドル110Bをプッシュ操作することにより自動変速機をシフトアップし、プル操作することによりシフトダウンするマニュアル変速ができるようになっている。また、左パドルレバー10Aの左操作パドル110Aをプッシュ操作することによりノーマル走行モードに設定し、プル操作することによりスポーツ走行モードに設定できるようになっている。
【0022】
以下では、右パドルレバー10Bのパドル操作について動作説明する。尚、左パドルレバー10Aのパドル操作についても同様である。
【0023】
運転者が右パドルレバー10Bをプッシュ操作すると、図4において右パドルレバー10BはD方向に回転動作して、図5(a)において、作用部112Bがコンタクトラバー220Bの突設部222Bに当接して支持部224Bが弾性変形するよう押圧する。一方、作用部113Bはコンタクトラバー220Bの突設部223Bから離間する方向に移動する。このプッシュ操作により、接点部202Bにおいて可動接点部226Bが接点パターン212Bに接触してスイッチON状態となり、接点部203Bにおいては可動接点部227Bが接点パターン213Bに接触せずスイッチOFF状態のままである。また、上記のプッシュ操作中、支持部224Bの弾性変形により、バネ力による反発力を受けると共に、弾性変形の途中において上記バネ力が変化する節度感を受けることになる。
【0024】
一方、運転者が右パドルレバー10Bをプル操作すると、図4において右パドルレバー10BはE方向に回転動作して、図5(a)において、作用部113Bがコンタクトラバー220Bの突設部223Bに当接して支持部225Bが弾性変形するよう押圧する。一方、作用部112Bはコンタクトラバー220Bの突設部222Bから離間する方向に移動する。このプル操作により、接点部203Bにおいて可動接点部227Bが接点パターン213Bに接触してスイッチON状態となり、接点部202Bにおいては可動接点部226Bが接点パターン212Bに接触せずスイッチOFF状態のままである。また、上記のプル操作中、支持部225Bの弾性変形により、バネ力による反発力を受けると共に、弾性変形の途中において上記バネ力が変化する節度感を受けることになる。
【0025】
(本発明の実施の形態の効果)
本発明の実施の形態によれば、以下のような効果を有する。
(1)パドルスイッチ10は、左パドルレバー10A及び右パドルレバー10Bの操作に対するバネ力及び節度感をシリコン等の弾性材料で形成されたコンタクトラバー220A、220Bにより発生させる構成としている。従って、従来のような個別のバネを組み付ける必要がないので、組立性が向上すると共に、部品点数の削減が可能となる。
(2)左パドルレバー10A及び右パドルレバー10Bの操作において、プッシュ操作及びプル操作の2方向操作力がコンタクトラバー220A、220Bだけで実現でき、上記示したように、操作中のバネ力(反発力)及び節度感が得られる。
(3)パドルスイッチ10は、車両1の振動が伝達されやすいステアリングホイール2の近傍に装着される。本発明の実施の形態におけるパドルスイッチ10は、シリコン等の弾性材料で形成されたコンタクトラバー220A、220Bを使用しているので、バネ力(反発力)及び節度感と共に、減衰性能(ダンピング性能)に優れる。運転者の指が接触する左操作パドル110A又は右操作パドル110Bの車両振動に連動した振動が軽減され、快適なパドル操作が可能となる優れた効果を有する。
(4)コンタクトラバー220A、220Bは、基板210A、210Bの接点部側を覆う形状に形成されている。すなわち、枠部221A、221Bが基板210A、210Bの表面211Bに当接して周囲を覆うので、防塵性能に優れ、信頼性及び耐久性に優れたパドルスイッチ10が可能となる。
【0026】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る車両用パドルスイッチの配置位置を示す斜視図である。
【図2】図2は、ステアリングホイールを運転者側から見た平面図である。
【図3】図3は、車両用パドルスイッチを示す分解斜視図であり、図1の助手席側からA方向(右方向)を見た状態を示している。
【図4】図4は、パドルスイッチ10の右パドルレバー10B側について図3のB方向から見た上平面図である。
【図5】図5(a)は、右パドルレバー10Bの図3におけるC−C断面図であり、(b)は、基板210Bを右パドルレバー10B側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…車両、2…ステアリングホイール、2a…リング部、3…ステアリングコラムポスト、10…パドルスイッチ、10B…右パドルレバー、10A…左パドルレバー、11A,11B…パドル本体、12…スイッチ本体、20A,20B…スイッチ部、110A…左操作パドル、110B…右操作パドル、111A,111B…シャフト孔、112A,113A…作用部、112B,113B…作用部、120…ハウジング、121A,121B…シャフト、202A,203A…接点部、202B,203B…接点部、210A…基板、210B…基板、211A,211B…表面、212A,213A …接点パターン、212B,213B…接点パターン、220A,220B…コンタクトラバー、221B,221A…枠部、222A,222B…突設部、224A,22AB…支持部、224B,225B 支持部、226A,227A…可動接点部、226B,227B…可動接点部、2120A,2121A,2130A,2131A…パターン、2120B,2121B,2130B,2131B…パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に操作パドルを有すると共に、回転支点の回りに揺動可能な2つの作用部とを有し、車両のステアリングコラムポストの周辺に設けられたパドルレバーと、
前記それぞれ2つの作用部に対応して設けられた固定接点部を有する基板と、前記それぞれの作用部と前記固定接点部の間に設けられ、前記作用部の移動により前記固定接点部に接触する可動接点部が装着されたコンタクトラバーにより構成される2つの接点部を備えたスイッチ部、を有し、
前記スイッチ部は、前記パドルレバーの異なる方向への回転操作により、一方の接点部が接触する方向にあるときは、他方の接点部が離間する方向となるように配置されていることを特徴とする車両用パドルスイッチ。
【請求項2】
前記コンタクトラバーは、前記可動接点部が前記固定接点部に接触する動作状態では互いに離間させる方向へバネ力として作用すると共に、節度感を付与することを特徴とする請求項1に記載の車両用パドルスイッチ。
【請求項3】
前記コンタクトラバーは、シリコンゴムにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用パドルスイッチ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−39980(P2010−39980A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205255(P2008−205255)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】