説明

車両用制御装置

【課題】自車両に接近する後方車両をより確実に回避すること。
【解決手段】車両用制御装置10は、後方車両の自車両への接近を検出する接近検出手段1aと、自車両の車速が設定された制限速度以下となるように、車速の制限制御を行う車速制御手段1bと、を備えている。また、接近検出手段1aにより、後方車両の接近が検出されたとき、車速制御手段1bは制限制御を解除するのが好ましい。さらに、車線変更検出手段21aにより、自車両の車線変更が検出されているときにおいて、車速制御手段1bは制限制御を解除するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自車両の車速が設定された制限速度以下となるように、車速の制限制御を行う車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者による車線変更時における後方確認の負担を軽減すべく、後方車両が自車両に接近する接近状態に応じて、警報を行う後側方衝突警報装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−241499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の後側方衝突警報装置は、上述の如く、車線変更時における後方確認の負担を軽減すべく、後方車両が、車線変更時において自車両に接近しているとき、運転者に対して警報を行うものである。
【0004】
したがって、運転者が自ら自車両の加速操作等を行い、後方車両を回避する必要が生じるため、例えば、後方車両が自車両に急接近する虞がある。また、車速制限装置により、自車両が設定された制限速度以下に制御されている場合、当該自車両が急接近する後方車両を回避すべく、自らの車速を上記制限速度以上に加速させることが不能となり得る。この場合、自車両を大きく加速させて、急接近する後方車両を回避するのが困難となる虞がある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、自車両に接近する後方車両をより確実に回避することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、後方車両の自車両への接近を検出する接近検出手段と、自車両の車速が設定された制限速度以下となるように、車速の制限制御を行う車速制御手段と、を備える車両用制御装置であって、接近検出手段により、後方車両の接近が検出されたとき、車速制御手段は制限制御を解除する、ことを特徴とする車両用制御装置である。この一態様によれば、自車両に接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【0007】
この一態様において、自車両の車線変更を検出する車線変更検出手段を更に備え、車線変更検出手段により車線変更が検出されているときにおいて、車速制御手段は制限制御を解除してもよい。これにより、車線変更中の自車両は接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【0008】
この一態様において、運転者が自車両を加速させようとする加速意思を検出する加速意思検出手段と、運転者の加速操作に対する自車両の加速度の増加率を制御するアクセルレスポンス制御手段と、を更に備え、車速制御手段による制限制御が解除された後、加速意思検出手段により加速意思が検出されたとき、アクセルレスポンス制御手段は、加速度の増加率を増加させるような制御を行ってもよい。これにより、自車両をより大きく加速させて、自車両に急接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【0009】
この一態様において、接近検出手段により、後方車両の接近が検出されたとき、運転者による操舵操作を補助する操舵支援手段を更に備えていてもよい。これにより、運転者は容易に操舵操作を行い、自車両に急接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【0010】
この一態様において、接近検出手段により、後方車両の接近が検出されたとき、後方車両の接近を警報するための警報手段を更に備えていてもよい。これにより、運転者は後方車両の接近を確実に認識でき、自車両に急接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【0011】
この一態様において、接近検出手段により、後方車両の接近が検出されたとき、自車両の駆動力、制動力及び/又は操舵力を制御して、後方車両を自動的に回避するような制御を行ってもよい。これにより、自車両に急接近する後方車両を自動的に回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自車両に接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施の形態を挙げて説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用制御装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態に係る車両用制御装置10は、制御ECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)1を中心に構成されている。
【0015】
また、制御ECU1は、主として、マイクロコンピュータから構成されている。このマイクロコンピュータは、周知のCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、I/O等から構成されている。このうち、CPUはROMに格納されたプログラムに従い、後述する各種の制御処理を実行する。ROMには、後述の各プログラムの他、CPUが各種制御処理を実行する際に必要となる制御パラメータ等の各種情報が記憶されている。
【0016】
制御ECU1は、接近検出部1aおよび車速制御部1bを有している。なお、接近検出部1a、車速制御部1b、後述の車線変更検出部21a、加速意思検出部21b、およびアクセルレスポンス制御部21cは、例えばROMに記憶され、CPUによって実行されるプログラムによって実現されている。
【0017】
接近検出部1aは、自車両の後方を走行する後方車両が自車両に接近したことを検出する(図2)。接近検出部1aは、例えば、車両安全性の観点から、後方車両を回避するような車両操作が必要となる後方車両の急接近(以下、回避接近と称す)を検出する。なお、上記後方車両には、例えば、自車両と同一レーンを走行する後方車両だけで無く、自車両のレーンに隣接するレーンを走行する後側方車両も含むものとする。
【0018】
接近検出部1aは、後方車両を検出するための電波式のミリ波レーダ、超音波式のソナー、光学式のレーザレーダ等の距離検出センサ11を有している。例えば、車両後部のリアバンパに配設されたレーダは、車両後方側に対して電磁波を放射し、その放射された電磁波のうち、レーダの検出領域R内の後方車両によって反射された反射波を受信することにより、後方車両と自車両との車間距離(以下、車間距離と称す)Sと、後方車両の自車両に対する相対速度(接近速度)Vrと、後方車両の自車両に対する相対的な方向と、を検出する。なお、距離検出センサ11は、自車両の後部に配設され、車両後方側を撮影可能なカメラであってもよい。
【0019】
接近検出部1aは、例えば、距離検出センサ11により検出された車間距離S及び相対速度Vrと、予め設定された車間距離S及び相対速度Vrの関係と、に基づいて、上記回避接近を検出する。なお、上記車間距離S及び相対速度Vrの関係は、例えば、図3に示す如く、予め実験的に求められ、制御ECU1のROMに記憶されている。
【0020】
また、この車間距離S及び相対速度Vrの関係において、回避接近が検出される回避必要領域(1)と、回避接近が検出されない回避不要領域(2)と、を分ける回避境界線が設定されている。この回避境界線は、例えば、車間距離Sが増加するほど相対速度Vrが増加するような二次曲線が実験的に求められ、設定されている。
【0021】
接近検出部1aは、距離検出センサ11により検出された車間距離S及び相対速度Vrが回避境界線を越え、回避必要領域(1)にあるとき、回避接近を検出する。一方、接近検出部1aは、距離検出センサ11により検出された車間距離S及び相対速度Vrが回避境界線を越えることなく、回避不要領域(2)にあるとき、回避接近を検出しない。
【0022】
車速制御部(車速制御手段)1bは、自車両の車速を予め設定された制限速度以下となるように、車速の制限制御(スピードリミッタ制御)を行う。車速制御部1bには、自車両の車速を検出する車速センサ12が接続されている。
【0023】
また、車速制御部1bには、自車両の駆動力を制御するエンジンECU13、及び自車両の制動力を制御するブレーキECU14が接続されている。エンジンECU13は、エンジン13aを統合的に制御することで、自車両の駆動力を制御する。ブレーキECU14は、自車両の各車輪に配設されたブレーキ装置14aを制御することで、自車両の制動力を制御する。
【0024】
なお、制御ECU1、エンジンECU13、ブレーキECU14および後述の操舵ECU18は、例えば、車両LAN(Local Area Network)15を介して相互に通信接続されており、双方向のデータ通信が可能である。
【0025】
例えば、車速制御部1bは、エンジンECU13を制御することで、自車両の駆動力を制御する。また、車速制御部1bは、ブレーキECU14を制御することで、自車両の制動力を制御する。さらに、車速制御部1bは、車速センサ12により検出された自車両の車速が制限速度以下となるように、自車両の制動力及び/又は駆動力を制御する。なお、車速の制限制御の処理方法については、周知技術であることから詳細な説明は省略する。
【0026】
次に、第1の実施の形態に係る車両用制御装置10の制御処理フローの一例について、詳細に説明する。図4は、本実施の形態に係る車両用制御装置10の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。なお、図4、後述の図8及び図11に示す制御処理フローは、所定の微少時間毎(例えば、10msec毎)に繰り返し実行される。
【0027】
まず、制御ECU1の接近検出部1aは、距離検出センサ11により検出された車間距離S及び相対速度Vrと、予め設定された車間距離S及び相対速度Vrの関係と、に基づいて、回避接近を検出する(S10)。
【0028】
接近検出部1aにより回避接近が検出されると(S10のYes)、車速制御部1bは、実行中の車速の制限制御を解除する(S11)。この場合、エンジンECU13は、車速制御部1bに設定された制限速度に制限されること無く、運転者のアクセル操作に基づいて、自車両を十分に加速させることができる。したがって、例えば、自車両の車速を上記制限速度に制限されること無く、設定された制限速度以上に加速させて(S12)、急接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【0029】
一方、接近検出部1aにより回避接近が検出されないとき(S10のNo)、車速制御部1bは、実行中の車速の制限制御を継続する(S13)。この場合、例えば、自車両が加速した場合でも、その車速が制限速度以下に制限制御される(S14)。これにより、自車両における過剰な加速を自動的に抑制することができる。
【0030】
以上、第1の実施の形態に係る車両用制御装置10において、接近検出部1aにより回避接近が検出されると、車速制御部1bは実行中の車速の制限制御を解除する。これにより、自車両を設定された制限速度に制限されること無く、十分に加速させて、急接近する後方車両を確実に回避することができる。すなわち、自車両に急接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用制御装置20のシステム構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態に係る車両用制御装置20の制御ECU21は、上述の接近検出部1aおよび車速制御部1bに加えて、車線変更検出部21aと、加速意思検出部21bと、アクセルレスポンス制御部21cと、を更に有している。
【0032】
車線変更検出部21aは、自車両が現在走行しているレーンから隣接するレーンへ車線変更している状態を検出する。車線変更検出部21aには、車両前方を撮影可能なカメラ15が接続されている。このカメラ15は、例えば、車両前部に配設されており、自車両が走行する路面上の車線を撮影することができる。
【0033】
車線変更検出部21aは、例えば、カメラ15により撮影された車両前方の撮影画像に対して周知の画像処理を行い、自車両が現在走行している路面上の車線を検出する。そして、車線変更検出部21aは、検出された車線と自車両との相対的位置関係を算出することで、自車両が車線変更している状態(車線変更中)を検出する。
【0034】
なお、車線変更検出部21aは、ウィンカー装置が出力する方向指示信号、及び/又は操舵角センサにより検出された車両の操舵角に基づいて、自車両が車線変更している状態を検出してもよい。
【0035】
加速意思検出部21bは、運転者が自車両を加速させようとする加速意思を検出する。加速意思検出部21bには、例えば、アクセルペダルに配設され、運転者によるアクセルペダルの踏込み量を検出するアクセルポジションセンサ16(以下、ポジションセンサと称す)が接続されている。
【0036】
加速意思検出部21bは、ポジションセンサ16により検出されたアクセルペダルの踏込み量(ドライバアクセル開度DAC)に基づいて、運転者の加速意思を検出する。例えば、加速意思検出部21bは、ポジションセンサ16により検出されたドライバアクセル開度DACが増加し、所定値DACth以上になると、上記加速意思を検出する(図6)。
【0037】
なお、加速意思検出部21bは、アクセルペダルの踏込みによりオン信号を出力するオン/オフスイッチにより、上記加速意思を検出してもよい。加速意思検出部21bは、例えば、オン/オフスイッチからオン信号を受信すると、上記加速意思を検出する。
【0038】
アクセルレスポンス制御部(アクセルレスポンス制御手段)21cは、例えば、アクセルペダルの踏込み操作等の運転者の加速操作に対する自車両の加速度の増加率(加速度合い)を制御する。
【0039】
例えば、アクセルレスポンス制御部21cは、下記(1)式に基づいて、エンジン13aのスロットル弁の制御開度ACを算出する。
【0040】
AC=DAC×K×ΔDAC (1)式
なお、上記(1)式において、Kは制御係数であり、ΔDACはドライバアクセル開度変化量である。このΔDACは、例えば、ポジションセンサ16により検出されたドライバアクセル開度DACに基づいて、算出される。
【0041】
アクセルレスポンス制御部21cは、制御係数Kを可変させることで、制御開度ACを可変させる。これにより、運転者の加速操作に対する自車両の加速度の増加率を制御することができる。
【0042】
例えば、アクセルレスポンス制御部21cは、時間tにおいて、制御係数Kを増加せることで、制御開度ACの増加率を増加させる。この場合、アクセルレスポンス制御部21cの制御開度ACは、図7に示す如く、例えば、(1)の通常状態(点線)から(2)の増加状態(実線)へと変化し、増加率がより大きくなる。
【0043】
エンジンECU13は、アクセルレスポンス制御部21cにより算出された制御開度ACに基づいて、例えば、エンジン13aのスロット弁の開度を制御する。より具体的には、アクセルレスポンス制御部21cが制御開度ACを増加させると、エンジンECU13は、この増加した制御開度ACに基づいて、エンジン13aのスロットル弁の開度を増加させて、エンジン13aの駆動力を増加させる。
【0044】
このように、アクセルレスポンス制御部21cは、制御開度ACの増加率を、上述の如く、増加させることで、運転者の加速操作に対する自車両の加速度の増加率を増加させる。これにより、いわゆるアクセルレスポンスをより増加させ、急接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【0045】
なお、図5に示す第2の実施の形態に係る車両用制御装置20おいて、図1に示す第1の実施の形態に係る車両用制御装置10と略同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
次に、第2の実施の形態に係る車両用制御装置20の制御処理の一例について、詳細に説明する。図8は、本実施の形態に係る車両用制御装置20の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0047】
車線変更検出部21aは、自車両が現在走行しているレーンから隣接するレーンへ車線変更している状態(車線変更中)を検出する(S20)。
【0048】
車線変更検出部21aにより、車線変更の状態が検出されると(S20のYes)、接近検出部1aは回避接近を検出する(S21)。車線変更検出部21aにより、車線変更の状態が検出されていないとき(S20のNo)、車速制御部1bは実行中の車速の制限制御を継続し(S22)、本制御処理を終了する。
【0049】
接近検出部1aにより、回避接近が検出されると(S21のYes)、車速制御部1bは、実行中の車速の制限制御を解除し(S23)、後述の(S24)処理へ移行する。一方、接近検出部1aにより、回避接近が検出されないとき(S21のNo)、車速制御部1bは実行中の車速の制限制御を継続し(S22)、本制御処理を終了する。
【0050】
加速意思検出部21bは、ポジションセンサ16により検出されたドライバアクセル開度DACが所定値DACth以上か否かを判断し、上記加速意思を検出する(S24)。
【0051】
加速意思検出部21bにより、加速意思が検出されると(S24のYes)、アクセルレスポンス制御部21cは、図7の(2)に示す如く、制御開度ACの増加率を増加させる(S25)。これにより、同一のアクセルペダルの踏込操作に対する自車両の加速度の増加率を増加させることができる。
【0052】
一方、加速意思検出部21bにより、加速意思が検出されないとき(S24のNo)、アクセルレスポンス制御部21cは、図7の(1)に示す如く、制御開度ACの増加率を通常状態で加速制御を行い(S26)、本制御処理を終了する。
【0053】
以上、第2の実施の形態に係る車両用制御装置20において、車線変更検出部21aにより、車線変更の状態が検出され、かつ接近検出部1aにより回避接近が検出されると、車速制御部1bは実行中の車速の制限制御を解除する。これにより、車線変更中の自車両は、後方から急接近する後方車両を、設定された制限速度に制限されること無く、十分に加速させ、確実に回避することができる。
【0054】
また、上述の如く、車速制御部1bにより、実行中の車速の制限制御が解除された後、加速意思検出部21bにより加速意思が検出されると、アクセルレスポンス制御部21cは、制御開度ACの増加率を増加させる。これにより、運転者による同一のアクセルペダルの踏込操作に対する自車両の加速度の増加率を増加させることができる。したがって、自車両をより大きく加速させて、急接近する後方車両をより確実に回避することができる。
【0055】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施の形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0056】
上記第1及び第2の実施の形態において、接近検出部1aは、例えば、距離検出センサ11により検出された車間距離Sに基づいて上記回避接近を検出しているが、例えば、車間時間、または車頭時間に基づいて上記回避接近を検出してもよい。
【0057】
上記第1及び第2の実施の形態において、接近検出部1aにより、回避接近が検出されると(S10のYes、S21のYes)、車速制御部1bは、実行中の車速の制限制御を解除すると共に(S11、S23)、車両に搭載される警報装置(警報手段)17を用いて、運転者に対して警報を行ってもよい。これにより、運転者は、警報装置17の警報により後方車両の接近を認識しつつ、自車両を加速操作して、より確実に後方車両を回避することができる。
【0058】
なお、警報装置17の警報としては、例えば、音声出力器(ブザー)による警報音、ディスプレイ装置(メータ表示装置、ナビゲーション装置)による警報表示、ライト装置により警告灯の点灯/点滅、振動装置(ハンドル、シート、シートベルト等に内蔵された装置)による警報振動等が含まれる。
【0059】
また、図9に示す如く、接近検出部1aにより、回避接近が検出されると(S10のYes、S21のYes)、まず警報装置17により警報を行い、この警報後一定時間t経過すると、車速制御部1bは、実行中の車速の制限制御を解除してもよい(S11、S23)。これにより、運転者は、警報装置17の警報により後方車両の接近を認識し、その後、自車両を加速操作して、より確実に後方車両を回避することができる。
【0060】
上記第2の実施の形態において、アクセルレスポンス制御部21cは、制御開度ACの増加率を増加させているが、自動変速装置(AT)の変速状態を可変させてもよい。具体的には、アクセルレスポンス制御部21cは、自動変速装置の変速状態を下げるような変速制御(例えば、6速状態から4速状態、5速状態から2速状態等のシフトダウン制御)を行ってもよい。これにより、上記制御開度ACの増加率を増加させる場合と同様の効果、すなわち、同一のアクセルペダルの踏込操作に対する自車両の加速度の増加率を増加させることができる。
【0061】
上記第1及び第2の実施の形態において、車間距離S及び相対速度Vrの関係には、1つの回避境界線が設定されているが、この回避境界線は複数レベルで設定されていてもよい。車間距離S及び相対速度Vrの関係において、例えば、警報レベル境界線(a)、支援レベル境界線(b)および自動回避レベル境界線(c)が設定されていてもよい(図10)。
【0062】
より具体的には、警報レベル境界線(a)は、直ぐには、自車両と後方車両との衝突の虞はないが、警戒を要するような警戒状態となる境界線が設定される。この警報レベル境界線(a)を越え、警報領域に入ると、例えば、警報装置17による警報が実行される。
【0063】
また、支援レベル境界線(b)は、略3〜4秒後に自車両と後方車両との衝突の虞があるような緊急状態となる境界線が設定される。この支援レベル境界線(b)を越え、支援領域に入ると、例えば、上記車速制御部1bによる実行中の車速の制限制御を解除するような回避支援制御が実行される。
【0064】
さらに、自動回避レベル境界線(c)は、略2〜3秒後に自車両と後方車両との衝突の虞があるような極めて緊急状態となる境界線が設定される。この自動回避レベル境界線(c)を越え、自動回避領域に入ると、例えば、車両の駆動力、制動力及び/又は操舵力の自動制御が実行され、自車両は後方車両による衝突を緊急回避することができる。このように、回避境界線を衝突の危険性に応じて段階的に設定し、各段階に最適な警報、制御等を行うことで、自車両は後方車両の接近をより適切に回避することができる。
【0065】
次に、上述の如く、車間距離S及び相対速度Vrの関係において、警報レベル境界線(a)、支援レベル境界線(b)および自動回避レベル境界線(c)が設定された場合の制御処理フローについて、詳細に説明する。
【0066】
図11は、警報レベル境界線(a)、支援レベル境界線(b)および自動回避レベル境界線(c)が設定された場合の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0067】
制御ECU21の接近検出部1aは、距離検出センサ11により検出された車間距離S及び相対速度Vrと、予め設定された車間距離S及び相対速度Vrの関係と、に基づいて、警報レベル境界線(a)を越え、警報領域に入ったか否かを判断する(S30)。
【0068】
接近検出部1aは、警報領域に入ったと判断したとき(S30のYes)、警報装置17を作動させて運転者に対して、警報を行う(S31)。一方、接近検出部1aは、警報領域では無く回避不要領域にあると判断したとき(S30のNo)、本制御処理を終了させる。
【0069】
次に、接近検出部1aは、警報領域から支援レベル境界線(b)を越え、支援領域に入ったか否かを判断する(S32)。
【0070】
接近検出部1aにより、支援領域に入ったと判断されると(S32のYes)、車速制御部1bは実行中の車速の制限制御を解除し(S33)、加速意思検出部21bは加速意思を検出する(S34)。一方、接近検出部1aにより、支援領域に入っていないと判断されると(S32のNo)、本制御処理を終了させる。
【0071】
加速意思検出部21bにより、加速意思が検出されると(S34のYes)、アクセルレスポンス制御部21cは、制御開度ACの増加率を増加させる(S35)。一方、加速意思検出部21bにより、加速意思が検出されないとき(S34のNo)、本制御処理を終了させる。
【0072】
次に、接近検出部1aは、支援領域から自動回避レベル境界線(c)を越えて、自動回避領域に入ったか否かを判断する(S36)。接近検出部1aにより自動回避領域に入ったと判断されたとき(S36のYes)、制御ECU21は、車両の駆動力、制動力及び/又は操舵力を自動制御して、自車両に急接近する後方車両を自動回避するための自動回避制御を行う(S37)。一方、接近検出部1aにより自動回避領域に入っていないと判断されたとき(S36のNo)、本制御処理を終了させる。
【0073】
なお、上記自動回避制御において、例えば、制御ECU21は、エンジンECU13を制御して、自車両を加速させて、急接近する後方車両を回避する。また、制御ECU21は、操舵ECU(操舵支援手段)18を制御して、車両を左方向又は右方向へ操舵制御して、急接近する後方車両を回避する。これにより、自車両は後方から急接近する後方車両をより確実に緊急回避することが可能となる。なお、操舵ECU18は、ステアリング装置18aを制御して、上記操舵制御を行っている。
【0074】
上記第1及び第2の実施の形態において、接近検出部1aにより、回避接近が検出されると(S10のYes、S21のYes)、車速制御部1bは、実行中の車速の制限制御を解除すると共に(S11、S23)、プリクラッシュ(Pre-crash Safety:PCS)制御を実行させてもよい。これにより、自車両の安全性がより向上する。なお、プリクラッシュ制御として、例えば、シートベルト装置を制御してシートベルトに張力を付加させるような制御が含まれる。
【0075】
上記第1及び第2の実施の形態において、接近検出部1aにより、回避接近が検出されると(S10のYes、S21のYes)、車速制御部1bは、実行中の車速の制限制御を解除すると共に(S11、S23)、自車両のハーザードランプ等の車両ライトを点灯/点滅させ、後方車両に対し注意を促してもよい。これにより、後方車両に対しても回避の必要性を促すことができ、自車両と後方車両との衝突がより確実に回避される。
【0076】
上記第1及び第2の実施の形態において、接近検出部1aにより、回避接近が検出され(S10のYes、S21のYes)、さらに、操舵角センサにより車両の操舵が検出されると、車速制御部1bは、実行中の車速の制限制御を解除すると共に(S11、S23)、運転者の操舵操作を補助する操舵支援制御を行ってもよい。これにより、自車両は後方から急接近する後方車両を、補助された操舵操作によって、確実に回避することが可能となる。
【0077】
上記操舵支援制御としては、例えば、ステアリングホイールに付加される操舵反力を軽減するような制御、ステアリングギア比可変制御システム(VGRS)におけるギア比可変制御等が含まれ、車両の操舵が迅速に行われる(クイックな操舵操作が可能となる)支援制御を指す。なお、上記VGRS及びPCS制御は周知技術であることから、詳細な説明を省略する。
【0078】
上記第2の実施の形態において、アクセルレスポンス制御部21cは、上記(1)式に基づいて、スロットル弁の制御開度ACを算出しているが、下記式に示す如く、相対速度Vrに応じて、式を可変させて算出してもよい。
【0079】
制御開度AC=α (相対速度Vr≧定数Vth
制御開度AC=DAC×K×ΔDAC (相対速度Vr<定数Vth
上記式において、定数αは、例えば、後方車両の接近を確実に回避できるような値(自車両の最大運動性能となる値)が実験的に求められ、設定されている。また、定数Vthは、例えば、後方車両が自車両に衝突する危険性が高い緊急状態となるような相対速度が実験的に求められ、設定されている。これにより、例えば、特に緊急状態にある後方車両の急接近を、制御開度ACを短時間で大きく増加させることで、より確実に回避することができる。
【0080】
なお、上記第1及び第2の実施の形態において、接近検出部1a及び距離検出センサ11が、特許請求の範囲記載の接近検出手段に相当している。また、車線変更検出部21a及びカメラ15が、特許請求の範囲記載の車線変更検出手段に相当している。さらに、加速意思検出部21b及びポジションセンサ16が、特許請求の範囲記載の加速意思検出手段に相当している。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えば、自車両の車速が設定された制限速度以下となるように、車速の制限制御を行う車両用制御装置に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用制御装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【図2】自車両に接近する後方車両を検出する状態の一例を示す図である。
【図3】回避必要領域と回避不要領域とを分ける回避境界線が設定された車間距離及び相対速度の関係の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る車両用制御装置の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る車両用制御装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【図6】ドライバアクセル開度が増加して所定値以上となり、加速意思が検出される状態の一例を示す図である。
【図7】制御開度が通常状態から増加状態へ変化して増加率がより大きくなる状態の一例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る車両用制御装置の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図9】警報装置により警報が行われ、この警報後一定時間経過すると車速の制限制御が解除される状態の一例を示す図である。
【図10】警報レベル境界線、支援レベル境界線および自動回避レベル境界線が設定された車間距離及び相対速度の関係の一例を示す図である。
【図11】警報レベル境界線、支援レベル境界線および自動回避レベル境界線が設定された場合の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1、21 制御ECU
1a 接近検出部
1b 車速制御部
10、20 車両用制御装置
17 警報装置
21a 車線変更検出部
21b 加速意思検出部
21c アクセルレスポンス制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方車両の自車両への接近を検出する接近検出手段と、
自車両の車速が設定された制限速度以下となるように、前記車速の制限制御を行う車速制御手段と、を備える車両用制御装置であって、
前記接近検出手段により、前記後方車両の接近が検出されたとき、前記車速制御手段は前記制限制御を解除する、ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用制御装置であって、
自車両の車線変更を検出する車線変更検出手段を更に備え、
前記車線変更検出手段により前記車線変更が検出されているときにおいて、前記車速制御手段は前記制限制御を解除する、ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用制御装置であって、
運転者が自車両を加速させようとする加速意思を検出する加速意思検出手段と、
運転者の加速操作に対する自車両の加速度の増加率を制御するアクセルレスポンス制御手段と、を更に備え、
前記車速制御手段による前記制限制御が解除された後、前記加速意思検出手段により前記加速意思が検出されたとき、前記アクセルレスポンス制御手段は、前記加速度の増加率を増加させるような制御を行う、ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の車両用制御装置であって、
前記接近検出手段により、前記後方車両の接近が検出されたとき、運転者による操舵操作を補助する操舵支援手段を更に備える、ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項記載の車両用制御装置であって、
前記接近検出手段により、前記後方車両の接近が検出されたとき、該後方車両の接近を警報するための警報手段を更に備える、ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載の車両用制御装置であって、
前記接近検出手段により、前記後方車両の接近が検出されたとき、自車両の駆動力、制動力及び/又は操舵力を制御して、前記後方車両を自動的に回避するような制御を行う、ことを特徴とする車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−162553(P2008−162553A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236(P2007−236)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】