説明

車両用制御装置

【課題】車両の旋回性能を向上させることができる車両用制御装置を提供すること。
【解決手段】旋回度増加期の車速がUS限界値を超え、ステア特性がアンダステアになる恐れがある場合には、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を旋回外輪のキャンバ角よりも大きくなるようにネガティブキャンバ方向へ調整することで、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストを旋回外輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させることができる。よって、アンダステアを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置を備えた車両に用いられる車両用制御装置に関し、特に、車両の旋回性能を向上させることができる車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行状態に応じて車輪のキャンバ角を調整することで、車両の旋回性能を向上させる技術が知られている。この種の技術に関し、例えば、特許文献1には、所定の車速以上において車輪にネガティブキャンバを付与することで、コーナリング走行時における車両の限界性能を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−193781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される技術では、コーナリング走行時においても、車速が速ければ車輪にネガティブキャンバが付与されるが、車速が遅いと車輪にネガティブキャンバは付与されず、車輪にネガティブキャンバが付与される場合と付与されない場合とでステア特性に違いが生じるため、車両の旋回性能を向上させるには不十分であるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車両の旋回性能を向上させることができる車両用制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
請求項1記載の車両用制御装置によれば、旋回開始判断手段により車両が直進状態から旋回状態へ状態変化したと判断される場合に、増加期車速判断手段により車両の車速が所定の閾値を超えているかが判断される。そして、増加期車速判断手段により車両の車速が所定の閾値を超えていると判断される場合には、増加期キャンバ調整手段によりキャンバ角調整装置が作動されて、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角が旋回外輪のキャンバ角よりも大きくなるようにネガティブキャンバ方向へ調整されるか、或いは、左右の後輪の旋回外輪のキャンバ角が旋回内輪のキャンバ角よりも大きくなるようにポジティブキャンバ方向へ調整される。これにより、旋回度増加期の車速が所定の閾値を超え、ステア特性がアンダステアになる恐れがある場合には、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角を旋回外輪のキャンバ角よりも大きくなるようにネガティブキャンバ方向へ調整することで、左右の後輪の旋回内輪に発生するキャンバスラストを旋回外輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両に作用させることができる。同様に、左右の後輪の旋回外輪のキャンバ角を旋回内輪のキャンバ角よりも大きくなるようにポジティブキャンバ方向へ調整することで、左右の後輪の旋回外輪に発生するキャンバスラストを旋回内輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両に作用させることができる。よって、アンダステアを抑制することができる。同時に、旋回度増加期の回頭性を向上させることができる。
【0007】
また、請求項1記載の車両用制御装置によれば、維持期遷移判断手段により車両の旋回状態が旋回度の増加する増加期から所定の旋回度に維持される維持期へ遷移したと判断される場合に、減速判断手段により車両の減速状況が判断される。そして、減速判断手段により車両が減速したと判断される場合には、維持期キャンバ調整手段によりキャンバ角調整装置が作動されて、増加期キャンバ調整手段により調整された左右の後輪の旋回内輪または旋回外輪のキャンバ角が少なくとも絶対値が小さくなるように調整される。これにより、旋回度増加期の車速が所定の閾値を超えていたが、その後に車両が減速した場合には、旋回度増加期に車両に作用させたヨーモーメントを小さくすることができる。よって、アンダステアが解消されたにも関わらず、旋回度増加期に引き続きステア特性をオーバステア傾向にしてしまうことを回避して、オーバステアになるのを防止することができるという効果がある。
【0008】
更に、請求項1記載の車両用制御装置によれば、減少期遷移判断手段により車両の旋回状態が所定の旋回度に維持される維持期から旋回度の減少する減少期へ遷移したと判断される場合に、減少期車速判断手段により車両の車速が所定の閾値を超えているかが判断される。そして、減少期車速判断手段により車両の車速が所定の閾値を超えていると判断される場合には、減少期キャンバ調整手段によりキャンバ角調整装置が作動されて、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角が絶対値が大きくなるように調整され旋回外輪のキャンバ角よりも大きくなるようにネガティブキャンバ方向へ調整されるか、或いは、左右の後輪の旋回外輪のキャンバ角が絶対値が大きくなるように調整され旋回内輪のキャンバ角よりも大きくなるようにポジティブキャンバ方向へ調整される。これにより、旋回度維持期に車両は減速していたが、旋回度減少期の車速が所定の閾値を超え、ステア特性がアンダステアになる恐れがある場合には、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角を絶対値が大きくなるように調整して旋回外輪のキャンバ角よりも大きくなるようにネガティブキャンバ方向へ調整することで、左右の後輪の旋回内輪に発生するキャンバスラストを増加させると共に旋回外輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両に作用させることができる。同様に、左右の後輪の旋回外輪のキャンバ角を絶対値が大きくなるように調整して旋回内輪のキャンバ角よりも大きくなるようにポジティブキャンバ方向へ調整することで、左右の後輪の旋回外輪に発生するキャンバスラストを増加させると共に旋回内輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両に作用させることができる。よって、アンダステアを抑制することができる。
【0009】
このように、請求項1記載の車両用制御装置によれば、アンダステアを抑制すると共にオーバステアになるのを防止して、車両の旋回性能を向上させることができるという効果がある。
【0010】
請求項2記載の車両用制御装置によれば、請求項1記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、旋回開始判断手段は、操舵角取得手段により取得された操舵角が所定値を超えるか、或いは、操舵角取得手段により所得された操舵角の時間微分値が正の所定値を超えた場合に、車両が直進状態から旋回状態に状態変化したと判断し、維持期遷移判断手段は、操舵角取得手段により取得された操舵角の時間微分値が正の所定値よりも小さくなった場合に、車両の旋回状態が増加期から維持期へ遷移したと判断し、減少期遷移判断手段は、操舵角取得手段により取得された操舵角の時間微分値が負の所定値よりも小さくなった場合に、車両の旋回状態が維持期から減少期へ遷移したと判断するので、旋回開始判断手段による判断および維持期遷移判断手段による判断ならびに減少期遷移判断手段による判断を、実際の車両の操舵状態に基づいて精度良く行うことができるという効果がある。
【0011】
なお、操舵角取得手段により取得する操舵角は、車輪の中心面と車両の前後軸とのなす角度、いわゆる実舵角に限られるものではなく、例えば、実舵角を生じさせるために運転者により操作される操作部材(ステアリング等)の操作量などを含む趣旨である。また、操舵角は、車両が直進状態にある場合を基準とし、車両が直進状態にある場合の操舵角を0とする。
【0012】
請求項3記載の車両用制御装置によれば、請求項1又は2に記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、増加期閾値取得手段は、増加期車速判断手段による判断の判断基準となる閾値を車両の旋回度に基づいて取得するので、増加期車速判断手段による判断を、車両の旋回度に応じて行うことができる。また、減少期閾値取得手段は、減少期車速判断手段による判断の判断基準となる閾値を車両の旋回度に基づいて取得するので、減少期車速判断手段の判断を、車両の旋回度に応じて行うことができる。よって、ステア特性がアンダステアになる恐れがあるかを、より正確に判断することができるという効果がある。
【0013】
請求項4記載の車両用制御装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、維持期遷移判断手段により車両の旋回状態が増加期から維持期へ遷移したと判断される場合に、車両の車速が車両の旋回度に応じた所定の閾値を超えているかを判断する維持期車速判断手段を備えると共に、減速判断手段は、維持期車速判断手段により車両の車速が所定の閾値を超えていないと判断される場合に、車両が減速したと判断するので、ステア特性がアンダステアになる恐れがあるかを、より正確に判断することができるという効果がある。
【0014】
請求項5記載の車両用制御装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、減速判断手段は、車両を減速させるために運転者により操作される操作部材が操作されたと判断される場合に、車両が減速したと判断するので、ステア特性がアンダステアになる恐れがあるかを、より正確に判断することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施の形態における車両用制御装置が搭載される車両を模式的に示した模式図である。
【図2】懸架装置の正面図である。
【図3】車両用制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図4】(a)は、車両がコーナーを左旋回する場合のステアリングの操作状態を模式的に示した模式図であり、(b)は、車両がコーナーを左旋回する場合の旋回度増加期、旋回度維持期、旋回度減少期のイメージを模式的に示した模式図である。
【図5】キャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【図6】キャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【図7】キャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【図8】第1の運転パターンで車両が旋回する場合の左右の後輪の旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【図9】第2の運転パターンで車両が旋回する場合の左右の後輪の旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【図10】第3の運転パターンで車両が旋回する場合の左右の後輪の旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【図11】第4の運転パターンで車両が旋回する場合の左右の後輪の旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【図12】第2実施の形態における車両用制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図13】第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【図14】第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【図15】第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【図16】第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【図17】第5の運転パターンで車両が旋回する場合の左右の後輪の旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【図18】車両を模式的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0017】
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体フレームBFに懸架する複数の懸架装置4と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
【0018】
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
【0019】
また、車輪2は、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRが全て同じ形状および特性に構成され、それら左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRのトレッドの幅(図1左右方向の寸法)が全て同じ幅に構成されている。
【0020】
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図3参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
【0021】
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
【0022】
懸架装置4は、路面から車輪2を介して車体フレームBFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、左右の前輪2FL,2FRに対応して設けられる懸架装置4FL,4FRと、左右の後輪2RL,2RRに対応して設けられる懸架装置4RL,4RRとを備えている。また、左右の後輪2RL,2RRに対応して設けられる懸架装置4RL,4RRは、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
【0023】
ここで、図2を参照して、懸架装置4RL,4RRの詳細構成について説明する。図2は、懸架装置4RRの正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、懸架装置4RL,4RRの構成はそれぞれ共通であるので、懸架装置4RRを代表例として図2に図示する。
【0024】
懸架装置4RRは、図2に示すように、ショックアブソーバ41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されるナックル43と、駆動力を発生するRRモータ44RRと、そのRRモータ44RRの駆動力を伝達するウォームホイール45及びアーム46と、それらウォームホイール45及びアーム46から伝達されるRRモータ44RRの駆動力によりナックル43に対して揺動駆動される可動プレート47とを主に備えて構成されている。
【0025】
ナックル43は、車輪2を操舵可能に支持するものであり、図2に示すように、上端(図2上側)がショックアブソーバ41に連結されると共に、下端(図2下側)がボールジョイントを介してロアアーム42に連結されている。
【0026】
RRモータ44RRは、可動プレート47に揺動駆動のための駆動力を付与するものであり、DCモータにより構成され、その出力軸44aにはウォーム(図示せず)が形成されている。
【0027】
ウォームホイール45は、RRモータ44RRの駆動力をアーム46に伝達するものであり、RRモータ44RRの出力軸44aに形成されたウォームに噛み合い、かかるウォームと共に食い違い軸歯車対を構成している。
【0028】
アーム46は、ウォームホイール45から伝達されるRRモータ44RRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図2に示すように、一端(図2右側)が第1連結軸48を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図2左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図2上側)に連結されている。
【0029】
可動プレート47は、車輪2を回転可能に支持するものであり、上述したように、上端(図2上側)がアーム46に連結される一方、下端(図2下側)がキャンバ軸50を介してナックル43に揺動可能に軸支されている。
【0030】
上述したように構成される懸架装置4RRによれば、RRモータ44RRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム46の直線運動に変換される。その結果、アーム46が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、車輪2のキャンバ角が調整される。
【0031】
なお、本実施の形態では、各連結軸48,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、第1連結軸48、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置するネガティブキャンバ状態と、回転軸45a、第1連結軸48、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置するポジティブキャンバ状態と、それら第1キャンバ状態と第2キャンバ状態との中間のニュートラルキャンバ状態(図2に示す状態)のいずれかのキャンバ状態となるように車輪2のキャンバ角が調整される。
【0032】
また、本実施の形態では、ネガティブキャンバ状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(車輪2の中心線が垂直線に対して車両1内側に傾いた状態)の所定の角度(本実施の形態では−3°、以下「第1キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。一方、ポジティブキャンバ状態では、車輪2のキャンバ角がプラス方向(車輪2の中心線が垂直線に対して車両1外側に傾いた状態)の所定の角度(本実施の形態では3°)に調整され、車輪2にポジティブキャンバが付与される。これに対し、ニュートラルキャンバ状態(図2に示す状態)では、車輪2のキャンバ角が0°(以下「第2キャンバ角」と称す)に調整される。
【0033】
なお、左右の前輪2FL,2FRに対応して設けられる懸架装置4FL,4FRは、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、図2に示す懸架装置4RRにおいて、RRモータ44RRが省略されている点)を除き、その他の構成は懸架装置4RL,4RRと同一の構成であるので、その説明を省略する。
【0034】
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
【0035】
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
【0036】
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(回転量、回転速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
【0037】
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置44(図3参照)を作動制御する。
【0038】
次いで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
【0039】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図5から図7に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリであり、図3に示すように、第1US限界値マップ72a及び第2US限界値マップ72b、旋回状態閾値メモリ72c、第1キャンバ調整閾値マップ72d及び第2キャンバ調整閾値マップ72eが設けられている。
【0040】
第1US限界値マップ72aは、車両1がコーナー(カーブや交差点など)を旋回する場合に、車両1の構造上あらかじめ設定されているデフォルトのステア特性よりもアンダステアになる車速(車両1の走行速度)の閾値(以下「US限界値」と称す)を記憶するマップである。この第1US限界値マップ72aには、コーナーの半径とUS限界値との関係が記憶されており、その関係は、コーナーの半径が小さくなるほどUS限界値が低くなり、反対に、コーナーの半径が大きくなるほどUS限界値が高くなるように設定されている。
【0041】
第2US限界値マップ72bは、第1US限界値マップ72aと同様に、車両1がコーナーを旋回する場合に、デフォルトのステア特性よりもアンダステアになるUS限界値を記憶するマップである。この第2US限界値マップ72bには、車両1の横GとUS限界値との関係が記憶されており、その関係は、横Gが小さくなるほどUS限界値が高くなり、反対に、横Gが大きくなるほどUS限界値が低くなるように設定されている。
【0042】
旋回状態閾値メモリ72cは、車両1の旋回状態が後述する旋回度増加期、旋回度維持期、旋回度減少期のいずれの状態であるかを判断するための判断基準となるステアリング63の操作速度の閾値を記憶するメモリであり、後述する所定値Vs、Vm、Veが記憶されている。
【0043】
第1キャンバ調整閾値マップ72dは、旋回度減少期の車速がUS限界値より低い場合に、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をどのように調整するかを判断するための判断基準となる車速の閾値であって、第2US限界値マップ72bに記憶されているUS限界値よりも低い閾値(以下「第1閾値」と称す)を記憶するマップである。この第1キャンバ調整閾値マップ72dには、車両1の横Gと第1閾値との関係が記憶されており、その関係は、横Gが小さくなるほど第1閾値が高くなり、反対に、横Gが大きくなるほど第1閾値が低くなるように設定されている。
【0044】
第2キャンバ調整閾値マップ72eは、旋回度減少期の車速がUS限界値より低い場合に、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をどのように調整するかを判断するための判断基準となる車速の閾値であって、第1キャンバ調整閾値マップ72dに記憶されている第1閾値よりも低い閾値(以下「第2閾値」と称す)を記憶するマップである。この第2キャンバ調整閾値マップ72dには、車両1の横Gと第2閾値との関係が記憶されており、その関係は、横Gが小さくなるほど第2閾値が高くなり、反対に、横Gが大きくなるほど第2閾値が低くなるように設定されている。
【0045】
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図3に示すように、旋回度増加期USフラグ73a及び旋回度維持期USフラグ73bが設けられている。
【0046】
旋回度増加期USフラグ73aは、旋回度増加期の車速がUS限界値以上であったか否かを示すフラグである。CPU71は、この旋回度増加期USフラグ73aがオンの場合に、旋回度増加期の車速がUS限界値以上であったと判断し、オフの場合に、旋回度増加期の車速はUS限界値より低かったと判断する。
【0047】
旋回度維持期USフラグ73bは、旋回度維持期の車速がUS限界値以上であったか否かを示すフラグである。CPU71は、この旋回度維持期USフラグ73bがオンの場合に、旋回度維持期の車速がUS限界値以上であったと判断し、オフの場合に、旋回度維持期の車速はUS限界値より低かったと判断する。
【0048】
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
【0049】
キャンバ角調整装置44は、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、懸架装置4RL,4RRの可動プレート47(図2参照)に揺動のための駆動力をそれぞれ付与するRL,RRモータ44RL,44RRと、それら各モータ44RL,44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0050】
加速度センサ装置80は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ80a及び左右方向加速度センサ80bと、それら各加速度センサ80a,80bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0051】
前後方向加速度センサ80aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出するセンサであり、左右方向加速度センサ80bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ80a,80bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
【0052】
CPU71は、加速度センサ装置80から入力される前後方向加速度センサ80a及び左右方向加速度センサ80bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成して車速(車両1の走行速度)を算出する。
【0053】
ジャイロセンサ装置81は、車両1の重心を通る基準軸回りの車両1の回転角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る前後方向軸(図1の矢印F−B方向軸)、左右方向軸(図1の矢印L−R方向軸)、鉛直軸(図1の矢印U−D方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角、いわゆるロール角、ピッチ角、ヨー角をそれぞれ検出するジャイロセンサ81aと、そのジャイロセンサ81aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0054】
また、ジャイロセンサ装置81は、ジャイロセンサ81aの検出結果(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を時間微分して、車両1の重心を通る基準軸回りの車両1(車体フレームBF)の回転角速度、いわゆるロールレート、ピッチレート、ヨーレートを算出する演算回路(図示せず)を備えており、その演算回路による算出結果を出力回路により処理してCPU71に出力可能に構成されている。
【0055】
なお、本実施の形態では、ジャイロセンサ81aがサニャック効果により回転角速度および回転角を検出する光学式ジャイロセンサにより構成されている。但し、他の種類のジャイロセンサを採用することは当然可能である。他の種類のジャイロセンサとしては、例えば、機械式や流体式などのジャイロセンサが例示される。
【0056】
ナビゲーション装置82は、車両1の現在位置および進行先の走行路の道路情報を取得するための装置であり、GPS衛星から電波を受信して車両1の現在位置を取得する現在位置取得部(図示せず)と、道路情報が記憶された地図データを取得する地図データ取得部(図示せず)と、その地図データ取得部により取得した地図データ及び現在位置取得部により取得した車両1の現在位置に基づいて、車両1が走行する進行先の走行路の道路情報を取得する道路情報取得部(図示せず)と、現在位置取得部により取得した車両1の現在位置および道路情報取得部により取得した進行先の走行路の道路情報を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0057】
なお、地図データ取得部により取得される地図データには、少なくともコーナー(カーブや交差点など)の位置やコーナーの半径が道路情報として記憶されており、CPU71は、ナビゲーション装置82から入力される進行先の走行路の道路情報に基づいて、進行先にあるコーナーの位置や半径(車両1の旋回度に関する情報)を事前に把握する。
【0058】
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0059】
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0060】
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63の回転量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0061】
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力される各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62及びステアリング63の操作速度を算出する。
【0062】
図3に示す他の入出力装置90としては、例えば、ターンシグナルランプ(方向指示灯)の作動を検出するセンサ、交差点に設置される車両感応器などが発信する電波を受信して交差点の位置を把握するセンサ等が例示される。
【0063】
次いで、図4を参照して、車両1がコーナーを旋回する場合(ここでは、左旋回する場合)のステアリング63の操作状態と、そのステアリング63の操作状態に基づいて定義される車両1の旋回状態について説明する。図4(a)は、車両1がコーナーを左旋回する場合のステアリング63の操作状態を模式的に示した模式図であり、図4(b)は、車両1がコーナーを左旋回する場合の旋回度増加期、旋回度維持期、旋回度減少期のイメージを模式的に示した模式図である。なお、図4(a)では、ステアリング63の操作量および操作速度を実線および一点鎖線でそれぞれ示していると共に、ステアリング63の操作方向がニュートラル状態(操作量が0の状態)に対して左方向の場合を+で、右方向の場合を−で示している。また、図4(b)の矢印は、車両1の進行方向を示している。
【0064】
直進してきた車両1がコーナーを左旋回する場合、運転者は、まず、ステアリング63をニュートラル状態から左方向に操作してコーナーに進入する。これにより、図4(a)に示すように、ステアリング63の操作速度が0から+方向に増加すると共に、その増加率よりも小さな割合でステアリング63の操作量も0から+方向に増加する。
【0065】
コーナーに進入した後、運転者は、左方向に操作したステアリング63を所定の位置で止めて、ステアリング63の操作量を一定に保ったままコーナーを旋回する。これにより、ステアリング63の操作速度が増加から減少に転じて0になると共に、ステアリング63の操作量が所定の操作量で維持される。
【0066】
その後、運転者は、コーナーの出口でステアリング63を右方向に操作してニュートラル状態とする。これにより、ステアリング63の操作速度が0から−方向に減少すると共に、その減少率よりも小さな割合でステアリング63の操作量も減少する。そして、ステアリング63の操作速度が減少から増加に転じて0になると共に、ステアリング63の操作量も0になる。
【0067】
図4(a)に示すように、本実施の形態では、ステアリング63の操作速度が0から+方向に増加して正の所定値Vsを超えた場合に、車両1が直進状態から旋回状態へ状態変化したと判断する。そして、ステアリング63の操作速度が0から+方向に増加して正の所定値Vsを超えてから、その操作速度が増加から減少に転じて正の所定値Vmよりも小さくなるまでの間の車両1の旋回状態を旋回度増加期とし、ステアリング63の操作速度が正の所定値Vmよりも小さくなってから、その操作速度が0から−方向に減少して負の所定値Veよりも小さくなるまでの間の車両1の旋回状態を旋回度維持期とする。また、ステアリング63の操作速度が負の所定値Veよりも小さくなってから、その操作速度が減少から増加に転じて0になるまでの間の車両1の旋回状態を旋回度減少期とする。これら旋回度増加期、旋回度維持期、旋回度減少期は、図4(b)に示すようなイメージとなる。
【0068】
なお、車両1がコーナーを右旋回する場合のステアリング63の操作状態は、図4(a)において+と−の符号を入れ替えたものとなる。よって、旋回度増加期、旋回度維持期、旋回度減少期を定義する所定値Vs,Vm,Veの値は絶対値とする。但し、所定値Vs,Vm,Veの値は、それぞれ異なる値でも良く、全て同じ値であっても良い。
【0069】
次いで、図5から図7を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図5から図7は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整して、車両1の旋回性能を向上させると共に旋回安定性を確保するためのものである。
【0070】
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、車両1の現在位置を取得すると共に(S1)、進行先(例えば、50m先)の走行路の道路情報を取得し(S2)、進行先にコーナー(カーブや交差点など)が存在するか否かを判断する(S3)。その結果、進行先にコーナーは存在しないと判断される場合には(S3:No)、このキャンバ制御処理を終了する。
【0071】
一方、進行先にコーナーが存在すると判断される場合には(S3:Yes)、そのコーナーの半径を取得し(S4)、取得したコーナーの半径に対応するUS限界値を第1US限界値マップ72aから取得する(S5)。なお、S1、S2及びS4の処理は、上述したように、ナビゲーション装置82を用いて行われる。
【0072】
次いで、ステアリングセンサ装置63aの検出結果(ステアリング63の操作量)に基づいてステアリング63の操作速度を算出し(S6)、その算出した操作速度が所定値Vsを超えたか否かを判断する(S7)。その結果、ステアリング63の操作速度は所定値Vsを超えていないと判断される場合には(S7:No)、ステアリング63の操作速度が所定値Vsを超えたと判断されるまでS6及びS7の処理を繰り返し実行する。
【0073】
一方、ステアリング63の操作速度が所定値Vsを超えたと判断される場合(S7:Yes)、即ち、車両1が直進状態から旋回状態へ状態変化したと判断される場合には、次いで、加速度センサ装置80の検出結果(前後G、横G)に基づいて車速を算出し(S8)、その算出した車速がS5の処理で取得したUS限界値以上であるか否かを判断する(S9)。その結果、車速はUS限界値より低いと判断される場合には(S9:No)、旋回度増加期USフラグ73aをオフして(S10)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第2キャンバ角に調整する(S11)。即ち、旋回内輪のキャンバ角と旋回外輪のキャンバ角とを等しくする。これにより、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストと旋回外輪に発生するキャンバスラストとを均等にして、車両1にヨーモーメントが作用するのを防止することができる。よって、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0074】
一方、S9の処理の結果、車速がUS限界値以上であると判断される場合(S9:Yes)、即ち、ステア特性がアンダステアになる恐れがあると判断される場合には、旋回度増加期USフラグ73aをオンして(S12)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する(S13)。即ち、旋回内輪のキャンバ角を旋回外輪のキャンバ角よりもネガティブキャンバ方向へ大きくする。これにより、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストを旋回外輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させることができる。よって、アンダステアを抑制することができる。同時に、旋回度増加期の回頭性を向上させることができる。
【0075】
S11又はS13の処理を実行した後は、再び、ステアリングセンサ装置63aの検出結果(ステアリング63の操作量)に基づいてステアリング63の操作速度を算出し(S14)、その算出した操作速度が所定値Vmよりも小さくなったか否かを判断する(S15)。その結果、ステアリング63の操作速度は所定値Vmよりも小さくなっていないと判断される場合には(S15:No)、ステアリング63の操作速度が所定値Vmよりも小さくなったと判断されるまでS14及びS15の処理を繰り返し実行する。
【0076】
一方、ステアリング63の操作速度が所定値Vmよりも小さくなったと判断される場合(S15:Yes)、即ち、車両1の旋回状態が旋回度増加期から旋回度維持期へ遷移したと判断される場合には、次いで、加速度センサ装置80を用いて車両1の横Gを検出し(S16)、その検出した横Gに対応するUS限界値を第2US限界値マップ72bから取得すると共に(S17)、加速度センサ装置80の検出結果(前後G、横G)に基づいて車速を算出し(S18)、その算出した車速がS17の処理で取得したUS限界値以上であるか否かを判断する(S19)。その結果、車速がUS限界値以上であると判断される場合(S19:Yes)、即ち、ステア特性がアンダステアになる恐れがあると判断される場合には、旋回度維持期USフラグ73bをオンすると共に(S20)、旋回度増加期USフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S21)、旋回度増加期USフラグ73aがオフであると判断される場合には(S21:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する(S22)。即ち、旋回度増加期USフラグ73aがオフであると判断される場合には(S21:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角がいずれも第2キャンバ角に調整されているので、旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、旋回内輪のキャンバ角を旋回外輪のキャンバ角よりもネガティブキャンバ方向へ大きくする。これにより、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストを旋回外輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させることができる。よって、アンダステアを抑制することができる。
【0077】
一方、S21の処理の結果、旋回度増加期USフラグ73aがオンであると判断される場合には(S21:Yes)、既に、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されていると共に旋回外輪のキャンバ角が第2キャンバ角に調整されているので、S22の処理をスキップして、S26の処理に移行する。即ち、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の状態を維持する。これにより、旋回度増加期に引き続き、アンダステアを抑制することができる。
【0078】
これに対し、S19の処理の結果、車速はUS限界値より低いと判断される場合には(S19:No)、旋回度維持期USフラグ73bをオフすると共に(S23)、旋回度増加期USフラグ73aがオンであるか否かを判断し(S24)、旋回度増加期USフラグ73aがオンであると判断される場合には(S24:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する(S25)。即ち、旋回度増加期USフラグ73aがオンであると判断される場合には(S24:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されていると共に旋回外輪が第2キャンバ角に調整されているので、旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して、その絶対値を小さくする。これにより、旋回度増加期に車両1に作用させたヨーモーメントを小さくすることができる。よって、車速がUS限界値より低くなったにも関わらず、旋回度増加期に引き続きステア特性をオーバステア傾向にしてしまうことを回避して、オーバステアになるのを防止することができる。また、旋回内輪のキャンバ角と旋回外輪のキャンバ角とを等しくすることで、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストと旋回外輪に発生するキャンバスラストとを均等にして、車両1にヨーモーメントが作用するのを防止することができる。よって、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0079】
一方、S24の処理の結果、旋回度増加期USフラグ73aがオフであると判断される場合には(S24:No)、既に、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角がいずれも第2キャンバ角に調整されているので、S25の処理をスキップして、S26の処理に移行する。即ち、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の状態を維持する。これにより、旋回度増加期に引き続き、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0080】
S22又はS25の処理を実行した後は、再び、ステアリングセンサ装置63aの検出結果(ステアリング63の操作量)に基づいてステアリング63の操作速度を算出し(S26)、その算出した操作速度が所定値Veよりも小さくなったか否かを判断する(S27)。その結果、ステアリング63の操作速度は所定値Veよりも小さくなっていないと判断される場合には(S27:No)、ステアリング63の操作速度が所定値Veよりも小さくなったと判断されるまでS26及びS27の処理を繰り返し実行する。
【0081】
一方、ステアリング63の操作速度が所定値Veよりも小さくなったと判断される場合(S27:Yes)、即ち、車両1の旋回状態が旋回度維持期から旋回度減少期へ遷移したと判断される場合には、次いで、加速度センサ装置80を用いて車両1の横Gを検出し(S28)、その検出した横Gに対応するUS限界値を第2US限界値マップ72bから取得すると共に(S29)、加速度センサ装置80の検出結果(前後G、横G)に基づいて車速を算出し(S30)、その算出した車速がS29の処理で取得したUS限界値以上であるか否かを判断する(S31)。その結果、車速がUS限界値以上であると判断される場合(S31:Yes)、即ち、ステア特性がアンダステアになる恐れがあると判断される場合には、旋回度維持期USフラグ73bがオンであるか否かを判断し(S32)、旋回度維持期USフラグ73bがオフであると判断される場合には(S32:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して(S33)、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回度維持期USフラグ73bがオフであると判断される場合には(S32:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角がいずれも第2キャンバ角に調整されているので、旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、旋回内輪のキャンバ角を旋回外輪のキャンバ角よりもネガティブキャンバ方向へ大きくする。これにより、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストを旋回外輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させることができる。よって、アンダステアを抑制することができる。
【0082】
一方、S32の処理の結果、旋回度維持期USフラグ73bがオンであると判断される場合には(S32:Yes)、既に、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されていると共に旋回外輪のキャンバ角が第2キャンバ角に調整されているので、S33の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の状態を維持する。これにより、旋回度維持期に引き続き、アンダステアを抑制することができる。
【0083】
これに対し、S31の処理の結果、車速はUS限界値より低いと判断される場合には(S31:No)、旋回度維持期USフラグ73bがオンであるか否かを判断し(S34)、旋回度維持期USフラグ73bがオンであると判断される場合には(S34:Yes)、S28の処理で検出した車両1の横Gに対応する第1閾値を第1キャンバ調整閾値マップ72dから取得すると共に(S35)、S30の処理で算出した車速が第1閾値以上であるか否かを判断する(S36)。その結果、車速が第1閾値以上であると判断される場合には(S36:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して(S37)、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回度維持期USフラグ73bがオンであると判断される場合には(S34:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されていると共に旋回外輪が第2キャンバ角に調整されているので、旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して、その絶対値を小さくする。これにより、旋回度維持期に車両1に作用させたヨーモーメントを小さくすることができる。よって、車速がUS限界値より低くなったにも関わらず、旋回度維持期に引き続きステア特性をオーバステア傾向にしてしまうことを回避して、オーバステアになるのを防止することができる。また、旋回内輪のキャンバ角と旋回外輪のキャンバ角とを等しくすることで、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストと旋回外輪に発生するキャンバスラストとを均等にして、車両1にヨーモーメントが作用するのを防止することができる。よって、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0084】
一方、S36の処理の結果、車速は第1閾値より低いと判断される場合には(S36:No)、S28の処理で検出した車両1の横Gに対応する第2閾値を第2キャンバ調整閾値マップ72eから取得すると共に(S38)、S30の処理で算出した車速が第2閾値以上であるか否かを判断する(S39)。その結果、車速が第2閾値以上であると判断される場合には(S39:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して(S40)、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回度維持期USフラグ73bがオンであると判断される場合には(S34:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されていると共に旋回外輪が第2キャンバ角に調整されているので、旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、その絶対値を大きくする。これにより、旋回度維持期に車両1に作用させたヨーモーメントを小さくすることができる。よって、車速がUS限界値より低くなったにも関わらず、旋回度維持期に引き続きステア特性をオーバステア傾向にしてしまうことを回避して、オーバステアになるのを防止することができる。また、旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第1キャンバ角に調整することで、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストと旋回外輪に発生するキャンバスラストとを利用して、左右の後輪2RL,2RRのグリップ性能を向上させることができる。その結果、ステア特性を軽くアンダステア傾向にすることができる。よって、旋回度減少期の車速が比較的低く、旋回度維持期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が残り易い場合には、その影響を収束させて、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0085】
一方、S39の処理の結果、車速は第2閾値より低いと判断される場合には(S39:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して(S41)、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回外輪のキャンバ角を旋回内輪のキャンバ角よりもネガティブ方向へ大きくする。これにより、左右の後輪2RL,2RRの旋回外輪に発生するキャンバスラストを旋回内輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をアンダステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させることができる。よって、旋回度減少期の車速が極めて低く、旋回度維持期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が強く残り易い場合には、その影響を打ち消して、オーバステアになるのを防止することができる。
【0086】
これに対し、S34の処理の結果、旋回度維持期USフラグ73bがオフであると判断される場合には(S34:No)、旋回度維持期にステア特性をオーバステア傾向にしていないので、S35以降の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回度維持期USフラグ73bがオフであると判断される場合には(S34:No)、既に、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角がいずれも第2キャンバ角に調整されているので、そのキャンバ角の状態を維持する。これにより、旋回度維持期に引き続き、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0087】
以上説明したように、本実施の形態によれば、旋回度増加期、旋回度維持期、旋回度減少期のそれぞれにおいて、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角を車速に応じて調整することで、車両1の旋回安定性を確保すると共に旋回性能を向上させることができる。
【0088】
ここで、図8から図11を参照して、車両1が旋回する場合の左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角の調整方法について、実際に行われる可能性のある4つの運転パターンを例に挙げて説明する。
【0089】
まず、図8を参照して、第1の運転パターンについて説明する。図8は、第1の運転パターンで車両1が旋回する場合の左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【0090】
図8に示すように、第1の運転パターンとは、コーナー進入時の車速が速く、旋回度増加期の車速がUS限界値を超えていると共に、コーナー進入後も減速せず、旋回度維持期の車速もUS限界値を超えており、コーナーの出口でようやく減速して、旋回度減少期の車速がUS限界値より低くなるといった運転パターンである。
【0091】
この場合には、図5から図7に示すキャンバ制御処理において、S1〜S9(S9:Yes)→S12〜S19(S19:Yes)→S20,S21(S21:Yes)→S26〜S31(S31:No)→S34(S34:Yes)→S35,S36の経路で各処理を実行する。また、S36の処理を実行した後は、S36(S36:Yes)→S37の経路、又は、S36(S36:No)→S38,S39の経路で各処理を実行し、後者の場合には、更に、S39(S39:Yes)→S40の経路、又は、S39(S39:No)→S41の経路で各処理を実行する。
【0092】
即ち、旋回度増加期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する。また、旋回度維持期においても、そのキャンバ角の状態を維持する。これにより、コーナー進入時の車速が速く、旋回度増加期の車速がUS限界値を超えていても、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させて、アンダステアを抑制することができる。同時に、コーナー進入時の回頭性を向上させることができる。更に、コーナー進入後も減速せず、旋回度維持期の車速がUS限界値を超えていても、旋回度増加期に引き続き、アンダステアを抑制することができる。
【0093】
また、旋回度減少期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に維持する。又は、旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に維持すると共に旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する。或いは、旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する。これにより、コーナーの出口で減速して、車速がUS限界値より低くなったにも関わらず、旋回度維持期に引き続きステア特性をオーバステア傾向にしてしまうことを回避して、オーバステアになるのを防止することができる。また、旋回度減少期の車速が比較的低く、旋回度維持期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が残り易い場合には、その影響を収束させて、車両1の旋回安定性を確保することができる。更に、旋回度減少期の車速が極めて低く、旋回度維持期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が強く残り易い場合には、その影響を打ち消して、オーバステアになるのを防止することができる。なお、旋回度減少期に左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をどのように調整するかは、上述したように、旋回度減少期の車速に応じて決定される。
【0094】
なお、図5から図7に示すキャンバ制御処理において、上述した経路で実行する処理以外の処理については、必ずしも図5から図7に示す処理に限られるものではなく、他の処理を実行するように構成しても良い。即ち、例えば、旋回度増加期の車速がUS限界値より低いと判断される場合、図5から図7に示すキャンバ制御処理では、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第2キャンバ角に調整するが、これに代えて、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第1キャンバ角に調整しても良い。
【0095】
次いで、図9を参照して、第2の運転パターンについて説明する。図9は、第2の運転パターンで車両1が旋回する場合の左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【0096】
図9に示すように、第2の運転パターンとは、コーナー進入時の車速が速く、旋回度増加期の車速がUS限界値を超えているが、コーナー進入後に減速して、旋回度維持期および旋回度減少期の車速がUS限界値より低くなるといった運転パターンである。
【0097】
この場合には、図5から図7に示すキャンバ制御処理において、S1〜S9(S9:Yes)→S12〜S19(S19:No)→S23,S24(S24:Yes)→S25〜S31(S31:No)→S34(S34:No)の経路で各処理を実行する。
【0098】
即ち、旋回度増加期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する。これにより、コーナー進入時の車速が速く、旋回度増加期の車速がUS限界値を超えていても、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させて、アンダステアを抑制することができる。同時に、コーナー進入時の回頭性を向上させることができる。
【0099】
また、旋回度維持期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に維持する。更に、旋回度減少期においても、そのキャンバ角の状態を維持する。これにより、コーナー進入後に減速して、車速がUS限界値より低くなったにも関わらず、旋回度増加期に引き続きステア特性をオーバステア傾向にしてしまうことを回避して、オーバステアになるのを防止することができる。また、旋回内輪のキャンバ角と旋回外輪のキャンバ角とを等しくすることで、車両1にヨーモーメントが作用するのを防止して、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0100】
なお、図5から図7に示すキャンバ制御処理において、上述した経路で実行する処理以外の処理については、必ずしも図5から図7に示す処理に限られるものではなく、他の処理を実行するように構成しても良い。即ち、例えば、旋回度増加期の車速がUS限界値より低いと判断される場合、図5から図7に示すキャンバ制御処理では、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第2キャンバ角に調整するが、これに代えて、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第1キャンバ角に調整しても良い。
【0101】
次いで、図10を参照して、第3の運転パターンについて説明する。図10は、第3の運転パターンで車両1が旋回する場合の左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【0102】
図10に示すように、第3の運転パターンとは、旋回度増加期および旋回度維持期の車速はUS限界値より低いが、コーナーの出口で加速して、旋回度減少期の車速がUS限界値を超えるといった運転パターンである。
【0103】
この場合には、図5から図7に示すキャンバ制御処理において、S1〜S9(S9:No)→S10,S11,S14〜S19(S19:No)→S23,S24(S24:No)→S26〜S31(S31:Yes)→S32(S32:No)→S33の経路で各処理を実行する。
【0104】
即ち、旋回度増加期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第2キャンバ角に調整する。更に、旋回度維持期においても、そのキャンバ角の状態を維持する。これにより、旋回内輪のキャンバ角と旋回外輪のキャンバ角とを等しくすることで、車両1にヨーモーメントが作用するのを防止して、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0105】
また、旋回度減少期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に維持する。これにより、コーナーの出口で加速して、車速がUS限界値を超えていても、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させて、アンダステアを抑制することができる。
【0106】
なお、図5から図7に示すキャンバ制御処理において、上述した経路で実行する処理以外の処理については、必ずしも図5から図7に示す処理に限られるものではなく、他の処理を実行するように構成しても良い。即ち、例えば、旋回度増加期の車速がUS限界値以上であると判断される場合、図5から図7に示すキャンバ制御処理では、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整するが、これに代えて、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第1キャンバ角に調整しても良い。
【0107】
次いで、図11を参照して、第4の運転パターンについて説明する。図11は、第4の運転パターンで車両1が旋回する場合の左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【0108】
図11に示すように、第4の運転パターンとは、コーナー進入時の車速が速く、旋回度増加期の車速がUS限界値を超えているが、コーナー進入後に減速して、旋回度維持期の車速がUS限界値より低くなり、コーナーの出口で加速して、旋回度減少期の車速がUS限界値を超えるといった運転パターンである。
【0109】
この場合には、図5から図7に示すキャンバ制御処理において、S1〜S9(S9:Yes)→S12〜S19(S19:No)→S23,S24(S24:Yes)→S25〜S31(S31:Yes)→S32(S32:No)→S33の経路で各処理を実行する。
【0110】
即ち、旋回度増加期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する。これにより、コーナー進入時の車速が速く、旋回度増加期の車速がUS限界値を超えていても、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させて、アンダステアを抑制することができる。同時に、コーナー進入時の回頭性を向上させることができる。
【0111】
また、旋回度維持期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に維持する。これにより、コーナー進入後に減速して、車速がUS限界値より低くなったにも関わらず、旋回度増加期に引き続きステア特性をオーバステア傾向にしてしまうことを回避して、オーバステアになるのを防止することができる。
【0112】
更に、旋回度減少期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に維持する。これにより、コーナーの出口で加速することで、車速がUS限界値を超えていても、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させて、アンダステアを抑制することができる。
【0113】
なお、図5から図7に示すキャンバ制御処理において、上述した経路で実行する処理以外の処理については、必ずしも図5から図7に示す処理に限られるものではなく、他の処理を実行するように構成しても良い。即ち、例えば、旋回度増加期の車速がUS限界値より低いと判断される場合、図5から図7に示すキャンバ制御処理では、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第2キャンバ角に調整するが、これに代えて、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第1キャンバ角に調整しても良い。
【0114】
また、図5から図7に示すキャンバ制御処理において、請求項1記載の旋回開始判断手段としてはS7の処理が、維持期遷移判断手段としてはS15の処理が、減少期遷移判断手段としてはS27の処理が、増加期車速判断手段としてはS9の処理が、増加期キャンバ調整手段としてはS13の処理が、減速判断手段としてはS19の処理が、維持期キャンバ調整手段としてはS25の処理が、減少期車速判断手段としてはS31の処理が、減少期キャンバ調整手段としてはS33の処理が、それぞれ該当する。
【0115】
次いで、図12から図17を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、旋回度維持期の車速がUS限界値より低い場合に、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第2キャンバ角に調整したが、第2実施の形態では、旋回度維持期の車速に応じて左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角を調整する。
【0116】
なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。また、第2実施の形態では、第1実施の形態における車両1を車両用制御装置200により制御するものとして説明する。
【0117】
図12は、第2実施の形態における車両用制御装置200の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置200は、図12に示すように、第1実施の形態における車両用制御装置100のROM72及びRAM73に代えて、ROM272及びRAM273を備えている。
【0118】
ROM272は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図13から図16に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリであり、図12に示すように、第1US限界値マップ72a及び第2US限界値マップ72b、旋回状態閾値メモリ72c、第1キャンバ調整閾値マップ72d及び第2キャンバ調整閾値マップ72e並びに第3キャンバ調整閾値マップ272fが設けられている。
【0119】
第3キャンバ調整閾値マップ272fは、旋回度維持期の車速がUS限界値より低い場合に、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をどのように調整するかを判断するための判断基準となる車速の閾値であって、第2US限界値マップ72bに記憶されているUS限界値よりも低い閾値(以下「第3閾値」と称す)を記憶するマップである。この第3キャンバ調整閾値マップ272fには、車両1の横Gと第3閾値との関係が記憶されており、その関係は、横Gが小さくなるほど第3閾値が高くなり、反対に、横Gが大きくなるほど第3閾値が低くなるように設定されている。
【0120】
RAM273は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図12に示すように、旋回度増加期USフラグ73a、旋回度維持期USフラグ73b、旋回度維持期車速フラグ273cが設けられている。
【0121】
旋回度維持期車速フラグ273cは、旋回度維持期の車速が第3閾値以上であったか否かを示すフラグである。CPU71は、この旋回度維持期車速フラグ273cがオンの場合に、旋回度維持期の車速が第3閾値以上であったと判断し、オフの場合に、旋回度維持期の車速は第3閾値より低かったと判断する。
【0122】
次いで、図13から図16を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図13から図16は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整して、車両1の旋回性能を向上させると共に旋回安定性を確保するためのものである。
【0123】
第2実施の形態におけるキャンバ制御処理では、S24の処理の結果、旋回度増加期USフラグ73aがオンであると判断される場合には(S24:Yes)、S16の処理で検出した車両1の横Gに対応する第3閾値を第3キャンバ調整閾値マップ272fから取得すると共に(S201)、S18の処理で算出した車速が第3閾値以上であるか否かを判断する(S202)。その結果、車速が第3閾値以上であると判断される場合には(S202:Yes)、旋回度維持期車速フラグ273cをオンして(S203)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する(S25)。即ち、旋回度増加期USフラグ73aがオンであると判断される場合には(S24:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されていると共に旋回外輪のキャンバ角が第2キャンバ角に調整されているので、旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して、その絶対値を小さくする。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、オーバステアになるのを防止することができると共に車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0124】
一方、S202の処理の結果、車速が第3閾値より低いと判断される場合には(S202:No)、旋回度維持期車速フラグ273cをオフして(S204)、左右の後輪2RL,2RRの旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する(S205)。即ち、旋回度増加期USフラグ73aがオンであると判断される場合には(S24:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されていると共に旋回外輪が第2キャンバ角に調整されているので、旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、その絶対値を大きくする。これにより、旋回度増加期に車両1に作用させたヨーモーメントを小さくすることができる。よって、車速がUS限界値より低くなったにも関わらず、旋回度増加期に引き続きステア特性をオーバステア傾向にしてしまうことを回避して、オーバステアになるのを防止することができる。また、旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第1キャンバ角に調整することで、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストと旋回外輪に発生するキャンバスラストとを利用して、左右の後輪2RL,2RRのグリップ性能を向上させることができる。その結果、ステア特性を軽くアンダステア傾向にすることができる。よって、旋回度維持期の車速が低く、旋回度増加期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が残り易い場合には、その影響を収束させて、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0125】
また、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理では、S32の処理の結果、旋回度維持期USフラグ73bがオフであると判断される場合には(S32:No)、旋回度維持期車速フラグ273cがオンであるか否かを判断し(S206)、旋回度維持期車速フラグ273cがオンであると判断される場合には(S206:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して(S33)、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回度維持期車速フラグ273cがオンであると判断される場合には(S206:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角がいずれも第2キャンバ角に調整されているので、旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整して、旋回内輪のキャンバ角を旋回外輪のキャンバ角よりもネガティブキャンバ方向へ大きくする。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、アンダステアを抑制することができる。
【0126】
一方、S206の処理の結果、旋回度維持期車速フラグ273cがオフであると判断される場合には(S206:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して(S207)、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回度維持期車速フラグ273cがオフであると判断される場合には(S206:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角がいずれも第1キャンバ角に調整されているので、旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して、旋回内輪のキャンバ角を旋回外輪のキャンバ角よりもネガティブキャンバ方向へ大きくする。これにより、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストを旋回外輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させることができる。よって、アンダステアを抑制することができる。
【0127】
また、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理では、S34の処理の結果、旋回度維持期USフラグ73bがオフであると判断される場合には(S34:No)、旋回度維持期車速フラグ273cがオンであるか否かを判断し(S208)、旋回度維持期車速フラグ273cがオンであると判断される場合には(S208:Yes)、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回度維持期車速フラグ273cがオンであると判断される場合には(S208:Yes)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角がいずれも第2キャンバ角に調整されているので、そのキャンバ角の状態を維持する。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、旋回度維持期に引き続き、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0128】
一方、S208の処理の結果、旋回度維持期車速フラグ273cがオフであると判断される場合には(S208:No)、S28の処理で検出した車両1の横Gに対応する第2閾値を第2キャンバ調整閾値マップ72eから取得すると共に(S209)、S30の処理で算出した車速が第2閾値以上であるか否かを判断する(S210)。その結果、車速が第2閾値以上であると判断される場合には(S210:Yes)、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回度維持期車速フラグ273cがオフであると判断される場合には(S208:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角がいずれも第1キャンバ角に調整されているので、そのキャンバ角の状態を維持する。これにより、旋回度減少期の車速が比較的低く、旋回度増加期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が旋回度維持期を経ても残り易い場合には、旋回度維持期に引き続き、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0129】
一方、S210の処理の結果、車速が第2閾値以上より低いと判断される場合には(S210:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して(S211)、このキャンバ制御処理を終了する。即ち、旋回度維持期車速フラグ273cがオフであると判断される場合には(S208:No)、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角がいずれも第1キャンバ角に調整されているので、旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整して、旋回外輪のキャンバ角を旋回内輪のキャンバ角よりもネガティブキャンバ方向へ大きくする。これにより、左右の後輪2RL,2RRの旋回外輪に発生するキャンバスラストを旋回内輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をアンダステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させることができる。よって、旋回度減少期の車速が低く、旋回度増加期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が旋回度維持期を経ても強く残り易い場合には、その影響を打ち消して、オーバステアになるのを防止することができる。
【0130】
ここで、図17を参照して、第5の運転パターンで車両1が旋回する場合の左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角の調整方法について説明する。図17は、第5の運転パターンで車両1が旋回する場合の左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角の調整方法を模式的に示した模式図である。
【0131】
図17に示すように、第5の運転パターンとは、コーナー進入時の車速が速く、旋回度増加期の車速がUS限界値を超えているが、コーナー進入後に減速して、旋回度維持期の車速がUS限界値より低く且つ第3閾値より低くなると共に、旋回度減少期の車速もUS限界値より低くなるといった運転パターンである。
【0132】
この場合には、図13から図16に示すキャンバ制御処理において、S1〜S9(S9:Yes)→S12〜S19(S19:No)→S23,S24(S24:Yes)→S201,S202(S202:No)→S204,S205,S26〜S31(S31:No)→S34(S34:No)→S208(S208:No)→S209,S210の経路で各処理を実行する。また、S210の処理を実行した後は、S210(S210:Yes)の経路、又は、S210(S210:No)→S211の経路で各処理を実行する。
【0133】
即ち、旋回度増加期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整する。これにより、コーナー進入時の車速が速く、車速がUS限界値を超えていても、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させて、アンダステアを抑制することができる。同時に、コーナー進入時の回頭性を向上させることができる。
【0134】
また、旋回度維持期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に維持すると共に旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する。これにより、コーナー進入後に減速して、車速がUS限界値より低くなったにも関わらず、旋回度増加期に引き続きステア特性をオーバステア傾向にしてしまうことを回避して、オーバステアになるのを防止することができる。また、旋回度維持期の車速が第3閾値より低く、旋回度増加期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が残り易いとしても、その影響を収束させて、車両1の旋回安定性を確保することができる。
【0135】
更に、旋回度減少期において、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第1キャンバ角に維持する。又は、旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に維持する。これにより、旋回度減少期の車速が比較的低く、旋回度増加期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が旋回度維持期を経ても残り易い場合には、旋回度維持期に引き続き、車両1の旋回安定性を確保することができる。更に、旋回度減少期の車速が極めて低く、旋回度増加期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が旋回度維持期を経ても強く残り易い場合には、その影響を打ち消して、オーバステアになるのを防止することができる。なお、旋回度減少期に左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をどのように調整するかは、上述したように、旋回度減少期の車速に応じて決定される。
【0136】
なお、図13から図16に示すキャンバ制御処理において、上述した経路で実行する処理以外の処理については、必ずしも図13から図16に示す処理に限られるものではなく、他の処理を実行するように構成しても良い。即ち、例えば、旋回度増加期の車速がUS限界値より低いと判断される場合、図13から図16に示すキャンバ制御処理では、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第2キャンバ角に調整するが、これに代えて、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第1キャンバ角に調整しても良い。
【0137】
また、図13から図16に示すキャンバ制御処理において、請求項1記載の旋回開始判断手段としてはS7の処理が、維持期遷移判断手段としてはS15の処理が、減少期遷移判断手段としてはS27の処理が、増加期車速判断手段としてはS9の処理が、増加期キャンバ調整手段としてはS13の処理が、減速判断手段としてはS19の処理が、維持期キャンバ調整手段としてはS25の処理が、減少期車速判断手段としてはS31の処理が、減少期キャンバ調整手段としてはS33の処理が、それぞれ該当する。
【0138】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0139】
上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態で説明した第1キャンバ角および第2キャンバ角の値は任意に設定することができる。
【0140】
上記実施の形態では、旋回度増加期または旋回度維持期あるいは旋回度減少期の車速がUS限界値以上である場合に、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪を第2キャンバ角に調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角をプラス方向の所定の角度(ポジティブキャンバ状態)に調整するように構成しても良い。この場合には、旋回外輪のキャンバ角を旋回内輪のキャンバ角よりもポジティブキャンバ方向へ大きくすることで、左右の後輪2RL,2RRの旋回外輪に発生するキャンバスラストを旋回内輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をオーバステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させることができる。よって、上記実施の形態の場合と同様に、アンダステアを抑制することができる。また、この場合には、旋回内輪に対して接地荷重が高くなる旋回外輪のキャンバ角を調整することで、車両1にヨーモーメントを確実に作用させて、アンダステアを抑制することができる。
【0141】
上記実施の形態では説明を省略したが、旋回度増加期または旋回度維持期あるいは旋回度減少期の車速がUS限界値以上である場合に、その車速が所定の閾値以上であるか否かを判断し、車速が所定の閾値以上であると判断される場合には、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角をプラス方向の所定の角度(ポジティブキャンバ状態)に調整する一方、車速が所定の閾値より低いと判断される場合には、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整するように構成しても良い。これにより、車速が所定の閾値以上であると判断される場合には、旋回内輪に対して接地荷重が高くなる旋回外輪のキャンバ角を調整することで、車両1にヨーモーメントを確実に作用させて、アンダステアを抑制することができる。よって、車速に応じてアンダステアを確実に抑制することができる。
【0142】
上記実施の形態では、旋回度減少期の車速がUS限界値より低く且つ第2閾値より低い場合に、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪を第1キャンバ角に調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角をプラス方向の所定の角度(ポジティブキャンバ状態)に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整するように構成しても良い。この場合には、旋回内輪のキャンバ角を旋回外輪のキャンバ角よりもポジティブキャンバ方向へ大きくすることで、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪に発生するキャンバスラストを旋回外輪に発生するキャンバスラストよりも大きくして、ステア特性をアンダステア傾向にするためのヨーモーメントを車両1に作用させることができる。よって、上記実施の形態の場合と同様に、旋回度減少期の車速が極めて低く、旋回度維持期にステア特性をオーバステア傾向にした影響が強く残り易い場合でも、オーバステアになるのを防止することができる。
【0143】
上記実施の形態では、旋回度減少期の車速がUS限界値より低い場合に、その車速に応じて3つのパターンで左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、旋回度減少期の車速に関わらず1のパターンで左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するように構成しても良い。即ち、例えば、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整しても良い。或いは、旋回度減少期の車速に応じて3つのパターンの内のいずれか2つのパターンで左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するように構成しても良い。即ち、例えば、旋回度減少期の車速がUS限界値より低い場合に、その車速が第1閾値以上であるか否かについては判断せず、第2閾値以上であるか否かのみを判断し、車速が第2閾値以上であると判断される場合には、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第2キャンバ角に調整する一方、車速が第2閾値より低いと判断される場合には、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪のキャンバ角を第2キャンバ角に調整すると共に旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整しても良い。
【0144】
上記実施の形態では、第1から第5の運転パターンで車両1が旋回する場合に、図5から図7又は図13から図16に示すキャンバ制御処理において、どのような経路で各処理を実行するかを説明したが、その説明した経路で実行する処理以外の処理については、必ずしも図5から図7又は図13から図16に示す処理に限られるものではなく、他の処理を実行するように構成しても良い。即ち、例えば、第1の運転パターンで旋回度増加期の車速がUS限界値より低いと判断される場合、上記実施の形態では、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第2キャンバ角に調整するが、これに代えて、左右の後輪2RL,2RRの旋回内輪および旋回外輪のキャンバ角をいずれも第1キャンバ角やプラス方向の所定の角度(ポジティブキャンバ状態)に調整しても良い。
【0145】
上記実施の形態では、旋回度増加期のUS限界値を取得する方法として、ナビゲーション装置82により進行先の走行路の道路情報を取得すると共に、進行先にコーナーが存在する場合にはコーナーの半径を取得し、その取得したコーナーの半径に対応するUS限界値を第1US限界値マップ72aから取得する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、旋回度維持期および旋回度減少期のUS限界値を取得する方法と同様に、ナビゲーション装置82を使用せず、車両1の横Gを検出して、その横Gに対応するUS限界値を第2限界値マップ72bから取得するように構成しても良い。但し、旋回度増加期のUS限界値を取得する方法としては、上記実施の形態で説明したように、コーナーの半径に対応するUS限界値を第1US限界値マップ72aから取得する方法が好ましい。この場合には、車両1がコーナーに進入する前に予めUS限界値を取得することができるので、旋回度増加期における左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角の調整を早期に行うことができる。
【0146】
上記実施の形態では、ステアリング63の操作速度に基づいて、車両1の旋回状態が旋回度増加期、旋回度維持期、旋回度減少期のいずれの状態であるかを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の方法で旋回度増加期、旋回度維持期、旋回度減少期のいずれの状態であるかを判断するように構成しても良い。他の方法としては、例えば、ステアリング63の操作量や車両1の横G、或いは、ナビゲーション装置82により取得される車両1の現在位置および進行先の走行路の道路情報が例示される。
【0147】
判断方法がステアリング63の操作量の場合には、ステアリング63の操作速度が0から+方向に増加(又は、−方向に減少)して所定値|θ|を超えた場合に、車両1が直進状態から旋回状態へ状態変化したと判断する。そして、ステアリング63の操作量が0から+方向に増加(又は、−方向に減少)して所定値|θ|を超えてから、その操作量の時間微分値が正の所定値θ1´よりも小さくなるまでの間の車両1の旋回状態を旋回度増加期とし、ステアリング63の操作量の時間微分値が正の所定値θ1´よりも小さくなってから、その操作量の時間微分値が負の所定値θ2´よりも小さくなるまでの間の車両1の旋回状態を旋回度維持期とする。また、ステアリング63の操作量の時間微分値が負の所定値θ2´よりも小さくなってから、その操作量が0になるまでの間の車両1の旋回状態を旋回度減少期とする。
【0148】
判断方法が、ナビゲーション装置82により取得される車両1の現在位置および進行先の走行路の道路情報の場合には、車両1の現在位置がコーナーの入口から所定の距離だけ旋回した所定位置Pm達するまでの間の車両1の旋回状態を旋回度増加期とし、車両1の現在位置が所定位置Pmから所定の距離だけ旋回した所定位置Peに達するまでの間の車両1の旋回状態を旋回度維持期とする。また、車両1の現在位置が所定位置Peからコーナーの出口に達するまでの間の車両1の旋回状態を旋回度減少期とする。
【0149】
上記実施の形態では、旋回度維持期の車速がUS限界値以上であるか否かを判断し、その判断結果に応じたパターンで左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の方法で左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をいずれのパターンに調整するかを判断するように構成しても良い。他の方法としては、例えば、車両1の前後G、ブレーキペダル62の操作量または車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRへの動力伝達の回転数(速度)を変速させるために運転者により操作される変速機(図示せず)の操作に基づく車両1の減速度が例示される。
【0150】
判断方法が、車両1の前後Gに基づく車両1の減速度の場合には、図5から図7又は図13から図16に示すキャンバ制御処理において、S16からS19の処理に代えて、車両1の前後Gを検出すると共に、その検出した前後Gが減速方向の所定の閾値以上であるか否かを判断する。その結果、前後Gが減速方向の所定の閾値以上であると判断される場合には、S23からS25の処理を実行する一方、前後Gが減速方向の所定の閾値より小さいと判断される場合には、S20からS22の処理を実行する。
【0151】
判断方法が、ブレーキペダル62の操作量に基づく車両1の減速度の場合には、図5から図7又は図13から図16に示すキャンバ制御処理において、S16からS19の処理に代えて、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出した操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。その結果、ブレーキペダル62の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合には、S23からS25の処理を実行する一方、ブレーキペダル62の操作量が所定の操作量より小さいと判断される場合には、S20からS22の処理を実行する。
【0152】
判断方法が、変速機の操作状態に基づく車両1の減速度の場合には、図5から図7又は図13から図16に示すキャンバ制御処理において、S16からS19の処理に代えて、変速機の操作を検出すると共に、その検出した操作が、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRへの動力伝達の回転数(速度)を減速させるための減速操作であるか否かを判断する。その結果、変速機が減速操作されたと判断される場合には、S23からS25の処理を実行する一方、変速機は減速操作されていないと判断される場合には、S20からS22の処理を実行する。
【0153】
上記実施の形態では、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRが全て同じ構成とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図18に示すように、後輪2RL,2RRに第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備える構成としても良い。この場合には、第1トレッド21を車両1の内側に配置し、第2トレッド22を車両1の外側に配置すると共に、第2トレッド22を第1トレッド21よりも硬度の高い材料により構成し、第1トレッド21を第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性(高グリップ特性)に構成する一方、第2トレッド22を第1トレッド21に比して転がり抵抗の小さい特性(低転がり特性)に構成することが好ましい。これにより、後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整することで、第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させて、後輪2RL,2RRのグリップ性能を向上させることができる。その結果、車両1の旋回安定性を確保することができる。一方、後輪2RL,2RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整することで、第2トレッド22の低転がり特性を発揮させて、省燃費化を図ることができる。なお、図18は、車両1を模式的に示した模式図である。
【0154】
上記実施の形態では、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRが全て同じ構成とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、前輪2FL,2FRのトレッドの幅を、後輪2RL,2RRのトレッドの幅よりも広い幅に構成しても良い。この場合には、前輪2FL,2FRのトレッドの幅が、後輪2RL,2RRのトレッドの幅よりも広くされるので、前輪2FL,2FRの路面に対する摩擦係数を後輪2RL,2RRの路面に対する摩擦係数よりも大きくすることができる。その結果、制動力の向上を図ることができる。また、前輪2FL,2FRが駆動輪とされる上記実施の形態においては、加速性能の向上を図ることができる。一方、後輪2RL,2RRのトレッドの幅が、前輪2FL,2FRのトレッドの幅よりも狭くされるので、後輪2RL,2RRの転がり抵抗を前輪2FL,2FRの転がり抵抗よりも小さくすることができ、その分、省燃費化を図ることができる。
【0155】
また、後輪2RL,2RRを、前輪2FL,2FRよりも低転がり抵抗とするための手法としては、後輪2RL,2RRのトレッドの幅を、前輪2FL,2FRのトレッドの幅よりも狭くする手法に限られるものではなく、他の手法を採用しても良い。
【0156】
例えば、他の手法としては、後輪2RL,2RRのトレッドを、前輪2FL,2FRのトレッドよりも硬度の高い材料から構成し、前輪2FL,2FRのトレッドを後輪2RL,2RRのトレッドよりもグリップ力の高い特性(高グリップ性)とする一方、後輪2RL,2RRのトレッドを前輪2FL,2FRのトレッドよりも転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)とする第1の手法、後輪2RL,2RRのトレッドのパターンを、前輪2FL,2FRのトレッドのパターンよりも低転がり抵抗のパターンとする(例えば、前輪2FL,2FRのトレッドのパターンをラグタイプ又はブロックタイプとし、後輪2RL,2RRのトレッドのパターンをリブタイプとする)第2の手法、後輪2RL,2RRの空気圧を、前輪2FL,2FRの空気圧よりも高圧とする第3の手法、後輪2RL,2RRのトレッドの厚み寸法を、前輪2FL,2FRのトレッドの厚み寸法よりも薄い寸法とする第4の手法、或いは、これら第1から第4の手法および上記の手法(トレッドの幅を異ならせる手法)の一部または全部を組み合わせる第5の手法、が例示される。
【0157】
上記実施の形態では、後輪2RL,2RRのトレッドの幅を、前輪2FL,2FRのトレッドの幅と同一の幅とする場合を説明したが、この場合でも、かかる構成に上述した第1から第5の手法の一部または全部を組み合わせることで、後輪2RL,2RRを、前輪2FL,2FRよりも低転がり抵抗とすることができる。
【0158】
また、後輪2RL,2RRのトレッドの幅を、前輪2FL,2FRのトレッドの幅よりも狭くする場合には、後輪2RL,2RRのトレッドの幅を次のように構成することが好ましい。即ち、タイヤ幅L([mm])をタイヤ外径R([mm])で除した値(L/R)を0.1より大きく、かつ、0.4より小さくすることが好ましく(0.1<L/R<0.4)、0.1より大きく、かつ、0.3より小さくすることが更に好ましい(0.1<L/R<0.3)。
【符号の説明】
【0159】
100,200 車両用制御装置
1 車両
2 車輪
2FL 左の前輪(車輪の一部)
2FR 右の前輪(車輪の一部)
2RL 左の後輪(車輪の一部)
2RR 右の後輪(車輪の一部)
44 キャンバ角調整装置
44RL RLモータ(キャンバ角調整装置の一部)
44RR RRモータ(キャンバ角調整装置の一部)
62 ブレーキペダル(減速操作部材)
63 ステアリング(旋回操作部材)
S5 増加期閾値取得手段
S6,S14,S26 操舵角取得手段
S7 旋回開始判断手段
S9 増加期車速判断手段
S13 増加期キャンバ調整手段
S15 維持期遷移判断手段
S19 減速判断手段、維持期車速判断手段
S25 維持期キャンバ調整手段
S27 減少期遷移判断手段
S29 減少期閾値取得手段
S31 減少期車速判断手段
S33 減少期キャンバ調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の前輪および左右の後輪により構成される車輪と、前記左右の後輪のキャンバ角を独立に調整するキャンバ角調整装置と、を備えた車両に用いられる車両用制御装置であって、
前記車両用制御装置は、
前記車両が直進状態から旋回状態へ状態変化したかを判断する旋回開始判断手段と、
前記車両の旋回状態が旋回度の増加する増加期から所定の旋回度に維持される維持期へ遷移したかを判断する維持期遷移判断手段と、
前記車両の旋回状態が前記維持期から旋回度の減少する減少期へ遷移したかを判断する減少期遷移判断手段と、
前記旋回開始判断手段により前記車両が直進状態から旋回状態へ状態変化したと判断される場合に、前記車両の車速が所定の閾値を超えているかを判断する増加期車速判断手段と、
その増加期車速判断手段により前記車両の車速が所定の閾値を超えていると判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させて、前記左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角を旋回外輪のキャンバ角よりも大きくなるようにネガティブキャンバ方向へ調整するか、或いは、前記左右の後輪の旋回外輪のキャンバ角を旋回内輪のキャンバ角よりも大きくなるようにポジティブキャンバ方向へ調整する増加期キャンバ調整手段と、
前記維持期遷移判断手段により前記車両の旋回状態が前記増加期から前記維持期へ遷移したと判断される場合に、前記車両の減速状況を判断する減速判断手段と、
その減速判断手段により前記車両が減速したと判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させて、前記増加期キャンバ調整手段により調整した前記左右の後輪の旋回内輪または旋回外輪のキャンバ角を少なくとも絶対値が小さくなるように調整する維持期キャンバ調整手段と、
前記減少期遷移判断手段により前記車両の旋回状態が前記維持期から前記減少期へ遷移したと判断される場合に、前記車両の車速が所定の閾値を超えているかを判断する減少期車速判断手段と、
その減少期車速判断手段により前記車両の車速が所定の閾値を超えていると判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させて、前記左右の後輪の旋回内輪のキャンバ角を絶対値が大きくなるように調整して旋回外輪のキャンバ角よりも大きくなるようにネガティブキャンバ方向へ調整するか、或いは、前記左右の後輪の旋回外輪のキャンバ角を絶対値が大きくなるように調整して旋回内輪のキャンバ角よりも大きくなるようにポジティブキャンバ方向へ調整する減少期キャンバ調整手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両の操舵角を取得する操舵角取得手段を備え、
前記旋回開始判断手段は、前記操舵角取得手段により取得された操舵角が所定値を超えるか、或いは、前記操舵角取得手段により取得された操舵角の時間微分値が正の所定値を超えた場合に、前記車両が直進状態から旋回状態へ状態変化したと判断し、
前記維持期遷移判断手段は、前記操舵角取得手段により取得された操舵角の時間微分値が正の所定値よりも小さくなった場合に、前記車両の旋回状態が前記増加期から前記維持期へ遷移したと判断し、
前記減少期遷移判断手段は、前記操舵角取得手段により取得された操舵角の時間微分値が負の所定値よりも小さくなった場合に、前記車両の旋回状態が前記増加期から前記維持期へ遷移したと判断することを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記増加期車速判断手段による判断の判断基準となる前記閾値を、前記車両の旋回度に基づいて取得する増加期閾値取得手段と、
前記減少期車速判断手段による判断の判断基準となる前記閾値を、前記車両の旋回度に基づいて取得する減少期閾値取得手段と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記維持期遷移判断手段により前記車両の旋回状態が前記増加期から前記維持期へ遷移したと判断される場合に、前記車両の車速が前記車両の旋回度に応じた所定の閾値を超えているかを判断する維持期車速判断手段を備え、
前記減速判断手段は、前記維持期車速判断手段により前記車両の車速が所定の閾値を超えていないと判断される場合に、前記車両が減速したと判断することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記減速判断手段は、前記車両を減速させるために運転者により操作される操作部材が操作されたと判断される場合に、前記車両が減速したと判断することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用制御装置。




























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−207286(P2011−207286A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75357(P2010−75357)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】