説明

車両用制御装置

【課題】車両用制御装置において、緊急車両が接近している場合に自車両を自動的に減速させるとともに、四輪車の場合にはアクセルペダルの踏み込み、二輪車の場合にはスロットルグリップの回転を制限させて、運転者に操作の違和感をなくすることにある。
【解決手段】制御手段(16)は、車車間通信手段(6)により緊急車両(3)の接近を検出する緊急車両検出手段(17)を備えて、この緊急車両検出手段(17)により緊急車両(3)が自車両(1)に接近することを検出した時に車速検出手段(8)により検出された車速が予め設定された値を超える場合には反力付与手段(11)を作動させて操作力調節手段(13)を調節して予め設定された車速になるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用制御装置に係り、特に車車間通信機能若しくは路車間通信機能を搭載した車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、自車両の走行中に、サイレン音を鳴らした救急車等の緊急車両が接近した場合に、その旨を知らせて車両を減速させるために、車両の加速を制限する制限制御装置を備えたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−47643号公報
【特許文献2】特開平10−86761号公報
【特許文献3】特開2002−317659号公報
【特許文献4】特開2008−232016号公報
【0004】
特許文献1に係る電子制御エンジン搭載車両の加速制限装置は、緊急車両のサイレン音が接近した際に、電子制御エンジンの加速を自動的に制限するものである。
特許文献2に係る車両用情報提供装置は、車車間通信装置等のデータから緊急車両の接近を検出して車両の待機場所を知らせるものである。
特許文献3に係るフォークリフトの車速制限装置は、車速が設定値を超える場合に、アクチュエータによって車速を自動的に制限するものである。
特許文献4に係るスロットル装置は、スロットルグリップと連動する連動部材の回転角度を所定範囲に制限し、スロットル開度の最大値を調整するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、上記の特許文献1では、マイクロフォンで車外の音を取得して緊急車両のサイレンが鳴っているかを識別しているが、騒音等で正確にその音を識別できない可能性があり、また、運転者のアクセルペダルの踏み込みにかかわらず、自動的にエンジン出力が制限されるため、運転者に戸惑いを生じさせてしまう不都合があった。
また、上記の特許文献2では、ナビゲーション装置や地図データ装置の搭載が前提となっており、二輪車への搭載は不向きであり、また、緊急車両に道を譲るための退避場所を示してくれるが、運転者がその指示に従わなかった場合、強制的に減速させたり、退避場所に停車させる強制力行使の手段がなかった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、車車間通信機能若しくは路車間通信機能により、四輪車や二輪車の場合でも、運転者に操作の違和感をなくして自動的に車速を制限できる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、自車両と他車両との間で情報を送受信する車車間通信手段を設け、車両の走行速度を検出する車速検出手段を設け、運転者により調整可能な操作力調節手段を設け、この操作力調節手段に反力を付与する反力付与手段を設け、前記車車間通信手段により緊急車両の接近を検出する緊急車両検出手段を備えて、この緊急車両検出手段により緊急車両が自車両に接近することを検出した時に前記車速検出手段により検出された車速が予め設定された値を超える場合には前記反力付与手段を作動させて前記操作力調節手段を調節して予め設定された車速になるように制御する制御手段を設けたことを特徴とする。
また、自車両と路上機との間で情報を送受信する路車間通信手段を設け、車両の走行速度を検出する車速検出手段を設け、運転者により調整可能な操作力調節手段を設け、この操作力調節手段に反力を付与する反力付与手段を設け、前記路車間通信手段により緊急車両の接近を検出する緊急車両検出手段を備えて、この緊急車両検出手段により緊急車両が自車両に接近することを検出した時に前記車速検出手段により検出された車速が予め設定された値を超える場合には前記反力付与手段を作動させて前記操作力調節手段を調節して予め設定された車速になるように制御する制御手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用制御装置は、緊急車両が接近している場合に自車両を自動的に減速させるとともに、四輪車の場合にはアクセルペダルの踏み込み、二輪車の場合にはスロットルグリップの回転を制限させて、運転者に操作の違和感をなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両用制御のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2は四輪車における車両用制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【図3】図3は二輪車における車両用制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、四輪車や二輪車の場合でも、運転者に操作の違和感をなくして自動的に車速を制限する目的を、車車間通信機能若しくは路車間通信機能を用いて実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。
図2において、1は車両としての四輪車、2はこの四輪車1に搭載される車両用制御装置、3は緊急車両である。四輪車1は、車車間通信システム4若しくは路車間通信システム5を搭載している。
車両用制御装置2には、入力側で、車車間通信システム4の車車間通信手段6と、路車間通信システム5の路車間通信手段7と、車速検出手段8とが連絡している。
車車間通信手段6は、自車両と他車両との間で情報を送受信するものであり、緊急車両3の接近情報を車両用制御装置2に出力する。
路車間通信手段7は、自車両と路上機との間で情報を送受信するものであり、緊急車両3の接近情報を車両用制御装置2に出力する。
車速検出手段8は、四輪車1の走行速度を検出してその情報を車両用制御装置2に出力する。
緊急車両3は、車車間通信システム9若しくは路車間通信システム10を搭載し、緊急車両3である情報を車車間通信情報として提供する。路上のインフラ(路上機、通信機)は、緊急車両3の所在の情報を路車間通信情報として提供する。
車両用制御装置2には、出力側で、後述する操作力調節手段13に反力を付与する反力付与手段11としてのアクセルペダル制限アクチュエータ12が連絡している。
このアクセルペダル制限アクチュエータ12は、運転者により調整可能な操作力調節手段13としてのアクセルペダル14にリンク機構等の連結機構15によって機械的に連結し、アクセルペダル14を運転者の意思とは別に動作させるものである。
更に、車両用制御装置2には、各種手段からの情報を入力してアクセルペダル制限アクチュエータ12を作動制御する制御手段16が設けられている。
この制御手段16は、車車間通信手段6により緊急車両の接近を検出する緊急車両検出手段17を備えて、この緊急車両検出手段17により緊急車両3が自車両に接近することを検出した時に車速検出手段8により検出された車速が予め設定された値(制限車速)を超える場合には反力付与手段11としてのアクセルペダル制限アクチュエータ12を作動させて操作力調節手段13としてのアクセルペダル14を調節して予め設定された車速になるように制御する。
【0012】
図3において、101は車両としての二輪車、102はこの二輪車101に搭載される車両用制御装置、103は緊急車両である。二輪車101は、車車間通信システム104若しくは路車間通信システム105を搭載している。
車両用制御装置102には、入力側で、車車間通信システム104の車車間通信手段106と、路車間通信システム105の路車間通信手段107と、車速検出手段108とが連絡している。
車車間通信手段106は、自車両と他車両との間で情報を送受信するものであり、緊急車両103の接近情報を車両用制御装置102に出力する。
路車間通信手段107は、自車両と路上機との間で情報を送受信するものであり、緊急車両103の接近情報を車両用制御装置102に出力する。
車速検出手段108は、二輪車101の走行速度を検出してその情報を車両用制御装置102に出力する。
緊急車両103は、車車間通信システム109若しくは路車間通信システム110を搭載し、緊急車両103である情報を車車間通信情報として提供する。路上のインフラは、緊急車両103の所在の情報を路車間通信情報として提供する。
車両用制御装置102には、出力側で、後述する操作力調節手段113に反力を付与する反力付与手段111としてのスロットルグリップ制限アクチュエータ112が連絡している。
このスロットルグリップ制限アクチュエータ112は、運転者により調整可能な操作力調節手段113としてのスロットルグリップ114にリンク機構等の連結機構115によって機械的に連結し、スロットルグリップ114を運転者の意思とは別に動作させるものである。
更に、車両用制御装置102には、各種手段からの情報を入力してスロットルグリップ制限アクチュエータ112を作動制御する制御手段116が設けられている。
この制御手段116は、車車間通信手段106により緊急車両の接近を検出する緊急車両検出手段117を備えて、この緊急車両検出手段117により緊急車両103が自車両に接近することを検出した時に車速検出手段108により検出された車速が予め設定された値(制限車速)を超える場合には反力付与手段111としてのスロットルグリップ制限アクチュエータ112を作動させて操作力調節手段113としてのスロットルグリップ114を調節して予め設定された車速になるように制御する。
【0013】
次に、この実施例の車両用制御を図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、制御手段16・116のプログラムがスタートすると(ステップA01)、先ず、緊急車両3・103が自車両に接近中か否かを判断する(ステップA02)。
このステップA02の緊急車両3・103が自車両に接近中か否かの判断にあっては、車車間通信の場合に、例えば、緊急車両3・103から送信される情報には、緊急車両3・103であるかないかという情報、位置情報、リンク情報を含む。自車両は、通信を受信したら、緊急車両3・103であるかないかという情報が緊急車両3・103であり、且つ自車両の位置と位置情報から得られる他車両のとの距離≦設定値であり、且つ自車両のリンクとリンク情報から得られる他車両のリンクとが一致する場合に、緊急車両3・103が自車両に接近中であると判定する。
また、このステップA02の緊急車両が自車両に接近中か否かの判断にあっては、路車間通信の場合には、例えば、路上の通信機から一定距離以内を緊急車両が走行している場合に、路上の通信機は、緊急車両3・103の接近情報を送信する。自車両は、緊急車両3・103の接近情報を受信したら、緊急車両3・103は自車両と同一の道路を、自車両と一定距離以内で走行中であるので、緊急車両3・103が自車両に接近中であると判定する。
そして、このステップA02がYESの場合には、自車両の速度が制限車速(例えば20Km/h)を超えているか否かを判断する(ステップA03)。
このステップA03がYESの場合には、アクセルペダル制限アクチュエータ12・スロットルグリップ制限アクチュエータ112を作動制御し、自車両の速度を制限車速以下に抑える(ステップA04)。
一方、前記ステップA02がNOの場合、及び前記ステップA03がNOの場合には、自車両の制限を行わない(ステップA05)。
前記ステップA04の処理後、又は前記ステップA05の処理後は、プログラムをエンドとする(ステップA06)。
【0014】
この結果、この実施例においては、緊急車両3・103が自車両に接近することを検出した時に車速検出手段8・108により検出された車速が予め設定された値を超える場合には反力付与手段11・111を作動させて操作力調節手段13・113を調節して予め設定された車速になるように制御する。
これにより、車車間通信や路車間通信から緊急車両3・103の位置情報や接近情報を入手し、緊急車両3・103が接近していることを検出した場合に、運転者に確実にその旨を知らせ、そして、自車両を自動的に減速させることで、緊急車両3・103を優先的に通行させる。その際に、四輪車1の場合には、アクセルペダル14の踏み込み、二輪車101の場合にはスロットルグリップ114の回転が制限されるので、運転者に操作の違和感を与えるのを防止できる。
また、車車間通信や路車間通信を使用するため、緊急車両3・103の接近の有無を正確に判断できる。
更に、アクセルペダル14やスロットルグリップ114を制限するとき、運転者の足や手に重さ感が伝わるため、制御が入っていることを分かりやすくできる。
更にまた、地図情報等の複雑な情報を必要としないので、簡便なシステムで実現でき、システム搭載スペースが限られた二輪車101にも搭載しやすくできる。
また、運転者が減速の指示に従わなかった時は、制御を強めにかけることで、強制的に減速させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明に係る車両用制御装置を、システム搭載スペースが限られた他の車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 四輪車
2 車両用制御装置
3 緊急車両
4 車車間通信システム
5 路車間通信システム
6 車車間通信手段
7 路車間通信手段
8 車速検出手段
11 反力付与手段
12 アクセルペダル制限アクチュエータ
13 操作力調節手段
14 アクセルペダル
16 制御手段
17 緊急車両検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と他車両との間で情報を送受信する車車間通信手段を設け、車両の走行速度を検出する車速検出手段を設け、運転者により調整可能な操作力調節手段を設け、この操作力調節手段に反力を付与する反力付与手段を設け、前記車車間通信手段により緊急車両の接近を検出する緊急車両検出手段を備えて、この緊急車両検出手段により緊急車両が自車両に接近することを検出した時に前記車速検出手段により検出された車速が予め設定された値を超える場合には前記反力付与手段を作動させて前記操作力調節手段を調節して予め設定された車速になるように制御する制御手段を設けたことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
自車両と路上機との間で情報を送受信する路車間通信手段を設け、車両の走行速度を検出する車速検出手段を設け、運転者により調整可能な操作力調節手段を設け、この操作力調節手段に反力を付与する反力付与手段を設け、前記路車間通信手段により緊急車両の接近を検出する緊急車両検出手段を備えて、この緊急車両検出手段により緊急車両が自車両に接近することを検出した時に前記車速検出手段により検出された車速が予め設定された値を超える場合には前記反力付与手段を作動させて前記操作力調節手段を調節して予め設定された車速になるように制御する制御手段を設けたことを特徴とする車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−79388(P2011−79388A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232168(P2009−232168)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】