説明

車両用回転電機システム

【課題】
高速時の発電特性の向上した車両用回転電機システムを提供することにある。
【解決手段】
固定子巻線は、2個の独立した3相巻線3a,3bからなる。3相巻線3a,3bには、インバータ101が接続される。インバータ101は、3相巻線のそれぞれに接続された半導体スイッチング素子群101aと、3相巻線の中性点に接続された整流素子群101bとからなる。回転電機をモータとして駆動するときは、インバータ101は、直流電圧を交流電圧に変換して3相巻線のそれぞれに供給し、回転電機を発電機として駆動するときは、発電機の交流出力電圧を、インバータ101の半導体スイッチ群101aによる同期整流若しくはフライホイルダイオードによる全波整流と、整流素子群101bによる中性点電圧整流とにより、直流電圧に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用回転電機システムに係り、特に、車両用交流発電機に用いるに好適な車両用回転電機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用交流発電機を用いた車両用回転電機システムにおいては、例えば、特開2004−7964号公報に記載のように、3相インバータで3相巻線を持つ車両用交流発電機を駆動するシステムが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−7964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2004−7964号公報記載の車両用回転電機システムでは、インバータは3相であるため発電時には3相の全波整流となり、高速域で第3高調波による発電エネルギーを利用することができないため、高速時の発電特性が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、高速時の発電特性の向上した車両用回転電機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、永久磁石を補助励磁として爪磁極間に配置した回転子と、少なくても2個以上の独立した3相巻線を有する固定子とからなる回転電機と、それぞれの前記3相巻線に接続されるインバータとを有する回転電機システムであって、前記インバータは、前記3相巻線のそれぞれに接続された半導体スイッチング素子群と、前記3相巻線の中性点に接続された整流素子群とからなり、前記回転電機をモータとして駆動するときは、前記インバータは、直流電圧を交流電圧に変換して前記3相巻線のそれぞれに供給し、前記回転電機を発電機として駆動するときは、発電機の交流出力電圧を、前記インバータの半導体スイッチ群による同期整流若しくはフライホイルダイオードによる全波整流とし、前記整流素子群による中性点電圧整流とにより、直流電圧に変換するようにしたものである。
かかる構成により、高速時の発電特性を向上し得るものとなる。
【0007】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記回転子に設けた補助励磁用の永久磁石は、両端の厚みが中心部分よりも薄くしたものである。
【0008】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記独立した2個の3相巻線は、分数、分布巻きで構成したものである。
【0009】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記独立した2個の3相巻線は、回転子の極数が12極で、スロット数が90で構成したものである。
【0010】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記回転子の爪磁極に施されたスキューピッチは回転子の回転前側に対して回転後ろ側のスキューピッチを小さくしたものである。
【0011】
(6)上記(5)において、好ましくは、前記回転子のスキューピッチは回転前側が3.0であり、回転後ろ側を2.0としたものである。
【0012】
(7)上記(1)において、好ましくは、前記整流素子群は、ツェナーダイオードからなる。
【0013】
(8)また、上記目的を達成するために、本発明は、永久磁石を補助励磁として爪磁極間に配置した回転子と、少なくても2個以上の独立した3相巻線を有する回転子とからなる回転電機と、それぞれの前記3相巻線に接続されるインバータとを有する回転電機システムであって、前記インバータは、前記3相巻線のそれぞれに接続された半導体スイッチング素子群と、前記3相巻線の中性点に接続された整流素子群とからなり、前記回転子の極数が12極、固定子のスロット数が90、ステータ巻線が分数分布巻きで構成され、前記回転電機をモータとして駆動するときは、前記インバータは、直流電圧を交流電圧に変換して前記3相巻線のそれぞれに供給し、前記回転電機を発電機として駆動するときは、発電機の交流出力電圧を、前記インバータの半導体スイッチ群による同期整流若しくはフライホイルダイオードによる全波整流と、前記整流素子群による中性点電圧整流とにより、直流電圧に変換するようにしたものである。
かかる構成により、高速時の発電特性を向上し得るものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高速時の発電特性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図10を用いて、本発明の一実施形態による車両用回転電機システムの構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による車両用回転電機システムの全体システム構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による車両用回転電機システムのシステム構成図である。
【0016】
エンジン52には、スタータモータ53が取り付けられており、エンジン52を始動する場合に使用される。スタータモータ53の起動は、キースイッチ54を運転者が操作することで動作する。電源としては、バッテリー55の電力を使用する。
【0017】
バッテリー55のプラス端子およびマイナス端子は、車両用交流発電機100にも電気的に接続されている。バッテリー55のマイナス側端子はアースとして車体に接続される。車両用交流発電機100は、エンジン52に対してクランクプーリ51とプーリ8をベルト50を介して動力の伝達を行うものである。ベルト50の回転方向は一定方向であり、エンジン52によって車両用交流発電機100を回す場合と、車両用交流発電機100がエンジン52を回す2通りの動作ができるようになっている。図中太線は電力線、細線は信号線を示している。
【0018】
車両用交流発電機100の内部には、インバータ回路を含んだ駆動部200が設けられている。駆動部200とECU(エンジンコントロールユニット)60間の信号には、エンジン始動信号61と、発電指令信号62と、回転数検出信号63とがある。ECU60にはアクセルペダル56の踏み込み量を検出するアクセル信号57とブレーキペダル58の踏み込み量を検出するブレーキ信号59が接続されている。
【0019】
次に、図2を用いて、本実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機100の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の構成を示すブロック図である。なお、図1と同一符号は同一部分を示している。
【0020】
交流発電機100は、2つの独立した3相巻線3a,3bから構成されている。この2つの3相巻線3a,3bは、中性点がお互い接続されておらず、3相巻線の同相コイルの位相が電気角で30度程度ずれているものである。図示したものは、3相巻線3aに対して3相巻線3bが30度遅れている様子を示している。
【0021】
車両用交流発電機100に内蔵した駆動部200には、車両用交流発電機の3相巻線にモータ動作が可能なインバータ部101と、界磁巻線電流を制御するレギュレータ102が搭載されている。
【0022】
インバータ部101は、12個のインバータ素子群(半導体スイッチング素子;図示の例では、MOS−FET;IGBTも使用可)101aと、4個の整流素子群(図示の例では、ダイオード)101bとから構成される。2つの3相巻線3a,3bの出力端子の数は6個となるため、インバータ部101のインバータ素子101aの数は、上アームと下アームで12素子となり、その中心に各相の端子が電気的に接続されている。また、2つの3相巻線3a,3bの中性点は、それぞれ2個の直列接続されたダイオードの接続点に接続されており、独立した3相巻線3a,3bの中性点電位を全波整流できるように構成している。整流素子101bとして、ダイオードの代わりにツェナーダイオードを用いた場合には、バッテリー電圧がツェナー電圧より高くならないように動作するため、バッテリーの端子外れによるダンプサージを吸収することが可能となり、電気負荷を保護することができる。
【0023】
レギュレータ102には、ECU60からエンジン始動信号61と、発電指令信号62とが入力し、ECU60には、回転数検出信号63が出力する。また、レギュレータ102には、バッテリ55の電圧を示すバッテリ電圧検出信号64と、インバータ部101に含まれるダイオードの両端電圧であるダイオード電圧信号66と、磁極位置センサ22によって検出された磁極位置信号とが入力し、インバータ部101には、インバータ素子を駆動するためのゲート信号65が出力する。また、レギュレータ102は、交流発電機100の界磁コイル6に流す界磁電流を制御する。
【0024】
次に、図1及び図2に示した車両用回転電機システムの動作について説明する。
【0025】
図1は、エンジン52が冷えている場合には、エンジン内のエンジンオイルの粘性が高いためエンジンを駆動するために必要なトルクが大きいので、運転者がキースイッチ54を操作することで、スタータモータ53を駆動してエンジンを始動する。
【0026】
一方、エンジンが十分暖まった場合には、エンジンオイルの粘性が下がるため、エンジンの摩擦抵抗が低減し、冷えた状態に比較して小さい力でエンジンを始動することができるので、アイドルストップ後の再始動時には交流発電機100よりエンジン52を始動する。例えば、運転者がアクセルペダル56から足を離してブレーキペダルを踏んだ場合、車速を検出して車速が零速度の場合にエンジンを停止するかアイドル状態を維持するかを、ECU60が決定する。例えば、ECU60が信号待ちや渋滞と判断した場合、エンジンを停止する。次に、運転者がブレーキペダル58から足を離して、アクセルペダル56を踏んだ場合、アクセル信号57がECU60に対して出力されるために、ECU60はエンジン始動信号61を車両用交流発電機100に内蔵した駆動部200に対して出力する。駆動部200は車両用交流発電機の3相巻線にモータ動作が可能なインバータ部101と界磁巻線電流を制御するレギュレータ102が搭載されており、ECU60からエンジン始動信号61がオンになった場合には、車両用交流発電機100をモータとして回転させる。このとき、エンジン52は車両用交流発電機100にプーリとベルトで接続されているため、交流発電機100によって回転させることができ、エンジンを始動させることができる。エンジンが始動した場合、駆動部200からは回転数検出信号63がECU60に戻されるため、ECU60ではエンジン始動信号61をオフすると共に、発電指令信号62をオンして車両用交流発電機100をモータ動作から発電機動作モードに切り替える。
【0027】
以上の動作により、車両用交流発電機は、モータとして動作する場合と、発電機として動作する場合の2通りに大別される。
【0028】
次に、図3を用いて、本実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の断面図である。
【0029】
図3に示した交流発電機は、前述したようにモータ駆動可能な車両用交流発電機であり、一般的な車両用交流発電機と違うのは、モータとして駆動する際に必要なインバータを内蔵したことである。
【0030】
冷却方式としては、ステータ外周部をエンジン冷却水を用いた水冷方式と、内扇ファンによる空冷の2通りが有るが、ここでは空冷式のものについて説明する。また、性能を向上させるために、爪磁極間に永久磁石を配置してもよいものである。
【0031】
プーリ8には、回転部となるシャフト7を中心に爪磁極5a,5bから構成される回転子4が設けられている。回転子4には、爪磁極5の内周側に界磁巻線6が巻装されるとともに、軸方向の両端面に冷却ファン14,15が設けられている。
【0032】
回転子4の外周側には、固定子2とその固定子2に先に説明した3相巻線3が2組巻かれている。固定子2はフロントブラケット9とリアブラケット10により前後から挟み込まれるように配置されている。各ブラケット9,10は、ベアリング12,13によりシャフト7を回転自由に支持している。
【0033】
回転子4に配置された界磁巻線6には、シャフト7に設けられたスリップリング18とブラシ17から直流電流が供給され、軸方向に磁化を作る。ブラシ17にはバッテリ端子16を介して車載のバッテリから電力が供給される。よって、先に述べた爪磁極5aがN極の場合には、爪磁極5bがS極となる。この爪磁極5の励磁磁化の強さは、界磁電流の大きさに比例する。
【0034】
シャフト7の反プーリ側端部には磁極センサ22が配置されており、ロータの磁極位置を検出する手段として用いられる。リアブラケット10に接して、リアカバー11の内側には、ヒートシンク20が設けられている。ヒートシンク20には、図2に示した駆動部200に設けられたインバータ部101を構成するパワー素子21が実装されており、パワー素子21の損失をヒートシンク20に放熱できるような構成となっている。パワーモジュール19は、ヒートシンク20とパワー素子21で構成されている。
【0035】
次に、図4及び図5を用いて、本実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の爪磁極の構成について説明する。図4は回転子4の爪磁極の2極分について示している。
図4は、本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の爪磁極の構成を示す斜視図である。図5は、本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機に用いる永久磁石の形状を示す斜視図である。なお、図3と同一符号は、同一部分を示している。
【0036】
図4に示すように、爪磁極5aと爪磁極5bの極間には、永久磁石25が配置されている。永久磁石25の形状は、直方体としている。
【0037】
なお、永久磁石25は、図5に示すように、永久磁石25a,25bのように、磁石中心部と磁石端部の厚みが異なっており、磁石端部の厚みが中心部よりも薄くすることができる。
【0038】
アイドルストッブ機能を持たせた12V系のシステムでは、電源電圧が低いためにモータ動作時の誘起電圧が電源電圧よりも低く設計しなければならないために、固定子巻線の巻数を少なく設計する必要がある。そのため、低速時のトルクが減少する。その対策として、爪磁極間に永久磁石を配置し、低速時のトルクを増加させている。しかし、爪磁極間に永久磁石を配置した場合、内周側に巻かれた界磁巻線の冷却が悪化するため、高速側で磁石を入れた場合発電特性が磁石の無い場合と比較して悪化することになる。
【0039】
それに対して、上述のように、磁石端部の厚さを薄くすることで、磁石の爪先端部における加重を低減でき、遠心力による爪磁極の耐久性を向上できる。また、図3に示した回転電機は空冷方式により固定子巻線3や界磁巻線6を冷却する方式であるため、磁石端部の厚さを薄くすることで、永久磁石の内周側に配置される界磁巻線の冷却を促進することができる。したがって、高速時の発電特性の悪化を防止することができる。なお、この磁石の磁化方向としては、界磁巻線の作る磁化方向と同方向の極性となるように着磁したものを組み込むか、または着磁ヨークにより組み立てた後で着磁する。
【0040】
図5(A)に示す永久磁石25aにおいては、例えば、中心部の厚みH1を8mmとするとき、端部の厚みH2を4mmとして、端部付近にRを付けた形状とする。この形状では、両側に接する爪磁極5a,5bとの接触面積を大きくすることができ、永久磁石の磁束を有効に利用できる。
【0041】
一方、図5(B)に示し永久磁石25bにおいては、例えば、中心部の厚みH1を8mmとするとき、端部の厚みH2を3mmとして、中心部から端部にかけて直線的に厚さを薄くする形状とする。この形状では、爪磁極5a,5bの自由端部側の厚さが、図5(A)に比べて薄くできるので、永久磁石25aに比べて冷却効率が高く、また、爪磁極5a,5bの耐久性を大きくできる。
【0042】
次に、図6及び図7を用いて、本実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の固定子巻線のコイルの結線について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の固定子巻線のコイル配置図である。図7は、本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の固定子巻線の結線図である。
【0043】
ここでは、固定子のスロット数が90のものとし、回転子の極数は12極であり、毎極毎相スロット数は2.5(=2+(1/2))の分数巻で、固定子巻線が分布巻の例について説明する。図6は、コイル配置の一例で、スロット数90の内1/6の15スロットについて示している。すなわち、回転子の2極分に相当する。ここでは、図面簡略化のために固定子2を直線的に延ばして図示している。図7(A)は、第1のコイル群である3相巻線3aを示し、図7(B)は、第2のコイル群である3相巻線3bを示している。
【0044】
図6において、括弧付きの数字は、スロット番号を示している。固定子2は、複数のティース2Tと、これらのティース2Tの間に形成されるスロット2Sからなり、コイルは、スロット2Sの内部に配置される。
【0045】
ロータ2極に対してスロット数が15個になるため、1スロットの電気的位相は24度となる。また、1スロット内に配置される巻線は4導体で示している。図4に示す第1コイル群のU相巻線は1U11〜1U15と、電流方向が逆になる1U11−〜1U15−の10導体で構成される。また、第2コイル群を構成するU相巻線は2U11〜2U15と2U11−〜2U15−の10導体で構成される。3相巻線が2組あることから、図示した全導体数は60導体となる。
【0046】
図7(A)に示すように、3相巻線の1U相と1V相および1W相は、それぞれそれぞれ電気角で120度の位相差で構成されている。また、図6(B)に示すように、2U相と2V相と2W相も、それぞれ120度の位相差で構成されている。図4に示したように、第1コイル群の1U相コイル1U11〜1U15はスロット番号(1)とスロット番号(2)に分かれて配置される。このとき、1U相コイル1U11〜1U14はスロット番号(1)に配置され、1U相コイル1U15はスロット番号(2)に配置される。従って、図7(A)に示すように、1U相コイル1U11〜1U14に対して、1U相コイル1U15は、24度位相がずれている。1U相コイル1U11〜1U15全体として位相は、1U相コイル1U11〜1U14を基準にすると、θ1(=4.8度)ずれている。
【0047】
一方、図6に示したように、第2コイル群の2U相コイル2U11〜2U15はスロット番号(2)とスロット番号(3)に分かれて配置される。このとき、2U相コイル2U11〜2U13はスロット番号(2)に配置され、2U相コイル2U14,2U15はスロット番号(3)に配置される。従って、図7(B)に示すように、2U相コイル2U11〜2U13に対して、2U相コイル2U14,2U15は、24度位相がずれている。2U相コイル2U11〜2U15全体として位相は、2U相コイル1U11〜1U14を基準にすると、θ2(=9.6度)ずれている。したがって、1U相コイルと2U相コイルの位相差θ3は28.8度となる。
【0048】
次に、図8を用いて、本実施形態による車両用駆動発電システムに用いる車両用交流発電機の固定子巻線3とインバータ部101の詳細構成について説明する。
図8は、本発明の一実施形態による車両用駆動発電システムに用いる車両用交流発電機のの固定子巻線とインバータ部の詳細構成を示す回路図である。なお、図1,図2と同一符号は、同一部分を示している。
【0049】
2個の独立した3相の固定子巻線は第一コイル群3aと、第一のコイル群3aに対して電気的に28.8度ずれた第ニコイル群3bから構成されている。独立した3相巻線の6相コイルは、12個のインバータ素子U1+,U1−,V1+,V1−,W1+,W1−,U2+,U2−,V2+,V2−,W2+,W2−に接続されている。図ではMOS−FETで示したが、他のスイッチング素子,例えば、IGBTでも良い。また、2つの独立した3相巻線3a,3bの中性点は、4個のダイオードY1+,Y1−,Y2+,Y2−に接続されている。MOSーFETのドレインD−ソースS間には、フライホイルダイオードが配置されている。
【0050】
車両用交流発電機をモータとして回す場合には、インバータ素子群101aからなるMOSインバータで磁極センサ22の信号を基にMOS−FETのスイッチングのタイミングを切り替えることで、バッテリー55の直流電圧を2組の3相交流電圧に変換して、コイル群3a,3bに供給する。このとき、4個のダイオードY1+,Y1−,Y2+,Y2−(整流素子群101b)は動作していない。
【0051】
次に、発電機として動作させる場合には、インバータ素子U1+,U1−,V1+,V1−,W1+,W1−,U2+,U2−,V2+,V2−,W2+,W2−のゲート信号をオフとして、インバータ素子群101aを構成するMOS−FETのドレイン−ソース間のフライホイルダイオードにより、コイル群3a,3bに発生した誘起電圧を全波整流することで直流電圧を得て、発電させることができる。発電電圧は、図2に示した界磁巻線22に流す電流を増減することで制御される。新たに設けたダイオードY1+,Y1−,Y2+,Y2−は回転数が高い場合に、中性点電位が電源電圧よりも高くなった場合にその電位で整流するものである。よって、回転数が、例えば、3000r/min以上になるとその効果が現れてくる。また、MOS−FETのドレイン−ソース間に配置されたダイオードによる整流の代わりに、MOS−FETのゲート信号を誘起電圧に合わせてオン−オフして、整流損失の少ないMOS−FETによる同期整流とすることもできる。同期整流をすることで、損失を低減でき、整流効率を向上できる。
【0052】
次に、図9を用いて、本実施形態による車両用駆動発電システムにおける発電電特性について説明する。
図9は、本発明の一実施形態による車両用駆動発電システムにおける発電特性についての説明図である。図9(A),(B)の縦軸は発電電流(A)を示し、横軸は時間(s)を示している。
【0053】
図9(A)は、回転数が5000r/min時における中性点ダイオードが無い場合,すなわち、図8のインバータ素子群101aのみによるMOS整流時の発電特性の計算結果を示している。
【0054】
図9(B)は、回転数が5000r/min時における中性点ダイオードが有る場合,すなわち、図8のインバータ素子群101aによるMOS整流と整流素子群101bによる中性点電圧整流とによる整流時の発電特性の計算結果を示している。
【0055】
図9(A),(B)において、図の下側に図示されている3つの線は、U相,V相,W相の各相毎の発電電流を示している。上側に図示された線は、3相を合計した発電電流を示している。
【0056】
図9(A)において、時間5s以降の3相合計の発電電流は、約280Aである。一方、図9(B)において、時間5s以降の3相合計の発電電流は、約310Aである。したがって、高回転時においては、約1割程度の出力が向上する。また、中性点整流は3相巻線が1つの場合では電圧リプルが大きく騒音の問題が生じるが、3相巻線を2個用い位相をずらして加え合わせることで、電圧リプル増大による騒音の問題は解消できる。そのために、中性点整流を行う場合には2つの独立したY結線が必須となる。
【0057】
次に、図10を用いて、本実施形態による車両用駆動発電システムに用いる他の爪形磁極の形状について説明する。
図10は、本発明の一実施形態による車両用駆動発電システムにおける爪形磁極の形状を示す展開平面図である。なお、図3と同一符号は、同一部分を示している。
【0058】
図10は、固定子及び回転子を周方向に展開して示している。細い線が固定子2を示し、幅の広いティース2tと幅の狭いスロット2sが交互に位置している。太い線が回転子の爪形磁極5a,5bを示している。
【0059】
図10(A)では、爪磁極5の回転方向(図中矢印方向)の前側と後ろ側のスキューピッチを等しくし、回転前側と回転後ろ側では同じ2.5のスキューピッチとしたものである。
【0060】
それに対して、図10(B)では、回転後ろ側に相当するスキューピッチを2スロット、回転前側のスキューピッチを3スロットとしており、回転後ろ側のスキューピッチを回転前側のスキューピッチよりも大きくするような不等スキューとすることで、約5%発電電流を増加することができる。ただし、このような不等スキューとした場合には回転方向を逆にすると発電出力は低下するが、本システムの車両用交流発電機は一方向にしか回転しないため問題はない。
【0061】
上記内容は、車両用交流発電機をモータ駆動させる機能を備えたものについて説明したが、MOS−FETを省略し全てをダイオード素子とした場合にも同様の効果が有る。この場合にも、使用するダイオードをツェナーダイオードとすることで、ツェナー電圧以上に電源電圧が上昇しないため電気負荷の保護を実現できる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、車両用交流発電機を用いたアイドルストッブ機能を備えた回転電機システムにおいて、従来の駆動用MOSインバータに加え、独立した2個のY結線で構成される巻線の中性点に新たに設けたダイオードに接続することで、高速時に発電時の出力を向上することができる。また、爪磁極間には補助励磁用の永久磁石を配置することで、低速時の出力を増大することができる。よって、爪磁極間に補助励磁用の永久磁石を配置し、3相の中性点を整流できるようにダイオードを設けることで、低速域から高速域まで全速域で発電出力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態による車両用回転電機システムのシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の爪磁極の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機に用いる永久磁石の形状を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の固定子巻線のコイル配置図である。
【図7】本発明の一実施形態による車両用回転電機システムに用いる車両用交流発電機の固定子巻線の結線図である。
【図8】本発明の一実施形態による車両用駆動発電システムに用いる車両用交流発電機のの固定子巻線とインバータ部の詳細構成を示す回路図である。
【図9】本発明の一実施形態による車両用駆動発電システムにおける発電特性についての説明図である。
【図10】本発明の一実施形態による車両用駆動発電システムにおける爪形磁極の形状を示す展開平面図である。
【符号の説明】
【0064】
100…車両用交流発電機
2…固定子
2t…ティース
2s…スロット
3…固定子巻線
3a…第一コイル群
3b…第ニコイル群
4…回転子
5…爪磁極
6…界磁巻線
7…シャフト
8…プーリ
9…フロントブラケット
10…リアブラケット
11…リアカバー
12,13…ベアリング
14,15…冷却ファン
16…バッテリ端子
17…ブラシ
18…スリップリング
19…パワーモジュール
20…ヒートシンク
21…パワー素子
22…磁極センサ
50…ベルト
51…クランクプーリ
52…エンジン
53…スタータモータ
54…キースイッチ
55…バッテリ
56…アクセルペダル
57…アクセル信号
58…ブレーキペダル
59…ブレーキ信号
60…エンジンコントロールユニット
61…エンジン始動信号
62…発電指令信号
63…回転数検出信号
64…電圧検出信号
65…ゲート信号
66…相電圧信号
102…レギュレータ
200…駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を補助励磁として爪磁極間に配置した回転子と、少なくても2個以上の独立した3相巻線を有する固定子とからなる回転電機と、それぞれの前記3相巻線に接続されるインバータとを有する回転電機システムであって、
前記インバータは、前記3相巻線のそれぞれに接続された半導体スイッチング素子群と、前記3相巻線の中性点に接続された整流素子群とからなり、
前記回転電機をモータとして駆動するときは、前記インバータは、直流電圧を交流電圧に変換して前記3相巻線のそれぞれに供給し、
前記回転電機を発電機として駆動するときは、発電機の交流出力電圧を、前記インバータの半導体スイッチ群による同期整流若しくはフライホイルダイオードによる全波整流とし、前記整流素子群による中性点電圧整流とにより、直流電圧に変換することを特徴とする回転電機システム。
【請求項2】
請求項1記載の回転電機システムにおいて、
前記回転子に設けた補助励磁用の永久磁石は、両端の厚みが中心部分よりも薄いことを特徴とする車両用回転電機システム。
【請求項3】
請求項1記載の回転電機システムにおいて、
前記独立した2個の3相巻線は、分数、分布巻きで構成されていることを特徴とする車両用回転電機システム。
【請求項4】
請求項3記載の回転電機システムにおいて、
前記独立した2個の3相巻線は、回転子の極数が12極で、スロット数が90で構成されることを特徴とする車両用回転電機システム。
【請求項5】
請求項1記載の回転電機システムにおいて、
前記回転子の爪磁極に施されたスキューピッチは回転子の回転前側に対して回転後ろ側のスキューピッチが小さいことを特徴とする車両用回転電機システム。
【請求項6】
請求項5記載の回転電機システムにおいて、
前記回転子のスキューピッチは回転前側が3.0であり、回転後ろ側が2.0であることを特徴とする車両用回転電機システム。
【請求項7】
請求項1記載の回転電機システムにおいて、
前記整流素子群は、ツェナーダイオードからなることを特徴とする車両用回転電機システム。
【請求項8】
永久磁石を補助励磁として爪磁極間に配置した回転子と、少なくても2個以上の独立した3相巻線を有する回転子とからなる回転電機と、それぞれの前記3相巻線に接続されるインバータとを有する回転電機システムであって、
前記インバータは、前記3相巻線のそれぞれに接続された半導体スイッチング素子群と、前記3相巻線の中性点に接続された整流素子群とからなり、
前記回転子の極数が12極、固定子のスロット数が90、ステータ巻線が分数分布巻きで構成され、
前記回転電機をモータとして駆動するときは、前記インバータは、直流電圧を交流電圧に変換して前記3相巻線のそれぞれに供給し、
前記回転電機を発電機として駆動するときは、発電機の交流出力電圧を、前記インバータの半導体スイッチ群による同期整流若しくはフライホイルダイオードによる全波整流と、前記整流素子群による中性点電圧整流とにより、直流電圧に変換することを特徴とする回転電機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−174606(P2006−174606A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364169(P2004−364169)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】