説明

車両用情報提供装置、車両用情報提供方法、および、車両用情報提供システム

【課題】オペレータが、カーナビゲーション装置に設定する目的地の情報をユーザから聞いて、目的地のデータを検索し、車載機に送信することにより、カーナビゲーション装置に目的地を設定するシステムにおいて、目的地が決定されるまでに時間がかかる場合でも、目的地への目安となる情報を車載機に送信する。
【解決手段】情報センター20に待機しているオペレータとユーザとの間の会話によって、カーナビゲーション装置に設定する目的地を決定する作業が行われている間に、オペレータが目的地を検索するために検索システム34に入力した一部の情報に基づいて、仮の目的地を決定し、目的地のデータを送信する前に、仮の目的位置のデータを車載機1に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員からの要求に応じて、必要な情報を車両に提供する車両用情報提供装置、車両用情報提供方法および車両用情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが情報センターに発呼して、カーナビゲーション装置に設定する目的地をオペレータに伝え、オペレータは、ユーザから聞いた目的地の位置情報を検索し、検索した目的地の位置情報を、無線を介して車載装置に送信して、カーナビゲーション装置に目的地を設定するシステムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平3―291522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、ユーザが目的地の名称をはっきりと覚えていない等の場合には、ユーザとオペレータとの間の会話によって目的地を絞り込む必要があるため、カーナビゲーション装置に目的地を設定するまでに時間がかかってしまう。この場合、カーナビゲーション装置に目的地が設定されるまでは、目的地の位置や方向が把握できないため、車両を発進させることができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明による車両用情報提供方法は、情報センターのオペレータが、カーナビゲーション装置への設定を希望する目的地の情報をユーザから聞いて、検索装置に入力し、前記検索装置で検索された目的地のデータを車載機に送信することにより、カーナビゲーション装置に目的地を設定する方法であって、ユーザとオペレータとの間で目的地を決定するための会話が行われて、決定された目的地のデータが車載機に送信される前に、オペレータによって検索装置に入力された目的地に関する情報に基づいて、仮の目的地を決定し、決定した仮目的地のデータを検索して、車載機に送信することを特徴とする。
(2)本発明による車両用情報提供装置は、カーナビゲーション装置に設定する目的地のデータを検索して、車載機に送信する装置において、目的地に関する情報に基づいて、仮の目的地を決定し、決定した仮目的地のデータを検索して、車載機に送信することを特徴とする。
(3)本発明による車両用情報提供システムは、情報センターのオペレータが、カーナビゲーション装置への設定を希望する目的地の情報をユーザから聞いて、目的地のデータを検索し、検索した目的地のデータを車載機に送信することにより、カーナビゲーション装置に目的地を設定するシステムにおいて、情報センターは、目的地に関する情報に基づいて、仮の目的地を決定する仮目的地検索手段と、仮目的地決定手段によって決定された仮目的地のデータを検索するデータ検索手段と、データ検索手段によって検索された仮目的地のデータを車載機に送信する送信手段とを備え、車載機は、情報センターの送信手段から送信される仮目的地のデータを受信する受信手段と、受信手段で受信された仮目的地のデータをカーナビゲーション装置に設定する目的地設定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による車両用情報提供方法、車両用情報提供装置および車両用情報提供システムによれば、ユーザとオペレータとの間の会話によって、カーナビゲーション装置に設定する目的地の決定に時間がかかる場合でも、目的地のデータを送信する前に、仮目的地を決定して、仮目的地のデータを車載機に送信するので、目的地の目安となる仮目的地を迅速にカーナビゲーション装置に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明による車両用情報提供システムの一実施の形態の全体構成を示す図である。この車両用情報提供システムを利用するユーザは、情報センター20(車両用情報提供装置)に発呼して、ナビゲーションユニット2に設定する目的地に関する情報をオペレータに伝え、情報センター20のオペレータが検索システム34により検索した目的地のデータを車載機1にダウンロードする。
【0008】
車載機1は、ナビゲーションユニット2と、モニタ3と、通信アダプタ5と、携帯電話4および通信アダプタ5を接続するための電話ハーネス6と、データ通信用電話7と、マイク8と、スピーカ9と、GPSアンテナ10と、操作スイッチ11と、オペレータ呼び出しスイッチ12と、車速センサ16とを備える。
【0009】
モニタ3には、後述するナビゲーションユニット2からの指示に基づいて、車両の現在地周辺の地図や、目的地までの推奨経路等が表示される。携帯電話4は、ユーザが情報センター20に待機しているオペレータと会話する際に用いる電話であり、データ通信用電話7は、情報センター20との間で、データ通信を行う際に用いられる電話である。
【0010】
マイク8は、ユーザ(ドライバ)がハンズフリーシステムを利用して、情報センター20のオペレータと会話する際に用いられる。スピーカ9は、ユーザがハンズフリーシステムを利用して、オペレータと会話する際に、相手側の会話内容を音声出力したり、ナビゲーションユニット2による経路案内を行う際の音声を出力する。GPSアンテナ10は、車両の現在位置情報を取得するために、図示しないGPS衛星からの電波を受信する。
【0011】
操作スイッチ11は、モニタ3に表示される画面の操作、ハンズフリーシステムを利用するための操作、データ通信を行う際の操作等、各種の操作を行うために用いられる。オペレータ呼び出しスイッチ12は、情報センター20に発呼する際に用いられるスイッチである。
【0012】
通信アダプタ5は、情報センター20との間の通信制御を行う。通信アダプタ5には、後述する情報センター20のオペレーションセンター30の電話番号が登録されており、ユーザが、オペレータ呼び出しスイッチ12を押すと、携帯電話4を介して、自動的にオペレーションセンター30に電話がかかる。オペレーションセンター30の電話番号は、例えば、通信アダプタ5が工場から出荷される前に登録される。
【0013】
図2は、ナビゲーションユニット2の詳細な構成を示す図である。ナビゲーションユニット2は、地図データ部18およびメモリ21と、内部で行われる処理機能上、表示処理部13、通信制御部14、音声制御部15、位置演算部17、入力処理部19、および、統合演算部22とを備える。
【0014】
表示処理部13は、統合演算部22からの指令に基づいて、モニタ3への表示指示を行う。通信制御部14は、通信アダプタ5との間でデータの授受を行うための制御を行う。音声制御部15は、統合演算部22からの指令に基づいて、例えば、経路案内のための音声出力をスピーカ9に指示する。位置演算部17は、GPSアンテナ10で受信された電波および車速センサ16によって検出された車速に基づいて、車両の現在位置を求める。地図データ部18は、例えば、ハードディスク装置(HDD)であり、地図データを格納している。
【0015】
入力処理部19は、ユーザが操作スイッチ11によって入力した指令を、統合演算部22に出力する。メモリ21は、予めユーザが操作スイッチ11を使って設定した登録地(例えば、自宅の位置)や、過去に走行した道路等のデータを記憶する。統合演算部22は、表示処理部13、通信制御部14、音声制御部15、位置演算部17、入力処理部19、地図データ部18、および、メモリ21との間で、様々なデータをやり取りするとともに、ナビゲーションユニット2の総合的な処理を行う。ナビゲーションユニット2の総合的な処理には、目的地までの推奨ルートの演算処理が含まれる。
【0016】
情報センター20は、オペレーションセンター30と、情報データベース群40と、車両用情報センター50と、カスタマーセンター60とにより構成されている。オペレーションセンター30は、電話回線の制御を行うPBX/CTI31と、検索システム34とを備える。検索システム34には、検索処理端末32、電話機33、ヘッドセット36、モニタ38、および、入力機器39が含まれる。入力機器39には、キーボードおよびマウスが含まれる。
【0017】
PBX(Private Branch Exchanger)は、通常、企業ビル内などに設置されるものであって、外線電話と内線電話、および、内線電話どうしを交換する。また、CTI(Computer Telephony Integration)は、PBXなどの電話系通信システムと、コンピュータやデータベースなどの情報系システムとを統合し、相互に連動できるようにするものである。すなわち、PBX/CTI31は、ユーザからかかってきた電話を空きオペレータに接続したり、空きオペレータがいない場合には、待ち音声案内を流すなどの電話回線の制御を行う。
【0018】
オペレーションセンター30に勤務しているオペレータは、電話機33またはヘッドセット36を用いて、ユーザと会話し、車載機1のナビゲーションユニット2に設定する目的地を確認する。オペレータは、ユーザから聞いた目的地に関する情報を検索処理端末32を用いて検索する。検索処理端末32は、例えば、パソコンである。検索システム34は、情報データベース群40を構成する複数のデータベース41〜45,56とLANなどのネットワーク37を通じて接続されている。
【0019】
情報データベース群40は、位置/電話情報データベース41と、交通情報データベース42と、天気予報データベース43と、各種情報データベース44と、案内音声データベース45と、ユーザプロファイルデータベース56とを備える。位置/電話情報データベース41には、飲食店や公共施設などの各種施設の名称、位置情報、および、電話番号情報等が格納されている。交通情報データベース42には、一般道や有料道路などの交通情報が格納されている。天気予報データベース43には、各地の天気予報情報が格納されている。各種情報データベース44には、上述した各種施設に関する情報、交通情報、天気情報以外の情報が格納されている。案内音声データベース45には、ユーザに音声案内を行うための音声データが格納されている。ユーザプロファイルデータベース56には、予めユーザ登録されているユーザの氏名、住所、携帯電話番号などのユーザ情報が格納されている。ユーザ登録の方法については後述する。
【0020】
車両用情報センター50は、電話回線の制御を行うPBX/CTI52と、通信装置53と、情報処理端末54とを備える。通信装置53は、情報処理端末54からの指令に基づいて、車載機1とデータ通信を行う。情報処理端末54は、通信装置53を介して、車載機1に情報を送信するなどの様々なデータ処理を行う。例えば、検索システム34において、車載機1のナビゲーションユニット2に設定する目的地のデータが検索された場合には、検索された目的地のデータを、通信装置53を介して車載機1に送信する。なお、オペレーションセンター30のPBX/CTI31と、車両用情報センター50のPBX/CTI52は、一般電話回線網55に接続されている。
【0021】
カスタマーセンター60は、カスタマー登録システム62と、カスタマー管理サーバ66とを備える。カスタマー登録システム62は、ユーザの登録や、登録されているユーザの個人情報の変更を行う。カスタマー登録システム62と接続されているカスタマー管理サーバ66は、ユーザ情報を管理するためのサーバである。
【0022】
オペレーションセンター30、情報データベース群40、車両用情報センター50およびカスタマーセンター60が接続されているネットワーク37には、インターネット63も接続されている。従って、情報センター20は、インターネット63を介して、コンテンツプロバイダ/アプリケーションサービスプロバイダ群64と各種情報の授受を行う。また、ユーザが後述するユーザ登録を行う際に、カスタマーセンター60のオペレータを介さずに、インターネット63と接続されているパソコンなどの端末65を用いて行うこともできる。
【0023】
一実施の形態における車両用情報提供システムを利用するユーザは、予めユーザ登録する必要がある。ユーザ登録するための1つ目の方法としては、所定の申込書にユーザの氏名、住所、生年月日などの一般情報と共に、本システムを利用する際に使用する携帯電話4およびデータ通信用電話7の電話番号を記入し、情報センター20のカスタマーセンター60に郵送する。カスタマーセンター60のオペレータは、申込書の内容を確認した後、カスタマー登録システム62を使用して、カスタマー管理サーバ66にユーザ登録処理を行う。登録されたユーザ情報は、ユーザプロファイルデータベース56に格納される。
【0024】
ユーザ登録するための二つ目の方法は、上述したように、インターネット63と接続されているパソコンなどの端末65を用いて、カスタマー管理サーバ66に直接登録する方法である。また、車載機1がオンライン登録機能を備えている場合には、車載機1を用いてカスタマー管理サーバ66に直接登録することもできる。
【0025】
図3は、一実施の形態における車両用情報提供システムにおいて、車載機1と情報センター20とでそれぞれ行われる処理内容を示すフローチャートである。ステップS10〜ステップS40の処理は、車載機1側で行われる処理であり、ステップS100〜ステップS170の処理は、情報センター20側で行われる処理である。
【0026】
ステップS10において、ナビゲーションユニット2の統合演算部22は、入力処理部19から入力される信号に基づいて、オペレータ呼び出しスイッチ12がオンされたか否かを判定する。オペレータ呼び出しスイッチ12がオンされていないと判定するとオンされるまでステップS10で待機し、オンされたと判定するとステップS20に進む。
【0027】
ステップS20では、音声モードにより、情報センター20のオペレーションセンター30に電話をかける。なお、音声モードとは、ユーザとオペレータとが会話を行うためのモードである。上述したように、通信アダプタ5にはオペレーションセンター30の電話番号が予め登録されているので、ユーザがオペレータ呼び出しスイッチ12を押すことにより、ナビゲーションユニット2、通信アダプタ5、携帯電話4経由で、自動的にオペレーションセンター30に電話がかかる。この時、通信アダプタ5は、オペレーションセンター30の電話番号の前に、発信者番号を通知するために「186」の番号を付して発呼する。すなわち、携帯電話4には、発信者番号を非通知とするための機能を備えたものもあるため、情報センター20側で発信者を特定できるようにするために、発信者番号が通知される形で電話をかけるようにする。
【0028】
情報センター20側で行われる処理のうち、ステップS100〜ステップS140およびステップS180の処理は、オペレーションセンター30のPBX/CTI31で行われる。ステップS100では、ユーザからの電話の着信があるか否かを判定する。着信がないと判定すると着信が有るまでステップS100で待機し、着信があると判定するとステップS110に進む。ステップS110では、発信者電話番号の取得処理を行う。この時に、発信者非通知設定の状態で電話がかかってきており、発信者電話番号がない場合には、例えば、案内音声データベース45に予め登録されている「発信者番号が通知されていません」のようなメッセージを再生して、電話回線を切断する。
【0029】
ステップS120では、ステップS110で取得した発信者電話番号に基づいて、電話番号の認証を行う。この認証は、発信者電話番号がユーザプロファイルデータベース56に登録されているか否かに基づいて行う。ステップS120に続くステップS130では、ステップS120で行った電話番号の認証結果に基づいて、認証がOKであるか否かを判定する。取得した発信者電話番号がユーザプロファイルデータベース56に登録されており、認証がOKであると判定するとステップS140に進む。一方、認証がNGであると判定すると、ステップS180に進み、案内音声データベース45に予め登録されている「電話番号が登録されていないため、サービスを受けることができません」などのメッセージを再生して、電話回線を切断する。
【0030】
ステップS140では、ユーザからの電話を、電話回線が空いているオペレータにつないで、ステップS150に進む。ただし、空いている回線が無い場合には、例えば、案内音声データベース45に予め登録されている「ただ今、回線が混みあっております」のようなメッセージを再生する。
【0031】
ステップS150およびステップS160の処理は、検索システム34によって行われる。ステップS150では、オペレータによって、目的地を検索するのに必要な情報が入力されて、検索実行の指令が出されたか否かを判定する。オペレータは、発呼してきたユーザと会話することにより、目的地を検索するための住所、施設名、近傍の目印などの情報を聞き取り、検索システム34に入力する。
【0032】
図4は、検索システム34に含まれる検索処理端末32のディスプレイに表示される検索画面の一例を示す図である。検索処理端末32のディスプレイには、図4に示すように、名称入力欄71、住所入力欄72、ジャンル入力欄73、地図表示欄74、および、検索開始ボタン75が表示されている。名称入力欄71は、施設等の名称を入力する欄であり、住所入力欄72は、住所を入力する欄である。また、ジャンル入力欄73は、目的地のジャンルを入力する欄であり、例えば、「レストラン」、「公園」、「ガソリンスタンド」などを入力することができる。オペレータは、情報入力欄71〜73のうちのいずれか一つの欄だけに入力してもよいし、2つ、または、全ての欄に入力することもできる。
【0033】
地図表示欄74は、検索システム34によって検索された場所の周辺地図を表示する欄である。検索開始ボタン75は、目的地の検索を開始する際に、オペレータによって操作されるボタンである。
【0034】
ステップS150において、名称入力欄71、住所入力欄72、および、ジャンル入力欄73のうち、少なくとも1つの欄に、目的地を検索するための情報が入力されて、検索開始ボタン75が押されたと判定するとステップS160に進み、それ以外の場合には、ステップS150で待機する。
【0035】
ステップS160では、入力された情報に基づいて、位置/電話情報データベース41を参照することにより、目的地を検索する。検索システム34により検索された目的地のデータは、ユーザプロファイルデータベース56に保存(格納)される。データの保存は、データの送信要求をしてきたユーザのユーザ情報に対応させて保存しておく。
【0036】
ステップS160に続くステップS170において、車両用情報センター50の情報処理端末54は、データモードにより、ユーザプロファイルデータベース56に保存されている目的地のデータを、通信装置53を介して、車載機1に送信する。なお、データモードとは、データ通信によりデータを授受するためのモードであり、ここでは、データ通信用電話7に向けて、データを送信する。データ通信用電話7の電話番号は、ユーザプロファイルデータベース56に登録されているユーザ情報に含まれているため、目的地のデータとともに、ユーザプロファイルデータベース56から取得する。
【0037】
車載機1は、ステップS30において、車両用情報センター50がステップS170において送信した目的地のデータを受信したか否かを判定する。車両用情報センター50から、データモードによって送信されるデータは、データ通信用電話7を介して受信される。目的地のデータを受信していないと判定すると、受信するまでステップS30で待機し、受信したと判定するとステップS40に進む。ステップS40では、受信した目的地のデータに基づいて、ナビゲーションユニット2に目的地の設定処理を行う。
【0038】
一実施の形態における車両用情報提供システムでは、ユーザが目的地の場所や名称を明確に把握していない場合など、目的地の検索に時間がかかる場合において、目的地そのものの情報ではなく、目的地に関する情報に基づいて、仮の目的地を決定して、仮目的地のデータを車載機1に送信する。これにより、ナビゲーションユニット2には、目的地の位置または目的地への方向の目印となる仮目的地が設定される。仮目的地を決定して、車載機1に送信する処理と平行して、オペレータとユーザとの間では、目的地を絞り込む(決定する)会話が行われて、最終的に決定された目的地のデータが検索システム34で検索されて、車載機1に送信される。これにより、ユーザとオペレータとの間で目的地を絞り込む会話が行われている間でも、ナビゲーションユニット2は、設定された仮目的地への経路、すなわち、目的地周辺に向かうまでの経路を探索して、モニタ3に表示するので、目的地が決定される前に、目的地の方向へと車両を進めることが可能となる。
【0039】
図5は、仮目的地を決定して車載機1に送信するとともに、ユーザとオペレータとの間の会話で決定された目的地のデータを検索し、車載機1に送信する処理の流れを示すフローチャートである。図5のフローチャートでは、オペレータが行う処理、検索システム34によって行われる処理、および、情報処理端末54によって行われる処理をそれぞれ示している。ステップS200からステップS280までの処理は、図3に示すフローチャートのステップS140において、ユーザからの電話がオペレータにつながれて、ステップS170において、目的地のデータを車載機1に送信するまでの処理に対応する。
【0040】
ステップS200において、オペレータは、ユーザとの会話によって聞き取った内容を検索システム34の検索処理端末32に入力する。この内容は、目的地そのものの情報ではないが、目的地に関する情報である。例えば、ユーザから「東京駅周辺の○○銀行に行きたい」と聞いた場合には、検索処理端末32のディスプレイに表示される名称入力欄71に「東京駅」と入力する。また、ユーザが目的地の詳しい住所が分からないが、市の名前までは分かっている場合には、住所入力欄72に、例えば、「神奈川県厚木市」と入力する。また、ユーザから「名前をはっきりと覚えていないが、横浜市内の大きい公園に行きたい」と聞いた場合には、住所入力欄72に「神奈川県横浜市」と入力するとともに、ジャンル入力欄73に「公園」と入力する。
【0041】
すなわち、従来のシステムでは、オペレータは、ユーザとの会話で目的地を絞り込んでから、目的地のデータを検索処理端末32で検索していたが、一実施の形態における車両用情報提供システムでは、ユーザとの会話によって、目的地を絞り込んでいく前に、ユーザから聞いた内容に基づいて、目的地に関する情報(仮の目的地を決定するための情報)を検索処理端末32に入力する。オペレータが目的地に関する情報を入力して、検索開始ボタン75を押すと、ステップS210の処理に移行する。
【0042】
ステップS210において、検索システム34は、入力された情報に基づいて、位置/電話情報データベース41を参照することにより、仮目的地のデータを検索する。上述した例において、名称入力欄71に「東京駅」と入力された場合には、東京駅のデータが検索される。この場合、東京駅の位置が仮目的地として設定される。また、住所入力欄72に「神奈川県厚木市」と入力された場合のように、住所が市や町までしか入力されていない場合には、市や町に存在する施設等を検索する。
【0043】
ステップS210に続くステップS220では、検索処理端末32のディスプレイ上に検索結果を表示する。図6は、検索結果の一例を示す図である。図6は、住所入力欄72に「神奈川県厚木市」と入力された場合の検索結果の一例を示しており、厚木市内の施設の名称の一覧とともに、厚木市内の地図が地図表示欄74に表示されている。
【0044】
ステップS250において、オペレータは、検索処理端末32のディスプレイに表示された検索結果に基づいて、ユーザと会話を行い、目的地の絞り込みを行う。例えば、複数の検索結果が得られた場合には、得られた検索結果をユーザに伝えたり、地図表示欄74に表示されている地図を参照して、検索された施設の位置を伝えたりする。ユーザとの会話によって、目的地を絞り込んで決定すると、ステップS260に進む。ステップS260において、オペレータは、決定された目的地の情報を検索処理端末32に入力する。
【0045】
オペレータとユーザとの間で、目的地を絞り込む会話が行われている間に、検索システム34の検索処理端末32は、仮目的地のデータを位置/電話情報データベース41から取得する。入力された情報が「東京駅」のように、1つの施設等の場合には、その施設等が仮目的地となるので、その施設のデータを取得する。また、「神奈川県厚木市」のように、住所が市や町までしか入力されていない場合には、市や町の中心地を仮目的地として、データを取得する。市や町の中心地のデータは、位置/電話情報データベース41に予め登録しておけばよい。また、例えば、市役所や町役場の位置を中心地とみなして、仮目的地に設定して、市役所や町役場のデータを取得することもできる。
【0046】
ステップS240において、情報処理端末54は、通信装置53を介して、検索システム34にて取得された仮目的地のデータを車載装置1に送信する。この場合、送信するデータが目的地のデータではなく、仮目的地のデータであることが識別できるように、例えば、フラグデータを付して送信する。
【0047】
車載機1側では、受信した仮目的地のデータに基づいて、ナビゲーションユニット2に仮目的地を設定する。この場合、ナビゲーションユニット2は、仮目的地までのルートを探索して、探索したルートをモニタ3に表示してもよいし、仮目的地の方向が分かるように、現在地周辺の地図上に、仮目的地の方向を示す矢印を重畳表示するようにしてもよい。図7は、現在地周辺の地図上に、矢印で目的地の方向を示した表示例である。いずれの表示方法でも、モニタ3に表示している情報が仮目的地に関する情報であることがユーザに分かるように、表示しておくことが好ましい。図7に示す表示例では、「神奈川県厚木市方面」と表示することにより、ユーザは、目的地への方向が示されているだけであることを知ることができる。
【0048】
一方、ステップS270において、検索システム34の検索処理端末32は、ステップS260においてオペレータが入力した情報に基づいて、位置/電話情報データベース41を参照することにより、目的地のデータを検索する。目的地のデータを検索すると、ステップS280に移行する。ステップS280において、情報処理端末54は、通信装置53を介して、検索処理端末32にて検索された目的地のデータを車載装置1に送信する。車載機1側では、仮目的地のデータを消去するとともに、受信した目的地のデータに基づいて、ナビゲーションユニット2に目的地を設定する。
【0049】
一実施の形態における車両用情報提供システムは、情報センター20のオペレータが、車両に搭載されているナビゲーションユニット2に設定する目的地の情報をユーザから聞いて、目的地を検索し、検索した目的地のデータを車載機1に送信することにより、ナビゲーションユニット2に目的地を設定するシステムであって、情報センター20は、オペレータが検索システム34の検索処理端末32に入力した目的地に関する情報に基づいて、仮の目的地を決定し、決定した仮目的地のデータを探索して、車載機1に送信する。仮目的地のデータを受信した車載機1は、ナビゲーションユニット2に仮目的地を設定する。これにより、ユーザが目的地の名称等をはっきりと覚えておらず、ユーザとオペレータとの間の会話によって、ナビゲーションユニット2に設定する目的地が絞り込まれるまでに時間がかかる場合でも、ナビゲーションユニット2に設定された仮目的地を目標として、車両を進めることができる。すなわち、ナビゲーションユニット2に目的地が設定されるまでに時間がかかり、目的地の方向が把握できるまで車両を発進させることができないという事態を防ぐことができる。
【0050】
従来の車両用情報提供システムでは、車両が既に走行している場合において、情報センター20から目的地のデータを車載機1に送信するのに時間がかかる場合には、ナビゲーションユニット2に目的地が設定されるまでの間に、実際の目的地と逆の方向へ、かなりの距離を車両が走行してしまっているという事態も生じうる。しかし、一実施の形態における車両用情報提供システムによれば、目的地のデータが車載機1に送信される前に、仮目的地のデータを送信して、ナビゲーションユニット2に設定するので、ドライバは、ナビゲーションユニット2に設定された仮目的地の位置または方向を確認することにより、正しい方向へと車両を進めることができる。
【0051】
本発明は、上述した一実施の形態に限定されることはない。例えば、図3に示すフローチャートのステップS120では、携帯電話番号に基づいて、ユーザの認証を行っているが、ユーザ登録が行われた後に発行されるユーザIDに基づいてユーザ認証を行うこともできる。また、車載機1に固有の車載機IDに基づいてユーザ認証を行ってもよい。この場合、車載機IDは、例えば、車載機1の工場出荷時にシリアルIDを書き込んでおき、ユーザ登録時にユーザが申込書に車載機シリアルIDを記載して申し込むようにする。すなわち、発呼してきたユーザが利用している車載機1が特定できて、データ通信を行う際に、特定した車載機1に対して、仮目的地のデータおよび目的地のデータが送信できれば良く、車載機1を特定するためのユーザ認証方法は、上述した方法に限定されることはない。
【0052】
上述した一実施の形態では、ユーザがオペレータと会話するための携帯電話4とは別に、データ通信を行うためのデータ通信用電話7を設ける例を挙げて説明したが、音声による会話と、データ通信とを行える電話機であれば、1台だけ設ければよい。
【0053】
ナビゲーションユニット2に仮目的地が設定された場合、モニタ3に、仮目的地までのルートを表示する方法や、仮目的地への方向を表示する方法を例に挙げて説明した。しかし、これらの表示方法以外にも、例えば、設定された仮目的地に基づいて演算される仮目的地へのルートのうち、目的地に向かうために必ず通ると考えられる道のみを表示するようにしてもよい。また、仮目的地のルートを表示する場合には、目的地へのルートと区別するために、目的地へのルートを表示する際の色と異なる色を用いるようにしてもよい。
【0054】
車載機1が仮目的地のデータを受信した際に、仮目的地の位置が車両の現在位置に近い場合には、目的地の位置に対して、仮目的地の位置精度が低いと判断して、仮目的地の位置または方向をモニタ3上に表示しないようにすることもできる。上述したように、住所を市までしか入力しない場合には、市の中心地を仮目的地として設定するために、車両の現在地がその市内にある場合には、仮目的地の位置精度は低くなる。従って、例えば、仮目的地の位置が車両の現在位置から所定の距離内にある場合には、仮目的地の位置精度が低いと判断して、仮目的地の情報を表示しないようにすれば、車両を誤った方向に導いてしまうことを防ぐことができる。この場合には、仮目的地の位置精度が低い旨をモニタ3に表示するようにしてもよい。
【0055】
仮目的地の位置精度が低いか否かを車載機1側ではなく、情報センター20側で判断することもできる。すなわち、車載機1側で検出した車両の現在位置のデータを情報センター20内の車両用情報センター50に送信すれば、車両用情報センター50において、検索された仮目的地のデータと、車両の現在位置のデータとに基づいて、仮目的地の位置精度が低いか否かを判断することができる。この場合、仮目的地の位置精度が低いと判断すると、仮目的地のデータを車載機1に送信しないので、利用できないデータが車載機1に送信されてしまうのを防ぐことができる。
【0056】
仮目的地の位置が車両の現在位置から遠い場合には、仮目的地までのルートを演算して、演算したルートを表示し、仮目的地の位置が車両の現在位置から近い場合には、仮目的地の方向のみを表示するようにしてもよい。
【0057】
上述した一実施の形態では、1度だけ仮目的地を探索して、車載機1に送信する例を挙げて説明したが、仮目的地の探索・送信処理は、複数回行うことができる。すなわち、ユーザとオペレータとの会話によって、目的地が絞り込まれていく課程において、目的地に向かうための目印となる地点が明らかになっていく度に、その明らかとなった地点を仮目的地として設定していけば、目的地に近い地点を仮目的地として順次設定していくことができる。従って、車載機1は、仮目的地のデータを受信する度に、目的地により近い位置の情報をモニタ3に表示することができる。
【0058】
検索システム34において検索された仮目的地のデータおよび目的地のデータは、ユーザプロファイルデータベース56に一旦格納するものとしたが、格納せずに、車両用情報センター50の情報処理端末54に送信するようにしてもよい。
【0059】
特許請求の範囲の構成要素と一実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、情報センター20の検索システム34が仮目的地決定手段およびデータ検索手段を、通信装置53が送信手段および受信手段をそれぞれ構成し、車載機1のナビゲーションユニット2が目的地設定手段を、データ通信用電話7が受信手段をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による車両用情報提供システムの一実施の形態の全体構成を示す図
【図2】ナビゲーションユニットの詳細な構成を示す図
【図3】一実施の形態における車両用情報提供システムにおいて、車載機と情報センターとでそれぞれ行われる処理内容を示すフローチャート
【図4】検索システムのディスプレイに表示される検索画面の一例を示す図
【図5】仮目的地を決定して車載機1に送信するとともに、目的地を絞り込んで、目的地のデータを検索し、車載機に送信する処理の流れを示すフローチャート
【図6】検索結果の一例を示す図
【図7】現在地周辺の地図上に、矢印で目的地の方向を示した表示例を示す図
【符号の説明】
【0061】
1…車載機、2…ナビゲーションユニット、3…モニタ、4…携帯電話、5…通信アダプタ、6…電話ハーネス、7…データ通信用電話、8…マイク、9…スピーカ、10…GPSアンテナ、11…操作スイッチ、12…オペレータ呼び出しスイッチ、13…表示処理部、14…通信処理部、15…音声制御部、16…車速センサ、17…位置演算部、18…地図データ部、19…入力処理部、20…情報センター、21…メモリ、30…オペレーションセンター、31…PBX/CTI、32…検索処理端末、33…電話機、34…情報検索システム、36…ヘッドセット、37…ネットワーク、39…入力機器、40…情報データベース群、41…位置/電話情報データベース、42…交通情報データベース、43…天気予報データベース、44…各種情報データベース、45…案内音声データベース、50…車両用情報センター、52…PBX/CTI、53…通信装置、54…情報処理端末、55…一般電話回線網、56…ユーザプロファイルデータベース、60…カスタマーセンター、62…カスタマー登録システム、63…インターネット、65…ユーザPC、66…カスタマー管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報センターのオペレータが、カーナビゲーション装置への設定を希望する目的地の情報をユーザから聞いて、検索装置に入力し、前記検索装置で検索された目的地のデータを車載機に送信することにより、カーナビゲーション装置に目的地を設定する車両用情報提供方法において、
ユーザとオペレータとの間で目的地を決定するための会話が行われて、決定された目的地のデータが前記検索装置で検索されて車載機に送信される前に、オペレータによって前記検索装置に入力された目的地に関する情報に基づいて、仮の目的地を決定し、
決定した仮目的地のデータを検索し、
検索した仮目的地のデータを車載機に送信して、カーナビゲーション装置に仮目的地を設定することを特徴とする車両用情報提供方法。
【請求項2】
カーナビゲーション装置に設定する目的地のデータを検索して、車載機に送信する車両用情報提供装置において、
目的地に関する情報に基づいて、仮の目的地を決定する仮目的地決定手段と、
前記仮目的地決定手段によって決定された仮目的地のデータを検索するデータ検索手段と、
前記データ検索手段で検索された仮目的地のデータを車載機に送信する送信手段とを備えることを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用情報提供装置において、
前記仮目的地決定手段は、前記目的地に関する情報が、広がりのある範囲に関する情報である場合には、その範囲の中心地を仮目的地として決定することを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両用情報提供装置において、
車載機から送信される車両の現在地情報を受信する受信手段をさらに備え、
前記送信手段は、前記受信手段によって受信された車両の現在地と、前記仮目的地決定手段により決定された仮目的地とが所定距離以内にある場合には、仮目的地のデータを車載機に送信しないことを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項5】
情報センターのオペレータが、カーナビゲーション装置への設定を希望する目的地の情報をユーザから聞いて、目的地のデータを検索し、検索した目的地のデータを車載機に送信することにより、カーナビゲーション装置に目的地を設定する車両用情報提供システムにおいて、
情報センターは、目的地に関する情報に基づいて、仮の目的地を決定する仮目的地決定手段と、前記仮目的地決定手段によって決定された仮目的地のデータを検索するデータ検索手段と、前記データ検索手段によって検索された仮目的地のデータを車載機に送信する送信手段とを備え、
車載機は、情報センターの送信手段から送信される仮目的地のデータを受信する受信手段と、前記受信手段で受信された仮目的地のデータをカーナビゲーション装置に設定する目的地設定手段とを備えることを特徴とする車両用情報提供システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用情報提供システムにおいて、
車載機は、カーナビゲーション装置によって探索される仮目的地までのルートを表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする車両用情報提供システム。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用情報提供システムにおいて、
車載機は、カーナビゲーション装置に設定された仮目的地の方向を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする車両用情報提供システム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の車両用情報提供システムにおいて、
前記表示手段は、前記受信手段で受信された仮目的地と車両の現在地とが所定距離以内にある場合には、仮目的地の情報を表示しないことを特徴とする車両用情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−284228(P2006−284228A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101521(P2005−101521)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】