説明

車両用空調装置

【課題】車両に人が乗り込む前にドライバーシート1の着座面を短期間で温度調節する。
【解決手段】車両に人が乗り込む前に車室内でシート1、2側に配置されたコンソール空調ユニット90からの冷風によりドライバーシート1の着座面の温度を調節するので、ドライバーシート1の着座面の温度を短期間で温度調節できる。また、ドライバーシート1に内蔵されたシートヒータ69aによりドライバーシート1を暖めるので、着座面の温度を短期間で温度調節できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に人が乗り込む前に車室内を温度調整する車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の空調装置では、車室内の前方側に配置されたフロント室内空調ユニットを備え、このフロント室内空調ユニットの吹出口から吹き出される空調風により、車両に人が乗り込む前に車室内の温度を設定温度に調整するものがある。
【特許文献1】特開2004−106694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の車両用空調装置では、当該車両に人が乗り込む前にフロント空調ユニットから吹き出される空調風によりシートの着座面を温度調節させるようにする場合には、フロント室内空調ユニットの吹出口とシートとが離れているため、シートの着座面の温度が設定温度に到達するには長い時間がかかる。これに伴い、フロント室内空調ユニットを構成する送風機等の電気機器に過大な電力を消費されるため、車載バッテリの充電量の不足を招くことがある。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、車両に人が乗り込む前にシートの着座面を短期間で温度調節できるようにした車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内のシート側に配置され、バッテリから電力供給されて前記シートの着座面に空調風を吹き出す第1の空調ユニット(90)と、
当該車両に人が乗り込む前に前記第1の空調ユニット(90)を制御して前記シートの着座面の温度を調節させる空調制御手段(S100、S110、120、130、145、170)と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
これにより、車室内のシート側に配置された第1の空調ユニット(90)からの空調風によりシートの着座面の温度を調節するので、当該車両に人が乗り込む前にシートの着座面の温度を短期間で温度調節できる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、前記第1の空調ユニット(90)は冷風を吹き出すものであり、
前記空調制御手段は、前記第1の空調ユニット(90)を制御して前記シートの着座面の温度を前記冷風により調節することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、前記第1の空調ユニット(90)は、冷媒の蒸発により空気を冷却して前記冷風を発生する第1の熱交換器(93)を備え、
冷媒の蒸発により空気を冷却する第2の熱交換器(30)を有し、前記第2の熱交換器(38)を通過した空気を車室内に吹き出す第2の空調ユニット(30)と、
前記第1、第2の熱交換器とともに冷凍サイクルを構成し、前記冷媒を圧縮して前記第1、第2の熱交換器に向けて吐出する圧縮機(40)と、
前記圧縮機の冷媒吐出口側と前記第2の熱交換器の冷媒流入口側との間を接続、或いは遮断する弁(43)と、を備え、
前記空調制御手段は、前記圧縮機の冷媒吐出口側と前記第2の熱交換器の冷媒流入口側との間を前記弁により遮断した状態で、前記第1の空調ユニット(90)を制御して前記シートの着座面の温度を前記空調風により調節することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、前記第1の空調ユニット(90)は、前記シートとしてのドライバーシートの着座面と、パッセンジャーシートとのそれぞれに空調風を吹き出し可能に構成されており、
前記空調制御手段は、前記第1の空調ユニット(90)を制御して、前記ドライバーシートの着座面を前記パッセンジャーシートの着座面より優先して温度調節することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明では、車室内のシートに配置され、バッテリから電力供給されて前記シートの着座面を加熱する電気ヒータ(69a、69b)と、
当該車両に人が乗り込む前に前記電気ヒータを制御して前記シートの着座面を温度調節するヒータ制御手段(S100、S110、120、130、140、170)と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、シートに配置された電気ヒータによりシートの着座面の温度を調節するので、当該車両に人が乗り込む前にシートの着座面の温度を短期間で温度調節できる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、前記電気ヒータは、前記シートとしてのドライバーシートに配置された第1の電気ヒータ(69a)とパッセンジャーシートに配置された第2の電気ヒータ(69b)であり、
前記ヒータ制御手段は、前記第1、第2の電気ヒータを制御して前記ドライバーシートを前記パッセンジャーシートより優先して温度調節することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明では、前記バッテリから電力供給されて車室内のステアリングに空調風を吹き出す第3の空調ユニット(30)と、
前記バッテリの充電量が閾値未満であるか否かを判定する充電量判定手段(S150)と、
前記バッテリの充電量が閾値以上であると前記充電量判定手段が判定すると、前記第3の空調ユニット(30)を制御して前記空調風をステアリングに向けて吹き出すステアリング温度制御手段(S160)と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明では、前記シートの着座面の吹出口から空調風を吹き出すシート空調ユニット(90)と、
当該車両に人が乗り込んだ後に前記シート空調ユニットを制御して、前記シートの着座面の吹出口から空調風を吹き出させるシート空調制御手段(S200、S220)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明では、乗員が一人である否かを判定する乗員判定手段(S190)を備えており、
前記シート空調ユニットは、前記シートとしてのドライバーシートの着座面の吹出口と、パッセンジャーシートの着座面の吹出口とからそれぞれ空調風を吹き出し可能に構成されており、
前記乗員が一人であると前記乗員判定手段が判定したとき、前記シート空調制御手段(S200)は、前記シート空調ユニット(90)を制御して、前記ドライバーシートの着座面の吹出口のみから空調風を吹き出させることを特徴とする。
【0016】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1、図2、図3に本発明に係る車両用空調装置の一実施形態の概略構成を示す。
【0018】
図1は車両用空調装置の車室内の配置を示す図であり、図2は車両用空調装置の構成を示す図であり、図3は車両用空調装置の車室内の配置を示す斜視図である。
【0019】
車両用空調装置は、図1に示すように、フロント空調ユニット30を備えている。フロント空調ユニット30(第3の空調ユニット)は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)1内側部等に配設される。フロント空調ユニット30は、図2に示すように、ケース31を有し、このケース31内に車室内へ向かって空気が送風される空気通路を構成する。
【0020】
ケース31の空気通路の最上流部に内外気切替箱32を配置し、内気導入口33および外気導入口34を内外気切替ドア35により切替開閉するようになっている。この内外気切替ドア35はサーボモータ36によって駆動される。
【0021】
内外気切替箱32の下流側には車室内に向かって空気を送風する電動式の送風機37を配置している。この送風機37は、遠心式の送風ファン37aをモータ37bにより駆動するようになっている。送風機37の下流側には送風空気を冷却する冷却用熱交換器38を配置している。
【0022】
冷却用熱交換器38は、冷凍サイクル装置39を構成する要素の一つであり、低温低圧の冷媒が送風空気から吸熱して蒸発することにより送風空気を冷却する。
【0023】
冷凍サイクル装置39は周知のものであり、コンプレッサ40の吐出側から、凝縮器41、受液器42および減圧手段をなす膨張弁43を介して冷却用熱交換器38に冷媒が循環するように構成されている。膨張弁43は電動弁から構成され、冷媒流路の絞り量を弁体により調整以外に、冷媒流路を弁体により全閉する機能を有する。
【0024】
凝縮器41には電動式の冷却ファン41aによって室外空気(冷却空気)が送風される。この冷却ファン41aはモータ41bによって駆動される。
【0025】
冷凍サイクル装置39において、コンプレッサ40としては、電動モータにより駆動される電動コンプレッサが用いられる。
【0026】
一方、フロント空調ユニット30において、冷却用熱交換器38の下流側にはケース31内を流れる空気を加熱するヒータユニット44を配置している。このヒータユニット44は車両エンジンの温水(すなわち、エンジン冷却水)を熱源として、冷却用熱交換器38の通過後の空気(冷風)を加熱する加熱用熱交換器である。
【0027】
ヒータユニット44の側方にはバイパス通路45が形成され、このバイパス通路45をヒータユニット44のバイパス空気が流れる。冷却用熱交換器38とヒータユニット44との間に温度調整手段をなすエアミックスドア46を回転自在に配置してある。このエアミックスドア46はサーボモータ47により駆動されて、その回転位置(開度)が連続的に調整可能になっている。
【0028】
このエアミックスドア46の開度によりヒータユニット44を通る空気量(温風量)と、バイパス通路45を通過してヒータユニット44をバイパスする空気量(冷風量)との割合を調節し、これにより、車室内に吹き出す空気の温度を調整するようになっている。
【0029】
ケース31の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラス12に向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ開口部48、乗員の顔部に向けて空調風を吹き出すためのフェイス開口部49、および乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのフット開口部50の計3種類の開口部が設けられている。
【0030】
これら開口部48〜50の上流部にはデフロスタドア51、フェイスドア52、およびフットドア53が回転自在に配置されている。これらのドア51〜53は、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ54によって開閉操作される。
【0031】
ここで、フェイス開口部49はダクト490を通して吹出口491、492、493、494に連通している。吹出口491は、運転席側でステアリング3の前方に配置されている。吹出口492は、運転席側で車幅方向中央側に配置されている。吹出口493は、助手席側で車幅方向中央側に配置されている。吹出口494は、車幅方向中央部を中心として吹出口491に対して線対称となる位置に配置されている。
【0032】
吹出口491、492、493、494には、それぞれルーバー500が設けられている。図4に、ルーバー500を車両後側から視た図を示す。
【0033】
ルーバー500は、5枚の縦羽板501と5枚の横羽板502とから構成されている。5枚の縦羽板501はその揺動により風向き左右方向に調整し、5枚の横羽板502はその揺動により風向き上下方向に調整する。さらにルーバー500は5枚の縦羽板501と5枚の横羽板502とにより吹出口を閉じることも可能である。
【0034】
車両用空調装置は、図1に示すように、第1の空調ユニット(或いは、シート空調ユニット)としてのコンソール空調ユニット90を備える。コンソール空調ユニット90は、ドライバーシート(運転席)1とパッセンジャーシート(助手席)2との間(すなわち、車両幅方向中央部)に配置されている。
【0035】
コンソール空調ユニット90は、ケーシング91を備えており、ケーシング91は、内気導入孔91aを備えている。
【0036】
ケーシング91内には、電動送風機92が配置されている。電動送風機92は、ケーシング91内において最上流部に配置されており、電動送風機92は、遠心式の送風ファン92bを電動モータ92aにより駆動されるようになっている。電動送風機92は、車室内空気を内気導入口91aから導入して開口部910、911、912、913側に向けて吹き出す。
【0037】
ケーシング91内には、冷却用熱交換器93が配置されている。冷却用熱交換器93は、電動送風機92の空気下流側に配置されて、電動送風機92からの送風空気を冷媒の蒸発により冷却する。これにより、冷却用熱交換器93から冷風が吹き出されることになる。
【0038】
冷却用熱交換器93は、コンプレッサ40からの冷媒流れに対して冷却用熱交換器38と並列に配置されている。冷却用熱交換器93に対して冷媒上流側には、電動弁としての膨張弁93aが配置されている。膨張弁93aは電動弁から構成され、冷媒流路の絞り量を弁体により調整以外に、冷媒流路を弁体により全閉する機能を有する。
【0039】
ケーシング91内には、電気ヒータ94(例えば、PTCヒータ)が配置されている。電気ヒータ94は冷却用熱交換器93から吹き出される冷風を加熱して温度調整して空調風を発生する。
【0040】
また、ケーシング91は、開口部910、911、912、913を備えている。
【0041】
開口部910は、ドライバーシート1のシートクッション1aおよびシートバック1bに向けて空調風を吹き出す。
【0042】
開口部911はドライバーシート1内のダクト(図示省略)を通して多数の微小吹出口100に向けて冷風を吹き出す。多数の微小吹出口100はシートクッション1aおよびシートバック1bのそれぞれに設けられている。
【0043】
開口部912は、パッセンジャーシート2のシートクッション2aおよびシートバック2bに向けて冷風を吹き出す。
【0044】
開口部911はパッセンジャーシート2内のダクト(図示省略)を通して多数の微小吹出口100に向けて冷風を吹き出す。多数の微小吹出口100はシートクッション2aおよびシートバック2bのそれぞれに設けられている。
【0045】
開口部910、912にはルーバー500がそれぞれ配置されている。ルーバー500は開口部910(912)から吹き出される風向きを調整する。開口部911、913の上流側にはドア911a、913aが回転自在に配置されている。各ルーバー500およびドア911a、913aは、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ920によって開閉操作される。
【0046】
次に、本実施形態の電気的構成について図2を参照して説明する。
【0047】
空調用電子制御装置26(図中空調ECUと記す)は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この空調用電子制御装置26は、そのROM内に空調制御のためのコンピュータプログラムを記憶しており、そのコンピュータプログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
【0048】
空調用電子制御装置26には、センサ群61〜66、67a、67b、68a、68bからの検出信号、空調操作パネル70、および照合ECU80からの各種信号が入力される。
【0049】
センサ群としては、具体的には、外気温(車室外温度)Tamを検出する外気センサ61、内気温(車室内温度)Trを検出する内気センサ62、車室内に入射する日射量Tsを検出する日射センサ63、冷却用熱交換器38の空気吹出部に配置されて冷却用熱交換器吹出空気温度Teを検出する冷却用熱交換器温度センサ64、ヒータユニット44に流入する温水(エンジン冷却水)温度Twを検出する水温センサ65、運転者(或いはドライバーシート)の表面温度Tirを検出する赤外線センサ66等が設けられている。赤外線センサ66は、運転者から入射される赤外線に基づいて表面温度Tirを非接触で検出する。
【0050】
センサ67aは、ドライバーシート1に内蔵されて乗員の着座を検出するための着座センサであって、ドライバーシート1に対する乗員の着座によりオンする常開型スイッチである。
【0051】
センサ67bは、パッセンジャーシート2に内蔵されて乗員の着座を検出するための着座センサであって、パッセンジャーシート2に対する乗員の着座によりオンする常開型スイッチである。
【0052】
センサ68aは、高電圧バッテリBhの充電量を検出するためのセンサである。具体的には、センサ68aは、高電圧バッテリBhのプラス電極の電位を検出するセンサと高電圧バッテリBhに充電、或いは放電する電流を検出するセンサとから構成されている。
【0053】
センサ68bは、低電圧バッテリBLの充電量を検出するためのセンサである。具体的には、センサ68bは、低電圧バッテリBLのプラス電極の電位を検出するセンサと低電圧バッテリBLに充電、或いは放電する電流を検出するセンサとから構成されている。
【0054】
また、空調操作パネル70には各種空調操作部材として、車室内の設定温度Tsetを設定する温度設定手段をなす温度設定スイッチ71、吹出モードドア51〜53により切り替わる吹出モードをマニュアル設定する吹出モードスイッチ72、内外気切替ドア35による内外気吸込モードをマニュアル設定する内外気切替スイッチ73、コンプレッサ40の作動指令信号を出すエアコンスイッチ74、送風機37の風量をマニュアル設定する送風機作動スイッチ75、空調自動制御状態の指令信号を出すオートスイッチ76等が設けられる。
【0055】
照合ECU80は、携帯無線端末81との間の無線通信を介して、携帯無線端末81から送信される登録コードが予め決められたコードと一致するか否かを判定し、双方のコードが一致するときには、ドアロックの解除を許可するものである。
【0056】
本実施形態の携帯無線端末81には、後述するプレ空調モードの実施を指令するための操作スイッチ81aが設けられており、携帯無線端末81は、操作スイッチ81aが操作されると、プレ空調モードの開始を指令するための指令信号を送信する。
【0057】
空調用電子制御装置26の出力側には、コンプレッサ40の駆動用の電動モータに制御信号を出力するインバータ回路(図中A/C INVと記す)40a、各機器の電気駆動手段をなすサーボモータ36、47、54、510、920、送風機37、92のモータ37b、92a、凝縮器冷却ファン41aのモータ41b等が接続され、これらの機器の作動が空調用電子制御装置26の出力信号により制御される。
【0058】
また、本実施形態では、電子制御装置26、サーボモータ36、47、54、510、920、送風機37、92のモータ37b、92a、凝縮器冷却ファン41aのモータ41bは、低電圧バッテリBLから電力供給される。インバータ回路40aは、高電圧バッテリBhから電力供給される。
【0059】
また、本実施形態では、シートヒータ69a、69bが設けられている。シートヒータ69aは、ドライバーシート1内に配置されている電気ヒータである。
【0060】
シートヒータ69aは、シートクッション1aからシートバック1bに亘って配置されている。シートヒータ69bはパッセンジャーシート2内に配置されている電気ヒータである。シートヒータ69bは、シートクッション2aからシートバック2bに亘って配置されている。シートヒータ69a、69bは空調用電子制御装置26により制御される。
【0061】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。
【0062】
まず、空調用電子制御装置26は、図6、図7に示すフローチャートにしたがって、プレ空調制御処理を実行する。プレ空調制御処理は、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を行うための処理であって、一定期間毎に繰り返される。
【0063】
まず、ステップS100において、携帯無線端末81から送信されるプレ空調指令信号を照合ECU80を介して受信したか否かを判定する。
【0064】
プレ空調指令信号は、携帯無線端末81の操作スイッチ81aが操作されると、携帯無線端末81から送信されるものである。
【0065】
このとき、携帯無線端末81から送信されるプレ空調指令信号を照合ECU80を介して受信したときには、車室内を除湿するプレ空調モードの実施の開始を決定して、ステップS110に移行する。
【0066】
ここで、必要吹き出し温度TAOを算出する。必要吹き出し温度TAOは、車室内の空調負荷の変動にかかわらず、車室内空気温度を希望温度Tsetに維持するために必要である吹出空気温度である。必要吹き出し温度TAOの算出方法は、周知のものであって、外気温Tam、内気温Tr、日射量Ts、冷却用熱交換器吹出空気温度Te等から算出される。
【0067】
次に、ステップS120において、必要吹き出し温度TAOが43℃以上であるか否かを判定する。
【0068】
このとき、必要吹き出し温度TAOが43℃以上あるときには(TAO≧43℃)、YESと判定してステップS140に移行して、シートヒータ69aに通電する。このため、ドライバーシート1のシートクッション1aおよびシートバック1bは暖められる。その後、ステップS150に移行する。
【0069】
また、ステップS120において、必要吹き出し温度TAOが43℃以下であるときには、ステップS130において、必要吹き出し温度TAOが20℃以下であるか否かを判定する。
【0070】
必要吹き出し温度TAOが20℃以下であるときには、YESと判定して、ステップS145に移行する。
【0071】
ステップS145では、コンソール空調ユニット90からドライバーシート1のシートクッション1aおよびシートバック1bに空調風として冷風を吹き出させる。
【0072】
具体的には、インバータ回路40aを制御してコンプレッサ40を稼働して、かつ膨張弁43によりコンプレッサ40と冷却用熱交換器38との間を遮断する。このため、コンプレッサ40から吐出された冷媒は、凝縮器41→受液器42→膨張弁93a→冷却用熱交換器93→コンプレッサ40の順に冷媒が流れる。
【0073】
さらに、電動モータ92aを駆動して電動送風機92により送風させる。
【0074】
このため、電動送風機92からの送風空気が冷却用熱交換器93を通過する際に、送風空気が冷却用熱交換器93内の冷媒の蒸発により冷却される。このため、
冷却用熱交換器93から冷風が吹き出される。この冷風は、電気ヒータ94を通過する。なお、冷風に対する電気ヒータ94の発熱量は、必要吹き出し温度TAOに基づいて決められ。
【0075】
さらに、サーボモータ920によってドア910aだけを開放させる。このため、開口部910から冷風がドライバーシート1のシートクッション1aの表面(着座面)およびシートバック1bの表面(着座面)に向けて吹き出される。
【0076】
このようにステップS1145、或いはステップS140の処理を終えると、ステップS150(充電量判定手段)に移行して、センサ68a、68bに基づいて、バッテリBh、BLのそれぞれの充電量が一定値以上であるか否かを判定する。
【0077】
なお、バッテリBh、BLのそれぞれの充電量の検出については周知であるため、省略する。
【0078】
バッテリBh、BLのそれぞれの充電量が一定値未満であるときには、ステップS150においてNOと判定して、ステップS155に移行する。このとき、ステップS145、或いはステップS140の処理を停止する。
【0079】
一方、バッテリBh、BLのそれぞれの充電量が一定値以上であるときには、ステップS150においてYESと判定してステップS160に移行する。これに伴い、フロント空調ユニット30を稼働させる(ステアリング温度調節手段)。このとき、膨張弁43によりコンプレッサ40と冷却用熱交換器38との間を接続する。このため、コンプレッサ40から吐出された冷媒は、凝縮器41、受液器42、および膨張弁93aを経て冷却用熱交換器93に流れ込む。
【0080】
さらに、サーボモータ54によりドア52によりフェイス開口部49を開け、かつドア51、53により開口部50、51を閉じる。
【0081】
サーボモータ510により吹出口492、493、494のそれぞれのルーバー500により吹出口492、493、494を閉じ、かつサーボモータ510により吹出口491のルーバー500により吹出口491から吹き出される風向をステアリング3に向ける。
【0082】
このため、送風機37からの送風空気は、冷却用熱交換器38、ヒータユニット44、およびエアミックスドア46により温度調節されて冷風として吹出口491からステアリング3に向けて吹き出される。このため、ステアリング3の温度が冷風により調整される。
【0083】
次に、ステップ170で、ドライバーシートの表面温度が設定温度Tsetに到達したか否かを判定する。
【0084】
具体的には、赤外線センサ66の検出温度Tirと設定温度Tsetとの差ΔT(=Tir−Tset)の絶対値|ΔT|を求め、この|ΔT|が一定値未満であるか否かを判定する。
【0085】
|ΔT|が一定値以上であるときには、ドライバーシートの表面温度が設定温度Tsetに到達していないとしてNOと判定して、ステップS100に移行する。
【0086】
一方、|ΔT|が一定値未満であるときには、ドライバーシートの表面温度が設定温度Tsetに到達したとしてYESと判定して、ステップS170に移行する。
【0087】
次のステップ175にいて、人が乗車したか否かを判定する。具体的には、センサ67a、67に基づいてシート1、2のいずれかに乗員が着座したか否かを判定する。
【0088】
ここで、乗員が着座していなく、人が乗車していないとしてNOと判定したときには、ステップS100に戻り、ステップS100〜S170の処理を繰り返す。そして、シート1、2のいずれかに乗員が着座したときには、人が乗車していたとしてYESと判定する。
【0089】
次に、ステップS190(乗員判定手段)で乗員が一人であるか否かを判定する。ドライバーシート1にだけ乗員が着座したときには、YESとして判定する。この場合には、ステップ200に移行してドライバーシート1にだけ優先して空調させる。
【0090】
具体的には、サーボモータ920を制御して、ドア913aおよび開口部912のルーバー500を駆動して開口部913、912を閉じた状態で、開口部910のルーバー500を駆動して開口部910からの風向をドライバーシート1の乗員の太股付近と胸付近とに向ける。
【0091】
これに伴い、開口部910から空調風はドライバーシート1の乗員の太股と胸付近とをかすめるように吹き出される。
【0092】
これに加えて、ドア911aを駆動して開口部911を開ける。このため、開口部911から吹き出される空調風は、ドライバーシート1のシートクッション1a微小吹出口100と、シートバック1bの微小吹出口100とからそれぞれ吹き出される。これにより、ドライバーシート1の着座面のうち乗員の接触面の温度を調整することができる。
【0093】
また、ドライバーシート1に加えて、パッセンジャーシート2に乗員が着座したときには、ステップS190でNOとして判定する。この場合には、ステップS220に移行して、サーボモータ920によりルーバー500、ドア911a、913aを駆動して、着座席分のシートの空調、すなわちシート1、2に対する空調を行う。
【0094】
具体的には、開口部910のルーバー500を駆動して開口部910からの風向をドライバーシート1の乗員の太股付近と胸付近とに向ける。これに伴い、開口部910から空調風はドライバーシート1の乗員の太股と胸付近とをかすめるように吹き出される。
【0095】
これに加えて、ドア911aを駆動して開口部911を開ける。このため、開口部911から吹き出される空調風は、ドライバーシート1のシートクッション1aの微小吹出口100と、シートバック1bの微小吹出口100とからそれぞれ吹き出される。これにより、ドライバーシート1の着座面のうち乗員の接触面の温度を調整することができる。
【0096】
さらに、開口部912のルーバー500を駆動して開口部912からの風向をパッセンジャーシート2の乗員の太股付近と胸付近とに向ける。これに伴い、開口部912から空調風はパッセンジャーシート2の乗員の太股と胸付近とをかすめるように吹き出される。
【0097】
これに加えて、ドア913aを駆動して開口部913を開ける。このため、開口部913から吹き出される空調風は、パッセンジャーシート2のシートクッション2aの微小吹出口100と、シートバック2bの微小吹出口100とからそれぞれ吹き出される。これにより、パッセンジャーシート2の着座面のうち乗員の接触面の温度を調整することができる。なお、ステップS200、S220は、シート空調制御手段を構成している。
【0098】
以上説明した本実施形態によれば、車室内でシート1、2側に配置されたコンソール空調ユニット90からの冷風によりドライバーシート1の着座面の表面温度を調節するので、ドライバーシート1の着座面の温度を短期間で温度調節できる。また、ドライバーシート1に内蔵されたシートヒータ69aによりドライバーシート1を暖めるので、着座面の温度を短期間で温度調節できる。
【0099】
以上により、車両に人が乗り込む前にドライバーシート1の着座面を短期間で温度調節することができる。
【0100】
ここで、コンソール空調ユニット90からの冷風によりドライバーシート1の着座面の表面温度を調節するので、シートクッション等のシート全体の温度を調整する場合に比べて、少ない熱量で乗員に快適性を与えることができる。
【0101】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、第1の空調ユニットとしてコンソール空調ユニット90を用いた例を示したが、代えて、図8に示すドア空調ユニット200を用いても良い。
【0102】
ドア空調ユニット200は、図8に示すように、ドアパネル内に内蔵されているユニットであり、吹出口230、232a、232bを有するケーシング201と、ケーシング201内に内蔵された冷却用熱交換器(図示省略)と、ケーシング201内に吹出口230、232a、232bに向けて空気流を発生させる電動送風機210とから構成される。
【0103】
上述の実施形態では、コンソール空調ユニット90がフロント空調ユニット30と独立して吹出空気温度を調整できるように構成した例を示したが、これに代えて、コンソール空調ユニット90では、空気温度の調整を行わずに、フロント空調ユニット30で温度調整された空調風をコンソール空調ユニット90から吹き出すように構成してもよい。
【0104】
例えば、フロント空調ユニット30から吹き出される空調風を車室内後席側に導く空調ダクトを車幅方向中央部に配置してコンソール空調ユニット90として、当該空調ダクトを流れる空調風を用いてドライバーシート1に空調風を吹き出すようにする。
【0105】
上述の実施形態では、コンソール空調ユニット90のケーシング91内に電気ヒータ94と冷却用熱交換器93との双方を配置した例を示したが、これに限らず、電気ヒータ94用いないでケーシング91内に冷却用熱交換器93だけを配置してもよい。
【0106】
上述の実施形態では、着座センサ67a、67bを用いて乗員人数を判定した例を示したが、これに代えて、赤外線センサ、カメラ等の各種のセンサを用いてもよい。
【0107】
上述の実施形態では、携帯無線端末81から送信される信号に基づいて、車両に乗員が乗り込む前に空調を開始する例について説明したが、これに代えて、タイマー等を用いて予め時間を設定し、この設定した時間に空調を開始するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の一実施形態における車両用空調装置の室内空調ユニットの配置を示す模式図である。
【図2】上述の実施形態における室内空調ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図3】上述の実施形態における室内空調ユニットの配置を示す模式図である。
【図4】図1中のルーバーを示す図である。
【図5】図1中のシートを示す図である。
【図6】図1の空調用電子制御装置の制御処理をフローチャートである。
【図7】図1の空調用電子制御装置の制御処理をフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態における変形例の車両用空調装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0109】
1 ドライバーシート
2 パッセンジャーシート
26 電子制御装置
30 フロント空調ユニット
31 ケース
32 内外気切替箱
38 冷却用熱交換器
39 冷凍サイクル装置
40 コンプレッサ
Bh 高電圧バッテリ
BL 低電圧バッテリ
67a センサ
67b センサ
68b センサ
69a シートヒータ
69b シートヒータ
80 照合ECU
81 携帯無線端末
90 コンソール空調ユニット
91 ケーシング
491 吹出口
492 吹出口
493 吹出口
494 吹出口
500 ルーバー
910 開口部
911 開口部
912 開口部
913 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のシート側に配置され、バッテリから電力供給されて前記シートの着座面に空調風を吹き出す第1の空調ユニット(90)と、
当該車両に人が乗り込む前に前記第1の空調ユニット(90)を制御して前記シートの着座面の温度を調節させる空調制御手段(S100、S110、120、130、145、170)と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第1の空調ユニット(90)は冷風を吹き出すものであり、
前記空調制御手段は、前記第1の空調ユニット(90)を制御して前記シートの着座面の温度を前記冷風により調節することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第1の空調ユニット(90)は、冷媒の蒸発により空気を冷却して前記冷風を発生する第1の熱交換器(93)を備え、
冷媒の蒸発により空気を冷却する第2の熱交換器(30)を有し、前記第2の熱交換器(38)を通過した空気を車室内に吹き出す第2の空調ユニット(30)と、
前記第1、第2の熱交換器とともに冷凍サイクルを構成し、前記冷媒を圧縮して前記第1、第2の熱交換器に向けて吐出する圧縮機(40)と、
前記圧縮機の冷媒吐出口側と前記第2の熱交換器の冷媒流入口側との間を接続、或いは遮断する弁(43)と、を備え、
前記空調制御手段は、前記圧縮機の冷媒吐出口側と前記第2の熱交換器の冷媒流入口側との間を前記弁により遮断した状態で、前記第1の空調ユニット(90)を制御して前記シートの着座面の温度を前記空調風により調節することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第1の空調ユニット(90)は、前記シートとしてのドライバーシートの着座面と、パッセンジャーシートとのそれぞれに空調風を吹き出し可能に構成されており、
前記空調制御手段は、前記第1の空調ユニット(90)を制御して、前記ドライバーシートの着座面を前記パッセンジャーシートの着座面より優先して温度調節することを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
車室内のシートに配置され、バッテリから電力供給されて前記シートの着座面を加熱する電気ヒータ(69a、69b)と、
当該車両に人が乗り込む前に前記電気ヒータを制御して前記シートの着座面を温度調節するヒータ制御手段(S100、S110、120、130、140、170)と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
前記電気ヒータは、前記シートとしてのドライバーシートに配置された第1の電気ヒータ(69a)とパッセンジャーシートに配置された第2の電気ヒータ(69b)であり、
前記ヒータ制御手段は、前記第1、第2の電気ヒータを制御して前記ドライバーシートを前記パッセンジャーシートより優先して温度調節することを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記バッテリから電力供給されて車室内のステアリングに空調風を吹き出す第3の空調ユニット(30)と、
前記バッテリの充電量が閾値未満であるか否かを判定する充電量判定手段(S150)と、
前記バッテリの充電量が閾値以上であると前記充電量判定手段が判定すると、前記第3の空調ユニット(30)を制御して前記空調風をステアリングに向けて吹き出すステアリング温度制御手段(S160)と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに車両用空調装置。
【請求項8】
前記シートの着座面の吹出口から空調風を吹き出すシート空調ユニット(90)と、
当該車両に人が乗り込んだ後に前記シート空調ユニットを制御して、前記シートの着座面の吹出口から空調風を吹き出させるシート空調制御手段(S200、S220)と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
乗員が一人である否かを判定する乗員判定手段(S190)を備えており、
前記シート空調ユニットは、前記シートとしてのドライバーシートの着座面の吹出口と、パッセンジャーシートの着座面の吹出口とからそれぞれ空調風を吹き出し可能に構成されており、
前記乗員が一人であると前記乗員判定手段が判定したとき、前記シート空調制御手段(S200)は、前記シート空調ユニット(90)を制御して、前記ドライバーシートの着座面の吹出口のみから空調風を吹き出させることを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−248797(P2009−248797A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100279(P2008−100279)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】