説明

車両用通信システム及びカーナビゲーション装置

【課題】車載器とICカードとの間の接点異常の発生に伴う不具合を未然に防止することができながらも、そのための構成を簡単に済ませる。
【解決手段】カーナビゲーション装置3は、ナビ制御装置4、自車位置検出器6、地図データベース7等を備え、車内LAN13を介してETC車載器2と接続される。ナビ制御装置4は、自車位置がETCゲートに対して所定距離以内に近付いたときに、ETC車載器2に対してリセットコマンドを送信する。ETC車載器2は、制御回路18、ETC路側機14と通信を行う無線通信部19、カード処理回路20、ETCカード15がセットされるカードコネクタ26等を備え、電源オン時に、ETCカード15との間で相互認証動作を実行し、活性化状態となる。制御回路18は、リセットコマンドを受信すると、ETC車載器2の電源を一旦オフした後、再びオンさせるリセット動作を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式のICカードがセットされた状態で使用可能とされる車載器と、路側機との間での路車間通信によって、料金の課金処理を行うようにした車両用通信システム、及び、ETC車載器の電源のオン、オフを制御する機能を備えたカーナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路等の有料道路の料金所ゲートに設置されたETC路側機と、車両に装備されたETC車載器との間での、路車間通信(DSRC)によって自動的に通行料金を決済し、車両が停止することなく料金所を通過できるようにしたETC(Electronic Toll Collection)システムが普及してきている。前記ETC車載器は、ユーザが所有し料金決済機能を有するETCカード(接触式のICカード)がセット(挿入)されることにより、使用可能となる。
【0003】
より詳細には、前記ETC車載器は、ETCカードが出し入れ可能にセットされるカードコネクタ、ETCカードに対するデータの読取り及び書込みを行うためのカード処理回路、全体を制御する制御回路、アンテナを介してETC路側機と無線通信を行う無線通信部などを備えて構成されている。また、一般に、このETC車載器は、カーナビゲーション装置と連携して使用される。
【0004】
そして、カードコネクタに対するETCカードのセット状態でETC車載器の電源がオンされる、或いはETC車載器の電源オン状態で、カードコネクタにETCカードがセットされると、互いに正規の相手であるかを確認する相互認証動作が行われ、認証が正しく行われた場合に、ETCカードに対するアクセスが可能な活性化状態となってETCシステムの利用が可能となる。尚、上記した相互認証動作には数秒程度の時間がかかるものとなっている。
【0005】
ところで、上記のように、ETCカードは、接触式のICカードからなり、カードの表面に設けられた接触電極が、前記カードコネクタに設けられたコンタクトと接触することによりETC車載器との電気的な接続がなされる。ところが、車両の走行時の振動や、接触電極表面の汚れなどの要因により、車両の走行中に、ETCカードの接触電極と、カードコネクタのコンタクトとの間の電気的接続が一時的に切離されてしまうような場合がある。このような接点異常が一旦発生すると、ETCカードが非活性化状態となってしまい、その状態で料金所(ETC路側機)に向かうと正常な課金処理が行われず、例えばゲートのバーが開かないなどの不具合を招いてしまう。そこで、従来では、特許文献1や特許文献2に示されるような対策が考えられている。
【特許文献1】特開2006−172208号公報
【特許文献2】特開2006−323744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1においては、有料道路の出口のETCゲートより約1km手前に、動作チェックを指示する電波を送信するETC事前チェック用ゲート(チェック指示装置)を設け、ETC車載器側は、その指示に従って、ETCカードが正常に挿入されているか、認証が正常に行われたかのチェック動作を開始し、異常が検出された場合に運転者に報知するようになっている。
【0007】
また、特許文献2においては、ETCカードと、ETC車載器との間を接続する通信ラインのうちデータ入出力用ラインの電圧レベルを常時監視することにより、ETCカードの異常を検出し、異常が発生したと判断したときに、復旧処理を行うと共に、ユーザに対して異常を報知するようになっている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、有料道路の路側にETC路側機に加えてETC事前チェック用ゲート(チェック指示装置)を設ける必要があり、全体として大掛かりな設備が必要となってしまう。また、上記特許文献2の技術では、通信ラインの電圧レベルを監視する回路等の、接点の異常を検出するための手段を付加する必要があり、その分、構成が複雑化してしまう不具合がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、車載器とICカードとの間の接点異常の発生に伴う不具合を未然に防止することができながらも、そのための構成を簡単に済ませることができる車両用通信システム及びカーナビゲーション装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
接触式のICカードがセットされる車載器において、車両の振動などに起因する、カードコネクタとICカードとの間で接点が離れる等の接点の異常は、一時的な(瞬間的な)ものであって、ほとんどの場合、そのような一時的な接点異常があっても、その後、カードコネクタとICカードとの接点間が容易に接触状態に戻るようになる。
【0011】
本発明者は、ETC車載器などの車載器が、一般に、地図データベースや自車位置検出機能を有するカーナビゲーション装置と連携されている点に着目すると共に、車載器の電源を一旦オフした後に再びオンさせるリセット(初期化)動作を行うことで、それ以前に上記した接点異常が発生していたとしても、ICカードに対するアクセス可能な活性化状態に容易に戻すことができる点に着目し、本発明を成し遂げたのである。
【0012】
即ち、本発明の車両用通信システムは、車両に搭載され、接触式のICカードがセットされた状態で使用可能とされる車載器を備え、その車載器と路側機との間での路車間通信によって、料金の課金処理を行うようにしたものにおいて、自車両の位置が路側機に対して所定距離以内に近付いたかどうかを判断する判断手段と、この判断手段により路側機に対し所定距離以内に近付いたと判断されたときに、車載器の電源を一旦オフした後、再びオンさせるリセット動作を実行させるリセット手段とを備えるところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0013】
これによれば、判断手段により、自車両が路側機に対して所定距離以内に近付いたことが判断されたときには、リセット手段により、車載器に対するリセット動作が実行される。従って、もし、車載器に車両の振動などに起因する接点異常が発生していたとしても、路側機との通信を行う前に、ICカードに対するアクセス可能な活性化状態に容易に戻すことができ、ICカードが非活性化状態になっていることに伴う不具合の発生を防止することができる。
【0014】
このとき、路側機(料金所)に至る直前という最も効果的なタイミングで、リセット動作が行われることになるので、料金所通過時のトラブルの発生を未然に防止することができる。無駄に数多くリセット動作が行われることもない。しかも、判断手段は、カーナビゲーション装置側において担わせることが可能となるので、自車位置検出等のための別途の装置を付加することなく、更には、接点異常が発生したかどうかに関係なく、リセット(初期化)動作が行われることにより、接点異常を検出するための手段(構成)が不要となる。この結果、簡単な構成で済ませることが可能となる。
【0015】
本発明の車両用通信システムにおいては、前記リセット手段によりリセット動作が行われた際に、判断手段の対象となった路側機を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されている路側機に関しては、判断手段により当該路側機に対し所定距離以内に近付いたと判断された場合でも、再度のリセット動作の実行を制限する制限手段とを設けることができる(請求項2の発明)。
【0016】
これによれば、例えば道路の形状や、運転者の運転の都合などにより、自車両が特定の路側機の所定距離以内に近付くことが、何度も繰返して行われるような場合には、制限手段により、リセット動作の実行回数が制限される。従って、無用なリセット動作を行うことが抑制され、またリセット動作が頻繁に行われることによる不具合を未然に防止することができる。
【0017】
また、本発明の車両用通信システムにおいては、前記リセット手段を、自車両の位置が路側機に対し所定の最低距離以上離れていることを条件にリセット動作を実行させるように構成することができる(請求項3の発明)。これによれば、車載器のリセット動作の後の認証動作にある程度の時間を要する事情があっても、例えば認証動作中に、自車両が路側機と通信を行うべき距離に近付いてしまうといった不具合を未然に防止することができるようになる。
【0018】
さらには、車載器の前回の電源オン時から、未だ短い時間が経過しただけでは、接点異常が発生する虞も低いため、前記リセット手段を、車載器の電源がオンされた時点から、所定時間が経過していることを条件にリセット動作を実行させるように構成することもできる(請求項4の発明)。これによれば、無用なリセット動作を行うことが抑制され、またリセット動作が頻繁に行われることによる不具合を未然に防止することができる。
【0019】
本発明の車両用通信システムにおいては、前記車載器として、有料道路の料金所のゲート部分に設置されたETC路側機との間での通信により通行料金を決済するためのETC車載器に適用することができる(請求項5の発明)。
【0020】
本発明のカーナビゲーション装置は、車両に搭載され、自車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と、ETC路側機の位置を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段とを備えると共に、自車両に搭載され接触式のICカードがセットされた状態で使用可能とされるETC車載器の電源のオン、オフを制御する機能を備えたものであって、自車両の位置が前記ETC路側機に対して所定距離以内に近付いたかどうかを判断する判断手段と、この判断手段により前記ETC路側機に対し所定距離以内に近付いたと判断されたときに、前記ETC車載器の電源を一旦オフした後、再びオンさせるリセット動作を実行させるリセット手段とを備えるところに特徴を有する(請求項6の発明)。
【0021】
これによれば、ETC車載器に車両の振動などに起因する接点異常が発生していたとしても、ETC路側機との通信を行う前に、ICカードに対するアクセス可能な活性化状態に容易に戻すことができ、ICカードが非活性化状態になっていることに伴う不具合の発生を防止することができる。また、接点異常を検出するための手段(構成)等の構成を付加することなく、簡単な構成で済ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を、ETCシステムに用いられる車両用通信システムに適用した一実施例について、図1ないし図3を参照しながら説明する。図1は、本実施例に係る車両用通信システム1の構成を概略的に示しており、この車両用通信システム1は、車載器たるETC車載器2と、これに接続されたカーナビゲーション装置3とを連携させたシステムとして構成される。
【0023】
まず、前記カーナビゲーション装置3の構成について簡単に述べる。このカーナビゲーション装置3は、マイクロコンピュータを主体とし、全体の制御を行うナビ制御装置4を中心として構成されている。このナビ制御装置4には、後述するように、ETCに関する情報(後述するリスト)を記憶するための記憶手段としてのメモリ4aが設けられている。そして、このナビ制御装置4には、外部機器接続部5、自車位置検出手段としての自車位置検出器6、地図データ記憶手段としての地図データベース7が接続されている。
【0024】
そのうち自車位置検出器6は、詳しく図示はしないが、GPS受信機、地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサ等を含んで構成され、ナビ制御装置4は、それらの信号から自車の現在位置(絶対位置)を高精度で算出するようになっている。前記地図データベース7には、例えば日本全土の地図データや、それに付随する施設データ、道路地図を表示装置の画面上に再生するためのデータ等が記憶されている。このとき、前記地図データには、後述するETC路側機(ETCゲート)の位置情報が含まれている。
【0025】
そして、前記外部機器接続部5には、例えば車内LAN13を介してETC車載器2が接続され、カーナビゲーション装置3との連携が図られるようになっている。また、ナビ制御装置4には、ユーザが各種の操作指示などを行うための操作スイッチ群8、ナビゲーション画面を表示可能な表示装置9、音声案内等を行うための音声出力装置10、外部メモリ11、例えばVICS(登録商標)センタ等との間での通信により道路交通情報等を取得するための通信装置12も接続されている。
【0026】
これにて、ナビ制御装置4は、そのソフトウエア構成(及びハードウエア構成)により、自車位置検出器6からの信号に基づいて、自車両Cの現在位置(絶対位置)を高精度で算出し、表示装置9の画面に自車周辺の道路地図と共に自車の現在位置(及び進行方向)を重ね合せて表示させるロケーション機能や、ユーザにより指定された目的地までの推奨する走行経路を自動的に計算しその経路を案内するルートガイダンス機能等の、各種ナビゲーション機能を実行するようになっている。
【0027】
さらに、ナビ制御装置4は、ETC車載器2から出力された信号を、外部機器接続部5を介して受信すると、それに従って、音声出力装置10により、「ETCカードを確認しました。」、「ETCカードが挿入されていません。」、「料金所を通過しました。料金は○○円です。」といったETCに関連する音声案内を行なったり、表示装置9に必要なメッセージを表示させたりするようになっている。そして、後述するように、ナビ制御装置4は、ETC車載器2に対してリセットコマンドを送信するようになっている。尚、このカーナビゲーション装置3は、車両のACCオン時に、車載バッテリから電源が供給されるようになっている。
【0028】
ここで、ETCシステムについて簡単に述べておく。ETCシステムは、例えば高速道路等の有料道路の出入口などの料金所(ETCゲート)に設置された路側機としてのETC路側機14のアンテナ14aと、車両に搭載されたETC車載器2のアンテナ2aとの間でのいわゆる路車間通信(DSRCと称される狭域通信)を行うことにより、車両が停止することなく料金所を通過できるものであり、またその際に自動的に通行料金が決済されるものである。このとき、ETC車載器2は、料金決済機能を有するETCカード15がセット(挿入接続)された状態で、使用可能とされる。
【0029】
詳しい説明は省略するが、前記路側機14は、ETC車線における車両の接近を検知すると、ETC車載器2との間での必要な通信を行い、ゲートの開閉制御や課金処理などを実行する。このとき、ETC車載器2に対し、ゲート通過情報や課金情報などの必要な情報を送信するようになっている。
【0030】
前記ETCカード15は、この場合周知の接触式(接点型)のICカードからなり、ICチップを内蔵したプラスチック製のカードの表面の所定位置に、例えば合計8個(或いは6個)の接触電極を有して構成されている。このETCカード15(ICチップ)は、マイコン(CPU)を主体とした制御部16や、フラッシュメモリ等からなる記憶部17を備えている。記憶部17には、契約情報(ID情報や利用者情報、クレジット機能に関する情報)が予め記録されていると共に、利用履歴情報(通過したETCゲートの情報)等が書き込まれるようになっている。
【0031】
そして、前記ETC車載器2は、以下のように構成されている。即ち、このETC車載器2は、マイコンを主体として構成され全体を制御する制御回路18を備えると共に、この制御回路18に接続された、前記アンテナ2aを介して前記ETC路側機14と無線通信を行う無線通信部19、カード処理回路20、電源部21、外部機器接続部22、記憶部23、表示部24、入力操作部25を備えている。また、前記カード処理回路20に接続されたカードコネクタ26を備えている。
【0032】
このカードコネクタ26には、前記ETCカード15が出し入れ可能にセット(挿入)されるようになっており、ETCカード15がセットされた状態で、該カードコネクタ26に設けられた複数個のコンタクトが、そのETCカード15の各接触電極に接触して電気的接続がなされるようになっている。前記カード処理回路20は、カードコネクタ26を介して前記ETCカード15に対するデータの読取り及び書込みを行うようになっている。
【0033】
また、前記電源部21は、車両のACCオン時に、車載バッテリから電源が供給されるようになっており、所定の直流電圧を生成して各部に給電するように構成されている。前記外部機器接続部22は、車内LAN13を介して前記カーナビゲーション装置3とデータの授受を行うものである。前記記憶部23は、例えばフラッシュメモリ等からなり、車両に搭載される際に車両情報などが予め登録されたデータが記憶されると共に、課金処理に必要な各種のデータが記憶されるようになっている。前記表示部24は、ETC路側機14との通信が正常に行われたかどうか等を例えばランプにより表示するものである。前記入力操作部25は、利用履歴確認スイッチなどから構成される。
【0034】
さて、後の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、このETC車載器2の制御回路18は、そのソフトウエア的構成により、ETC車載器2の電源がオンされたときに、前記ETCカード15のセットの有無を確認し、カードコネクタ26にETCカード15がセットされた状態で、ETC車載器2とETCカード15との間で互いに正規の相手であるかを確認する相互認証動作を実行する。認証が正しく行われた場合に、ETCカード15に対するアクセスが可能な活性化状態となってETCシステムの利用(ETC路側機14との間の通信)が可能となるようになっている。
【0035】
そして、本実施例では、制御回路18は、前記外部機器接続部22を介して、前記カーナビゲーション装置2からリセットコマンドを受信すると、自らETC車載器2の電源を一旦オフした後、再び電源をオンさせるリセット動作を実行するようになっている。従って、本実施例では、ETC車載器2の制御回路18がリセット手段として機能するようになっている。
【0036】
一方、これも後の作用説明にて述べるように、前記カーナビゲーション装置3のナビ制御装置4は、電源オン時において、常に自車位置を検出すると共に、地図データに基づいてその自車位置に近いETCゲート(ETC路側機14)までの距離を算出する。そして、自車位置が当該ETCゲートに対して所定距離(例えば直線距離で500m)以内に近付いたかどうかを判断し、所定距離以内に近付いた場合に、前記外部機器接続部5を介してETC車載器2に対してリセットコマンドを送信するようになっている。従って、本実施例では、ナビ制御装置4が判断手段として機能するようになっている。
【0037】
このとき、本実施例では、ナビ制御装置4は、上記リセットコマンドを送信した場合に、前記メモリ4aに記録されるリストに、その際の対象となったETCゲートの情報、自車位置、時刻等が書込まれると共に、当該ETCゲートに関するリセットフラグをセット(オン)するようになっている。従って、メモリ4aが記憶手段として機能する。
【0038】
さらに、本実施例では、ナビ制御装置4は、自車位置がETCゲートに対して所定距離以内に近付いたと判断した場合に、前記メモリ4aのリストに記録された当該ETCゲートに関するリセットフラグがオフであること、且つ、ETC車載器2の前回の電源オン時(リセット動作時)から所定時間(例えば30分)が経過していること、且つ、ETCゲートから自車位置までが所定の最低距離(例えば直線距離で300m)以上離れていることを条件に、リセットコマンドを送信するようになっている。従って、ナビ制御装置4が、制限手段としても機能するようになっている。
【0039】
次に、上記構成の作用について、図2及び図3も参照して述べる。ここで、上記構成のETC車載器2においては、車両の走行時の振動や、ETCカード15の接触電極表面の汚れなどの要因により、車両の走行中に、ETCカード15の接触電極と、カードコネクタ22のコンタクトとの間の電気的接続が一時的に切離されてしまうような場合がある。このような接点異常が一旦発生すると、ETCカード15が非活性化状態となってしまい、その状態で料金所(ETC路側機14)に向かうと正常な課金処理が行われず、例えばゲートのバーが開かないなどの不具合を招いてしまう事情がある。
【0040】
本実施例では、そのような不具合に対処するために、ETC車載器2及びカーナビゲーション装置3において、以下のような制御がなされる。即ち、図2(a)のフローチャートは、ETC車載器2の電源オン時に制御回路18が実行する処理手順を示しており、また、図2(b)のフローチャートは、カーナビゲーション装置3のナビ制御装置4が実行する、ETC車載器2に対するリセットコマンドの送信に関連する処理の手順を示している。
【0041】
まず、図2(a)において、例えば車両においてACCがオンされてETC車載器2に対して電源が供給されると(ステップS1)、制御回路18は、ETCカード15がカードコネクタ26にセット(挿入)されているかどうかを判断する(ステップS2)。ETCカード15がセットされていない場合には(ステップS2にてNo)、ユーザ(運転者)に対し、ETCカード15が未挿入である旨の警告がなされる(ステップS3)。
【0042】
ETCカード15がセットされている(挿入された)場合には(ステップS2にてYes)、ETCカード15に電源供給などを行う活性化が行われ(ステップS4)、引続き、ETC車載器2とETCカード15との間で互いに正規の相手であるかを確認する相互認証が行われ(ステップS5)、認証が正しく行われた場合にETCカード15に書込まれている情報が読み出されるようになる(ステップS6)。これにて、ETCカード15に対するアクセスが可能な活性化状態となって、ETCシステムの利用(ETC路側機14との間の通信)が可能な状態とされるようになっている(ステップS7)。尚、ETC車載器2とETC路側機14との間の通信については、周知であるため、ここでは説明を省略する。
【0043】
このETCシステムの利用可能な状態では、カーナビゲーション装置3から送信されるリセットコマンドが常に監視されるようになっている(ステップS8)。そして、カーナビゲーション装置2からリセットコマンドを受信すると(ステップS8にてYes)、自らETC車載器2の電源を一旦オフし(ステップS9)、ステップS1に戻り再び電源をオンさせるリセット動作が実行されるようになっている。このリセット動作が行われると、再度、活性化、認証などの処理が行われる(ステップS4〜S6)。
【0044】
一方、図2(b)において、カーナビゲーション装置3のナビ制御装置4は、車両のACCがオンされてカーナビゲーション装置3に対して電源が供給されると(ステップS11)、自車位置検出部6に基づく自車位置の検出が行われ(ステップS12)、その結果に基づいて、表示装置9の画面に自車両の位置が地図と共に表示される(ステップS13)。これと共に、自車位置と、自車位置に比較的近い距離(例えば同県内程度の広さの範囲)にあるETCゲート(ETC路側機14)との間の距離が計算される(ステップS14)。このとき、複数のETCゲートが存在する場合には、各ETCゲートに対しての距離が夫々求められる。
【0045】
次のステップS15では、自車位置とETCゲート(ETC路側機14)との間の距離が、所定距離(例えば500m)以下かどうかが判断される。自車位置とETCゲートとの間の距離が、所定距離を超えている場合には(ステップS15にてNo)、ステップS12の自車位置検出からの処理が繰返される。そして、自車位置といずれかのETCゲートとの間の距離が、所定距離以内にある場合には(ステップS15にてYes)、メモリ4a内のリストに、対象となった(所定距離以内の)ETCゲートの情報、自車位置、時刻が記録され(ステップS16)、次いで、当該リストを参照して、ETCゲート毎の、自車位置、時刻、リセット状況(リセットフラグのオン・オフ状態)が確認される(ステップS17)。
【0046】
ここで、まず、ステップS18では、対象となるETCゲートに関して、リセットがかけられた(リセットフラグがオン(セット)されている)かどうかが判断され、既にリセットがかけられている(リセットフラグがオン)場合には(ステップS18にてYes)、リセットコマンドが送信されることなく、ステップS12に戻る。これに対し、未だリセットがかけられていない(リセットフラグがオフ)場合には(ステップS18にてNo)、ステップS19に進む。
【0047】
ステップS19では、車両の現在位置が、対象となるETCゲートに対して最低距離(例えば300m)以上離れているかどうかが判断される。自車位置かETCゲートに対して最低距離よりも短い距離に近付いている場合には(ステップS19にてNo)、リセットコマンドが送信されることなく、ステップS12に戻る。これに対し、自車位置かETCゲートに対して最低距離以上離れている場合には(ステップS19にてYes)、ステップS20に進む。
【0048】
ステップS20では、前回、ETC車載器2の電源がオンされて(この場合、自らの電源オン時あるいは前回のリセットコマンドの送信時)から、所定の時間(例えば30分)が経過しているかどうかが判断される。所定時間が経過していない場合には(ステップS20にてNo)、やはり、リセットコマンドが送信されることなく、ステップS12に戻る。
【0049】
これに対し、所定時間以上が経過していれば(ステップS20にてYes)、ステップS21にて、リセットコマンドが、ETC車載器2に送信される。これにて、ETC車載器2においてリセット動作が行われるようになるのである。この後、メモリ4a内のリスト上に、リセットフラグがセット(オン)され(ステップS22)、ステップS12に戻る。
【0050】
以上のような制御により、例えば図3に示すように、ETCゲートGに対して、R1の経路で車両が走行している場合、自車両の位置が所定距離の範囲A1(ETCゲートGを中心とした例えば半径500mの円)内に入ったと判断されたときに、カーナビゲーション装置3からETC車載器2にリセットコマンドが送信されるようになる。そして、リセットコマンドを受信したETC車載器2は、自らの電源を一旦オフした後、再びオンさせるリセット動作を実行する。
【0051】
このとき、ETC車載器2においては、車両の振動などに起因する、カードコネクタ22とETCカード15との間で接点が離れる等の接点の異常は、一時的な(瞬間的な)ものであって、ほとんどの場合、そのような一時的な接点異常があっても、その後、カードコネクタ22とETCカード15との接点間が容易に接触状態に戻るようになる。ETC車載器2の電源を一旦オフした後に再びオンさせるリセット(初期化)動作が行われると、それ以前に上記した接点異常が発生していたとしても、ETCカード15に対するアクセス可能な活性化状態に容易に戻すことができるのである。
【0052】
従って、もし、自車両の位置がETCゲートGから所定距離の範囲A1に至る前にETC車載器3に車両の振動などに起因する接点異常が発生していたとしても、ETC路側機14との通信を行う前(ETCゲートGに至る前)には、ETCカード15に対するアクセス可能な活性化状態に容易に戻すことができ、ETCカード15が非活性化状態になっていることに伴う不具合の発生を未然に防止することができるのである。
【0053】
また、図3に、R2の経路で示すように、例えば道路の形状や、運転者の運転の都合などにより、車両が一旦所定距離の範囲A1(ETCゲートGを中心とした例えば半径500mの円)内に入った後、その範囲A1から出て、再び、範囲A1内に入るといったケースも考えられる。この場合、1回目に範囲A1内に入った際に、ETC車載器3においてリセット動作が行われ、リセットフラグがオンになるので、2回目に範囲A1内に入った際にはリセット動作(リセットコマンドの送信)が行われることはない。従って、無用なリセット動作を行うことが抑制され、またリセット動作が頻繁に行われることによる不具合を未然に防止することができる。
【0054】
尚、図3中、範囲A2は、最低距離(ETCゲートGを中心とした例えば半径300mの円)の範囲を示しており、自車位置がこの範囲A2内に入っている場合には、リセット動作(リセットコマンドの送信)が行われることはない。これにより、ETC車載器3の認証動作にある程度の時間を要する事情があっても、例えば認証動作中に、自車両がETC路側機14と通信を行うべき距離に近付いてしまうといった不具合を未然に防止することができる。
【0055】
さらには、図示はしないが、例えば2つのETCゲートG(例えば一つの有料道路の出口とそれに連続するような他の有料道路の入口)が比較的近い位置に存在するような場合、一方のETCゲートGに対する範囲A1内に入った際にETC車載器3のリセット動作が行われるが、その直後に、もう一つのETCゲートGに対する範囲A1内に入ったとしても、ETC車載器3の電源がオンされた(前回のリセット動作の)時点から、所定時間が経過していない場合には、リセット動作(リセットコマンドの送信)が行われることはない。
【0056】
このように本実施例によれば、ETC車載器2が、地図データベース7や自車位置検出部6を有するカーナビゲーション装置3と連携されている点に着目すると共に、車両の振動などに起因するETCカード15の接点異常は一時的な(瞬間的な)ものであって、ETC車載器2の電源を一旦オフした後に再びオンさせるリセット(初期化)動作を行うことで、それ以前に接点異常が発生していたとしても、ETCカード15に対するアクセス可能な活性化状態に容易に戻すことができる点に着目し、自車両がETCゲートに対して所定距離以内に近付いたことを判断したときに、ETC車載器3においてリセット動作を実行させるように構成した。
【0057】
これにより、ETC路側機14に至る直前という最も効果的なタイミングで、ETC車載器3のリセット動作が行われETCカード15に対するアクセス可能な活性化状態に容易に戻すことができ、料金所通過時のトラブルの発生を未然に防止することができる。無駄に数多くリセット動作が行われることもない。しかも、自車位置検出等のための別途の装置を付加することなく、更には、接点異常が発生したかどうかに関係なく、リセット(初期化)動作が行われることにより、接点異常を検出するための手段(構成)が不要となる。この結果、本実施例によれば、ETC車載器2とETCカード15との間の接点異常の発生に伴う不具合を未然に防止することができながらも、そのための構成を簡単に済ませることができるという優れた効果を得ることができるものである。
【0058】
図4は、本発明の他の実施例を示すものである。この実施例が上記実施例と異なる点は、ETC車載器2がカーナビゲーション装置3からのリセットコマンドを受信することに基づいて自らリセット動作を行うことに代えて、ETC車載器31と電源線(+B又はACC)との接続、切離しを行うスイッチ32を、カーナビゲーション装置33(図示しないナビ制御装置)がオン・オフ制御するようにした構成にある。
【0059】
即ち、カーナビゲーション装置33(ナビ制御装置)は、自らの電源がオン(ACCオン)されると、スイッチ32をオンさせてETC車載器31に電源を供給させる。そして、上記実施例と同様に、自車位置を検出し、自車位置がETCゲートに対して所定距離以内に近付いたと判断した場合に、スイッチ32を制御して、ETC車載器31の電源を一旦オフさせた後、再びオンさせるリセット動作を実行させるようになっている。従って、この場合、カーナビゲーション装置33(ナビ制御装置)が判断手段及びリセット手段として機能するようになっている。
【0060】
このような実施例によっても、上記実施例と同様に、ETC車載器31とETCカード15との間の接点異常の発生に伴う不具合を未然に防止することができながらも、そのための構成を簡単に済ませることができるという優れた効果を得ることができる。また、この実施例では、ETC車載器31自体の構成によることなくリセット動作が可能となるので、例えばETC車載器31とカーナビゲーション装置33とが別々のメーカ製であっても、本発明を実施することができるといったメリットを得ることができる。
【0061】
尚、上記各実施例では、ETCシステムに用いられるETC車載器を具体例としてあげたが、それ以外にも、例えば駐車場の駐車料金を、路側機と車載器との間での通信により自動で精算するシステムなどにも本発明を適用することができる。その他、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば、所定距離、最低距離、所定時間などの具体的数値は、あくまで一例をあげたに過ぎず、また、車載器やカーナビゲーション装置のハードウエア構成等についても、種々の変形が可能であるなど、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、ETC車載器及びカーナビゲーション装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】ETC車載器(a)及びカーナビゲーション装置(b)における制御の手順を示すフローチャート
【図3】ETCゲートと所定距離の範囲、車両の経路を模式的に示す図
【図4】本発明の他の実施例を示すもので、要部構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0063】
図面中、1は車両用通信システム、2はETC車載器(車載器)、3はカーナビゲーション装置、4はナビ制御装置(判断手段、制限手段)、4aはメモリ(記憶手段)、6は自車位置検出部(自車位置検出手段)、7は地図データベース(地図データ記憶手段)、13は車内LAN、14はETC路側機(路側機)、15はETCカード(ICカード)、18は制御回路(リセット手段)、26はカードコネクタ、31はETC車載器(車載器)、32はスイッチ、33はカーナビゲーション装置(判断手段、リセット手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、接触式のICカードがセットされた状態で使用可能とされる車載器を備え、前記車載器と路側機との間での路車間通信によって、料金の課金処理を行うようにした車両用通信システムにおいて、
自車両の位置が前記路側機に対して所定距離以内に近付いたかどうかを判断する判断手段と、
この判断手段により前記路側機に対し所定距離以内に近付いたと判断されたときに、前記車載器の電源を一旦オフした後、再びオンさせるリセット動作を実行させるリセット手段とを備えることを特徴とする車両用通信システム。
【請求項2】
前記リセット手段によりリセット動作が行われた際に、前記判断手段の対象となった路側機を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶されている路側機に関しては、前記判断手段により当該路側機に対し所定距離以内に近付いたと判断された場合でも、再度のリセット動作の実行を制限する制限手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の車両用通信システム。
【請求項3】
前記リセット手段は、自車両の位置が前記路側機に対し所定の最低距離以上離れていることを条件にリセット動作を実行させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用通信システム。
【請求項4】
前記リセット手段は、前記車載器の電源がオンされた時点から、所定時間が経過していることを条件にリセット動作を実行させるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用通信システム。
【請求項5】
前記車載器は、有料道路の料金所のゲート部分に設置されたETC路側機との間での通信により通行料金を決済するためのETC車載器であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用通信システム。
【請求項6】
車両に搭載され、自車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と、ETC路側機の位置を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段とを備えると共に、
自車両に搭載され接触式のICカードがセットされた状態で使用可能とされるETC車載器の電源のオン、オフを制御する機能を備えたカーナビゲーション装置であって、
自車両の位置が前記ETC路側機に対して所定距離以内に近付いたかどうかを判断する判断手段と、
この判断手段により前記ETC路側機に対し所定距離以内に近付いたと判断されたときに、前記ETC車載器の電源を一旦オフした後、再びオンさせるリセット動作を実行させるリセット手段とを備えることを特徴とするカーナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−80540(P2009−80540A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247441(P2007−247441)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】