説明

車両用運転支援装置

【課題】音声案内を抑制しつつ、経路案内情報を適切なタイミングで的確に運転者に伝達すること。
【解決手段】本発明による車両用運転支援装置10は、音楽再生手段50と、経路案内手段60と、運転者の聴覚以外の感覚に対する刺激を発生する刺激発生手段70,72と、前記経路案内手段及び刺激発生手段を制御する制御手段22とを備え、前記制御手段は、前記音楽再生手段による音楽が再生されている場合には、前記経路案内手段による音声による経路案内情報の出力を抑制する一方、前記経路案内手段により画像により経路案内情報を出力させると共に、前記刺激発生手段により前記刺激を発生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽再生中に適切に経路案内情報を出力する車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載され、目的地までの経路に関する情報を音声にて案内する音声案内手段を備えるオーディオ連携ナビゲーション装置において、音楽を再生する音楽再生装置と、前記音楽再生装置による音楽の再生状態を検出する検出手段と、前記目的地までの経路に関する情報を音声案内するタイミングを決定するタイミング決定手段と、前記タイミング決定手段によって決定されたタイミングにおいて、前記検出手段により音楽が再生中である事が検出された場合には、その音楽の終了まで、音声案内のタイミングを遅らせる音声案内遅延手段とを備える事を特徴とするオーディオ連携ナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−108908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の発明では、音声案内により音楽の鑑賞が妨げられないという利点がある反面、音楽の終了まで音声案内を受けられないという欠点がある。従って、かかる構成では、特に、運転者の運転能力が相対的に低い場合や、不慣れな道路を走行している場合には、運転者が正確な進路を誤る虞がある。
【0004】
そこで、本発明は、音声案内を抑制しつつ、経路案内情報を適切なタイミングで的確に運転者に伝達することが可能な車両用運転支援装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、車両用運転支援装置に関し、音楽を再生する音楽再生手段と、
経路案内情報を出力する経路案内手段と、
運転者の聴覚以外の感覚に対する刺激を発生する刺激発生手段と、
前記経路案内手段及び刺激発生手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記音楽再生手段による音楽が再生されている場合には、前記経路案内手段により表示により経路案内情報を出力させると共に、前記刺激発生手段により前記刺激を発生させることを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る車両用運転支援装置において、
前記制御手段は、前記音楽再生手段による音楽が再生されている場合には、更に、前記経路案内手段による音声による経路案内情報の出力を抑制することを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、車両用運転支援装置に関し、経路案内情報を出力する経路案内手段と、
運転者の聴覚以外の感覚に対する刺激を発生する刺激発生手段と、
運転者の運転能力を判断する運転能力判断手段と、
前記経路案内手段及び刺激発生手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記運転能力判断手段により運転者の運転能力が所定基準より高いと判断された場合には、前記経路案内手段により表示により経路案内情報を出力させると共に、前記刺激発生手段により前記刺激を発生させることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第3の発明に係る車両用運転支援装置において、
前記制御手段は、前記運転能力判断手段により運転者の運転能力が所定基準より高いと判断された場合には、更に、前記経路案内手段による音声による経路案内情報の出力を抑制することを特徴とする。
【0009】
第5の発明は、車両用運転支援装置に関し、経路案内情報を出力する経路案内手段と、
運転者の聴覚以外の感覚に対する刺激を発生する刺激発生手段と、
過去の走行履歴データに基づいて、現在の走行道路の走行頻度を判断する走行頻度判断手段と、
前記経路案内手段及び刺激発生手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記走行頻度判断手段により現在の走行道路の走行頻度が所定基準より高いと判断された場合には、前記経路案内手段により表示により経路案内情報を出力させると共に、前記刺激発生手段により前記刺激を発生させることを特徴とする。
【0010】
第6の発明は、第5の発明に係る車両用運転支援装置において、
前記制御手段は、前記運転能力判断手段により運転者の運転能力が所定基準より高いと判断された場合には、更に、前記経路案内手段による音声による経路案内情報の出力を抑制することを特徴とする。
【0011】
第7の発明は、第1〜6のうちのいずれかの発明に係る車両用運転支援装置において、
前記制御手段は、前記経路案内手段により表示により経路案内情報を出力させるタイミングに同期したタイミングで前記刺激発生手段により前記刺激を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、音声案内を抑制しつつ、経路案内情報を適切なタイミングで的確に運転者に伝達することが可能な車両用運転支援装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0014】
図1は、本発明による車両用運転支援装置10の一実施例の主要構成を示すシステム構成図である。本実施例の車両用運転支援装置10は、主制御部20を中心として構成されている。主制御部20は、ハードウェア構成としては、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータを中心として構成されている。
【0015】
主制御部20には、機器制御部22、自車位置測定部30及び運転者情報データベース(運転者情報DB)40が接続されている。自車位置測定部30には、地図データベース(地図DB)32が接続されている。
【0016】
機器制御部22は、ハードウェア構成としては、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータを中心として構成されている。
【0017】
機器制御部22には、制御対象の各種機器として、音楽再生装置50、経路案内手段60、シート振動装置70、及び、ステアリング振動装置72が接続されている。経路案内手段60は、表示装置62、HUD(ヘッドアップディスプレイ)64、及び、音声出力装置66からなる。
【0018】
自車位置測定部30は、GPS受信機を含み、GPSアンテナ(図示せず)を介して、衛星からの電波を受信して、車両の位置や速度を測位し、その測位結果を車両位置情報として機器制御部22や主制御部20に供給する。尚、測位方法は、単独測位や相対測位(干渉測位を含む。)等の如何なる方法であってもよい。この際、測位結果は、車速センサやジャイロセンサ等の各種センサ(図示せず)の出力や、ビーコン受信機及びFM多重受信機(図示せず)を介して受信される各種情報に基づいて補正されてよい。また、測位結果は、公知のマップマッチング技術により、不定期的に、後述の地図DB32内の地図データを用いて適宜補正されてよい。
【0019】
地図データベース32は、書き込み可能不揮発性のメモリ(補助記憶装置)で構成され、例えばハードディスクドライブで構成されてよい。或いは、地図データベース32は、ナビゲーションECU20のROMで構成されてもよい。地図データベース32には、地図データが格納されている。地図データには、通常的なものと同様、道路分岐点(交差点)に対応するノードの座標情報、高速道路の合流点/分岐点に各々対応する各ノードの座標情報や、隣接するノードを接続するリンク情報等の各種道路情報が含まれている。また、道路情報としては、各リンクの車線数、車線情報を含み、更に、各リンクに対応する道路の幅員情報、各リンクに対応する国道・県道・高速道路等の道路種別、各リンクの通行規制情報、各リンクの制限速度(法定速度を含む)、一時停止線、駐車禁止区域、信号機の有無、踏み切りの有無、追い越し禁止区間、一方通行、スクールゾーン、Uターン禁止、事故多発地点情報等を含んでよい。
【0020】
運転者情報データベース40は、書き込み可能不揮発性のメモリ(補助記憶装置)で構成され、例えばハードディスクドライブで構成されてよい。運転者情報データベース40には、車両用運転支援装置10が搭載される車両の運転者の特性に関する各種情報(以下、「運転者情報」という)が格納される。車両用運転支援装置10が搭載される車両が複数の運転者により運転される場合には、運転者情報は、運転者毎に生成・格納される。運転者情報は、運転者の基本情報、運転操作情報、走行状態情報及び走行履歴情報を含む。運転者の基本情報は、運転者の居所(住所)、主なる走行地域、運転者の性別や、年齢、運転経歴、免許書の色、自動車保険の等級に関する情報であってよい。この運転者の基本情報は、運転者自身により入力されてよい。運転操作情報は、例えばアクセルペダルの操作態様を検出するアクセル開度センサ(アクセルポジションセンサ)、トランスミッションのシフトレンジ情報、ブレーキペダルの操作態様を検出するブレーキストロークセンサ(ブレーキ踏力センサ、マスタシリンダ圧センサ)、及び、ステアリングハンドルの操作態様を検出するステアリングセンサ等の各種センサの出力信号に基づいて生成されてよい。走行状態情報は、車速を検出する車輪速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等の各種センサの出力信号に基づいて生成されてよい。走行履歴情報は、車両の移動軌跡を表す情報であり、自車位置測定部30からの車両位置情報と地図DB32内の地図データとを対応付けた情報であってよい。
【0021】
音楽再生装置50は、いわゆるオーディオ装置であり、音楽CD、MD等を再生できる装置であればよい。機器制御部22による制御下で音楽再生装置50が再生する音楽は、車室内のスピーカー(図示せず)を介して出力される。尚、スピーカーは、後述の音声出力装置66の一要素であってもよいし、後述の音声出力装置66とは別に設けられてもよい。
【0022】
表示装置62は、例えば液晶ディスプレイであってよく、インストルメントパネルに配置される。ディスプレイ上には、機器制御部22による制御下で、地図DB32内の地図データに基づいて描画された地図や、後述の経路案内表示が表示される。また、ディスプレイ上には、操作メニュー画像や車載カメラの撮像画像、TV映像等が表示されてもよい。
【0023】
HUD64は、図2に示すように、主要な構成要素として、インストルメントパネル内に設けられる液晶ディスプレイ64a及び凹面鏡64bと、ウインドシールドガラスに設けられるコンバイナー64cとを有する。液晶ディスプレイ64aには、機器制御部22による制御下で、後述の経路案内表示(図5参照)が表示される。液晶ディスプレイ64a上に表示された経路案内表示は、凹面鏡64bで反射してコンバイナー64cに映される。コンバイナー64cに反射した光(近赤外画像)は運転者の目に届き、あたかもウインドシールドガラスの外にあるかのような虚像として経路案内表示が認識される。
【0024】
音声出力装置66は、スピーカーであってよく、車室内の適切な位置に配置される。例えば、音声出力装置66は、表示装置62と一体となったスピーカーであってよい。スピーカーからは、機器制御部22による制御下で、後述の音声案内(経路案内メッセージ)が出力される。
【0025】
シート振動装置70は、運転席のシートの座部若しくは背もたれ部等のような、運転席のシートの適切な場所に設けられ、機器制御部22による制御下で、振動を発生させる。シート振動装置70は、例えばシートの表皮層よりも内側に配設される電子制御可能なバイブレータ(振動子)であってよい。シート振動装置70は、運転席に通常の姿勢で着座している運転者が知覚可能な振動を発生させるものであればよい。
【0026】
ステアリング振動装置72は、ステアリングホイールのハンドル部のような、ステアリングホイールの適切な場所に設けられ、機器制御部22による制御下で、振動を発生させる。ステアリング振動装置72は、例えばステアリングホイールの表皮層よりも内側に配設される電子制御可能なバイブレータ(振動子)であってよい。シート振動装置70は、通常の姿勢及び操作態様でステアリングホイールを操作する運転者が知覚可能な振動を発生させるものであればよい。
【0027】
機器制御部22は、地図DB32内の地図データや自車位置測定部30からの車両位置情報等に基づいて、経路探索、経路案内、施設検索、地図描画等のような各種処理を実行する。ここでは、特に経路案内処理について取り上げる。機器制御部22は、例えば運転者により設定された目的地に対する経路を探索し、当該探索した経路に応じた経路案内ポイントを決定し、決定した経路案内ポイントに車両が到来したタイミングで、所定の経路案内情報を出力する。この経路案内情報の出力態様の詳細は、以下で後述する。
【0028】
機器制御部22は、主制御部20からのモード指示に応答して、通常案内モードと簡易案内モードのいずれかで、表示装置62、HUD64、音声出力装置66、シート振動装置70、及び、ステアリング振動装置72を制御して、経路案内制御を実行する。
【0029】
図3は、通常案内モード時に機器制御部22により実現される経路案内制御の一例を示すフローチャートである。図3に示す処理ルーチンは、例えばイグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまで、通常案内モード中、所定周期毎に繰り返し実行される。
【0030】
ステップ100では、機器制御部22は、自車位置測定部30から最新の車両位置情報を取得する。
【0031】
ステップ102では、機器制御部22は、経路案内タイミングが到来したか否かを判定する。例えば、機器制御部22は、設定した案内経路上の各経路案内ポイントに車両位置が到来した場合に、経路案内タイミングが到来したと判定する。また、機器制御部22は、路車間通信を介して交通情報(例えばVICS情報)を取得した場合に、経路案内タイミングが到来したと判定してもよい。経路案内タイミングが到来した場合には、ステップ104に進み、経路案内タイミングが到来していない場合には、今回周期の処理ルーチンはそのまま終了する。
【0032】
ステップ104では、機器制御部22は、表示装置62及び音声出力装置66を介して、経路案内情報を出力する。例えば、左折が予定されている交差点への接近時には、機器制御部22は、表示装置62上の地図上に左折を指示する経路案内表示を描画する。また、機器制御部22は、音声出力装置66を介して、「前方300m先の交差点で左折です」なる趣旨の音声案内を出力する。尚、この種の経路案内表示の描画態様や音声案内の出力態様は多種多様であり、如何なる経路案内表示の描画態様や音声案内の出力態様であってもよい。また、上記のステップ102で交通情報が取得された場合には、機器制御部22は、表示装置62及び音声出力装置66を介して、経路案内情報として当該交通情報を出力することとしてよい。
【0033】
図4は、簡易案内モード時に機器制御部22により実現される経路案内制御の一例を示すフローチャートである。図4に示す処理ルーチンは、例えばイグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまで、簡易案内モード中、所定周期毎に繰り返し実行される。
【0034】
ステップ200では、機器制御部22は、自車位置測定部30から最新の車両位置情報を取得する。
【0035】
ステップ202では、機器制御部22は、経路案内タイミングが到来したか否かを判定する。この判定方法は、上述の図3のステップ102と同様であってよい。経路案内タイミングが到来した場合には、ステップ210に進み、経路案内タイミングが到来していない場合には、今回周期の処理ルーチンはそのまま終了する。
【0036】
ステップ210では、機器制御部22は、HUD64を介して、経路案内情報を出力する。例えば、左折が予定されている交差点の手前300mに到来した場合は、機器制御部22は、HUD64により、図5に示すような経路案内表示を出力させる。HUD64により表示される経路案内表示は、表示装置62上に表示される対応する経路案内表示に比べて、簡易な表示であってよい。尚、HUD64により表示されるこの種の経路案内表示の出力態様は多種多様であり、如何なる出力態様であってもよい。また、上記のステップ202で最新の交通情報が取得された場合には、機器制御部22は、HUD64(又は表示装置62)を介して、経路案内情報として当該交通情報を出力することとしてよい。
【0037】
ステップ212は、機器制御部22は、シート振動装置70及びステアリング振動装置72に一定時間駆動信号(駆動電流)を供給し、振動を一定時間発生させる。このステップ212の処理は、上記のステップ210の処理と同期して実行されればよく、上記のステップ210の処理と同時、又は上記のステップ210の処理の直前・直後に実行されてもよい。
【0038】
このように、本実施例では、図3及び図4に示すように、通常案内モード時には、通常通り、経路案内情報は、表示装置62及び音声出力装置66を介して出力される一方で、簡易案内モード時には、経路案内情報は、HUD64を介して出力され、音声出力装置66を介して出力されない。簡易案内モード時には、音声出力装置66を介して出力されない代わりに、シート振動装置70及びステアリング振動装置72により振動が発生される。
【0039】
ところで、一般的に、経路案内情報を音声を用いずに表示(画像)のみで出力する場合には、運転者は、常に表示装置62を見ているわけでないので、経路案内情報を取得し難くなる。
【0040】
これに対して、本実施例によれば、経路案内情報を音声を用いずに表示(画像)のみで出力する場合に、シート振動装置70及びステアリング振動装置72の振動を発生させるので、音声によらずに運転者に経路案内情報を効果的に伝達することが可能となる。即ち、運転者は、シート振動装置70及びステアリング振動装置72の振動を知覚することで、経路案内表示の出力タイミングを知ることができるので、運転者がHUD64により表示される経路案内表示に気が付かない可能性が低減される。
【0041】
図6は、簡易案内モード時に機器制御部22により実現される経路案内制御のその他の一例を示すフローチャートである。図6に示す処理ルーチンは、例えばイグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまで、簡易案内モード中、所定周期毎に繰り返し実行される。上述の図4に示した処理と同様であってよい処理については、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0042】
ステップ204では、機器制御部22は、今回の経路案内タイミングで出力すべき経路案内情報の重要度(注意喚起度)が高いか否かを判定する。経路案内情報の重要度は、経路案内情報の内容に応じて、各経路案内情報に予め付与されてよい。この際、経路案内情報の安全面での貢献度合いや有用性が考慮されてもよい。例えば、交差点手前での右左折案内について、1km先、500m先、300m先といった具合に交差点に接近するにつれて段階的に右左折案内を行う構成の場合、いずれか1つの右左折案内に対して高い重要度が付与されてもよい。今回の経路案内タイミングで出力すべき経路案内情報の重要度が高い場合には、ステップ206に進み、今回の経路案内タイミングで出力すべき経路案内情報の重要度が低い場合には、ステップ210に進む。
【0043】
ステップ206では、機器制御部22は、通常案内モード時と同様(図3のステップ104と同様)に、表示装置62及び音声出力装置66を介して、重要度の高い経路案内情報を出力する。尚、ステップ210では、機器制御部22は、HUD64を介して、重要度の低い経路案内情報を出力する。
【0044】
図6に示すように、簡易案内モード時であっても、重要度の高い経路案内情報については、通常案内モード時と同様に、表示装置62及び音声出力装置66を介して出力することも可能である。
【0045】
図7は、簡易案内モード時に機器制御部22により実現される経路案内制御のその他の一例を示すフローチャートである。図7に示す処理ルーチンは、例えばイグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまで、簡易案内モード中、所定周期毎に繰り返し実行される。上述の図4及び図6に示した処理と同様であってよい処理については、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0046】
図7に示すように、簡易案内モード時において、重要度の低い経路案内情報の出力を禁止して、重要度の高い経路案内情報だけをHUD64を介して出力することも可能である。このようにして、簡易案内モード時には、通常案内モード時に比べて、経路案内情報の出力頻度を低くすることも可能である。
【0047】
次に、以上説明した通常案内モードと簡易案内モード間の適切な切替態様について説明する。
【0048】
図8は、車両用運転支援装置10の主制御部20により実行されるモード切替処理の一例を示すフローチャートである。図8に示す処理ルーチンは、例えばイグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまで、所定周期毎に繰り返し実行される。
【0049】
ステップ800では、主制御部20は、音楽再生装置50により音楽が現在再生中であるか否かを判定する。音楽再生装置50により音楽が現在再生中であるか否かは、例えば音楽再生装置50を制御する機器制御部22からの制御情報(例えば再生開始信号や停止信号)に基づいて判定されてよい。音楽再生装置50により音楽が現在再生中である場合には、ステップ802に進み、音楽再生装置50により音楽が現在再生中でない場合には、ステップ804に進む。
【0050】
ステップ802では、主制御部20は、機器制御部22に対して簡易案内モードで経路案内制御を行うように指示する。これを受けて、機器制御部22は、上述の図4,図6又は図7を参照して説明した態様で簡易案内モードによる経路案内制御を行う。
【0051】
ステップ804では、主制御部20は、機器制御部22に対して通常案内モードで経路案内制御を行うように指示する。これを受けて、機器制御部22は、上述の図3を参照して説明した態様で通常案内モードによる経路案内制御を行う。
【0052】
このように図8に示すモード切替処理によれば、音楽再生中の場合には、音声案内が抑制された簡易案内モードによる経路案内制御が実行されるので、音声案内により運転者の音楽の鑑賞が阻害されることが低減される。特に、簡易案内モード時に、上述の図4又は図7の経路案内制御が実現される場合には、音声案内により運転者の音楽の鑑賞が阻害されることが無くなる。また、簡易案内モード時には、音声案内が抑制されるものの、上述の如く、経路案内表示の出力に伴いシート振動装置70及びステアリング振動装置72の振動が発生されるので、運転者が経路案内表示を見逃す虞が低減される。従って、音楽再生中の場合であっても、音楽の鑑賞を阻害すること防止しつつ、運転者に適切なタイミングで経路案内情報を伝達することができる。
【0053】
図9は、車両用運転支援装置10の主制御部20により実行されるモード切替処理のその他の一例を示すフローチャートである。図9に示す処理ルーチンは、例えばイグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまで、所定周期毎に繰り返し実行される。
【0054】
ステップ900では、主制御部20は、現在の運転者を特定する。運転者の特定(識別)は、車載カメラによる画像認識や、シートセンサによる体重の検知結果等に基づいて実現されてもよい。また、運転者の特定には、イモビライザー、スマートキー又は携帯電話等からの個人識別IDを取得して実現されてもよく、或いは、指紋、静脈、顔などの識別による個人認証結果を利用して実現されてもよい。尚、かかる運転者特定機能が無い場合や、特定不能である場合には、現在の運転者は、運転者情報データベース40内に第1番目に登録されている運転者又は車両のオーナーであると判断してよい。また、運転者情報データベース40内に唯一の運転者に関する運転者情報しか記憶されていない場合には、当該運転者が現在の運転者であると判断してもよい。
【0055】
ステップ902では、主制御部20は、運転者情報データベース40から、現在の運転者に係る運転者情報を抽出・取得する。
【0056】
ステップ904では、主制御部20は、上記のステップ902で取得した運転者情報に基づいて、現在の運転者の運転能力を判断する。運転能力の判断手法は、多種多様であり、如何なる判断方法採用されてもよい。例えば、運転能力は、運転操作情報や走行状態情報(過去のデータ)に基づいて、車速の推移や、右左折時におけるステアリングの切り戻し頻度(ステアリング操作の巧拙)、アクセルワーク・ブレーキワーク、トランスミッションのシフトレンジの変化態様等を指標として評価することで判定されてよい。例えば、車速の推移に関して、信号機や一時停止時点での停止を除いた走行中の速度推移が穏やかな場合には、運転能力が高いと判断してよい。また、右左折時におけるステアリングの切り戻し頻度が低い場合には、運転能力が高いと判断してよい。また、アクセルワーク・ブレーキワークに関して、踏み込み圧力のばらつきが少ない場合には、運転能力が高いと判断してよい。また、トランスミッションのシフトレンジの変化(推移)が穏やかな場合には、運転能力が高いと判断してよい。また、これらの指標は、そのときの周囲環境(例えば走行道路の形状、勾配や車線数等)との関連で評価されてもよい。或いは、運転能力は、運転者情報のうちの基本情報(例えば、運転経歴、免許書の色、自動車保険の等級)をも考慮して判断されてもよい。
【0057】
ステップ906では、主制御部20は、上記のステップ904で運転能力が高いと判断した場合には、ステップ908に進み、上記のステップ904で運転能力が低いと判断した場合には、ステップ910に進む。
【0058】
ステップ908では、主制御部20は、機器制御部22に対して簡易案内モードで経路案内制御を行うように指示する。これを受けて、機器制御部22は、上述の図4,図6又は図7を参照して説明した態様で簡易案内モードによる経路案内制御を行う。
【0059】
ステップ910では、主制御部20は、機器制御部22に対して通常案内モードで経路案内制御を行うように指示する。これを受けて、機器制御部22は、上述の図3を参照して説明した態様で通常案内モードによる経路案内制御を行う。
【0060】
このように図9に示すモード切替処理によれば、運転者の運転能力が高い場合には、音声案内が抑制された簡易案内モードによる経路案内制御が実行され、運転者の運転能力が低い場合には、通常案内モードによる経路案内制御が実行されるので、運転者の運転能力に応じた経路案内制御を実現することができる。即ち、運転能力が高い運転者は、音声案内を受けなくても正しい経路を誤る可能性は低く、逆に、運転能力が低い運転者は、音声案内を受けないと正しい経路を誤る可能性が高い。図9に示すモード切替処理によれば、かかる点を考慮して、運転者の運転能力に適合した態様で経路案内制御を実現することができる。また、簡易案内モード時には、上述の如く、音声案内が抑制されるものの、経路案内表示の出力に伴いシート振動装置70及びステアリング振動装置72の振動が発生されるので、運転能力が高い運転者が経路案内表示を見逃す虞が低減される。従って、運転能力が高い運転者に対しては、音声案内による経路案内情報の過剰な伝達を防止して、経路案内表示により適切なタイミングで経路案内情報を伝達することができる。
【0061】
図10は、車両用運転支援装置10の主制御部20により実行されるモード切替処理のその他の一例を示すフローチャートである。図10に示す処理ルーチンは、例えばイグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまで、所定周期毎に繰り返し実行される。
【0062】
ステップ1000では、主制御部20は、現在の運転者を特定する。運転者の特定方法は、図9のステップ900と同様であってよい。
【0063】
ステップ1002では、主制御部20は、運転者情報データベース40から、現在の運転者に係る運転者情報を抽出・取得する。
【0064】
ステップ1004では、主制御部20は、上記のステップ902で取得した運転者情報に基づいて、現在の運転者が現在走行中の道路の走行頻度を判断する。走行頻度は、運転者情報のうちの走行履歴情報(過去のデータ)に基づいて判断されてよい。例えば、同一の道路の走行回数が所定回数以上であり、頻繁に利用している場合には、走行頻度が高いと判断してもよい。或いは、走行頻度は、運転者情報のうちの基本情報等をも考慮して判断されてもよい。例えば、運転者の住居の住所の近傍の道路や、運転者の主なる走行地域内の道路については、走行頻度が高いと判断してもよい。
【0065】
ステップ1006では、主制御部20は、上記のステップ1004で走行頻度が高いと判断した場合には、ステップ1008に進み、上記のステップ1004で走行頻度が低いと判断した場合には、ステップ1010に進む。
【0066】
ステップ1008では、主制御部20は、機器制御部22に対して簡易案内モードで経路案内制御を行うように指示する。これを受けて、機器制御部22は、上述の図4,図6又は図7を参照して説明した態様で簡易案内モードによる経路案内制御を行う。
【0067】
ステップ1010では、主制御部20は、機器制御部22に対して通常案内モードで経路案内制御を行うように指示する。これを受けて、機器制御部22は、上述の図3を参照して説明した態様で通常案内モードによる経路案内制御を行う。
【0068】
このように図9に示すモード切替処理によれば、走行頻度が高い道路を走行中の場合には、音声案内が抑制された簡易案内モードによる経路案内制御が実行され、走行頻度が低い道路を走行中の場合には、通常案内モードによる経路案内制御が実行されるので、走行頻度に応じた経路案内制御を実現することができる。即ち、走行頻度が高い道路を走行中の場合には、運転者は、音声案内を受けなくても正しい経路を誤る可能性は低く、逆に、走行頻度が低い道路を走行中の場合には、運転者は、音声案内を受けないと正しい経路を誤る可能性が高い。図10に示すモード切替処理によれば、かかる点を考慮して、走行頻度に適合した態様で経路案内制御を実現することができる。また、簡易案内モード時には、上述の如く、音声案内が抑制されるものの、経路案内表示の出力に伴いシート振動装置70及びステアリング振動装置72の振動が発生されるので、運転者が経路案内表示を見逃す虞が低減される。従って、走行頻度が高い道路を走行中の場合には、運転者に対して、音声案内による経路案内情報の過剰な伝達を防止して、経路案内表示により適切なタイミングで経路案内情報を伝達することができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0070】
例えば、上述の図8乃至図10の切替処理は、適切に組み合わせて用いることも可能である。例えば、音楽再生中であり、且つ、運転者の運転能力が高い場合には、音声案内の無い簡易案内モード(図4)、又は、音声案内が無く且つ出力頻度の低い簡易案内モード(図7)を実現する一方、音楽再生中であり、且つ、運転者の運転能力が低い場合には、重要度(注意喚起度)の高い経路案内情報のみ音声案内により出力される簡易案内モード(図6)を実現してもよい。同様に、音楽再生中であり、且つ、走行頻度が高い道路を走行中の場合には、音声案内の無い簡易案内モード(図4)、又は、音声案内が無く且つ出力頻度の低い簡易案内モード(図7)を実現する一方、音楽再生中であり、且つ、走行頻度が低い道路を走行中の場合には、重要度の高い経路案内情報のみ音声案内により出力される簡易案内モード(図6)を実現してもよい。
【0071】
また、上述した実施例では、運転者の身体の一部が触れる車体部品に設けられるシート振動装置70及びステアリング振動装置72により振動により刺激を発生しているが、刺激の種類は任意であり、例えば、ステアリングホイールに設けられる熱線やペルチェ素子のような手段を用いて、熱により刺激を発生してもよい。
【0072】
また、上述した実施例では、簡易案内モード時に、シート振動装置70及びステアリング振動装置72の双方により振動を発生させているが、シート振動装置70及びステアリング振動装置72のうちのいずれか一方だけ設定することも可能であり、或いは、第3の刺激発生手段を設定することも可能である。また、シート振動装置70及びステアリング振動装置72の振動態様は可変であってもよく、例えば、運転者の運転能力が高い場合には、運転者の運転能力が低い場合に比べて、弱い振動を短い時間だけ発生させてもよい。同様に、例えば、走行頻度が高い道路を走行中の場合には、走行頻度が低い道路を走行中の場合に比べて、弱い振動を短い時間だけ発生させてもよい。
【0073】
また、上述した実施例では、簡易案内モード時に、HUD64により経路案内表示を出力しているが、HUD64に代えて又は加えて、表示装置62に経路案内表示を表示してもよい。
【0074】
また、上述した実施例では、運転者の運転能力や走行道路の走行頻度は、主制御部20により判定されているが、運転者の運転能力や走行道路の走行頻度は、上述の運転者情報を集積する外部センタで判定され、運転者の運転能力や走行道路の走行頻度に関する情報は、外部センタから通信を介して取得されてもよい。
【0075】
また、上述した実施例において、主制御部20及び機器制御部22は、例えばナビゲーションECUとして一体的に具現化されてもよいし、主制御部20及び機器制御部22の一部の機能がナビゲーションECUにより実現され、その他の機能が他のECUにより実現されてもよい。また、機器制御部22は、音楽再生装置50、表示装置62、HUD64、及び、音声出力装置66、シート振動装置70、及び、ステアリング振動装置72の全てを制御しているが、いずれかの装置が他の別の制御部により制御されてもよい。例えば、表示装置62、HUD64及び音声出力装置66からなる経路案内手段60と、シート振動装置70及びステアリング振動装置72からなる振動発生手段とは、別々の制御部により協働して制御されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明による車両用運転支援装置10の一実施例の主要構成を示すシステム構成図である。
【図2】HUD64の概要を車両の側面視の断面で示す図である。
【図3】通常案内モード時に機器制御部22により実現される経路案内制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】簡易案内モード時に機器制御部22により実現される経路案内制御の一例を示すフローチャートである。
【図5】HUD64により表示される経路案内表示の一例を示す図である。
【図6】簡易案内モード時に機器制御部22により実現される経路案内制御のその他の一例を示すフローチャートである。
【図7】簡易案内モード時に機器制御部22により実現される経路案内制御のその他の一例を示すフローチャートである。
【図8】車両用運転支援装置10の主制御部20により実行されるモード切替処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】車両用運転支援装置10の主制御部20により実行されるモード切替処理のその他の一例を示すフローチャートである。
【図10】車両用運転支援装置10の主制御部20により実行されるモード切替処理のその他の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
10 車両用運転支援装置
20 主制御部
22 機器制御部
30 自車位置測定部
32 地図データベース
40 運転者情報データベース
50 音楽再生装置
60 経路案内手段
62 表示装置
64 HUD(ヘッドアップディスプレイ)
64a 液晶ディスプレイ
64b 凹面鏡
64c コンバイナー
66 音声出力装置
70 シート振動装置
72 ステアリング振動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽を再生する音楽再生手段と、
経路案内情報を出力する経路案内手段と、
運転者の聴覚以外の感覚に対する刺激を発生する刺激発生手段と、
前記経路案内手段及び刺激発生手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記音楽再生手段による音楽が再生されている場合には、前記経路案内手段により表示により経路案内情報を出力させると共に、前記刺激発生手段により前記刺激を発生させることを特徴とする、車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記音楽再生手段による音楽が再生されている場合には、更に、前記経路案内手段による音声による経路案内情報の出力を抑制する、請求項1に車両用運転支援装置。
【請求項3】
経路案内情報を出力する経路案内手段と、
運転者の聴覚以外の感覚に対する刺激を発生する刺激発生手段と、
運転者の運転能力を判断する運転能力判断手段と、
前記経路案内手段及び刺激発生手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記運転能力判断手段により運転者の運転能力が所定基準より高いと判断された場合には、前記経路案内手段により表示により経路案内情報を出力させると共に、前記刺激発生手段により前記刺激を発生させることを特徴とする、車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記運転能力判断手段により運転者の運転能力が所定基準より高いと判断された場合には、更に、前記経路案内手段による音声による経路案内情報の出力を抑制する、請求項3に車両用運転支援装置。
【請求項5】
経路案内情報を出力する経路案内手段と、
運転者の聴覚以外の感覚に対する刺激を発生する刺激発生手段と、
過去の走行履歴データに基づいて、現在の走行道路の走行頻度を判断する走行頻度判断手段と、
前記経路案内手段及び刺激発生手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記走行頻度判断手段により現在の走行道路の走行頻度が所定基準より高いと判断された場合には、前記経路案内手段により表示により経路案内情報を出力させると共に、前記刺激発生手段により前記刺激を発生させることを特徴とする、車両用運転支援装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記運転能力判断手段により運転者の運転能力が所定基準より高いと判断された場合には、更に、前記経路案内手段による音声による経路案内情報の出力を抑制する、請求項5に車両用運転支援装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記経路案内手段により表示により経路案内情報を出力させるタイミングに同期したタイミングで前記刺激発生手段により前記刺激を発生させる、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の車両用運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−256420(P2008−256420A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96920(P2007−96920)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】