説明

車両開閉体の駆動制御装置

【課題】 挟み込み検出に用いられる静電容量式センサの氷結時にも安全に自動閉制御することができる車両開閉体の駆動制御装置を提供する。
【解決手段】 車体1の開口部2を開閉する開閉体3と、その駆動手段7と、開閉体の開口部側の端部に設けられ、物体の接近に応じて近接出力信号を発生する静電容量式センサ100と、開閉体3を自動開閉すべく駆動手段7を駆動制御する制御手段6とを有し、自動閉作動の開始時の近接出力信号値が、物体がセンサ部4に接近していることを規定する第1閾値以上である場合に、センサ部4の氷結が原因であるか判定するべく、外気温度とセンサ部4の氷結の可能性を示唆する氷結温度とを比較し、外気温度が氷結温度以下であればセンサ部4が氷結しているとして近接出力信号と第1閾値との比較結果に関わらず開閉体3の自動閉作動を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に備えられる自動ドア等の開閉体の駆動制御装置に関し、特に静電容量式センサを用いて物体の挟み込みを検出し、開閉体を自動開閉制御する車両開閉体の駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の開口部を自動開閉するスライドドアやパワーウインドには、挟み込みを防止するための手段が備えられている。この手段は、例えば、圧力センサや静電容量式センサといったセンサをドアの開口部側の端面に設置して、センサに近接する物体の存在を検出し、例えばスライドドアの自動閉作動中に物体の存在を検出した場合には、スライドドアの自動閉動作を停止し又はスライドドアの反転作動を行い、挟み込みを回避する。
【0003】
圧力センサは、人体等の物体のドアへの接触を検出するのに対し、静電容量式センサは、非接触で物体を検知することができるため、ドアと物体とが衝突することなく挟み込みを検知することができる。この静電容量式センサのセンサ部は一般的に2枚の互いに向かい合った平板の検出電極により構成される。これらの検出電極の静電容量値は、接近した物体との距離によって変化する。それぞれの検出電極には基準コンデンサが接続され、基準コンデンサを介してパルス電圧が供給されている。物体が検出電極に近接すると、それぞれの検出電極の静電容量値が変化するため、検出電極の電圧値が変化する。そして、それぞれの検出電極の電圧値の変化量に基づいて人体等の物体がドアへ近接することが検出される。
【特許文献1】特開平2005−240428
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような静電容量式センサは、例えば降雨などによる水滴といったセンサの静電容量に変化を及ぼす物質がセンサ部近傍に存在すると、静電容量値が容易に変化する。これにより、近接出力信号の値がベースラインとなる基準電位からずれを生じる、また誤検出を発生するといった課題を有する。特にセンサ表面を水が流水となって流れることで、センサ部表面と車体本体とが電気的に結合した場合には、近接出力信号が瞬間的に大きく上昇するため物体の挟み込みと誤検出を引き起こすという課題がある。このようなセンサ表面を水が流水となって流れ、センサ部表面を流れる水と車体本体とが電気的に結合する現象を以下、水渡りという。
【0005】
水渡りによる近接出力信号の上昇は、流水の終了とともに解消されるが、寒冷地等においては、センサ表面に付着する水滴が車体本体と電気的に連結したまま凍結する場合がある。このように、凍結した水滴により車体本体とセンサ表面が電気的に連結された状態が維持されると、近接出力信号の値は上昇したままとなる。センサ表面と車体本体とが凍結した水滴により連結した状態を以下、氷結という。図4は氷結時及び通常時の近接出力信号のドア位置による変化の推移と、挟み込み検出の閾値としてのHI閾値のドア位置による変化の推移を示すグラフである。氷結時の近接出力信号は、ドア位置に関わらず第1閾値として設定されたHI閾値以上となり、挟み込みを常に検出している状態となる。そのため、開閉体の自動閉制御は常に禁止され、自動閉作動が行われないという課題がある。このような凍結は、寒冷地などにおいて外気温度の低下によるセンサ表面に付着した水滴の凍結や着霜により発生する。
【0006】
本発明は上記のセンサ部の凍結による課題に対してなされたものであり、センサ部が凍結した時に、開閉体を自動制御することができる車両開閉体の駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明は、車両に設けられた開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体を駆動する駆動手段と、前記開閉体の端部に配置され、前記開閉体の端部から所定の距離だけ離れた領域内へ物体が接近すると、距離に応じて静電容量値が変化して静電容量値の変化に応じて近接出力信号を発生する静電容量式センサと、前記静電容量式センサが発生する近接出力信号の値と予め定められた第1の閾値とを比較し、近接出力信号が第1の閾値に達すると第1の反転信号を発生する第1の比較手段を有し、前記駆動手段を駆動制御し、前記開閉体が開口部を閉じる制御をする時において、前記第1の比較手段が反転信号を発生すると、前記駆動手段により、前記開閉体が開口部を開く反転制御をする制御装置とを備えた車両開閉体の駆動装置であって、前記静電容量式センサが発生する近接出力信号の値を予め定められた時間ごとに記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された近接出力信号の値と前記第1の閾値とを比較し、前記記憶された近接出力信号が第1の閾値に達すると第2の反転信号を発生する第2の比較手段と、外気温を測定し、温度に比例した温度信号を発生する温度センサと、前記温度センサが発生する温度信号の値と予め定められた温度閾値とを比較し、温度信号の値が温度閾値に達すると氷結信号を発生する第3の比較手段を備え、前記制御装置は、前記第1の比較手段が第1の反転信号を発生した際に、前記第2の比較手段が第2の反転信号を発生し、かつ前記第3の比較手段が氷結信号を発生していると、前記駆動手段による反転制御を禁止する禁止手段を有していることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記禁止手段により、前記駆動手段の反転制御が禁止されると、前記制御装置は予め定められた速度で前記開閉体を閉動作させることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記開閉体の端部に配置され、前記開閉体の前記端部に物体が接触すると、静電容量値が変化して接触出力信号を発生する接触センサを備え、前記制御装置は、前記接触センサが発生する接触出力信号の値と予め定められた第2の閾値とを比較し、接触出力信号が第2の閾値に達すると第2の反転信号を発生する第3の比較手段を有し、前記第3の比較手段が第2の反転信号を発生すると、前記開閉体が開口部を開く反転制御をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、開閉体の閉作動の開始時から近接出力信号が第1閾値以上となっていても、記憶手段に記憶されている開閉体の閉動作の開始時から予め定められた時間だけ前の近接出力信号が第1閾値以上であり、かつ外気温度がセンサ部の氷結の可能性を示唆する温度閾値としての氷結温度以下であれば、近接出力信号の上昇はセンサ部の氷結によるものであると推定する。そして、挟み込み反転動作を禁止することができる。すなわち、氷結によりセンサ部が常に挟み込みを検出している状態となっても、開閉体の挟み込み反転動作を禁止する事で自動閉制御を行うことが可能となる。
【0011】
請求項2の発明によれば、センサ部が氷結したと推定される時の自動閉作動における開閉体の閉速度を低下させることにより安全性を向上させることができる。請求項1の発明によりセンサ部が氷結していると推定された場合には、開閉体は近接出力信号の値が第1閾値以上であっても自動閉作動を行うため、物体の接近を静電容量式センサによって検出することができない。そのため、物体等との衝突を懸念して氷結と判断した時の開閉体の閉速度を遅くして安全性を高める。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項1および請求項2の発明によりセンサ部が氷結したと推定され、開閉体を予め定められた遅い速度で閉動作しても、接触センサを備える事で、挟み込みを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る車両開閉体の駆動制御装置を備えた車両の模式的側面図である。車体1には、乗客が後部座席へ乗り込むための開口部としての乗降口2が設けられており、その乗降口2を開閉可能にするための開閉体としてのドア3が設けられている。ドア3は、ドア開閉駆動装置としての電動モータ7によりワイヤ61を介して開閉駆動され、かつレール62によりガイドされて車体の前後方向にスライド移動し得るスライドドアとして設けられている。
【0015】
ドア3の全閉側の端面3aには、非接触型のセンサである静電容量式センサ100のセンサ部4が配置されている。センサ部4はドア3の全閉側の端面3aの上端から下端にわたって配置され、車体1の乗降口2を形成するピラー(Bピラー)1aを向くように取り付けられる。図2および図4は、本発明の実施の形態に係る車両開閉体の駆動制御装置の構成を示す模式図である。図2に示すように、静電容量式センサ100はセンサ部4と、電荷供給部101と、センサ部への物体の接近を示す近接出力信号を発生する近接検出部102と、センサ部への物体の接触を示す接触出力信号を発生する接触検出部103とを含む。電荷供給部101と、近接検出部102と、接触検出部103とはECU(電子制御ユニット)5に設けられている。近接検出部102には、センサ出力検出回路15と、第1比較回路20と、メモリ21と、ドア位置・速度検出部23と、氷結判定部50とが設けられている。
【0016】
ECU5には、電動モータ7を駆動制御する制御手段としての駆動制御部6が設けられており、駆動制御部6には近接検出部102および接触検出部103からの近接出力信号および接触出力信号と、開閉スイッチ手段としての開閉スイッチ(図示しない)からの開閉信号が入力される。開閉信号は、車体1に設けられた開閉スイッチからの信号や可搬キー(図示しない)からの電波信号であってよい。また駆動制御部6は、ドア3の開閉位置を検出するドア位置・速度検出部23からドア位置情報を受け取る。また、ドア3の付近の温度を測定するための温度センサ29がドア3に設けられており、温度センサ29はセンサ信号を近接検出部102の氷結判定部に入力する。
【0017】
図2において、静電容量式センサ100のセンサ部4は、模式的な断面図として示されている。センサ部4は、絶縁性および可撓性を有し、中空筒形状に形成される被覆部材13と、被覆部材13の内部に固定配置され、複数の電極を有する検出電極部16と、導電部材により構成され、電気的に接地されたGND電極12とを有する。GND電極12は、被覆部材13の内部であって検出電極部16と対向した位置に固定配置されている。
【0018】
検出電極部16は、さらに、互いに平行に向かい合った2枚の検出電極8及び検出電極9と、検出電極8及び検出電極9をコの字状に囲うシールド電極11と、絶縁部材10とを有し、絶縁部材10は、検出電極8と検出電極9の間、およびシールド電極11と検出電極8および検出電極9の間に配置されている。
【0019】
検出電極8及び検出電極9は、電荷供給部101の電荷供給回路14に第1基準コンデンサ18および第2基準コンデンサ19を介して接続されている。電荷供給回路14は、第1基準コンデンサ18および第2基準コンデンサ19へ等しい大きさの電圧を供給する。電荷供給回路14から第1基準コンデンサ18に供給された電圧は、検出電極8及び第1基準コンデンサ18で分圧される。また、電荷供給回路14から第2基準コンデンサ19に供給された電圧は、検出電極9及び第2基準コンデンサ19で分圧される。分圧された電圧はそれぞれ近接検出部102のセンサ出力検出回路15に入力される。検出電極8及び検出電極9に物体が接近すると、物体とそれぞれの検出電極8及び検出電極9の間に静電容量が発生する。そしてその静電容量は物体とそれぞれの検出電極8および検出電極9の距離に応じて変化する。その結果、物体とそれぞれの検出電極8及び9の間に発生した静電容量に応じて、センサ出力検出回路15に入力される電圧が変化する。センサ出力検出回路15は入力された電圧の差分を検出し、その近接出力信号を近接出力信号として第1比較回路20に供給する。
【0020】
第1比較回路20は、ドア3の位置を検出しドア位置信号を出力するドア位置・速度検出部23と、第1の閾値が予めマップとして記憶されたメモリ21に接続されている。第1の閾値としてのHI閾値は、静電容量式センサ100の挟み込みを判定するための判定値であり、ドア3の位置に応じて変化する値である。第1比較回路20は、ドア位置・速度検出部23から供給されたドア位置信号により、メモリ21からドア位置信号に対応するHI閾値を得て、HI閾値と近接出力信号とを比較する。第1比較回路20は、近接出力信号の値がHI閾値よりも大きいと判定すると、駆動制御部6へ反転信号発生回路27により反転信号としての近接検出信号を出力する。この構成により、静電容量式センサ100は、センサ部4の付近へ物体が近接すると、非接触で物体の近接を検出することができる。
【0021】
シールド電極11は、前述のように検出電極8および検出電極9の周囲をコの字状に囲んで配置されている。また、シールド電極11には、電荷供給回路14から検出電極8および検出電極9に印加されている電圧と同じ電圧が印加されている。そしてシールド電極11は第4比較回路30に接続されている。
【0022】
センサ部4の被覆部材13は可撓性を有するため、センサ部4に外力が働くと被覆部材13が撓み、被覆部材13の内部に配置されているシールド電極11は、GND電極12と接触する。シールド電極11がGND電極12に接触すると、接触検出部103の第4比較回路30に入力される電圧値は低下する。第4比較回路30は、シールド電極11に印加されている電圧値と、シールド電極11とGND電極12の接触を検出する閾値としてメモリ22に記憶された第3の閾値とを比較する。第4比較回路30は、シールド電極11の電圧値が第3の閾値よりも小さいと判定すると、駆動制御部6に接触検出信号を出力する。この構成により、静電容量式センサ100は、センサ部4への物体の接触を検出することができる。
【0023】
また、ドア3は、自動閉作動が実行されている間、ドア3の位置に応じてドア3を閉じる速度を変更するように駆動制御部6によって制御されている。図6は本発明の実施の形態に係る車両開閉体の駆動制御装置によってドアの自動閉作動をする際のドアの位置に応じたドアの速度変化を示すグラフであり、目標速度のデータは駆動制御部6に設けられたのメモリ(図示しない)に記憶されている。図6中の実線によって表されるドア閉速度(v(x))は、ドアの位置(x)によって設定されている目標ドア速度を表し、ドア3が全閉位置に近くなるにつれてドア3を閉じる速度は低下する。グラフ中に示されている数値等は例示であって限定するものではない。
【0024】
図3は、図2における近接検出部102の部分詳細を示す図である。センサ出力検出回路15は、第1の比較手段としての第1比較回路20および記憶手段としてのメモリ24へ近接出力信号を近接出力信号として供給する。第1比較回路20は、予め定められた挟み込み検出閾値としての近接検出閾値(第1の閾値)が記憶されているメモリ21、位置検出回路40、判定回路26および反転信号発生回路27と接続されている。第1比較回路20は、センサ出力検出回路15から供給される近接出力信号の値とドア3の位置に応じたメモリ21の近接検出閾値(第1の閾値)とを比較し、近接出力信号の値が近接検出閾値(第1の閾値)よりも大きい場合は判定回路26および反転信号発生回路27へと第1の反転信号としての第1反転指示信号を供給する。
【0025】
メモリ24は、センサ出力検出回路15から供給される近接出力信号を記憶可能なメモリであり、第2の比較手段としての第2比較回路25と接続されている。第2比較回路25は、メモリ24、メモリ21および判定回路26と接続されている。第2比較回路25は、メモリ24から供給される近接出力信号とメモリ21のHI閾値(第1の閾値)とを比較し、近接出力信号がHI閾値よりも大きい場合は判定回路26に第2の反転信号としての第2反転指示信号を供給する。
【0026】
温度センサ29は、雰囲気温度を測定可能なセンサであり、温度信号を供給し、第3の比較手段としての温度比較回路31と接続されている。温度比較回路31は、温度センサ29から供給される温度信号と、温度閾値32に記憶されている温度閾値とを比較し、温度信号が温度閾値よりも低い場合は判定回路26に氷結推定信号を供給する。温度閾値は氷結が発生しうる温度に設定されており、例えば0℃から4℃の間に設定されている。
【0027】
判定回路26は、第1比較回路20、第2比較回路25、温度比較回路31、禁止回路28および切替回路33とに接続されている。判定回路26に対して、第1比較回路20から第1反転指示信号が供給され、かつ第2比較回路25から第2反転指示信号が供給され、かつ温度比較回路31から氷結推定信号が供給されている場合は、禁止回路28および切替回路33へ氷結信号を供給する。
【0028】
禁止回路28は、判定回路26および反転信号発生回路27と接続されていて、判定回路26から氷結信号が供給されると、反転信号発生回路27へ反転禁止信号を供給する。
【0029】
反転信号発生回路27は、第1比較回路20および禁止回路28と接続されている。反転信号発生回路27は、第1の比較回路20から第1反転指示信号が供給されると、ドア3を反転制御させるための反転指令信号を駆動制御部6へ供給し、禁止回路28から反転禁止信号が供給されると、反転指令信号を駆動制御部6へ供給することを停止する。
【0030】
切替回路33は、判定回路26およびV1メモリ34およびV2メモリ35および比較回路37と接続されている。V1メモリ34およびV2メモリ35には、それぞれドア3の位置に応じたドア3の移動速度であるドア速度データが記憶されている。V2メモリ35に記憶されているドア速度データは、V1メモリ34に記憶されているドア速度データよりも十分低い速度に設定されており、例えばV1メモリ34に記憶されているドア速度データの最大値の半分に設定されている。切替回路は、V1メモリ34またはV2メモリ35に記憶されているドア速度データのうち、いずれか一方のドア速度データを比較回路37へ供給する。切替回路33は、判定回路26から氷結信号が供給されると、比較回路37へ供給するドア速度データをV2メモリ35に記憶されているドア速度データへと切り替える。
【0031】
電動モータ7には、電動モータ7の回転に応じてパルス信号を出力する回転センサ42が配置されている。回転センサ42から出力されたパルス信号は位置検出回路40および速度検出回路36に供給される。
【0032】
位置検出回路40は、回転センサ42から供給されたパルス信号によりドア3の位置を検出し、ドア位置信号を第1比較回路20および比較回路37および駆動制御部6へと供給する。
【0033】
速度検出回路36は、回転センサ42から供給されたパルス信号によりドア3の速度を検出し、ドア速度信号を比較回路37へと供給する。
【0034】
比較回路37は、位置検出回路40および速度検出回路36および切替回路33と接続されている。比較回路37は、切替回路33から供給されるドア速度データと位置検出回路40から供給されるドア位置信号とにより、ドア3の位置に応じたドア速度データを読み出し、速度検出回路36から供給されるドア速度信号とドア速度データとを比較する。そして、比較回路37はその比較結果としての信号を駆動制御部6に供給し、駆動制御部6は受けた信号に基づきドア3の移動速度を制御する。
【0035】
以上の構成によれば、ドア3の閉動作時にセンサ出力検出回路15からの近接出力信号が第1比較回路20によってHI閾値より大きいと判定されることでドア3を反転動作させる第1反転指令信号を発生したとしても、第2比較回路25によりメモリ24に記憶された一定時間前の近接出力信号がHI閾値以上と判定され、かつ温度比較回路31により温度センサ29の温度信号が第2の閾値よりも低いと判定された場合は、判定回路26はセンサ4が氷結していると推定し、氷結信号を禁止回路28および切替回路33に供給する。そして、禁止回路28は氷結信号が供給されるとドア3の反転動作を禁止する反転禁止信号を反転信号発生回路27へ供給し、切替回路33はドア速度データを低い速度のV2メモリ35に切り替える。これにより、ドア3は判定回路26により氷結信号が出力されたら、V2メモリ35のドア速度データに基づいて低い速度で閉動作される。
【0036】
次に、このようにして構成された車両開閉体の駆動制御装置の制御要領について図6のフロー図を参照して以下に示す。
【0037】
ドア3を閉じる制御は、スタートステップST0で開始され、ステップST1で開閉スイッチによりドア3を閉じるための閉信号が入力されたかが判定される。開閉スイッチからの閉信号が入力された場合にはステップST2に進み、閉信号が入力されない場合には、閉信号が入力されるまでステップST1が繰り返えし実行される。
【0038】
ステップST2ではドア3が全閉位置にあるかが判定される。ドア3の自動閉作動はドア3が全閉位置以外の任意の位置にある場合に実施することができる。そのため、ドア3が全閉位置にある場合には、閉動作をすることができず、エンドステップに進み制御を終了する。ドア3が全閉位置にない場合はステップST3に進む。
【0039】
ステップST3では、シールド電極11の電圧と、タッチ検出閾値としての基準信号である接触検出閾値(第2の閾値)とが比較される。シールド電極11の電圧が接触検出閾値(第2の閾値)よりも小さい場合にはセンサ4に物体が接触していると判定され、ステップST1へ戻り、ドア3は動くことなく、その位置に維持される。シールド電極11の電圧が第3の閾値よりも大きい場合にはステップST4へと進む。
【0040】
ステップST4では、センサ出力検出回路15の近接出力信号と、メモリ21に記憶されたドア位置に応じた近接検出閾値(第1の閾値)としての静電容量式センサの挟み込み判定値(HI閾値)とが比較される。近接出力信号の値が近接検出閾値(第1の閾値)よりも大きい場合には、ステップST9へと進み、近接出力信号の値が近接検出閾値(第1の閾値)以下の場合にはステップST5へ進む。
【0041】
ステップST5では、ドア3をメモリ34に記憶されたドア位置ごとのドア速度データに基づいて閉動作させる制御を開始し、ステップST6へ進む。
【0042】
ステップST6では、ステップST4と同様にセンサ出力検出回路15の近接出力信号と、近接検出閾値(第1の閾値)とが比較される。近接出力信号の値が近接検出閾値(第1の閾値)よりも大きい場合には、センサ4の付近に物体が存在していると判定され、ステップST14へと進んで挟み込みを解消する動作を行う。近接出力信号がHI閾値(第1の閾値)以下の場合には、ステップST7へと進む。
【0043】
ステップST7では、ステップST3と同様にシールド電極11の電圧と接触検知閾値(第2の閾値)とが比較される。シールド電極11の電圧が接触検知閾値(第2の閾値)よりも小さい場合にはセンサ4に物体が接触していると判定され、ステップST14へと進み挟み込みを解消する動作を行う。シールド電極11の電圧が接触検知閾値(第2の閾値)よりも大きい場合はステップST8へと進む。
【0044】
ステップST8では、位置検出回路40から出力されるドア位置信号により、ドア3が全閉位置に到達したかどうかが判定される。ドア3が全閉位置に到達している場合にはステップST15へと進む。ドア3が全閉位置に到達していない場合にはステップST6へと戻り、ドア3がドア全閉位置に到達するまでドア3の閉動作が継続される。
【0045】
ステップST15では、ドア3が全閉位置に到達したとしてドア3の閉動作を終了する。
【0046】
ステップST9では、第2比較回路25によりメモリ24に記憶された一定時間前のドア3の近接出力信号と近接検出閾値(第1の閾値)とが比較される。近接出力信号の値が近接検出閾値(第1の閾値)よりも大きい場合はステップST10へと進む。近接出力信号の値が近接検出閾値(第1の閾値)よりも小さい場合は、センサ部4の付近に物体が存在すると推定し、ドア閉動作を行わず、ステップST1へと戻る。
【0047】
ステップST10では、温度比較回路31により温度センサ29から供給される温度信号と温度閾値32に記憶されている温度閾値とが比較される。温度信号が温度閾値よりも高い場合は、近接出力信号の値の上昇の原因はセンサ部4の付近に物体が存在するためと推定し、ドア閉動作を行わず、ステップST1へと戻る。温度信号が温度閾値よりも低い場合は、ステップST4、ステップST9およびステップST10の判定結果から近接出力信号の値の上昇の原因はセンサ部4の氷結によるものと推定し、ステップST11へと進む。
【0048】
ステップST11では、ドア3の低速での閉動作を開始し、ステップST12へと進む。ドア3の動作速度は、V2メモリ35に記憶されている速度データを参照して制御される。
【0049】
ステップST12では、シールド電極11の電圧と、タッチ検出閾値としての接触検出閾値(第2の閾値)とが比較される。シールド電極11の電圧が接触検出閾値(第2の閾値)よりも小さい場合にはセンサ4に物体が接触していると判定され、ステップST14へと進み、挟み込みを解消する制御を行う。シールド電極11の電圧が接触検出閾値(第2の閾値)よりも大きい場合にはステップST13へと進む。
【0050】
ステップST13では、位置検出回路40から出力されるドア位置信号により、ドア3が全閉位置に到達したかどうかが判定される。ドア3が全閉位置に到達している場合にはステップST15へと進む。ドア3が全閉位置に到達していない場合にはステップST12へと戻り、ドア3がドア全閉位置に到達するまでドア3の閉動作が継続される。
【0051】
以上の制御を有する車両開閉体の駆動制御装置は、静電容量式センサ100のセンサ部4が氷結しており正常な近接出力信号が得られない場合にもスライドドア等の開閉体の自動閉作動を安全に行うことができる。この車両開閉体の駆動制御装置は冬季や寒冷地での使用に供される車両に適している。また、車両のみならず建築物等の出入り口等の開閉体に用いられてもよい。
【0052】
本実施形態では、例として車両に設けられるスライドドアに関して記載したが、本発明はパワーウインド及びルーフウインドといった他の開閉体についても同様に適用することができる。また、本実施形態においては、温度センサ29はドア3の全閉側の端部に設けられているとしたがこれに限らず、例えば近接検出部102または駆動制御部6(電子制御ユニット)の内部に温度検出素子として搭載されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る車両開閉体の駆動制御装置を備えた車両の模式的側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両開閉体の駆動制御装置の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両開閉体の駆動制御装置の構成を示す模式図である。
【図4】氷結時及び通常時の近接出力信号のドア位置による変化の推移を示すグラフである。
【図5】本実施形態に係る車両開閉体の駆動制御装置による自動閉作動におけるドア位置に応じたドア閉速度変化を示すグラフである。
【図6】本実施形態に係る車両開閉体の駆動制御装置の制御要領について示すフロー図である。
【符号の説明】
【0054】
3 ドア
4 センサ部
5 ECU
6 駆動制御部
7 電動モータ
14 電荷供給回路
15 センサ出力検出回路
20 第1比較回路
23 ドア位置・速度検出部
50 氷結判定部
100 静電容量式センサ
102 近接検出部
103 接触検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた開口部を開閉する開閉体と、
前記開閉体を駆動する駆動手段と、
前記開閉体の端部に配置され、前記開閉体の端部から所定の距離だけ離れた領域内へ物体が接近すると、距離に応じて静電容量値が変化して静電容量値の変化に応じて近接出力信号を発生する静電容量式センサと、
前記静電容量式センサが発生する近接出力信号の値と予め定められた第1の閾値とを比較し、近接出力信号が第1の閾値に達すると第1の反転信号を発生する第1の比較手段を有し、前記駆動手段を駆動制御し、前記開閉体が開口部を閉じる制御をする時において、前記第1の比較手段が反転信号を発生すると、前記駆動手段により、前記開閉体が開口部を開く反転制御をする制御装置とを備えた車両開閉体の駆動装置であって、
前記静電容量式センサが発生する近接出力信号の値を予め定められた時間差分ごとに記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された近接出力信号の値と前記第1の閾値とを比較し、前記記憶された近接出力信号が第1の閾値に達すると第2の反転信号を発生する第2の比較手段と、
外気温を測定し、温度に比例した温度信号を発生する温度センサと、
前記温度センサが発生する温度信号の値と予め定められた温度閾値とを比較し、温度信号の値が温度閾値に達すると氷結信号を発生する第3の比較手段を備え、
前記制御装置は、前記第1の比較手段が第1の反転信号を発生した際に、前記第2の比較手段が第2の反転信号を発生し、かつ前記第3の比較手段が氷結信号を発生していると、前記駆動手段による反転制御を禁止する禁止手段を有していることを特徴とする車両開閉体の駆動装置。
【請求項2】
前記禁止手段により、前記駆動手段の反転制御が禁止されると、前記制御装置は予め定められた速度で前記開閉体を閉動作させることを特徴とする請求項1記載の車両開閉体の駆動装置。
【請求項3】
前記開閉体の端部に配置され、前記開閉体の前記端部に物体が接触すると、静電容量値が変化して接触出力信号を発生する接触センサを備え、
前記制御装置は、前記接触センサが発生する接触出力信号の値と予め定められた第2の閾値とを比較し、接触出力信号が第2の閾値に達すると第2の反転信号を発生する第3の比較手段を有し、前記第3の比較手段が第2の反転信号を発生すると、前記開閉体が開口部を開く反転制御をすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両開閉体の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−161966(P2009−161966A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341495(P2007−341495)
【出願日】平成19年12月29日(2007.12.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】