説明

車両

【課題】簡易な構成でノイズが自動車用TYアンテナ等に混入することを抑制できる車両を提供する。
【解決手段】駆動源としての電動機と、電動機からの駆動力を車輪に伝達するための車軸と、車軸を支持するキャリアと、キャリアと車体とを繋ぐアームと、を有するサスペンションと、を備える車両において、キャリア37は、パーキングブレーキワイヤー47,48と導線50を介して電気的に接続される。そして、パーキングブレーキワイヤー47,48は、車体36の金属製のボディ部と導線51によって接続される。これにより、キャリア37は、車体36と電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源として電動機を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源として電動機を有する車両として、例えば電気自動車やハイブリッド車が知られている。これらの車両では、電動機の回転軸はギヤ類を介してドライブシャフトに接続されている。ドライブシャフトは車輪に接続されている。電動機から出力される駆動力は、ギヤ類を介してドライブシャフトに伝達され、それによって車輪が駆動される。
【0003】
電気自動車やハイブリッド車においては、電動機のステータに供給する電流を制御するために、インバータ内のスイッチング素子を動作させると、そのオンオフ動作に起因して電動機のロータにノイズが誘起される。かかるノイズはロータからギヤ類を介してドライブシャフトへ伝達する。ドライブシャフトは、電動機ケースの外部に配置されており、ドライブシャフトに伝達してきたノイズは、空気中へ放射される。そして、その放射されたノイズが自動車用ラジオアンテナ、TVアンテナ等に混入して受信障害を引き起こすという不具合が起きる。
【0004】
上記ノイズが外部に放射されることを防止する技術としては、金属製の電動機ケース内に導電性ブラシを設け、そのブラシと電動機のロータとを接触させることによって、ロータとケースとを電気的に接続し、ロータに誘起されたノイズをケースに逃がすという技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−244180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように導電性ブラシを介してロータとケースとを電気的に接続する場合は、ブラシはロータとの摺動によって摩耗し、微粉末がケース内に堆積してしまう恐れがある。また、電動機ケース内にブラシを配置するためのスペースを確保する必要があるため、省スペース化の観点からすると好ましくない。さらに、導電性のブラシを設けることによってコストアップに繋がってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駆動源としての電動機と、前記電動機からの駆動力を車輪に伝達するための車軸と、前記車軸と相対的に回転可能に設けられた導電性の部材であるキャリアと、前記キャリアと車体とを繋ぎ前記キャリアを支持するアームと、を有するサスペンションと、を備える車両において、前記キャリアは、導体を介して前記車体と接続されることを特徴とする。かかる構成によれば、簡易な構成でノイズが外部に放射されることを抑制できる。
【0008】
本発明の車両であって、キャリアは、車輪に設けられたパーキングブレーキ装置に連結されるパーキングブレーキワイヤーと電気的に接続され、パーキングブレーキワイヤーは、車体と接続されることが好適である。また、パーキングブレーキワイヤーは、イコライザを介して、パーキングブレーキ操作部に接続される操作力伝達用ワイヤーと接続され、イコライザ又は操作力伝達用ワイヤーを車体と接続することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成でノイズが外部に放射されることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(構成)
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を図面に従って説明する。図1は、本実施形態に係る車両の駆動源である電動機10から車輪11,12に至るまでの動力伝達系の概略構成を示す断面図である。電動機10は、電動機ハウジング13内に設けられている。電動機10は、ステータ14と、回転軸15と、ロータ16と、を備えている。ステータ14は、電動機ハウジング13に固定されている。回転軸15の両端は軸受17によって支持されている。ロータ16は、ステータ14の内周面に対して僅かな隙間を隔てステータ14と同心位置となるように回転軸15に固定されている。
【0011】
インバータ18は、電源であるバッテリ19から電力の供給を受け、インバータ18内におけるスイッチング素子のオンオフ動作によって直流電力を交流電力に変換する。インバータ18によって変換された交流電力は、電線20を介してステータ14に供給され、それによって回転磁界が生成される。また、ロータ16の外周面には永久磁石が設けられており、永久磁石による磁界と回転磁界との相互作用によりロータ16が回転駆動される。
【0012】
回転軸15は、第1のギヤ21を備えている。電動機ハウジング13内にはその第1のギヤ21と噛み合う第2のギヤ22を備えたカウンタ軸23が設けられ、そのカウンタ軸23は、回転軸15と平行に配置されている。カウンタ軸23の両端は、軸受24によって支持されている。図1においては、一方の軸受24のみ図示している。
【0013】
カウンタ軸23は、第2のギヤ22とは別に第3のギヤ25を備えている。電動機ハウジング13内には、その第3のギヤ25と噛み合う減速ギヤ26を備えている第1の出力軸27が設けられている。第1の出力軸27は、ディファレンシャルギヤ28を介して第2の出力軸29と接続されている。第1の出力軸27及び第2の出力軸29は、軸受30によって支持されている。
【0014】
第1の出力軸27及び第2の出力軸29の一端は電動機ハウジング13の外部に突出し、等速ジョイント31を介してドライブシャフト32の一端と接続されている。ドライブシャフト32の他端は、等速ジョイント33を介して車輪軸34と接続されている。車輪軸34は車輪11,12と接続されている。また、車輪軸34はサスペンション35によって車体36に懸架されている。
【0015】
サスペンション35は、キャリア37と、アーム38と、を含む。キャリア37は、車輪軸34と相対的に回転可能に設けられた導電性の部材である。キャリア37は、インナ部材39と、アウタ部材40と、ボール41と、を含む。インナ部材39は、車輪軸34と嵌め合わされ、車輪軸34の回転に伴って回転する筒状の部材である。アウタ部材40は、図1に示すようにインナ部材39の外側に配置され、それ自体は回転しない円環状の部材である。ボール41は、インナ部材39とアウタ部材40との間に配置され、インナ部材39の外周面とアウタ部材40の内周面に接触しながら転動する部材である。インナ部材39、アウタ部材40、ボール41は、金属などの導電性材料でそれぞれ構成される。
【0016】
アーム38は、キャリア37と車体36とを繋ぎキャリア37を支持する部材である。アーム38の一端はキャリア37のアウタ部材40と接続され、アーム38の他端は、ゴムブッシュ42を介して車体36と接続される。また、サスペンション35は、路面からの衝撃を吸収するためのコイルばねを更に備えることもできる。かかるコイルばねの一端は、キャリア37のアウタ部材40に接続され、他端はゴムブッシュを介して車体36に接続される。なお、キャリア37は、車輪軸34を回転可能に支持する部材であればよく、例えば、図2に示すように、車輪軸34を回転可能に支持する導電性の軸受43と、その軸受の外径側に設けられた導電性の支持部材44と、を含むものであってもよい。そして、アーム38の一端が支持部材44と接続され、アームの他端がゴムブッシュを介して車体36と接続されているという態様であってもよい。
【0017】
上記の構成により、車輪軸34はサスペンション35によって車体36に懸架される。なお、本実施形態においては、サスペンション35によって車輪軸34が車体36に懸架されているが、これに限らず、電動機10からの駆動力を車輪11,12に伝達するための軸がサスペンション35によって車体36に懸架される態様であればよい。例えば、サスペンション35によってドライブシャフト32が車体36に懸架されるという態様であってもよい。
【0018】
電動機10の駆動力は、回転軸15から第1のギヤ21及び第2のギヤ22を介してカウンタ軸23へ伝達される。そして、カウンタ軸23に伝達された駆動力は、第3のギヤ25及び減速ギヤ26を介して第1の出力軸27に伝達されると共に、ディファレンシャルギヤ28を介して第2の出力軸29に伝達される。そして、第1及び第2の出力軸27,29に伝達された駆動力は、等速ジョイント31を介してドライブシャフト32に伝達される。ドライブシャフト32に伝達された駆動力は、等速ジョイント33を介して車輪軸34に伝達され、車輪11,12を駆動させる。
【0019】
図3は、本実施形態に係る車両の概略平面図である。説明の便宜上、図3においては、ギヤ類やアーム38等は省略して図示している。以下、図3を参照しながら説明する。本実施形態に係る車両は、後輪駆動型車両であり、車輪11,12は左右の後輪を示す。車輪11,12には、公知のパーキングブレーキ装置45,46が設けられている。パーキングブレーキ装置45,46には、鉄などの導電性材料からなるパーキングブレーキワイヤー47,48がそれぞれ接続されている。パーキングブレーキワイヤー47,48は、イコライザ49を介して操作力伝達用ワイヤー50に接続されている。操作力伝達用ワイヤー50は、車体36に設けられたパーキングブレーキ用フットペダル51に接続されている。イコライザ49及び操作力伝達用ワイヤー50は、例えば鉄などの導電性材料から構成されている。また、パーキングブレーキ用フットペダル51には、防錆のためにカチオン塗装が施されている。
【0020】
乗員がパーキングブレーキ用フットペダル51を踏み込むと、操作力伝達用ワイヤー50には図3に示す引張力F1が働く。その引張力F1は、イコライザ49によってパーキングブレーキワイヤー47,48に伝達され、パーキングブレーキワイヤー47,48には、それぞれ図3に示す引張力F2,F3が働く。パーキングブレーキワイヤー47,48がF2,F3の作用する方向に引っ張られると、それによってパーキングブレーキ装置45,46が動作し、車輪11,12がロックされる。なお、本実施形態においては、パーキングブレーキはフットペダル型のものとして説明したが、例えばハンドレバー型のものであってもよい。
【0021】
(作用・効果)
図3に示すように、本実施形態においては、キャリア37のアウタ部材40は、例えば導線52を介してパーキングブレーキワイヤー47,48と電気的に接続される。パーキングブレーキワイヤー47,48は、導線53を介して車体36の金属部分と接続される。すなわち、キャリア37は、導電性のパーキングブレーキワイヤー47,48を介して車体36と接続される。
【0022】
本実施形態の構成によれば、インバータ18内のスイッチング素子のオンオフ動作によって電動機10のロータ16に誘起されるノイズは、キャリア37のアウタ部材40からパーキングブレーキワイヤー47,48を通って車体36に逃がされる。これにより、ノイズが外部に放射されることを抑制できる。
【0023】
本実施形態の構成によれば、ノイズが自動車用ラジオアンテナ、TYアンテナ等に混入することを抑制できる。このとき、従来のように電動機ケース内に導電性ブラシを設ける必要は無いため、より簡易な構成とすることができる。また、導電性ブラシを設置するためのコストは不要になると共に、電動機ケース内の省スペース化を図ることもできる。さらに、ブラシの摩耗による微粉末がケース内に堆積したりすることも無い。
【0024】
なお、本実施形態においては、キャリア37は、パーキングブレーキワイヤー47,48を介して車体36と接続されているが、これに限らず、キャリア37は、導体を介して車体36と接続される態様であればよい。例えば、キャリア37のアウタ部材40と、車体36の金属部分と、を導線で直接繋ぐという態様であってもよい。
【0025】
また、例えば、イコライザ49又は操作力伝達用ワイヤー48と、車体36の金属部分と、を導線を介して接続してもよい。このようにしても、キャリア37は、導体を介して車体36と接続されるので、キャリア37に伝達されたノイズを車体36へ逃がすことができる。
【0026】
また、本実施形態においては、キャリア37のアウタ部材40と導線52との接続部やパーキングブレーキワイヤー47,48と導線50との接続部を、金などの導電性の高い材料を用いてメッキしてもよい。同様に、パーキングブレーキワイヤー47,48と導線53との接続部や導線53と車体36との接続部を、金などの導線性の高い材料でメッキしてもよい。これにより、メッキが施された部分の抵抗を低減できるので、ノイズがその部分を通り易くなる。そうすると、車体へ逃がすノイズの量を増大させることができるため、ノイズが外部に放射されることを一層抑制できる。
【0027】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、実施することができる。例えば、本実施形態に係る車両は、後輪駆動型車両であるとして説明してきたが、これに限らず、前輪駆動型車両であってもよいし、四輪駆動型車両であってもよい。また、本実施形態に係る車両は電気自動車である例を中心に説明したが、例えば、駆動源として電動機と内燃機関を有するハイブリッド車に本実施形態の構成を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る車両の動力伝達系の概略構成断面図である。
【図2】本実施形態に係るキャリアの他の実施例を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る車両の概略平面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 電動機、11,12 車輪、13 電動機ハウジング、14 ステータ、1
5 回転軸、16 ロータ、17 軸受、18 インバータ、19 バッテリ、2
0 電線、21 第1のギヤ、22 第2のギヤ、23 カウンタシャフト、24
軸受、25 第3のギヤ、26 減速ギヤ、27 第1の出力軸、28 ディファ
レンシャルギヤ、29 第2の出力軸、30 軸受、31 等速ジョイント、32
ドライブシャフト、33 等速ジョイント、34 車輪軸、35 サスペンション、
36 車体、37 キャリア、38 アーム、39 インナ部材、40 アウタ部
材、41 ボール、42 ゴムブッシュ、43 軸受、44 支持部材、45,4
6 パーキングブレーキ装置、47,48 パーキングブレーキワイヤー、49
イコライザ、50 操作力伝達用ワイヤー、51 パーキングブレーキ用フットペ
ダル、52,53 導線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としての電動機と、
前記電動機からの駆動力を車輪に伝達するための車軸と、
前記車軸と相対的に回転可能に設けられた導電性の部材であるキャリアと、前記キャリアと車体とを繋ぎ前記キャリアを支持するアームと、を有するサスペンションと、を備える車両において、
前記キャリアは、導体を介して前記車体と接続されることを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記キャリアは、前記車輪に設けられたパーキングブレーキ装置から延びる導電性のパーキングブレーキワイヤーと電気的に接続され、
前記パーキングブレーキワイヤーは、前記車体と接続されることを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項1に記載の車両であって、
前記キャリアは、前記車輪に設けられたパーキングブレーキ装置から延びる導電性のパーキングブレーキワイヤーと電気的に接続され、
前記パーキングブレーキワイヤーは、パーキングブレーキ操作部からの操作力を前記パーキングブレーキワイヤーに伝達するための操作力伝達部材を介して、前記パーキングブレーキ操作部に接続された導電性の操作力伝達用ワイヤーと接続され、
前記操作力伝達部材又は前記操作力伝達用ワイヤーは、前記車体と接続されることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−29326(P2009−29326A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197072(P2007−197072)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】