説明

車体前部構造

【課題】相手車両の側面に衝突した場合に相手車両のロッカにフロントバンパ部分が乗り上げるのを防止することができる車体前部構造を得る。
【解決手段】フロントサイドメンバ12の下方側には、第2メンバ38が下り勾配気味に傾斜して配設されている。第2メンバ38の後端部はサブフレーム40に固定されており、長手方向の中間部はラジエータサポート30の縦柱36及びラジエータサポートロア34に上下から挟まれた状態で結合されている。従って、車体前部10が相手車両に側面衝突すると、第2メンバ38は前端側が下方へ傾斜しかつ中間部が縦柱36によって上方から押さえ込まれるため、安定して軸圧縮変形しかつ前端部が下方へ折れる方向へのモーメントが作用する。よって、相手車両のロッカ54へ乗り上げることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバを含んで構成された車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンパティビリティ対応の車体前部構造の開発が進められている。
【0003】
ここで、下記特許文献1には、フロントバンパ下方に補助バンパを設ける技術が開示されている。
【0004】
簡単に説明すると、フロントバンパリインフォースは、その後方に配置されたフロントクロスメンバに左右一対のフロントバンパステーを介して結合されている。フロントバンパステーは前後に二分割された筒体の嵌合構造とされており、入力荷重の大きさに応じて段階的に軸圧縮変形してエネルギー吸収するようになっている。
【0005】
上記フロントバンパリインフォースの下方側には、小断面の補助バンパリインフォースがフロントバンパリインフォースに沿って略平行に配設されている。補助バンパリインフォースの両サイドには車両前後方向を長手方向とする筒状の補助バンパステーが設けられており、当該補助バンパステーの後端部がフロントクロスメンバに結合されている。
【0006】
上記構成によれば、歩行者と接触した際にはフロントバンパステーの低強度部分が変形すると共に補助バンパリインフォースが歩行者の脚部下側をすくい上げる方向へのモーメントを作用させる。車両との軽衝突時のような場合には、フロントバンパステー及び補助バンパステーの双方が軸方向に圧壊される。
【特許文献1】特開平11‐78732号公報(段落番号[0035]〜段落番号[0037]及び図11〜図15)
【特許文献2】特開2002‐120753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記先行技術による場合、相手車両の側面に衝突した際に、補助バンパリインフォースの先端部が相手車両のロッカへ乗り上げる可能性がある。というのも、昨今では、種々のタイプの自動車が市販されており、車種ごとにロッカの車両上下方向位置が異なるためである。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、相手車両の側面に衝突した場合に相手車両のロッカにフロントバンパ部分が乗り上げるのを防止することができる車体前部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明に係る車体前部構造は、車体前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバを含んで構成された車体前部構造であって、前記フロントサイドメンバの下方側に、当該フロントサイドメンバに沿って配置されると共に後端側が車体構造部材に支持された前後方向部材を設け、さらに、当該前後方向部材は、側面視で前端側の方が後端側よりも下がるように傾斜した状態で配置されており、かつ中間部が車両上下方向に沿って配置された上下方向部材に結合されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項1記載の発明において、前記上下方向部材の下端部は、前記前後方向部材の中間部を上方側から押さえ込むように配置されている、ことを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記上下方向部材は、略枠状に形成されたラジエータサポートの側部を構成する柱状部材である、ことを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項3記載の発明において、前記柱状部材の下端部と前記前後方向部材の上面とは、両者の間に所定の隙間を設けた状態で結合されている、ことを特徴としている。
【0013】
請求項1記載の本発明によれば、相手車両に側面衝突した場合、相互の車種によっては、フロントサイドメンバの下方側に配置された前後方向部材の前端部が、相手車両のロッカに当接することがある。この場合、相手車両のロッカと前後方向部材の前端部とが上下にずれることなく当接したのであれば、前後方向部材は車体構造部材に反力をとって軸圧縮変形し衝突時のエネルギーを吸収する。
【0014】
ここで、本発明では、前後方向部材を側面視で前端側の方が後端側よりも下がるように傾斜した状態で配置したので、仮に相手車両のロッカと前後方向部材の前端部とが上下方向に多少ずれたとしても、前後方向部材が相手車両のロッカへ乗り上がるのを抑制することができる。つまり、前後方向部材の前端部が下方にずれて相手車両のロッカに当接した場合には、前後方向部材には車両下方側への回転モーメントが作用するので、相手車両のロッカへ乗り上げるおそれはない。また、前後方向部材の前端部が上方にずれて相手車両のロッカに当接したとしても、前後方向部材は元々下向きに傾斜して配置されているため、ロッカ乗り上げに対する抵抗が強くなる。従って、前後方向部材が相手車両のロッカに乗り上がる可能性が低くなる。
【0015】
また、本発明では、前後方向部材の中間部を車両上下方向に沿って配置された上下方向部材に結合させたので、前後方向部材は後端側と中間部の少なくとも二箇所で車体側に結合及び支持されることになる。このため、前後方向部材に作用するロッカ乗り上げ方向への回転モーメントのモーメントアーム長を短くすることができる。従って、前後方向部材に作用するロッカ乗り上げ方向への回転モーメントを抑制することができる。換言すれば、前後方向部材の後端側と車体構造部材との結合点に過大なロッカ乗り上げ方向への回転モーメントが作用するのを回避することができる。さらに、前後方向部材の中間部が上下方向部材と結合されることによって、前後方向部材の前端部が相手車両のロッカに当接した際に、前後方向部材の前端部に先端下折れ方向の回転モーメント成分を発生させることができる。上記より、本発明によれば、前後方向部材が相手車両のロッカへ乗り上がるのをより一層抑制することができる。
【0016】
請求項2記載の本発明によれば、上下方向部材の下端部が前後方向部材の中間部を上方側から押さえ込むように配置されているため、前後方向部材が相手車両のロッカへ乗り上がる方向へ変形するのを抑えることができる。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、略枠状に形成されたラジエータサポートの側部を構成する柱状部材によって上下方向部材を構成したので、既存の部材を活用することができる。
【0018】
請求項4記載の本発明によれば、ラジエータサポートの柱状部材の下端部と前後方向部材の上面との間に所定の隙間を設けた状態で結合する構造としたので、側面衝突時の衝突荷重によって前後方向部材が軸圧縮変形等しても、隙間があることによって、ラジエータサポートの柱状部材が損傷を受けずに済むか、或いは損傷を受けたとしても極めて軽度の損傷程度で済む。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1記載の車体前部構造は、フロントサイドメンバの下方側に、当該フロントサイドメンバに沿って配置されると共に後端側が車体構造部材に支持された前後方向部材を設け、さらに、当該前後方向部材を側面視で前端側の方が後端側よりも下がるように傾斜した状態で配置し、かつ中間部を車両上下方向に沿って配置された上下方向部材に結合させたので、相手車両の側面に衝突した場合に相手車両のロッカにフロントバンパ部分が乗り上げるのを防止することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項1記載の発明において、上下方向部材の下端部が前後方向部材の中間部を上方側から押さえ込むように配置されているため、前後方向部材が相手車両のロッカへ乗り上がる方向へ変形するのを抑えることができ、その結果、相手車両のロッカへの乗り上げ防止効果に対する信頼性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項3記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項1又は請求項2記載の発明において、略枠状に形成されたラジエータサポートの側部を構成する柱状部材によって上下方向部材を構成したので、既存の部材を活用することができ、その結果、部品点数の増加を招かず、コスト削減に資することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項4記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項3記載の発明において、柱状部材の下端部と前後方向部材の上面とを、両者の間に所定の隙間を設けた状態で結合したので、前後方向部材を安定した状態で軸圧縮変形させることができると共に、前後方向部材が軸圧縮変形してもラジエータサポートを効果的に保護することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1及び図2を用いて、本発明に係る車体前部構造の一実施形態について説明する。
【0024】
図1には、本実施形態に係る車体前部構造の側面図が示されている。この図に示されるように、車体前部10の両サイドには、車両前後方向を長手方向として左右一対のフロントサイドメンバ12が配設されている。フロントサイドメンバ12は、車両前後方向に沿って直線状に延びる本体部12Aと、この本体部12Aの後端部から斜め下方へ屈曲するように設定されたキックアップ部12Bと、このキックアップ部12Bの下端部から図示しない車体フロアの下面側へ延出される後部12Cと、によって構成されている。なお、フロントサイドメンバ12は、アウタパネルとインナパネルとを結合させることにより略筒状(閉断面構造)に形成されている。
【0025】
キックアップ部12Bの後端部は、フロントサイドメンバアウタリインフォース14を介してダッシュクロスメンバ16及び図示しないフロントピラー(Aピラー)の双方に結合されている。このフロントサイドメンバアウタリインフォース14が存在することによって、衝突時にフロントサイドメンバ12がキックアップ部12Bで屈曲するのが抑制されると共に、衝突荷重がフロントサイドメンバアウタリインフォース14からフロントピラーの上下へ分散されるようになっている。
【0026】
また、上記左右一対のフロントサイドメンバ12の前端部には、所定値以上の衝突荷重が入力されることにより軸圧縮塑性変形する略筒体形状のクラッシュボックス18が取り付けられている。さらに、左右のクラッシュボックス18の前端部同士は、車両幅方向を長手方向として配置された長尺状のフロントバンパリインフォース20によって相互に連結されている。これにより、衝突時にフロントバンパ22に入力された荷重が、左右のクラッシュボックス18及びフロントサイドメンバ12に効率良く伝達されるようになっている。
【0027】
なお、フロントバンパリインフォース20はフロントバンパ22の一部を構成する強度部材であり、その前方側には図示しないアブソーバ及びフロントバンパカバー24が配設されている。
【0028】
また、フロントサイドメンバ12の上方側には、車体側部の上縁部を構成するエプロンアッパメンバ26が配設されている。エプロンアッパメンバ26は下向きに開放された略コ字状断面を成しており、車両前後方向を長手方向として配設されている。エプロンアッパメンバ26とフロントサイドメンバ12との間の側面部には、両者を上下方向に繋ぐフロントフェンダエプロン28が配設されている。
【0029】
また、車体前部10の前端部には、図示しないラジエータを車体に支持するラジエータサポート30が配設されている。ラジエータサポート30は正面視で略矩形枠状に構成されており、ラジエータサポートアッパ32、ラジエータサポートロア34、上下方向部材としての左右一対の縦柱36によって構成されている。
【0030】
ここで、上述した左右一対のフロントサイドメンバ12の下方側には、略車両前後方向を長手方向とする前後方向部材としての長尺状の第2メンバ38がそれぞれ配設されている。第2メンバ38は、軸方向に見て「田」の字状に形成されており、アルミニウム合金材料を押出し成形することにより製作されている。
【0031】
第2メンバ38の後端部は、車体下部に配置された車体構造部材としてのサブフレーム(フロントサスペンションメンバ)40の前端部にボルト42及びウエルドナットで締結(結合)されている。第2メンバ38の前端部同士は、フロントバンパリインフォース20に沿って略平行に配置された断面「日」の字状のバンパリインフォース44によって相互に連結されている。従って、上下二段にフロントバンパリインフォース20とバンパリインフォース44とが配置された構造になっている。
【0032】
上記第2メンバ38は、ラジエータサポート30の縦柱36の下端部と結合されている。具体的には、第2メンバ38の長手方向の中間部には、車両上下方向を軸方向としかつ軸長が第2メンバ38の高さより若干長いカラー46が貫通状態で配置(溶接により固定)されている。そして、組付けに際しては、カラー46の上端面をラジエータサポート30の縦柱36の底面に当接させると共に、カラー46の下端面をラジエータサポートロア34の上面に当接させる。なお、ラジエータサポート30の縦柱36の水平断面形状は平面視でL字状とされており、当該縦柱36の下端部の上面には図示しないウエルドナットが予め溶着されている。そして、ラジエータサポートロア34の下側からボルト48をカラー46内へ挿入してウエルドナットに螺合させることにより、第2メンバ38の長手方向中間部がラジエータサポート30の縦柱36の下端部とラジエータサポートロア34との間に上下に挟まれた状態で結合されている。
【0033】
組付後の状態では、ラジエータサポート30の縦柱36が第2メンバ38の長手方向の中間部を上方側から押さえ込むように配置されている。また、カラー46の軸方向の両端部が第2メンバ38の上下の締結面から若干突出しているので、第2メンバ38の上面とラジエータサポート30の縦柱36の下端部との間及び第2メンバ38の下面とラジエータサポートロア34との間にそれぞれ所定の(僅かな)隙間50、52が設定されている。これらの隙間50、52は、第2メンバ38が軸圧縮変形した際にラジエータサポート30との干渉を避ける役割を果たしている。
【0034】
上述した第2メンバ38は、側面視で前端側の方が後端側よりも下がるように傾斜した状態で(車両前方側へ向かうにつれて下り勾配となるように)配置されている。
【0035】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0036】
図2(A)に示される状態が衝突前の状態である。この状態では、相手車両のロッカ54が、第2メンバ38の前端部に配置されたバンパリインフォース44と対向(ほぼ正対)している。
【0037】
この状態から車体前部10が相手車両の側面に衝突すると、相手車両のロッカ54にバンパリインフォース44が当接し、バンパリインフォース44を介して第2メンバ38へ衝突荷重が入力される。これにより、第2メンバ38はサブフレーム40に反力をとって軸圧縮変形していき、これにより衝突時のエネルギーが吸収される。なお、フロントサイドメンバ12側においても、フロントバンパリインフォース20から衝突荷重が入力されると、クラッシュボックス18が軸圧縮変形して所定のエネルギー吸収を行う。
【0038】
ここで、本実施形態に係る車体前部構造では、第2メンバ38を側面視で前端側の方が後端側よりも下がるように傾斜した状態で配置したので、仮に相手車両のロッカ54と第2メンバ38の前端部とが上下方向に多少ずれたとしても、第2メンバ38が相手車両のロッカ54へ乗り上がるのを抑制することができる。つまり、第2メンバ38の前端部が下方にずれて相手車両のロッカ54に当接した場合には、第2メンバ38には車両下方側への回転モーメントが作用するので、相手車両のロッカ54へ乗り上げるおそれはない。また、第2メンバ38の前端部が上方にずれて相手車両のロッカ54に当接したとしても、第2メンバ38は元々下向きに傾斜して配置されているため、ロッカ乗り上げに対する抵抗が強くなる。従って、第2メンバ38が相手車両のロッカ54に乗り上がる可能性が低くなる。
【0039】
また、本実施形態に係る車体前部構造では、第2メンバ38の長手方向の中間部にラジエータサポート30の縦柱36の下端部を上方側から押さえ込むように結合させているので、第2メンバ38は後端側と中間部の少なくとも二箇所で車体側に結合及び支持されることになる。このため、第2メンバ38に作用するロッカ乗り上げ方向への回転モーメントのモーメントアーム長を短く(図2(A)のL1からL2に短縮)することができる。従って、第2メンバ38に作用するロッカ乗り上げ方向への回転モーメントを抑制することができる。換言すれば、第2メンバ38の後端側とサブフレーム40との結合点(P線矢視部)に、モーメントアーム長がL1のロッカ乗り上げ方向への過大な回転モーメントが作用するのを回避することができる。さらに、第2メンバ38の長手方向の中間部がラジエータサポート30の縦柱36の下端部と結合されることによって、第2メンバ38の前端部が相手車両のロッカ54に当接した際に、第2メンバ38の前端部に先端下折れ方向の回転モーメント成分(図2(B)の回転モーメントM)を発生させることができる。上記より、本実施形態によれば、第2メンバ38が相手車両のロッカ54へ乗り上がるのをより一層抑制することができる。
【0040】
以上より、本実施形態に係る車体前部構造によれば、相手車両の側面に衝突した場合に相手車両のロッカ54にフロントバンパ部分(バンパリインフォース44)が乗り上げるのを防止することができる。
【0041】
なお、図2(B)では第2メンバ38の先端部を車両下方側へ下折れした状態で描いているが、ロッカ54の中心にバンパリインフォース44が当接し、第2メンバ38の軸芯に衝突荷重が入力された場合には、第2メンバ38の先端部が下折れせずに軸圧縮変形のみするという態様も当然ある。
【0042】
また、本実施形態に係る車体前部構造では、ラジエータサポート30の縦柱36の下端部が第2メンバ38の長手方向の中間部を上方側から(図2(B)の矢印V方向へ)押さえ込むように配置されているため、第2メンバ38が相手車両のロッカ54へ乗り上がる方向へ変形するのを抑制することができる。その結果、本実施形態によれば、第2メンバ38の相手車両のロッカ54への乗り上げ防止効果に対する信頼性を向上させることができる。
【0043】
さらに、前記の如く、ラジエータサポート30の縦柱36とラジエータサポートロア34とによって第2メンバ38の長手方向の中間部を上下から挟み込むように結合することにより、第2メンバ38の軸圧縮変形を安定化させる効果も得られる。
【0044】
加えて、本実施形態に係る車体前部構造では、第2メンバ38とラジエータサポート30との締結面との間に所定の隙間50、52を設定したので、相手車両の側面に衝突した際の衝突荷重によって第2メンバ38が軸圧縮変形等しても、隙間50、52があることによって、ラジエータサポート30の縦柱36やラジエータサポートロア34が損傷を受けずに済むか、或いは損傷を受けたとしても極めて軽度の損傷程度で済む。その結果、本実施形態によれば、第2メンバ38を安定した状態で軸圧縮変形させることができると共に、第2メンバ38が軸圧縮変形してもラジエータサポート30を効果的に保護することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る車体前部構造では、略枠状に形成されたラジエータサポート30の縦柱36によって上下方向部材を構成したので、既存の部材を活用することができる。その結果、本実施形態によれば、部品点数の増加を招かず、コスト削減に資することができる。
【0046】
(実施形態の補足説明)
なお、上述した本実施形態では、上下方向部材としてラジエータサポート30の縦柱36を利用したが、これに限らず、ラジエータサポートとは無関係な専用部材を設定する構成を採ってもよい。
【0047】
また、上述した本実施形態では、第2メンバ38の長手方向の中間部をラジエータサポート30の縦柱36とラジエータサポートロア34とで上下から挟むように結合させたが、これに限らず、少なくとも上下方向部材の下端部が第2メンバ38の長手方向の中間部に上方側から結合される構成であればよい。
【0048】
さらに、上述した本実施形態では、第2メンバ38を円滑に軸圧縮変形させかつラジエータサポート30への悪影響を排除するという観点から、第2メンバ38の長手方向の中間部とラジエータサポート30側の上下締結面との間にそれぞれ隙間50、52を設定したが、請求項1乃至請求項3記載の本発明には、かかる隙間が設定されていない構成も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係る車体前部構造の全体構成を示す側面図である。
【図2】(A)は衝突前の状態を示す図1に対応する車体前部構造の側面図であり、(B)は衝突後の状態を示す車体前部構造の側面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 車体前部
12 フロントサイドメンバ
30 ラジエータサポート
36 縦柱(上下方向部材、柱状部材)
38 第2メンバ(前後方向部材)
40 サブフレーム(車体構造部材)
50 隙間
52 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバを含んで構成された車体前部構造であって、
前記フロントサイドメンバの下方側に、当該フロントサイドメンバに沿って配置されると共に後端側が車体構造部材に支持された前後方向部材を設け、
さらに、当該前後方向部材は、側面視で前端側の方が後端側よりも下がるように傾斜した状態で配置されており、かつ中間部が車両上下方向に沿って配置された上下方向部材に結合されている、
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記上下方向部材の下端部は、前記前後方向部材の中間部を上方側から押さえ込むように配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記上下方向部材は、略枠状に形成されたラジエータサポートの側部を構成する柱状部材である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記柱状部材の下端部と前記前後方向部材の上面とは、両者の間に所定の隙間を設けた状態で結合されている、
ことを特徴とする請求項3記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−76455(P2006−76455A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262920(P2004−262920)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】