車体前部構造
【課題】この発明は、パワープラントの後退エネルギーを車体の上部、下部に分散して伝達させることで、フロントサイドフレームの負担を軽減し、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を確実に実現させることができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】サスペンションタワー10の前方にて、パワープラントPTの側方部を懸架するエンジンマウント13を設けるとともに、サスペンションタワー10の前方にて、サスペンションタワー10の上部10aから下部に亘って延び、前面衝突時におけるパワープラントPTの後退エネルギーをエンジンマウント13を介してサスペンションタワー部の上部に伝達させるガセット部材17を設けた。
【解決手段】サスペンションタワー10の前方にて、パワープラントPTの側方部を懸架するエンジンマウント13を設けるとともに、サスペンションタワー10の前方にて、サスペンションタワー10の上部10aから下部に亘って延び、前面衝突時におけるパワープラントPTの後退エネルギーをエンジンマウント13を介してサスペンションタワー部の上部に伝達させるガセット部材17を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車体前部構造に関し、特に、フロントサイドフレームと、その車外側位置において車両前方側に突出するエプロンメンバと、サスペンション装置を取付けるサスペンションタワー部とを備える車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車体前部構造においては、車両の衝突安全性能を高めるため、車体前後方向に延びるフロントサイドフレームに作用する、前面衝突時の荷重を如何に車体後方側に分散して伝達していくかが検討されている。
【0003】
従来においては、フロントサイドフレームに作用する衝突荷重を、主として、フロントサイドフレームの後端に連なって車体下部に位置するボディフレームに伝達していたが、この衝突荷重が車体上部に伝達されないため、フロントサイドフレームがその基部のダッシュパネル付近で上方に折れ曲がり、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を十分に実現できないおそれがあった。
【0004】
そこで、例えば、下記特許文献1では、フロントサイドフレームに作用する衝突荷重を、車体上部に位置する車体前後方向に延びるエプロンメンバに分散伝達させるため、ホイールエプロンに沿って斜め上方側に延びてフロントサイドフレームとエプロンメンバとを連結する剛性部材を備えた車体前部構造が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−335619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前面衝突時、フロントサイドフレームには前述した衝突荷重のみならず、エンジン等のパワープラントの後退挙動に伴う後退エネルギーも作用する。前記特許文献1にて開示されている車体前部構造では、前記パワープラントの後退エネルギーがフロントサイドフレームに作用する点について考慮されておらず、それゆえ上記後退エネルギーがフロントサイドフレームにとって負担となり、依然としてフロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を十分に実現できないおそれがあった。
【0007】
この発明は、パワープラントの後退エネルギーを車体の上部、下部に分散して伝達させることで、フロントサイドフレームの負担を軽減し、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を確実に実現させることができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車体前部構造は、ダッシュパネルから車両前方側に突出するフロントサイドフレームと、その車外側位置において車両前方側に突出するエプロンメンバと、エンジンルーム側に膨出するように設けられ、前輪サスペンションダンパーを収容するサスペンションタワー部とを備え、上記エプロンメンバと上記サスペンションタワー部との結合により、上記フロントサイドフレームと上記エプロンメンバとを連結した車体前部構造において、上記サスペンションタワー部の前方にてパワープラントの側方部を懸架するエンジンマウントを設けるとともに、上記サスペンションタワー部の前面部にて、該サスペンションタワー部の上部から下部に亘って延び、前面衝突時における上記パワープラントの後退エネルギーを上記エンジンマウントを介してサスペンションタワー部の上部に伝達させるガセット部材を設けたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、前面衝突時におけるパワープラントの後退エネルギーを、ガセット部材によりサスペンションタワーの上部に伝達させることができるため、サスペンションタワーの上部、エプロンメンバを経由して上記後退エネルギーを車体上部に伝達させることができる。
【0010】
従って、ガセット部材を設けることにより、パワープラントの後退エネルギーを、車体の上部と下部とに分散して伝達させることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、前記ガセット部材が、前記サスペンションタワー部の前面部とにより閉断面を形成することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、サスペンション装置を取付けるために高剛性とされたサスペンションタワー部を利用して閉断面を構成することで、ガセット部材の剛性を向上させることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記ガセット部材が、側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜部を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、傾斜部により、前記パワートレインの後退エネルギーを、サスペンションタワーの上部を経由してエプロンメンバに伝達させることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記ガセット部材の下端部を、前記エンジンマウントに連結したことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、前記パワートレインの後退エネルギーをより確実にサスペンションタワーの上部に伝達させることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションタワー部の前方位置で前記エプロンメンバと前記フロントサイドフレームとを連結するエプロン部を設けるとともに、下端部、車外側部をそれぞれ上記フロントサイドフレーム、上記エプロン部に結合した箱形状のエンジンマウント取付部を設け、前記エンジンマウントを、上記エンジンマウント取付部の上面部に固定したことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、箱型状をなすエンジンマウント取付部の下端部にてパワープラントの後退エネルギーの負荷を分散させることができる。これにより、エンジンマウント取付部の破損を防止できるため、上記後退エネルギーを確実にフロントサイドフレームに伝達できる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションタワー部の車両後方側に車幅方向に延びるカウルボックスを形成し、前記サスペンションタワー部の上部と上記カウルボックスとを結合するメンバを設けたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、サスペンションタワー部の上部とカウルボックスとがメンバで連結されることで、サスペンションタワー部の上部に伝達される前記後退エネルギーが、カウルボックスにも直接伝達されることになる。
このため、サスペンションタワー部の上部に伝達された後退エネルギーが、カウルボックスにも分散して伝達されて、車体の衝突性能を確実に向上することができる。
よって、フレーム部材による車体上部への荷重分散を確実に行なうことができ、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収をより確実に実現できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、上記サスペンションタワー部の前面部にて、該サスペンションタワー部の上部から下部に亘って延びるガセット部材を設けることにより、前面衝突時におけるパワープラントの後退エネルギーを、エンジンマウントを介してガセット部材によりサスペンションタワーの上部に伝達させることができ、パワープラントの後退エネルギーを、車体の上部と下部とに分散して伝達させることができる。
【0022】
従って、前面衝突時におけるパワープラントの後退挙動による影響を車体上部に伝達することで、フロントサイドフレームの負担を軽減し、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を確実に実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1乃至図3は、それぞれ本実施形態に係る車体前部構造の要部を示す前方斜視図、平面図、側面図である。図1乃至図3において、車室1の前部は、フロントガラス(不図示)の下縁部に位置し、Aピラー(ウインドピラー)2を車幅方向に連結するカウルボックス3、車室1とエンジンルームERとを仕切る隔壁となるダッシュパネル4、Aピラー2から下方に延びるヒンジタワー5を主な要素としている。
【0024】
ダッシュパネル4は、カウルボックス3の下部に設けられ、その左右の側縁部が左右のヒンジタワー5にそれぞれ連結されている。ヒンジタワー5には、左右のフロントサイドドア(不図示)を開閉自在に支持するドアヒンジが設けられる。
【0025】
エンジンルームERの左右の側部には、左右のAピラー2とヒンジタワー5のそれぞれの連結部から車体前方に延びる左右のエプロンメンバ7、エプロンメンバ7の下部のエプロン部(ホイールハウス)8、車体前方に延びる左右のフロントサイドフレーム9が設けられる。左右のエプロンメンバ7は、フロントサイドフレーム9の車外側位置において車両前方側に突出し、上記連結部からの長さはエンジンルームERの前後方向の長さの1/3程度で、通常より短く形成されて軽量化が図られている。
【0026】
フロントサイドフレーム9はカウルボックス3下方のダッシュパネル4から前方に突出している。フロントサイドフレーム9には、エンジンルームER側に膨出するように設けられ、前輪サスペンションダンパーを収容するサスペンションタワー10(以下、サスタワー10と略記する。)の下部が連結されている。
【0027】
また、サスタワー10は、エプロンメンバ7と結合されており、これにより、フロントサイドフレーム9とエプロンメンバ7とが連結されている。また、エプロン部8により、サスタワー10の前方位置でエプロンメンバ7とフロントサイドフレーム9とが連結されており、エプロン部8は、サスタワー10前方とフロントサイドフレーム9との間を覆っている。
【0028】
車体の左右両側のそれぞれにおいて、サスタワー10の上部10aには、前輪を懸架するサスペンションストラット等のフロントサスペンションの上端部が取付けられる。また、サスペンションストラットの下端部はロアアームに支持される(いずれも不図示)。
【0029】
左右のフロントサイドフレーム9の前端部にはクラッシュカン11を介して車幅方向に延びるバンパレインフォースメント12が連結されている。クラッシュカン11には、側面部に複数の長穴部11a(図3参照)が形成されており、前面衝突時にクラッシュカン11が軸方向に潰れ易く構成して衝突荷重を吸収する。このバンパレインフォースメント12に対して不図示のバンパが取付けられる。クラッシュカン11は前面衝突時にバンパレインフォースメント12を通じて入力される衝突荷重を吸収する。
【0030】
ダッシュパネル4、左右のフロントサイドフレーム9等で囲まれる空間がエンジンルームERとなり、図2にて一点鎖線で仮想的に示すエンジンEG、トランスミッションTMを含むパワープラントPTが横置き(クランク軸やエキセントリック軸が車幅方向に延びるように配置)された状態でその側方部がエンジンマウント13に懸架され、フロントサイドフレーム9に支持される。
【0031】
図1等に示すエンジンマウント13は、略円筒形状のラバー部材(不図示)の外周を覆う外筒13aと、嵌合穴13c、ボルト穴13dが穿設された取付ブラケット13bと、外筒13aの中心から突出するボルト13eとから構成される。
【0032】
取付ブラケット13bは、外筒13aに対応する大きさの嵌合穴13cが中央に位置する板状の部材であり、この嵌合穴13cに外筒13aが嵌め込まれて一体化されている。
【0033】
エンジンマウント13は、下端部がフロントサイドフレーム9に溶接で結合された箱形状のエンジンマウント取付部15(以下、取付部15と略記する。)に固定されている。具体的には、エンジンマウント13側の取付ブラケット13bが取付部15の上面にボルト16で締結されている。
【0034】
取付部15は、例えば、1枚の金属製の板材を箱形に折り曲げて成形されたものであり、その下端部には、フロントサイドフレーム9と結合するための複数のフランジ15a、15a、15bが形成されている。
【0035】
取付部15の前端面、後端面のフランジ15a、15aはL字型に折り曲げて成形され、エンジンマウント13がサスタワー10のすぐ前方に配設されるように、フロントサイドフレーム9上面の、サスタワー10前方の位置で結合されている。他方、エンジンルームER側のフランジ15bは、取付部15の側面に連続するよう形成され、フロントサイドフレーム9の側面に結合されている。
【0036】
このように、取付部15の下端部が、フロントサイドフレーム9の上面、側面にそれぞれ結合されていることにより、取付部15は、ねじれ方向の荷重に対して高い剛性を有し、且つ、取付部15に作用する荷重をフロントサイドフレーム9の複数の面に分散して伝達させることができる。
【0037】
取付部15は、図1乃至図3に示すように、車外側端部が略水平方向に延在しており、その先端側、後端側にはフランジ15c、15c、車幅方向外側には上方へ延びるフランジ15dが形成されている。これらフランジ15c、15c、15dにより、取付部15は、車外側のエプロン部8、サスタワー10の前面部にも結合されている。
【0038】
ここで、取付部15が箱形状をなし、ある程度の高さを有する部材であるため、エンジンマウント13を、図3に示すようにフロントサイドフレーム9から高さHだけ上方に位置させることができる。これにより、エンジンEGを含むパワープラントPTの支持位置を高く設定でき、パワープラントPTの振動抑制を図ることができる。
【0039】
パワープラントPTの支持位置を高くすることにより、エンジンEGの振動の車体への伝達が抑制されることが知られている。従って、箱形状の取付部15により、パワープラントPTのNVH(Noise Vibration Harshness)性能を高めることができる。
【0040】
ところで、取付部15(エンジンマウント13)の後方のサスタワー10の前面部には、サスタワー10の上部から下部に亘って延びるガセット部材17が設けられている。ガセット部材17は、図3に示すような側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜部17aと、取付部15に結合される前方延出部17bとを有している。
【0041】
また、サスタワー10の後方には、車両前後方向に直線状に延びるメンバ18が設けられ、サスタワー10の上部10aと車両後方のカウルボックス3のフロントパネル3a側端部とが連結されている。
【0042】
次に、図4に示す分解斜視図、図5に示す断面図に基づき、取付部15及びガセット部材17の取付構造について説明する。
取付部15は、上面側に開口15eが形成されており、該開口15eにエンジンマウント13の外筒13aが嵌め込まれ、エンジンマウント13の下部が取付部15、エプロン部8、フロントサイドフレーム9に囲まれた空間内に収納される。そして、エンジンマウント13側の取付ブラケット13bに穿設されたボルト穴13d、13dと、取付部15の上面部のボルト穴15f、15fとにボルト16が挿通され、エンジンマウント13が所定位置に固定される。
【0043】
開口15eは、外筒13aの形状に対応して円形とされている。これにより、外筒13aのうち、取付部15に収納された部位が略密閉されるため、エンジンルームER(図1等参照)の熱気を遮断でき、外筒13a内部のラバー部材をこの熱気から保護することができる。
【0044】
ところで、車両前面衝突時には、フロントサイドフレーム9に衝突荷重が作用する他、パワープラントPT(図2参照)においては、これの後退挙動による後退エネルギーが発生することになる。このパワープラントPTにおいて発生する後退エネルギーは、エンジンマウント13を介してフロントサイドフレーム9に伝達される。
【0045】
本実施形態のように、エンジンマウント13が、箱形状に形成された取付部15に固定され、その下端部がフロントサイドフレーム9にフランジ15a、15bによって複数箇所で結合されていることにより、フランジ15a、15a、15bといった複数箇所に負荷を分散させることができる。これにより、エンジンマウント取付部15の破損を防止できるため、上記後退エネルギーを確実にフロントサイドフレーム9に伝達できる。
【0046】
従来のエンジンマウント取付部の取付構造には、取付部の下端に長尺の脚部を複数本備え、これをフロントサイドフレームに締結するものが知られているが、本実施形態の箱形状の取付部15は、このような脚部を備えたものに対しても有利な構造である。
【0047】
また、取付部15は、車外側端部が略水平方向に延在してエプロン部8にも結合されているため、前面衝突時の後退エネルギーの他、通常走行時におけるエンジンEGの振動荷重についても、これをフロントサイドフレーム9のみならずエプロン部8に分散して伝達できるため、エンジンマウント取付部15によるエンジンマウント13の支持剛性を向上させることができる。
【0048】
また、取付部15が、エプロン部8にも結合されていることにより、図5(a)(図1のA−A線矢視断面図)に示すように、エプロン部8とフロントサイドフレーム9とにより閉断面19が形成されている。この閉断面19によりエンジンマウント13の支持剛性をより向上させることができる。
【0049】
また、取付部15は、図4に示す後端側のフランジ15cにより、サスタワー10の前面部に結合されているため、前面衝突時においてパワープラントPTの後退エネルギーを、車体下部のフロントサイドフレーム9のみならず、サスタワー10にも分散して伝達させることができる。従って、後退エネルギー伝達によるフロントサイドフレーム9の負担が軽減されるため、フロントサイドフレーム9の軸圧縮によるエネルギー吸収を確実に実現できる。
【0050】
ところで、取付部15の後端面は、溶接によりガセット部材17の下端部と結合される。ガセット部材17の下端部は、取付部15側に延びる前方延出部17bとなっており、前方延出部17bの先端には、取付部15の後端面と対向するフランジ17cが形成され、これが上記後端面と結合される。
【0051】
ガセット部材17は、断面ハット状とされ、その両端には上下方向に延びるフランジ17dが形成されている。また、ガセット部材17の上端部には、サスタワー10の上部10aと略同一の平面をなすフランジ17eが形成されている。ガセット部材17は、これら各フランジ17d、17eにて、溶接でサスタワー10の前面部と結合され、サスタワー10の前面部にて、図5(b)(図1のB−B線矢視断面図)に示すような、サスタワー10の上部から下部に連続した閉断面20を形成している。
【0052】
このように、ガセット部材17が、取付部15と、サスタワー10とに結合されることにより、エンジンマウント13とガセット部材17の下端部とが連結され、サスタワー10の上部10aと、取付部15ひいてはエンジンマウント13とが連結される。
【0053】
これにより、前面衝突時において、パワープラントPTの後退エネルギーを、サスタワー10の上部、エプロンメンバ7を経由して車体上部に伝達させることができる。つまり、ガセット部材17により、上記後退エネルギーを、車体下部のフロントサイドフレーム9のみならず、車体上部にも分散して伝達させることができる。
【0054】
従って、前面衝突時のパワープラントPTの後退挙動による影響を車体上部に伝達することで、フロントサイドフレーム9の負担を軽減し、フロントサイドフレーム9の軸圧縮によるエネルギー吸収を確実に実現させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、取付部15の後端部を、フランジ17cにてガセット部材17の前面部に結合することにより、エンジンマウント13がガセット部材17に連結されている。これにより、前記後退エネルギーをより確実にサスタワー10の上部に伝達させることができ、前記後退エネルギーによるフロントサイドフレーム9の負担をより確実に軽減できる。
【0056】
但し、パワープラントPTの後退エネルギーをサスタワー10の上部に伝達させる際には、取付部15とガセット部材17とが結合されることは必ずしも要求されない。例えば、取付部15の後端部がガセット部材17の車両前方の先端に単に当接しているものであってもよい。また、前面衝突時に、上記後退エネルギーによって取付部15が後退する可能性を見込んで、取付部15の後端部とガセット部材17の車両前方先端部との間に、前面衝突時に取付部15を確実にガセット部材17に当接させることができる程度の微小な間隙を形成してもよい。
【0057】
ガセット部材17は、前述したように、断面ハット状に形成されていることにより、サスタワー10の前面部に結合された状態では、図5(b)に示すように、サスタワー10の前面部とともに閉断面20を形成している。このように、サスペンション装置を取付けるために高剛性とされたサスタワー10を利用して閉断面20を構成することで、ガセット部材17の剛性をより向上させることができる。
【0058】
また、断面ハット状に形成されたガセット部材17は、図4に示すように、前方延出部17bの下部が開放され、閉断面が形成されていない部位が存在する。そこで、前方延出部17bの両側にさらにフランジ17fを形成して、開放部分を底板部材21で覆い、連続的な閉断面を形成している。この場合、板状部材21の車両前側にはフランジ21aを形成し、取付部15の後端面と溶接で結合される。
【0059】
但し、本発明においては、ガセット部材17により必ずしも閉断面20を形成することは要求されない。例えば、両端をそれぞれエンジンマウント取付部15(エンジンマウント13)、サスタワー10の上部10aに結合し、これらを単に橋渡すブリッジ状のフレーム部材によりガセット部材17を構成することもできる。この場合、ガセット部材により閉断面は形成されないが、このフレーム部材によっても前記後退エネルギーをサスタワー10の上部10aに伝達することができる。
【0060】
ガセット部材17は、前述したように、側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜部17aを有しているが、これは、例えば、ガセット部材17を、図6において二点鎖線で示すようなL字形状とし、略鉛直方向に延びるものにした場合には、前記後退エネルギーをサスタワー10の上部10aに伝達できないからである。換言すれば、本実施形態のようにガセット部材17が傾斜部17aを有することで、初めて前面衝突時の後退エネルギーは実線の矢印Xに示すように上方へ誘導され、サスタワー10の上部を経由してエプロンメンバ7に伝達される。
【0061】
パワープラントPTからガセット部材17を介してサスタワー10の上部に伝達された前記後退エネルギーは、図7、図8にも示すメンバ18によって、カウルボックス3にも直接伝達される。
【0062】
図7は、本実施形態のサスタワー10上部の接続構造を示す断面図である。サスタワー10は、上端部が閉じた中空円筒状の本体部10bの内部には、フロントサスペンションを構成するコイルスプリングSPを保持する受部31が形成され、略中央部には、ゴムブッシュ32等を介して不図示のダンパー軸が配設される貫通孔33が形成されている。この本体部10bの上端部に、外縁部が起立した円盤状の補強部材10cがボルト34等で固定されることにより、サスタワー上部10aが構成される。本体部10bと補助部材10cとに挟まれた空間36は平面視で略リング状の閉断面を構成し、剛性を高めている。補助部材10cの外面には、一部を平面状に削除した部分が形成されており、この削除部分にメンバ18の前端部がボルト35等で固定される。
【0063】
カウルボックス3は、図8に示すように、板材を折り曲げて構成された前側のフロントパネル3aと後側のリヤパネル3bとを重ね合わせ、重なり合う側縁部を溶接等で結合した剛性の高い閉断面構造を有している。また、ダッシュパネル4は、上部のアッパパネル4aと下部のロアパネル4bとで構成され、アッパパネル4aとロアパネル4bとがボルト等で連結される。そして、アッパパネル4aの上縁部がカウルボックス3の下縁部にボルト等で連結される。さらに、カウルボックス3のフロントパネル3aにメンバ18の後端部が連結される。
【0064】
このように、サスタワー10とカウルボックス3とが、車両前後方向に延びるメンバ18で連結されているため、サスタワー10の上部10aに伝達された前記後退エネルギーが、カウルボックス3にも分散して伝達されて、車体の衝突性能を確実に向上することができる。
【0065】
よって、フレーム部材による車体上部への荷重分散を確実に行なうことができ、フロントサイドフレーム9の軸圧縮によるエネルギー吸収をより確実に実現できる。
【0066】
ところで、前述した実施形態においては、取付部15と、ガセット部材17とを設け、これらを介してパワープラントPTの後退エネルギーをサスタワー10の上部10aにも分散して伝達することとしているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、本発明においては、エンジンマウント取付部15、ガセット部材17に代わり、これらの機能を併せ持つ、図9に示すような単一の部材(ガセット部材117)を設けることもできる。
【0067】
図9は、別の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図、図10は、別の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図であり、図11(a)、11(b)は、それぞれ図9におけるC−C線矢視断面図、D−D線矢視断面図である。なお、この別の実施形態において、前述した最初の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0068】
ガセット部材117は、図10に示すように、側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜面117aと、略三角形状の側面とを有する箱形状をなしている。また、ガセット部材117は、その下端部がエプロン部8及びフロントサイドフレーム9の上面に、後端部がサスタワー10の前面部にそれぞれ結合されている。
【0069】
ガセット部材117の下端部の車幅方向両側及び前側には、複数のフランジ117b、117b、117cが形成され、エプロン部8の下部及びフロントサイドフレーム9の上面と溶接で結合されている。
【0070】
ガセット部材117の後端部にも、複数のフランジ117b、117bが車幅方向両側に形成され、ガセット部材117後方のサスタワー10の前端部と溶接で結合されている。
【0071】
また、ガセット部材117の傾斜面117a上端部にもフランジ117dが形成されており、これがサスタワー10の上部10aに溶接で結合されている。
【0072】
また、ガセット部材117は、車幅方向に所定の幅を有しており、傾斜面117a上には、エンジンマウント113が固定されている。具体的には、エンジンマウント113側の取付ブラケット113bがガセット部材117の傾斜面117aにボルト116で締結されている。
【0073】
図9、図10に示すように、エンジンマウント113は、略円筒形状のラバー部材(不図示)と、該ラバー部材の外周を覆う外筒113aと、嵌合穴113c、ボルト穴113dが穿設された取付ブラケット113bと、外筒113aの中心から突出するボルト113eとから構成される。取付ブラケット113bは、外筒113aの径方向に対して傾斜するように外筒113aが嵌め込まれ一体化されている。
【0074】
ガセット部材117の傾斜面117a上には、開口117eが形成されており、該開口117eにエンジンマウント113の外筒113aが嵌め込まれ、下部がガセット部材117、エプロン部8、フロントサイドフレーム9、サスタワー10前面部に囲まれた空間内に収納される。そして、エンジンマウント113側の取付ブラケット113bに穿設されたボルト穴113d、113dと、ガセット部材117の傾斜面117aのナット117f、117fの穴部にボルト116が挿通され、エンジンマウント113が所定位置に固定される。
【0075】
従って、ガセット部材117は、最初の実施形態のガセット部材17と同様に、パワープラントPT(図2参照)の後退エネルギーを、サスタワー10の上部、エプロンメンバ7を経由して車体上部に伝達させることができる。
【0076】
また、傾斜面117aにより、前面衝突時、図9において実線の矢印Yに示すように、前記後退エネルギーを上方へ誘導し、サスタワー10の上部を経由してエプロンメンバ7に伝達させることができる。
【0077】
また、傾斜面117aは、図11(a)に示すように、サスタワー10前面部と、エプロン部8とで閉断面120を形成しているため、ガセット部材117の剛性を向上させることができる。
【0078】
また、ガセット部材117は、その下端部において複数形成されたフランジ117b、117b、117cにより、フロントサイドフレーム9に結合されており、エンジンマウント113を所定位置に固定するエンジンマウント取付部としての役割も兼ねている。従って、ガセット部材117により部品点数の増加を抑制しつつも、車幅方向両側、前側の複数のフランジ117b、117b、117cに負荷を分散させながら、フロントサイドフレーム9に前記後退エネルギーを確実に伝達させることができる。
【0079】
また、傾斜面117aがフロントサイドフレーム9からサスタワー10の上部10aまで上方に延びて形成されているため、エンジンマウント113の位置をより上方に設定することができ、パワープラントPTのNVH性能を高めることができる。
【0080】
また、図11(b)にも示すように、ガセット部材117の下端部が、フロントサイドフレーム9のみならず、エプロン部8にも結合されていることにより、前面衝突時の後退エネルギーの他、通常走行時におけるエンジンEG(図2参照)の振動荷重についても、これをフロントサイドフレーム9のみならずエプロン部8に分散して伝達できる。
【0081】
また、開口117eは、最初の実施形態と同様に、外筒113aの形状に対応して円形とされている。これにより、ガセット部材117に収納された部位が略密閉されるため、エンジンルームER(図1等参照)の熱気から、外筒113a内部のラバー部材を保護することができる。
【0082】
なお、その他の作用効果については、最初の実施形態と同様である。
【0083】
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る車体前部構造の平面図。
【図3】本発明の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す側面図。
【図4】本発明の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図。
【図5】図1における(a)A−A線矢視断面図、(b)B−B線矢視断面図。
【図6】前面衝突時の後退エネルギーの伝達方向を説明するための側面図。
【図7】本発明の実施形態のサスペンションタワー上部の接続構造を示す断面図。
【図8】本発明の実施形態のカウルボックス及びダッシュパネルの構造を示す断面図。
【図9】本発明の別の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図。
【図10】本発明の別の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図。
【図11】図9における(a)C−C線矢視断面図、(b)D−D線矢視断面図。
【符号の説明】
【0085】
3…カウルボックス
7…エプロンメンバ
8…エプロン部
13、113…エンジンマウント
10…サスペンションタワー
15…エンジンマウント取付部
17、117…ガセット部材
18…メンバ
19、20、120…閉断面
PT…パワープラント
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車体前部構造に関し、特に、フロントサイドフレームと、その車外側位置において車両前方側に突出するエプロンメンバと、サスペンション装置を取付けるサスペンションタワー部とを備える車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車体前部構造においては、車両の衝突安全性能を高めるため、車体前後方向に延びるフロントサイドフレームに作用する、前面衝突時の荷重を如何に車体後方側に分散して伝達していくかが検討されている。
【0003】
従来においては、フロントサイドフレームに作用する衝突荷重を、主として、フロントサイドフレームの後端に連なって車体下部に位置するボディフレームに伝達していたが、この衝突荷重が車体上部に伝達されないため、フロントサイドフレームがその基部のダッシュパネル付近で上方に折れ曲がり、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を十分に実現できないおそれがあった。
【0004】
そこで、例えば、下記特許文献1では、フロントサイドフレームに作用する衝突荷重を、車体上部に位置する車体前後方向に延びるエプロンメンバに分散伝達させるため、ホイールエプロンに沿って斜め上方側に延びてフロントサイドフレームとエプロンメンバとを連結する剛性部材を備えた車体前部構造が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−335619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前面衝突時、フロントサイドフレームには前述した衝突荷重のみならず、エンジン等のパワープラントの後退挙動に伴う後退エネルギーも作用する。前記特許文献1にて開示されている車体前部構造では、前記パワープラントの後退エネルギーがフロントサイドフレームに作用する点について考慮されておらず、それゆえ上記後退エネルギーがフロントサイドフレームにとって負担となり、依然としてフロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を十分に実現できないおそれがあった。
【0007】
この発明は、パワープラントの後退エネルギーを車体の上部、下部に分散して伝達させることで、フロントサイドフレームの負担を軽減し、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を確実に実現させることができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車体前部構造は、ダッシュパネルから車両前方側に突出するフロントサイドフレームと、その車外側位置において車両前方側に突出するエプロンメンバと、エンジンルーム側に膨出するように設けられ、前輪サスペンションダンパーを収容するサスペンションタワー部とを備え、上記エプロンメンバと上記サスペンションタワー部との結合により、上記フロントサイドフレームと上記エプロンメンバとを連結した車体前部構造において、上記サスペンションタワー部の前方にてパワープラントの側方部を懸架するエンジンマウントを設けるとともに、上記サスペンションタワー部の前面部にて、該サスペンションタワー部の上部から下部に亘って延び、前面衝突時における上記パワープラントの後退エネルギーを上記エンジンマウントを介してサスペンションタワー部の上部に伝達させるガセット部材を設けたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、前面衝突時におけるパワープラントの後退エネルギーを、ガセット部材によりサスペンションタワーの上部に伝達させることができるため、サスペンションタワーの上部、エプロンメンバを経由して上記後退エネルギーを車体上部に伝達させることができる。
【0010】
従って、ガセット部材を設けることにより、パワープラントの後退エネルギーを、車体の上部と下部とに分散して伝達させることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、前記ガセット部材が、前記サスペンションタワー部の前面部とにより閉断面を形成することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、サスペンション装置を取付けるために高剛性とされたサスペンションタワー部を利用して閉断面を構成することで、ガセット部材の剛性を向上させることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記ガセット部材が、側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜部を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、傾斜部により、前記パワートレインの後退エネルギーを、サスペンションタワーの上部を経由してエプロンメンバに伝達させることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記ガセット部材の下端部を、前記エンジンマウントに連結したことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、前記パワートレインの後退エネルギーをより確実にサスペンションタワーの上部に伝達させることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションタワー部の前方位置で前記エプロンメンバと前記フロントサイドフレームとを連結するエプロン部を設けるとともに、下端部、車外側部をそれぞれ上記フロントサイドフレーム、上記エプロン部に結合した箱形状のエンジンマウント取付部を設け、前記エンジンマウントを、上記エンジンマウント取付部の上面部に固定したことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、箱型状をなすエンジンマウント取付部の下端部にてパワープラントの後退エネルギーの負荷を分散させることができる。これにより、エンジンマウント取付部の破損を防止できるため、上記後退エネルギーを確実にフロントサイドフレームに伝達できる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションタワー部の車両後方側に車幅方向に延びるカウルボックスを形成し、前記サスペンションタワー部の上部と上記カウルボックスとを結合するメンバを設けたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、サスペンションタワー部の上部とカウルボックスとがメンバで連結されることで、サスペンションタワー部の上部に伝達される前記後退エネルギーが、カウルボックスにも直接伝達されることになる。
このため、サスペンションタワー部の上部に伝達された後退エネルギーが、カウルボックスにも分散して伝達されて、車体の衝突性能を確実に向上することができる。
よって、フレーム部材による車体上部への荷重分散を確実に行なうことができ、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収をより確実に実現できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、上記サスペンションタワー部の前面部にて、該サスペンションタワー部の上部から下部に亘って延びるガセット部材を設けることにより、前面衝突時におけるパワープラントの後退エネルギーを、エンジンマウントを介してガセット部材によりサスペンションタワーの上部に伝達させることができ、パワープラントの後退エネルギーを、車体の上部と下部とに分散して伝達させることができる。
【0022】
従って、前面衝突時におけるパワープラントの後退挙動による影響を車体上部に伝達することで、フロントサイドフレームの負担を軽減し、フロントサイドフレームの軸圧縮によるエネルギー吸収を確実に実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1乃至図3は、それぞれ本実施形態に係る車体前部構造の要部を示す前方斜視図、平面図、側面図である。図1乃至図3において、車室1の前部は、フロントガラス(不図示)の下縁部に位置し、Aピラー(ウインドピラー)2を車幅方向に連結するカウルボックス3、車室1とエンジンルームERとを仕切る隔壁となるダッシュパネル4、Aピラー2から下方に延びるヒンジタワー5を主な要素としている。
【0024】
ダッシュパネル4は、カウルボックス3の下部に設けられ、その左右の側縁部が左右のヒンジタワー5にそれぞれ連結されている。ヒンジタワー5には、左右のフロントサイドドア(不図示)を開閉自在に支持するドアヒンジが設けられる。
【0025】
エンジンルームERの左右の側部には、左右のAピラー2とヒンジタワー5のそれぞれの連結部から車体前方に延びる左右のエプロンメンバ7、エプロンメンバ7の下部のエプロン部(ホイールハウス)8、車体前方に延びる左右のフロントサイドフレーム9が設けられる。左右のエプロンメンバ7は、フロントサイドフレーム9の車外側位置において車両前方側に突出し、上記連結部からの長さはエンジンルームERの前後方向の長さの1/3程度で、通常より短く形成されて軽量化が図られている。
【0026】
フロントサイドフレーム9はカウルボックス3下方のダッシュパネル4から前方に突出している。フロントサイドフレーム9には、エンジンルームER側に膨出するように設けられ、前輪サスペンションダンパーを収容するサスペンションタワー10(以下、サスタワー10と略記する。)の下部が連結されている。
【0027】
また、サスタワー10は、エプロンメンバ7と結合されており、これにより、フロントサイドフレーム9とエプロンメンバ7とが連結されている。また、エプロン部8により、サスタワー10の前方位置でエプロンメンバ7とフロントサイドフレーム9とが連結されており、エプロン部8は、サスタワー10前方とフロントサイドフレーム9との間を覆っている。
【0028】
車体の左右両側のそれぞれにおいて、サスタワー10の上部10aには、前輪を懸架するサスペンションストラット等のフロントサスペンションの上端部が取付けられる。また、サスペンションストラットの下端部はロアアームに支持される(いずれも不図示)。
【0029】
左右のフロントサイドフレーム9の前端部にはクラッシュカン11を介して車幅方向に延びるバンパレインフォースメント12が連結されている。クラッシュカン11には、側面部に複数の長穴部11a(図3参照)が形成されており、前面衝突時にクラッシュカン11が軸方向に潰れ易く構成して衝突荷重を吸収する。このバンパレインフォースメント12に対して不図示のバンパが取付けられる。クラッシュカン11は前面衝突時にバンパレインフォースメント12を通じて入力される衝突荷重を吸収する。
【0030】
ダッシュパネル4、左右のフロントサイドフレーム9等で囲まれる空間がエンジンルームERとなり、図2にて一点鎖線で仮想的に示すエンジンEG、トランスミッションTMを含むパワープラントPTが横置き(クランク軸やエキセントリック軸が車幅方向に延びるように配置)された状態でその側方部がエンジンマウント13に懸架され、フロントサイドフレーム9に支持される。
【0031】
図1等に示すエンジンマウント13は、略円筒形状のラバー部材(不図示)の外周を覆う外筒13aと、嵌合穴13c、ボルト穴13dが穿設された取付ブラケット13bと、外筒13aの中心から突出するボルト13eとから構成される。
【0032】
取付ブラケット13bは、外筒13aに対応する大きさの嵌合穴13cが中央に位置する板状の部材であり、この嵌合穴13cに外筒13aが嵌め込まれて一体化されている。
【0033】
エンジンマウント13は、下端部がフロントサイドフレーム9に溶接で結合された箱形状のエンジンマウント取付部15(以下、取付部15と略記する。)に固定されている。具体的には、エンジンマウント13側の取付ブラケット13bが取付部15の上面にボルト16で締結されている。
【0034】
取付部15は、例えば、1枚の金属製の板材を箱形に折り曲げて成形されたものであり、その下端部には、フロントサイドフレーム9と結合するための複数のフランジ15a、15a、15bが形成されている。
【0035】
取付部15の前端面、後端面のフランジ15a、15aはL字型に折り曲げて成形され、エンジンマウント13がサスタワー10のすぐ前方に配設されるように、フロントサイドフレーム9上面の、サスタワー10前方の位置で結合されている。他方、エンジンルームER側のフランジ15bは、取付部15の側面に連続するよう形成され、フロントサイドフレーム9の側面に結合されている。
【0036】
このように、取付部15の下端部が、フロントサイドフレーム9の上面、側面にそれぞれ結合されていることにより、取付部15は、ねじれ方向の荷重に対して高い剛性を有し、且つ、取付部15に作用する荷重をフロントサイドフレーム9の複数の面に分散して伝達させることができる。
【0037】
取付部15は、図1乃至図3に示すように、車外側端部が略水平方向に延在しており、その先端側、後端側にはフランジ15c、15c、車幅方向外側には上方へ延びるフランジ15dが形成されている。これらフランジ15c、15c、15dにより、取付部15は、車外側のエプロン部8、サスタワー10の前面部にも結合されている。
【0038】
ここで、取付部15が箱形状をなし、ある程度の高さを有する部材であるため、エンジンマウント13を、図3に示すようにフロントサイドフレーム9から高さHだけ上方に位置させることができる。これにより、エンジンEGを含むパワープラントPTの支持位置を高く設定でき、パワープラントPTの振動抑制を図ることができる。
【0039】
パワープラントPTの支持位置を高くすることにより、エンジンEGの振動の車体への伝達が抑制されることが知られている。従って、箱形状の取付部15により、パワープラントPTのNVH(Noise Vibration Harshness)性能を高めることができる。
【0040】
ところで、取付部15(エンジンマウント13)の後方のサスタワー10の前面部には、サスタワー10の上部から下部に亘って延びるガセット部材17が設けられている。ガセット部材17は、図3に示すような側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜部17aと、取付部15に結合される前方延出部17bとを有している。
【0041】
また、サスタワー10の後方には、車両前後方向に直線状に延びるメンバ18が設けられ、サスタワー10の上部10aと車両後方のカウルボックス3のフロントパネル3a側端部とが連結されている。
【0042】
次に、図4に示す分解斜視図、図5に示す断面図に基づき、取付部15及びガセット部材17の取付構造について説明する。
取付部15は、上面側に開口15eが形成されており、該開口15eにエンジンマウント13の外筒13aが嵌め込まれ、エンジンマウント13の下部が取付部15、エプロン部8、フロントサイドフレーム9に囲まれた空間内に収納される。そして、エンジンマウント13側の取付ブラケット13bに穿設されたボルト穴13d、13dと、取付部15の上面部のボルト穴15f、15fとにボルト16が挿通され、エンジンマウント13が所定位置に固定される。
【0043】
開口15eは、外筒13aの形状に対応して円形とされている。これにより、外筒13aのうち、取付部15に収納された部位が略密閉されるため、エンジンルームER(図1等参照)の熱気を遮断でき、外筒13a内部のラバー部材をこの熱気から保護することができる。
【0044】
ところで、車両前面衝突時には、フロントサイドフレーム9に衝突荷重が作用する他、パワープラントPT(図2参照)においては、これの後退挙動による後退エネルギーが発生することになる。このパワープラントPTにおいて発生する後退エネルギーは、エンジンマウント13を介してフロントサイドフレーム9に伝達される。
【0045】
本実施形態のように、エンジンマウント13が、箱形状に形成された取付部15に固定され、その下端部がフロントサイドフレーム9にフランジ15a、15bによって複数箇所で結合されていることにより、フランジ15a、15a、15bといった複数箇所に負荷を分散させることができる。これにより、エンジンマウント取付部15の破損を防止できるため、上記後退エネルギーを確実にフロントサイドフレーム9に伝達できる。
【0046】
従来のエンジンマウント取付部の取付構造には、取付部の下端に長尺の脚部を複数本備え、これをフロントサイドフレームに締結するものが知られているが、本実施形態の箱形状の取付部15は、このような脚部を備えたものに対しても有利な構造である。
【0047】
また、取付部15は、車外側端部が略水平方向に延在してエプロン部8にも結合されているため、前面衝突時の後退エネルギーの他、通常走行時におけるエンジンEGの振動荷重についても、これをフロントサイドフレーム9のみならずエプロン部8に分散して伝達できるため、エンジンマウント取付部15によるエンジンマウント13の支持剛性を向上させることができる。
【0048】
また、取付部15が、エプロン部8にも結合されていることにより、図5(a)(図1のA−A線矢視断面図)に示すように、エプロン部8とフロントサイドフレーム9とにより閉断面19が形成されている。この閉断面19によりエンジンマウント13の支持剛性をより向上させることができる。
【0049】
また、取付部15は、図4に示す後端側のフランジ15cにより、サスタワー10の前面部に結合されているため、前面衝突時においてパワープラントPTの後退エネルギーを、車体下部のフロントサイドフレーム9のみならず、サスタワー10にも分散して伝達させることができる。従って、後退エネルギー伝達によるフロントサイドフレーム9の負担が軽減されるため、フロントサイドフレーム9の軸圧縮によるエネルギー吸収を確実に実現できる。
【0050】
ところで、取付部15の後端面は、溶接によりガセット部材17の下端部と結合される。ガセット部材17の下端部は、取付部15側に延びる前方延出部17bとなっており、前方延出部17bの先端には、取付部15の後端面と対向するフランジ17cが形成され、これが上記後端面と結合される。
【0051】
ガセット部材17は、断面ハット状とされ、その両端には上下方向に延びるフランジ17dが形成されている。また、ガセット部材17の上端部には、サスタワー10の上部10aと略同一の平面をなすフランジ17eが形成されている。ガセット部材17は、これら各フランジ17d、17eにて、溶接でサスタワー10の前面部と結合され、サスタワー10の前面部にて、図5(b)(図1のB−B線矢視断面図)に示すような、サスタワー10の上部から下部に連続した閉断面20を形成している。
【0052】
このように、ガセット部材17が、取付部15と、サスタワー10とに結合されることにより、エンジンマウント13とガセット部材17の下端部とが連結され、サスタワー10の上部10aと、取付部15ひいてはエンジンマウント13とが連結される。
【0053】
これにより、前面衝突時において、パワープラントPTの後退エネルギーを、サスタワー10の上部、エプロンメンバ7を経由して車体上部に伝達させることができる。つまり、ガセット部材17により、上記後退エネルギーを、車体下部のフロントサイドフレーム9のみならず、車体上部にも分散して伝達させることができる。
【0054】
従って、前面衝突時のパワープラントPTの後退挙動による影響を車体上部に伝達することで、フロントサイドフレーム9の負担を軽減し、フロントサイドフレーム9の軸圧縮によるエネルギー吸収を確実に実現させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、取付部15の後端部を、フランジ17cにてガセット部材17の前面部に結合することにより、エンジンマウント13がガセット部材17に連結されている。これにより、前記後退エネルギーをより確実にサスタワー10の上部に伝達させることができ、前記後退エネルギーによるフロントサイドフレーム9の負担をより確実に軽減できる。
【0056】
但し、パワープラントPTの後退エネルギーをサスタワー10の上部に伝達させる際には、取付部15とガセット部材17とが結合されることは必ずしも要求されない。例えば、取付部15の後端部がガセット部材17の車両前方の先端に単に当接しているものであってもよい。また、前面衝突時に、上記後退エネルギーによって取付部15が後退する可能性を見込んで、取付部15の後端部とガセット部材17の車両前方先端部との間に、前面衝突時に取付部15を確実にガセット部材17に当接させることができる程度の微小な間隙を形成してもよい。
【0057】
ガセット部材17は、前述したように、断面ハット状に形成されていることにより、サスタワー10の前面部に結合された状態では、図5(b)に示すように、サスタワー10の前面部とともに閉断面20を形成している。このように、サスペンション装置を取付けるために高剛性とされたサスタワー10を利用して閉断面20を構成することで、ガセット部材17の剛性をより向上させることができる。
【0058】
また、断面ハット状に形成されたガセット部材17は、図4に示すように、前方延出部17bの下部が開放され、閉断面が形成されていない部位が存在する。そこで、前方延出部17bの両側にさらにフランジ17fを形成して、開放部分を底板部材21で覆い、連続的な閉断面を形成している。この場合、板状部材21の車両前側にはフランジ21aを形成し、取付部15の後端面と溶接で結合される。
【0059】
但し、本発明においては、ガセット部材17により必ずしも閉断面20を形成することは要求されない。例えば、両端をそれぞれエンジンマウント取付部15(エンジンマウント13)、サスタワー10の上部10aに結合し、これらを単に橋渡すブリッジ状のフレーム部材によりガセット部材17を構成することもできる。この場合、ガセット部材により閉断面は形成されないが、このフレーム部材によっても前記後退エネルギーをサスタワー10の上部10aに伝達することができる。
【0060】
ガセット部材17は、前述したように、側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜部17aを有しているが、これは、例えば、ガセット部材17を、図6において二点鎖線で示すようなL字形状とし、略鉛直方向に延びるものにした場合には、前記後退エネルギーをサスタワー10の上部10aに伝達できないからである。換言すれば、本実施形態のようにガセット部材17が傾斜部17aを有することで、初めて前面衝突時の後退エネルギーは実線の矢印Xに示すように上方へ誘導され、サスタワー10の上部を経由してエプロンメンバ7に伝達される。
【0061】
パワープラントPTからガセット部材17を介してサスタワー10の上部に伝達された前記後退エネルギーは、図7、図8にも示すメンバ18によって、カウルボックス3にも直接伝達される。
【0062】
図7は、本実施形態のサスタワー10上部の接続構造を示す断面図である。サスタワー10は、上端部が閉じた中空円筒状の本体部10bの内部には、フロントサスペンションを構成するコイルスプリングSPを保持する受部31が形成され、略中央部には、ゴムブッシュ32等を介して不図示のダンパー軸が配設される貫通孔33が形成されている。この本体部10bの上端部に、外縁部が起立した円盤状の補強部材10cがボルト34等で固定されることにより、サスタワー上部10aが構成される。本体部10bと補助部材10cとに挟まれた空間36は平面視で略リング状の閉断面を構成し、剛性を高めている。補助部材10cの外面には、一部を平面状に削除した部分が形成されており、この削除部分にメンバ18の前端部がボルト35等で固定される。
【0063】
カウルボックス3は、図8に示すように、板材を折り曲げて構成された前側のフロントパネル3aと後側のリヤパネル3bとを重ね合わせ、重なり合う側縁部を溶接等で結合した剛性の高い閉断面構造を有している。また、ダッシュパネル4は、上部のアッパパネル4aと下部のロアパネル4bとで構成され、アッパパネル4aとロアパネル4bとがボルト等で連結される。そして、アッパパネル4aの上縁部がカウルボックス3の下縁部にボルト等で連結される。さらに、カウルボックス3のフロントパネル3aにメンバ18の後端部が連結される。
【0064】
このように、サスタワー10とカウルボックス3とが、車両前後方向に延びるメンバ18で連結されているため、サスタワー10の上部10aに伝達された前記後退エネルギーが、カウルボックス3にも分散して伝達されて、車体の衝突性能を確実に向上することができる。
【0065】
よって、フレーム部材による車体上部への荷重分散を確実に行なうことができ、フロントサイドフレーム9の軸圧縮によるエネルギー吸収をより確実に実現できる。
【0066】
ところで、前述した実施形態においては、取付部15と、ガセット部材17とを設け、これらを介してパワープラントPTの後退エネルギーをサスタワー10の上部10aにも分散して伝達することとしているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、本発明においては、エンジンマウント取付部15、ガセット部材17に代わり、これらの機能を併せ持つ、図9に示すような単一の部材(ガセット部材117)を設けることもできる。
【0067】
図9は、別の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図、図10は、別の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図であり、図11(a)、11(b)は、それぞれ図9におけるC−C線矢視断面図、D−D線矢視断面図である。なお、この別の実施形態において、前述した最初の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0068】
ガセット部材117は、図10に示すように、側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜面117aと、略三角形状の側面とを有する箱形状をなしている。また、ガセット部材117は、その下端部がエプロン部8及びフロントサイドフレーム9の上面に、後端部がサスタワー10の前面部にそれぞれ結合されている。
【0069】
ガセット部材117の下端部の車幅方向両側及び前側には、複数のフランジ117b、117b、117cが形成され、エプロン部8の下部及びフロントサイドフレーム9の上面と溶接で結合されている。
【0070】
ガセット部材117の後端部にも、複数のフランジ117b、117bが車幅方向両側に形成され、ガセット部材117後方のサスタワー10の前端部と溶接で結合されている。
【0071】
また、ガセット部材117の傾斜面117a上端部にもフランジ117dが形成されており、これがサスタワー10の上部10aに溶接で結合されている。
【0072】
また、ガセット部材117は、車幅方向に所定の幅を有しており、傾斜面117a上には、エンジンマウント113が固定されている。具体的には、エンジンマウント113側の取付ブラケット113bがガセット部材117の傾斜面117aにボルト116で締結されている。
【0073】
図9、図10に示すように、エンジンマウント113は、略円筒形状のラバー部材(不図示)と、該ラバー部材の外周を覆う外筒113aと、嵌合穴113c、ボルト穴113dが穿設された取付ブラケット113bと、外筒113aの中心から突出するボルト113eとから構成される。取付ブラケット113bは、外筒113aの径方向に対して傾斜するように外筒113aが嵌め込まれ一体化されている。
【0074】
ガセット部材117の傾斜面117a上には、開口117eが形成されており、該開口117eにエンジンマウント113の外筒113aが嵌め込まれ、下部がガセット部材117、エプロン部8、フロントサイドフレーム9、サスタワー10前面部に囲まれた空間内に収納される。そして、エンジンマウント113側の取付ブラケット113bに穿設されたボルト穴113d、113dと、ガセット部材117の傾斜面117aのナット117f、117fの穴部にボルト116が挿通され、エンジンマウント113が所定位置に固定される。
【0075】
従って、ガセット部材117は、最初の実施形態のガセット部材17と同様に、パワープラントPT(図2参照)の後退エネルギーを、サスタワー10の上部、エプロンメンバ7を経由して車体上部に伝達させることができる。
【0076】
また、傾斜面117aにより、前面衝突時、図9において実線の矢印Yに示すように、前記後退エネルギーを上方へ誘導し、サスタワー10の上部を経由してエプロンメンバ7に伝達させることができる。
【0077】
また、傾斜面117aは、図11(a)に示すように、サスタワー10前面部と、エプロン部8とで閉断面120を形成しているため、ガセット部材117の剛性を向上させることができる。
【0078】
また、ガセット部材117は、その下端部において複数形成されたフランジ117b、117b、117cにより、フロントサイドフレーム9に結合されており、エンジンマウント113を所定位置に固定するエンジンマウント取付部としての役割も兼ねている。従って、ガセット部材117により部品点数の増加を抑制しつつも、車幅方向両側、前側の複数のフランジ117b、117b、117cに負荷を分散させながら、フロントサイドフレーム9に前記後退エネルギーを確実に伝達させることができる。
【0079】
また、傾斜面117aがフロントサイドフレーム9からサスタワー10の上部10aまで上方に延びて形成されているため、エンジンマウント113の位置をより上方に設定することができ、パワープラントPTのNVH性能を高めることができる。
【0080】
また、図11(b)にも示すように、ガセット部材117の下端部が、フロントサイドフレーム9のみならず、エプロン部8にも結合されていることにより、前面衝突時の後退エネルギーの他、通常走行時におけるエンジンEG(図2参照)の振動荷重についても、これをフロントサイドフレーム9のみならずエプロン部8に分散して伝達できる。
【0081】
また、開口117eは、最初の実施形態と同様に、外筒113aの形状に対応して円形とされている。これにより、ガセット部材117に収納された部位が略密閉されるため、エンジンルームER(図1等参照)の熱気から、外筒113a内部のラバー部材を保護することができる。
【0082】
なお、その他の作用効果については、最初の実施形態と同様である。
【0083】
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る車体前部構造の平面図。
【図3】本発明の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す側面図。
【図4】本発明の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図。
【図5】図1における(a)A−A線矢視断面図、(b)B−B線矢視断面図。
【図6】前面衝突時の後退エネルギーの伝達方向を説明するための側面図。
【図7】本発明の実施形態のサスペンションタワー上部の接続構造を示す断面図。
【図8】本発明の実施形態のカウルボックス及びダッシュパネルの構造を示す断面図。
【図9】本発明の別の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図。
【図10】本発明の別の実施形態に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図。
【図11】図9における(a)C−C線矢視断面図、(b)D−D線矢視断面図。
【符号の説明】
【0085】
3…カウルボックス
7…エプロンメンバ
8…エプロン部
13、113…エンジンマウント
10…サスペンションタワー
15…エンジンマウント取付部
17、117…ガセット部材
18…メンバ
19、20、120…閉断面
PT…パワープラント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルから車両前方側に突出するフロントサイドフレームと、その車外側位置において車両前方側に突出するエプロンメンバと、
エンジンルーム側に膨出するように設けられ、前輪サスペンションダンパーを収容するサスペンションタワー部とを備え、
上記エプロンメンバと上記サスペンションタワー部との結合により、上記フロントサイドフレームと上記エプロンメンバとを連結した車体前部構造において、
上記サスペンションタワー部の前方にてパワープラントの側方部を懸架するエンジンマウントを設けるとともに、
上記サスペンションタワー部の前面部にて、該サスペンションタワー部の上部から下部に亘って延び、前面衝突時における上記パワープラントの後退エネルギーを上記エンジンマウントを介してサスペンションタワー部の上部に伝達させるガセット部材を設けた
車体前部構造。
【請求項2】
前記ガセット部材は、前記サスペンションタワー部の前面部とにより閉断面を形成する
請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記ガセット部材は、側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜部を有する
請求項1または2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記ガセット部材の下端部を、前記エンジンマウントに連結した
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記サスペンションタワー部の前方位置で前記エプロンメンバと前記フロントサイドフレームとを連結するエプロン部を設けるとともに、
下端部、車外側部をそれぞれ上記フロントサイドフレーム、上記エプロン部に結合した箱形状のエンジンマウント取付部を設け、
前記エンジンマウントを、上記エンジンマウント取付部の上面部に固定した
請求項4記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記サスペンションタワー部の車両後方側に車幅方向に延びるカウルボックスを形成し、
前記サスペンションタワー部の上部と上記カウルボックスとを結合するメンバを設けた
請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の車体前部構造。
【請求項1】
ダッシュパネルから車両前方側に突出するフロントサイドフレームと、その車外側位置において車両前方側に突出するエプロンメンバと、
エンジンルーム側に膨出するように設けられ、前輪サスペンションダンパーを収容するサスペンションタワー部とを備え、
上記エプロンメンバと上記サスペンションタワー部との結合により、上記フロントサイドフレームと上記エプロンメンバとを連結した車体前部構造において、
上記サスペンションタワー部の前方にてパワープラントの側方部を懸架するエンジンマウントを設けるとともに、
上記サスペンションタワー部の前面部にて、該サスペンションタワー部の上部から下部に亘って延び、前面衝突時における上記パワープラントの後退エネルギーを上記エンジンマウントを介してサスペンションタワー部の上部に伝達させるガセット部材を設けた
車体前部構造。
【請求項2】
前記ガセット部材は、前記サスペンションタワー部の前面部とにより閉断面を形成する
請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記ガセット部材は、側面視で斜め後方へ略直線状に傾斜する傾斜部を有する
請求項1または2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記ガセット部材の下端部を、前記エンジンマウントに連結した
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記サスペンションタワー部の前方位置で前記エプロンメンバと前記フロントサイドフレームとを連結するエプロン部を設けるとともに、
下端部、車外側部をそれぞれ上記フロントサイドフレーム、上記エプロン部に結合した箱形状のエンジンマウント取付部を設け、
前記エンジンマウントを、上記エンジンマウント取付部の上面部に固定した
請求項4記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記サスペンションタワー部の車両後方側に車幅方向に延びるカウルボックスを形成し、
前記サスペンションタワー部の上部と上記カウルボックスとを結合するメンバを設けた
請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−245863(P2007−245863A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70646(P2006−70646)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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