説明

車体構造体、仕切用板体およびリアパッケージトレイ

【課題】吸音構造体が、音波を振動に変換して、音波エネルギーを機械エネルギーとして消費して吸音を行う。例えば、吸音構造体が吸音する周波数を低い値に設定した場合には、例えばロードノイズのような低周波数の音を効率良く吸音することができる。
【解決手段】車室105と荷室107とに分けるトランク仕切隔壁120を、シャーシ110のトランク仕切隔壁120と、リアパッケージトレイ130とから構成する。トランク仕切隔壁120には、凹部122を形成し、この凹部122に板吸音体10を設ける。この板吸音体10は、車室105内にこもる音が音圧透過部136を通して振動板13に伝達され、この振動板13を振動させる。この振動により、車室105内の音波エネルギーが機械エネルギーとして消費されて吸音を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ロードノイズ等の比較的低い周波数のロードノイズを吸音することが可能な車体構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車体構造体において、車室に浸入する音を吸収する技術として、特許文献1のような、車室と荷室とを区切る板材に、吸音材を埋め込んだトランク用仕切板がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−25945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているトランク用仕切板の吸音材は、フェルトや連続気泡を有する発泡体等の音圧透過性のある素材によって形成されており、特許文献1の図2に示す周波数特性図のように、1000Hz以上の比較的高周波の領域においては減衰する結果が得られているものの、ロードノイズ等の比較的低い周波数領域における音に対しては減衰することができなかった。
【0005】
また、インナパネルとアウタパネルの間に挿入されるグラスウール、フェルト等の多孔質材は、音波の粒子速度が最大となる位置に、その速度が最大となる方向と垂直に配設されたときに、吸音効率が最大となる。このため、室境界(壁面)から、対象周波数のλ/4程度の空間を背後に有する必要があり、低音域を吸音するためには、大きな空気層(例えば、315Hzの場合には27cm)が必要となり、現実的には車室内に設置することは不可能となる。言い換えれば、背後空気層が少ない多孔質吸音構造では、低周波数を吸音することはできず、低周波波の音響エネルギーを消散させることはできなかった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低周波領域における音を効率良く吸音する吸音構造体を有する車体構造体、仕切用板体およびリアパッケージトレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する車体構造体は、車両を車室と車室外の空間とに仕切る板体と、前記板体に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備することを特徴としている。
【0008】
上記構成において、前記吸音構造体の音圧駆動によって駆動される部位は、前記車室における音圧が高い部分に配置されることが望ましい。セダン型車両の場合、音圧が高い部分は、リアウインドウやCピラーとの境界をなすリアパッケージトレイの周辺部や、前記板体の中央部となることが多い。
【0009】
上記構成において、前記吸音構造体は、振動板と、該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体であることが望ましい。
【0010】
上記構成において、前記吸音構造体は、一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体であることが望ましい。
前記空洞は、複数形成されることが好ましい。
前記空洞は、長さの異なる複数形成されることが好ましい。
【0011】
上記構成において、前記吸音構造体は、閉空間と、この閉空間と前記車室の空間とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体であることが望ましい。
【0012】
上記構成において、前記吸音構造体は、振動板と、該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体、一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体、閉空間と、この閉空間と外部とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体、いずれかの吸音体の組み合わせによって構成されることが望ましい。
【0013】
上記構成において、当該車体構造体の基台となるシャーシは、前記吸音構造体の一部を構成することが望ましい。
上記構成において、前記吸音構造体は、当該車体構造体の基台となるシャーシに取り付けられることが望ましい。
【0014】
上記構成において、前記板体は、当該車体構造体の基台となるシャーシの一部をなす隔壁と、該隔壁を車室から覆うリアパッケージトレイとを有し、前記吸音構造体は、前記隔壁と前記リアパッケージトレイとの間に配置されることが望ましい。
上記構成において、前記板体は、当該車体構造体の基台となるシャーシの一部をなす隔壁と、該隔壁を車室側から覆い、芯材とこの芯材の表面を覆う表面材とを有するリアパッケージトレイと、を備え、前記芯材が前記吸音構造体の一部を構成することが望ましい。
上記構成において、前記板体は、当該車体構造体の基台となるシャーシの一部をなす隔壁と、該隔壁を車室側から覆い、芯材とこの芯材の表面を覆う表面材とを有するリアパッケージトレイと、を備え、前記吸音構造体は前記芯材に取り付けられることが望ましい。
【0015】
前記リアパッケージトレイは、音圧透過部を有することが好ましい。
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する仕切用板体は、車体を車室と車室外の空間とに仕切る板体であって、当該板体の基台となす芯材と、前記芯材に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備することを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決するために、本発明が採用するリアパッケージトレイは、当該リアパッケージトレイの基台となす芯材と、前記芯材に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸音構造体が、音波を振動に変換して、音波エネルギーを機械エネルギーとして消費して吸音を行う。例えば、吸音構造体が吸音する周波数を低い値に設定した場合には、例えばロードノイズのような低周波数の音を効率良く吸音することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、吸音構造体を備えた車体構造体について説明する。
<第1実施形態>
本発明者達は、車室内にこもる音に着目して、車室内における種々の場所における音圧を測定した。その結果、車室と荷室とを区切る板体としてのトランク仕切板の部分で、音圧が比較的大きくなっていることを検知した。そこで、トランク仕切板に吸音構造体を設けることに着目した。
【0020】
一般に、車室の境界面においては、音波の粒子速度が大きな値をとらないのに対し、音圧は高いところと低いところが生じる(所謂、音圧分布)。そこで、上記構成のように、音圧駆動による吸音機構を有する吸音構造体は、吸音される音響エネルギーが、吸音効率とそこに入射する音響エネルギーの積で決まるため、高音圧の部位に前記音圧駆動の吸音構造を優先的に配置することで、効率的に車室内の音響エネルギーを消散することが可能となる。また、音圧駆動に基づく吸音構造体では、λ/4の背後空気層を構成することなく実現できるため、壁面近傍での吸音を可能とし、低周波数領域における音に対しても大きな背後空気層を必要としないという利点がある。
【0021】
(1−1)構成
(1−1−1)車両
図1は、本発明の第1実施形態に係る4ドアセダン形の車両100を示す斜視図である。この車両100は車体構造体の基台となるシャーシ110に対してボンネット101、4枚のドア102、トランクドア103が開閉可能に取り付けられる。
図2は、シャーシ110を模式的に示す図である。シャーシ110はベース111と、このベース111から上側に延びるフロントピラー112、センターピラー113、リアピラー114と、ピラー112,113,114によって支えられる天井115と、車両100内を車室105とエンジン室106とに分けるエンジン仕切隔壁116と、車室105と荷室107とに分けるトランク仕切隔壁120とを有する。
このトランク仕切隔壁120は、図2に示すように、リアシートの背もたれに部分に対向する部分も含むため、断面が略「L」字状に折曲した形状となっている。
なお、以下の説明においては、特に特定しない場合には、トランク仕切隔壁120は、車室105と荷室107とを分ける部分とする。
【0022】
(1−1−2)トランク仕切板
本実施形態の特徴は、シャーシ110のトランク仕切隔壁120に箱形の板吸音体10を設けたことにある。なお、図3および図4には、板吸音体10は1個しか図示していないが、実際には、図1に示すように、形状の異なった板吸音体10をトランク仕切隔壁120に設けるようにしている。また、板吸音体10の形状は、トランク仕切隔壁120のうち車室105と荷室107とを分ける部分と類似或いは同一の形状としてもよい。
図3は、図2中のa部を拡大した断面図である。トランク仕切隔壁120には、リアパッケージトレイ130が取り付けられて、トランク仕切板140を構成する。
このリアパッケージトレイ130は、例えば木質繊維板によって形成された基台となす芯材131と、音圧透過性を有する布材によって形成され、芯材131の表面を覆う表面材135とを有する。芯材131のうち板吸音体10が対向する部分には矩形状の貫通孔132が形成される。これにより、表面材135のうち、この貫通孔132の部分が車室105側の音圧を板吸音体10に伝達する音圧透過部136となる。なお、貫通孔132は、矩形状に限らず円形でもよく、要は、車室105側の空気を板吸音体10に伝達できればよい。
【0023】
次に、トランク仕切隔壁120に対するリアパッケージトレイ130および板吸音体10の取り付け構造について、図4を参照しつつ説明する。図4は、トランク仕切隔壁120に対して板吸音体10およびリアパッケージトレイ130を組み立てる前の状態を示した図である。
【0024】
トランク仕切隔壁120は、平板部121と、この平板部121から荷室107側に凸設させることにより、車室105側に開口して形成される矩形状の凹部122とを有し、平板部121には貫通する複数個のリアパッケージトレイ取付孔123が穿設される。また、前記凹部122の底部には、複数個のピン穴124が形成され、このピン穴124の開口部には穴径を縮径した抜止部125が形成される。
【0025】
一方、リアパッケージトレイ130には、トランク仕切隔壁120のトレイ取付孔123に挿通される取付突起133が凸設される。この取付突起133の先端は、暫時縮径するテーパー面を有する傘状に形成された係止部133Aとなり、この係止部133Aには先端に向けて開く切込部133Bが形成される。
【0026】
これにより、トレイ取付孔123に取付突起133を挿入する際、係止部133Aは、テーパー面がトレイ取付孔123の周面に押されて切込部133Bを縮めた状態で挿入される。さらに、係止部133Aがトレイ取付孔123を通過して荷室107に抜けた際に切込部133Bが開いて、係止部133Aの端面は、トレイ取付孔123の周囲に係止されることで、リアパッケージトレイ130がトランク仕切隔壁120に対して抜け止めを図った状態で固定される。
【0027】
(1−1−3)板吸音体
次に、板吸音体10の構造について説明する。
板吸音体10は、開口部12を有する矩形状の筐体11と、開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する。筐体11は合成樹脂材料(例えば、ABS樹脂)によって形成され、振動板13は高分子化合物(例えば、無機充填材入りオレフィン系共重合体)によってシート状に形成される。本発明においては、振動板13は、弾性を有する素材を膜状に形成してもよい。
また、板吸音体10の底部にはピン穴124に挿入される樽状のピン15が突出形成される。このピン15をピン穴124に無理嵌めすることにより、ピン15の縮径部分が抜止部125に係止されることにより、板吸音体10は凹部122に対して抜け止めが図られる。
【0028】
板吸音体10は、後述する条件に設定することで、音圧透過部136を通して振動板13に伝わる車室105側の音圧と空気層14側の音圧との差(即ち、振動板13の前後の音圧差)によって振動板13が駆動される。これにより、当該板吸音体10に到達する音波のエネルギーは、この振動板13の振動により消費されて音が吸音されることになる。即ち、板吸音体10は、音圧駆動により励振された振動により吸音効果を発揮する。
【0029】
(1−1−4)板吸音体の設定条件
ここで、板吸音体10の設定条件について説明する。
一般に、板状または膜状の振動体と空気層により音を吸収する吸音構造について、減衰させる周波数は、振動体の質量成分(マス成分)と空気層のバネ成分とによるバネマス系の共振周波数によって設定される。空気の密度をρ[kg/m3]、音速をc[m/s]、振動体の密度をρ[kg/m3]、振動体の厚さをt[m]、空気層の厚さをL[m]とすると、バネマス系の共振周波数は数1の式で表される。
【0030】
【数1】

【0031】
また、板・膜振動型吸音構造において振動体が弾性を有して弾性振動をする場合には、弾性振動による屈曲系の性質が加わる。建築音響の分野においては、振動体の形状が長方形で一辺の長さをa[m]、もう一辺の長さをb[m]、振動体のヤング率をE[Pa]、振動体のポアソン比をσ[−]、p,qを正の整数とすると、以下の数2の式で板・膜振動型吸音構造の共振周波数を求め、求めた共振周波数を音響設計に利用することも行われている(周辺が固定支持の場合)。
【0032】
【数2】

そして、本実施形態においては、上記数式から160〜315Hzバンド(1/3オクターブ中心周波数)を吸音するよう、以下のようにパラメータが設定される。

空気の密度ρ ;1.225[kg/m3]
音速c ;340[m/s]
振動体の密度ρ ;1440[kg/m3]
振動体の厚さt ;0.00085[m]
空気層の厚さをL ;0.03[m]
筐体の長さa ;0.3[m]
筐体の長さb ;0.3[m]
振動体のヤング率E ;0.4[GPa]
ポアソン比をσ ;0.4
モード次数 ;p=q=1
【0033】
一方、上記数2において、バネマス系の項(ρ/ρtL)と屈曲系の項(バネマス系の項の後に直列に加えられている項)とが加算される。このため、上記式で得られる共振周波数は、バネマス系の共振周波数より高いものとなり、吸音のピークとなる周波数を低く設定することが難しい場合がある。
【0034】
このような吸音体においては、バネマス系による共振周波数と、板の弾性による弾性振動による屈曲系の共振周波数との関連性は十分に解明されておらず、低音域で高い吸音力を発揮する板吸音体の構造が確立されていないのが実情である。
【0035】
そこで、発明者達は鋭意実験を行った結果、屈曲系の基本振動周波数の値をfa、バネマス系の共振周波数の値をfbとし場合、以下の数3の関係を満足するように、上記パラメータを設定する。これにより、屈曲系の基本振動が背後の空気層のバネ成分と連成して、バネマス系の共振周波数と屈曲系の基本周波数との間の帯域に振幅の大きな振動が励振されて(屈曲系共振周波数fa<吸音ピーク周波数f<バネマス系基本周波数fb)、吸音率が高くなるという事実を検証した。
【数3】

【0036】
さらに、以下の数4に設定する場合、吸音ピークの周波数がバネマス系の共振周波数より十分に小さくなる。この場合、低次の弾性振動のモードにより屈曲系の基本周波数がバネマス系の共振周波数より十分に小さく、300[Hz]以下の周波数の音を吸音する吸音構造として適していることも検証した。
【数4】

このように、上記した数3,4の条件を満足するように各種パラメータを設定することにより、吸音のピークとなる周波数を低くした吸音体が構成できる。
【0037】
(1−2)第1実施形態の作用・効果
本実施例による板吸音体10においては、車室105内にこもる音が音圧透過部136を通して振動板13に伝達され、この振動板13を振動させる。この振動により、車室105内の音波エネルギーが機械エネルギーとして消費されて吸音を行う。例えば、板吸音体10の設定を上記パラメータの数値に設定することにより、ロードノイズのような低周波数の音(車室105内の固有振動に対応した音圧が局所的に高くなる音の周波数(500Hz以下))を効率良く吸音することができる。
【0038】
そこで、本実施形態においては、特に車室内において音圧の高い位置、即ちトランク仕切隔壁120に箱形の板吸音体10を設けている。荷室からトランク仕切板140を抜けて後部座席付近に伝達されるタイヤ音等の比較的周波数の低いロードノイズは、トランク仕切板140に設けられた板吸音体10に効率良く吸音される。
ここで、比較的低い周波数とは、車室内の固有振動のうちその振動数が最も低い周波数である基本振動の周波数(通常の車室では約80Hz)と、当該車室が拡散音場とみなせる周波数帯域(通常の車室では約500Hz以上の帯域)との間の周波数帯域であって、当該車室において離散的にモードがあるとみなせる周波数をいう。
【0039】
そこで、図5にトランク仕切板140に板吸音体10を設けた実験を行った結果を示す。このグラフは、後部座席における音圧を示した周波数特性であり、実線が吸音構造体なし、点線が吸音構造体有りを示している。
この図5に示すように、周波数160〜315Hzの範囲において、騒音レベルが1〜1.5dB低減され、騒音(ロードノイズ等)が集中する低い周波数における音を吸音できる結果が得られた。
【0040】
この結果、本実施形態における車体構造体においては、トランク仕切板140に設けられた板吸音体10によって、例えばロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。
【0041】
また、図1および図6に示すように、形状の異なった種々の板吸音体10を、トランク仕切隔壁120の凹部122に配置してもよい。
具体的には、図6に示すように、トランク仕切隔壁120の凹部122に筐体11の大きさの異なった板吸音体10を配置する。各板吸音体10の筐体11の大きさは以下のようになる。
板吸音体10aの筐体:300mm×300mm×30mm
板吸音体10bの筐体:300mm×200mm×30mm
板吸音体10cの筐体:200mm×200mm×30mm
【0042】
そして、筐体11の寸法によって板吸音体10の共振周波数が異なるため、例えば、トランク仕切板140のうち、音圧が高くなる部位(車室内の固有振動姿態(モード)に対応して音圧が高くなる(音圧の腹となる)部位。具体的にはガラスなどの反射性の部材で構成される凹んだ空間など。例えば、リアガラス近傍)においては、寸法の大きい板吸音体10a,10bを配置し、音圧が低くなる部位(後部座席側)においては、寸法の小さい板吸音体10b,10cを配置する。
これにより、音圧に応じて適した共振周波数を有する板吸音体10を配置することができ、吸音される周波数の範囲を広げることができ、より確実に吸音を行うことができる。
【0043】
(1−3)第1実施形態の変形例
本発明は、前述した第1実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。
(1−3−1)
この変形例による構成は、図7に示すように、トランク仕切隔壁120の荷室107側に板吸音体10を設けたことにある。具体的には、平板状のトランク仕切隔壁120に複数の挿通孔120Aが形成され、トランク仕切隔壁120の荷室107側の面で、かつ各挿通孔120Aを通して車室105側に振動板13が連通する位置に、板吸音体10が接着剤20等で固定される。複数の挿通孔120Aは、トランク仕切り隔壁120の音圧透過部となる。
この場合、芯材の貫通孔132と、表面材135のうちこの貫通孔132に対応する部分とにより形成されるリアパッケージトレイの音圧透過部136と、複数の挿通孔120Aがトランク仕切り隔壁120に形成されたトランク仕切り壁の音圧透過部136により、車室105側の空気が板吸音体10に伝達されることになる。
【0044】
(1−3−2)
この変形例による構成は、図8に示すように、トランク仕切隔壁120の一部を板吸音体10Aの筐体としてしたことにある。具体的には、トランク仕切隔壁120の凹部122の開口部122Aに直接振動板13を固着し、凹部122と、振動板13と、凹部122および振動板13によって画成される空気層14とによって板吸音体10Aを構成する。なお、図7と同様に、表面材135のうちこの貫通孔132に対応する部分が音圧透過部136となる。
【0045】
(1−3−3)
この変形例による構成は、図9に示すように、リアパッケージトレイ130の一部を板吸音体10Bの筐体としたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130の芯材131に車室105側に開口する矩形状の凹部131Aを形成し、この凹部131Aの開口部131Bに直接振動板13を固着し、凹部131Aと、振動板13と、凹部131Aおよび振動板13によって画成される空気層14によって板吸音体10Bを構造する。なお、トランク仕切隔壁120には凹部131Aに対応する位置が突出する挿通孔120Bが穿設されている。なお、表面材135のうち開口部131Bに対応する部分が音圧透過部136となる。
【0046】
(1−3−4)
この変形例による構成は、図10に示すように、板吸音体10をトランク仕切隔壁120に取り付けたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130とトランク仕切隔壁120とのスペースを補うために、リアパッケージトレイ130の芯材131に先端が取付突起133となるスペーサ134を形成する。また、芯材131に複数の挿通孔131Aを形成する。そして、各挿通孔131Cに振動板13が対向するように、板吸音体10がトランク仕切隔壁120に取り付けられる。一方、表面材135のうち各挿通孔131Cに対向する部分が音圧透過部136が形成される。
なお、スペーサ134は、リアパッケージトレイ130の芯材131と一体に形成しているが、これに限らず、スポンジ等でスペーサを形成し、このスポンジの上下面を、芯材131・トランク仕切隔壁120に接着剤で接着するようにしてもよい。
【0047】
(1−3−5)
この変形例による構成は、図11に示すように、板吸音体10をリアパッケージトレイ130に取り付けたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130とトランク仕切隔壁120とのスペースを補うために、リアパッケージトレイ130の芯材131に先端が取付突起133となるスペーサ134を形成する。また、芯材131には板吸音体10を収容するための凹部131Dが形成される。
この場合、音圧を透過する材料からなる表面材135のうち、振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
【0048】
(1−3−6)
この変形例による構成は、図12に示すように、板吸音体10Cをリアパッケージトレイ130に取り付けたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130とトランク仕切隔壁120とのスペースを補うために、リアパッケージトレイ130の芯材131に先端が取付突起133となるスペーサ134を形成する。また、芯材131には、車室105側に段部131Fを有する矩形状の挿通孔131Eを形成する。
一方、板吸音体10Cは、鍔部15Aを有する矩形状の筐体15と、この筐体15の開口部16を閉塞し、筐体15内に空気層14を画成する振動板13とを有する。そして、板吸音体10Cは、車室105側から芯材131の挿通孔131Eに挿入されることにより、段部131Fに鍔部15Aを一致させて位置決めした状態で、芯材131に固定される。
また、音圧を透過する材料からなる表面材135のうち、振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
【0049】
(1−3−7)
この変形例による構成は、図13に示すように、リアパッケージトレイ130の一部を板吸音体10Bの筐体としたことにある。具体的には、リアパッケージトレイ130とトランク仕切隔壁120とのスペースを補うために、リアパッケージトレイ130の芯材131に先端が取付突起133となるスペーサ134を形成する。
また、リアパッケージトレイ130の芯材131に車室105側に開口する矩形状の凹部131Aを形成し、この凹部131Aの開口部131Bに直接振動板13を固着し、凹部131Aと、振動板13と、凹部131Aおよび振動板13によって画成される空気層14によって板吸音体10Bを構造する。
なお、表面材135のうち、振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
【0050】
(1−3−8)
この変形例による構成は、図14に示すように、板吸音体10Cをリアパッケージトレイ130に取り付けたことにある。具体的には、芯材131には、車室105側に段部131Fを有する矩形状の挿通孔131Eを形成され、トランク仕切隔壁120には挿通孔131Eに連通する挿通孔120Bが穿設される。
一方、板吸音体10Cは、鍔部15Aを有する矩形状の筐体15と、この筐体15の開口部16を閉塞し、筐体15内に空気層14を画成する振動板13とを有する。そして、板吸音体10Cは、車室105側から挿通孔131E,120Bに挿入されることにより、段部131Fに鍔部15Aを一致させて位置決めした状態で、芯材131に固定される。
なお、表面材135のうち、振動板13に対応する部分が音圧透過部136となる。
【0051】
(1−3−9)
本発明による構成は、上記実施形態および変形例(1−3−1)〜(1−3−8)に限らず、トランク仕切隔壁120に板吸音体10が設けられる構造であれば、他の構造であってもよい。
【0052】
(1−3−10)
また、板吸音体10の構成は、矩形状の筐体11、筐体11の開口部12を閉塞する振動板13と、筐体11内に画成される空気層14と、を具備する構成としたが、本発明による筐体の形状は矩形状に円形状、多角形状であっても、振動板13に対して振動条件を変更するための集中質量を、振動板13の中央部に設けるようにしてもよい。
【0053】
板吸音体10は、先にも説明した通り、バネマス系と屈曲系で吸音メカニズムが形成されている。ここで、発明者達は、振動板13の面密度を変えた際の共振周波数における吸音率の実験を行った。
【0054】
図15は、空気層14の縦と横の大きさが100mm×100mmで厚さが10mmの筐体11に振動板13(大きさが100mm×100mm、厚さ0.85mm)を固着し、中央部(大きさが20mm×20mm、厚さ0.85mm)の面密度を変化させた際の板吸音体10の垂直入射吸音率のシミュレート結果を示した図である。なお、シミュレート手法は、JIS A 1405−2(音響管による吸音率及びインピーダンスの測定−第2部:伝達関数法)に従って、上記板吸音体10を配置した音響室の音場を有限要素法により求め、その伝達関数より吸音特性を算出した。
【0055】
具体的には、中央部の面密度を、(1)399.5[g/m]、(2)799[g/m]、(3)1199[g/m]、(4)1598[g/m]、(5)2297[g/m]とし、周縁部材の面密度を799[g/m]とし、振動板13の平均密度を、(1)783[g/m]、(2)799[g/m]、(3)815[g/m]、(4)831[g/m]、(5)863[g/m]とした場合のシミュレーション結果である。
シミュレートの結果を見ると、300〜500[Hz]の間と、700[Hz]付近において吸音率が高くなっている。
【0056】
700[Hz]付近で吸音率が高くなっているのは、振動板13のマスと空気層14のバネ成分によって形成されるバネマス系の共振によるものである。板吸音体10においては上記バネマス系の共振周波数での吸音率をピークとし音が吸音されており、中央部の面密度大きくしても、振動板13全体のマスは大きく変わらないので、バネマス系の共振周波数も大きく変わらないことが分かる。
【0057】
また、300〜500[Hz]の間で吸音率が高くなっているのは、振動板13の屈曲振動によって形成される屈曲系の共振によるものである。板吸音体10においては、屈曲系の共振周波数での吸音率が低音域側のピークとして表れており、中央部の面密度を大きくしてゆくと屈曲系の共振周波数だけが低くなっていることが分かる。
【0058】
一般に、屈曲系の共振周波数は、振動板13の弾性振動を支配する運動方程式で決定され、振動板13の密度(面密度)に反比例する。また、前記共振周波数は、固有振動の腹(振幅が極大値となる場合)の密度により大きく影響される。このため、上記シミュレーションでは、1×1の固有モードの腹となる領域を中央部で異なる面密度に形成したので、屈曲系の共振周波数が変化したものである。
【0059】
このように、シミュレーション結果は、中央部の面密度を周縁部の面密度より大きくすると、吸音のピークとなる周波数のうち、低音域側の吸音率のピークがさらに低音域側へ移動することを表している。従って、中央部の面密度を変更することにより吸音のピークとなる周波数の一部をさらに低音域側または高音域側に移動(シフト)させることができることを表している。
【0060】
上述した板吸音体10においては、中央部の面密度を変えるだけで、吸音される音のピークの周波数を変える(シフトさせる)ことができるため、振動板13を板吸音体10全体と同じ素材で板状に形成し、板吸音体10全体の質量を重くして吸音する音を変更する場合と比較して、板吸音体10全体の質量を大きく変えることなく吸音させる音を低くできる。
【0061】
このように、車室内や荷室内の吸音力の変更(人や荷物の数量、形状の変化等)や発生騒音の変更(タイヤの変更、路面状況の変化等)により車室内の騒音特性の変化に対応できる。
【0062】
さらに、板吸音体10の空気層14内には、多孔質吸音材(例えば、発泡樹脂、フェルト,ポリエステルウール等の綿状繊維)を充填することにより、吸音率ピーク値を増加させてもよい。
【0063】
<第2実施形態>
次に、本発明による第2実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、トランク仕切板に設けられる吸音構造体に管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0064】
(2−1)構成
図16は、第2実施形態に係る4ドアセダン形の車両100を示す斜視図である。この車両100のトランク仕切隔壁120の凹部122内には、管吸音体30が設けられる。
【0065】
本実施形態に用いられる管吸音体の構造について説明する。
図17は、管吸音体30の構造を示す図である。
この管吸音体30は、トランク仕切隔壁120の凹部122内に収容される。管吸音体30は、長さの異なる複数本のパイプ31(31−1〜31−9)を横一列に並べて、相互に連結、或いは別途専用の部材で相互に連結させて一体に構成されている。各パイプ31は、所定の肉厚(例えば、約2mm)および所定の内径(例えば、直径60mm)を有する合成樹脂製等の断面円形の直線状剛性パイプで構成される。各パイプ31の一端部は閉じられて閉塞部32となり、他端部は開かれて開口部33となる。開口部33の位置は各パイプ31で一列に揃えられることにより、開口部33同士が隣接して配置される。
また、トランク仕切隔壁120にリアパッケージトレイ130を取り付けた状態にあっては、各パイプ31の開口部33が車室105側と連通するように、リアパッケージトレイ130には音圧透過部136が形成される(図2、参照)。
【0066】
各パイプ31内の長さは、パイプ31の空洞単体で吸収される音波の中心の周波数の1/4の波長に相当する。
ここでは、空洞の長さL(=パイプの長さ)が0.85m,0.68m,0.53mの3種類のパイプが用いられており、これらはそれぞれ100Hz,125Hz,160Hz(つまり1/3オクターブバンドピッチ)を中心に吸音する(音速=340m/s)。
各パイプ31の開口部33のネック部分(開口部33またはその近傍)は、グラスウール、クロス、ガーゼ等の音圧透過性を有する流れ抵抗材(流れ抵抗を有する材料)34で塞がれている。
【0067】
(2−2)管吸音体の動作原理
次に、管吸音体30による吸音原理について説明する。
図18は、図17に示す管吸音体30のうち隣接する2本のパイプ31−j,31−kを示したものである。各パイプ31−j,31−kの空洞の長さをL1,L2とする。車室105内の音波は、開口部33−j,33−kから空洞内に入射され、他端の閉塞部32−j,32−kで反射されて、開口部33−j,33−kから再び室内に放出される。このとき、空洞の長さL1,L2の4倍に相当する波長λ1,λ2(L1=λ1/4,L2=λ2/4)の音波が定在波S1,S2を作り、振動を繰り返すうちに空洞の内壁面での摩擦や開口部33−j,33−kでの空気粒子間の粘性作用により、エネルギーを消費し、この波長λ1,λ2を中心に吸音が行なわれる。例えば、L1=1.35m、L2=0.53mとすると、λ1=5.4m、λ2=2.12mとなり、それぞれで吸音される音波の中心の周波数f1,f2は、f1=63Hz、f2=160Hzとなる。
【0068】
一方、閉塞部32−j,32−kで反射されて、開口部33−j,33−kから放出される音波は、開口部33−j,33−kで回折してエネルギーを放射する。そのエネルギーの一部は相互に隣接する他方のパイプ31−k,31−jの開口部33−k,33−jから空洞内に入射される。このようにして、隣接するパイプ31−j,31−k相互間で連成振動を生じ、エネルギーの授受が行なわれる。この連成振動の際に、空洞の内壁面での摩擦や開口部33−j,33−kでの空気粒子間の粘性作用により、エネルギーを消費し、吸音が行なわれる。この連成振動は、パイプ31−j,31−kを一連のパイプとみなした両端閉管モードとして捉えることができ、L1+L2=λ3/2として定まる波長λ3を中心に吸音が行なわれる。例えばL1=1.35m、L2=0.53mの場合には、λ3=3.76mとなり、連成振動で吸音される音波の中心の周波数f3はf3=90Hzとなる。図17の配列の場合、隣接するパイプ間での連成振動の周波数は次のようになる。
【0069】
L1(m) L2(m) 連成振動周波数(Hz)
0.85 0.68 111
0.85 0.53 123
0.68 0.53 140
これによれば、各パイプ31−1〜31−9単体での吸音(100,125,160Hzが中心)とあわせて約100〜160Hzの範囲で平均的に吸音力が得られることになる。
【0070】
(2−3)第2実施形態の作用・効果
このように、トランク仕切隔壁120に管吸音体30を設けることにより、荷室からトランク仕切板を抜けて後部座席付近に伝達されるタイヤ音等の比較的周波数の低いロードノイズは、管吸音体30によって、効率良く吸音される。管吸音体30によって、例えばロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。
【0071】
なお、管吸音体30のトランク仕切隔壁120への取付構成は、前述した第2実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。例えば、予めトランク仕切隔壁120にパイプ31を形成しておいて、パイプ31の開口部33のみが車室105側に開口するようにしたり、予めリアパッケージトレイ130の芯材131にパイプ31を形成しておいて、パイプ31の開口部33のみが車室105側に開口するようにしたり、リアパッケージトレイ130の芯材131とトランク仕切隔壁120との間にパイプ31を配置したり等、種々の組み付け構造がある。
【0072】
さらに、第2実施形態では、管吸音体30は、トランク仕切隔壁120のうち、車室105と荷室107とを仕切る部位に設けるようにしたが、図19に示すように、管吸音体30を、リアシートの背もたれとトランク仕切隔壁120との間に設けるようにしてもよい。
【0073】
また、管吸音体30の構成は、第2実施形態の構成に限らず、長さの異なったパイプを平行にトランク仕切隔壁120に設けるだけでもよく。この場合であっても、パイプの振動によってある程度の吸音効果が得られる。
【0074】
さらに、管吸音体30はいわゆる閉管ではなく、各パイプ31の両端部が開かれて開口部32、開口部33(いわゆる開管)をなす管で構成してもよいし、これら閉管と開管とを混合して配置してもよい。
【0075】
<第3実施形態>
次に、本発明による第3実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、トランク仕切板に設けられる吸音構造体にヘルムホルツ吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0076】
図20は、第3実施形態(トランク仕切板140にヘルムホルツ吸音体40が設けられる)を示した図である。
【0077】
本実施形態に用いられるヘルムホルツ吸音体40は、内部に空間が形成された直方体状の筐体41と、この筐体41の上部側に穿設された挿入孔42に挿入された管状部材43と、を有している。筐体41の内側には密閉空間44が画成され、管状部材43の内側には密閉空間44と車室105とを連通する開口45が形成されている。管状部材43は、芯材131に穿設された挿通孔131Gにも挿入されている。
【0078】
筐体41は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)によって直方体状に形成されている。管状部材43は、例えば塩化ビニール製のパイプを使用でき、空気との摩擦が生じやすいように、内面を粗くしておく。このヘルムホルツ吸音体40は、寸法の小さい空洞である密閉空間44の中の空気がバネとして働くことにより、車室105内に発生した音を減衰するように作用する。
【0079】
このとき、密閉空間44に設けられた小さな開口45が車室105に通じているため、開口45内の空気の塊をマスとして1質点系バネ・マスモデルが形成される。そして、この系の共振周波数においては、開口45内の空気の塊が車室105の音圧によって振動し、開口45の周壁と空気の塊との摩擦によって、音のエネルギーが熱エネルギーに変換される。つまり、音が減衰される。
【0080】
いま、開口45の長さをL、開口45の横断面積をS、密閉空間44の容積をV、音速をC、開口45の有効長さをLe(Le≒L+0.8・S1/2)とすると、ヘルムホルツ吸音体40の共鳴周波数f0は、f0=1/2π(C2 S/Le・V)1/2となる。
この式から、開口45の横断面積S又は有効長さLe、即ち、管状部材43の内径d又は長さLを変えることによって、共鳴周波数f0を調整でき、これにより、周波数の異なる音を減音できることが分かる。
【0081】
このように、トランク仕切隔壁120にヘルムホルツ吸音体40を設けることにより、荷室からトランク仕切板を抜けて後部座席付近に伝達されるタイヤ音等の比較的周波数の低いロードノイズは、ヘルムホルツ吸音体40によって効率良く吸音される。
【0082】
なお、ヘルムホルツ吸音体40のトランク仕切隔壁120への取付構成は、前述した第3実施形態の構成に限らず、種々の対応が可能である。例えば、筐体41をトランク仕切隔壁120に設けたり、筐体41をリアパッケージトレイ130の芯材131或いはトランク仕切隔壁120に一体形成しておいたり、種々の組み付け構造がある。
【0083】
また、ヘルムホルツ吸音体40の筐体41の形状は、直方体に限らず、円柱状等、他の形状であってもよい。
【0084】
<第4実施形態>
次に、本発明による第4実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、トランク仕切板に設けられる吸音構造体に板吸音体および管吸音体を用いた点にある。なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0085】
図21は、第4実施形態に係る4ドアセダン形の車両100を示す斜視図である。この車両100のトランク仕切隔壁120の凹部122内には、板吸音体10および管吸音体30が設けられる。
このように、トランク仕切隔壁120に板吸音体10および管吸音体30を設けることにより、第1実施形態および第2実施形態で述べたように、板吸音体10および管吸音体30によって、例えばロードノイズ等を効率良く吸音させることができ、車室105内の静粛感を高めることができる。
しかも、2種類の吸音体10,30を用いることにより、吸音効率を前記各実施形態よりも高めることができる。
【0086】
なお、吸音体の組み合わせは、この第4実施形態に限らず、板吸音体10、管吸音体30およびヘルムホルツ吸音体40、管吸音体30およびヘルムホルツ吸音体40との組み合わせであってもよい。
【0087】
<変形例>
以上、本発明による実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施可能である。
【0088】
本各実施形態においては、セダンタイプを例に挙げて、トランク仕切板140をシャーシ110の一部となるトランク仕切隔壁120とリアパッケージトレイ130とから構成するものとして述べたが、本発明はこれに限らず、ハッチバックタイプのように、トランク仕切板140をリアパッケージトレイ130のみで構成する場合でも適用可能であり、この場合には、リアパッケージトレイ130に対して吸音構造体を設ければよい。
【0089】
さらに、板吸音体10は、図1に示すように、トランク仕切板140全体に配置される場合であっても、音圧の高い位置に配置されるようにしてもよい。また、管吸音体30の開口部33においても、音圧の高い位置に配置されるようにすればよい。
【0090】
前記各実施形態では、リアパッケージトレイ130をトランク仕切隔壁120に取り付ける構成を、取付突起133をトレイ取付孔123に挿入することによって行ったが、本発明はこれに限らず、各部位を接着剤等で固着するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態に係る4ドアセダン形の車両を示す斜視図である。
【図2】車両のシャーシを模式的に示す図である。
【図3】図2中のa部を拡大した断面図である。
【図4】トランク仕切隔壁に対して板吸音体およびリアパッケージトレイを組み立てる前の状態を示した図である。
【図5】トランク仕切板に板吸音体を設けた実験結果を示す図である。
【図6】トランク仕切板に対する板吸音体の配置例を示す図である。
【図7】変形例(1−3−1)を示す図である。
【図8】変形例(1−3−2)を示す図である。
【図9】変形例(1−3−3)を示す図である。
【図10】変形例(1−3−4)を示す図である。
【図11】変形例(1−3−5)を示す図である。
【図12】変形例(1−3−6)を示す図である。
【図13】変形例(1−3−7)を示す図である。
【図14】変形例(1−3−8)を示す図である。
【図15】変形例(1−3−10)による実験結果を示す図である。
【図16】第2実施形態に係る4ドアセダン形の車両を示す斜視図である。
【図17】第2実施形態における要部を拡大して示す図である。
【図18】管吸音体の原理を示す模式図である。
【図19】第2実施形態における変形例を示す模式図である。
【図20】第3実施形態における図3と同様の断面図である。
【図21】第4実施形態に係る4ドアセダン形の車両を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
10,10a〜10c,10A,10B,10C・・・板吸音体、11,15,41・・・筐体、12,16,45・・・開口部、13・・・振動板、14・・・空気層、30・・・管吸音体、31−1〜31−9・・・パイプ、32・・・閉塞部、33・・・開口部、34・・・抵抗材、40・・・ヘルムホルツ吸音体、43・・・管状部材、44・・・密閉空間、110・・・シャーシ、120・・・トランク仕切隔壁、130・・・リアパッケージトレイ、131・・・芯材、135・・・表面材、136・・・音圧透過部、140・・・トランク仕切板(板体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を車室と車室外の空間とに仕切る板体と、
前記板体に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備する
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項2】
請求項1記載の車体構造体において、
前記吸音構造体の音圧駆動によって駆動される部位は、前記車室における音圧が高い部分に配置される
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項3】
請求項1または2記載の車体構造体において、
前記吸音構造体は、振動板と、
該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体である
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項4】
請求項1または2記載の車体構造体において、
前記吸音構造体は、一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体である
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項5】
請求項4記載の車体構造体において、
前記空洞は、複数形成される
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項6】
請求項4記載の車体構造体において、
前記空洞は、長さの異なる複数形成される
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項7】
請求項1または2記載の車体構造体において、
前記吸音構造体は、閉空間と、この閉空間と前記車室の空間とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体である
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項8】
請求項1または2記載の車体構造体において、
前記吸音構造体は、
振動板と、該振動板の背後に画成される空気層と、を有する板吸音体、
一端が閉塞した閉塞部となり他端が開口した開口部となる空洞を有する管吸音体、
閉空間と、この閉空間と外部とを連通する管状部材と、を有するヘルムホルツ吸音体、
いずれかの吸音体の組み合わせによって構成される
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の車体構造体において、
当該車体構造体の基台となるシャーシは、前記吸音構造体の一部を構成する
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の車体構造体において、
前記吸音構造体は、当該車体構造体の基台となるシャーシに取り付けられる
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれかに記載の車体構造体において、
前記板体は、当該車体構造体の基台となるシャーシの一部をなす隔壁と、該隔壁を車室側から覆うリアパッケージトレイとを有し、
前記吸音構造体は、前記隔壁と前記リアパッケージトレイとの間に配置される
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれかに記載の車体構造体において、
前記板体は、当該車体構造体の基台となるシャーシの一部をなす隔壁と、該隔壁を車室側から覆い、芯材とこの芯材の表面を覆う表面材とを有するリアパッケージトレイと、を備え、
前記芯材が前記吸音構造体の一部を構成する
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載の車体構造体において、
前記板体は、当該車体構造体の基台となるシャーシの一部をなす隔壁と、該隔壁を車室側から覆い、芯材とこの芯材の表面を覆う表面材とを有するリアパッケージトレイと、を備え、
前記吸音構造体は、前記芯材に取り付けられる
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかに記載の車体構造体において、
前記リアパッケージトレイは、音圧透過部を有する
ことを特徴とする車体構造体。
【請求項15】
車体を車室と車室外の空間とに仕切る板体であって、
当該板体の基台となす芯材と、
前記芯材に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備する
ことを特徴とする仕切用板体。
【請求項16】
車体を車室と荷室とに仕切るリアパッケージトレイであって、
当該リアパッケージトレイの基台となす芯材と、
前記芯材に設けられ、音圧駆動によって吸音を行う吸音構造体と、を具備する
ことを特徴とするリアパッケージトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−208690(P2009−208690A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55367(P2008−55367)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】