説明

車載地図表示装置、車両用地図表示システム

【課題】自車両と他車両が接近している場合であっても、自車両の位置表示と他車両の位置表示が重なってしまうのを防ぐことができる車載地図表示装置を提供する。
【解決手段】自車両の位置を検出し(ステップS10)、自車位置マークを地図上に表示する(ステップS20)。また、他車両の位置情報を取得し(ステップS40)、取得した位置情報に基づいて他車両の位置を特定して(ステップS50)、他車位置マークを地図上に表示する(ステップS90)。このとき、自車両と他車両とが接近しているか否かを判定し(ステップS60)、接近していると判定された場合は、他車位置マークの移動方向および移動量を決定し(ステップS80)、ステップS90において他車位置マークを他車両の位置からずらして表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて地図を表示する車載地図表示装置と、車載地図表示装置を有する車両用地図表示システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車々間通信により他車両からのデータを受信し、そのデータに基づいて特定される他車両の位置を地図上に表示する車載用電子装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−64616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される従来の車載用電子装置では、自車両と他車両が接近している場合に、自車両の位置表示と他車両の位置表示が重なってしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による車載地図表示装置は、地図を表示モニタに表示する地図表示制御手段と、自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、自車位置検出手段により検出された自車両の位置を示す自車位置マークを地図上に表示する自車位置表示制御手段と、他車両の位置情報を取得する他車位置情報取得手段と、他車位置情報取得手段により取得された他車両の位置情報に基づいて、他車両の位置を特定する他車位置特定手段と、他車位置特定手段により特定された他車両の位置を示す他車位置マークを地図上に表示する他車位置表示制御手段と、自車両と他車両とが接近しているか否かを判定する接近判定手段とを備えるものである。この車載地図表示装置において、接近判定手段により自車両と他車両とが接近していると判定された場合、他車位置表示制御手段は、他車位置マークを他車両の位置からずらして表示する。
請求項2の発明は、請求項1に記載の車載地図表示装置において、自車両と他車両との位置関係に基づいて、他車位置表示制御手段により他車位置マークをずらして表示するときの移動方向および移動量を決定する決定手段をさらに備えるものである。
請求項3の発明は、請求項2に記載の車載地図表示装置において、決定手段は、自車両の位置と他車両の位置とをつなぐ直線を延長した方向を移動方向とするものである。
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の車載地図表示装置において、決定手段は、自車位置マークと他車位置マークとが重ならないように移動方向および移動量を決定するものである。
請求項5の発明は、請求項2〜4いずれか一項に記載の車載地図表示装置において、決定手段は、地図の縮尺と自車位置マークの画面上の大きさとに応じて、移動量を決定するものである。
請求項6の発明は、請求項1〜5いずれか一項に記載の車載地図表示装置において、地図の縮尺と自車位置マークの画面上の大きさとに基づいて、接近判定手段により自車両と他車両とが接近しているか否かを判定するための接近判定範囲を設定する設定手段をさらに備えるものである。
請求項7の発明は、請求項1〜6いずれか一項に記載の車載地図表示装置において、自車両の走行道路と他車両の走行道路が立体交差しているか否かを判定する立体交差判定手段をさらに備えるものである。この車載地図表示装置において、他車位置表示制御手段は、接近判定手段により自車両と他車両とが接近していると判定された場合であっても、立体交差判定手段により自車両の走行道路と他車両の走行道路が立体交差していると判定された場合は、他車位置マークを他車両の位置に合わせて表示する。
請求項8の発明は、請求項1〜7いずれか一項に記載の車載地図表示装置において、他車位置情報取得手段は、自車両と他車両との間で行われる車々間通信により、他車両の位置情報を取得するものである。
請求項9の発明による車両用地図表示システムは、請求項1〜8いずれか一項に記載の車載地図表示装置と、車載地図表示装置と無線通信を介して接続される配信センターとを有するものである。この車両用地図表示システムにおいて、他車位置情報取得手段は、配信センターから他車両の位置情報を取得する。
請求項10の発明は、請求項9に記載の車両用地図表示システムにおいて、自車両の位置情報を配信センターへ送信するための通信制御装置をさらに有するものである。
請求項11の発明は、地図を表示モニタに表示し、その地図上に、自車両の位置を示す自車位置マークと、他車両の位置を示す他車位置マークとを表示する車載地図表示装置において、自車位置マークと他車位置マークとが重なる場合は、他車位置マークをずらして表示するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車両と他車両が接近している場合であっても、自車両の位置表示と他車両の位置表示が重なってしまうのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
本発明の第1の実施の形態による車載地図表示装置の適用例であるナビゲーション装置を、図1にその構成を示す車両制御システムにより説明する。この車両制御システムは、自車両1と他車両2とが車々間通信によって互いの位置情報を交換し、それによって相手方の走行状態をそれぞれ判断することで、必要に応じて様々な車両制御を行うものである。自車両1には、ナビゲーション装置10、車両制御装置11、通信制御装置12およびアンテナ13が備えられている。同様に他車両2には、ナビゲーション装置20、車両制御装置21、通信制御装置22およびアンテナ23が備えられている。
【0008】
ナビゲーション装置10は、自車両1から所定範囲内の地図を表示モニタに表示する。このときナビゲーション装置10は、自車両1の位置を示す自車位置マークをその地図上に表示すると共に、通信制御装置12により受信される他車位置情報に基づいて、他車両2の位置を特定し、その位置を示す他車位置マークを地図上に表示する。こうした地図表示を行うことにより、自車両1と他車両2との位置関係をユーザに対して知らせる。またナビゲーション装置10は、車両制御装置11からの指示により、必要に応じて警告音の出力や警告メッセージの表示を行う。これにより、自車両1に向かって走行している他車両2の存在などをユーザに知らせることができる。
【0009】
さらにナビゲーション装置10は、目的地が設定されることにより、自車両1をその目的地まで案内するためのナビゲーション処理を実行する。すなわち、ユーザの操作などによりナビゲーション装置10に対して目的地が設定されると、ナビゲーション装置10はその目的地までの推奨経路を地図データに基づいて探索する。そして、探索された推奨経路を地図上に表示し、その推奨経路に従ってユーザに進行方向の指示を行うことにより、自車両1を目的地まで案内する。なお、このときにも前述のように自車位置マークと他車位置マークが地図上に表示される。
【0010】
車両制御装置11は、自車両1の挙動やユーザの運転操作等に応じて、自車両1における様々な動作の制御を行う。たとえば、アクセルペダルの踏み込み量やエンジン回転数などに応じてアクセル開度を調節することで、自車両1に生じる加速度を制御する。さらに車両制御装置11は、ナビゲーション装置10による自車位置の検出結果と他車位置の特定結果とに基づいて、自車両1と他車両2との位置関係やその変化状態を判断し、この判断結果に応じて、ナビゲーション装置10に対する警告の指示や自車両1の駆動制御を必要に応じて行う。たとえば、自車両1の走行道路と交差する道路を走行中の他車両2が、自車両1に向かって所定距離以内に接近していると判断されたとする。このような場合、車両制御装置11は、他車両2が接近している旨の警告をナビゲーション装置10に対して指示すると共に、必要であれば自車両1のブレーキを制御して自車両1を停止させる。
【0011】
通信制御装置12は、アンテナ13を用いて、他車両2に搭載された通信制御装置22との間で車々間通信を行う。この車々間通信により、通信制御装置12において、他車両2の位置を表す他車位置情報が受信されると共に、自車両1の位置を表す自車位置情報が送信される。なお、このときに車両の種類(たとえば、大型車、小型車、二輪車等)の表すための車種情報と、車々間通信を行う車両の各々を特定するための車両ID情報とが、自車位置情報と他車位置情報にそれぞれ付される。こうして自車両1と他車両2の位置情報が交換される。
【0012】
通信制御装置12において受信された他車位置情報は、通信制御装置12からナビゲーション装置10に対して出力される。この他車位置情報に基づいて、ナビゲーション装置10は前述のように他車両2の位置を特定し、その結果を通信制御装置12へ出力する。こうしてナビゲーション装置10から他車位置の特定結果が出力されると、それに基づいて通信制御装置12は、前述のような制御を自車両1に対して行う。なお、通信制御装置12および22を用いて自車両1と他車両2との間で行われる車々間通信には、たとえばDSRC(Dedicated Short Range Communications)による通信方式などを利用することができる。
【0013】
自車両1に搭載されているナビゲーション装置10、車両制御装置11、通信制御装置12およびアンテナ13は、以上説明したような処理や動作を行う。なお、他車両2に搭載されているナビゲーション装置20、車両制御装置21、通信制御装置22およびアンテナ23も、それぞれに同様の処理や動作を行う。
【0014】
次に、ナビゲーション装置10の構成を図2に示す。ナビゲーション装置10は、制御部101、振動ジャイロ102、車速センサ103、ハードディスク(HDD)104、GPS受信部105、表示モニタ106および入力装置107を備えている。
【0015】
制御部101は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD104に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。この制御部101により、ナビゲーション装置10における様々な処理が実行される。たとえば、目的地を設定する際の目的地の探索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、自車位置の検出処理、各種の画像表示処理、ルート案内時の処理などが実行される。
【0016】
制御部101は車両制御装置11および通信制御装置12と接続されており、これらとの間で様々な信号やデータが入出力される。たとえば通信制御装置12に対して、制御部101により検出された自車位置の情報が所定時間ごとに出力される。この自車位置情報は、通信制御装置12が行う車々間通信によって自車両1から他車両2へと送信される。一方、通信制御装置12から制御部101には、他車両2から受信した他車位置情報が入力される。
【0017】
通信制御装置12から他車位置情報が入力されると、制御部101は、その他車位置情報に基づいて他車両2の位置を特定する。このとき、他車位置情報とHDD104に記録されている地図データとに基づいてマップマッチングを行うことにより、他車両2が地図上でどの道路を走行しているかを判断し、その判断結果を反映して他車両2の位置を特定する。この他車位置の特定結果は、自車位置の検出結果と共に、制御部101から車両制御装置11へ出力される。車両制御装置11は、これらに基づいて自車両1と他車両2との位置関係やその変化状態を判断し、前述のような警告指示や駆動制御を必要に応じて行う。
【0018】
振動ジャイロ102は、自車両1の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ103は、自車両1の車速を検出するためのセンサである。これらのセンサを用いて自車両1の運動状態を所定の時間間隔ごとに検出することにより、自車両1の移動量が求められ、それによって自車両1の現在位置が検出される。
【0019】
HDD104は、データの書き換えが可能な不揮発性の記録媒体であり、地図データを含む各種のデータが記録されている。HDD104に記録されている地図データは、必要に応じて制御部101の制御により読み出され、制御部101が実行する様々な処理や制御に利用される。この地図データには、経路計算データと、経路誘導データと、道路データと、背景データとが含まれている。経路計算データは、目的地までのルート探索に用いられる。経路誘導データは、設定された経路に従って自車両1を目的地まで誘導するために用いられ、交差点名称や道路名称などを表す。道路データは、道路の形状や種別を表す。背景データは、河川や鉄道などの道路以外の地図形状や、各種施設の位置などを表す。
【0020】
GPS受信部105は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部101へ出力する。GPS信号には、自車両1の位置と現在時刻を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて自車両1の現在位置と現在時刻を算出することができる。
【0021】
表示モニタ106は、ナビゲーション装置10において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ106により、前述したように自車両1の周辺について地図が表示され、その地図上に自車位置マークと他車位置マークが表示される。表示モニタ106に表示される画面の内容は、制御部101が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ106は、たとえば自車両1のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0022】
入力装置107は、ナビゲーション装置10を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザはこの入力装置107を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。入力装置107は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、表示モニタ106と一体化されたタッチパネルにより入力装置107を実現してもよい。
【0023】
ユーザが入力装置107を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置10は、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算を行うことにより、目的地までの推奨経路を探索する。そして、自車両1の現在位置を検出し、その周辺の道路地図を表示しながら、探索された推奨経路に従って自車両1を目的地まで誘導する。
【0024】
次に、自車位置マークと他車位置マークを地図上に表示する際の処理内容について、図3に示すフローチャートにより説明する。このフローチャートは、自車位置マークと他車位置マークを地図上に表示する際に、ナビゲーション装置10の制御部101において所定の処理サイクル間隔で実行されるものである。
【0025】
ステップS10では、自車位置の検出を行う。ここでは前述したように、振動ジャイロ102および車速センサ103の検出結果に基づいて、自車両1の位置が検出される。なお、このときHDD104に記録された地図データに基づいてマップマッチングが行われることにより、自車両1が地図上でどの道路を走行しているかが判断され、その判断結果を反映して自車位置が検出される。これにより、自車両1が走行している道路に合わせて自車位置が補正される。次のステップS20では、ステップS10で検出された自車位置に基づいて、表示モニタ106において自車位置マークを地図上に表示する。
【0026】
ステップS30では、ステップS20で表示した自車位置マークに対して、自車両1に他車両2が接近しているか否かを判定するための接近判定範囲を設定する。ここで設定される接近判定範囲の例を図4に示す。図4(a)に破線で示した接近判定範囲112は、自車位置マークと他車位置マークとが重ならないようにするため、このような形状を有している。一方、図4(b)において破線で示した接近判定範囲113は、自車位置110を略中心とする楕円形状を有している。なお、接近判定範囲113を設定した場合は、自車位置マークと他車位置マークとが部分的に重なる場合がある。
【0027】
ステップS30では、以上説明したような接近判定範囲を自車位置マークに対して設定する。このとき、表示モニタ106に表示されている地図の縮尺に応じて、設定する接近判定範囲の大きさを変化させるようにする。具体的には、地図の縮尺が小さく、画面上における自車位置マークの大きさを地図上の距離に換算した値が比較的大きい場合は、それに応じて接近判定範囲も大きく設定する。反対に、地図の縮尺が大きく、画面上における自車位置マークの大きさを地図上の距離に換算した値が比較的小さい場合は、それに応じて接近判定範囲も小さく設定する。このように、ステップS30では、地図の縮尺と自車位置マークの画面上の大きさとに基づいて、接近判定範囲を設定する。
【0028】
ステップS40では、他車位置情報を取得する。ここでは前述のように、通信制御装置12を用いて自車両1と他車両2との間で行われる車々間通信により、他車位置情報を取得する。このとき通信制御装置12において受信された他車位置情報が、制御部101に対して入力される。
【0029】
ステップS50では、ステップS40で取得した他車位置情報に基づいて、他車位置の特定を行う。このとき、前述のように取得した他車位置情報とHDD104に記録された地図データとに基づいてマップマッチングが行われることにより、他車両2が地図上でどの道路を走行しているかが判断され、その判断結果を反映して他車両2の位置が特定される。これにより、他車両2が走行している道路に合わせて他車位置が補正される。
【0030】
ステップS60では、ステップS50で特定した他車位置が、ステップS30で設定した接近判定範囲内にあるか否かを判定する。他車位置が接近判定範囲内にある場合は、次のステップS70へ進む。一方、他車位置が接近判定範囲の外にある場合は、ステップS70およびS80の処理を実行せずに、ステップS90へ進む。こうして他車位置が接近判定範囲内にあるか否かを判定することにより、他車両2が自車両1に接近しているか否かを判定することができる。
【0031】
ステップS60からステップS70へ進んだ場合、ステップS70では、自車両1の走行道路と他車両2の走行道路が立体交差しているか否かを判定する。ここでは、ステップS10において自車位置を検出する際に行われたマップマッチングの結果と、ステップS50において他車位置を特定する際に行われたマップマッチングの結果とに基づいて、自車両1の走行道路と他車両2の走行道路をそれぞれ判断する。そして、表示モニタ106に表示されている地図範囲内において、これらの各走行道路が立体交差しているか否かを判定する。このようにして、立体交差の有無を判定する。
【0032】
ステップS70において、自車両1の走行道路と他車両2の走行道路が立体交差していると判定された場合は、次のステップS80を実行せずにステップS90へ進む。すなわち、自車両1の走行道路と他車両2の走行道路が立体交差している場合は、自車位置マークと他車位置マークとが重なっていてもよく、他車位置マークをずらして表示する必要がないため、ステップS80を実行せずにステップS90へ進む。一方、自車両1の走行道路と他車両2の走行道路とが立体交差していないとステップS70において判定された場合は、次のステップS80へ進む。
【0033】
ステップS70からステップS80へ進んだ場合、ステップS80では、次のステップS90において他車位置マークをずらして表示するために、他車位置マークの移動方向および移動距離を決定する。このときの移動方向および移動距離の決定方法については、後で説明する。ステップS80において他車位置マークの移動方向および移動距離を決定したら、ステップS90へ進む。
【0034】
ステップS90では、ステップS50で特定した他車位置に対して、表示モニタ106において他車位置マークを地図上に表示する。このとき、前述のステップS80において他車位置マークの移動方向および移動距離を決定していた場合は、その移動方向および移動距離にしたがって、他車位置マークを他車位置からずらして表示する。一方、ステップS80を実行していなかった場合は、他車位置マークを他車位置に合わせて表示する。
【0035】
ステップS90を実行したら、図3のフローチャートを終了する。以上説明したような処理が実行されることにより、ナビゲーション装置10において自車位置マークと他車位置マークが地図上に表示される。
【0036】
自車位置マークと他車位置マークが表示された地図画面の例を図5に示す。図5(a)は、自車位置マーク111と他車位置マーク211とが重なる場合に、他車位置マーク211をずらさずにそのまま表示したときの地図画面の例である。これに対して図5(b)は、自車位置マーク111と他車位置マーク211とが重なる場合に、上記のような方法により他車位置マーク211をずらして表示したときの地図画面の例である。図5(a)の地図画面に比べて図5(b)の地図画面では、自車両1の後方を走行している他車両2に対して、自車位置マーク111と他車位置マーク211とが重ならないように、他車位置マーク211がずらして表示されている。これにより、自車両1と他車両2の位置関係を分かりやすく地図上に表すことができる。
【0037】
次に、ステップS80における他車位置マークの移動方向および移動距離の決定方法について、図4の例により説明する。図4(a)の例では、他車位置210a、210b、210cおよび210dがそれぞれ接近判定範囲112内にあるときに、これらの他車位置にそれぞれ対応する他車位置マーク211a、211b、211cおよび211dの移動方向および移動距離を決定する方法を説明する。
【0038】
図4(a)の場合、自車位置110に対して自車位置マーク111が表示され、これに対して接近判定範囲112が設定されている。このとき、接近判定範囲112内にある他車位置210a〜210dに対してそのまま他車位置マーク211a〜211dを表示すると、自車位置マーク111と他車位置マーク211a〜211dとが重なって表示されてしまう。そこで、自車位置マーク111と他車位置マーク211a〜211dとが重ならないように、次のようにして他車位置マーク211a〜211dの移動方向および移動距離を決定する。
【0039】
初めに、自車位置110と他車位置210a〜210dとをそれぞれつなぐ直線を地図上に引き、その各直線をそれぞれ延長した方向を求める。こうして他車位置210a〜210dに対してそれぞれ求められた方向を、他車位置マーク211a〜211dの移動方向とする。次に、この移動方向において、他車位置210a〜210dから接近判定範囲112の外周までの距離をそれぞれ求める。こうして他車位置210a〜210dに対してそれぞれ求められた距離を、他車位置マーク211a〜211dの移動距離とする。このようにすることで、自車位置マーク111と他車位置マーク211a〜211dとが重ならないように、他車位置マーク211a〜211dの移動方向と移動距離を決定することができる。
【0040】
以上説明したようにして他車位置マーク211a〜211dの移動方向および移動距離を決定したら、ステップS90では、図4(a)に示すようにして、その移動方向および移動距離に応じた移動後の他車位置210a〜210dを求める。そして、移動後の他車位置210a〜210dに対して、他車位置マーク211a〜211dをそれぞれ地図上に表示する。自車位置マーク111と他車位置マーク211a〜211dとが重なる場合は、このようにすることで、他車位置マーク211a〜211dを元の他車位置210a〜210dからずらして表示する。
【0041】
次に、図4(b)の例による説明を行う。この例では、他車位置210e、210fおよび210gがそれぞれ接近判定範囲113内にあるときに、これらの他車位置にそれぞれ対応する他車位置マーク211e、211fおよび211gの移動方向および移動距離を決定する方法を説明する。
【0042】
図4(b)の場合、自車位置110に対して自車位置マーク111が表示され、これに対して接近判定範囲113が設定されている。このとき、図4(a)で説明したのと同様の方法により、他車位置マーク211e〜211gの移動方向と移動距離を決定する。すなわち、自車位置110と他車位置210e〜210gとをそれぞれつなぐ直線を地図上に引き、その各直線をそれぞれ延長した方向を、他車位置マーク211e〜211gの移動方向とする。また、この移動方向における他車位置210e〜210gから接近判定範囲113の外周までの距離を、他車位置マーク211e〜211gの移動距離とする。このようにして、他車位置マーク211e〜211gの移動方向と移動距離を決定する。
【0043】
以上説明したようにして他車位置マーク211e〜211gの移動方向および移動距離を決定したら、ステップS90では、図4(b)に示すように移動後の他車位置210e〜210gを求めて、それらに対応する他車位置マーク211e〜211gを地図上に表示する。このようにすることで、他車位置マーク211e〜211gを元の他車位置210e〜210gからずらして表示する。この場合は図4(a)の場合とは異なり、ずらして表示された他車位置マーク211e〜211gは、自車位置マーク111と部分的に重なっていることが図4(b)から分かる。
【0044】
なお、以上説明したようにして決定される他車位置マーク211a〜211dおよび他車位置マーク211e〜211gの移動距離は、接近判定範囲112または113の大きさに応じてそれぞれ変化する。この接近判定範囲112または113の大きさは、前述のように地図の縮尺と自車位置マーク111の画面上の大きさとに基づいて設定される。したがって、他車位置マーク211a〜211dおよび他車位置マーク211e〜211gの移動距離は、地図の縮尺と自車位置マーク111の画面上の大きさとに応じて決定されるともいえる。
【0045】
なお、以上説明した他車位置マークの移動方向および移動距離の決定方法は、あくまで一例である。したがって、これ以外の方法により他車位置マークの移動方向と移動距離を決定することとしてもよい。
【0046】
以上説明したようにして他車位置マークをずらして表示すると、複数の他車位置マークをずらしたときに、それらが重なって表示されてしまう場合がある。このような場合、複数の他車位置マークを重なったまま表示することとしてもよい。あるいは、元の位置関係を反映して、そのうち一部または全部の他車位置マークをさらにずらして表示することとしてもよい。
【0047】
また、他車位置マークをずらして表示した結果、その他車位置マークが接近判定範囲の外側にある他車位置に対して表示した別の他車位置マークと同じ位置に表示されてしまうことがある。このような場合は、それぞれの他車位置マークにおける元の位置関係が分かるように、一方の他車位置マークをずらして表示することが好ましい。
【0048】
以上説明した第1の実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)自車両1の位置を検出し(ステップS10)、その自車両1の位置を示す自車位置マークを、表示モニタ106に表示されている地図上に表示する(ステップS20)。また、他車両2の位置情報を取得し(ステップS40)、取得した位置情報に基づいて他車両2の位置を特定して(ステップS50)、その他車両2の位置を示す他車位置マークを地図上に表示する(ステップS90)。このとき、自車両1と他車両2とが接近しているか否かを判定し(ステップS60)、接近していると判定された場合は、ステップS90において他車位置マークを他車両2の位置からずらして表示することとした。このようにしたので、自車両と他車両が接近している場合であっても、自車両の位置表示と他車両の位置表示が重なってしまうのを防ぐことができる。
【0049】
(2)自車両1と他車両2との位置関係に基づいて、ステップS90において他車位置マークをずらして表示するときの移動方向および移動量を決定する(ステップS80)こととした。このようにしたので、自車位置マークに対して他車位置マークを適切な位置にずらして表示することができる。
【0050】
(3)ステップS80では、自車両1の位置と他車両2の位置とをつなぐ直線を延長した方向を他車位置マークの移動方向とすることとしたので、移動方向を適切に定めることができる。
【0051】
(4)また、ステップS80では、図4(a)に示すように、自車位置マーク111と他車位置マーク211a〜211dとが重ならないように、他車位置マーク211a〜211dの移動方向および移動量を決定することができる。このようにすれば、自車両と他車両の位置関係を分かりやすく地図上に表すことができる。
【0052】
(5)さらに、ステップS80では、地図の縮尺と自車位置マークの画面上の大きさとに応じて他車位置マークの移動量を決定することとしたので、移動量を適切に定めることができる。
【0053】
(6)地図の縮尺と自車位置マークの画面上の大きさとに基づいて、ステップS60において自車両1と他車両2とが接近しているか否かを判定するための接近判定範囲を設定する(ステップS30)こととした。このようにしたので、ステップS60において自車両と他車両とが接近しているかを適切に判定することができる。
【0054】
(7)自車両1の走行道路と他車両2の走行道路が立体交差しているか否かを判定する(ステップS70)。そして、ステップS60において自車両1と他車両2とが接近していると判定された場合であっても、ステップS70において自車両1の走行道路と他車両2の走行道路が立体交差していると判定された場合は、ステップS80を実行せずにステップS90へ進むことにより、他車位置マークを他車両2の位置に合わせて表示することとした。このようにしたので、自車両の走行道路と他車両の走行道路が立体交差している場合は、自車位置マークと他車位置マークとが重なっていてもよいため、他車位置マークをずらして表示しないようにすることができる。
【0055】
(8)ステップS40では、自車両1と他車両2との間で行われる車々間通信により、他車両2の位置情報を取得することとした。このようにしたので、他車両の正確な位置情報を簡単に取得することができる。
【0056】
(9)図5に示すように、自車位置マーク111と他車位置マーク211とが重なる場合は、他車位置マーク211をずらして表示する。これにより、自車両と他車両が接近している場合であっても、自車両の位置表示と他車両の位置表示が重なってしまうのを防ぐことができる。
【0057】
−第2の実施の形態−
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。上記において説明した第1の実施の形態では、自車両と他車両とが車々間通信によって互いの位置情報を交換する例を説明した。これに対して本実施形態では、自車両と他車両が配信センターを介して互いの位置情報を交換する例について説明する。
【0058】
図6は、第2の実施の形態による車両制御システムの構成を示している。この車両制御システムでは、図1に示した第1の実施の形態による車両制御システムと同様に、自車両1にはナビゲーション装置10、車両制御装置11、通信制御装置12およびアンテナ13が備えられており、他車両2にはナビゲーション装置20、車両制御装置21、通信制御装置22およびアンテナ23が備えられている。さらにこの車両制御システムは、配信センター3を有している。
【0059】
本実施形態において、通信制御装置12は、配信センター3と無線通信を介して接続される。この無線通信には、たとえば携帯電話等の移動体通信網が用いられる。配信センター3は、全国各地を走行中の車両からそれぞれの位置情報を収集し、それを他車位置情報として各車両へと送信するサービスを行う。すなわち、通信制御装置12と配信センター3が接続されると、通信制御装置12から配信センター3へ自車位置情報が送信されると共に、配信センター3において収集された他車位置情報が通信制御装置12へ送信される。この他車位置情報は、他車両2の通信制御装置22から送信されて配信センター3により収集されたものである。
【0060】
以上説明したようにして、配信センター3から自車両1の通信制御装置12へ他車位置情報が送信されることにより、通信制御装置12において他車位置情報が取得される。同様に、配信センター3から他車両2の通信制御装置22へ自車位置情報が送信されることにより、通信制御装置22において自車位置情報が取得される。これにより、自車両1と他車両2が配信センター3を介して互いの位置情報を交換する。
【0061】
こうして通信制御装置12において他車位置情報が取得されると、通信制御装置12からナビゲーション装置10に対して他車位置情報が出力される。この他車位置情報に基づいて、ナビゲーション装置10および車両制御装置11において、第1の実施の形態で説明したのと同様の処理がそれぞれ実行される。
【0062】
なお、本実施形態においてナビゲーション装置10の制御部101により図3のフローチャートが実行される場合、ステップS40では、以上説明したようにして他車位置情報の取得を行う。すなわち、無線通信を介して接続された配信センター3から他車両2の位置情報を取得する。
【0063】
以上説明した第2の実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)ステップS40では、配信センター3から他車両2の位置情報を取得することとしたので、自車両と他車両の距離が離れており車々間通信を行うことができない場合であっても、他車両の位置情報を取得することができる。
【0064】
(2)通信制御装置12により、自車両1の位置情報を配信センター3へ送信することとしたので、配信センター3において各車両の位置情報を収集することができる。
【0065】
なお、以上説明した第1の実施の形態と第2の実施の形態とを組み合わせて用いるようにしてもよい。たとえば、自車両1と他車両2との間で車々間通信が可能な場合は、第1の実施の形態で説明したようにして車々間通信を行うことにより、自車両1と他車両2との位置情報を交換する。しかし、自車両1と他車両2とが離れており車々間通信が不可能な場合は、第2の実施の形態で説明したように、配信センター3を介して自車両1と他車両2との位置情報を交換する。このようにすれば、確実に他車位置情報を取得することができる。
【0066】
以上説明した各実施の形態では、ナビゲーション装置において地図を表示する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、様々な車載地図表示装置に適用することができる。また、以上説明した各実施の形態では、車両制御システムの例を説明したが、本発明はこれに限定されず、様々な車両用地図表示システムに適用することができる。
【0067】
以上説明した各実施の形態や各種の変形例は、あくまで一例である。したがって、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0068】
以上説明した各実施の形態では、特許請求の範囲に記載された各手段を、ナビゲーション装置10の制御部101において実行される処理によりそれぞれ実現することとした。すなわち、ナビゲーション装置10の制御部101は、地図表示制御手段、自車位置検出手段、自車位置表示制御手段、他車位置情報取得手段、他車位置特定手段、他車位置表示制御手段、接近判定手段、決定手段、設定手段および立体交差判定手段として機能することができる。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、各実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係には何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態による車両制御システムの構成図である。
【図2】ナビゲーション装置の構成図である。
【図3】自車位置マークと他車位置マークを地図上に表示する際に実行されるフローチャートである。
【図4】接近判定範囲の例を示す図である。
【図5】自車位置マークと他車位置マークが表示された地図画面の例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態による車両制御システムの構成図である。
【符号の説明】
【0070】
1:自車両 2:他車両
3:配信センター 10,20:ナビゲーション装置
11,21:車両制御装置 12,22:通信制御装置
13,23:アンテナ 101:制御部
102:振動ジャイロ 103:車速センサ
104:HDD 105:GPS受信部
106:表示モニタ 107:入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図を表示モニタに表示する地図表示制御手段と、
自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、
前記自車位置検出手段により検出された自車両の位置を示す自車位置マークを前記地図上に表示する自車位置表示制御手段と、
他車両の位置情報を取得する他車位置情報取得手段と、
前記他車位置情報取得手段により取得された他車両の位置情報に基づいて、前記他車両の位置を特定する他車位置特定手段と、
前記他車位置特定手段により特定された他車両の位置を示す他車位置マークを前記地図上に表示する他車位置表示制御手段と、
前記自車両と前記他車両とが接近しているか否かを判定する接近判定手段とを備え、
前記接近判定手段により前記自車両と前記他車両とが接近していると判定された場合、前記他車位置表示制御手段は、前記他車位置マークを前記他車両の位置からずらして表示することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載地図表示装置において、
前記自車両と前記他車両との位置関係に基づいて、前記他車位置表示制御手段により前記他車位置マークをずらして表示するときの移動方向および移動量を決定する決定手段をさらに備えることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載地図表示装置において、
前記決定手段は、前記自車両の位置と前記他車両の位置とをつなぐ直線を延長した方向を前記移動方向とすることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車載地図表示装置において、
前記決定手段は、前記自車位置マークと前記他車位置マークとが重ならないように前記移動方向および前記移動量を決定することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項5】
請求項2〜4いずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記決定手段は、前記地図の縮尺と前記自車位置マークの画面上の大きさとに応じて、前記移動量を決定することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記地図の縮尺と前記自車位置マークの画面上の大きさとに基づいて、前記接近判定手段により前記自車両と前記他車両とが接近しているか否かを判定するための接近判定範囲を設定する設定手段をさらに備えることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記自車両の走行道路と前記他車両の走行道路が立体交差しているか否かを判定する立体交差判定手段をさらに備え、
前記他車位置表示制御手段は、前記接近判定手段により前記自車両と前記他車両とが接近していると判定された場合であっても、前記立体交差判定手段により前記自車両の走行道路と前記他車両の走行道路が立体交差していると判定された場合は、前記他車位置マークを前記他車両の位置に合わせて表示することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記他車位置情報取得手段は、前記自車両と前記他車両との間で行われる車々間通信により、前記他車両の位置情報を取得することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか一項に記載の車載地図表示装置と、
前記車載地図表示装置と無線通信を介して接続される配信センターとを有し、
前記他車位置情報取得手段は、前記配信センターから前記他車両の位置情報を取得することを特徴とする車両用地図表示システム。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用地図表示システムにおいて、
前記自車両の位置情報を前記配信センターへ送信するための通信制御装置をさらに有することを特徴とする車両用地図表示システム。
【請求項11】
地図を表示モニタに表示し、その地図上に、自車両の位置を示す自車位置マークと、他車両の位置を示す他車位置マークとを表示する車載地図表示装置において、
前記自車位置マークと前記他車位置マークとが重なる場合は、前記他車位置マークをずらして表示する車載地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−185453(P2008−185453A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19204(P2007−19204)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】