説明

車載用ナビゲーション装置

【課題】目的地までの燃料消費量最小経路を探索するナビゲーション装置で燃料消費が増加する走行形態の発生回数を予測し該燃料増加量を加味し正確な燃料消費量を算出する。
【解決手段】地図データベースの経路上の各リング・ノードの距離と旅行時間から求まる旅行速度に基づき旅行速度−燃料消費率関連付けデータから燃料消費率を求め上記距離と乗算して各リンク・ノードでの予測燃料量とし各リンク・ノードの予測燃料量を用いて目的地までの総予測燃料量が少ない経路を探索するナビゲーション手段、発進回数推定部により推定された各リンク・ノードの通過時の発進回数と1回の発進時の追加燃料量の積から発進用追加燃料量を算出する発進用追加燃料量算出手段を設けて、ナビゲーション手段が各リンク又はノードの予測燃料量を求める際、算出された発進用追加燃料量を予測燃料量に加算する加算手段をさらに備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現在地から目的地までの燃料消費量が最小の経路を探索する経路探索機能を有した車載用ナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在地から目的地までの走行経路を出発する前に探索し、目的地までの走行中は、音声案内や画面表示によってドライバに走行経路を案内する車載用ナビゲーション装置が広く普及している。
【0003】
これらの車載用ナビゲーション装置を利用して目的地までの経路を探索する場合、走行距離を優先した経路探索(最短距離探索)や、走行時間を優先した経路探索(最短時間探索)による方法が一般的である。
【0004】
また、下記特許文献1には、移動速度に応じた燃費情報を用いることによって燃料消費量が最も少なくて済む経路を探索する車載用ナビゲーション装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−172582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術によると、データベースにあるリンク長を旅行時間で割って求めた平均車速に基づいて、燃費センサから求めた車速と燃費(燃料消費率)の関連付けデータを参照することにより、リンク区間で消費する燃料量を算出する方法を用いている。しかしながら、特許文献1の技術では、平均車速から求める燃料消費量はおおよそ巡航走行時の結果であって、通常の運転下で頻繁に繰り返されて、より多くの燃料を消費する発進時や加速時等の走行形態に対しての考慮が成されていない。つまり、例えば、平均車速40km/hで定速走行する場合と、加減速を繰り返した結果、平均車速が40km/hになる場合とでは、同じ平均車速であっても、後者の方が車両を加速させるために多くの燃料を消費することから分かる通り、単純にリンク区間の平均車速を用いて燃料消費量を算出しても、実際に走行した際の燃料消費量と大きくかけ離れた結果になってしまう。
【0007】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、目的地までの燃料消費量が最小の経路を探索する経路探索機能に関し、燃料消費が増加する走行形態の発生回数を予測し、これに係わる消費燃料の増加量を加味することによって、より正確な燃料消費量を算出することのできる車載用ナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、経路探索に要するデータを格納する地図データベースの経路上の各リング又はノードの距離と旅行時間から求まる旅行速度に基づき、情報記録手段に格納された旅行速度−燃料消費率関連付けデータから燃料消費率を求め前記距離と乗算して各リンク又はノードでの予測燃料量とし、前記各リンク又はノードの予測燃料量を用いて目的地までの総予測燃料量が少ない少なくとも1つの経路を探索するナビゲーション手段を備えた車載用ナビゲーション装置において、前記情報記録手段が、1度の発進に必要な単位発進時追加燃料量をさらに格納し、発進回数推定部により推定された前記各リンク又はノードを通過する際の発進回数と前記単位発進時追加燃料量から発進用追加燃料量を算出する発進用追加燃料量算出手段をさらに備え、前記ナビゲーション手段が、各リンク又はノードの予測燃料量を求める際に、前記発進用追加燃料量算出手段にて算出された発進用追加燃料量を前記予測燃料量に加算する加算手段をさらに備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置にある。
【発明の効果】
【0009】
この発明では、燃料消費が増加する走行形態の発生回数を予測し、これに係わる消費燃料の増加量を加味することによって、より正確な燃料消費量を算出することのできる車載用ナビゲーション装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明に係わる車載用ナビゲーション装置の構成を示す図である。図1において、操作部1は、ドライバが車載用ナビゲーション装置を操作するためのスイッチである。地図データベース2は、地図情報データ等の経路探索に必要なデータを収めている。GPSレシーバ3は、GPS(Global Positioning System)衛星からの測位のための電波を受信する。VICS情報レシーバ4は、VICS(Vehicle Information and Communication System)情報を送受信するためのもので、光ビーコンや電波ビーコン、さらにはFM多重受信アンテナ、更にはVICS情報提供サービスに対応可能な機能(無線のインターネット機能)に相当する。
【0011】
演算部5は、現在地から目的地までの燃料消費量が少ない経路の探索処理を行う(ナビゲーション手段を含む)。表示部6は、演算部5で探索した目的地までの経路を表示する。音声出力部7は、演算部5で探索した経路に従って走行する際に、進行方向を音声で知らせる。車両情報入出力部8は、車両と通信線等(図示省略)によって接続され、自車速度、燃料消費量、走行距離等の車両情報を受信する。情報記録部(情報記録手段)9は、例えば車両情報入出力部8により得た車両情報に基づいて、走行中の自車速度と実際に消費した燃料量を関連付けて演算部5で演算して得られる、該車載用ナビゲーション装置が搭載された車両の後述する図5に示すような旅行速度−燃料消費率関連付けデータを初め、ナビゲーションに必要な各種データを記録、格納している。
【0012】
図2に演算部5で実行される処理の動作フロチャートを示し、以下これに従って動作を説明する。最初にGPSレシーバ3を介して自車の現在位置を取得する(ステップS1)。次に、目的地の設定を行う(ステップS2)。その際、ドライバは表示部6に表示されている地図画面を見ながら操作部1を操作して直接目的地を選択する方法の他にも、操作部1を操作して、目的地の住所や電話番号等の情報を入力することによって目的地を選択する方法も広く用いられている。また、立ち寄る経由地点がある場合には、目的地の他に経由地の入力を行うこともできる。
【0013】
続いて、目的地及び経由地が決定すると、VICS情報の取得を行う(ステップS3)。VICS情報とは、VICSセンター(図示省略)からVICS情報レシーバ4やインターネットを介して送られてくる全国の高速道路や主要一般道の最新の道路交通情報であり、常時情報を得ることができる。
【0014】
続いて、図3に従って後述する目的地までの燃料消費量が少ない経路の探索処理が実行される(ステップS4)。目的地までの経路探索が完了した後、探索した経路の全容が表示部6に表示される(ステップS5)。この時、燃料消費量が最小の経路だけを表示するだけではなく、同様に燃料消費が少ない経路を複数表示させる方法もある。それによってドライバは複数の情報から任意の経路を選択することができるので利便性が増すことになる。操作部1の操作によって、ドライバが最終的に希望の経路を選択すると(ステップS6)、表示部6の画面表示や音声出力部7からの音声による経路誘導が開始する(ステップS7)。
【0015】
図3には図2のステップS4の経路探索で実行される処理の動作フロチャートを示す。この発明の経路探索手法にはダイクストラ法が用いられる。ダイクストラ法はグラフ理論におけるアルゴリズムの一つで、最短経路問題を解く代表的手法である。この手法により、現在地から目的地までの通過コストが最小となる経路を探索する。ちなみに、この発明における通過コストは燃料消費量を用いて計算する。尚、ダイクストラ法については広く知られているため、この明細書では詳細を省略する。
【0016】
ステップS4の経路探索が実行されると、リンク及びノード通過時の燃料消費量の計算が開始される(ステップS41)。この処理は目的地に到達するまでの全てのリンク及びノードに対して繰り返し実行される(ステップS42)。目的地に到達すると、後述するようにして各リンク又はノードに対して求めた追加燃料量で補正した予測燃料量を経路に沿って積算して総予測燃料量を求めながら、ステップS43にて経路の取り出しを開始する。その場合、目的地から出発地に向けて辿ることによって取り出しを行う。先に述べた通り、ドライバに任意の経路を選択させる観点からも、経路は総予測燃料量の少ない上位数本を取り出すほうが望ましい。取り出された経路は地図データベース2や付設のメモリ(図示省略)に格納する(Sステップ44)。尚、リンクは経路上の道路、ノードは交差点、曲がり角、インタチェンジ、ゲート等を示す。
【0017】
次に、ステップS41にて実行するリンクコスト及びノードコストの算出方法について述べる。図4はこの実施の形態におけるコスト算出方法を説明するための機能ブロック図である。旅行速度演算部10,乗算部12,加算手段である加算部13はナビゲーション手段の一部であり、発進回数推定部14,乗算部16は発進用追加燃料量算出手段を形成し、これらは演算部5で構成される。旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9a,単位発進時追加燃料量9bは情報記録部9に格納されている。
【0018】
以後、リンクコスト算出について説明する。地図データベース2には地図描画に用いるデータの他に、経路計算や経路誘導に用いられるデータも格納されており、経路計算用データには、全ての経路のリンクやノードに関連付けられたデータが格納されている。
【0019】
演算部5のナビゲーション手段は最初に、旅行速度演算部10が地図データベース2のリンクの距離情報と旅行時間情報を参照する。そして参照した距離を旅行時間で割って旅行速度を求める。ここで、VICS情報レシーバ4からリアルタイムのリンク旅行時間情報を入手することが可能ならば、前記旅行時間の代わりに用いることによって、より高い精度で旅行速度を求めることができる。更には、VICS情報レシーバ4から渋滞情報(渋滞/混雑/順調に分類された情報)が得られる場合、渋滞度と道路種別から旅行速度が大枠で決められているので、この速度情報を併用するようにしてもよい。
【0020】
続いて、自車速と実際に消費した実燃料量の関連を示す旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9aから、旅行速度で走行した場合の燃料消費率を導出する。図5に旅行速度−燃料消費率関連付けデータをグラフ化した一例を示す。横軸には巡航時の自車速度である旅行速度(km/h)を示し、縦軸にはその旅行速度で走行した時の燃料消費率(cc/km)を示す。例えば、時速30km/hで巡航走行した場合、燃料消費率は約70cc/kmになる。
【0021】
図5はグラフを簡略化して説明しているが、通常、ドライバの運転の仕方や交通流動の違い等に起因して、同等の走行速度(旅行速度)であっても燃料消費率が大きくばらつくことがあり得る。従って、その場合は近似値を求めることによって図5の関係結果を得ることができる。
【0022】
尚、当該車載用ナビゲーション装置では、取り付ける車両の排気量や車重等の条件が不定であることを考慮しているため、車両情報入出力部8を介して車両側から車速、燃料消費量、走行距離を収集する必要があるが、取り付け車両が固定しており、尚且つ燃料消費の特性が事前に判明している場合には、予め旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9aを格納しておくことで、車両情報入出力部8を介さなくても可能である。続いて、乗算部12では、先に求めた燃料消費率(cc/km)とリンク距離(km)を乗算する。これによってリンクの距離を走行する場合の予測燃料量(cc)を求めることができる。
【0023】
一方、発進回数推定部14では、VICS情報レシーバ4を介して受信する渋滞情報(渋滞/混雑/順調)に基づいて、リンク区間を通過する際の発進回数を推定する。例えば、VICSの渋滞情報(交通情報)では、一般道路が渋滞している場合、そのリンクの旅行速度は10km/h以下であると規定されている。この場合、停止と発進が繰り返されることが容易に推測できる。その場合、発進回数推定部14では、例えば、1kmあたりの発進回数を15回と推定する。尚、前記渋滞度別に規定された車速(旅行速度)は、道路種別によっても異なるため、それぞれに応じて発進回数を推定する必要がある。そこで例えば、各道路種別毎の渋滞度別の単位距離あたりの発進回数を示すテーブル(交通情報−消費燃料増加・減少走行形態回数テーブル)を情報記録部9に予め格納しおき、VICSの渋滞情報を得たときに該テーブルから発進回数を推定する。
【0024】
また、この発進回数は、走行試験や実環境調査等により統計を取ることによって、その精度を高めることができる。更に、VICS情報には渋滞情報のほかに、交通障害情報や交通規制情報があるので、これらの情報も加味して発進回数を推定するとより望ましい。因みに、VICS情報は全国の全ての道路を網羅している訳ではない。従って、VICS情報が得られないリンクで発進回数を予測する場合には、例えば、1リンクあたり2回、1kmあたり2回、1ノード中に1回、右左折する際に1回、など実地調査や統計によるデータを予め求めて格納し用いることによって対応が可能になる。
【0025】
単位発進時追加燃料量9bは、情報記録部9に格納された車両を発進させる際に消費する燃料量である。例えば1回の発進時に5ccの燃料を余分に消費する場合に、これが該当する。乗算部16では発進回数推定部14で推定する発進回数と、発進時の単位発進時追加燃料量9bを乗算することによって、リンク区間中の発進に関わる発進用追加燃料量を求めることができる。最後に、加算部13にて予測燃料量に発進用追加燃料量を加算する。これによって車両発進時の燃料増加分を考慮した、リンク又はノード通過時の燃料消費量をより正確に求めることができる。従って、この実施の形態1にて説明したリンクコスト又はノードコスト算出方法を用いることによって、発進における燃料増加量を予測燃料量に加えることによって、リンク又はノード通過時の燃料消費量をより正確に求めることができるので、燃料消費が最小となる経路の探索精度を高めることができる。
【0026】
実施の形態2.
実施の形態1では、多量の燃料を消費する走行形態の1つである発進時のリンク又はノード通過時の燃料消費量をより正確に求める方法について説明を行った。実施の形態2では同様に多くの燃料を消費するもう1つの走行形態である巡航走行からの加速の際の燃料消費量をより正確に求める方法について説明する。尚、演算部5で実行される処理ステップにおいて、図3のステップS41の内部処理以外の部分に関しては基本的に実施の形態1で説明したものと同じであり、説明は省略する。
【0027】
図6に図4に対応する実施の形態2におけるリンク(ノード)コスト算出方法を説明するための機能ブロック図を示す。地図データベース2の距離データ及び旅行時間データを用いて、予測燃料量を算出する旅行速度演算部10,旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9a,乗算部12までの処理は実施の形態1で説明した通りである。
【0028】
加速回数推定部17はVICS情報レシーバ4から取得する渋滞情報に基づいて、リンク区間を通過する際の加速回数を推定する。例えば、VICSの渋滞情報では、高速道路が渋滞している場合、そのリンクの旅行速度は40km/h以下で走行しているものと規定されている。その場合、加速回数推定部17では、例えば、1kmあたりの加速回数を20回と推定する。尚、前記渋滞度別に規定された車速は、道路種別によっても異なるため、それぞれに応じて加速回数を推定する必要がある。そこで例えば、各道路種別毎の渋滞度別の単位距離あたりの加速回数を示すテーブル(交通情報−消費燃料増加・減少走行形態回数テーブル)を情報記録部9に予め格納しおき、VICSの渋滞情報を得たときに該テーブルから加速回数を推定する。
【0029】
また、この加速回数は、走行試験や実環境調査等により統計を取ることによって、その精度を高めることができる。更に、VICS情報には渋滞情報のほかに、交通障害情報や交通規制情報があるので、これらの情報も加味して加速回数を推定するとより望ましい。また、実施の形態1同様、VICS情報が得られないリンクで加速回数を予測する場合、例えば、旅行速度演算部10で求めた旅行速度に応じて、速度別に加速回数を推定する方法であったり、1リンクあたり10回、1kmあたり5回、1ノード中に1回、右左折する際に2回、など実地調査や統計によるデータを用いることによっても対応が可能になる。
【0030】
単位加速時追加燃料量9cは、情報記録部9に格納された車両を加速させる際に消費する燃料量である。図7は1回の加速時の速度増加量に対する追加燃料量(単位加速時追加燃料量)の関係を示した図である。例えば加速時に40km/h速度が増加する場合は約4ccの燃料を余分に消費することを示す。乗算部16では加速回数推定部17で推定する加速回数と、加速時の単位加速時追加燃料量9cを乗算することによって、リンク区間中の加速に関わる加速用追加燃料量を求めることができる。最後に、実施の形態1同様、加算部13で予測燃料量に加速用追加燃料量を加算する。これによって車両加速時の燃料増加量を考慮した、リンク又はノード通過時の燃料消費量をより正確に求めることができる。
【0031】
従って、この実施の形態2にて説明したリンクコスト又はノードコスト算出方法を用いることによって、巡航走行からの加速における燃料増加量を予測燃料量に加えることによって、リンク又はノード通過時の燃料消費量をより正確に求めることができるので、燃料消費が最小となる経路の探索精度を高めることができる。
【0032】
なお、旅行速度演算部10,乗算部12,加算手段である加算部13はナビゲーション手段の一部であり、加速回数推定部17,乗算部16は加速用追加燃料量算出手段を形成し、これらは演算部5で構成される。旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9a,単位加速時追加燃料量9cは情報記録部9に格納されている。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態2では、多量の燃料を消費する走行形態の1つである加速時のリンク又はノード通過時の燃料消費量をより正確に求める方法について説明を行った。実施の形態3では旅行速度が極低速になった場合の燃料消費量を、より正確に求める方法について説明する。尚、演算部5で実行される処理ステップにおいて、図3のステップS41の内部処理以外の部分に関しては基本的に実施の形態1、2で既に説明したものと同じであり、説明は省略する。
【0034】
図8に図4に対応する実施の形態3におけるリンク(ノード)コスト算出方法を説明するための機能ブロック図を示す。地図データベース2の距離データ及び旅行時間データを用いて、第1の予測燃料量を算出する旅行速度演算部10,旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9a,乗算部12の第1の予測燃料量を算出するまでの処理は実施の形態1で説明した通りである。
【0035】
図9は、実施の形態1でも説明した自車速と実燃料量を関連付ける旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9aを示す。旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9aからは、自車の走行において、旅行速度が低くなるほど、多量の燃料を消費することが伺える。しかし、自車が極めて低速(例えば10km/h以下)で走行する場合、ドライバはアイドリング状態のまま車両を前進させるクリープ走行を特に多用している。従って、旅行速度が極低速となる場合に、旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9aの値又はその近似値を用いてしまうと、実際にクリープ走行で消費する燃料量に比べて、予測燃料量のほうが遥かに多い燃料量になってしまう。
【0036】
アイドル時間9eは、一時記憶部(図示省略)又は情報記録部9に一時記憶された、リンクを通過する旅行時間中はアイドリング状態であると仮定して、VICS情報のひとつであるリンクを通過するリンク旅行時間(ノードコスト算出の場合はノード旅行時間)である。尚、VICS情報が得られないリンクの場合は、地図データベース2から旅行時間を参照してアイドル時間とする。単位アイドル時燃料量9dは、情報記録部9に格納されたアイドリング中の単位時間当たりの燃料消費量である。乗算部16では旅行時間であるアイドル時間9eと単位アイドル時燃料量9dを乗算して第2の予測燃料量を求める。
【0037】
ナビゲーション手段では、乗算部12からの第1の予測燃料量と乗算部16からの第21の予測燃料量のいづれか一方の結果を出力する切替手段である切替スイッチ21を備える。切替スイッチ21は、旅行速度演算部10で求めた旅行速度に基づいて切り替えが行われ、例えば10km/h以上の場合は第1の予測燃料量を出力し、10km/h未満の場合には第2の予測燃料量を出力するようにする。これによって、求まる旅行速度が極低速になる場合は、クリープ走行を多用すると判断し、アイドリング時の燃料消費量である単位アイドル時燃料量9dに基づく第2の予測燃料量よりリンク中の予測燃料量を求める。一方、旅行速度が極低速にない場合は、旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9aに基づく第1の予測燃料量から予測燃料を求める。
【0038】
従って、旅行速度が所定の速度閾値を下回るような極低速の走行状態である場合、車両はクリープ走行に近い状態で走行していると判断できるので、単位時間あたりのアイドリングによる燃料消費量と旅行時間から、リンク又はノードの通過時の燃料消費量をより正確に求めることができるので、燃料消費が最小となる経路の探索精度を高めることができる。
【0039】
なお、旅行速度演算部10,乗算部12,切替手段である切替スイッチ21はナビゲーション手段の一部であり、乗算部16は第2の予測燃料量算出手段を形成し、これらは演算部5で構成される。旅行速度−燃料消費率関連付けデータ9a,単位アイドル時燃料量9dは情報記録部9に格納され、アイドル時間9eは情報記録部9に一時記憶される。
【0040】
なお、この発明は上記各実施の形態に係わらず、これらの可能な組み合わせ等も含むことは云うまでもない。
【0041】
特に上記実施の形態1,2では、消費燃料増加走行形態としてそれぞれ発進、加速を例に挙げているがその他の消費燃料増加走行形態で実施してもよく、さらに複数の消費燃料増加走行形態に関して並行処理を行って複合的な追加燃料量(総和追加燃料量)を求めるようにしてもよい。また逆に、消費燃料を減少させることに関し、特に渋滞情報が順調の際に生じる一定速運転等の消費燃料減少走行形態に関し、同様にして発生回数と単位減少燃料量の積算から減少燃料量を求めて、予測燃料量から減算するようにしてもよい。またさらに、消費燃料増加走行形態と消費燃料減少走行形態を並行処理して、追加・減少燃料量を求めるようにしてもよい。
【0042】
これらをまとめると、各消費燃料増加・減少走行形態に関しそれぞれに、単位追加・減少燃料量及び交通情報−消費燃料増加・減少走行形態回数テーブルを情報記録部9に格納しておき、例えば図4において、発進回数推定部14を消費燃料増加・減少走行形態回数推定部(手段)としてそれぞれの走行形態毎に発生回数を求め、乗算部16でそれぞれの単位追加・減少燃料量(9bに相当)と積算して追加・減少燃料量を求める。そして増加走行形態だけの場合には加算部13で追加燃料量を予測燃料量に加算する。減少走行形態だけの場合は加算部13を減算部として減少燃料量を予測燃料量から減算する。
【0043】
増加走行形態と減少走行形態を並行処理する場合には、加算部13を加減算を行う演算部として予測燃料量にそれぞれ追加燃料量の加算、減少燃料量の減算を行う。なお、乗算部16の出力側に新たに減算部(図示なし)を設けて追加燃料量から減少燃料量を減算して調整した追加燃料量を求め(減少燃料量が大きい場合にはマイナス値となる)、これを加算部13で予測燃料量に加算してもよい。図4の14に相当する消費燃料増加・減少走行形態回数推定部、乗算部16が消費燃料増加・減少走行形態用追加・減少燃料量算出手段を構成することになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明に係わる車載用ナビゲーション装置の構成を示す図である。
【図2】図1の演算部で実行される処理の動作フロチャートである。
【図3】図2のステップS4の経路探索で実行される処理の動作フロチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1におけるコスト算出方法を説明するための機能ブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1における旅行速度−燃料消費率関連付けデータをグラフ化した一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2におけるコスト算出方法を説明するための機能ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2における1回の加速時の速度増加量に対する追加燃料量(単位加速時追加燃料量)の関係を示した図である。
【図8】この発明の実施の形態3におけるコスト算出方法を説明するための機能ブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態3におけるクリープ走行時の燃料消費率を説明するための旅行速度−燃料消費率関連付けデータをグラフ化した一例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 操作部、2 地図データベース、3 GPSレシーバ、4 VICS情報レシーバ、5 演算部、6 表示部、7 音声出力部、8 車両情報入出力部、9 情報記録部、9a 旅行速度−燃料消費率関連付けデータ、9b 単位発進時追加燃料量、9c 単位加速時追加燃料量、9d 単位アイドル時燃料量、9e アイドル時間、10 旅行速度演算部、12 乗算部、13 加算部、14 発進回数推定部、16 乗算部、17 加速回数推定部、21 切替スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路探索に要するデータを格納する地図データベースの経路上の各リング又はノードの距離と旅行時間から求まる旅行速度に基づき、情報記録手段に格納された旅行速度−燃料消費率関連付けデータから燃料消費率を求め前記距離と乗算して各リンク又はノードでの予測燃料量とし、前記各リンク又はノードの予測燃料量を用いて目的地までの総予測燃料量が少ない少なくとも1つの経路を探索するナビゲーション手段を備えた車載用ナビゲーション装置において、
前記情報記録手段が、1度の発進に必要な単位発進時追加燃料量をさらに格納し、
発進回数推定部により推定された前記各リンク又はノードを通過する際の発進回数と前記単位発進時追加燃料量から発進用追加燃料量を算出する発進用追加燃料量算出手段をさらに備え、
前記ナビゲーション手段が、各リンク又はノードの予測燃料量を求める際に、前記発進用追加燃料量算出手段にて算出された発進用追加燃料量を前記予測燃料量に加算する加算手段をさらに備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
経路探索に要するデータを格納する地図データベースの経路上の各リング又はノードの距離と旅行時間から求まる旅行速度に基づき、情報記録手段に格納された旅行速度−燃料消費率関連付けデータから燃料消費率を求め前記距離と乗算して各リンク又はノードでの予測燃料量とし、前記各リンク又はノードの予測燃料量を用いて目的地までの総予測燃料量が少ない少なくとも1つの経路を探索するナビゲーション手段を備えた車載用ナビゲーション装置において、
前記情報記録手段が、1度の加速に必要な単位加速時追加燃料量をさらに格納し、
加速回数推定部により推定された前記各リンク又はノードを通過する際の加速回数と前記単位加速時追加燃料量から加速用追加燃料量を算出する加速用追加燃料量算出手段をさらに備え、
前記ナビゲーション手段が、各リンク又はノードの予測燃料量を求める際に、前記加速用追加燃料量算出手段にて算出された加速用追加燃料量を前記予測燃料量に加算する加算手段をさらに備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
経路探索に要するデータを格納する地図データベースの経路上の各リング又はノードの距離と旅行時間から求まる旅行速度に基づき、情報記録手段に格納された旅行速度−燃料消費率関連付けデータから燃料消費率を求め前記距離と乗算して各リンク又はノードでの第1の予測燃料量とする第1の予測燃料量算出手段を有し、前記各リンク又はノードの第1の予測燃料量を予測燃料量としこれらを用いて目的地までの総予測燃料量が少ない少なくとも1つの経路を探索するナビゲーション手段を備えた車載用ナビゲーション装置において、
前記情報記録手段が、単位時間あたりのアイドリングによる燃料消費量である単位アイドル時燃料量をさらに格納し、また、前記リンク又はノードを通過する旅行時間をアイドル時間として一時記憶し、
前記アイドル時間と単位アイドル時燃料量から、前記リンク又はノードを通過する旅行時間中はアイドリング状態と仮定した場合の各リンク又はノードのアイドリング状態での第2の予測燃料量を算出する第2の予測燃料量算出手段と、
をさらに備え、
前記ナビゲーション手段が、前記第1及び第2の予測燃料量を旅行速度に応じて切り替える切替手段を含み、前記旅行速度が所定の速度閾値を下回る場合に、前記第2の予測燃料量燃算手段によって求めた第2の予測燃料量を前記リンク又はノード通過時の予測燃料量とすることを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
経路探索に要するデータを格納する地図データベースの経路上の各リング又はノードの距離と旅行時間から求まる旅行速度に基づき、情報記録手段に格納された旅行速度−燃料消費率関連付けデータから燃料消費率を求め前記距離と乗算して各リンク又はノードでの予測燃料量とし、前記各リンク又はノードの予測燃料量を積算し目的地までの総予測燃料量が少ない少なくとも1つの経路を探索するナビゲーション手段を備えた車載用ナビゲーション装置において、
前記情報記録手段が、1度の消費燃料増加・減少走行形態に関する単位追加・減少燃料量をさらに格納し、
消費燃料増加・減少走行形態回数推定部により推定された前記各リンク又はノードを通過する際の消費燃料増加・減少走行形態発生回数と前記単位追加・減少燃料量から消費燃料増加・減少走行形態用追加・減少燃料量を算出する消費燃料増加・減少走行形態用追加・減少燃料量算出手段をさらに備え、
前記ナビゲーション手段が、各リンク又はノードの予測燃料量を求める際に、前記消費燃料増加・減少走行形態用追加・減少燃料量算出手段にて算出された消費燃料増加・減少走行形態用追加・減少燃料量を前記予測燃料量に加算又は減算する演算手段をさらに備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−14424(P2010−14424A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172284(P2008−172284)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】