説明

車間距離制御装置

【課題】自車両が被牽引車両を牽引する場合に安全な制動距離を確保することができると共に、走行安定性を高めることができる車間距離制御装置を提供すること。
【解決手段】自車両と先行車両との車間距離を制御する車間距離制御装置10において、自車両が被牽引車両を牽引しているか否かを判定する判定手段12と、自車両と先行車両との目標車間距離を判定手段12の判定結果に応じて決定する車間距離決定手段14と、自車両の目標加減速度を判定手段12の判定結果に応じて決定する加減速度決定手段16と、目標車間距離及び目標加減速度に基づいて自車両を制御する制御手段18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両と先行車両との車間距離を制御する車間距離制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両と先行車両との車間距離を制御する車間距離制御装置において、自車両と先行車両との目標車間距離を自車両の重量に応じて決定し、決定した目標車間距離に基づいて自車両を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この車間距離制御装置は、自車両の重量(被牽引車両の重量を含む)に比例して先行車両との目標車間距離を長くすることで、安全な制動距離を確保するものである。
【特許文献1】特表2004−505844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1記載の車間距離制御装置では、自車両が被牽引車両を牽引している場合に、先行車両が急に減速すると、車間距離を保つため自車両が急に減速することがある。これにより、自車両と被牽引車両とを回動可能に連結する連結部分に負荷がかかるので、連結部分を中心として自車両と被牽引車両とが「く」の字状に折れ曲がる場合も考えられる。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、自車両が被牽引車両を牽引する場合に安全な制動距離を確保することができると共に、走行安定性を高めることができる車間距離制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、自車両と先行車両との車間距離を制御する車間距離制御装置において、
前記自車両が被牽引車両を牽引しているか否かを判定する判定手段と、
前記自車両と前記先行車両との目標車間距離を前記判定手段の判定結果に応じて決定する車間距離決定手段と、
前記自車両の目標加減速度を前記判定手段の判定結果に応じて決定する加減速度決定手段と、
前記目標車間距離及び前記目標加減速度に基づいて前記自車両を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車両が被牽引車両を牽引する場合に安全な制動距離を確保することができると共に、走行安定性を高めることができる車間距離制御装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0008】
図1は、本発明の一実施例の車間距離制御装置のシステム構成を示すブロック図である。車間距離制御装置10は、自車両と先行車両との車間距離を制御するものであって、電子制御ユニット(以下、「車間距離制御ECU」と称す)で構成される。車間距離制御ECU10は、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されている。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0009】
車間距離制御ECU10は、ACC(Adaptive Cruise Control)システムの一部である。ACCシステムは、運転支援システムの一つであって、先行車両が存在する場合に自車両と先行車両との車間距離を制御する車間距離制御等を実行する。
【0010】
車間距離制御ECU10には、図1に示すように、車載ネットワークを介して、情報取得装置20と、走行駆動装置30と、制動装置40とが接続されている。車間距離制御ECU10は、情報取得装置20から必要な情報を入力し、車間距離や加減速度等を演算して、走行駆動装置30や制動装置40へ制御信号を出力する。
【0011】
情報取得装置20は、自車両や自車両周辺の情報を取得するスイッチやセンサである。例えば、情報取得装置20は、コントロールスイッチ22、車間距離センサ24と、連結センサ26とを備える。
【0012】
コントロールスイッチ22は、車室内に設けられ、運転者が操作可能な位置、好ましくは、運転者が手を伸ばすだけで操作できるような位置に配置される。例えば、コントロールスイッチ22は、ステアリングホイールの周辺に配置される。
【0013】
コントロールスイッチ22は、メインスイッチと、サブスイッチと、車間距離切り替えスイッチとを含み構成される。メインスイッチは、ACCシステムの状態を待機状態とオフ状態との間で切り替えるためのものである。サブスイッチは、車間距離制御を開始、一時解除するためのものである。車間距離切り替えスイッチは、車間距離制御時における目標車間距離を多段階(例えば、「短モード」、「中モード」、「長モード」の3段階)で切り替えるためのものである。
【0014】
車間距離制御ECU10は、コントロールスイッチ22からの出力信号に基づいて、運転者が車間距離制御を必要としているか否かを判別すると共に、車間距離制御時での目標車間距離のモードを設定する。
【0015】
車間距離センサ24は、先行車両の有無や先行車両との車間距離及び相対速度を検出する装置である。例えば、車間距離センサ24は、ミリ波レーダやレーザレーダ、超音波センサ等で構成され、自車両前方の所定範囲(例えば自車両前方100m以内の範囲)に電波等を送信し、その反射波を受信することで、先行車両の有無や先行車両との車間距離及び相対速度を検出する。車間距離センサ24は、例えば自車両のフロントバンパに設けられる。
【0016】
連結センサ26は、自車両に被牽引車両が連結された場合にオン信号を出力し、それ以外の場合にオフ状態を維持する。連結センサ26は、例えば自車両の連結部分に設けられる。
【0017】
走行駆動装置30は、自車両を車両前後方向に移動させる装置である。例えば、走行駆動装置30は、エンジンと、変速機とを含み構成される。尚、本実施例の走行駆動装置30は、エンジンを含み構成され、燃料を燃焼することで駆動力を発現するが、エンジンの代わりに(又はエンジンに加えて)、モータを含み構成されてもよい。
【0018】
制動装置40は、自車両を制動させる装置である。制動装置40は、ディスクブレーキやドラムブレーキで構成され、油圧や空気圧等により摩擦体を車輪と共に回転する回転体に押し当てることで制動力を発現する。また、制動装置40は、リターダ、排気ブレーキ等の補助ブレーキを備えてもよい。リターダは、車輪と共に回転する回転子の周囲に磁場を形成することで制動力を発現する電磁式であってもよいし、変速機に取り付けられ流体の抵抗により制動力を発現する流体式であってもよい。また、排気ブレーキは、排気バルブを閉じエンジン内の排気を抑制することで制動力を発現する。尚、制動装置40は、自車両のみならず、被牽引車両にも取り付けられてもよい。
【0019】
車間距離制御ECU10は、図1に示すように、連結判定部(判定手段)12と、目標車間距離決定部(車間距離決定手段)14と、目標加減速度決定部(減速度決定手段)16と、走行制御部(制御手段)18とを備える。車間距離制御ECU10は、各部12〜18に対応する制御プログラムをROM等に格納し、各制御プログラムをCPUに実行処理させることにより、各部12〜18が有する機能を実現する。
【0020】
連結判定部12は、連結スイッチ26からの出力信号に基づいて、自車両が被牽引車両を牽引しているか否かを判定する。連結判定部12は、自車両が被牽引車両を牽引していると判定すると、自車両が被牽引車両を牽引していることを意味する牽引フラグを設定する。
【0021】
目標車間距離決定部14は、コントロールスイッチ22(車間距離切り替えスイッチ)からの出力信号に基づいて、自車両と先行車両との目標車間距離を多段階(例えば、「短モード」、「中モード」、「長モード」の3段階)で切り替える。各モードに対応する目標車間距離は、ROM等に予め記憶されている。目標車間距離は、自車両の走行状態(例えば車速)や自車両の周辺環境(例えば先行車との相対速度)に応じて補正されてもよい。
【0022】
また、目標車間距離決定部14は、牽引フラグが設定されている場合、実際の車間距離が短くなることを抑制するように目標車間距離を決定する。例えば、目標車間距離決定部14は、牽引フラグが設定されている場合、コントロールスイッチ22からの出力信号に関わらず目標車間距離のモードを強制的に「長モード」(即ち、目標車間距離が最も長いモード)に設定し、ROM等に予め記憶された「長モード」に対応する目標車間距離を読み出す。また、目標車間距離決定部14は、コントロールスイッチ22からの出力信号が「短モード」を示すものである場合には目標車間距離のモードを「中モード」に設定し、コントロールスイッチ22からの出力信号が「中モード」を示すものである場合には目標車間距離のモードを「長モード」に設定し、ROM等に予め記憶された各モードに対応する目標車間距離を読み出してもよい。
【0023】
このように、本実施例の車間距離制御ECU10は、牽引フラグが設定されている場合、実際の車間距離が短くなることを抑制するように目標車間距離を決定するので、後述するように目標減速度に上限値を設けるような場合であっても、安全な制動距離を確保することができる。
【0024】
目標加減速度決定部16は、車間距離センサ24からの出力信号に基づいて実際の車間距離を算出し、実際の車間距離と目標車間距離との偏差に応じて自車両の目標加減速度を決定する。目標加減速度は、自車両の走行状態(例えば車速)や自車両の周辺環境(例えば先行車との相対速度)に応じて補正されてもよい。
【0025】
また、目標加減速度決定部16は、牽引フラグが設定されている場合、自車両が急減速することを抑制するように目標加減速度を決定する。例えば、目標加減速度決定部16は、牽引フラグが設定されている場合、目標減速度の絶対値に上限値を設ける。上限値は、安全な制動距離を確保できるように最適化され、ROM等に予め記憶されている。
【0026】
仮に、目標減速度の絶対値に上限値を設けない場合、先行車両が急減速すると、車間距離を保つため自車両が急減速するので、自車両と被牽引車両とを回動可能に連結する連結部分に負荷がかかる。よって、連結部分を中心として自車両と被牽引車両とが「く」の字状に折れ曲がる場合も考えられる。
【0027】
一方で、本実施例の車間距離制御ECU10は、牽引フラグが設定されている場合、自車両が急減速することを抑制するように目標加減速度を決定するので、先行車両が急減速しても自車両が急減速することを抑制することができ、連結部分にかかる負荷を抑制することができる。これにより、連結部分を中心として自車両と被牽引車両とが「く」の字状に折れ曲がることを抑制することができ、走行安定性を高めることができる。
【0028】
尚、本実施例の目標加減速度決定部16は、牽引フラグが設定されている場合、自車両が急減速することを抑制するように目標加減速度を決定するが、これに加えて、自車両が急加速することを抑制するように目標加減速度を決定してもよい。例えば、目標加速度の絶対値に上限値を設けてもよい。これにより、自車両が急加速した直後に減速することで連結部分にかかる負荷を抑制することができ、連結部分を中心として自車両と被牽引車両とが「く」の字状に折れ曲がることを抑制することができる。
【0029】
走行制御部18は、目標車間距離決定部14及び目標加減速度決定部16により決定された目標車間距離及び目標加減速度に基づいて自車両の走行を制御する。即ち、走行制御部18は、実際の車間距離や加減速度が目標車間距離や目標加減速度に一致するように、走行駆動装置30や制動装置40の出力を制御する。
【0030】
走行駆動装置30の出力の制御は、エンジンのスロットルモータ制御や点火時期制御等により行われる。制動装置40の出力の制御は、油圧ポンプの出力制御や空気圧バルブの開閉制御等により行われる。
【0031】
図2は、車間距離制御ECU10により実現される処理の一例を示すフローチャートである。図2の処理は、例えば、運転者が車間距離制御の開始スイッチを押してから、終了スイッチを押すまで、或いは運転者がブレーキペダルを踏み込むまで、所定時間毎に行われる。
【0032】
車間距離制御ECU10は、最初に、車間距離センサ24からの出力信号に基づいて、自車両前方に先行車両が存在するか否かを判定する(S100)。先行車両が存在しない場合(S100、NO)、車間距離制御を行う必要がないので、今回の処理を終了する。一方、先行車両が存在する場合(S100、YES)、連結判定部12が、自車両が被牽引車両を牽引しているか否かを判定する(S102)。
【0033】
自車両が被牽引車両を牽引している場合(S102、YES)、目標車間距離決定部14が、コントロールスイッチ22からの出力信号に関わらず目標車間距離のモードを「長モード」に設定し(S104)、ROM等に予め記憶された「長モード」に対応する目標車間距離を読み出す。
【0034】
続いて、目標加減速度決定部16が、実際の車間距離と目標車間距離との偏差に応じて目標加減速度を算出するが、目標減速度の絶対値に上限値を設ける(S106)。
【0035】
最後に、走行制御部18が目標車間距離及び目標加減速度に基づいて車間距離制御を行い(S108)、今回の処理を終了する。
【0036】
一方、自車両が被牽引車両を牽引していない場合(S102、NO)、通常の車間距離制御を行い(S110)、今回の処理を終了する。
【0037】
S110の処理では、コントロールスイッチ22からの出力信号に応じて目標車間距離のモードを設定しROM等に予め記憶された各モードに対応する目標車間距離を読み出し、実際の車間距離と目標車間距離との偏差に応じて目標減速度を算出する。
【0038】
以上説明したように、本実施例の車間距離制御装置10によれば、自車両が被牽引車両を牽引している場合に、実際の車間距離が短くなることを抑制するように目標車間距離を決定すると共に、自車両が急減速することを抑制するように目標加減速度を決定する。従って、自車両が被牽引車両を牽引する場合に安全な制動距離を確保することができると共に、走行安定性を高めることができる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例の車間距離制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】車間距離制御ECU10により実現される処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
10 車間距離制御ECU
12 連結判定部(判定手段)
14 目標車間距離決定部(車間距離決定手段)
16 目標加減速度決定部(加減速度決定手段)
18 走行制御部(制御手段)
20 情報取得装置
22 コントロールスイッチ
24 車間距離センサ
26 連結センサ
30 走行駆動装置
40 制動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と先行車両との車間距離を制御する車間距離制御装置において、
前記自車両が被牽引車両を牽引しているか否かを判定する判定手段と、
前記自車両と前記先行車両との目標車間距離を前記判定手段の判定結果に応じて決定する車間距離決定手段と、
前記自車両の目標加減速度を前記判定手段の判定結果に応じて決定する加減速度決定手段と、
前記目標車間距離及び前記目標加減速度に基づいて前記自車両を制御する制御手段とを備える車間距離制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−111179(P2010−111179A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283532(P2008−283532)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】