説明

近接露光装置及び異物検出方法並びに基板の製造方法

【課題】使用環境に影響されることなく基板上の異物を高精度で検出することができる近接露光装置を提供する。
【解決手段】基板保持部21の搬送方向に並んで配置され、基板保持部21に保持された基板Wの表面に沿ってレーザービームLB1、LB2を出射する出射部80a、81aと、レーザービームを受光する受光部80b、81bと、をそれぞれ有する2つの異物検出器80、81と、2つの異物検出器80、81の各受光部80b、81bが受光する前記レーザービームLB1、LB2の検出信号を比例演算部83aによって増幅し、さらに、差分演算部83bによって、2つの増幅した前記レーザービームLB1、LB2の検出信号の差分を算出し、異物82の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接露光装置及び異物検出方法並びに基板の製造方法に関し、より詳細には、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイ等の大型のフラットパネルディスプレイを製造する場合に用いられる近接露光装置及び異物検出方法並びに基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネル等の大型のフラットディスプレイパネルのカラーフィルタ等を製造する近接露光装置は、高圧水銀灯等の光源から出射された光を、マスクを介して被露光材としての基板に照射し、マスクに描かれたマスクパターンを基板に露光転写する。
【0003】
基板に露光転写されるパターンは、極めて微細なパターンであるので、露光転写される基板上に埃や塵等の異物が付着していると、カラーフィルタ等の性能が損なわれ、高価な基板素材が無駄となって経済的損失が大きい。基板上に付着する異物等を検出可能な基板処理装置としては、複数の検出センサから照射されるレーザー光を、それぞれ異なる位置で絞ることにより、検出限界精度を向上させると共に、有効検出範囲を複数の検出センサで分担して、広い範囲を検査するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、露光転写を繰り返し行うと、光源からの熱によりマスクが熱膨張してマスクのパターンを基板に露光転写する際の倍率誤差が発生し、寸法精度やパターンのピッチ精度が損なわれる問題がある。近接露光装置で生じるこのような倍率誤差の補正は、投影型露光装置で行われている光学系での倍率変更方法とは異なり、基板またはマスクの寸法を直接変更することが最も有効な方法である。基板またはマスクの寸法変更は、基板またはマスクを加熱または冷却させて熱変形させることにより実現可能である。しかし、一般にマスクは熱膨張率の小さな材料から形成されるため熱による補正がし難い。一方、基板は、比較的熱膨張率が大きなガラスが利用されるので、基板の温度を制御することによって倍率誤差の補正が可能となる。
【0005】
基板保持部に保持された基板の温度を制御して露光する露光方法として、基板保持部内に熱媒体である冷却水を通過させて基板の温度上昇を抑制し、これにより寸法精度やパターンのピッチ精度の向上を図る露光方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載の露光方法は、基板保持部面内での温度のバラツキを抑制するため、冷却水の経路を多系統化して1系統当たりの経路長さを短くし、各経路の注入部と出口の温度差を少なくして温度分布ムラの低減を図ったり、或いは、経路の注入部側と出口側とを常に隣接させて配置し、注入部側の低温と出口側の高温とを相殺させて温度を平均化している。
【0006】
また、マスクの温度をマスク温度センサで検出し、マスクの熱変形により生じた倍率誤差成分を補正するように電熱装置によって基板保持部を加熱するようにした近接露光装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−85773号公報
【特許文献2】特開2000−98618号公報
【特許文献3】特開2006−78673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、レーザー透過式の異物検出センサは、レーザーの伝達媒体(空気)の流れや温度差によって検出信号が影響を受ける。例えば、レーザービームの光路に伝達媒体の流れがあると、光路が変化して受光量に影響を及ぼし、検出信号にノイズ信号が重畳されてしまい検出精度が低下する問題がある。このため、検出精度を維持するには、伝達媒体の流れや温度変化のない安定した環境での使用に限定されるという問題がある。特許文献1に開示されている基板処理装置は、レーザー光を絞ることにより検出精度や分解能の低下防止を図っているが、上記問題は解決されておらず、ノイズ信号を低減させてS/N比を高めることが求められる。
【0009】
また、大型サイズの基板に複数のパターンを逐次露光する近接露光装置において、マスクの熱変形により生じた倍率誤差を補正するため、基板保持部(基板)を各ショットに対応するエリアごとに異なる温度に制御して、ショットごとに異なる倍率補正を行うことが最も効果的である。しかしながら、特許文献2に記載の露光方法は、基板保持部を複数のエリアに分割し、冷却水を並列に流してエリア間の温度むらを少なくするものであり、基板保持部全体の温度を一括して設定する構成であり、エリアごとに異なる温度に制御し、ショットごとに異なる倍率補正を行うことについては何ら考慮されていなかった。
【0010】
また、特許文献3に記載の近接露光装置においても、基板保持部を複数のエリアに分割してショットごとに個別に温度調整することに関する記載もない。従って、基板全体を一括して倍率誤差を補正することは可能であるが、分割されたエリアごとに異なる倍率補正を行うことはできない。また、倍率誤差は、露光転写された基板のパターンから直接測定された誤差ではなく、測定されたマスクの温度から推定した推定値であり、倍率誤差の推定値は必ずしも精度が高いものではなく、改善の余地があった。
【0011】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用環境に影響されることなく基板上の異物を高精度で検出することができる近接露光装置及び異物検出方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、基板保持部をエリアごとに個別に温度調整して、マスクのパターンを基板に露光転写する際のマスクの熱膨張による倍率誤差を、エリアごとに細かく補正することができる近接露光装置及び基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 基板を保持する基板保持部と、前記基板と対向するようにマスクを保持するマスク保持部と、前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系と、を備え、前記基板に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光装置であって、
前記基板保持部の搬送方向に並んで配置され、前記基板保持部に保持された前記基板の表面に沿ってレーザービームを出射する出射部と、該レーザービームを受光する受光部と、をそれぞれ有する2つの異物検出器と、
前記2つの異物検出器の各受光部が受光する前記レーザービームの検出信号を増幅する比例演算部と、
前記基板上の異物の有無を判定するため、前記2つの増幅した前記レーザービームの検出信号の差分を算出する差分演算部と、
を備えることを特徴とする近接露光装置。
(2) (1)に記載の近接露光装置を用いた異物検出方法であって、
前記2つの異物検出器を用いて、搬送される基板の表面に沿って出射された各レーザービームをそれぞれ受光して、2つの検出信号を取り出す工程と、
前記2つの検出信号を増幅するための比例演算する工程と、
前記2つの検出信号の差分を算出するための差分演算する工程と、
を備え、前記差分に基づく検出波形から前記基板上の異物の有無を判定することを特徴とする異物検出方法。
基板を保持する基板保持部と、前記基板と対向するようにマスクを保持するマスク保持部と、
前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系と、を備え、前記基板に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光装置であって、
前記基板保持部に設けられ、熱媒体を通過させる複数の熱媒体流路と、
前記複数の熱媒体流路の入口側及び出口側に設けられて前記熱媒体の入口温度及び出口温度を検出する複数の温度センサと、
前記複数の熱媒体流路に設けられて前記熱媒体流路を通過する前記熱媒体の流量を制御する流量調整機構と、
前記複数の熱媒体流路の入口側に設けられて前記熱媒体を加熱する複数の加熱装置と、
前記複数の熱媒体流路の各出口から環流する前記熱媒体をまとめて冷却し、前記複数の熱媒体流路の各入口に送出する1台のチラーと、
前記チラーの吐出口に設けた前記熱媒体の圧力を一定にする蓄圧器と、
前記パターンが露光転写された前記基板の検査結果に基づいて、前記マスクのパターンを前記基板に露光転写する際の倍率誤差を算出する倍率誤差演算部と、
前記倍率誤差を補正するための前記基板保持部の補正温度を算出する補正温度演算部と、
前記加熱装置を制御し、前記熱媒体を介して前記基板保持部の温度を前記補正温度に調整する温度制御部と、を備えることを特徴とする近接露光装置。
(4) 前記近接露光装置は、前記基板保持部と前記マスク保持部とを相対的にステップ移動しながら、前記基板に前記マスクのパターンを露光転写し、
前記複数の熱媒体流路は、前記マスクが前記基板保持部と対向するステップ位置ごとに形成されることを特徴とする(3)に記載の近接露光装置。
(5) 前記熱媒体流路は、前記基板保持部内で互いに連通する格子状に形成され、
前記流量調整機構は、前記複数の熱媒体流路の入口側及び出口側に配設されることを特徴とする(3)または(4)に記載の近接露光装置。
(6) (3)〜(5)のいずれかに記載の近接露光装置を備えた基板の製造方法であって、
前記複数の温度センサにより前記複数の熱媒体流路の各熱媒体の入口温度及び出口温度を検出する工程と、
前記パターンが露光転写された前記基板の検査結果に基づいて、前記マスクのパターンを前記基板に露光転写する際の倍率誤差を算出する工程と、
前記算出された倍率誤差に基づいて前記基板保持部の補正温度を算出する工程と、
前記複数の温度センサにより検出される前記熱媒体の温度に基づいて前記加熱装置が前記熱媒体を加熱すると共に、前記流量調整機構が前記熱媒体の流量を制御し、前記基板保持部の温度を前記補正温度に調整して、前記倍率誤差を補正する工程と、
を備えることを特徴とする基板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の近接露光装置及び異物検出方法によれば、複数の異物検出器で検出される検出信号を増幅してから、その差分を算出するようにしたので、算出結果から異物の有無を判定することができ、検出信号に重畳されるノイズ信号を相殺してS/N比を高め、異物を高精度で検出することができる。
【0014】
また、本発明の近接露光装置及び基板の製造方法によれば、パターンが露光転写された基板を直接検査して倍率誤差を求め、該倍率誤差に基づいて基板保持部(基板)の補正温度を算出するので、倍率誤差及びこれに基づいて決定された補正温度が、高い精度で求められる。また、基板保持部に設けられた複数の熱媒体流路中を通過する熱媒体の温度及び流量をエリアごとに個別に調整して、基板保持部の任意位置の温度をそれぞれの補正温度に調整するようにしたので、倍率誤差を高精度で補正して露光転写を高い精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る分割逐次近接露光装置を説明するための一部分解斜視図である。
【図2】図1に示す分割逐次近接露光装置の正面図である。
【図3】マスクステージの断面図である。
【図4】(a)は一対の異物検出器が配設された分割逐次近接露光装置の平面図(b)は基板に付着した異物とレーザービームの位置関係を示す側面図である。
【図5】(a)は異物検出用のセンサによって検出された検出波形、(b)はバックグラウンド用のセンサによって検出された検出波形、(c)は異物検出用のセンサ及びバックグラウンド用のセンサによって検出された両検出信号の差分の波形である。
【図6】第1実施形態の変形例に係る、異物検出器が配置される位置を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る分割逐次近接露光装置の基板保持部に配置された熱媒体流路及び温度調整装置の構成図である。
【図8】倍率誤差を補正する温度調整装置の構成図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る分割逐次近接露光装置の基板保持部に配置された熱媒体流路及び温度調整装置の構成図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る分割逐次近接露光装置の基板保持部に配置された熱媒体流路及び温度調整装置の構成図である。
【図11】図10の基板保持部が補正温度に制御される状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る近接露光装置の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の分割逐次近接露光装置PEは、マスクMを保持するマスクステージ10と、ガラス基板(被露光材)Wを保持する基板ステージ20と、図2に示すようにパターン露光用の光を照射する照明光学系70と、を備えている。
【0018】
なお、ガラス基板W(以下、単に「基板W」と称する。)は、マスクMに対向配置されており、このマスクMに描かれたマスクパターンを露光転写すべく表面(マスクMの対向面側)にレジストが塗布されている。
【0019】
マスクステージ10は、中央部に矩形形状の開口11aが形成されるマスクステージベース11と、マスクステージベース11の開口11aにX軸,Y軸,θ方向に移動可能に装着されるマスク保持部であるマスク保持枠12と、マスクステージベース11の上面に設けられ、マスク保持枠12をX軸,Y軸,θ方向に移動させて、マスクMの位置を調整するマスク駆動機構16と、を備える。
【0020】
マスクステージベース11は、装置ベース50上に立設される支柱51、及び支柱51の上端部に設けられるZ軸移動装置52によりZ軸方向に移動可能に支持され(図2参照。)、基板ステージ20の上方に配置される。
【0021】
図3に示すように、マスクステージベース11の開口11aの周縁部の上面には、平面ベアリング13が複数箇所配置されており、マスク保持枠12は、その上端外周縁部に設けられるフランジ12aを平面ベアリング13に載置している。これにより、マスク保持枠12は、マスクステージベース11の開口11aに所定のすき間を介して挿入されるので、このすき間分だけX軸,Y軸,θ方向に移動可能となる。
【0022】
また、マスク保持枠12の下面には、マスクMを保持するチャック部14が間座15を介して固定されている。このチャック部14には、マスクMのマスクパターンが描かれていない周縁部を吸着するための複数の吸引ノズル14aが開設されており、マスクMは、吸引ノズル14aを介して図示しない真空式吸着装置によりチャック部14に着脱自在に保持される。また、チャック部14は、マスク保持枠12と共にマスクステージベース11に対してX軸,Y軸,θ方向に移動可能である。
【0023】
マスク駆動機構16は、マスク保持枠12のX軸方向に沿う一辺に取り付けられる2台のY軸方向駆動装置16yと、マスク保持枠12のY軸方向に沿う一辺に取り付けられる1台のX軸方向駆動装置16xと、を備える。
【0024】
Y軸方向駆動装置16yは、マスクステージベース11上に設置され、Y軸方向に伸縮するロッド16bを有する駆動用アクチュエータ(例えば、電動アクチュエータ等)16aと、ロッド16bの先端にピン支持機構16cを介して連結されるスライダ16dと、マスク保持枠12のX軸方向に沿う辺部に取り付けられ、スライダ16dを移動可能に取り付ける案内レール16eと、を備える。なお、X軸方向駆動装置16xも、Y軸方向駆動装置16yと同様の構成を有する。
【0025】
そして、マスク駆動機構16では、1台のX軸方向駆動装置16xを駆動させることによりマスク保持枠12をX軸方向に移動させ、2台のY軸方向駆動装置16yを同等に駆動させることによりマスク保持枠12をY軸方向に移動させる。また、2台のY軸方向駆動装置16yのどちらか一方を駆動することによりマスク保持枠12をθ方向に移動(Z軸回りの回転)させる。
【0026】
さらに、マスクステージベース11の上面には、図1に示すように、マスクMと基板Wとの対向面間のギャップを測定するギャップセンサ17と、チャック部14に保持されるマスクMの取り付け位置を確認するためのアライメントカメラ18と、が設けられる。これらギャップセンサ17及びアライメントカメラ18は、移動機構19を介してX軸,Y軸方向に移動可能に保持され、マスク保持枠12内に配置される。
【0027】
また、マスク保持枠12上には、図1に示すように、マスクステージベース11の開口11aのX軸方向の両端部に、マスクMの両端部を必要に応じて遮蔽するアパーチャブレード38が設けられる。このアパーチャブレード38は、モータ、ボールねじ、及びリニアガイド等からなるアパーチャブレード駆動機構39によりX軸方向に移動可能とされて、マスクMの両端部の遮蔽面積を調整する。なお、アパーチャブレード38は、開口11aのX軸方向の両端部だけでなく、開口11aのY軸方向の両端部に同様に設けられている。
【0028】
基板ステージ20は、図1及び図2に示すように、基板Wを保持する基板保持部21と、基板保持部21を装置ベース50に対してX軸,Y軸,Z軸方向に移動する基板駆動機構22と、を備える。基板保持部21は、図示しない真空吸着機構によって基板Wを着脱自在に保持する。基板駆動機構22は、基板保持部21の下方に、Y軸テーブル23、Y軸送り機構24、X軸テーブル25、X軸送り機構26、及びZ−チルト調整機構27と、を備える。
【0029】
Y軸送り機構24は、図2に示すように、リニアガイド28と送り駆動機構29とを備えて構成され、Y軸テーブル23の裏面に取り付けられたスライダ30が、装置ベース50上に延びる2本の案内レール31に転動体(図示せず)を介して跨架されると共に、モータ32とボールねじ装置33とによってY軸テーブル23を案内レール31に沿って駆動する。
【0030】
なお、X軸送り機構26もY軸送り機構24と同様の構成を有し、X軸テーブル25をY軸テーブル23に対してX方向に駆動する。また、Z−チルト調整機構27は、くさび状の移動体34,35と送り駆動機構36とを組み合わせてなる可動くさび機構をX方向の一端側に1台、他端側に2台配置することで構成される。なお、送り駆動機構29,36は、モータとボールねじ装置とを組み合わせた構成であってもよく、固定子と可動子とを有するリニアモータであってもよい。また、Z-チルト調整機構27の設置数は任意である。
【0031】
これにより、基板駆動機構22は、基板保持部21をX方向及びY方向に送り駆動するとともに、マスクMと基板Wとの対向面間のギャップを微調整するように、基板保持部21をZ軸方向に微動且つチルト調整する。
【0032】
また、装置ベース50は、マスク保持枠12の下方の露光位置EPに対してY方向に延設されており、このY方向に延設された装置ベース50上に2本の案内レール31とボールねじ装置33がY方向に延びて設けられている。従って、基板駆動機構22のY軸送り機構24は、基板WにマスクMのパターンを露光転写する露光位置EPと、基板保持部21に基板Wを着脱するための待機位置WPとの間で、基板保持部21をY方向に移動させる。
【0033】
基板保持部21のX方向側部とY方向側部にはそれぞれバーミラー61,62が取り付けられ、また、装置ベース50のY方向端部とX方向端部には、計3台のレーザー干渉計63,64,65が設けられている。これにより、レーザー干渉計63,64,65からレーザー光をバーミラー61,62に照射し、バーミラー61,62により反射されたレーザー光を受光して、レーザー光とバーミラー61,62により反射されたレーザー光との干渉を測定して基板ステージ20の位置を検出する。
【0034】
図2に示すように、照明光学系70は、発光部としての超高圧水銀ランプ71と、このランプ71から発生された光に指向性をもたせて射出する反射鏡72と、ランプ71から射出された光束が入射されるインテグレータ73と、インテグレータ73の出射面から出射された光路の向きを変える平面鏡75と、コリメーションミラー76と、インテグレータ74と平面鏡75の間に配置されて照射された光を透過・遮断するように開閉制御する露光制御用シャッター74と、を備える。
【0035】
このような露光装置PEにおいて、図3に示すように、基板ステージ20上に載置された基板Wと、マスク保持枠12に保持された、マスクパターンPを有するマスクMとが、これらの対向面間のギャップgを例えば100μm程度の隙間に調整されて近接対向配置される。そして、光源部73からの露光用の光が、インテグレータ74で集光され、平面鏡75及びコリメーションミラー76で反射されて所定のコリメーション角を持った平面光とされてマスクMに入射する。そして、マスクMを透過した露光用の光は、基板Wの表面に塗布された感光性樹脂を感光させてマスクMのマスクパターンPが基板Wに露光転写される。
【0036】
ここで、図4に示すように、待機位置WPと露光位置EPとの間には、第1異物検出器80及び第2異物検出器81が平行に配置されている。第1異物検出器80は異物検出用の検出器として機能し、第2異物検出器81はバックグラウンド用の検出器として機能する。
【0037】
それぞれの異物検出器80,81は、基板保持部21の移動領域を挟んで両側に配置された出射部80a,81a及び受光部80b,81bを備え、出射部80a,81aから照射したレーザービームLB1、LB2を、受光部80b,81bでそれぞれ受光する。出射部80a,81aからのレーザービームLB1、LB2は、基板保持部21に保持された基板Wの表面に沿って照射される。また、第1及び第2異物検出器80,81から照射されるレーザービームLB1、LB2の間隔dは、検出が想定される異物82のサイズより大きい間隔に設定されている。
【0038】
これにより、異物82は、2本のレーザービームLB1、LB2を同時に遮断することはない。即ち、第1及び第2異物検出器80,81が異物82を同時に検出することがないように設計されている。また、第1及び第2異物検出器80,81の位置関係は、空気の流れや周囲温度が同じになるように、接近した位置に配置することが望ましい。これによって、両異物検出器80,81のノイズ信号を同じレベルにすることができる。
【0039】
さらに、第1及び第2異物検出器80,81の受光部80b,81bには、2つの異物検出器80,81の各受光部80b,81bが受光するレーザービームLB1,LB2の検出信号の差分を算出する演算部83が接続され、演算部83には、各受光部80b、81bの検出信号や、演算部83の処理結果を出力する出力部84が接続されている。なお、演算部83は、A/Dコンバータを用いてデジタル処理が行われてもよいし、アナログ処理が行われてもよい。
【0040】
図4に示すように、基板Wを保持する基板保持部21が待機位置WPから露光位置EP方向に矢印A方向に移動すると、基板W上に付着している異物82は、先ず第1異物検出器80のレーザービームLB1を遮断する。この第1異物検出器80の検出値の微分値波形は、図5(a)に示すように、大きなピークの異物検出信号86に、レーザーの伝達媒
体(空気)の流れや温度差によるノイズ信号87が重畳された波形となる。このとき、第2異物検出器81のレーザービームLB2は、異物82によって遮断されていないので、図5(b)に示すように、レーザーの伝達媒体(空気)の流れや温度差によるノイズ信号87だけが検出された波形となる。
【0041】
ここで、比例演算部83aによって第1異物検出器80による検出信号と第2異物検出器81による検出信号を増幅し、差分演算部83bによって第1異物検出器80による検出信号と、第2異物検出器81による検出信号と差分を求めると、図5(c)に示すように、ノイズ信号87が相殺されて異物検出信号86だけが残ったS/N比の高い検出波形が得られる。これにより、レーザービームLBの伝達媒体の流れや温度変化等、異物検出器80,81の使用環境に影響されることなく、精度よく異物82を検出することができる。
【0042】
上記したように、本実施形態の近接露光装置によれば、複数の異物検出器で検出される検出信号を増幅してからその差分を算出するようにしたので、算出結果から異物の有無を判定することができ、検出信号に重畳されるノイズ信号を相殺してS/N比を高め、異物を高精度で検出することができる。なお、演算部83は、閾値を設定して、閾値以上の差分値が出力された時に、異物有りと判定するようにしてもよい。
【0043】
なお、図6に示すように、近接露光装置では、基板ステージ20の基板保持部21は待機位置WPから1ショット目の露光位置EPへ直線的にX及びY方向に移動せず、Y方向にのみ所定の距離移動した(矢印a)後に、X,Y方向に移動する(矢印b)。このため、各異物検出器80,81は、タクトタイムに影響を及ぼさないように、Y方向にのみ移動させる位置の範囲近傍に配置されている。また、2組の異物検出器80,81の出射部80a,81aと受光部80b,81bのいずれか(本実施形態では、受光部80b,81b)を配置する位置は、待機位置WP近傍で、基板Wを搬送、搬出するために移動するワークローダーWLが干渉しないように配置される。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る近接露光装置を図7及び図8を参照して説明する。図7に示すように、第2実施形態の基板保持部21には、4系統の熱媒体流路91A,91B,91C,91Dが並列接続されて設けられている。また、基板保持部21は、例えば、ステップ露光する際、各露光ステップでマスクMが基板保持部21と対向する各ステップ位置に対応する4つの露光エリア21A、21B、21C、21Dに区画されており、4系統の熱媒体流路91A,91B,91C,91Dは、露光エリア21A、21B、21C、21Dごとに独立して配置されている。これにより、基板保持部21の各露光エリア21A、21B、21C、21Dは独立して温度制御することが可能である。また、熱媒体流路91A,91B,91C,91Dは、各露光エリア21A、21B、21C、21Dの略全体に亘ってそれぞれ形成されており、各露光エリア21A、21B、21C、21Dの温度がそれぞれ均一になるように配慮されている。
【0045】
各熱媒体流路91A,91B,91C,91Dの上流側(入口)には、それぞれ加熱装置92A,92B,92C,92D、及び入口温度センサ93A,93B,93C,93Dが設けられ、下流側(出口)にはそれぞれ出口温度センサ94A,94B,94C,94D、及び流量調整機構95A,95B,95C,95Dが設けられる。
【0046】
熱媒体流路91A,91B,91C,91Dの各入口は、供給パイプ97によって1本に統合されて、チラー(循環冷却装置)96の吐出口96aに接続されている。また、熱媒体流路91A,91B,91C,91Dの各出口は、1本の返送パイプ98に統合されてチラー96の吸込口96bに接続されている。
【0047】
チラー96は、基板保持部21に設定される温度より低い、所定の温度まで冷却した冷却水等の熱媒体を、吐出口96aから供給パイプ97を介して各熱媒体流路91A,91B,91C,91Dの各入口に送出して各熱媒体流路91A,91B,91C,91D内を還流させ、各熱媒体流路91A,91B,91C,91Dの各出口から返送される熱媒体をまとめて、返送パイプ98を介して吸込口96bから取り込んで、循環させる。
また、熱媒体は吐出口96aに設けた蓄圧器99によって圧力を一定にしチラー96から供給させる。
【0048】
入口温度センサ93A,93B,93C,93Dは、供給される熱媒体の入口温度を測定し、また、加熱装置92A,92B,92C,92Dは、互いに独立して制御可能な電気ヒータ等からなり、入口温度センサ93A,93B,93C,93Dによって測定される温度に基づいてチラー96から供給される熱媒体を所定の温度(例えば、基板保持部21の設定温度)まで個別に加熱する。
【0049】
出口温度センサ94A,94B,94C,94Dは熱媒体の出口温度を測定し、また、流量調整機構95A,95B,95C,95Dは、流量制御弁等からなり、内蔵する弁機構(図示せず)を開閉して各熱媒体流路91A,91B,91C,91Dを流れる熱媒体の流量を調整する。
【0050】
また、各熱媒体流路91A,91B,91C,91D、各加熱装置92A,92B,92C,92D、各入口温度センサ93A,93B,93C,93D、各出口温度センサ94A,94B,94C,94D、及び各流量調整機構95A,95B,95C,95Dは、直列に接続されている。
【0051】
尚、図7中、熱媒体流路91Bに代表して示すように、入口側と出口側の流路を接続する流量調整機構95Fが配置されてもよく、この流量調整機構95Fは、後述する第3実施形態のものと同様の動作及び機能を有する。また、この場合には、流量調整機構95Bを設けずに流量調整機構95Fのみが配置されてもよい。さらに、このような流量調整機構95Fは、残りの熱媒体流路91A,91C,91Dにも設けることができる。
【0052】
図8に示すように、制御装置101は、倍率誤差演算部102と、補正温度演算部103と、温度制御部104と、メモリ105とを備える。倍率誤差演算部102は、露光転写された基板Wのパターンを検査する検査装置106から入力される検査データと、メモリ105が記憶している基準パターンデータとに基づいて、熱膨張しているマスクMが基板Wに露光転写する際に生じた倍率誤差を算出する。
【0053】
補正温度演算部103は、倍率誤差演算部102によって求められた倍率誤差を補正するように、マスクMの熱膨張量と同じ熱膨張量で基板保持部21(基板W)を熱膨張させる温度を、補正温度として算出する。
【0054】
また、温度制御部104は、入口温度センサ93A,93B,93C,93Dから入力される熱媒体の入口温度信号に基づいて、加熱装置92A,92B,92C,92Dを制御し、基板保持部21の各露光エリア21A、21B、21C、21Dの温度が補正温度となるように必要な熱量を発生させる。
【0055】
次に本実施形態の近接露光装置PEの動作について説明する。まず、マスクMを介した照射光によってマスクパターンが露光転写された基板Wのパターンを検査装置106で検査してパターンの検査データを得る。次いで、倍率誤差演算部102が、検査装置106からの検査データと、メモリ105が記憶している基準パターンデータとに基づいて、熱膨張しているマスクMが基板Wに露光転写する際の倍率誤差を算出する。補正温度演算部103は、マスクMの熱膨張量と同じ熱膨張量で基板保持部21(基板W)を熱膨張させて倍率誤差を補正することができる補正温度を算出し、温度制御部104に伝達する。
【0056】
温度制御部104は、この補正温度に基づいて基板保持部21(基板W)の温度が補正温度となるように制御する。例えば、露光エリア21Aに配設された熱媒体流路91Aの補正温度が24℃である場合、図7に示すように、チラー96によって補正温度より低い温度、例えば20℃に冷却された熱媒体が、吐出口96aから供給パイプ97を介して熱媒体流路91Aに供給される。
【0057】
このとき、熱媒体流路91Aの入口側に設けられた加熱装置92Aは、入口温度センサ93Aによって測定される熱媒体の入口温度が補正温度(24℃)となるように加熱制御される。この加熱装置92Aの加熱制御は、P制御、PID制御等、フィードバック制御が行われて高い精度し応答性を有する制御であることが望ましい。
【0058】
補正温度(24℃)に加熱された熱媒体は、各熱媒体流路91A中を循環して、基板保持部21の露光エリア21Aを補正温度(24℃)にした後、各熱媒体流路91Aの出口から返送パイプ98を介して吸込口96bからチラー96に返送される。
【0059】
このとき、熱媒体の出口温度は、出口温度センサ94Aによって測定されており、入口温度センサ93Aによって測定された入口温度と比較される。入口温度と出口温度との差が大きい場合は、温度差が大きい熱媒体流路91A内を流れている熱媒体の流量が小さいと判断され、対応する流量調整機構95Aが、内蔵する弁機構(図示せず)を開いて熱媒体の流量を調整する。なお、上述した温度制御は、露光エリア21Aの他、各露光エリア21B,21C,21Dにおいても同様に行われる。
【0060】
そして、返送パイプ98を介してチラー96に返送された略24℃の熱媒体は、チラー96によって再び補正温度より低い温度(20℃)に冷却され、吐出口96aから供給パイプ97を介して各熱媒体流路91A,91B,91C,91Dに供給される。このように、熱媒体は、必ずチラー96によって補正温度(24℃)より低い温度(20℃)に冷却されて熱媒体流路91A,91B,91C,91Dに供給され、加熱装置92A,92B,92C,92Dによって補正温度まで加熱されて各熱媒体流路91A,91B,91C,91Dに供給されるので、熱媒体流路91A,91B,91C,91Dごとに異なる補正温度の熱媒体が要求されても容易に対応することができ、基板保持部21の温度を高い精度で所定の温度(補正温度)に管理することができる。
【0061】
また、各熱媒体流路91A,91B,91C,91Dは、基板保持部21の各露光エリア21A、21B、21C、21Dに対応するように独立して配置されており、更に、加熱装置92A,92B,92C,92D、入口温度センサ93A,93B,93C,93D、及び出口温度センサ94A,94B,94C,94Dも、それぞれ各熱媒体流路91A,91B,91C,91Dごとに独立して配設されているので、それぞれの露光エリア21A、21B、21C、21Dの温度を個別に温度管理することができる。これによって、各露光エリア21A、21B、21C、21Dごと(ショットごと)に異なる倍率誤差の補正が可能となる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る近接露光装置について図9を参照して説明する。図9に示すように、第3実施形態の近接露光装置PEは、バイパス91E,91F,91G,91Hが、並列に配置された4系統の熱媒体流路91A,91B,91C,91Dからそれぞれ分岐して並列接続されて設けられている。各バイパス91E,91F,91G,91Hには、流量調整機構95E,95F,95G,95Hが配設されている。それ以外の部分は、本発明の第2実施形態の近接露光装置PEと同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。また、図8に示す制御機構も同様である。
【0063】
本実施形態の近接露光装置PEでの基板保持部21の温度制御も第2実施形態の近接露光装置PEと同様に行われるが、出口温度センサ94A,94B,94C,94Dによって測定される熱媒体の出口温度が、設定された上限値を越えていると、上限値を越えた熱媒体流路91A,91B,91C,91Dに対応するバイパス91E,91F,91G,91Hの流量調整機構95E,95F,95G,95Hの弁機構が作動して弁開度を閉じ、対応する熱媒体流路91A,91B,91C,91Dを流れる熱媒体の流量を増加させて基板保持部21の対応部分を補正温度に維持する。
【0064】
一方、出口温度センサ94A,94B,94C,94Dによって測定される熱媒体の出口温度が、設定された下限値以下になっていると、下限値以下となっている熱媒体流路91A,91B,91C,91Dに対応する流量調整機構95E,95F,95G,95Hの弁機構が作動して弁開度を開き、対応する熱媒体流路91A,91B,91C,91Dを流れる熱媒体の流量を減少させて基板保持部21の対応部分を補正温度まで上昇させる。
【0065】
また、各熱媒体流路91A,91B,91C,91Dに、図示しない流量計を配置して熱媒体の流量を検出するようにすれば、熱媒体流路91A,91B,91C,91Dの測定流量が流量上限値を超えている場合、流量上限値を超えている熱媒体流路91A,91B,91C,91Dに接続されるバイパス91E,91F,91G,91Hの流量調整機構95E,95F,95G,95Hの弁機構を作動させて弁開度を開き、熱媒体流路91A,91B,91C,91Dを流れる熱媒体の流量を減少させることもできる。これにより、想定以上の流速の熱媒体によって発生する振動に起因して生じる露光精度の悪化が防止される。
【0066】
その他の作用及び効果は、第2実施形態の近接露光装置と同様であるので説明を省略する。尚、本実施形態においても、熱媒体流路91A,91B,91C,91Dに設けられた流量調整機構95A,95B,95C,95Dと、熱媒体流路91A,91B,91C,91Dに対応するバイパス91E,91F,91G,91Hの流量調整機構95E,95F,95G,95Hとは、各流路91A,91B,91C,91Dに対して少なくとも一つ配置されればよく、いずれか一つ配置されてもよい。
【0067】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る近接露光装置について図10及び図11を参照して説明する。図10に示すように、第4実施形態の近接露光装置PEは、基板保持部21内を図中左右方向に貫通して配設された4本の入口側熱媒体流路91a,91b,91c,91dと、図中上下方向に貫通して配設された3本の出口側熱媒体流路91e,91f,91gと、を備える。4本の入口側熱媒体流路91a,91b,91c,91dと、3本の出口側熱媒体流路91e,91f,91gとは、図中の各熱媒体流路の交点において互いに連通して、格子状に形成されている。
【0068】
4本の入口側熱媒体流路91a,91b,91c,91dの両端には、それぞれ流量調整機構95a1〜95d1、95a2〜95d2、加熱装置92a1〜92d1、92a2〜92d2、及び入口温度センサ93a1〜93d1、93a2〜93d2が配設され、供給パイプ97を介してチラー96の吐出口96aに接続されている。また、3本の出口側熱媒体流路91e,91f,91gの両端には、それぞれ出口温度センサ93e1〜93g1、93e2〜93g2、及び流量調整機構95e1〜95g1、95e2〜95g2が配設され、返送パイプ98を介してチラー96の吸込口96bに接続されている。
【0069】
このように各熱媒体流路91が配置された基板保持部21は、図中破線で区画された6つのエリア21A,21B,21C,21D,21E,21Fに分割され、各エリア21A,21B,21C,21D,21E,21Fには、それぞれ2本の入口側熱媒体流路91a,91b,91c,91dと、1本の出口側熱媒体流路91e,91f,91gが配置されることになる。
【0070】
基板保持部21の各エリア21A,21B,21C,21D,21E,21Fの温度を補正温度に調整するには、14個の流量調整機構95a1〜95d1、95a2〜95d2、95e1〜95g1、95e2〜95g2の開度を適宜、調整することによって細かく制御することが可能となる。即ち、図11に示すように、エリア21Aの温度を大きく調整し、エリア21Bの温度を僅かに調整する場合、流量調整機構95a2,95b2,95e1の開度を大きく開き、流量調整機構95f1の開度を中程度に開き、その他の流量調整機構95を閉じることによって達成される。
【0071】
即ち、加熱装置92a2,92b2によって補正温度に加熱されて熱媒体流路91a,91bに流入した熱媒体は、開度が大きい流量調整機構95e1を介して多くの熱媒体がエリア21Aを通過して熱媒体流路91eから流出して、エリア21Aの温度を大きく変化させる。また、熱媒体流路91a,91bに流入した熱媒体は、開度が中程度の流量調整機構95f1を介して少ない流量の熱媒体がエリア21Bを通過して熱媒体流路91fから流出する。これにより、エリア21Aの温度が大きく調整され、エリア21Bの温度が僅かに調整される。
【0072】
上記したように、各流量調整機構95a1〜95d1、95a2〜95d2、95e1〜95g1、95e2〜95g2の開度を適宜調整して、各入口側熱媒体流路91a,91b,91c,91d及び各出口側熱媒体流路91e,91f,91gを流れる熱媒体の流量を調整することにより、基板保持部21の任意の位置の温度を細かく調整することができる。温度調整するエリアは、複数個所に同時に対応することができ、また、該複数のエリアは連続したエリアであっても、離間したエリアであってもよい。また、基板保持部21の熱媒体流路91を格子状に配置することにより、ショット数に柔軟に対応して基板保持部21のエリアを自由に設定することができる。
その他の作用及び効果は、第2実施形態の近接露光装置と同様であるので、説明を省略する。
【0073】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、上記の実施形態においては、近接露光装置について説明したが、これに限定されるものではなく、基板が基板保持部に保持される構造を有するものであれば、同様に適用することができ、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0074】
12 マスク保持枠(マスク保持部)
21 基板保持部
70 照明光学系
80,81 異物検出器
80b,81b 受光部
82 異物
91 熱媒体流路
92 加熱装置
93,94 温度センサ
95 流量調整機構
96 チラー
96a 吐出口
99 蓄圧器
102 倍率誤差演算部
103 補正温度演算部
104 温度制御部
106 検査装置
LB レーザービーム
M マスク
PE 近接露光装置
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、前記基板と対向するようにマスクを保持するマスク保持部と、前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系と、を備え、前記基板に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光装置であって、
前記基板保持部の搬送方向に並んで配置され、前記基板保持部に保持された前記基板の表面に沿ってレーザービームを出射する出射部と、該レーザービームを受光する受光部と、をそれぞれ有する2つの異物検出器と、
前記2つの異物検出器の各受光部が受光する前記レーザービームの検出信号を増幅する比例演算部と、
前記基板上の異物の有無を判定するため、前記2つの増幅した前記レーザービームの検出信号の差分を算出する差分演算部と、
を備えることを特徴とする近接露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の近接露光装置を用いた異物検出方法であって、
前記2つの異物検出器を用いて、前記搬送される基板の表面に沿って出射された各レーザービームをそれぞれ受光して、2つの検出信号を取り出す工程と、
前記2つの検出信号を増幅するための比例演算する工程と、
前記2つの増幅した検出信号の差分を算出するための差分演算する工程と、
を備え、前記差分に基づく検出波形から前記基板上の異物の有無を判定することを特徴とする異物検出方法。
【請求項3】
基板を保持する基板保持部と、前記基板と対向するようにマスクを保持するマスク保持部と、前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系と、を備え、前記基板に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光装置であって、
前記基板保持部に設けられ、熱媒体を通過させる複数の熱媒体流路と、
前記複数の熱媒体流路の入口側及び出口側に設けられて前記熱媒体の入口温度及び出口温度を検出する複数の温度センサと、
前記複数の熱媒体流路に設けられて前記熱媒体流路を通過する前記熱媒体の流量を制御する流量調整機構と、
前記複数の熱媒体流路の入口側に設けられて前記熱媒体を加熱する複数の加熱装置と、
前記複数の熱媒体流路の各出口から環流する前記熱媒体をまとめて冷却し、前記複数の熱媒体流路の各入口に送出する1台のチラーと、
前記チラーの吐出口に設けられた前記熱媒体の圧力を一定にする蓄圧器と、
前記パターンが露光転写された前記基板の検査結果に基づいて、前記マスクのパターンを前記基板に露光転写する際の倍率誤差を算出する倍率誤差演算部と、
前記倍率誤差を補正するための前記基板保持部の補正温度を算出する補正温度演算部と、
前記加熱装置を制御し、前記熱媒体を介して前記基板保持部の温度を前記補正温度に調整する温度制御部と、を備えることを特徴とする近接露光装置。
【請求項4】
前記近接露光装置は、前記基板保持部と前記マスク保持部とを相対的にステップ移動しながら、前記基板に前記マスクのパターンを露光転写し、
前記複数の熱媒体流路は、前記マスクが前記基板保持部と対向するステップ位置ごとに形成されることを特徴とする請求項3に記載の近接露光装置。
【請求項5】
前記熱媒体流路は、前記基板保持部内で互いに連通する格子状に形成され、
前記流量調整機構は、前記複数の熱媒体流路の入口側及び出口側に配設されることを特徴とする請求項3または4に記載の近接露光装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の近接露光装置を備えた基板の製造方法であって、
前記複数の温度センサにより前記複数の熱媒体流路の各熱媒体の入口温度及び出口温度を検出する工程と、
前記パターンが露光転写された前記基板の検査結果に基づいて、前記マスクのパターン
を前記基板に露光転写する際の倍率誤差を算出する工程と、
前記算出された倍率誤差に基づいて前記基板保持部の補正温度を算出する工程と、
前記複数の温度センサにより検出される前記熱媒体の温度に基づいて前記加熱装置が前記熱媒体を加熱すると共に、前記流量調整機構が前記熱媒体の流量を制御し、前記基板保持部の温度を前記補正温度に調整して、前記倍率誤差を補正する工程と、
を備えることを特徴とする基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−118159(P2012−118159A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265998(P2010−265998)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(311011449)NSKテクノロジー株式会社 (51)
【Fターム(参考)】