説明

逆転機構

【課題】部品点数が少なく簡単な構造で正逆両方向の回転出力が可能な逆転機構を提供することである。
【解決手段】遊星傘歯車4を入力部材1と出力部材2の同一の固定軸3の回りに旋回可能な直交軸部材5に支持し、直交軸部材5に出力部材2に内嵌される連結軸部6を直角に結合して、連結軸部6の出力部材2への連結を入切するクラッチ手段と、このクラッチ手段で連結軸部6の出力部材2への連結が切とされたときに連結軸部6の回転を止めるブレーキ手段とを設けることにより、連結軸部6の出力部材2への連結が入とされたときは、入力部材1と出力部材2の固定軸3の回りに遊星傘歯車4をこれらと一体で公転させて、出力部材2を正転させ、この連結が切とされたときは、直交軸部材5の軸部5aの回りに遊星傘歯車4を自転させて、出力部材2を逆転させるようにし、部品点数が少なく簡単な構造で正逆両方向の回転出力を得られるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材の回転を正逆両方向の回転に出力可能な逆転機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、多くの回転ローラが組み込まれた複写機やプリンタでは、両面印刷を行うために一部のローラをコンパクトな設計で正逆両方向に回転させることが要求されている。このような正逆両方向の回転出力が可能な逆転機構には、平歯車を組合わせたものと、傘歯車を組合わせたものとがあるが、平歯車を組合わせたものは、入力軸と出力軸とを間隔を開けて平行に配設する必要があるので、コンパクトな設計ができない。また、傘歯車を組合わせた一般的な逆転機構も、入力軸と出力軸とを直角に配設する必要があるので、コンパクトな設計ができない。
【0003】
これに対して、入力部材と出力部材とを同軸上に配設して、傘歯車の組み合わせで出力部材を正逆両方向に回転させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたステアリングギヤボックスでは、入力軸(入力部材)と出力軸(出力部材)との間に、入力軸に外嵌した第1ボス(中間部材)を回転自在に配設し、入力軸と第1ボスとに対向させて設けた傘歯車に軸が固定された傘歯車を噛み合わせて、第1ボスを逆回転させるとともに、第1ボスに貫通させた入力軸に固定した第2ボスを正回転させ、これらの第1ボスまたは第2ボスと出力軸とを連結するスリーブを軸方向へシフトさせて、このスリーブのシフトによる各ボスとの連結の切替で出力軸を正逆両方向に回転させる逆転機構を採用している。なお、スリーブのシフト位置は、両方のボスを出力軸と連結せずに、出力軸を自由回転とする状態にも選択可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平4−39126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された逆転機構は、入力部材と出力部材が同軸上に配設されているが、入力部材と出力部材との間に逆転専用の中間部材を入力部材に外嵌して配設する必要があるので、この中間部材の配設と支持のために部品点数が多くなり、構造も複雑になる問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、部品点数が少なく簡単な構造で正逆両方向の回転出力が可能な逆転機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の逆転機構は、回転が入力される入力部材と同軸上に出力部材を配設して、これらの入力部材と出力部材とに互いに対向する傘歯車を設け、これらの対向する傘歯車に少なくとも1つの遊星傘歯車を噛み合わせて、この遊星傘歯車を前記入力部材と出力部材の軸と直交し、この軸の回りに旋回可能な直交軸部材に回転自在に支持し、この直交軸部材に前記出力部材に内嵌される連結軸部を直角に設けて、この連結軸部の前記出力部材への連結を入切するクラッチ手段と、このクラッチ手段で前記連結軸部と出力部材との連結が切られたときに、前記連結軸部の回転を止めるブレーキ手段とを設け、前記クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が入とされたときに、前記出力部材を前記入力部材と同方向に正転させ、前記クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が切とされたときに、前記出力部材を逆転させる構成を採用した。
【0008】
すなわち、遊星傘歯車を入力部材と出力部材の軸の回りに旋回可能な直交軸部材に支持し、この直交軸部材に出力部材に内嵌される連結軸部を直角に設けて、この連結軸部の出力部材への連結を入切するクラッチ手段と、このクラッチ手段で連結軸部と出力部材との連結が切られたときに、連結軸部の回転を止めるブレーキ手段とを設けることにより、クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が入とされたときには、入力部材と出力部材の軸の回りに遊星傘歯車をこれらと一体で公転させて、出力部材を正転させ、クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が切とされたときには、連結軸部の回転停止で旋回を止められる直交軸部材の軸の回りに遊星傘歯車を自転させて、出力部材を逆転させるようにし、部品点数が少なく簡単な構造で正逆両方向の回転出力が得られるようにした。
【0009】
前記クラッチ手段を、前記出力部材の前記傘歯車と反対側の背面側に、セレーションを外径面に形成した軸部を設け、この出力部材の背面側に貫通させた前記連結軸部の先端部の外径面に、前記出力部材の軸部のセレーションと等径のセレーションを形成して、前記セレーションを形成した出力部材の軸部に、このセレーションと係合するセレーションを内径面に形成した連結リングをスライド可能に外嵌し、この連結リングをスライドさせて、その内径面のセレーションを前記連結軸部の外径面のセレーションと係脱し、前記連結軸部の出力部材への連結を入切するものとすることにより、簡単な構成でクラッチ手段を入切することができる。
【0010】
前記連結軸部のセレーションと前記連結リングのセレーションとの互いに対向する軸端面に、これらのセレーションの係合を案内するように軸方向で噛み合う、それぞれのセレーションの各山部の中心で先端が鋭角に形成された歯を設けることにより、クラッチ手段をスムーズに入とすることができる。
【0011】
前記セレーションの各山部の中心で先端が鋭角に形成された歯に、先端が各山部の頂側へ逃げる逃げ角を付与することにより、クラッチ手段をよりスムーズに入とすることができる。
【0012】
前記ブレーキ手段を、前記連結軸部の前記セレーションよりも先端側の外径面に軸方向へ延びる凹溝を形成し、この凹溝に爪を差し込んで前記連結軸部の回転を止めるものとすることにより、簡単な構成で連結軸部の回転を止めることができる。
【0013】
前記連結軸部の外径面で軸方向へ延びる凹溝を、外径面全周にセレーション状に形成した複数の凹溝とすることにより、連結軸部の回転を任意の回転位置で速やかに止めることができる。
【0014】
前記スライド可能な連結リングを前記連結軸部のセレーション側へ付勢して、連結リングの先端側のセレーションを連結軸部のセレーションと係合させる弾性部材と、この弾性部材で付勢された連結リングの先端側を押戻して、前記係合を切り離す押戻し部材とを設け、この押戻し部材に前記ブレーキ手段の爪を設けることにより、押戻し部材の1動作のみでクラッチ手段による連結軸部の出力部材への連結を入切して、クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が切とされたときに連結軸部の回転を止めることができる。
【0015】
前記押戻し部材は、前記連結リングに半径方向から進退して、前記連結リングの先端側をテーパ面で押戻すものとし、前記ブレーキ手段の爪を半径方向から前記連結軸部の凹溝に差し込むようにすることができる。
【0016】
前記押戻し部材を、前記連結リングの先端側に軸方向から進退して、前記連結リングを押戻すものとし、前記ブレーキ手段の爪を軸方向から前記連結軸部の凹溝に差し込むようにすることもできる。
【0017】
前記連結軸部の外径面で軸方向へ延びる凹溝を、外径面全周にセレーション状に形成した複数の凹溝とし、前記押戻し部材を筒状体として、その爪を内径面全周にセレーション状に形成した複数の爪とし、これらのセレーション状に形成された複数の凹溝と爪とが互いに対向する軸端面に、前記爪の前記凹溝への差し込みを案内するように軸方向で噛み合う、それぞれのセレーション状に形成された複数の凹溝と爪の各山部の中心で先端が鋭角に形成された歯を設けることにより、爪を凹溝へスムーズに差し込むことができる。
【0018】
前記出力部材からの回転出力手段を、その外径面に設けた平歯車とすることにより、コンパクトなスペースで出力部材の回転を出力することができる。
【0019】
前記入力部材への回転入力手段を、その外径面に設けた平歯車とすることにより、コンパクトなスペースで入力部材に回転を入力することができる。
【0020】
前記入力部材の平歯車を回転出力手段として利用することにより、正回転を必要とする他の回転部材をまとめて回転させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の逆転機構は、遊星傘歯車を入力部材と出力部材の軸の回りに旋回可能な直交軸部材に支持し、この直交軸部材に出力部材に内嵌される連結軸部を直角に設けて、この連結軸部の出力部材への連結を入切するクラッチ手段と、このクラッチ手段で連結軸部と出力部材との連結が切られたときに、連結軸部の回転を止めるブレーキ手段とを設けることにより、クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が入とされたときには出力部材を正転させ、クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が切とされたときには出力部材を逆転させるようにしたので、部品点数が少なく簡単な構造で正逆両方向の回転出力を得ることができる。
【0022】
前記クラッチ手段を、出力部材の傘歯車と反対側の背面側に、セレーションを外径面に形成した軸部を設け、この出力部材の背面側に貫通させた連結軸部の先端部の外径面に、出力部材の軸部のセレーションと等径のセレーションを形成して、セレーションを形成した出力部材の軸部に、このセレーションと係合するセレーションを内径面に形成した連結リングをスライド可能に外嵌し、この連結リングをスライドさせて、その内径面のセレーションを連結軸部の外径面のセレーションと係脱し、連結軸部の出力部材への連結を入切するものとすることにより、簡単な構成でクラッチ手段を入切することができる。
【0023】
前記連結軸部のセレーションと連結リングのセレーションとの互いに対向する軸端面に、これらのセレーションの係合を案内するように軸方向で噛み合う、それぞれのセレーションの各山部の中心で先端が鋭角に形成された歯を設けることにより、クラッチ手段をスムーズに入とすることができる。
【0024】
前記セレーションの各山部の中心で先端が鋭角に形成された歯に、先端が各山部の頂側へ逃げる逃げ角を付与することにより、クラッチ手段をよりスムーズに入とすることができる。
【0025】
前記ブレーキ手段を、連結軸部のセレーションよりも先端側の外径面に軸方向へ延びる凹溝を形成し、この凹溝に爪を差し込んで連結軸部の回転を止めるものとすることにより、簡単な構成で連結軸部の回転を止めることができる。
【0026】
前記連結軸部の外径面で軸方向へ延びる凹溝を、外径面全周にセレーション状に形成した複数の凹溝とすることにより、連結軸部の回転を任意の回転位置で速やかに止めることができる。
【0027】
前記スライド可能な連結リングを連結軸部のセレーション側へ付勢して、連結リングの先端側のセレーションを連結軸部のセレーションと係合させる弾性部材と、この弾性部材で付勢された連結リングの先端側を押戻して係合を切り離す押戻し部材とを設け、この押戻し部材にブレーキ手段の爪を設けることにより、押戻し部材の1動作のみでクラッチ手段による連結軸部の出力部材への連結を入切して、クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が切とされたときに連結軸部の回転を止めることができる。
【0028】
前記出力部材からの回転出力手段を、その外径面に設けた平歯車とすることにより、コンパクトなスペースで出力部材の回転を出力することができる。
【0029】
前記入力部材への回転入力手段を、その外径面に設けた平歯車とすることにより、コンパクトなスペースで入力部材に回転を入力することができる。
【0030】
前記入力部材の平歯車を回転出力手段として利用することにより、正回転を必要とする他の回転部材をまとめて回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図4は、第1の実施形態を示す。この逆転機構は、図1および図2に示すように、入力部材1と出力部材2が同一の固定軸3上に回転自在に配設され、これらの入力部材1と出力部材2とに互いに対向するように設けられた傘歯車1a、2aに2つの遊星傘歯車4が噛み合わされ、各遊星傘歯車4が、固定軸3と直交する直交軸部材5の軸部5aに回転自在に支持されている。入力部材1と出力部材2の外径面には、それぞれ入力用の平歯車1bと出力用の平歯車2bが設けられ、駆動歯車21から入力部材1に正回転が入力される。また、各平歯車1b、2bには従動歯車22a、22bが噛み合わされ、従動歯車22aには正回転が出力され、従動歯車22bには、後述するように、正逆両方向の回転が出力されるようになっている。
【0032】
前記直交軸部材5の中心部には、固定軸3に旋回可能に外嵌される連結筒部5bが設けられ、別体の連結軸部6が連結筒部5bの端面に凹凸部の嵌まり合いで回り止めされて、軸部5aと直角に結合されている。連結軸部6は、回転可能に固定軸3に外嵌されるとともに出力部材2に内嵌され、出力部材2の背面側に貫通した先端部の外径面に、後述する連結リング8の内径面のセレーション8aと係脱するセレーション6aと、押戻し部材12の爪12bが差し込まれるセレーション状に軸方向へ延びる複数の凹溝6bとが、先端側へ順に形成されている。セレーション6aと複数の凹溝6bとの間には、連結リング8を抜け止めする環状凸条6cも形成されている。
【0033】
前記連結軸部6の先端部が貫通する出力部材2の背面側には、中心部に設けられた凹部2cから突出する軸部7が一体に設けられ、その外径面に連結軸部6のセレーション6aと等径のセレーション7aが形成されており、軸部7にスライド可能に外嵌された連結リング8の内径面に形成されたセレーション8aと係合するようになっている。連結リング8は軸部7に装着されたコイルばね9で先端側へ付勢され、そのセレーション8aは連結軸部6のセレーション6aとも係合するようになっている。
【0034】
図3(a)、(b)に拡大して示すように、前記連結軸部6のセレーション6aと連結リング8のセレーション8aとの互いに対向する軸端面には、それぞれのセレーション6a、8aの各山部の中心で先端が鋭角に形成され、各山部の頂側へ逃げる逃げ角を付与された歯10a、10bが設けられている。これらの歯10a、10bは、セレーション6a、8aの係合を案内するように軸方向で噛み合い、コイルばね9で付勢された連結リング8のセレーション8aを、連結軸部6のセレーション6aとスムーズに係合させる。
【0035】
図1に示すように、前記連結リング8の先端側の外方には、ソレノイド11のオン・オフによって半径方向に進退し、コイルばね9で付勢された連結リング8の先端側をテーパ面12aで押戻して、連結軸部6のセレーション6aと連結リング8のセレーション8aとの係合を切り離す押戻し部材12が配設されている。押戻し部材12は圧縮コイルばね11aで半径方向内方の前進側へ付勢されており、ソレノイド11をオンにすると磁気吸引力によって半径方向外方へ後退する。この押戻し部材12には、連結軸部6のセレーション状の凹溝6bに半径方向から差し込まれて、連結軸部6の回転を止める爪12bも設けられている。
【0036】
つぎに、上述した逆転機構の作用を説明する。図1に示したように、前記ソレノイド11をオンにして、押戻し部材12を半径方向外方へ後退させると、コイルばね9で付勢された連結リング8が連結軸部6と出力部材2の軸部7の両方とセレーション係合して、出力部材2と連結軸部6とが一体で回転し、連結軸部6に結合された直交軸部材5も一体で旋回する。したがって、直交軸部材5に取り付けられた遊星傘歯車4は自転せずに固定軸3の回りを公転し、遊星傘歯車4と傘歯車1aで噛み合う入力部材1も出力部材2および直交軸部材5と一体で回転して、出力部材2に正回転が出力される。
【0037】
また、図4に示すように、前記ソレノイド11をオフにして、押戻し部材12を半径方向内方へ前進させると、連結リング8がテーパ面12aで押戻されて連結軸部6とのセレーション係合が切り離されるとともに、連結軸部6の凹溝6bに半径方向から差し込まれる押戻し部材12の爪12bで連結軸部6の回転が止められる。したがって、このときは、入力部材1と出力部材2が別々に回転するとともに、連結軸部6に結合された直交軸部材5が旋回せずに、遊星傘歯車4はその軸部5aの回りを自転し、この遊星傘歯車4の自転によって、出力部材2に逆回転が出力される。
【0038】
図5および図6は、第2の実施形態を示す。この逆転機構は、基本的な構成は第1の実施形態と同じであり、図5に示すように、前記ソレノイド11で作動する押戻し部材12が、連結リング8の先端側へ軸方向から進退するようになっている点が異なる。この押戻し部材12は有底の筒状体とされ、底部が固定軸3の半円断面の端部3aに回り止めされるとともにスライド可能に外嵌されている。押戻し部材12は引張コイルばね11aで後方へ回動付勢された回動レバー11bに底部を連結されており、ソレノイド11をオンにすると、磁気吸引力によって回動レバー11bが前方へ回動し、この回動レバー11bで背面を押圧される押戻し部材12が軸方向へ前進して、コイルばね9で付勢された連結リング8の先端側をその前端面で押戻すようになっている。ソレノイド11をオフにすると、回動レバー11bが後方へ回動し、回動レバー11bに連結された押戻し部材12が後退する。
【0039】
前記押戻し部材12の底部側の内径面にはセレーション状に形成された複数の爪12bが設けられ、押戻し部材12が前進したときに、その爪12bが連結軸部6のセレーション状に形成された凹溝6bに軸方向から差し込まれて、連結軸部6の回転を止めるようになっている。拡大図示は省略するが、連結軸部6の複数の凹溝6bと押戻し部材12の複数の爪12bとの互いに対向する軸端面には、図3(a)、(b)に示したものと同様に、それぞれのセレーション状の凹溝6bと爪12bの各山部の中心で先端が鋭角に形成され、各山部の頂側へ逃げる逃げ角を付与された歯13a、13bが設けられている。これらの歯13a、13bは、セレーション状の凹溝6bと爪12bの係合を案内するように軸方向で噛み合い、各爪12bを各凹溝6bへスムーズに差し込む。その他の部分は、第1の実施形態のものと同じである。
【0040】
この実施形態では、図5に示したように、前記ソレノイド11をオフにして、押戻し部材12を軸方向に後退させると、コイルばね9で付勢された連結リング8が連結軸部6と出力部材2の軸部7の両方とセレーション係合し、第1の実施形態のものと同様に、入力部材1、出力部材2および直交軸部材5に取り付けられた遊星傘歯車4が一体で回転し、出力部材2に正回転が出力される。
【0041】
また、図6に示すように、前記ソレノイド11をオンにして、押戻し部材12を軸方向に前進させると、連結リング8が押戻されて連結軸部6とのセレーション係合が切り離されるとともに、連結軸部6の凹溝6bに軸方向から差し込まれる押戻し部材12の爪12bで連結軸部6の回転が止められ、第1の実施形態のものと同様に、遊星傘歯車4の自転によって、出力部材2に逆回転が出力される。
【0042】
上述した各実施形態では、直交軸部材に取り付ける遊星傘歯車の個数を2個としたが、遊星傘歯車の個数は1個とすることもでき、直交軸部材の軸部を十文字等の放射状に設けて、3個以上の遊星傘歯車を取り付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態の逆転機構を示す縦断面図
【図2】図1の回転伝達機構部の分解斜視図
【図3】a、bは、それぞれ図1の連結軸部と連結リングのセレーションの互いに対向する軸端面に設けた歯を拡大して示す斜視図
【図4】図1の逆転機構で逆回転を出力する状態を示す縦断面図
【図5】第2の実施形態の逆転機構を示す縦断面図
【図6】図5の逆転機構で逆回転を出力する状態を示す縦断面図
【符号の説明】
【0044】
1 入力部材
2 出力部材
1a、2a 傘歯車
1b、2b 平歯車
2c 凹部
3 固定軸
4 遊星傘歯車
5 直交軸部材
5a 軸部
5b 連結筒部
6 連結軸部
6a セレーション
6b 凹溝
6c 環状凸条
7 軸部
7a セレーション
8 連結リング
8a セレーション
9 コイルばね
10a、10b 歯
11 ソレノイド
11a コイルばね
11b 回動レバー
12 押戻し部材
12a テーパ面
12b 爪
13a、13b 歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転が入力される入力部材と同軸上に出力部材を配設して、これらの入力部材と出力部材とに互いに対向する傘歯車を設け、これらの対向する傘歯車に少なくとも1つの遊星傘歯車を噛み合わせて、この遊星傘歯車を前記入力部材と出力部材の軸と直交し、この軸の回りに旋回可能な直交軸部材に回転自在に支持し、この直交軸部材に前記出力部材に内嵌される連結軸部を直角に設けて、この連結軸部の前記出力部材への連結を入切するクラッチ手段と、このクラッチ手段で前記連結軸部と出力部材との連結が切られたときに、前記連結軸部の回転を止めるブレーキ手段とを設け、前記クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が入とされたときに、前記出力部材を前記入力部材と同方向に正転させ、前記クラッチ手段で前記連結軸部の出力部材への連結が切とされたときに、前記出力部材を逆転させるようにした逆転機構。
【請求項2】
前記クラッチ手段が、前記出力部材の前記傘歯車と反対側の背面側に、セレーションを外径面に形成した軸部を設け、この出力部材の背面側に貫通させた前記連結軸部の先端部の外径面に、前記出力部材の軸部のセレーションと等径のセレーションを形成して、前記セレーションを形成した出力部材の軸部に、このセレーションと係合するセレーションを内径面に形成した連結リングをスライド可能に外嵌し、この連結リングをスライドさせて、その内径面のセレーションを前記連結軸部の外径面のセレーションと係脱し、前記連結軸部の出力部材への連結を入切するものである請求項1に記載の逆転機構。
【請求項3】
前記連結軸部のセレーションと前記連結リングのセレーションとの互いに対向する軸端面に、これらのセレーションの係合を案内するように軸方向で噛み合う、それぞれのセレーションの各山部の中心で先端が鋭角に形成された歯を設けた請求項2に記載の逆転機構。
【請求項4】
前記セレーションの各山部の中心で先端が鋭角に形成された歯に、先端が各山部の頂側へ逃げる逃げ角を付与した請求項3に記載の逆転機構。
【請求項5】
前記ブレーキ手段が、前記連結軸部の前記セレーションよりも先端側の外径面に軸方向へ延びる凹溝を形成し、この凹溝に爪を差し込んで前記連結軸部の回転を止めるものである請求項2乃至4のいずれかに記載の逆転機構。
【請求項6】
前記連結軸部の外径面で軸方向へ延びる凹溝を、外径面全周にセレーション状に形成した複数の凹溝とした請求項5に記載の逆転機構。
【請求項7】
前記スライド可能な連結リングを前記連結軸部のセレーション側へ付勢して、連結リングの先端側のセレーションを連結軸部のセレーションと係合させる弾性部材と、この弾性部材で付勢された連結リングの先端側を押戻して、前記係合を切り離す押戻し部材とを設け、この押戻し部材に前記ブレーキ手段の爪を設けた請求項5または6に記載の逆転機構。
【請求項8】
前記押戻し部材を、前記連結リングに半径方向から進退して、前記連結リングの先端側をテーパ面で押戻すものとし、前記ブレーキ手段の爪を半径方向から前記連結軸部の凹溝に差し込むようにした請求項7に記載の逆転機構。
【請求項9】
前記押戻し部材を、前記連結リングの先端側に軸方向から進退して、前記連結リングを押戻すものとし、前記ブレーキ手段の爪を軸方向から前記連結軸部の凹溝に差し込むようにした請求項7に記載の逆転機構。
【請求項10】
前記連結軸部の外径面で軸方向へ延びる凹溝を、外径面全周にセレーション状に形成した複数の凹溝とし、前記押戻し部材を筒状体として、その爪を内径面全周にセレーション状に形成した複数の爪とし、これらのセレーション状に形成された複数の凹溝と爪とが互いに対向する軸端面に、前記爪の前記凹溝への差し込みを案内するように軸方向で噛み合う、それぞれのセレーション状に形成された複数の凹溝と爪の各山部の中心で先端が鋭角に形成された歯を設けた請求項9に記載の逆転機構。
【請求項11】
前記出力部材からの回転出力手段を、その外径面に設けた平歯車とした請求項1乃至10のいずれかに記載の逆転機構。
【請求項12】
前記入力部材への回転入力手段を、その外径面に設けた平歯車とした請求項1乃至11のいずれかに記載の逆転機構。
【請求項13】
前記入力部材の平歯車を回転出力手段として利用した請求項12に記載の逆転機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−198471(P2007−198471A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16566(P2006−16566)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】