説明

透明の基板の上にデバイスを導電性結合する方法

本発明は、少なくとも1つの導電性層と電気デバイスを導電性結合する方法に関するものであり、導電性層は光の可視波長領域で実質的に透明の基板に塗布され、次の各ステップを含んでおり、すなわち、電気デバイスまたは導電性層にデバイスが導電性層と結合されるべき領域ではんだ材料が施され、はんだ材料にエネルギー源から放出されるエネルギーが供給され、それにより、はんだ材料が溶融し、取外し可能でない物質接合式の導電性結合が電気デバイスと導電性層との間に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの導電性層と電気デバイスを導電性結合する方法に関するものであり、導電性層は光の可視波長領域で実質的に透明の基板に塗布される。可視波長とは、本件出願においては、420nmから700nmの間で層ないし基板の透過率が60%を超えており、特に80%を超えており、好ましくは90%を超えることを意味している。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、特に特許文献1より、導電性層を有する透明な基板の上にデバイスを、特に発光ダイオードを、はんだ付け法により取り付けることが公知である。このことは特許文献1によれば、導電性層を備える基板に、導電性のペーストまたはレジストからなる結合個所が塗布されており、この結合個所がはんだ付け法によってデバイスと、特に発光ダイオードと、結合されることによって可能となる。
【0003】
特許文献1には特定の方法が記載されているわけではないが、一般に、ガラスへのデバイスのはんだ付けのプロセスステップは、手動はんだごてと線はんだを用いて手作業で実施されていた。
【0004】
特許文献2では、導電性構造を備える、特に電気加熱可能なコーティングを備える、少なくとも1つのディスクを備えるプレート部材について、この層の電気接触をたとえばはんだ付け接合によって行うことが意図されており、はんだ付けの出力は、硬いディスクを貫いてはんだ付け個所へも及ぼされる。
【0005】
しかし特許文献2は、導電性層へのデバイスの取付を記載しているのではなく、加熱目的のために利用される導電性構造への電気接続部の取付を記載しているにすぎない。
【0006】
特許文献3より、基板材料と結合されるべき部品をはんだ付けする方法を、レーザ光での部品の照射と結びつけることが公知となっている。基本的にこの方法は、ICチップまたはコンデンサと金属材料との結合に関するものである。
【0007】
基板材料が透明な基板を含むことができることは、特許文献3には開示されていない。さらに、はんだ付けは上方から基板材料に向けて行われる。
【0008】
赤外光を用いたはんだ付けは特許文献4から公知となっており、導線やランドのような導電部材が半導体チップと結合される。
【0009】
特許文献5より、透明な基板への発光手段のリフローはんだ付けが公知となっている。
【0010】
特許文献6は、可視光および/または赤外光を用いた条導体へのプリント回路のはんだ付けを示している。特許文献6に記載の条導体を備える支持体は、熱放射に対して透過性が優れている。条導体の材料は記載されていない。はんだ付け可能な接触面の迅速な加熱、およびはんだ付け材料の流動を実現するために、特許文献6では、超音波源を追加的に設けることが意図される。
【0011】
特許文献7は、柔軟な基板の接触部材を電子デバイスの接触金属被覆と熱により結合する方法を示しており、エネルギー注入はレーザ放射によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第01/82378号パンフレット
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第102004018109A1号明細書
【特許文献3】欧州特許第0584356号明細書
【特許文献4】ドイツ特許出願公開第4312642号明細書
【特許文献5】ドイツ特許出願公開第10019888A1号明細書
【特許文献6】ドイツ特許出願公開第2343235明細書
【特許文献7】ドイツ特許出願公開第19504967A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し、特に、透明な基板の導電性コーティングと電気部材を簡単な仕方により結合することができる合理的な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるとこのことは、少なくとも1つの導電性層と電気デバイスを導電性結合する請求項1に記載の方法によって具体化され、導電性層は光の可視波長領域について実質的に透明な基板に塗布され、次の各ステップを含んでいる:
−電気デバイスまたは導電性層に、デバイスが導電性層と結合されるべき領域ではんだ付け材料が施され、好ましくは電磁放射を放出するエネルギー源、特に光源、好ましくはハロゲンランプまたはレーザ光源が配置され、
−エネルギー源から放出されるエネルギーがはんだ付け材料に供給され、それにより、はんだ付け材料が溶融して、電気デバイスと導電性層との間に取外し不能で物質接合的な導電性の結合が構成される。
【0015】
本発明による方法は、透明な基板の上へのデバイスの、特に発光ダイオードの、自動化されていてもよい非常に迅速なはんだ付けを可能にすることを可能にする。迅速な、特に自動化されたはんだ付けにより、従来技術に比べて係数2.5のサイクル時間短縮と、操作者に依存しない作業とが実現される。さらに、デバイスと、透明な基板の上に配置された導電性構造との間で確実な導電性結合が成立する。さらに別の利点は、溶剤を含有する洗浄剤の使用が回避されるので、既存のガラス・ブラシ洗浄機を適用できることにある。さらに、柔軟な結合部をはんだ付けする可能性が生まれる。デバイスの結合は条導体の上で、たとえば酸化スズや銀を含む条導体の上で、直接構成することができる。
【0016】
従来普通に用いられている特にガラスの透明な基板の上でのデバイスの接着に比べて、はんだ付けは数多くの利点を有している。たとえばはんだ付け材料は、接着剤よりも高い紫外線抵抗性を有している。このことは、特に屋外使用の場合に利点となる。さらに、はんだ付け材料は事実上100%導電性の材料であるのに対し、接着剤の導電性はこれよりも低い。
【0017】
本発明の第1の実施形態では、はんだ付け材料は、可視領域で実質的に透明な導電性コーティングに塗布される。導電性コーティングは、たとえば酸化スズを含むことができる。
【0018】
これに代わる本発明の実施形態では、たとえばスクリーン印刷やステンシル印刷、あるいは画像転写によって、導電性層にまず結合個所が塗布されることが意図されていてよい。そして結合個所に、はんだ付け材料が塗布される。結合個所とデバイスの間ではんだ結合が構成される。結合個所は、たとえば導電性銀レジストや導電性銀レジストペーストのような、導電性のペーストまたはレジストでできているのが好ましい。導電性のペーストまたはレジストは、たとえばスクリーン印刷による塗布後に焼き付けられるのが好ましい。焼き付けによって同時に透明な基板に、特に透明なガラス基板に、初期応力が与えられる。それにより、以後の方法ステップのために高い機械的強度が実現される。
【0019】
透明な基板は上面と下面を有しているのが好ましく、透明な導電性層は上面に塗布され、好ましくは光源であるエネルギー源のエネルギーは下面から透明な基板を貫いて、結合されるべき材料へと注入される。基板を貫いて下面からエネルギーを注入することにより、透明なコーティングと導電性結合されるべきデバイスの温度負荷が最低限に抑えられる。
【0020】
透明な基板が熱を吸収する層を含んでおり、たとえばフッ素ドーピングされた酸化スズ層のような金属酸化物層を含んでいると、特別に好ましい。熱を吸収する層により、はんだ付け時間を劇的に短縮することができる。その場合、デバイスが取り付けられるべき個所で、透明な層が加熱されるという事実が活用されるからである。そうすれば熱注入が実質的に導電性の透明な層で行われるので、短いはんだ付け時間で、デバイスは最低限の負荷しか受けない。短いはんだ付け時間とは、たとえば60秒よりも短い、特に30秒よりも短い、好ましくは10秒よりも短い、特別に好ましくは5秒よりも短い、特に1秒よりも短いはんだ付け時間を意味している。特に、導電性コーティングが熱を吸収する層として構成されていることによって、短いはんだ付け時間を実現するための、たとえば特許文献6に記載されているような超音波装置の追加の使用を省略することができる。
【0021】
特に熱吸収性であってもよい導電性層が金属酸化物を含んでおり、好ましくはITO(InO:Sn)、FTO(SnO:F)、またはATO(SnO:Sb)を含んでいると特別に好ましい。あるいはZnO:Ga、ZnO:F、ZnO:B、ZnO:Al、またはAg/TiOも考えられる。前掲の化合物においてxはドーピング濃度と化学当量に依存して、1から2の範囲内にある。SnO:FないしSnO:Sbが特別に好ましい。透明な基板、特にガラス基板がFTO層(SnO:F)を備えている場合、たとえば500−1500nmの範囲内の波長と50Wから1000Wの範囲内の、特に100Wから500Wの消費電力をもつハロゲンランプを使用すると、30秒よりも短い、特に10秒よりも短い、好ましくは10秒から0.1秒の範囲内の、特に10秒から1秒の範囲内のはんだ付け時間を実現することができる。このような種類の層を適用すると、消費電力が比較的低くても、非常に短いはんだ付け時間を実現することが可能であり、たとえば特許文献6に記載の超音波エネルギーの照射のような追加の方策を要しない。比較的小さい消費電力と同時に短いはんだ付け時間により、特別に保全的な加工が可能となる。
【0022】
塗布方法としては、透明な基板に対する導電性層について化学蒸着(Chemical Vapor Deposition)(CVD)、物理蒸着(Physical Vapor Deposition)(PVD)、含浸コーティング、化学式または電気化学式のコーティングなどが考慮の対象となる。さらにはスプレー熱分解、スパッタ、ゾル・ゲル法なども可能である。スプレー熱分解による塗布は特別に低コストであり、コーティング材料としてフッ素ドーピングされた酸化スズ(SnO:F)が用いられるのが好ましい。特別に高い光学特性が実現されるので好ましい塗布方法はスパッタである。
【0023】
透明な基板はガラス基板であってもプラスチック基板であってもよい。基板材料としては、特に、透明ないし半透明であるものが考慮の対象となる。透明な基板とは、可視波長領域で>80%の透過性を有しているものを意味している。半透明の層ないしガラスとは、本件出願においては、可視波長領域で>60%の透過性をもつものを意味している。可視波長領域は特に420nmから700nmの間である。ガラスとしては、特にフッ素ドーピングされた酸化スズ(SnO:F)でコーティングされたソーダ石灰ガラスが考慮の対象となる。
【0024】
自動化されたエネルギー供給は、たとえば電磁波を利用して行われ、たとえば光を利用して行われる。光の利用は光はんだ付け法とも呼ばれる。光はんだ付け法では、たとえば可視波長領域または赤外波長領域の光を有する光線が、水平方向に支承された基板を通るように下方から当てられ、この光線が、はんだペーストおよびはんだ付けされるべきデバイスを備える層にも当たる。特に光はんだ付けの場合、0.5から2μmの波長をもつ短波の赤外光が集束されて、はんだ付け個所に当てられる。この集束は、半楕円形のミラーの焦点に光源が配置され、それにより、光源から発せられるすべての光線が楕円の第2の焦点に集束することによって行われるのが好ましい。はんだ付け個所の上面では、エネルギーが吸収によって熱に変換される。放射エネルギーは、光源の出力、放射時間、および集束の形式を通じて変えることができ、すなわち、時間、ランプ電流、および焦点位置という各パラメータによってエネルギー注入を非常に厳密に調整し、制御することができる。頂点の直径は光学系に応じて数ミリの範囲内であり、好ましくは0.1mmから100mmの間である。光源としては、たとえばハロゲンランプの光を使用することができる。光の波長は500nmから1500nmの間であり、ハロゲンランプの消費電力は50Wから1000W、好ましくは100Wから500W、特に250Wである。
【0025】
ハロゲン光源以外の特殊な光源の1つは、たとえば>700nmの波長をもつ赤外放射を放出するレーザ光源である。
【0026】
少なくとも1つの条導体と、または導電性層と、電気デバイスを導電性結合する方法が特別に好ましく、条導体または導電性層は光の可視波長領域で実質的に透明な基板に塗布され、
透明な基板は熱を吸収する層を含んでおり、導電性層は同時に熱を吸収する層であり、
次の各ステップを含んでおり、すなわち、
電気デバイスまたは条導体または導電性層に、デバイスが導電性層または条導体と結合されるべき領域ではんだ材料が施され、
電磁放射を放出するエネルギー源から出されるエネルギーがはんだ材料へ自動式に供給され、それにより、供給されたエネルギーが熱を吸収する条導体または導電性層へ、デバイスが取り付けられるべき個所で実質的に注入され、その結果、
はんだ材料が溶融して、取外し可能でない物質接合式の導電性結合が電気デバイスと条導体または導電性層との間で、デバイスの最低限の負荷のもとで短いはんだ付け時間で構成される。
【0027】
特に限定をすることなく、はんだ付け時間は30秒よりも短く、特に10秒よりも短く、好ましくは0.1秒から10秒の範囲内であり、好ましくは1秒から10秒の範囲内である。
【0028】
エネルギー源の、特に光源の、放出される電磁放射の波長は500nmから1500nmの範囲内である。
【0029】
エネルギー源は、たとえば50Wから1000Wの間の、特に100Wから500Wの間の消費電力を有するハロゲンランプであってよい。
【0030】
電磁放射は焦点に集束されるのが好ましく、焦点は0.1mmから100mmの範囲内の、好ましくは1mmから10mmの範囲内の直径を有している。
【0031】
本方法の1つの実施形態では、透明な基板は上面と下面を有しており、透明な導電性層が上面に塗布され、エネルギー源のエネルギーは下面から透明な層を貫いてはんだ材料に注入される。
【0032】
導電性層は、次の金属酸化物のうちの1つまたは複数から選択された金属酸化物を含んでいるのが好ましい:
−InO:Sn
−SnO:F
−SnO:Sb
−ZnO:Ga
−ZnO:B
−ZnO:F
−ZnO:Al
−Ag/TiO
ここでxは、ドーピング濃度に依存して1から2の範囲内にある。
【0033】
このような種類の導電性層は、たとえば次の方法のうちの1つで透明な基板に塗布することができる:
−CVD
−PVD
−スプレー熱分解
−スパッタ
−ゾル・ゲル法
【0034】
透明な基板は、ガラス基板またはプラスチック基板、特に硬化された、および/または初期応力をかけられたガラス基板であるのが好ましい。
【0035】
はんだ材料は、次の材料のうちの1つの基礎とするはんだであるのが好ましい:
−スズ・鉛
−スズ
−鉛
−金
−インジウム
−アルミニウム
【0036】
はんだ材料は、第1の実施形態では透明な基板の導電性層に塗布され、それにより、はんだ材料は透明な基板の上でデバイスと導電性層の間に導電性結合を構成する。
【0037】
赤外光を用いたはんだ付けに代えて、誘導式のはんだ付けを意図することも可能であろう。誘導式のはんだ付けでは、電磁誘導効果が熱生成のために利用される。誘導式のはんだ付けでは、インダクタは巧妙な成形によってはんだ付け個所だけを的確に加熱することができる。変化する電界は変化する磁界を担っており、ひいてはこの磁界が電気的な渦場によって、はんだ付けに必要な熱をデバイスで生成する。
【0038】
適用することができるその他のはんだ付け方法は、レーザはんだ付け法および超音波はんだ付け法である。
【0039】
はんだ付け法のためのはんだ材料としては、さまざまに異なる材料が考慮の対象となる。考えられる材料は、スズ・鉛、スズ、鉛、金、インジウム、またはアルミニウムを基礎とする材料であってよい。約90重量%の割合のスズ合金と、10重量%の割合のフラックスとを有するはんだ材料が特別に好ましい。鉛フリーはんだ材料が特に好ましい。
【0040】
次に、図面を参照しながら本発明につい説明をするが、これに限定をするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】透明な基板の上の透明な導電性コーティングおよびその上に配置されたデバイス、特に発光ダイオードを備えるデバイス構造を、光を利用していわゆる光はんだ付けで製作するための典型的な方法手順である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1aから図1dには、透明な導電性層と、その上に配置されたデバイス、特に発光ダイオードないしLEDモジュールとを備える透明な基板を含むデバイス構造を製作するための方法手順が示されている。
【0043】
このデバイス構造の製作では、図示した実施形態ではたとえばゾル・ゲル法で、基板1が透明な導電性層で全面的にコーティングされる(図1a)。この層は、たとえばITO層のような導電性の透明な層であるだけでなく、熱を吸収する透明な層でもあるのが好ましい。このような熱を吸収する透明な層は、酸化スズ層であり、たとえばFTO(SnO:F)やATO(SnO:Sb)である。あるいはZnO:Ga;ZnO:B,ZnO:Al,Ag/TiOなども考えられ、ここでxはドーピング濃度と化学当量に依存して1から2の間の範囲内にある。
【0044】
次いで図1bに示すように、たとえばコーティングを局所的に加熱してこれを蒸発させるレーザによって、構造化が行われる。
【0045】
レーザによって構造化される透明な基板は、適用されるレーザのレーザ波長の領域で高い吸収性を有している導電性層を含んでおり、その波長で透過性である透明な基板であるのが好ましい。このような種類のシステムでは、ガラス層はわずかな損傷しか有さない。特に、このような種類のシステムでの亀裂形成はほぼ回避することができる。
【0046】
基板の個々の領域の分離線は、図1bでは符号11.1−11.3で表されている。図1bの構造化に続いて、領域13.1−13.4にデバイス108(領域13.1,13.2にのみ図示)が配置される(図1c−1d)。このデバイスは表面実装デバイス、いわゆるSMDデバイス、たとえばLEDチップである。デバイスは本例では自動式のはんだ付け法によって、特に赤外放射を用いた光はんだ付けによって、導電性で透明な基板へ直接装着され(図1c)、もしくは接続パッド9を介して装着される(図1d)。
【0047】
導電性コーティングが構造化されて通電の役目を果たす、導電性コーティングを備える基板に代えて、透明な基板は、たとえばガラス基板は、たとえば薄い帯状銀である帯状金属を導電性コーティングとして備えていてもよい。条導体として構成された帯状銀は、離れて立って見る者が気づかないほど細く(たとえば幅はわずか数μm)かつ間隔をおいて構成される。
【0048】
次に、デバイスの装着について説明する。
まず、図1cに示すようなデバイスの直接的な装着について説明する。
好ましく適用される方法は、光を用いた個別点はんだ付けであり、これは、デバイスが少数のはんだ付け個所によって基板に装着されるべき場合には、適用されるのが常に好ましい。光はんだ付けではハロゲンランプ(波長:500−1500nm、消費電力:250W)の光が収束ミラーと光学系によって、はんだ付け個所へ集束される。熱放射の吸収により、はんだ付け個所で所要の温度が生じる。
【0049】
基板は、熱を吸収すると同時に導電性の層であり、特に酸化スズ層、たとえばFTO(SnO:F)やAtO(SnO:Sb)であると特別に好ましい。このような種類の層は吸収により、はんだ付け時間が30秒よりも短く、特に10秒よりも短く、特に1から10秒の範囲内である程度に、多くの熱放射を吸収する。出力250Wのハロゲンランプ(波長:500−1500nm)およびSnO:Fでコーティングされたガラス基板については、通常下方から透過照明されるガラス基板の厚みに依存して、次のようなはんだ付け時間が得られる:
基板の厚み はんだ付け時間
4mm 6.5秒
6mm 7.5秒
【0050】
はんだ材料は、たとえばはんだパッド4の形態のはんだペーストとして、光はんだ付けプロセスの前に、基板ないし基板に塗布された導電性層とデバイスが結合されるべき個所でガラス基板に塗布される。
【0051】
はんだペーストは、はんだ金属粉末とフラックスとのペースト状の混合物であり、主として表面実装デバイス(SMD)をはんだ付けするのに用いられる。SMDはんだ付けに適したはんだペーストは、たとえば約90%のスズ合金の粒子と、約10%のフラックスとで成り立っている。鉛フリーはんだペースト(RoHS)は、たとえば96.5%のSn、3.0%のAg、0.5%のCuでできている。はんだペーストは、基板の導電性層へ直接(図1c)、または接続パッドへ(図1d)、ディスペンサによって塗布することができる。
【0052】
光によって、特に赤外光によって、たとえばハロゲンランプの光によって、はんだパッド4に注入されるエネルギー量は、はんだペーストに含まれるはんだボールの溶融につながり、次いで、これがはんだペーストの粒子の溶融によって、導電性層とデバイスないしコンポーネントとの間の相互の電気的および機械的な結合を提供し、およびデバイス接触部ないしガラス基板の導電性層(図1c)との結合を提供する。図1cでは、導電性コーティングは4つの領域に構造化されている。領域13.1でのみ、はんだペースト4の溶融によって導電性コーティングと直接結合されるSMDデバイス108が図示されている。
【0053】
はんだペーストのフラックスは、表面張力を引き下げ、酸化を防止し、場合により存在する残留酸化物を還元することによって、溶融プロセスを容易にする。これは後に蒸発し、導電性に優れたはんだ結合をデバイスとはんだペーストの間に残す。
以上に説明した個別はんだ付け法の利点は、次のようにまとめることができる:
−無接触式で正確な熱転移
−比較的少ない投資で低い操業コスト。
【0054】
上に述べた光はんだ付けは、接続パッド9(図1d参照)がガラス基板へ事前に塗布される場合にも適用することができる。
【0055】
接続パッド9は、スクリーン印刷またはステンシル印刷によって導電性基板に塗布され、引き続いて焼き付けられる導電性のペーストまたはレジスト、たとえば導電性銀レジストや銀ペーストを含んでいる。焼き付けによって同時に、特に透明なガラス基板である透明な基板1の初期応力を生じさせることができる。それにより、個々の方法ステップでの高い機械的強度が実現される。
【0056】
接続ペーストを用いた方法では、接続パッドの塗布に続いて、異なる領域13.1−13.4に標準法により発光ダイオードなどのSMDデバイス108が実装される。実装の前に、はんだペーストが接続パッドに塗布される。
【0057】
次いで、ガラス基板にデバイスが実装される。それから先ほど説明したように、光はんだ付けによってはんだ付けプロセスが行われる。たとえばハロゲンランプを用いた光はんだ付けでは、はんだ付けプロセスが行われるべき個所に、ハロゲンランプの光が集束される。光源から発せられる赤外放射がはんだ材料を加熱する。はんだ材料は溶融し、一方のデバイスの結合部ならびに接続パッドを湿潤する。次いでエネルギー注入が終了し、はんだ材料が硬化し、それにより、電気デバイスと導電性層との間で物質接合式の導電性結合が構成される。
【0058】
はんだ材料としては、上に述べた材料が考慮の対象となる。別案の材料は、次のものを基礎とするはんだ材料である:
スズ・鉛
スズ


インジウム
アルミニウム。
【0059】
特に発光ダイオードであるデバイスが、本発明によるはんだ付けプロセスによって、透明な基板に塗布された条導体と導電性結合された後、透明な基板はデバイスとともに引き続き処理され、たとえばさらに別の層を施される。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの条導体または導電性層と電気デバイスを導電性結合する方法において、前記条導体または前記導電性層は光の可視波長領域で実質的に透明の基板に塗布され、
前記透明な基板は熱を吸収する層を含んでおり、
前記導電性層は同時に熱を吸収する層であり、
次の各ステップを含んでおり、すなわち、
前記電気デバイスまたは前記条導体または前記導電性層に前記デバイスが前記導電性層または前記条導体と結合されるべき領域ではんだ材料が施され、
前記はんだ材料に電磁放射を放出するエネルギー源から放出されるエネルギーが自動式に供給され、それにより、
供給されたエネルギーが実質的に熱を吸収する前記条導体または前記導電性層へ前記デバイスが取り付けられるべき個所で注入され、その結果、
前記はんだ材料が溶融し、取外し可能でない物質接合式の導電性結合が前記電気デバイスと前記条導体または前記導電性層との間に短いはんだ付け時間で構成される方法。
【請求項2】
はんだ付け時間は30秒よりも短く、特に10秒よりも短く、好ましくは0.1秒から10秒の範囲内であり、好ましくは1秒から10秒の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
特に光源である前記エネルギー源の放出される電磁放射の波長は500nmから1500nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギー源は消費電力が50Wから1000Wの間の、特に100Wから500Wの間のハロゲンランプであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギー源はレーザ光源であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電磁放射は焦点に集束され、前記焦点は0.1mmから100mm、好ましくは1mmから10mmの範囲内の直径を有していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記透明な基板は上面と下面を有しており、透明な導電性層は上面に塗布され、前記エネルギー源のエネルギーは下面から前記透明な基板を貫いてはんだ材料へ注入されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性層は次の金属酸化物すなわち
−InO:Sn
−SnO:F
−SnO:Sb
−ZnO:Ga
−ZnO:B
−ZnO:F
−ZnO:Al
−Ag/TiO
のうちの1つまたは複数から選択された金属酸化物を含んでおり、ここでxはドーピング濃度に依存して1から2の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記導電性層は次の方法すなわち
−CVD
−PVD
−スプレー熱分解
−スパッタ
−ゾル・ゲル法
のうちの1つで前記透明な基板に塗布されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記透明な基板はガラス基板またはプラスチック基板であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記透明な基板はガラス基板であり、該ガラス基板は硬化されており、および/または初期応力をかけられていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
はんだ結合は次の方法すなわち
光はんだ付け法
誘導式のはんだ付け法
のうちのいずれか1つにより製作されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記はんだ材料は次の材料すなわち
−スズ・鉛
−スズ
−鉛
−金
−インジウム
−アルミニウム
のうちの1つを基礎とするはんだであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記はんだ材料は前記透明な基板の前記導電性層に塗布され、
前記はんだ材料は前記デバイスと前記透明な基板の前記導電性層との間に導電性結合を構成することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記導電性層または前記条導体に接続個所が塗布され、はんだ材料は前記デバイスと前記接続個所との間で導電性結合を構成することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの条導体または導電性層と電気デバイスを導電性結合する方法において、前記条導体または前記導電性層は光の可視波長領域で実質的に透明の基板に塗布され、
次の各ステップを含んでおり、すなわち、
前記電気デバイスまたは前記条導体または前記導電性層に前記デバイスが前記導電性層または前記条導体と結合されるべき領域ではんだ材料が施され、
前記はんだ材料にエネルギー源から放出されるエネルギーが自動式に供給され、それにより、
前記はんだ材料が溶融し、取外し可能でない物質接合式の導電性結合が前記電気デバイスと前記条導体または前記導電性層との間に構成される方法。
【請求項17】
前記はんだ材料は前記デバイスと前記透明な基板との間で導電性結合を直接構成することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記導電性層または前記条導体に接続個所が塗布され、前記はんだ材料は前記デバイスと前記接続個所との間で導電性結合を構成することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記透明な基板は上面と下面を有しており、透明な導電性層は上面に塗布され、前記エネルギー源のエネルギーは下面から前記透明な基板を貫いてはんだ材料へ注入されることを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記透明な基板は熱を吸収する層を含んでいることを特徴とする、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記導電性層は同時に熱を吸収する層であることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記導電性層は次の金属酸化物すなわち
−InO:Sn
−SnO:F
−SnO:Sb
−ZnO:Ga
−ZnO:B
−ZnO:F
−ZnO:Al
−Ag/TiO
のうちの1つまたは複数から選択された金属酸化物を含んでおり、ここでxはドーピング濃度に依存して1から2の範囲内にあることを特徴とする、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記導電性層は次の方法すなわち
−CVD
−PVD
−スプレー熱分解
−スパッタ
−ゾル・ゲル法
のうちの1つで前記透明な基板に塗布されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記透明な基板はガラス基板またはプラスチック基板であることを特徴とする、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記透明な基板はガラス基板であり、該ガラス基板は硬化されており、および/または初期応力をかけられていることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
はんだ結合は次の方法すなわち
−光はんだ付け法
−誘導式のはんだ付け法
のうちのいずれか1つにより製作されることを特徴とする、請求項16から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記エネルギー源は電磁放射を放出するエネルギー源であることを特徴とする、請求項16から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記エネルギー源は光源であり、特にハロゲンランプであることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記はんだ材料は次の材料すなわち
−スズ・鉛
−スズ
−鉛
−金
−インジウム
−アルミニウム
のうちの1つを基礎とするはんだであることを特徴とする、請求項16から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記はんだ材料には短い時間で、好ましくは30秒よりも短く、特に10秒よりも短く、好ましくは1秒から10秒の範囲内でエネルギーが供給されることを特徴とする、請求項16から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
供給されるのは光エネルギーであり、前記光エネルギーの波長は500nmから1500nmの範囲内であることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
供給される光エネルギーはハロゲンランプから提供され、前記ハロゲンランプは100Wから500Wの消費電力を有していることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記光エネルギーは焦点に集束され、前記焦点は0.1mmから100mm、好ましくは1mmから10mmの範囲内の直径を有していることを特徴とする、請求項31から32のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−524389(P2012−524389A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505070(P2012−505070)
【出願日】平成22年3月27日(2010.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001961
【国際公開番号】WO2010/118821
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】