説明

透明体シート状物の表面欠陥検査装置

【課題】透明体シート状物表面に発生した曲率変化の小さな凹凸状欠陥を、最も鮮明な明暗像になる状態で結像させることにより、欠陥を漏れなく検出し、信頼性の高い欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】走行する透明体のシート状物表面に発生した凹凸状欠陥の検査において、走行する透明体のシート状物表面に発生した凹凸状欠陥の検査において、光源から発した平行光の照射方向に配置したミラーによって反射させる機構を有した照明手段と、この平行光をシート状物の走行方向に対して斜めに透過させ、透過した光を結像させるための曲面状のスクリーンと、スクリーンの曲面に結像した光を、合焦するように、スクリーンの曲面の曲率半径上に合焦点を起点として角度調節できる機構を有する撮像手段と、撮像手段によってスクリーンに結像した光を明暗信号として検出する信号処理手段とを具備することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明体のシート状物表面の凹凸状欠陥をインラインで検出および判定する低コストの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶等に用いる光学フィルムや電子機器部品等に用いる高機能性フィルムは、近年ますます異物や欠陥に対する要求規格が厳しくなりつつある。これらのシート状物はクリーンルームで製造され、製造ライン中にある欠陥検査機によってシート状物の異物や欠陥を検出することで品質の管理が行われている。しかしながら、工程内のロール等に付着した異物が原因となってシート状物表面に凹み欠陥や凸状欠陥等(以下、凹凸状欠陥と称す)が発生することがある。この凹凸状欠陥を検知するために、光を透過させて透過光の濃度変化によって検出する欠陥検査機が設置されているが、この検出方法では凹凸状欠陥に依って生じる濃度差が小さく、凹凸状欠陥を見逃すといった問題があった。また、出荷前の目視検査で品質規格外の凹凸状欠陥が発見されることもあり、その場合、膨大な廃棄損出や機会損出につながるといった問題があった。また、目視検査でも凹凸状欠陥を見逃して出荷するリスクがあり、多大な損出をもたらす恐れがある。
【0003】
この問題を解決するため、シート状物のライン中で、走行方向から蛍光灯の直線状の光を傾けて投射し、透過光をCCDカメラで明暗信号として取り込み、光量ムラを補正しながら打痕等の凹凸状欠陥を検査する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。しかしながら、曲率変化が小さな凹凸状欠陥は、蛍光灯等で構成した直線状の光では平行性に劣るため、欠陥がないシート状物の透過光との差異が小さく、欠陥を見逃す場合があるといった問題があった。
【0004】
また、シート状物のライン中で、斜め方向から平行光を照射し、透過光と反射光を各々独立の光学系と撮像素子で検出し、各々の強度分布を比較照合して凹凸状欠陥を検査する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、この方法は、2つの光学系と撮像素子が必要となるため装置にコストがかかり、さらに、複数の光学系の光軸を合わせて調整することは困難であり、多大な時間を費やすといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−236493
【特許文献2】特開2001−41719
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の技術の上記問題点を解決し、透明体シート状物表面に発生した曲率変化の小さな凹凸状欠陥を、最も鮮明な明暗像になる状態で結像させることにより、欠陥を漏れなく検出し、信頼性の高い欠陥検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、走行する透明体のシート状物表面に発生した凹凸状欠陥の検査において、光源から発した平行光の照射方向に配置したミラーによって反射させる機構を有した照明手段と、
この平行光をシート状物の走行方向に対して斜めに透過させ、透過した光を結像させるための曲面状のスクリーンと、
該スクリーンの曲面に結像した光を、合焦するように、スクリーンの曲面の曲率半径上に合焦点を起点として角度調節できる機構を有する撮像手段と、
該撮像手段によって該スクリーンに結像した光を明暗信号として検出する信号処理手段と、
を具備することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0008】
好ましい実施態様としては、前記信号処理手段が、検出した明暗信号のレベルをしきい値によって凹凸状欠陥として検知し、凹凸状欠陥の寸法及び形状を判定することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0009】
好ましい実施態様としては、前記照明手段のミラーで反射した光が、シート状物の走行方向に対して入射角10°〜60°で、透過することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、前記撮像手段は、照明手段のミラーの偏向角度と連動し、曲面のスクリーンの結像位置に合うように合焦位置を軸として角度調節する機構を有することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、前記撮像手段に一次元イメージセンサを用い、スキャン毎の明暗信号を前記信号処理手段によって一定ライン数を更新しながら蓄積し、明暗信号のレベルによって複数のしきい値を設定し、その明暗信号のレベルによって凹状と凸状の判定や凹凸の大きさを推定し、しきい値を越えた幅から凹凸状欠陥の寸法として判定することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明体シート状物表面の曲率変化の小さな凹凸状欠陥でも高感度の検出が可能となって欠陥を漏れなく検出し、比較的単純な信号処理によって欠陥の寸法や凹凸の大きさをリアルタイムに判定することができる信頼性の高い欠陥検査装置が得られる。その結果、工程異常を早期に発見して損出拡大を防止し、信頼性の高い品質管理ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る透明体シート状物表面の凹凸状欠陥検査装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスクリーン形状の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスクリーン形状の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシート状物への光の入射角度による凹凸状欠陥の結像イメージを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係わる透明体シート状物の欠陥検査装置は、走行する透明体のシート状物表面に発生した凹凸状欠陥の検査において、光源から発した平行光の照射方向に配置したミラーによって偏向角度を調節して反射させる機構を有した照明手段と、この平行光をシート状物の走行方向に対して斜めに透過させ、透過した光を結像させるための曲面状のスクリーンと、該スクリーンの曲面に結像した光を、暗視野方向のどの位置からでも合焦するように、スクリーンの曲面の曲率半径上に合焦点を起点として角度調節できる機構を有する撮像手段と、該撮像手段によってスクリーンに結像した光を明暗信号として検出する信号処理手段とを具備することを特徴としている。
【0015】
本発明に係わる透明体シート状物の欠陥検査装置は、前記信号処理手段が、検出した明暗信号のレベルをしきい値によって凹凸状欠陥として検知し、凹凸状欠陥の寸法及び形状を判定することを特徴としている。
【0016】
ここで、凹凸状欠陥とは、シート状物に異物などが押し当てられた面が、湾曲して凹み、その反対面が凸状に膨らんだ欠陥をいい、両面が凹状または両面が凸状の欠陥も含む。
【0017】
ここで、平行光とは、光束の各光線が重なることがなく、照明方向の光軸に対して平行に近い光線の成分で構成された光をいい、また、光束の各光線が重なることがなく、照明方向の光軸に対して所定の角度の拡がりがある光も含む。
【0018】
また、平行光をシート状物の走行方向に対して斜めに透過させてスクリーンに投影して結像させることにより、凹凸状欠陥がレンズと等価な屈折作用により、投影像に明暗が生じる。すなわち、光が集光される部位の像は明るく、光が屈折によって入射しない部位の像は暗くなる。
【0019】
ここで、スクリーン表面の性状は、光が正反射する鏡面ではなく、光が拡散する粗面を選択して投影像を結像させる。
【0020】
ここで、スクリーンの走行方向の曲面は、撮像手段の合焦位置を直径とした曲率半径にすることで、投影像がスクリーンの曲面のどの位置に結像しても、合焦位置を回転軸としてカメラの角度を調節することによって常にピントが合った状態となる。また、スクリーンの走行方向の断面はシート状物の幅方向に平行で同一とし、シート状物の幅方向の検査エリアでは、投影像が結像するスクリーンの曲面の位置は幅方向で同一となる。
【0021】
ここで、投影像のスクリーンの曲面での結像位置は、照明手段のミラーによって調節する平行光の入射角度によって決まっており、ミラーの回転角度から撮像手段の角度が幾何学的に決まる。
【0022】
ここで、撮像手段は一次元イメージセンサカメラ等を用い、スクリーンに結像させた画像を連続的に撮像し、凹凸状欠陥によって生じた陰影を明暗の電気信号として検出する。この明暗の電気信号を信号処理手段によって複数のしきい値で判定することにより、凹凸状欠陥の陰影の濃度による大きさが検出でき、陰影の濃度に比例する凹凸状欠陥の断面変化の大きさが推定できる。
【0023】
上記構成によれば、平行光をミラーによってシート状物の走行方向に対して斜めに透過させ、曲面状のスクリーンに結像した光を、角度調節して合焦点から撮像し、検出した明暗信号を複数のしきい値によって判定することにより、凹凸状欠陥の寸法や凹凸の大きさを検査することが可能となる。
【0024】
本発明に係わる透明体シート状物の欠陥検査装置は、前記照明手段のミラーで反射した光が、シート状物の走行方向に対して入射角10°〜60°で、透過することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0025】
ここで、スクリーンに結像した凹凸状欠陥の部位と凹凸状欠陥がない部位との明暗の差は、凹凸状欠陥の曲率変化および平行光照明の入射角度と、シート状物の平均厚みや屈折率等の品種とに依存しており、曲率変化が小さな軽微な凹凸状欠陥でも明暗の光学的濃度差を生じさせるためには、入射角度をシート状物に対して浅くする方が有利である。入射角度を浅くすることで、軽微な凹凸状欠陥でも明暗の光学的濃度差を生じせしめ、シート状物の検査エリアも広くできる一方で、全体的に暗い画像となって地合ノイズも強調されるため、検出が必要な凹凸状欠陥と地合との明暗の差が区別できる範囲で入射角度を調整し、シート状物の検査エリアを設定することが好ましい。
【0026】
従って、入射角はシート状物の平均厚みや屈折率等の品種と、凹凸状欠陥の曲率変化によって最適な角度を決定することが好ましい。より好ましくは、予めシート状物の品種毎に検出すべき凹凸状欠陥をサンプリングしておき、適切な入射角を調査し、信号処理手段に登録し、品種毎に入射角を適切な値に自動で照明手段のミラーの角度を調節する。
【0027】
従って、シート状物の品種と検出すべき凹凸状欠陥に対して、最適な光学条件に構成でき、感度の高い凹凸状欠陥の検査ができる点で優れている。
【0028】
本発明に係わる透明体シート状物の欠陥検査装置は、撮像手段は、シート状物に対する斜めの入射角度を調整するために変化させた照明手段のミラーの偏向角度と連動し、曲面のスクリーンの結像位置に合うように合焦位置を軸として角度調節する機構を有することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0029】
ここで、撮像手段の一次元イメージセンサカメラは、対象であるシート状物が移動中に正確に合焦することは困難であるが、撮像手段の合焦距離を半径とした曲面のスクリーンにすることで、合焦位置を軸として撮像手段の角度を調整するだけで凹凸状欠陥の投影像がスクリーンのどの位置で結像しても合焦した状態となり、感度の高い欠陥検査ができる点で優れている。
【0030】
ここで、投影像のスクリーンの曲面での結像位置は、照明手段のミラーによって調節する平行光の入射角度によって決まるため、ミラーの回転角度と連動して撮像手段である一次元イメージセンサカメラ等の角度を調整することが好ましい。
【0031】
本発明に係わる透明体シート状物の欠陥検査装置は、撮像手段に一次元イメージセンサを用い、スキャン毎の明暗信号を前記信号処理手段によって一定ライン数を更新しながら蓄積し、明暗信号のレベルによって複数のしきい値を設定し、その明暗信号のレベルによって凹状と凸状の判定や凹凸の大きさを推定し、しきい値を越えた幅から凹凸状欠陥の寸法として判定することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置に関する。
【0032】
ここで、撮像手段に用いる一次元イメージセンサは、スキャンレートに従って連続して一次元の電気信号に変換して明暗信号として出力され、エンコーダから換算したシート状物のライン速度に基づいて、一次元の明暗信号を信号処理装置で時系列に統合することによって二次元の画像情報が得られる。
【0033】
ここで、明暗信号の立ち下がり幅は、凹凸状欠陥の曲率変化に依存しており、凹状の欠陥は投影像の中央部が暗い面積が大きく周囲が明るくなり、凸状の欠陥は投影像の中央部が明るい面積が大きく周囲が暗くなり、曲率変化が大きいほど、凹状の欠陥の投影像は暗い部位のより暗く、凸状の欠陥の投影像は明るい部位のより明るくなる。
【0034】
上記構成によれば、明暗信号のレベルで複数のしきい値で判定することにより、検出した欠陥の凹状と凸状の判定や、凹と凸の大きさの推定ができ、各しきい値の濃度別の凹凸状欠陥の寸法として判定が可能となる。
【0035】
以下に、本発明に係わる透明体シート状物表面の凹凸状欠陥検査装置に関して図1に基づいて説明する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る透明体シート状物表面の凹凸状欠陥検査装置の一例を示す模式図である。
【0037】
図1において、透明体シート状物6の走行方向をMDとし、幅方向をTDとし、その走行する透明体シート状物6のMDから平行光を斜めに透過させて照射する照明手段1と、平行光をミラー2によって回転軸Aを中心に角度調整する図示していない調整手段と、透明体シート状物6を透過した光を結像させるスクリーン3と、スクリーン3に結像した画像を合焦距離rから適切な角度で明暗信号として検出するための撮像手段4と、透明体シート状物6に図示していない凹凸状欠陥がある場合に、明暗信号のレベルを複数のしきい値によって凹凸状欠陥として検知し、凹凸状欠陥の形状や寸法を判定する信号処理手段5とを具備している。
【0038】
また、撮像手段4はスクリーン3のどの位置に結像した画像も合焦距離rで正確に撮像させるために、撮像手段4の回転軸Bを中心に図示していないステッピングモータ等の制御手段によって角度を調整する。この撮像手段4の回転角度は、ミラー2の角度調整用ステッピングモータ等の制御信号、または、ミラー2の回転角度を図示していないロータリーエンコーダで検出信号に基づき、その角度から幾何計算によって求めることができる。また、撮像手段4にも図示していない角度調整用ステッピングモータ等を設置し、ミラー2の回転角度と連動して撮像手段4の回転角度を調節することが好ましい。
【0039】
また、透明体シート状物6の走行速度は、図示していない近傍のロールに設置したエンコーダから換算することができる。
【0040】
ここで、凹凸状欠陥とは、シート状物に異物などが押し当てられた面が、湾曲して凹み、その反対面が凸状に膨らんだ欠陥をいい、両面が凹状または両面が凸状の欠陥も含む。この凹凸状欠陥は、ロール上やニップロールにおいて、シート状物に異物などが押し当てられた面が、湾曲して凹み、その反対面が凸状に膨らんだ欠陥が主要であるが、異物などが押し当てられてシート状物両面に凹みが生じる場合や、ロール側に凹みがある場合には、シート状物が凸状の欠陥となる場合がある。当然ながら、欠陥の凹凸の向きや大きさや高低差は、接触する異物の大きさや硬さなどによって変化する。
【0041】
ここで、平行光とは、光束の各光線成分が重なることがなく、照明方向の光軸に対して平行に近い光線の成分で構成された光をいう。図1において、照明手段1の光源にはキセノン光源のように点光源であることが好ましく、点光源の出射窓にコリメータレンズなどによって一定の拡がりをもった平行光の光束とすることができ、出射窓から離れて光束が拡大されても各光線成分が重なることはない。
【0042】
また、透明体シート状物6の検査エリアに限定して平行光を照射するために、照明手段1とミラーの間に図示していないマスクを設置することで、TDに平行なスリット状の平行光とすることができ、周辺のロール等で乱反射した光による誤検出を防止する点で好ましい。
【0043】
ここで、照明手段1に用いるミラー2は、反射率が85%以上の光学ミラーを用いることが、光量の減衰を抑制する点で好ましい。
【0044】
また、ミラー2の反射面に回転軸Aを配置し、例えば、0.36°/パルスのステッピングモータで正確に制御することが好ましい。当然ながら、ミラー2での入射角の変化量に対する反射角の変化量は2倍になり、ミラー2の回転角度は透明体シート状物6を透過した光がスクリーン3の範囲内に収まるように限定することが好ましい。
【0045】
また、ミラー2の回転軸Aは、撮像手段4の回転軸Bを中心とした合焦距離rを半径とした円の軌跡上に配置することで、ミラー2の回転角から撮像手段4の回転角を幾何計算する際に簡易になる点で好ましい。
【0046】
ここで、スクリーン3は、撮像手段4の回転軸Bを中心とした合焦距離rを半径とした円の軌跡上に曲面とすることで、スクリーン3上のどの位置に結像しても撮像手段4の角度を調節するだけで、平行光の入射角度を変更する毎の合焦の操作が不要になる点で好ましい。
【0047】
図2は、スクリーン3の形状の一例を示す模式図である。
【0048】
図2において、合焦距離rを曲率半径とした曲面の表面をもつスクリーン3は、MDの断面がTDで同様の形状することで、TDに平行なスリット状の光がスクリーン面上でもTDと平行に結像する。
【0049】
また、スクリーン3の曲面の加工精度は、撮像手段4に用いる受光レンズと光学的検出条件によって決まる被写界深度の範囲内でよく、好ましくは、被写界深度の1/10程度に加工する。
【0050】
また、スクリーン3の拡散表面は、拡散反射する材質の選択、もしくは、金属への白色系の塗装によって実現でき、表面に色斑がないことが好ましい。
【0051】
図3は、スクリーン3の形状の一例を示す模式図である。
【0052】
図3において、合焦距離rを曲率半径とした多段の平面に加工したスクリーン3であり、MDの断面がTDで同様の形状することで、TDに平行なスリット状の光がスクリーン面上でもTDと平行に結像する。この場合、スクリーンへの結像位置は段階的となるので、照明手段1のミラー2の角度も段階的に調節することとなり、撮像手段4の角度調節も段階的になるので、ミラー2の角度の幾何計算を行わずに予め登録したデータベースから一義的に撮像手段4の角度が抽出できる。
【0053】
また、スクリーン3の表面の加工精度は、撮像手段4に用いる受光レンズと光学的検出条件によって決まる被写界深度の範囲内でよく、好ましくは、被写界深度の1/10程度に加工する。
【0054】
また、スクリーン3の拡散表面は、拡散反射する材質の選択、もしくは、金属への白色系の塗装や拡散シートを貼付することで実現でき、表面に色斑がないことが好ましい。
【0055】
図1において、照明手段1のミラー2が水平となる位置で正反射したスリット状の平行光が、透明体シート状物6に対して入射角θで入射位置Pを透過し、撮像手段4を垂直方向から見たスクリーン3の水平接線上の結像位置P’を基準とし、平行光の入射角度θまで浅くする場合、ミラー2は基準位置から回転角度αに調節し、入射位置Pを透過した光はスクリーン3上でP’に結像し、撮像手段4は基準位置からθ’の角度に調節し、平行光の入射角度θまで深くする場合、ミラー2は基準位置から回転角度βに調節し、入射位置Pを透過した光はスクリーン3上でP’に結像し、撮像手段4は基準位置からθ’の角度に調節する。
【0056】
図4は、本発明の実施形態に係るシート状物への光の入射角度による凹凸状欠陥の結像イメージの一例を示す模式図である。
【0057】
図4において、Rは片側が凸状で片側が凹状でレンズ状の凹凸状欠陥を平行光で垂直方向から投影して等倍率で結像させた場合のイメージ図であり、投影像暗部の平均濃度をDとし、横と縦の直径がa=bとなる円状の欠陥を想定した場合、シート状物への平行光の入射を深い角度から浅く変化させたときに投影像のイメージを示した。図1での基準の入射角θでの投影像Bに対し、入射角深いθの投影像Aは暗部の濃度が薄く、大きな像となり、入射角深いθの投影像Cは暗部の濃度が濃く、小さな像となる。投影像の濃度は、D<D1<D2<D3となり、MDの最大直径は b1>b2>b3≧bとなり、TDの最大直径は a1>a2>a3>aとなり、アスペクト比は b0/a0=1であり、1≧ b1/a1 > b2/a2 > b3/a3の関係を示す。
【0058】
ここで、透明体シート状物6への光の入射角の設定は、凹凸状欠陥の投影像の明暗がスクリーン上で最も鮮明になるように調節するのが好ましく、入射角を浅くするほど投影像の濃度は大きくなり、軽微な凹凸状欠陥も検出できる可能性があるが、シート状物の地合ノイズも強調されて誤検出のリスクが生じ、逆に入射角を深くするほど投影像の濃度は小さくなり、軽微な凹凸状欠陥が検出困難になるがあるが、シート状物の地合ノイズは低減するため誤検出のリスクは低減できる。
【0059】
ここで、入射角の条件は、シート状物の平均厚みや屈折率等の品種と、凹凸状欠陥の曲率変化によって最適な角度を決定することが好ましい。また、予めシート状物の品種毎に検出すべき凹凸状欠陥をサンプリングしておき、適切な入射角を調査し、信号処理手段5に登録し、品種毎に入射角を適切な値に自動で照明手段1のミラー2の角度を調節することがより好ましく、本発明者らが鋭意検討の結果、その入射角を10°〜60°の範囲とすることが適切と確認した。
【0060】
図1において、撮像手段4で検出した一次元の明暗信号を信号処理手段5に蓄積して時系列に合成することによって欠陥等の二次元画像が得られ、形状の判定が可能となる。
【0061】
また、撮像手段4には一次元イメージセンサを用い、スキャン毎の明暗信号を信号処理手段5によって一定ライン数を更新しながら蓄積し、しきい値を越えたライン数をMDの欠陥の大きさとして検知し、各ラインの明暗信号の立ち下がり幅からTDの欠陥の大きさとして抽出し、MDの大きさのデータと合成して二次元化し、欠陥の寸法や面積や形状を判定することが好ましい。
【0062】
ここで、撮像手段4の一次元イメージセンサは、スキャンレートに従って連続して一次元の明暗信号が出力され、エンコーダ等から換算したシート状物のライン速度に基づいて、一次元の明暗信号を信号処理手段5で時系列に統合することによって二次元の画像情報が得られる。信号処理手段5ではエンコーダ等から換算したライン速度とスキャンレートから、1スキャン当たりの距離をMD最小単位とし、検知したライン数とかけ合わせて凹凸状欠陥のMD長さとして換算できる。
【0063】
ここで、欠陥の画像は、入射角によってアスペクト比が異なるが、系統的な誤差であるため、設定した入射角に基づいて補正が可能である。
【0064】
ここで、欠陥の画像の明暗信号レベルは、入射角によって変化するが、系統的な変化であるため、設定した入射角に基づいて補正後に比較や照合が可能になり、入射角に連動して明暗のしきい値のレベルを変化させることにより、凹凸状欠陥の曲率変化に依存したNGやOKの判定が可能となる。
【0065】
ここで、明暗信号の立ち下がり幅は、凹凸状欠陥の曲率変化に依存しており、凹状の欠陥は投影像の中央部が暗い面積が大きく周囲が明るくなり、凸状の欠陥は投影像の中央部が明るい面積が大きく周囲が暗くなり、曲率変化が大きいほど、凹状の欠陥の投影像は暗い部位のより暗く、凸状の欠陥の投影像は明るい部位のより明るくなる。
【0066】
上記構成によれば、明暗信号のレベルで複数のしきい値で判定することにより、検出した欠陥の凹状と凸状の判定や、凹と凸の大きさの推定ができ、各しきい値の濃度別の凹凸状欠陥の寸法として判定が可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 照明手段
2 ミラー
3 スクリーン
4 撮像手段
5 信号処理手段
6 透明体シート状物
MD 透明体シート状物の走行方向
TD 透明体シート状物の幅方向
A ミラーの回転軸
B 撮像手段の回転軸
θ 平行光のフィルムへの基準入射角
θ 平行光のフィルムへの基準入射角より上方の入射角
θ 平行光のフィルムへの基準入射角より下方の入射角
α 入射角θのミラーの回転角度
β 入射角θのミラーの回転角度
平行光光軸のフィルムへの入射位置
平行光光軸のフィルムへの入射位置より上方の入射位置
平行光光軸のフィルムへの入射位置より下方の入射位置
’ 入射角θのスクリーン上の結像位置
’ 入射角θのスクリーン上の結像位置
’ 入射角θのスクリーン上の結像位置
r 撮像手段の合焦距離
θ’ P’に対応した撮像手段の回転角度
θ’ P’に対応した撮像手段の回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する透明体のシート状物表面に発生した凹凸状欠陥の検査において、光源から発した平行光の照射方向に配置したミラーによって反射させる機構を有した照明手段と、
この平行光をシート状物の走行方向に対して斜めに透過させ、透過した光を結像させるための曲面状のスクリーンと、
該スクリーンの曲面に結像した光を、合焦するように、スクリーンの曲面の曲率半径上に合焦点を起点として角度調節できる機構を有する撮像手段と、
該撮像手段によって該スクリーンに結像した光を明暗信号として検出する信号処理手段と、
を具備することを特徴とするシート状物の表面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記信号処理手段が、検出した明暗信号のレベルをしきい値によって凹凸状欠陥として検知し、凹凸状欠陥の寸法及び形状を判定することを特徴とする請求項1に記載のシート状物の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記照明手段のミラーで反射した光が、シート状物の走行方向に対して入射角10°〜60°で、透過することを特徴とする請求項1または2に記載のシート状物の表面欠陥検査装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、照明手段のミラーの偏向角度と連動し、曲面のスクリーンの結像位置に合うように合焦位置を軸として角度調節する機構を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状物の表面欠陥検査装置。
【請求項5】
前記撮像手段に一次元イメージセンサを用い、スキャン毎の明暗信号を前記信号処理手段によって一定ライン数を更新しながら蓄積し、明暗信号のレベルによって複数のしきい値を設定し、その明暗信号のレベルによって凹状と凸状の判定や凹凸の大きさを推定し、しきい値を越えた幅から凹凸状欠陥の寸法として判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状物の表面欠陥検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−78144(P2012−78144A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222042(P2010−222042)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】