説明

透明導電性積層フィルム

【課題】静電容量式タッチパネル等に使用される電極フィルムにおいて、透明導電性薄膜がパターニングされた際に、透明導電性薄膜の有る部分と無い部分での光学特性の差が小さいため、視認性に優れ、かつパターニングが強調されにくい透明導電性フィルムを提供する。
【解決手段】透明プラスチックフィルム11からなる基材の少なくとも片面上に、組成傾斜薄膜層13及び透明導電性薄膜層14をこの順に積層した構成を有することを特徴とする透明導電性積層フィルム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面上に組成傾斜薄膜層及び透明導電性薄膜層をこの順で積層した透明導電性フィルムに関するものである。特に静電容量式タッチパネル等のパターニングされた電極フィルムとして用いた場合、透明導電性薄膜層を有する部分と除去された部分での光学特性の差が小さいため、視認性を向上できる透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明プラスチックフィルムからなる基材上に、透明でかつ抵抗が小さい薄膜を積層した透明導電性フィルムは、その導電性を利用した用途、例えば、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(ELと略記される場合がある)ディスプレイなどのようなフラットパネルディスプレイや、抵抗膜式タッチパネルの透明電極など、電気、電子分野の用途に広く使用されている。
【0003】
近年、静電容量式のタッチパネルが携帯電話、携帯音楽端末などのモバイル機器に搭載されるケースが増えてきた。このような静電容量式のタッチパネルではパターニングされた導体上に誘電体層を積層した構成を有し、指などでタッチすることにより、人体の静電容量を介して接地される。この際、パターニング電極と接地点との間の抵抗値に変化が生じ、位置入力を認識する。しかしながら従来の透明導電性フィルムを用いた場合、透明導電性薄膜層を有する部分と除去された部分での光学特性の差が大きいため、パターニングが強調され、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際に視認性が低下するという問題があった。
【0004】
透明導電性フィルムの透過率又は色目を向上させるために、反射防止加工等で用いられている屈折率の異なる層を積層させ光の干渉を利用する方法が提案されている。すなわち、透明導電性薄膜層と基材フィルムの間に屈折率の異なる層を設けて光学干渉を利用する方法が提案されている(特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開平11−286066号公報
【特許文献2】特許第3626624号公報
【特許文献3】特開2006−346878号公報
【0005】
しかしながら、これらの特許文献1〜3記載の透明導電性フィルムは、透明導電性フィルムとしての視認性の改善はできるものの、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜が有る部分と無い部分とでの光学特性の差を小さくすることは考慮されておらず、パターニングした箇所が強調されてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、本発明の目的は、上記の従来の問題点に鑑み、透明導電性薄膜層を有する部分と除去された部分の光学特性の差を小さくすることによって、液晶ディスプレイ等に使用した際に視認性が良好で、かつパターニングが強調されない透明導電性積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであって、上記の課題を解決することができた透明導電性積層とは、以下の構成よりなる。
1. 透明プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面に組成傾斜薄膜層及び透明導電性薄膜層をこの順に設けた透明導電性積層フィルムであって、組成傾斜薄膜層は厚さが20〜500nmであり、組成傾斜薄膜層の屈折率は厚さ方向で異なり、屈折率の最大値が1.70以上(透明導電性薄膜層の屈折率+0.30)以下であり、屈折率の最小値が1.30以上1.65以下であることを特徴とする透明導電性積層フィルム。
2. 組成傾斜薄膜層がMg、Si、Alから選ばれた少なくとも1元素、及びO、N、C、Fから選ばれた少なくとも2元素からなる無機薄膜層であることを特徴とする1.に記載の透明導電性積層フィルム。
3. 組成傾斜薄膜層の屈折率が基材から透明導電性薄膜層側に連続的に減少していることを特徴とする1.又は2.に記載の透明導電性積層フィルム。
4. 透明導電性薄膜層がインジウムを含有する金属酸化物薄膜からなることを特徴とする1.〜3.いずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
5. 透明導電性薄膜層をパターニングした透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層側に屈折率1.52のアクリル系粘着層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した状態において測定した透明導電性薄膜層を有する部分及び透明導電性薄膜層が無い部分の反射率が、下記(1)、(2)、及び(3)式を満たすことを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
0≦|R1−R0|≦1.0 (1)
R1≦5.0 (2)
R0≦5.0 (3)
(R1:透明導電性薄膜層を有する部分のフィルムの反射率、R0:透明導電性薄膜層を有しない部分のフィルムの反射率)
6. 1.〜5.いずれかに記載の透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層をパターニングした透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層側に、屈折率が1.40以上1.70以下の誘電体層を積層したことを特徴とする誘電体層付き透明導電性積層フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の透明導電性積層フィルムは、透明プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面上に、組成傾斜薄膜層及び透明導電性薄膜層の順に積層した構成を有し、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜層を有する部分と有しない部分の光学特性の差が小さいため、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置しても透明導電性薄膜層のパターニングが見えないため視認性の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の透明導電性積層フィルムは、透明プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面上に、組成傾斜薄膜層及び透明導電性薄膜層をこの順に積層した構成を有する。
さらに、上記透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層をパターニングした透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層側に、誘電体層を積層したことを特徴とする透明導電性積層フィルムである。
以下、各層別に詳細に説明する。
【0010】
(透明プラスチックフィルムからなる基材)
本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材とは、有機高分子をフィルム状に溶融押出し又は溶液押出しをしてフィルム状に成形し、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、熱固定、熱弛緩処理を施したフィルムである。有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。
【0011】
これらの有機高分子のなかで、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、これらの有機高分子は他の有機重合体の単量体を少量共重合してもよいし、他の有機高分子をブレンドしてもよい。
【0012】
本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材の厚みは、10〜300μmであることが好ましく、より好ましくは70〜260μmである。プラスチックフィルムの厚みが10μm未満では機械的強度が不足し、透明導電性薄膜のパターン形成工程でのハンドリングが難しくなるため好ましくない。一方、厚みが300μmを越えると、タッチパネルの厚みが厚くなりすぎるため、モバイル機器などには適さない。
【0013】
本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0014】
また、本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材には、組成傾斜薄膜層との密着性向上、耐薬品性の付与、オリゴマーなどの低分子量物の析出防止を目的として、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層を設けてもよい。
【0015】
前記の硬化型樹脂は、加熱、紫外線照射、電子線照射などのエネルギー印加により硬化する樹脂であれば特に限定されなく、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。生産性の観点からは、紫外線硬化型樹脂を主成分とする硬化型樹脂が好ましい。
【0016】
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどから合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。必要に応じて、これらの多官能性の樹脂に単官能性の単量体、例えば、ビニルピロリドン、メチルメタクリレート、スチレンなどを加えて共重合させることができる。
【0017】
また、組成傾斜薄膜層と硬化物層との付着力を向上するために、硬化物層を更に表面処理することが有効である。具体的な方法としては、グロー放電又はコロナ放電を照射する放電処理法を用いて、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基を増加させる方法、酸又はアルカリで処理する化学薬品処理法を用いて、アミノ基、水酸基、カルボニル基などの極性基を増加させる方法、などが挙げられる。
【0018】
紫外線硬化型樹脂は、通常、光重合開始剤を添加して使用される。光重合開始剤としては、紫外線を吸収してラジカルを発生する公知の化合物を特に限定なく使用することができ、このような光重合開始剤としては、例えば、各種ベンゾイン類、フェニルケトン類、ベンゾフェノン類などを挙げることができる。光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、1〜5質量部とすることが好ましい。
【0019】
塗布液中の樹脂成分の濃度は、コーティング法に応じた粘度などを考慮して適切に選択することができる。例えば、塗布液中に紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤の合計量が占める割合は、通常は20〜80質量%である。また、この塗布液には、必要に応じて、その他の公知の添加剤、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などのレベリング剤などを添加してもよい。
【0020】
本発明において、調製された塗布液は透明プラスチックフィルムからなる基材上にコーティングされる。コーティング法には特に限定されなく、バーコート法、グラビアコート法、リバースコート法などの従来から知られている方法を使用することができる。
【0021】
また、硬化物層の厚みは0.1〜15μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜8μmである。硬化物層の厚みが0.1μm未満の場合には、十分に架橋した構造が形成されにくくなるため、耐薬品性が低下しやすくなり、オリゴマーなどの低分子量による密着性の低下もおこりやすくなる。一方、硬化物層の厚みが15μmを超える場合には、生産性が低下する傾向がある。
【0022】
(組成傾斜薄膜層)
本発明における組成傾斜薄膜層は、無機の薄膜であり、例えば、Mg、Si、Alから選ばれた少なくとも1元素、及びO、N、C、Fから選ばれた少なくとも2元素からなる無機薄膜層が挙げられる。組成傾斜薄膜層は、厚み方向で薄膜層を構成する各元素の組成が傾斜的に変化している。組成傾斜薄膜層の組成を厚み方向で傾斜的に変化させることによって、組成傾斜薄膜層の屈折率は、基材から透明導電性薄膜層側に連続的に減少している。
【0023】
本発明における組成傾斜薄膜層の屈折率の最大値(以下、最大屈折率ともいう)は、1.70以上(透明導電性薄膜層の屈折率+0.30)以下である。好ましくは(透明導電性薄膜層の屈折率の値)以下である。さらに好ましくは(透明導電性薄膜層の屈折率−0.10)以下である。組成傾斜薄膜層の最大屈折率が(透明導電性薄膜層の屈折率+0.30)を越える場合、透明導電性薄膜層の有無部での反射率差は低下するものの、反射率の絶対値が大きくなり、視認性が低下する。一方、組成傾斜薄膜層中の屈折率の最小値(以下、最小屈折率ともいう)は1.30以上1.65以下である。組成傾斜薄膜層中の最小屈折率が1.30未満の場合、ポーラスな膜となるため、透明導電性薄膜を積層した場合、透明導電性薄膜層の電気特性を低下させてしまう。また、組成傾斜薄膜層中の最小屈折率が1.65を超える場合、透明導電性薄膜層の有無部での反射率差は低下するものの、反射率の絶対値が大きくなり、視認性が低下する。
【0024】
組成傾斜薄膜層の最大屈折率と最小屈折率の差は0.10以上0.80以下が好ましい。好ましくは0.15以上0.70以下、さらに好ましくは0.20以上0.60以下であり。組成傾斜薄膜層の最大屈折率と最小屈折率の差が0.10未満である場合、透明導電性薄膜層の有無部での反射率差を低下することが困難となる。一方、組成傾斜薄膜層の最大屈折率と最小屈折率の差が0.80を超える場合、反射率の絶対値が大きくなり、視認性が低下する。
【0025】
組成傾斜薄膜層の具体的素材としては、SiとOとNの元素からなる無機薄膜、AlとOとNの元素からなる無機薄膜、及びこれらの複合酸化物からなる無機薄膜などが挙げられる。また、光学特性を阻害しない範囲でこれらの無機薄膜にはC元素を含有していてもよい。
【0026】
組成傾斜薄膜層の膜厚は、20〜500nmであり、好ましくは、20〜250nmである。膜厚が20nm未満の場合、連続的な組成変化が困難となる。一方、膜厚が500nmを超える場合、組成傾斜薄膜層の応力が大きくなり、透明導電性薄膜層にクラックが発生しやすくなる。
【0027】
本発明における組成傾斜薄膜層は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などの成膜方法で成膜することができる。必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができるが、膜厚のバラツキを低減するという観点からスパッタリング法が好ましい。
【0028】
例えば、スパッタリング法でSi、O、Nの3元素からなる組成傾斜薄膜層を作製する場合は、シリコン(珪素)ターゲットを用いて窒素、酸素の流量比を連続的に変化させながらスパッタリングを行う方法が挙げられる。この際、成膜雰囲気中の窒素、酸素の比をモニタリングしながら行うことが好ましい。
【0029】
(透明導電性薄膜層)
本発明における透明導電性薄膜としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物などが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物が好適である。
本発明において透明導電性薄膜層を積層して、透明導電性積層フィルムの表面抵抗値を好ましくは50〜2000Ω/□、更に好ましくは100〜1500Ω/□とすることによって、透明導電性積層フィルムとしてタッチパネルなどに使用できる。表面抵抗値が50Ω/□未満であったり、2000Ω/□を超える場合、タッチパネルの位置認識精度が悪くなり、好ましくない。
【0030】
透明導電性薄膜の膜厚は、4〜30nmの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜25nmである。透明導電性薄膜の膜厚が4nm未満の場合、連続した薄膜になりにくく、良好な導電性が得られにくくなる。一方、透明導電性薄膜の膜厚が30nmよりも厚い場合、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電性薄膜層を有する部分と有しない部分の光学特性を近づけることが困難となる。
【0031】
透明導電性薄膜の層構造は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造でもよい。2層以上の積層構造を有する透明導電性薄膜の場合、各層を構成する前記の金属酸化物は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
本発明における透明導電性薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。
例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0033】
(屈折率が1.40以上1.70以下の誘電体層(保護層))
本発明において屈折率が1.40以上1.70以下の誘電体層とは、表示体の部材として透明導電性積層フィルムを使用する際に透明導電性薄膜を保護するために積層する保護層としての目的と、指などでタッチした際の静電容量変化を大きくし、位置入力精度を向上させる目的を併せ持つ層である。
屈折率が1.40以上1.70以下の誘電体層としては、例えば、SiO、Alなどの透明金属酸化物及びSiO−Al等の複合金属酸化物、アクリル、シリコーン、ポリエステル系の樹脂からなる有機物等が用いられる。
【0034】
(透明導電性積層フィルムの光学特性)
本願発明においては、透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層をパターニングしてから、屈折率が1.40以上1.70以下の誘電体層を透明導電性薄膜層側に積層した状態において、透明導電性薄膜層を有する部分と有しない部分の光学特性の差が少ないことと反射率が大きすぎないことが重要であり、透明導電性薄膜側に屈折率1.52のアクリル系粘着層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製 A4340、厚さ188μm)を保護フィルムとして貼り合わせた状態において測定した透明導電性薄膜層を有する部分及び透明導電性薄膜層が無い部分の反射率の値が、下記(1)及び(2)、(3)式を満たすことが好ましい。
0≦|R1−R0|≦1.0 (1)
R1≦5.0 (2)
R0≦5.0 (3)
(R1:透明導電性薄膜層を有する部分のフィルムの反射率、
R0:透明導電性薄膜層を有しない部分のフィルムの反射率)
【0035】
(誘電体層付き透明導電性積層フィルム)
本発明の誘電体層付き透明導電性積層フィルムは、上記本発明の透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層をパターニングした透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層側に、上記の屈折率が1.40以上1.70以下の誘電体層を積層した誘電体層付き透明導電性積層フィルムである。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、透明導電性積層フィルムの性能は、下記の方法により測定した。
【0037】
(1)反射率
日立製分光光度計U3500の積分球測定モードで測定光のサンプルへの入射角度を10度とし、透明導電性積層フィルムサンプルの裏面側に市販の黒色スプレーを用いて遮光層を形成し、サンプルの裏面反射や裏面側からの光の入射がない状態で波長550nmの反射率を測定した。
なお、(1)式及び(2)、(3)式におけるR1、R0は、透明導電性積層フィルムにエッチングレジストを印刷した後、1N塩酸中に浸漬し、更にアルカリ(1N−水酸化ナトリウム水溶液)浸漬により、5×5cmのパターンを形成した。パターニングした透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜側に屈折率1.52のアクリル系粘着層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製 A4340、厚さ188μm)を保護フィルムとして貼り合わせた状態において測定した透明導電性薄膜層を有する部分及び透明導電性薄膜層が無い部分の反射率の値を測定した。
【0038】
(2)表面抵抗値
JIS−K7194に準拠し、4端子法にて透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層の表面抵抗値を測定した。測定器は、三菱油化(株)製、Lotest AMCP−T400を用いた。
【0039】
(3)視認性評価
透明導電性積層フィルムにエッチングレジストを印刷した後、1N塩酸中に浸漬し、更にアルカリ(1N−水酸化ナトリウム水溶液)浸漬により、1×3cmのパターンを形成した。透明導電性薄膜側に屈折率1.52のアクリル系粘着層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記する)フィルム(東洋紡績社製 A4340、厚さ188μm)を保護フィルムとして貼り合わせた。富士通社製FMV−BIBLOLOOX T70M/Tを用いて画面を白色表示にし、保護フィルムを貼り合わせたフィルムをその前に置いて、様々な角度からパターニングの見え方を評価した。
○: パターニングがほとんどみえない。
△: パターニングが少しみえる。
×: パターニングがみえる。
【0040】
(4)組成傾斜薄膜層、透明導電性薄膜層の膜厚
組成傾斜薄膜層、透明導電性薄膜層を積層したフィルム試料片を1mm×10mmの大きさに切り出し、電子顕微鏡用エポキシ樹脂に包埋した。これをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定し、包埋した試料片の短辺に平行な断面薄切片を作製した。次いで、この切片の薄膜の著しい損傷がない部位において、透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM−2010)を用い、加速電圧200kV、明視野で観察倍率1万倍にて写真撮影を行って得られた写真から膜厚を求めた。
【0041】
(5)組成傾斜薄膜層に用いる薄膜層、透明導電性薄膜層の屈折率
ガラス(corning7059)上に組成傾斜薄膜層に用いる薄膜層、透明導電性薄膜層をそれぞれ同成膜条件にて作製した試料について分光エリプソメーター(大塚電子株式会社製、FE−5000)を用いて550nmの屈折率を測定した。
【0042】
(6)パターニング後の透明導電性薄膜の端部間の抵抗
透明導電性積層フィルムにエッチングレジストを印刷した後、1N塩酸中に浸漬し、更にアルカリ(1N−水酸化ナトリウム水溶液)浸漬により、1×3cmのパターンを形成した。このようにして作製したパターンの端部間(2.6cm)の抵抗を測定した。
【0043】
〔実施例1〕
光重合開始剤含有紫外線硬化型アクリル系樹脂(大日精化工業社製、セイカビームEXF−01J)100質量部に、溶剤としてトルエン/MEK(80/20:質量比)の混合溶媒を、固形分濃度が50質量%になるように加え、撹拌して均一に溶解し塗布液を調製した。
【0044】
両面に易接着層を有する二軸配向透明PETフィルム(東洋紡績社製、A4340、厚み188μm)に、塗膜の厚みが5μmになるように、調製した塗布液を、マイヤーバーを用いて塗布した。80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042−5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm)し、塗膜を硬化させた。次いで、反対面についても同様に塗膜を設けた後、180℃で1分間の加熱処理を施して、揮発成分の低減を行った。
【0045】
また、この硬化物層を積層した二軸配向透明PETフィルムを真空暴露するために、真空チェンバー中で巻き返し処理を行った。このときの圧力は0.002Paであり、暴露時間は20分とした。また、センターロールの温度は40℃とした。
【0046】
次に、この硬化物層上に組成傾斜薄膜層として珪素(Si)、酸素(O)、及び窒素(N)の元素からなる膜を成膜した。このとき、スパッタリング前の圧力を0.0001Paとし、ターゲットとして珪素を用いて、DC電力を印加した。また、放電ガスとしてArガスを導入した。N、Oガスの比率(N/O)を成膜時間とともに徐々に減少させながら、0.4Paの雰囲気下でDCマグネトロンスパッタリング法を用いて成膜した。また、センターロール温度は0℃として、スパッタリングを行った。
【0047】
また、雰囲気の窒素、酸素分圧をスパッタプロセスモニター(LEYBOLD INFICON社製、XPR2)にて常時観測しながら、薄膜中の窒素、酸素比が所定の比率になるように窒素、酸素ガスの流量計にフィートバックした。以上のようにして、最大屈折率が1.95、最小屈折率が1.48、厚さ52nmのSi、O、及びNの元素からなる組成傾斜薄膜層を堆積させた。
【0048】
次に、この組成傾斜薄膜層上にインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を成膜した。このとき、スパッタリング前の圧力を0.0001Paとし、ターゲットとして酸化スズを10質量%含有した酸化インジウム(住友金属鉱山社製、密度7.1g/cm)に用いて、2W/cmのDC電力を印加した。また、Arガスを130sccm、Oガスを表面抵抗値が最小となる流速で流し、0.4Paの雰囲気下でDCマグネトロンスパッタリング法を用いて成膜した。また、センターロール温度は10℃として、スパッタリングを行った。
【0049】
また、雰囲気の酸素分圧をスパッタプロセスモニター(LEYBOLD INFICON社製、XPR2)にて常時観測しながら、インジウム−スズ複合酸化物薄膜中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量計及びDC電源にフィートバックした。以上のようにして、厚さ20nm、屈折率1.99のインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を堆積させた。
【0050】
〔実施例2〕
ターゲットを珪素からアルミニウムに変更する以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを作製した。このようにして最大屈折率が1.98、最小屈折率が1.65、厚さ59nmのAl、O、及びN元素からなる組成傾斜薄膜層を堆積させた。
【0051】
〔実施例3〕
ターゲットを珪素−アルミニウム(30:70)に変更する以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを作製した。このようにして最大屈折率が1.96、最小屈折率が1.55、厚さ59nmのSi、Al、O、及びNの元素からなる組成傾斜薄膜層を堆積させた。
【0052】
〔実施例4〕
、Oガスの比率(N/O)を成膜時間とともに徐々に増加させ、組成傾斜薄膜層の厚さを220nmとする以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを作製した。
【0053】
〔比較例1〕
組成傾斜薄膜層を設けない以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを作製した。
【0054】
〔比較例2〕
組成傾斜薄膜層の厚さを700nmにした以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを作製した。
【0055】
〔比較例3〕
組成傾斜薄膜層の厚さを15nmにした以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを作製した。
【0056】
〔比較例4〕
組成傾斜薄膜層を作製する際に、ターゲットとして珪素、チタン(Ti)の2枚のターゲットを用いた。放電ガスとしてArガスを、反応性ガスとしてOガスを導入し、0.4Paの雰囲気下でACマグネトロンスパッタリング法を用いて成膜した。また、センターロール温度は0℃として、フィルムをセンターロール上に沿って搬送することにより厚み方向に組成の傾斜した組成傾斜薄膜層を作製した。以上のようにして、最大屈折率が2.35、最小屈折率が1.48、厚さ41nmのTi、Si、及びOの元素からなる組成傾斜薄膜層を堆積させた。組成傾斜薄膜層以外は実施例1と同様にして透明導電性積層フィルムを作製した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果より、本願発明の範囲を満足する実施例1〜4記載の透明導電性積層フィルムは、透明導電性薄膜層をパターニングしても、パターニングされた部分が強調されることがないため、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置して用いた際に、視認性に優れるものであった。
一方、組成傾斜薄膜層の屈折率が適切でない、又は膜厚が適切でない比較例1〜4に記載の透明導電性積層フィルムは、パターニングされた部分とされていない部分の差が見えるために視認性が劣った。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の透明導電性積層フィルムは、透明導電性薄膜層のパターニング部と非パターニング部の光学特性の差が小さく、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際、視認性に優れるため、静電容量式のタッチパネル用の電極フィルムとして特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の透明導電性積層フィルムの説明図である。
【符号の説明】
【0061】
10:透明導電性フィルム
11:透明プラスチックフィルム(基材)
12:硬化物層
13:組成傾斜薄膜層
14:透明導電性薄膜層
20:誘電体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面に組成傾斜薄膜層及び透明導電性薄膜層をこの順に設けた透明導電性積層フィルムであって、組成傾斜薄膜層は厚さが20〜500nmであり、組成傾斜薄膜層の屈折率は厚さ方向で異なり、屈折率の最大値が1.70以上(透明導電性薄膜層の屈折率+0.30)以下であり、屈折率の最小値が1.30以上1.65以下であることを特徴とする透明導電性積層フィルム。
【請求項2】
組成傾斜薄膜層がMg、Si、Alから選ばれた少なくとも1元素、及びO、N、C、Fから選ばれた少なくとも2元素からなる無機薄膜層であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項3】
組成傾斜薄膜層の屈折率が基材から透明導電性薄膜層側に連続的に減少していることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項4】
透明導電性薄膜層がインジウムを含有する金属酸化物薄膜からなることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項5】
透明導電性薄膜層をパターニングした透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層側に屈折率1.52のアクリル系粘着層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した状態において測定した透明導電性薄膜層を有する部分及び透明導電性薄膜層が無い部分の反射率が、下記(1)、(2)、及び(3)式を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
0≦|R1−R0|≦1.0 (1)
R1≦5.0 (2)
R0≦5.0 (3)
(R1:透明導電性薄膜層を有する部分のフィルムの反射率、R0:透明導電性薄膜層を有しない部分のフィルムの反射率)
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層をパターニングした透明導電性積層フィルムの透明導電性薄膜層側に、屈折率が1.40以上1.70以下の誘電体層を積層したことを特徴とする誘電体層付き透明導電性積層フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−137447(P2010−137447A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316509(P2008−316509)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】