説明

透明導電膜形成基板、表示パネル及び透明導電膜形成基板の作製方法

【課題】 透明導電膜を形成するスパッタリング成膜においてノジュールの発生が少なく、歩留まりが良く、生産性が良い構造の、透明な導電性膜を備えたカラー表示用の液晶パネル等の導電性膜形成基板を提供する。
【解決手段】 基材の一面側に電極用の透明導電膜を配した表示パネル用の透明導電膜形成基板であって、前記透明導電膜は、基材側から順にインジウム亜鉛酸化物膜とITO膜とを積層している2層構造である。特に、前記透明導電膜は着色層からなるカラーフィルタ上に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の一面側に透明導電膜を配した表示パネル用の透明導電膜形成基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会への進展が著しく、ディスプレイ装置の使用も多様化し、種々のディスプレイ装置が開発、実用化されている。
特に、液晶表示装置は、CRT(Cathode−Ray Tube、ブラウン管) に代わり、広く普及されるようになってきた。
液晶表示装置用のカラー表示用の液晶パネルは、簡単には、TFT基板(TFT; T h i n F i l m T r a n s i s t o r)とカラーフィルタ形成基板(対向基板とも言う)とを対向させ、両基板間に液晶を密封し、更に、TFT基板とカラーフィルタ形成基板の外側に、それぞれ、偏光板を配し、TFT基板の外側にバックライト部を配した構造で、バックライト部からの光が各色の着色層からなるカラーフィルタ(以下、CFとも言う)を通過して表示されるが、各色の着色層からなるカラーフィルタを通過する光は、画素毎に液晶をスイッチング素子としてオン−オフ制御されている。
液晶を制御する方式としては、各基板に垂直な縦方向の電界によって、液晶の配向方向を基板に直交する面内で回転させる方式(垂直電界方式とも言う)と、基板に平行な横方向の電界によって、基板に平行な面内で回転させる方式(横電界方式とも言う)とがある。
垂直電界方式の代表例がTN方式( T w i s t e d N e m a t i c m o d e)であり、横電界方式はIPS(In−Plane Switching)方式として知られている。
このような電界の制御は、通常、TN方式等の場合は、両基板にそれぞれ配設された制御用の電極により行い、IPS方式(横電界方式)の場合は、TFT基板に配設された制御用の電極により行う。
そして、制御用電極としては、従来から、透明導電性のITO膜(錫をドープしたインジウム酸化物)が用いられている。
【0003】
用いられるITO膜の形成方法としては、ITO焼結体をターゲットとし、所定のスパッタリング条件の下で、スパッタリングすることにより、基板上にITO膜を単層膜として形成する方法が、特開平6−24826号公報(特許文献1)、特開平6−247765号公報(特許文献2)等にて知られている。
【特許文献1】特開平6−24826号公報
【特許文献2】特開平6−247765号公報 制御用電極用のITO膜を形成するためのスパッタリングは、一般には、Arガス雰囲気中、1×10-5torr〜1×10-2torr圧下において、成膜する膜組成(例えば、In2 O3 、90w%+SnO2 、10w%組成)で、厚さ8mm〜15mmのITO焼結体をターゲット材として用いて、直流マグネトロンスパッタ方式で行っている。 ターゲットとしては、通常、Cuプレートをバッキング材として、インジウム半田を接着層とし、多数枚の焼結ターゲット材をつなぎ合わせて、1つのターゲットプレートとしたものが用いられている。 尚、制御用電極としてITO膜を配設するカラーフィルタ形成基板の作製においては、カラーフィルタを形成する着色層上に、スパッタリングにてITO膜を形成するため、カラーフィルタを形成する着色層の耐熱性、カラーフィルタを形成する着色層からの脱ガスの面から、低温で成膜を行うことが求められている。
【0004】
ITO膜を成膜する際、ターゲットプレートとスパッタ処理するガラス基板をベースとする処理基板とを、平行ないしほぼ平行に立てた状態で対向させてスパッタを行っているが、上記該ターゲットプレートから飛散したもの(パーティクルとも言う)が、ターゲットプレートの外周部材やターゲットプレートの非エロージョン部分に、付着し、厚くなり、付着したものが剥れて、処理基板への異物付着となり、これが原因で処理基板に成膜におけるキズ(打痕キズとも言う)や異物欠陥やPH等の欠陥を発生させるという問題があった。
ターゲットプレートから飛散したものが付着した部分は、一般には黒色突起物となりノジュールと呼ばれるが、これが原因で異常放電を引き起こし、スパッタリング装置内のパーティクルを増加させ、成膜におけるキズ(打痕キズとも言う)の一因となり、不良を増大させている。
例えば、ターゲットプレート上にITOからなるパーティクルが付着した場合、ノジュールの形成と放電との関係について、以下のようになり、パーティクルの付着がアーク放電の多発を引き起こすと言われている。
異常放電は、以下の(1)〜(3)を繰り返して、発生するものと考えられる。
(1)ターゲットプレート10上にITOからなるパーティクル17が付着し、プラズマによって温度上昇を起して、還元され、高抵抗パーティクルとなり、パーティクルの下部はスパッタされなくなり、突起部10aとなる。(図4(a)〜図4(b))
(2)この突起部10aにITO17aが付着して還元され高抵抗、ノジュールとなり、ノジュール部でアーク放電が発生し破壊され、この部分がパーティクル18となる。(図4(c)〜図4(d))
(3)破壊により発生したパーティクルがターゲットプレート上に付着する。(図4(a))
このように、ノジュールが生成されると、アーク放電の多発による膜質の悪化(打痕キズ等)が生じ、メンテナンス処理を余儀なくされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、近年、種々のディスプレイ装置が開発、実用化され、特に、液晶表示装置用のカラー表示用の液晶パネルの普及がめざましい中、液晶パネルの液晶をスイッチング素子として、画素毎に、画素を通過する光をオン−オフ制御するための、即ち、液晶のスイッチング機能を制御するための、制御用電極を形成するITO膜のスパッタリング成膜においては、ノジュールの発生があり、これが品質不良、生産性低下の原因となり、その対応が求められていた。
本発明はこれに対応するもので、そのスパッタリング成膜においてノジュールの発生が少なく、歩留まりが良く、生産性が良い構造の、透明な導電性膜を備えたカラー表示用の液晶パネル等の導電性膜形成基板を提供しようとするものである。
同時に、そのような導電性膜形成基板を用いた表示パネルを提供しようとするものである。
更に、そのような導電性膜形成基板の作製方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の透明導電膜形成基板は、基材の一面側に電極用の透明導電膜を配した表示パネル用の透明導電膜形成基板であって、前記透明導電膜は、基材側から順にインジウム亜鉛酸化物膜(IZO膜とも言う、IZO(商標名);Indium Zinc Oxide)とITO膜(ITO;Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)とを積層している2層構造であることを特徴とするものである。
そして、上記の透明導電膜形成基板であって、前記透明導電膜は着色層からなるカラーフィルタの上側に配設されていることを特徴とするものである。
そしてまた、前記インジウム亜鉛酸化物膜と前記ITO膜とを合わせた厚みが200nm以下であることを特徴とするものである。
また、上記の透明導電膜形成基板であって、前記インジウム亜鉛酸化膜の膜厚が前記透明導電膜の1/2以下であることを特徴とするものである。
尚、ここで、「着色層からなるカラーフィルタの上側に」とは、「着色層からなるカラーフィルタの基材とは反対側に」を意味する。
【0007】
また、本発明の表示パネルは、上記いずれかの透明導電膜形成基板を用いたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の透明導電膜形成基板の作製方法は、表示パネル用の、基材の一面側に電極用の透明導電膜を配した透明導電膜形成基板の作製方法であって、前記透明導電膜の形成は、順に、成膜する膜組成のインジウム亜鉛酸化物の焼結体からなるターゲットプレートを用いて、スパッタリング成膜する工程と、成膜する膜組成のITO(インジウム錫酸化物)の焼結体からなるターゲットプレートを用いて、スパッタリング成膜する工程とを、行うものであることを特徴とするものである。
そして、上記の透明導電膜形成基板の作製方法であって、前記透明導電膜は着色層からなるカラーフィルタの上側に配設するものであることを特徴とするものである。
【0009】
(作用)
本発明の透明導電膜形成基板は、このような構成にすることによって、透明導電膜を形成する成膜時にノジュールの発生が少なく、歩留まりが良く、生産性が良い構造の導電性膜を備えたカラー表示用の液晶パネル等の導電性膜形成基板の提供を可能としている。
具体的には、透明導電膜は、基材側から順にインジウム亜鉛酸化物膜とITO膜とを積層している2層構造であることにより、これを達成している。
詳しくは、透明導電膜がスパッタリングにより成膜される際に、ITOよりもノジュールが発生しにくいターゲット材料であるインジウム亜鉛酸化物(IZO)を用いてインジウム亜鉛酸化物膜を成膜して配設した後に、該インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜に重ねてITO膜を成膜して配設している2層構造としていることにより、成膜時の、下地からの発ガス(アウターガスとも言う)に起因するノジュールの発生と、成膜品質不良とを、ITO単層の場合に比べ低く抑えることができるものとしており、また、表示パネル用の透明導電膜形成基板として、透過率特性、抵抗値を実用に耐えるものとしている。
透明導電膜をインジウム亜鉛酸化物(IZO)膜を単層とした場合、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜の透過率、抵抗値は、ITO膜単層とした場合に比べて劣り、従来、十分な特性を得ることができなかったが、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜とITO膜との2層構造として、透過率特性、抵抗値を実用に耐えるものとしている。
スパッタリングによる成膜の際、先に図4にて説明したように、ターゲットプレート表面にパーティックルが付着してノジュールは発生するが、ターゲットとして使用した場合、インジウム亜鉛酸化物(IZO)の方がITOよりもノジュールが発生しにくい理由は、成膜の際に、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に比べてITOの方が表面に酸化物が形成され易く、絶縁体を表面部に形成し易いため、ITOの方が放電(図4(c)〜図4(d参照)が起こり易いためと考えられる。
また、膜厚が8μm以上、且つ20μm以下の薄い場合においては、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜による下地からのガスバリア性は、ITO膜を下地にした場合よりも良く、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜の下地からの発ガス(アウターガス)抑制効果を、ITO膜を下地にした場合よりも、良くすることができるからです。
尚、これは、ITOは結晶性であるため、所定以下(20μm以下)の膜厚においては、下地を十分に覆うことができないのに対して、インジウム亜鉛酸化物(IZO)は、非晶質(結晶性でないこと)であるため、膜厚が20μm以下の薄い場合においても、膜厚が8μm以上であれば、下地を十分に覆うことができる、ということに起因しております。
【0010】
そして、前記透明導電膜は着色層からなるカラーフィルタの上側に配設されている、請求項2の発明の形態とすることにより、透明導電膜をITO単層とした場合に比べて、下地の着色層からなるカラーフィルタの発ガスによる影響を効果的に抑制できるものとしている。
特に、本発明の透明導電膜形成基板が、TN方式の表示パネル用の、透明導電膜を着色層からなるカラーフィルタの上側に配設しているカラーフィルタ形成基板である場合、透明導電膜をスパッタリング形成する際に、透明導電膜をITO単層とした場合に比べて、ノジュール発生によるターゲットのメンテナンスの回数、ターゲットの交換頻度を、減らすことができ、成膜の生産性の向上が期待できる。
【0011】
そしてまた、前記インジウム亜鉛酸化物膜と前記ITO膜とを合わせた厚みが200nm以下である請求項3の形態とすることにより、確実に、表示パネル用の透明導電膜形成基板として、透過率特性、抵抗値を実用に耐えるものとしている。
また、前記インジウム亜鉛酸化膜の膜厚が前記透明導電膜の1/2以下である請求項4の形態とすることにより、更に確実に、表示パネル用の透明導電膜形成基板として、透過率特性、抵抗値を実用に耐えるものとしている。
【0012】
本発明の透明導電膜形成基板の作製方法は、このような構成にすることによって、透明導電膜を形成する成膜時にノジュールの発生が少なく、歩留まりの良い構造の導電性膜を備えたカラー表示用の液晶パネル等の導電性膜形成基板の作製方法の提供を可能としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記のように、透明導電膜を形成するスパッタリング成膜においてノジュールの発生が少なく、歩留まりが良く、生産性が良い構造の、透明な導電性膜を備えたカラー表示用の液晶パネル等の導電性膜形成基板の提供を可能とした。
同時に、そのような導電性膜形成基板を用いた表示パネルの提供を可能とした。
更に、そのような導電性膜形成基板の作製方法の提供を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明の透明導電膜形成基板の実施の形態の1例の概略断面図で、図2は本発明の表示パネルの1例の概略断面図で、図3は図1に示す透明導電膜形成基板の作製の処理の概略フローと、図2に示す表示パネルの作製の処理の概略フローを示した処理フロー図である。
尚、図3中S0〜S10は処理ステップを示している。
図1〜図2中、110は透明導電膜形成基板(ここでは、カラーフィルタ形成基板とも言う)、111は透明基板、112はブラックマトリクス、113は着色層(カラーフィルタとも言う)、114はオーバーコート層(保護膜とも言う)、115は共通電極(透明導電膜とも言う)、116は偏光板、120はTFT基板、121は透明基板、122は絶縁層(ゲート絶縁膜とも言う)、123は表示電極(画素電極ともいう)、124はパッシベーション膜、126は偏光板、131は半導体層、132はソース電極、133はドレイン電極、134はゲート電極、140は半導体駆動素子(TFTとも言う))、150は配向膜、160は液晶、170はバックライトである。
【0015】
はじめに、本発明の透明導電膜形成基板の実施の形態の1例を図1に基づいて説明する。
本例の透明導電膜形成基板110は、TN方式の液晶表示パネル用のカラーフィルタ形成基板で、図1に示すように、透明基板111の一面に、透明基板111側から順にブラックマトリクス112、着色層(カラーフィルタ)113、オーバーコート層(保護層、OCとも言う)114、共通電極115を配し、他面に偏光板116を配している。
特に、本例では、共通電極115は、基材である透明基板111側から順にインジウム亜鉛酸化物膜(IZO膜とも言う)とITO膜とを積層している2層構造の、透明導電膜からなる。
本例の導電性膜形成基板は、透明導電膜(共通電極)115が、基材側から順にインジウム亜鉛酸化物膜(IZO膜)とITO膜とを積層している2層構造であることにより、成膜時の、下地からの発ガス(アウターガスとも言う)に起因するノジュールの発生と、成膜品質不良とを、ITO単層の場合に比べ低く抑えることができるものとしている。
透明導電膜をスパッタリング形成する際に、透明導電膜をITO単層とした場合に比べて、ノジュール発生によるターゲットのメンテナンスの回数を減らすことができ、成膜の生産性の向上が期待できる。
即ち、本例の導電性膜形成基板は、導電性膜形成時にノジュールの発生が少なく、歩留まりが良く、生産性の良い構造としている。
前記インジウム亜鉛酸化物膜と前記ITO膜とを合わせた厚みが200nm以下である場合には、確実に、表示パネル用の透明導電膜形成基板として、透過率特性、抵抗値を実用に耐えるものとでき、更にまた、前記インジウム亜鉛酸化膜の膜厚が前記透明導電膜115の1/2以下である場合には、更に確実に、表示パネル用の透明導電膜形成基板として、透過率特性、抵抗値を実用に耐えるものとできる。
【0016】
透明基板111としては、低膨張で透明性の良いものが好ましいく、ここではガラス基板を用いているが、これに限定されない。
プラスチック基板等も用いられる。
ガラス基板としては、石英ガラス、合成石英ガラス、ソーダライム等が用いられる。
ブラックマトリクス112、着色層113として、ここでは、それぞれ、紫外線硬化型の感光性樹脂に顔料や染料他を混ぜて分散させた、顔料分散型の着色材料を用いているが、これには限定はされない。
オーバーコート層(保護層)114としては、感光性アクリル樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂等が用いられる。
【0017】
本例の導電性膜形成基板(カラーフィルタ形成基板)を用いた表示パネルの1例を図2に挙げて、簡単に説明する。
図2に示す表示パネルは、図1に示す導電性膜形成基板(カラーフィルタ形成基板)110とTFT基板120とを、導電性膜形成基板110の着色層113形成側とTFT基板120の半導体駆動素子(TFT)140形成側を向き合うようにして、5μm程度の間隔を介して対向配置され、両基板間に液晶160を配した構造の、TN方式の液晶表示パネルである。
先にも述べたように、導電性膜形成基板(カラーフィルタ形成基板)110は、透明基板111の一面に、透明基板111側から順にブラックマトリクス112、着色層(カラーフィルタ)113、オーバーコート層(保護層、OCとも言う)114、共通電極115を配し、他面に偏光板116を配している。
また、TFT基板120は、透明基板121の一面上に、半導体駆動素子(TFT)140と、ITO等からなる表示電極(画素表示電極)123が形成され、その上には窒化シリコン等からなるパッシベーション膜124とポリイミド等からなる配向膜150が形成されている。
表示動作を行わせるには、ゲート電極134に印加される電圧をハイ、ローに切り換えて半導体駆動素子(TFT)140にオン、オフを行わせ、ソース電極132に印加されている表示データ信号を表示電極123に書き込む。
この書き込み電圧と導電性膜形成基板(カラーフィルタ形成基板)110に設けてある共通電極115との間の電圧により液晶部分の配向を変え表示を行う。
縦横の配線に囲まれた領域が一つの画素に対応し、各画素は半導体駆動素子(TFT)140とこれに接続された透明な表示電極(液晶に電圧を印加する電極)123で構成される。
半導体駆動素子(TFT)140は、ゲート電極134、ゲート絶縁膜122、半導体層(アルモファスシリコン膜)131、ソース電極132、ドレイン電極133とから形成されており、通常のMOSトランジスタと同じような動作を行う。
【0018】
次に、本例の透明導電膜形成基板110の作製例と、透明導電膜形成基板を用いた液晶パネルの作製例とを、図3に基づいて、簡単に説明しておく。
先ず、本発明の透明導電膜形成基板のベースとなる透明基板(ここではガラス基板とも言う)111を予め用意しておき(S0)、該透明基板のカラーフィルタとなる着色層を形成する側に、ブラックマトリクス112の形成するBM形成処理を行う。(S1)
ここでは、紫外線硬化型の感光性樹脂に顔料や染料他を混ぜて分散させた黒色の着色層をガラス基板の一面に塗布してフォトリソ法により、所定形状にして、ブラックマトリクス112を形成する。
ブラックマトリクス(BM)112は、縦方向の縦BMと横方向の横BMとからなり、これらに囲まれた部分が着色画素となる部分である。
次いで、第1の着色層(赤色の着色層、R層とも言う)を形成するR層形成処理(S2)、第2の着色層(緑色の着色層、G層とも言う)を形成するG層形成処理(S3)、第3の着色層(青色の着色層、B層とも言う)を形成するB層形成処理(S4)を、この順に行なう。
R層形成処理(S2)は、紫外線硬化型の感光性樹脂に顔料や染料他を混ぜて分散させた赤色の着色層を、透明基板111のブラックマトリクス(BM)が形成された側の面に塗布してフォトリソ法により、所定形状にして、第1の着色層(赤色の着色層、R層とも言う)を所定の領域に形成する。
同様に、G層形成処理(S3)は、紫外線硬化型の感光性樹脂に顔料や染料他を混ぜて分散させた緑色の着色層を、透明基板111のブラックマトリクス(BM)、第1の着色層が形成された側の面に塗布してフォトリソ法により、所定形状にして、第2の着色層(緑色の着色層、G層とも言う)を所定の領域に形成する。
また同様に、B層形成処理(S4)は、紫外線硬化型の感光性樹脂に顔料や染料他を混ぜて分散させた青色の着色層を、透明基板111のブラックマトリクス(BM)、第1の着色層、第2の着色層が形成された側の面に塗布してフォトリソ法により、所定形状にして、第3の着色層(青色の着色層、B層とも言う)を形成する。
【0019】
次いで、着色層113(上記第1の着色層〜第3の着色層に相当)が形成された側にオーバーコート層(保護層)114を前面塗布し、必要に応じて乾燥、硬化した(S5)後、該オーバーコート層(保護層)114上に、成膜する膜組成のインジウム亜鉛酸化物の焼結体からなるターゲットプレートを用いて、直流マグネトロンスパッタ方式にてインジウム亜鉛酸化物膜を性膜し、更に、続けて、成膜する膜組成のITO(インジウム錫酸化物)の焼結体からなるターゲットプレートを用いて、直流マグネトロンスパッタ方式にてITO膜を成膜する。(S6)
インジウム亜鉛酸化膜の成膜は、例えば、ZnO、10.7wt% + In2 3 (残り分で若干の不純物を含む)の焼結したターゲットを用いて、Arガス雰囲中、気圧1×10-5torr〜1×10-2torrの範囲中で、着色層の耐熱性を考慮して低温(130℃程度)で成膜し、また、ITO膜の成膜は、例えば、In2 3 、90wt% + SnO2 、10wt%組成の焼結したターゲットを用いて、直流マグネトロンスパッタ方式で、Arガス雰囲中、気圧1×10-5torr〜1×10-2torrの範囲中で、着色層の耐熱性を考慮して低温(130℃程度)で成膜する。
尚、液晶表示パネル用の透明導電膜形成基板(カラーフィルタ形成基板)における透明導電膜の成膜は、例えば、スパッタ室中に、処理基板を所定の搬送部(キャリアとも言う)の基板保持部に立てた状態で保持して載せて、搬送部を搬送しながら、はじめは所定のスパッタリング処理部にて上記インジウム亜鉛酸化膜の成膜を行い、後に、所定のスパッタリング処理部にて上記ITO膜の成膜を行う。
ここでは、スパッタリング処理部は複数設けられており、成膜する各膜厚に応じて、各スパッタリング処理部には、成膜するスパッタリング処理部のターゲット材を適宜配設している。
が、上記インジウム亜鉛酸化膜の成膜、ITO膜の成膜は、例えば、隣接した各スパッタリング処理部で、それぞれ、行う。
このようにして、本例の透明導電膜形成基板110は作製される。(S7)
【0020】
このようにして作製された本例の透明導電膜形成基板110(S7)と、液晶パネル形成のためにこれと貼り合わせを行うTFT基板(S8)とを予め用意しておく。
そして、本例の透明導電膜形成基板110の外周のシール領域に、例えば、ディスペンサーあるいは印刷により、紫外線硬化型のシール材を塗布して、所定の高さにして、枠状のスペーサを形成し、更に、該枠状のスペーサ内に液晶を滴下法により配した後、TFT基板との貼り合わせを行う。(S9)
貼り合わせの際、透明基板111側からシール領域のシール材に紫外線を照射して、シール材を硬化する。
このようにして、本例の透明導電膜形成基板を用いた液晶表示パネルは作製される。(S10)
【0021】
上記は1例で、これに限定されるものではない。
本発明の透明導電膜形成基板の用途も、上記液晶表示パネルに限定されるものではない。
有機EL表示パネル等にも適用は可能である。
また、ここでは、透明導電膜形成基板のブラックマトリクッス、着色層(カラーフィルタ)の形成を上記のように顔料分散法により行っているが、染色法、電着法、印刷法等で形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の透明導電膜形成基板の実施の形態の1例の概略断面図である。
【図2】本発明の表示パネルの1例の概略断面図である。
【図3】図1に示す透明導電膜形成基板の作製の処理の概略フローと、図2に示す表示パネルの作製の処理の概略フローを示した処理フロー図である。
【図4】図4(a)〜図4(d)はノジュールの発生機構を説明した図である。
【符号の説明】
【0023】
10 ターゲットプレート
10a 突起部
17 パーティクル
17a ITO
18 パーティクル
110 透明導電膜形成基板(ここでは、カラーフィルタ形成基板とも言う)
111 透明基板
112 ブラックマトリクス
113 着色層(カラーフィルタとも言う)
114 オーバーコート層(保護膜とも言う)
115 共通電極(透明導電膜とも言う)
116 偏光板
120 TFT基板
121 透明基板
122 絶縁層(ゲート絶縁膜とも言う)
123 表示電極(画素電極ともいう)
124 パッシベーション膜
126 偏光板
131 半導体層
132 ソース電極
133 ドレイン電極
134 ゲート電極
140 半導体駆動素子(TFTとも言う)
150 配向膜
160 液晶
170 バックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面側に電極用の透明導電膜を配した表示パネル用の透明導電膜形成基板であって、前記透明導電膜は、基材側から順にインジウム亜鉛酸化物膜とITO膜とを積層している2層構造であることを特徴とする透明導電膜形成基板。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電膜形成基板であって、前記透明導電膜は着色層からなるカラーフィルタの上側に配設されていることを特徴とする透明導電膜形成基板。
【請求項3】
請求項2に記載の透明導電膜形成基板であって、前記インジウム亜鉛酸化物膜と前記ITO膜とを合わせた厚みが200nm以下であることを特徴とする透明導電膜形成基板。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透明導電膜形成基板であって、前記インジウム亜鉛酸化膜の膜厚が前記透明導電膜の1/2以下であることを特徴とする
透明導電膜形成基板。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載された透明導電膜形成基板を用いたことを特徴とする表示パネル。
【請求項6】
表示パネル用の、基材の一面側に電極用の透明導電膜を配した透明導電膜形成基板の作製方法であって、前記透明導電膜の形成は、順に、成膜する膜組成のインジウム亜鉛酸化物の焼結体からなるターゲットプレートを用いて、スパッタリング成膜する工程と、成膜する膜組成のITO(インジウム錫酸化物)の焼結体からなるターゲットプレートを用いて、スパッタリング成膜する工程とを、行うものであることを特徴とする透明導電膜形成基板の作製方法。
【請求項7】
請求項6に記載の透明導電膜形成基板の作製方法であって、前記透明導電膜は着色層からなるカラーフィルタの上側に配設するものであることを特徴とする透明導電膜形成基板の作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−37575(P2010−37575A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199138(P2008−199138)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】