説明

運転支援装置、運転支援方法および運転支援プログラム

【課題】車外の要因の影響を受ける道路を車両が走行することによって、ある程度の確率で複数の車両が同様の動作をすることが推定される場合であっても、従来、その動作を正確に推定し、推定に基づく運転支援を行うことができなかった。
【解決手段】所定区間の道路の走行を開始したときの車両の初期動作を示す情報を取得し、前記初期動作に対応付けて予め規定された、前記初期動作後における前記所定区間の道路上での前記車両の推定動作を示す情報を取得し、前記推定動作に基づいて、前記所定区間の道路を走行する際の運転を支援するための案内を前記車両に搭載された案内部に行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の信号機が連動して点灯する場合に対応した案内を行う技術が知られており、例えば、特許文献1には、2つ前のノードまでを参照範囲とし、参照範囲内の信号機が連動している場合には信号機コストの算出対象とせず、連動していない場合には信号機コストを算出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−165684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
連動して点灯する信号機によって車両の走行を制御している道路など、車外の要因の影響を受ける道路を車両が走行すると、ある程度の確率で複数の車両が同様の動作をすることが推定される。しかし、従来、その動作を正確に推定し、推定に基づく運転支援を行うことができなかった。
すなわち、従来技術においては、2つ前のノードまでを参照範囲として信号機コストを算出するか否かを決定しており、信号機が連動しているか否かのみをコストに反映させている。しかし、実際の道路において車両の動作を決定づける重要な要因は信号機が連動している事実ではなく、連動して制御される複数の信号交差点をスムーズに通過できるタイミングで走行しているか否かである。従って、従来の技術においては、車外の要因の影響を受ける道路を車両がスムーズに走行できるように運転支援を行うには不充分であった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、道路を走行する車両における動作を正確に推定して運転を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、本発明においては、所定区間の道路の走行を開始したときの車両の初期動作を示す情報を取得し、当該初期動作に対応付けられた車両の推定動作を示す情報を取得する。当該車両の推定動作示す情報は、当該初期動作後における所定区間の道路上での車両の推定動作示す情報であり、当該推定動作示す情報に基づいて所定区間の道路を走行する際の運転を支援するための案内を車両に搭載された案内部に行わせる。
【0005】
すなわち、所定区間の道路を走行する際の動作は、当該所定区間の道路の走行を開始したときにおける車両の初期動作に依存する可能性が高い。例えば、所定区間内に存在する複数の信号機を連動させる制御を行っている場合、所定区間の道路における初期動作が特定の信号機を通過する動作であれば、その後、複数の交差点にて信号機によって停止することなく走行可能である可能性が高い。また、所定区間内に存在する複数の信号機を連動させる制御を行っている場合であっても、所定区間の道路における走行開始タイミングによっては初期動作が信号機による停止動作となる。そこで、本発明においては、所定区間の道路の走行を開始したときの車両の初期動作を、それ以後の推定動作に対して対応付けた情報を予め定義し、初期動作に応じて当該情報を選択して所定区間の道路における車両の動作を推定する。この結果、当該所定区間の道路における車両の動作を正確に推定することが可能になる。
【0006】
ここで、初期動作取得手段においては、所定区間の道路の走行を開始したときの車両の初期動作を示す情報を取得することができれば良く、予め決められた所定区間の道路に車両が進入し、特定の動作を行ったときにその動作を初期動作として取得することができればよい。従って、所定区間の道路に進入する直前あるいは直後における車両の動作を特定してもよいし、所定区間の道路を構成する道路区間のいずれかにおいて走行を開始したときに当該道路区間における動作を特定しても良い。なお、所定区間の道路への進入位置は、所定区間の道路の起点であっても良いし、所定区間の道路の起点と終点との間の位置であっても良い。
【0007】
また、所定区間の道路は予め決定されていれば良く、種々の基準に基づいて決定することができる。例えば、予め決められた2地点間の連続した複数の道路区間にて所定区間の道路を構成してもよい。むろん、連続した複数の道路区間によって構成される所定区間の道路は種々の形状であって良く、直進道路でも良いし、曲がっていても良い。例えば、前記道路区間を連続した直進区間とすれば、複数の道路区間によって構成される道路が直進道路になるし、また、連続する道路区間として交差する道路区間を採用すれば、複数の道路区間によって構成される道路が曲がった道路になる。
【0008】
さらに、連続した複数の道路区間によって構成される道路の両端は、種々の指針に基づいて決定することが可能である。その構成例として、ナビゲーション装置等で利用される地図情報における定義を本発明にて利用する構成を採用可能であり、例えば、上位階層であるほどノードの密度(単位面積当たりのノード数)が小さくなるように階層化された地図情報を参照する構成を採用可能である。すなわち、当該地図情報における特定の階層のノードを参照して、当該特定の階層に規定されたノードによって連続した複数の道路区間のそれぞれにおける両端を特定する。さらに、当該特定の階層より上位階層のノードを参照して、連続した複数の道路区間によって構成される道路の両端に相当する2地点を選択し、当該2地点間の道路を所定区間の道路とする構成を採用可能である。
【0009】
以上のように階層化された地図情報において、ノードは道路上に設定された各地点の座標情報等を含む情報であり、特定の例外を除いて一般的には、ノードの密度が大きい階層においては当該階層よりノードの密度が小さい上位階層よりも、道路上において短い間隔でノードが設定される。従って、上位の階層であるほどそのノードによって区切られる道路区間は長く、一般的には下位の階層のノードにて規定される道路よりも重要(幅が広い、交通量が多いなど)な主要道路同士の交差点などにノードが設定される。従って、特定の階層で規定されるノードによって道路区間の両端が構成されるとき、当該特定の階層よりも上位の階層で規定される2個のノードを選択すれば、連続した複数の道路区間によって構成される道路を容易に規定することが可能になる。
【0010】
さらに、車両の初期動作はその後の車両の動作に影響を与え得る動作として定義することができれば良く、各種センサやカメラ、各種通信など種々の情報に基づいて当該動作を取得可能である。例えば、車両の位置、速度、加速度等をセンサやカメラによって特定する構成や、GPSからの信号や地図上での自車両での軌跡,車車間通信,路車間通信等によって車両の位置,速度,加速度等を取得する構成を採用可能である。
【0011】
推定動作取得手段は、所定区間の道路上において、初期動作後の車両の動作を推定するための情報を取得することができれば良く、当該情報は、各種の初期動作に対応付けて予め定義されていればよい。当該情報は、初期動作後の車両における一連の動作を推定するための情報であれば良く、所定区間の道路にて初期動作後に行われる動作を特定した情報であっても良いし、複数の動作のいずれかを行う確率を示す情報であっても良い。また、当該確率に応じて規定された情報(例えば、経路探索のためのコスト情報)を取得することによって間接的に推定動作を示す情報を取得しても良く、種々の構成を採用可能である。
【0012】
案内制御手段は、推定動作を示す情報に基づいて所定区間の道路を走行する際の運転を支援するための案内を行うことができればよい。すなわち、運転者に推定動作を示す情報を提示することによってその後の運転を支援することができればよい。例えば、推定動作を示す情報自体を案内する構成を採用しても良いし、推定動作を間接的に示す情報(例えば、停止することが予測される信号機の位置等)を案内する構成としても良く、種々の構成を採用可能である。
【0013】
さらに、推定動作を示す情報の例として車両の推定車速に対応した情報を採用可能である。すなわち、車両が道路上で各種の動作を行うとその結果としての車速は当該動作に対応した車速となる。従って、特定の道路上における推定車速に対応した情報を取得すれば、間接的に推定動作を特定しているとみなすことができる。なお、車速を特定するための情報は、車両の車速センサやプローブ情報等に基づいて容易に特定することが可能である。そこで、当該車速を特定するための情報を複数の車両から収集すれば、当該情報を統計的に解析する(例えば、複数の情報から特定の動作に対応した車速の発生確率を求める)ことによって、推定車速を特定し、推定動作を示す情報を特定することができる。
【0014】
さらに、案内部における案内の例として、連続した道路区間の一方から他方に走行する際の走行困難性を示す情報を取得して、当該走行困難性を示す情報に基づいて探索した経路を案内する構成を採用しても良い。例えば、当該走行困難性に対応したコスト(走行が困難である程値が大きくなる数)情報を定義し、当該コスト情報に基づいて目的地までの適切な経路を探索し、当該経路上を走行させるための案内をディスプレイ等の案内部に対して出力する構成等を採用可能である。
【0015】
すなわち、連続した道路区間における連続的な動作を推定することができれば、連続した道路区間の一方から他方に走行する際の走行困難性を特定することができる。例えば、車速が遅い程、走行困難であるとみなすことができる。そこで、当該動作に基づいて走行困難性を示す情報を取得すれば、推定動作に対応した経路探索および経路案内を行うことが可能である。なお、連続した道路区間の一方から他方に走行する際の走行困難性は、連続する道路区間を連続して走行する際の走行困難性であれば良く、連続した道路区間の一方を走行する際の走行困難性に対応していても良いし、連続した道路区間の一方と他方との境界における走行困難性に対応していても良いし、両者に対応していても良い。
【0016】
さらに、案内部における案内の例として、所定区間の道路を走行する際の推定所要時間を案内する構成を採用しても良い。すなわち、推定動作を示す情報を特定すれば、所定区間の道路における車速や停止の頻度等に基づいて当該道路を走行する際の所要時間を推定することができる。そこで、当該所要時間を案内すれば、正確な所要時間を提示することによって運転者の運転を支援することが可能である。案内制御手段において所要時間を案内するための構成としては、種々の構成を採用可能である。例えば、推定動作に基づいて所要時間を推定して案内する構成を採用可能である。また、他の装置において推定動作を示す情報から所要時間を特定するための情報を生成しておき、案内制御手段において、当該所要時間を特定するための情報を取得して所要時間を特定し、当該所要時間を案内しても良い。
【0017】
さらに、本発明のように初期動作に応じて当該初期動作以後の車両の動作を推定する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような運転支援装置、プログラム、方法は、単独の運転支援装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような運転支援装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、運転支援装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)道路情報生成システムの構成:
(1−1)道路情報生成装置の構成:
(1−2)ナビゲーション装置の構成:
(2)コスト情報生成処理:
(3)ナビゲーション装置における動作:
(4)他の実施形態:
【0019】
(1)道路情報生成システムの構成:
(1−1)道路情報生成装置の構成:
図1は、道路情報の管理センターに設置された走行パターン情報取得装置10と車両Cに備えられたナビゲーション装置100とを含むシステムの構成を示すブロック図である。走行パターン情報取得装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記憶媒体30とを備えており、当該記憶媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとして走行パターン情報取得プログラム21を実行可能であり、当該走行パターン情報取得プログラム21によって道路上での車両Cの走行パターンを推定するための情報を取得する。
【0020】
本実施形態において、当該走行パターンを推定するための情報は、道路区間毎の車両Cの動作の発生確率を示す情報であり、走行パターン情報取得装置10においては複数の車両Cが出力するプローブ情報に基づいて当該発生確率を取得する。また、走行パターン情報取得装置10は当該発生確率に基づいてコスト情報を生成し、当該コスト情報を車両Cに対して送信する。このため、走行パターン情報取得装置10は、ナビゲーション装置100と通信するための回路にて構成される通信部22を備えており、制御部20は通信部22を介してプローブ情報を受信し、コスト情報を送信することができる。
【0021】
走行パターン情報取得プログラム21は、道路区間毎の車両Cの動作の発生確率を取得し、コスト情報を生成して送信するために、送受信制御部21aと車速特定情報取得部21bと車速特定情報分類部21cと動作発生確率取得部21dとを備えており、通信部22,記憶媒体30や制御部20におけるRAM等と協働することによってコスト情報の生成および車両Cへの提供機能が実現される。
【0022】
送受信制御部21aは、車両Cとの通信を制御するためのモジュールであり、制御部20は、当該送受信制御部21aの処理によって通信部22を制御し、複数の車両Cのそれぞれに搭載された通信部220と通信を行う。すなわち、車両Cから送信されるプローブ情報を取得して同一の車両Cから取得した情報であることを識別可能な状態で記憶媒体30へ記録する(図1に示すプローブ情報30a)。また、後述する処理によって生成されたコスト情報30cを取得して車両Cへ送信する。
【0023】
なお、本実施形態におけるプローブ情報30aは、少なくとも車両Cの車速を特定するための車速特定情報を含み、本実施形態においては、道路に設定されたノード間の道路区間(リンク)を示すリンク番号,当該リンク番号に対応する道路区間を車両Cが走行したときの所要時間,同一の車両Cから取得したことを示す識別子(連続した道路区間における一連の車速特定情報であることを特定可能な識別子)を含む。
【0024】
また、本実施形態においては、記憶媒体30に記憶された地図情報30bを参照して各リンク番号に対応する道路区間の距離を特定することによって、車両Cが各道路区間を走行したときの車速を特定することが可能である。すなわち、記憶媒体30には地図情報30bが予め記録されており、当該地図情報30bには、道路上に設定されたノードの位置を示す情報とノード同士の連結を示すリンク(道路区間)を特定するためのリンク番号を示す情報とを含んでいる。従って、リンク番号で特定される道路区間の距離は当該道路区間の両端に相当するノードの位置に基づいて特定することが可能であり、当該道路区間の距離を上述の所要時間で除することによって車両Cが各道路区間を走行したときの車速を特定することが可能である。このため、本実施形態においては、リンク番号と当該リンクの所要時間と当該リンクの距離を示す情報および同一車両からの情報であることを示す識別子とが車速特定情報に相当する。むろん、地図情報30bにおいて各道路区間の距離に対応する情報を定義しておき、当該情報に基づいて道路区間の距離を特定する構成としても良い。
【0025】
なお、地図情報30bにおいて、道路上のノードには階層を示す情報が対応付けられている。すなわち、地図情報30bにおいては、仮想的に複数の階層が設定され、各階層上でノードの位置が定義され、各階層上のノード同士のリンク情報に基づいて階層毎に道路を再現することが可能である。また、各階層においては、その順位が定義されており、上位階層であるほどノードの密度(単位面積当たりのノード数)が小さくなるように定義されている。すなわち、特定の例外を除いて一般的には、ノードの密度が大きい下位階層においては当該階層より上位の階層と比較して、道路上において短い間隔でノードが設定される。従って、上位の階層であるほどそのノードによって区切られる道路区間は長い。さらに、本実施形態においては、上位階層であるほど重要(幅が広い、交通量が多いなど)な地点(例えば、主要道路同士の交差点等)にノードが設定されている。
【0026】
車速特定情報取得部21bは、上述のようにして取得されたプローブ情報30aと上述の地図情報30bに基づいて、所定区間の道路における車速特定情報を取得するモジュールである。本実施形態においては、主要道路同士の交差点間の道路を当該所定区間の道路として設定している。そこで、制御部20は、車速特定情報取得部21bの処理により、地図情報30bを参照し、主要道路同士の交差点の位置に対応したノードが定義された階層から2個のノードを抽出し、これら2個のノードを両端とする区間の道路を前記所定区間の道路とする。
【0027】
さらに、制御部20は、地図情報30bにおいて上述の2個のノードを抽出した階層より下位階層のデータを参照し、当該所定区間の道路と同一の道路上に設定されたノードを当該下位階層から抽出する。これらのノードのうち、隣接するノードは道路区間の端点に相当し、各ノードを端点とした連続した道路区間を定義すると、上述の所定区間の道路を構成する連続した道路区間を定義することができる。所定区間の道路を構成する連続した道路区間を定義したら、制御部20は、各道路区間について逐次車速特定情報を取得していく。すなわち、制御部20は、所定区間の道路の一方の端点を起点とし、他方の端点を終点として設定し、起点から終点に向けて各道路区間に順序を示す番号n(nは自然数)を設定し、プローブ情報30aを参照して番号nの小さな道路区間から順に車速特定情報を取得していく。
【0028】
車速特定情報分類部21cは、当該車速特定情報を車両の動作に対応した1以上の集合に分類するためのモジュールであり、制御部20は、番号nの道路区間について取得した複数の車速特定情報をクラスタリングによって分類する。当該クラスタリングは、車速特定情報の確率分布(あるいはヒストグラム)を互いに類似した車速特定情報毎の集合に分類する処理であり、分類が完了すると各集合は車両の動作に対応した集合となっている。
【0029】
なお、本実施形態において、クラスタリング対象の車速特定情報は前の道路区間における分類に依存する。すなわち、番号(n+1)の道路区間における複数の車速特定情報を取得する際には、番号nの道路区間において特定の集合に分類された複数の車速特定情報を参照してその識別子を特定する。そして、当該識別子と同一の識別子(同一の車両Cから取得したことを示す識別子)が対応付けられた、番号(n+1)の道路区間における車速情報を抽出して1以上の集合に分類する。この結果、番号nにおいて一つの集合を構成する複数の車速特定情報が、番号(n+1)においてさらに1以上の集合に分類されるように、番号nが小さい道路区間から順に系統立てて集合が定義される。
【0030】
動作発生確率取得部21dは、上述の分類に基づいて車両Cの動作の発生確率を取得し、当該発生確率に基づいてコスト情報30cを生成するモジュールである。すなわち、制御部20は、上述の集合の発生確率が当該集合に対応した車両Cの動作の発生確率であると見なし、集合を構成する車速特定情報のサンプル数を道路区間について取得された全サンプル数で除することによって車両Cの動作の発生確率を取得する。そして、当該動作の発生確率に基づいて、連続した道路区間の一方から他方に走行する際の走行困難性を示すコスト情報30cを生成して記憶媒体30に記録する。
【0031】
なお、上述のように、集合は番号nが小さい道路区間から順に系統立てて定義されるため、上述の発生確率も番号nが小さい道路区間から順に系統立てて定義される。すなわち、ある番号(n+1)の道路区間においてある動作が行われる確率は、それ以前の番号nの道路区間において特定の動作が行われたか否かに依存する。そこで、本実施形態においては、動作の発生確率の依存関係に応じてコスト情報30cも系統立てて定義する。例えば、上述の発生確率に基づいて道路区間の端点に相当する交差点を通過しやすいほど小さな値になるようにコスト情報30cを設定するとき、番号1の道路区間における車両の動作(後述する初期動作)を複数種類規定し、当該初期動作を行った後に車両が行う一連の動作に対応したコスト情報を前記初期動作に対応付けるとともに系統立てて定義する。
【0032】
例えば、所定区間内に存在する複数の信号機を連動させる制御を行っている場合、所定区間の道路における初期動作が特定の信号機を通過する動作であれば、その後、複数の交差点にて信号機によって停止することなく走行可能である可能性が高い。また、所定区間内に存在する複数の信号機を連動させる制御を行っている場合であっても、所定区間の道路における走行開始タイミングによっては初期動作が信号機による停止動作となる。そこで、本実施形態においては、所定区間の道路の走行を開始したときの車両の初期動作を、それ以後のコスト情報に対応付けて予め定義し、初期動作に応じて当該コスト情報を選択する。この結果、初期動作以後の動作を正確に推定しながら経路探索を行うためのコスト情報30cが生成される。また、車両Cにおいてコスト情報30cを用いた経路探索および経路案内を行うことにより、正確な動作の推定に基づく経路案内を行うことが可能である。
【0033】
(1−2)ナビゲーション装置の構成:
ナビゲーション装置100は道路を走行する車両Cに搭載されており、当該ナビゲーション装置100はCPU,RAM,ROM等を備える制御部200と記憶媒体300とを備えており、当該記憶媒体300やROMに記憶されたプログラムを制御部200で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム210を実行可能であり、当該ナビゲーションプログラム210によって上述のコスト情報30cを利用した経路探索を行うことができる。また、本実施形態にかかる車両Cは、道路の走行履歴に基づいてプローブ情報30aを生成して送信することができる。
【0034】
このため、車両Cは、走行パターン情報取得装置10と通信するための回路にて構成される通信部220を備えており、制御部200は送受信制御部210aの処理によって、通信部220を介してプローブ情報30aを送信し、コスト情報30cを受信することができる。なお、送受信制御部210aの処理によって取得されたコスト情報30cは地図情報300aとともに記憶媒体300に記録される。すなわち、地図情報300aは、上述の地図情報30bと同様の階層およびノードが定義されており、コスト情報30cを各ノード間のリンクに対応付けて地図情報300aに組み込んで記録する。
【0035】
さらに、車両Cは、GPS受信部410と車速センサ420と案内部430とを備えており、GPS受信部410は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部200は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ420は、車両Cが備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両Cの速度を取得する。車速センサ420は、GPS受信部410の出力信号から特定される自車両の現在位置を補正するなどのために利用される。また、自車両の現在位置は、当該自車両の走行軌跡に基づいて適宜補正される。なお、車両の動作を示す情報を取得するための構成は、ほかにも種々の構成を採用可能であり、自車両の現在位置をジャイロセンサの出力信号に基づいて補正する構成やセンサやカメラによって特定する構成、GPSからの信号や地図上での車両の軌跡,車車間通信,路車間通信等によって自車両動作情報を取得する構成等を採用可能である。
【0036】
ナビゲーションプログラム210は、コスト情報30cを利用した経路探索を実行するため、初期動作取得部210bと推定動作取得部210cと案内制御部210dとを備え、プローブ情報30aを生成するためにプローブ情報生成部210eを備えており、通信部220,記憶媒体300や制御部200におけるRAM等と協働する。
【0037】
初期動作取得部210bは、所定区間の道路の走行を開始したときの車両の初期動作を示す情報を取得するためのモジュールである。すなわち、制御部200は、初期動作取得部210bの処理により、GPS受信部410および車速センサ420の出力信号を取得して車両Cの動作(位置(緯度および経度),車速,走行方向)を特定している。
【0038】
さらに、制御部200は、上述の車両Cの位置が、前記所定区間の道路を構成する複数の道路区間の中で最初の道路区間(番号1の道路区間)上であるか否かを判定し、最初の道路区間上である場合には当該車両Cの動作を初期動作として特定する。なお、初期動作は、上述のコスト情報30cに対応付けられた初期動作と一致するか否かを判定できるように定義することができれば良い。例えば、コスト情報30cに対して停止動作あるいは停止することなく道路区間を通過する動作のいずれかが対応付けられているのであれば、上述のGPS受信部410および車速センサ420の出力信号に基づいて初期動作が停止動作あるいは停止することなく道路区間を通過する動作のいずれであるのかを特定すればよい。
【0039】
推定動作取得部210cは、初期動作に対応付けて予め規定されたコスト情報を取得するモジュールであり、制御部200は、地図情報300aを参照し、上述のようにして特定された車両Cの初期動作に対応付けられたコスト情報30cを取得する。当該コスト情報30cは、初期動作後の車両の動作に応じて系統立てて設定されているため、当該コスト情報30cを取得する処理は、所定区間の道路上での初期動作後における車両の推定動作を示す情報を間接的に取得する処理に相当する。
【0040】
案内制御部210dは、図示しない入力部による目的地の入力を受け付け、走行開始地点から当該目的地への経路を探索し、当該経路上を走行させるための案内を案内部430(ディスプレイ等)に対して出力するためのモジュールである。本実施形態において、案内制御部210dは、さらに、走行中に経路探索を行って当該探索された経路を案内する機能を実現することが可能である。
【0041】
すなわち、上述のように車両Cが所定区間の道路における最初の道路区間を走行したとき、当該最初の道路区間における初期動作後の一連の推定動作に対応したコスト情報30cを取得しているため、制御部200は当該コスト情報30cに基づいて最初の道路区間後の経路探索を行う。また、当該探索された経路を案内部430に案内させる。この結果、目的地までの経路の候補として上述の所定区間の道路を構成する複数の道路区間が含まれる場合に、当該道路区間の間の交差点における走行困難性を正確に反映した経路探索を行い、案内することができる。
【0042】
プローブ情報生成部210eは、車両Cの動作に対応したプローブ情報30aを生成するためのモジュールであり、制御部200は、プローブ情報生成部210eの処理によって、GPS受信部410の出力信号を取得して車両Cの位置(緯度および経度)を特定する。そして、当該車両Cの動作に基づいてプローブ情報30aを生成する。すなわち、地図情報300aを参照し、上述の車両Cの位置が属する道路区間のリンク番号を特定する。また、当該道路区間の所要時間を取得する。なお、本実施形態では、案内制御部210dが経路案内中に実行するマップマッチング処理にてマッチングがなされている状態において、当該道路区間へ進入した時刻と当該道路区間から退出した時刻との差分によって所要時間を定義しているが、むろん、車速と道路区間の距離とに基づいて所要時間を特定しても良い。
【0043】
さらに、制御部200は、これらのリンク番号と所要時間とを示す情報に対し、上述の識別子を対応付けてプローブ情報30aとする。プローブ情報30aが生成されると、制御部200は送受信制御部210aの処理により、通信部220を介してプローブ情報30aを走行パターン情報取得装置10に対して送信する。
【0044】
(2)コスト情報生成処理:
次に上述の構成におけるコスト情報生成処理を詳細に説明する。図2は、当該コスト情報生成処理を示すフローチャートである。本実施形態において、この処理は予め決められた期間毎に実施される。この処理において、制御部20は、送受信制御部21aの処理により逐次プローブ情報30aを取得し、当該プローブ情報30aを記憶媒体30に対して逐次記録する(ステップS100)。
【0045】
複数の車両Cからのプローブ情報30aが蓄積された後、制御部20は車速特定情報取得部21bの処理により、プローブ情報30aを参照して車速特定情報を取得する(ステップS105〜S120)。本実施形態においては、まず、制御部20がプローブ情報30aを参照して渋滞に対応する車速特定情報を削除する(ステップS105)。すなわち、本実施形態における解析は、渋滞の影響を除外した状態で所定区間の道路を走行する際の車両の動作を特定することを目的としているため、渋滞時に車両Cから送信された車速特定情報を除外する。なお、渋滞に対応する車速特定情報であるか否かは種々の基準によって判定可能であり、例えば、道路区間を時速10km未満で走行する区間が300m以上連続したときに渋滞に対応する車速特定情報であると判定する構成等、種々の構成を採用可能である。
【0046】
次に、制御部20は、所定区間の道路を特定する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、地図情報30bに基づいて主要道路同士の交差点を特定し、当該主要道路同士の交差点間の道路を所定区間の道路として特定する。図3は、所定区間として設定される道路の例を示している。同図3の上部には、信号機が設置された交差点I1〜Im(mは自然数)によって区切られた複数の道路区間によって構成される直線道路を所定区間の道路の例として示している。
【0047】
また、当該図3において、道路の下方には地図情報30b,300aにおける階層構造を模式的に示している。すなわち、地図情報30b,300aにおいては、階層毎に交差点の位置に対応するノードが設定されており、図3に示す道路に関して、レイヤL1においては主要道路同士における交差点I1,Imの位置を示すノードN11,N1mが定義され、その下位階層のレイヤL0においては、所定区間の道路に含まれる総ての交差点I1〜Imの位置を示すノードN01〜ノードN0mが定義されている。そこで、制御部20は、地図情報30bに基づいてレイヤL1上に存在するノードN11,N1mを取得して所定区間の道路を特定し、レイヤL0において当該ノードN11,N1mに対応するノードN01,N0mを取得して当該ノードN01,N0mの間にあるノードN02〜N0m-1を特定する。そして、ノードN01〜N0mの中で隣接するノードの間の道路に相当する道路区間を連続する複数の道路区間として特定する。
【0048】
さらに、制御部20は、所定区間の道路を走行した車両Cであって、所定の経路(解析対象経路)を走行した車両Cが送信した車速特定情報のみを取得し、解析対象経路以外の経路を走行した車両Cが送信した車速特定情報を除外する(ステップS115)。すなわち、本実施形態において、解析対象経路は、所定区間の道路の総てを走行する経路であり、プローブ情報30aに含まれる識別子を参照し、同一車両であることを示す識別子が所定区間の道路の総てに渡って存在しない場合には、その識別子が対応付けられた車速特定情報は除外する。例えば、図3に示す所定区間の道路は直線状の道路であるため、当該所定区間の総てを直進走行する経路を解析対象経路とし、他の経路(例えば、図3の交差点I2,I3に破線矢印で示す経路)を走行した車両が送信した車速特定情報は除外する。
【0049】
さらに、制御部20は、以上のようにして取得した解析対象経路の車速特定情報から異常データを除去する(ステップS120)。ここで、異常データは、複数の車速特定情報の中で統計的に有意でないとみなすべき車速特定情報であり、例えば、各種の棄却検定(増山の方法,トンプソンの方法,スミルノフの方法等)によって異常データであるか否かを判定し、異常データであるとみなされた車速特定情報を除外する。
【0050】
なお、図3においてノードの下方には、各道路区間を走行する複数の車両C(車両C0〜C2)から取得される車速特定情報を模式的に示している。すなわち、図3においては、道路区間1〜3を例示しており、道路区間1の下方には各車両C0〜C2が道路区間1を走行したときの所要時間T01,T11,T21を矢印で示しており、各矢印の太さによって所要時間の大小を模式的に示している。なお、道路区間2については所要時間をT02,T12,T22として示し、道路区間3については所要時間をT03,T13,T23として示している。
【0051】
図3の下部に示すような車両Cの所要時間は車両によって様々であるが、当該所要時間を統計的に有意なサンプル数になるまで収集すると、その分布によって各道路区間における車両の動作を推定することが可能になる。そこで、本実施形態において制御部20は、車速特定情報分類部21cの処理により、異常データ除去後の車速特定情報をクラスタリングにより1以上の集合に分類する。図4Aは、ある道路区間における車速特定情報としての所要時間の確率分布を例示したグラフであり、所要時間を横軸、確率分布を縦軸として示している。
【0052】
このような道路区間の所要時間の確率分布は、当該道路区間における車両Cの動作に対応した分布となる。すなわち、車両Cがある特定の動作を行う可能性が高い場合には、当該動作に対応した所要時間の分布が多くなり、例えば、図4Aに示すように特定の所要時間をピークとした分布が現れる。道路区間の所要時間においては、多くの場合2あるいは3個に分離した分布が現れる。そこで、ここでは、2個の分布のそれぞれが道路区間において車両Cが停止した動作、あるいは、停止することなく通過した動作のいずれかに対応した分布であるとみなす例について説明する。
【0053】
図4Aは、確率分布がほぼ2個の集合を形成している場合の例を示しており、この例において、クラスタリングを行うと、この分布を2個の集合(所要時間の短い集合G1(図4Aにおける実線)および所要時間の長い集合G2(図4Aにおける破線))に分類することができる。なお、クラスタリングのアルゴリズムはK平均法などの非階層的手法やウォード法等の階層型手法を採用することが可能である。例えば、K平均法においては以下の手順によってクラスタリングを行うことができる。
【0054】
1)ランダムにM個(Mは自然数)の中心を特定し、集合1〜Mの中心として定義する
2)各所要時間と集合1〜Mの中心とを比較し、中心との差分が最も小さい集合に各所要時間を仮分類する
3)総ての所要時間の仮分類が一つ前の仮分類に等しい場合に、当該仮分類された集合によってクラスタリングを確定する。所要時間の仮分類のいずれかが一つ前の仮分類と異なる場合、各集合における重心を新たな中心として定義して2)以降の処理を繰り返す
【0055】
なお、図4Aに示すように集合が2個の場合、仮分類された集合1,2によってクラスタリングが確定したら、当該集合1,2が上述の集合G1,G2のいずれかとなる。また、上述の1)において定義する中心が不適切であることに起因して適正な分類を阻害するおそれがある場合には、適正な分類を想定しながら初期の中心を決定しても良い。例えば、「大津の方法」等によって集合間の分散を最大にする閾値(図4Aに一点鎖線で示す閾値Th)を決定し、予め初期の集合を特定し、その中心を決定する構成としても良い。むろん、ここでは、他にも種々の構成を採用可能であり、判別分析法を採用しても良いし、分布のピークを中心とするなど種々の構成を採用可能である。
【0056】
以上のクラスタリングは、各道路区間における車速特定情報について行われるが、最初の道路区間を除き、番号(n+1)の道路区間において解析対象となる車速特定情報の母集団は番号nの道路区間における集合に依存する。図5は、各道路区間における集合を示す模式図であり、所定区間の道路を構成する道路区間のうち、最初の3個(道路区間1〜3)を示している。また、各道路区間1〜3の下方には、クラスタリングによって分類された集合を白丸によって示している。
【0057】
図5に示すように、道路区間1を走行した車両Cから送信された車速特定情報が集合G1,G2に分類されたとき、道路区間2においては当該集合G1,G2のそれぞれに対応する車速特定情報に基づいて2回のクラスタリングを行う。図5においては、道路区間1において集合G1に分類された車速特定情報と同一の識別子(同一の車両Cから取得したことを示す識別子)が対応付けられた車速特定情報を道路区間2の車速特定情報から抽出し、これらを母集団としてクラスタリングを行った結果、集合G3,G4に分類された場合について示している。むろん、道路区間1において集合G2に分類された車速特定情報と同じ識別子が対応付けられた車速特定情報についても同様にクラスタリングを行って1以上の集合に分類する。以上のように、道路区間1において一つの集合を構成する複数の車速特定情報が、道路区間2以降においてさらに1以上の集合に分類され、番号(n+1)の道路区間が直前の番号nの道路区間の集合に依存するように系統立てて集合が定義される。なお、図5においては、当該系統における依存関係を右向きの矢印によって示している。
【0058】
以上のようにして、連続する複数の道路区間において系統立てて集合を定義すると、本実施形態においては、制御部20が、車速特定情報分類部21cの処理により、上述のクラスタリングの検証を行う(ステップS130)。クラスタリングの検証は、例えば、赤池情報量規準(AIC)に基づくモデル評価等によって行うことができる。すなわち、クラスタリングの結果得られた集合Gの数,所要時間の平均等をパラメータとしてAICを計算し、分布を良く近似する場合に適切な集合に分類されたとみなす。なお、適切な集合に分類されない場合には、その道路区間における車速特定情報が1個の集合に属するとみなす構成や、初期の中心を変更するなどして再度クラスタリングを行う構成等を採用可能である。
【0059】
次に、制御部20は、動作発生確率取得部21dの処理により、各集合に対応する車両Cの動作の発生確率を取得する(ステップS135)。すなわち、各集合は近似する車速特定情報の集合であるため、同じ集合に属する車速特定情報は同じ動作に対応しているとみなし、本実施形態においては、上述のように2個の集合のそれぞれが、道路区間において車両Cが停止した動作、あるいは、停止することなく通過した動作のいずれかに対応しているとみなす。
【0060】
そこで、ステップS135においては、車速特定情報が2個の集合に分類された道路区間において、各集合の発生確率を取得し、短い所要時間に対応する集合の発生確率を車両Cが停止することなく道路区間を通過する確率として取得する。また、長い所要時間に対応する集合の発生確率を車両Cの停止確率として取得する。例えば、図5に示す集合G1,G2のそれぞれが図4Aに示す集合G1,G2に対応しているとき、短い所要時間に対応する集合G1の発生確率(図5に示す例では60%)は車両Cが停止することなく道路区間を通過する確率である。また、長い所要時間に対応する集合G2の発生確率(図5に示す例では40%)は車両Cの停止確率である。
【0061】
動作毎の発生確率が特定されると、制御部20は、動作発生確率取得部21dの処理により、当該発生確率に基づいてコスト情報を生成する(ステップS140)。すなわち、当該動作の発生確率に基づいて、連続した道路区間の一方から他方に走行する際の走行困難性を示すコスト情報30cを生成して記憶媒体30に記録する。本実施形態においては、番号nの道路区間における動作が番号nの道路区間から番号(n+1)の道路区間へ走行する際の走行困難性を示しているとみなし、番号nの道路区間と番号(n+1)の道路区間との間における交差点でのコストを決定する。
【0062】
例えば、交差点におけるデフォルトのコストが"100"と定義されている場合に、番号nの道路区間における停止確率が通過確率よりも小さい場合には番号n,(n+1)間の交差点のコストを"0"とする。また、番号nの道路区間における停止確率が停止することなく通過する確率よりも大きい場合には番号n,(n+1)間の交差点のコストを"100"とする。なお、番号(n+1)の道路区間における車両Cの動作は、番号nの道路区間における車両の動作Cに依存しているため、ここでは、ある交差点のコストがそれ以前の交差点のコストに依存するように系統立ててコストを定義する。さらに、本実施形態において、道路区間1は所定区間の道路における最初の道路区間であるため、道路区間1における初期動作に対してそれ以後のコストを対応付けながら系統立ててコスト情報を定義する。
【0063】
図6は、系統立てたコストの例を示す図であり、同図6においては、図5に示す集合の発生確率に基づいて決定されるコストの値とその系統を例示している。この例において、道路区間1は、所定区間の道路における最初の道路区間に相当するため、道路区間1における動作を停止することなく通過する動作と停止する動作とに区別し、それぞれに対してコストを対応付けることとする。
【0064】
例えば、図6に示す例において、集合G1は停止することなく通過する動作に対応するため、交差点I2におけるコストを"0"(図6に示すコストCt21)とし、初期動作「停止することなく通過する動作」に対して対応付ける。また、道路区間1において「停止することなく通過する動作」を行った後には、道路区間2において停止することなく通過する動作に対応する集合G3の発生確率が停止する動作に対応する集合G4の発生確率よりも大きいため、交差点I3におけるコストを"0"(図6に示すコストCt31)とし、コストCt21に対して対応付ける。
【0065】
また、道路区間2において「停止することなく通過する動作(集合G3に対応)」を行った後には、道路区間3において停止することなく通過する動作に対応する集合G5の発生確率が停止する動作に対応する集合G6の発生確率よりも小さいため、交差点I4におけるコストを"100"(図6に示すコストCt41)とし、コストCt31に対して対応付ける。なお、図6においては、系統を右向きの矢印によって示している。
【0066】
一方、集合G2は停止動作に対応するため、交差点I2におけるコストを"100"とし、初期動作「停止動作」に対して対応付ける。さらに、初期動作が「停止動作」である場合の系統についても同様に、交差点I3以降におけるコストを特定し、直前の交差点におけるコストに対応付けることによって系統立てたコスト情報を生成する。制御部20においては、以上のようにコスト情報を生成すると、コスト情報30cとして記憶媒体30に記録する。
【0067】
(3)ナビゲーション装置における動作:
次に、ナビゲーション装置100における上述のコスト情報30cを利用した経路案内動作を説明する。ナビゲーションプログラム210は、走行開始地点から目的地への経路を探索し、当該経路上を走行させるための案内を案内部430に対して出力させる。図7は、この処理を行っている間に所定の時間間隔で繰り返し実行される処理を示すフローチャートである。この処理を実行する前の段階において、制御部200は、送受信制御部210aの処理によってコスト情報30cを取得し、地図情報300aに組み込み済みである。
【0068】
図7に示す処理において、制御部200は、初期動作取得部210bの処理により、所定区間の道路の走行を開始したときの車両の初期動作を示す情報を取得する。すなわち、GPS受信部410の出力信号を取得して車両Cの位置を特定し、地図情報300aを参照し、現在位置が上述の所定区間の道路を構成する道路区間の中で最初の道路区間であるか否かを判別する(ステップS200)。そして、最初の道路区間であると判別されなければステップS205以降の処理をスキップする。
【0069】
ステップS200にて、現在位置が最初の道路区間であると判別されたとき、制御部200は、初期動作取得部210bの処理により、GPS受信部410および車速センサ420の出力情報に基づいて車両Cの動作を取得し、当該動作を初期動作として特定する(ステップS205)。なお、上述の図4A,図5に示す例に対応した車両の動作は、車両Cが停止した動作、あるいは、停止することなく通過した動作のいずれかである。従って、この例において制御部200は、例えば、道路区間1において、車速センサ420の出力情報が車両Cの停止を示す値になったか否かや、道路区間1の距離を所要時間で除して得られる車速が車両Cの停止を示す車速であるか否かを判別する構成等を採用可能である。
【0070】
車両Cの初期動作を取得すると、制御部200は、推定動作取得部210cの処理により、車両Cの初期動作に対応した系統のコスト情報を取得する(ステップS210)。例えば、初期動作が車両Cの停止に対応した動作であるときには図6の下部に示す系統のコスト情報(コストCt22,Ct32,Ct42、、、)を取得し、初期動作が車両Cの通過に対応した動作であるときには図6の上部に示す系統のコスト情報(コストCt21,Ct31,Ct41、、、)を取得する。
【0071】
そして、制御部200は、案内制御部210dの処理により、取得した系統のコスト情報に基づいて経路探索を行い(ステップS215)、得られた経路上を走行させるための案内を案内部430に出力させる(ステップS220)。この結果、目的地までの経路の候補として上述の所定区間の道路を構成する複数の道路区間が含まれる場合に、当該道路区間の間の交差点における走行困難性を正確に反映した経路探索を行い、案内することができる。
【0072】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、初期動作に応じて当該初期動作以後の車両の動作を推定する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、初期動作は、所定区間の道路の走行を開始したときの車両の動作であればよく、予め決められた所定区間の道路に車両が進入し、特定の動作を行ったときにその動作を初期動作として取得することができればよい。従って、所定区間の道路に進入する直前あるいは直後における車両の動作を特定してもよいし、所定区間の道路を構成する道路区間のいずれかにおいて走行を開始したときに当該道路区間における動作を特定しても良い。なお、所定区間の道路への進入位置は、所定区間の道路の起点であっても良いし、所定区間の道路の起点と終点との間の位置であっても良い。また、初期動作や集合に対応した車両の動作は、停止動作あるいは停止することなく交差点を通過する動作に限定されず、例えば、道路区間における平均所要時間等であっても良い。
【0073】
なお、所定区間の道路に進入する直前あるいは直後における車両の動作は、種々の手法によって特定可能である。例えば、各道路区間を走行しているときの車両の位置の変化を時刻とともに取得してプローブ情報30aとする構成とし、車両が所定区間の道路に連結した道路区間を走行しているときに出力したプローブ情報30aを参照する。また、当該プローブ情報30aが示す車両の位置変位であって、所定区間の道路への進入位置近傍(進入位置以前の所定距離範囲)における車両の位置変位を取得する。そして、単位時間の位置変位が所定量より小さい場合に車両が停止していたと見なし、単位時間の位置変位が所定量より大きい場合に車両が走行していたとみなす。この構成によれば、車両が所定区間の道路に進入する直前の動作を特定することができる。そこで、当該動作を初期動作とし、その後の車両の動作を上述のクラスタリングによって分類すれば、所定区間の道路に進入する直前の車両の動作に応じてその後の車両の動作を推定することが可能になる。むろん、所定区間の道路に進入した直後における車両の動作についても同様のプローブ情報30aを利用して特定可能である。すなわち、当該プローブ情報30aを参照し、プローブ情報30aが示す車両の位置変位であって、所定区間の道路への進入位置近傍(進入位置以降の所定距離範囲)における車両の位置変位を取得する構成とすればよい。
【0074】
さらに、所定区間の道路は予め決定されていれば良く、種々の基準に基づいて決定することができる。例えば、予め決められた2地点間の連続した複数の道路区間にて所定区間の道路を構成してもよい。むろん、連続した複数の道路区間によって構成される所定区間の道路は種々の形状であって良く、直進道路でも良いし、曲がっていても良い。例えば、前記道路区間を連続した直進区間とすれば、複数の道路区間によって構成される道路が直進道路になるし、道路区間をカーブ区間によって構成し、また、連続する道路区間として交差する道路区間を採用すれば、複数の道路区間によって構成される道路が曲がった道路になる。
【0075】
さらに、車両の初期動作はその後の車両の動作に影響を与え得る動作として定義することができれば良く、各種センサやカメラ、各種通信など種々の情報に基づいて当該動作を取得可能である。例えば、車両の位置、速度、加速度等をセンサやカメラによって特定する構成や、GPSからの信号や地図上での自車両での軌跡,車車間通信,路車間通信等によって車両の位置,速度,加速度等を取得する構成を採用可能である。
【0076】
推定動作に基づく案内は、上述のような経路案内に限定されない。すなわち、運転者に推定動作に基づく情報を提示することによってその後の運転を支援することができればよく、推定動作自体を案内する構成を採用しても良いし、推定動作を間接的に示す情報(例えば、停止することが予測される信号機の位置等)を案内する構成としても良く、種々の構成を採用可能である。なお、停止することが予測される信号機の位置など、推定動作に基づく情報を強調表示しても良い。
【0077】
さらに、案内部における案内の例として、所定区間の道路を走行する際の推定所要時間を案内する構成を採用しても良い。すなわち、推定動作を示す情報を特定すれば、所定区間の道路における車速や停止の頻度等に基づいて当該道路を走行する際の所要時間を推定することができる。そこで、当該所要時間を案内すれば、正確な所要時間を提示することによって運転者の運転を支援することが可能である。
【0078】
例えば、図5に示すように集合が分類されたとき、各集合を構成する車速特定情報に基づいて集合毎に平均所要時間を算出すれば、その道路区間における所要時間の期待値を算出することができる。より具体的には、道路区間nの集合Gmを構成する車速特定情報に基づいて算出される平均所要時間がAvm、集合Gmの発生確率がPmであるとき、道路区間nを走行する際の期待値はΣPm・Avmとなる。そこで、当該期待値を示す式において、初期動作に対応する系統に属する集合のみを抽出するようにmを設定し、設定されたmの範囲で発生確率Pmを規格化すれば、初期動作後に各道路区間を走行する際の所要時間の期待値を算出することができるため、当該期待値を推定所要時間として案内すればよい。
【0079】
なお、図5に示す例において、道路区間1の初期動作が停止することなく通過する動作であるとき、当該初期動作の後に道路区間2を通過するときの所要時間の期待値は(集合G1の平均所要時間)×(0.6/0.6)+(集合G3の平均所要時間)×(0.4/0.6)+(集合G4の平均所要時間)×(0.2/0.6)である。また、推定所要時間を案内するためには、ナビゲーション装置100において、推定動作を示す情報として、例えば、上述のような集合の発生確率および平均所要時間を示す情報を取得し、この情報に基づいて所要時間の期待値を算出して推定所要時間として案内する構成を採用可能である。また、走行パターン情報取得装置10において所要時間の期待値を算出し、各初期動作に対応付けて所要時間を特定するための情報としてナビゲーション装置100に送信する構成としてもよい。この構成においては、ナビゲーション装置100において当該所要時間を特定するための情報に基づいて、初期動作に対応する所要時間を特定し、案内する。
【0080】
さらに、上述の実施形態においては、所定区間の道路を構成する複数の道路区間の中で最初の道路区間における動作を初期動作とし、当該初期動作に対してそれ以後の車両の動作(あるいはコスト情報)を対応付ける構成としていたが、所定区間の道路における任意の道路区間に進入した時点における車両の動作を初期動作として特定する構成としても良い。例えば、図5,図6のように系統立てて集合の発生確率を定義すれば、任意の道路区間から特定の方向(図5,図6に示す例においては道路の番号nが大きくなる方向)に向けて走行する際の動作を推定することができる。
【0081】
例えば、道路区間2における集合は、道路区間1にて停止した動作に対応する2個の集合に分類され、道路区間1を停止することなく通過した動作に対応する2個の集合に分類され得るが、当該4個の集合は道路区間2において停止しあるいは停止しなかった場合の動作に対応している。従って、4個の集合を、車両が停止した動作に対応する集合と停止しなかった動作とに分類することができる。また、道路区間3以降の集合は道路区間2における集合に対応して系統立てられている。従って、車両Cが道路区間2にて走行を開始したときの動作を特定すれば、それ以後の動作を推定することが可能になる。
【0082】
さらに、車両の動作は、時間帯によって異なり得るので、車速特定情報を時間帯に対応付け、時間帯毎にクラスタリングを行って、車両の動作やコスト情報と時間帯とを対応付ける構成としても良い。さらに、クラスタリングは上述のアルゴリズムに限定されず、判別関数を特定する判別分析によって分類を行っても良い。さらに、上述の実施形態においては、集合数を2個として分類を行っていたが、むろん、3以上の任意の数の集合に分類を行う構成としても良い。
【0083】
図4Bは車速特定情報が3個の集合を形成し得る確率分布を示しており、このような分布を形成する場合には3個の集合に分類することが好ましい。また、X個の集合に個別の動作を対応付けてX種類の動作を行い得るとしてもよいし、(X−1)個以下の種類の動作を行い得るとしても良い。例えば、図4Bのように、車速特定情報が3個の集合を形成した場合であっても、3個の集合をさらに1個の集合と2個の集合とに分類し、いずれか一方に停止動作、他方に停止することなく通過する動作を対応付けても良い。なお、3以上の数の集合に分類する場合、ステップS130に示したクラスタリングの検証は特に有用である。
【0084】
さらに、コスト情報の態様としては、上述のように停止動作と停止することなく通過する動作とのいずれか一方に対応した値とする構成に限定されず、動作の発生確率に応じて数値を変動させる構成を採用しても良い。例えば、交差点におけるデフォルトのコストを停止確率50%に対応させて"100"とし、停止確率が0%,25%,75%,100%と変化する場合にそれぞれのコストを"0","50","150","200"と変化させる構成等を採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】走行パターン情報取得装置とナビゲーション装置とを含むシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】コスト情報生成処理を示すフローチャートである。
【図3】所定区間として設定される道路の例を示す図である。
【図4】(4A),(4B)は所要時間の確率分布を示す図である。
【図5】道路区間における集合を示す図である。
【図6】系統立てたコストの例を示す図である。
【図7】経路案内処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
10…走行パターン情報取得装置、20…制御部、21…走行パターン情報取得プログラム、21a…送受信制御部、21b…車速特定情報取得部、21c…車速特定情報分類部、21d…動作発生確率取得部、22…通信部、30…記憶媒体、30a…プローブ情報、30b…地図情報、30b,300a…地図情報、30c…コスト情報、100…ナビゲーション装置、200…制御部、210…ナビゲーションプログラム、210a…送受信制御部、210b…初期動作取得部、210c…推定動作取得部、210d…案内制御部、210e…プローブ情報生成部、220…通信部、410…GPS受信部、420…車速センサ、430…案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定区間の道路の走行を開始したときの車両の初期動作を示す情報を取得する初期動作取得手段と、
前記初期動作に対応付けて予め規定された、前記初期動作後における前記所定区間の道路上での前記車両の推定動作を示す情報を取得する推定動作取得手段と、
前記推定動作を示す情報に基づいて、前記所定区間の道路を走行する際の運転を支援するための案内を前記車両に搭載された案内部に行わせる案内制御手段と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記推定動作を示す情報は、連続する道路区間の一方から他方に走行する際の走行困難性を示す情報であり、
前記案内制御手段は、当該走行困難性を示す情報に基づいて探索した経路を前記案内部に案内させる、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記案内制御手段は、前記推定動作を示す情報に基づいて前記所定区間の道路を走行する際の所要時間を推定し、当該所要時間を前記案内部に案内させる、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記推定動作を示す情報は、前記所定区間の道路を走行する際の所要時間を特定するための情報であり、
前記案内制御手段は、前記所要時間を特定するための情報に基づいて前記所要時間を前記案内部に案内させる、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
所定区間の道路の走行を開始したときの車両の初期動作を示す情報を取得する初期動作取得工程と、
前記初期動作に対応付けて予め規定された、前記初期動作後における前記所定区間の道路上での前記車両の推定動作を示す情報を取得する推定動作取得工程と、
前記推定動作を示す情報に基づいて、前記所定区間の道路を走行する際の運転を支援するための案内を前記車両に搭載された案内部に行わせる案内制御工程と、
を含む運転支援方法。
【請求項6】
所定区間の道路の走行を開始したときの車両の状態を示す情報を取得する初期動作取得機能と、
前記初期動作に対応付けて予め規定された、前記初期動作後における前記所定区間の道路上での前記車両の推定動作を示す情報を取得する推定動作取得機能と、
前記推定動作を示す情報に基づいて、前記所定区間の道路を走行する際の運転を支援するための案内を前記車両に搭載された案内部に行わせる案内制御機能と、
をコンピュータに実現させる運転支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−236725(P2009−236725A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84042(P2008−84042)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】