説明

過給システム

【課題】ブローバイガス管内部の付着物を除去して過給機が備えるタービンのインペラが損傷することを防止する過給システムを得る。
【解決手段】ユーザがイグニッションスイッチをオフにしたとき処理が開始する。ステップS202において過給機は電動アシストモータによりサージが発生する回転数まで回転させられる。ステップS203において過給機でサージが発生しているかどうかが判断される。サージが発生すると、サージによる圧力変動が第1の吸気管、ブローバイガス管、EGR管、及びタービンに伝播し、これらが振動する。第1の吸気管、ブローバイガス管、EGR管、及びタービンに付着している水及び汚れはこの振動及び空気の脈動によりふるい落とされる。ブローバルブが開けられて第2の吸気管から圧縮気体がブロー管を通じて開閉弁の近傍に噴射される。これによりブローバイガス管内部に付着した水及び汚れが除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に用いられる過給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関にはブローバイガスを吸気管に還流するブローバイガス管が接続される。ブローバイガスはオイルを含み、これを放置したまま吸気管に還流するとオイル消費量が増大すると共にエンジンの動力性能及び排気ガス性能が悪化する。
【0003】
これを防止するため、ヘッドカバー内に吸気管から気体を導入することによりブローバイガスを冷却して、ブローバイガスに含まれるオイルを取り除く構成が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−212939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ブローバイガスには水が含まれることがある。内燃機関が寒冷環境で使用されるとき、内燃機関停止後、水はオイルを核として氷となりブローバイガス管の内部に付着する。特許文献1のように気体の導入により冷却して取り除く構成では冷却温度に限界があるためオイルや水を完全に除去できないおそれがある。
【0005】
ブローバイガス管の内部に氷が付着した状態で過給機が作動すると、氷は吸気管を経て過給機に流入する。過給機に流入した氷はコンプレッサのインペラに衝突して破壊する。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、ブローバイガス管内部の付着物を除去して過給機が備えるコンプレッサのインペラが損傷することを防止する過給システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明による過給システムは、過給器の回転速度を調整して過給器にサージを発生させる回転速度制御手段と、内燃機関のブローバイガス排出部及び吸気管の間に接続される還流管と、内燃機関の停止前に還流管に送気を行う送気手段とを備え、送気手段及び回転速度制御手段が動作することにより、還流管の付着物を還流管から吸気管を介して内燃機関の燃焼室へ流入させることを特徴とする。
【0008】
回転速度制御手段は過給器にサージを発生させることにより、吸気管の付着物を取り除いても良い。
【0009】
過給器は過給機が有するタービンに設けられる可変ノズルを備え、回転速度制御手段は過給器にサージを発生させ、可変ノズルの付着物を取り除くものでも良い。
【0010】
送気手段は、過給機よりも下流側の吸気管と還流管との間に接続されるブロー管と、ブロー管に取り付けられるブローバルブとを備え、ブローバルブは吸気管内の圧力が所定の圧力よりも高くなったときに開放され、吸気管から還流管へ気体を流出させることが好ましい。
【0011】
過給機は電動アシストモータを備え、回転速度制御手段は特定の回転数で電動アシストモータを動作させることにより過給機にサージを発生させるものであればなお良い。
【0012】
回転速度制御手段は、内燃機関の排気エネルギーにより過給機に回転力を与え、過給機の回転による慣性力によって過給機にサージを発生させても良い。
【0013】
過給機はスーパーチャージャであって、回転速度制御手段はスーパーチャージャを特定の回転数で動作させることにより過給機にサージを発生させても良い。
【0014】
過給システムは、吸気管に取り付けられ吸気管内の気体の圧力を計測する圧力センサをさらに備え、回転速度制御手段は圧力センサから送信された圧力によりサージの発生を検出することが望ましい。
【0015】
還流管は、付着物を分粒又は破砕するフィルタをさらに備えても良い。
【0016】
過給システムは還流管に取り付けられる開閉弁をさらに備え、開閉弁は吸気管から排気管への流れを阻止することが好ましく、開閉弁は付着物を分粒又は破砕するフィルタを有すればなお良い。
【0017】
本願第2の発明による過給システムは、内燃機関のブローバイガス排出部及び吸気管の間に接続される還流管と、過給機よりも下流側の吸気管と還流管との間に接続されるブロー管と、ブロー管に取り付けられるブローバルブとを備え、ブローバルブは吸気管内の圧力が所定の圧力よりも高くなったときに開放され、吸気管から還流管へ気体を流出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ブローバイガス管内部の付着物を除去して過給機が備えるコンプレッサのインペラが損傷することを防止する過給システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0020】
本発明による過給システムの一実施形態について図1を用いて説明する。
【0021】
過給システムは過給機110と、内燃機関、すなわちエンジン120及び過給機110を制御するECU130とから主に構成される。
【0022】
過給機110はコンプレッサ111、電動アシストモータ112及びタービン113を備える。タービン113は第1の排気管142に接続され、エンジン120から排出される排気エネルギーにより回転される。第1の排気管142はエンジン120の排気口(図示しない)に接続される排気マニホールド141から延びる。
【0023】
タービン113とコンプレッサ111は回転シャフト(図示しない)により接続され、タービン113の回転は回転シャフトによりコンプレッサ111に伝達される。コンプレッサ111はエアクリーナ156から第1の吸気管155を通じて導かれた空気を吸入及び加圧する。加圧された空気は第2の吸気管154を介してインタークーラ153に流入し冷却された後、第3の吸気管152及び吸気マニホールド151を経てエンジン120内の燃焼室121に流入する。第1の吸気管155には吸気絞り弁157が設けられ、ECU130からの信号に従い空気の流量を調整する。電動アシストモータ112は回転シャフトに取り付けられ、ECU130からの信号に従ってコンプレッサ111の回転をアシストする。
【0024】
タービン113にはVN(バリアブルノズル)114が取り付けられる。VN114はECU130からの信号に従いノズル(図示しない)の角度を変える。これによりVN114はタービンインペラ(図示しない)に流入する気体の流れを調節し、タービン113の出力を制御する。
【0025】
第1の吸気管155は、エンジン120のヘッドカバー122及びクランクケース(図示しない)から延びるブローバイガス管160に接続する。ヘッドカバー122及びクランクケースのブローバイガス排出部123からはブローバイガスが排出される。ブローバイガス管160はブローバイガスをヘッドカバー122及びクランクケースから第1の吸気管155に還流する。ブローバイガス管160には開閉弁(ブローバイシャットオフバルブ)161が設けられ、ECU130からの信号に従ってブローバイガスの還流を制御する。
【0026】
タービン113を回転させた排気は、第2の排気管143に流入する。第1の吸気管155と第2の排気管143はEGR管170により接続される。EGR管170は排気を第1の吸気管155に流入させ排気再循環を行う。EGR管170にはEGR弁171が設けられ、ECU130からの信号に従って排気再循環を制御する。
【0027】
ブローバイガス管160の開閉弁161から第1の吸気管155までの部位には、第2の吸気管154から分岐されるブロー管180が接続される。ブロー管180にはブローバルブ181が設けられ、ECU130からの信号に従って第2の吸気管154からブローバイガス管160への気体の流れを制御する。開閉弁161の上流側近傍にはフィルタ162が設けられる。フィルタ162は通過する異物を分粒あるいは粉砕する。これにより吸気管に異物が流入することを防止することができる。
【0028】
ブローバイガス管160の開閉弁161から第1の吸気管155までの部位、及びEGR管170のEGR弁171から第1の吸気管155までの部位には、ドレーン190が接続される。ドレーン190はそれぞれの弁に蓄積された水や汚れを管外に排出する。
【0029】
第1の吸気管155にはECU130に接続される吸気圧センサ158が取り付けられる。吸気圧センサ158は第1の吸気管155内部の気体の圧力を測定し、ECU130に伝達する。
【0030】
エンジン120はECU130により燃料噴射量等を制御されて燃料を燃焼する。燃焼により生じた排気ガスは第1の排気管142、タービン113、及び第2の排気管143を介し触媒144に達して浄化された後、第3の排気管143を経て大気に放出される。
【0031】
次に図2を用いて過給システムによるブローバイガス管160等における水等の除去処理について説明する。
【0032】
エンジン120の動作を停止させるためユーザがイグニッションスイッチ(図示しない)をオフにしたとき、この処理がECU130においてステップS201から開始する。このとき、まだエンジン120は停止していない。
【0033】
ステップS202では、電動アシストモータ112が駆動される。過給機110は、電動アシストモータ112によりサージが発生する回転数まで回転させられる。ステップS203において、圧力センサ158から送られる圧力のデータを用いて過給機110でサージが発生しているかどうかが判断される。サージが発生していないとき、処理はステップS202に戻され、再度電動アシストモータ112を駆動する。これにより過給機110は確実にサージを発生する。
【0034】
サージが発生しているとき処理はステップS204へ移る。ステップS204では、開閉弁(ブローバイシャットオフバルブ)161及びEGR弁171が閉じられ、ブローバルブ181が開けられる。
【0035】
サージが発生すると、サージによる圧力変動が第1の吸気管155、ブローバイガス管160、EGR管170、及びタービン113に伝播し、これらが振動する。第1の吸気管155、ブローバイガス管160、EGR管170の管内に付着している水及び汚れは、この振動及び空気の脈動によりふるい落とされる。タービン113では、サージによる振動がVN114に伝播して、VN114に付着した水及び汚れがふるい落とされる。
【0036】
ブローバルブ181が開けられると、第2の吸気管154から圧縮気体がブロー管180を通じて開閉弁161の近傍に噴射される。この噴射された気体により、開閉弁161下流の水及び汚れは第1から第3の吸気管155、154、152を経て燃焼室121へ流入し、燃焼される。これにより開閉弁161下流の水及び汚れが除去される。
【0037】
噴射された気体により第1の吸気管155へ流入しない水及び汚れは開閉弁161近傍に設けられたドレーン190に流入してブローバイガス管160の外部に排出される。このとき、開閉弁161は閉じられているため、噴射された気体及びふるい落とされた水等はブローバイガス管160及びEGR管170に逆流しない。
【0038】
ステップS205では、エンジン120への燃料及び電動アシストモータ112への電力がカットされて、エンジン120及び補機類の動作が停止する。電動アシストモータ112への電力がカットされ、併せてステップS204でブローバルブ181が開けられることによりサージが収束する。サージの発生からエンジン120等の停止までの時間は約1〜3秒程度である。
【0039】
以上のように本実施形態によれば、ブローバイガス管160内部の水や汚れが除去されるため、次回過給機110が作動したとき、ブローバイガス管160から氷や汚れがコンプレッサに流入せず、コンプレッサインペラの破壊を防止することができる。
【0040】
さらに、ブロー管180とブローバイガス管160との接続部よりも上流側のブローバイガス管160内で発生した付着物は、開閉弁161の上流側に設けられたフィルタ162を通過するとき、フィルタ162により分粒又は粉砕される。これにより、ブロー管180から噴射された気体により吹き飛ばされなかった付着物がエンジン120始動時に氷となってコンプレッサ111へ流入しインペラを破壊することを防止する。
【0041】
なお、過給機でサージを発生させず、ブロー管から噴射される空気により水又は汚れを第1の吸気管155へ流入させても良い。これにより還流管160における開閉弁161下流の水及び汚れが除去される。
【0042】
過給機114には電動アシストモータ112が設けられず、サージは過給機114の慣性力により発生するものであっても良い。
【0043】
また、除去処理はECU130で実行されなくても良く、他の制御手段により実行されても良い。
【0044】
サージの発生からエンジン等の停止までの時間は、水等をふるい落とすために要する時間であれば良く、約1〜3秒程度に限定されない。
【0045】
さらに、フィルタ162は開閉弁161と一体として設けられても良い。この場合、エンジン始動時に一定期間開閉弁161を閉じることにより、ブローバイガス管160内の付着物がコンプレッサ111のインペラに衝突して破壊することを防止することができる。
【0046】
開閉弁161の近傍に噴射される気体は第2の吸気管154から導かれるものでなく、電動ポンプによりエアクリーナ156から導かれるものであっても良い。第2の吸気管154内の圧力が低下することを防止できる。
【0047】
過給機はスーパーチャージャであっても良い。このときスーパーチャージャを回転させることによりサージを発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】過給システム及び過給システムが接続されたエンジンの模式図である。
【図2】過給システムにおける処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
110 過給機
111 コンプレッサ
112 電動アシストモータ
113 タービン
114 VN
120 エンジン
130 ECU
141 排気マニホールド
142 第1の排気管
143 第2の排気管
151 吸気マニホールド
152 第3の吸気管
154 第2の吸気管
155 第1の吸気管
160 ブローバイガス管
161 開閉弁
162 フィルタ
170 EGR管
171 EGR弁
180 ブロー管
181 ブローバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給器の回転速度を調整して前記過給器にサージを発生させる回転速度制御手段と、
内燃機関のブローバイガス排出部及び吸気管の間に接続される還流管と、
前記内燃機関の停止前に前記還流管に送気を行う送気手段とを備え、
前記送気手段及び前記回転速度制御手段が動作することにより、前記還流管の付着物を前記還流管から前記吸気管を介して前記内燃機関の燃焼室へ流入させる過給システム。
【請求項2】
前記回転速度制御手段は前記過給器にサージを発生させることにより、前記吸気管の付着物を取り除く請求項1に記載の過給システム。
【請求項3】
前記過給器は前記過給機が有するタービンに設けられる可変ノズルを備え、
前記回転速度制御手段は前記過給器にサージを発生させ、前記可変ノズルの付着物を取り除く請求項1に記載の過給システム。
【請求項4】
前記送気手段は、前記過給機よりも下流側の前記吸気管と前記還流管との間に接続されるブロー管と、前記ブロー管に取り付けられるブローバルブとを備え、
前記ブローバルブは前記吸気管内の圧力が所定の圧力よりも高くなったときに開放され、前記吸気管から前記還流管へ気体を流出させる請求項1に記載の過給システム。
【請求項5】
前記過給機は電動アシストモータを備え、
前記回転速度制御手段は特定の回転数で前記電動アシストモータを動作させることにより前記過給機にサージを発生させる請求項1に記載の過給システム。
【請求項6】
前記回転速度制御手段は、前記内燃機関の排気エネルギーにより前記過給機に回転力を与え、前記過給機の回転による慣性力によって前記過給機にサージを発生させる請求項1に記載の過給システム。
【請求項7】
前記過給機はスーパーチャージャであって、
前記回転速度制御手段は前記スーパーチャージャを特定の回転数で動作させることにより前記過給機にサージを発生させる請求項1に記載の過給システム。
【請求項8】
前記吸気管に取り付けられ、吸気管内の気体の圧力を計測する圧力センサをさらに備え、
前記回転速度制御手段は前記圧力センサから送信された圧力によりサージの発生を検出する請求項1に記載の過給システム。
【請求項9】
前記還流管は前記付着物を分粒又は破砕するフィルタをさらに備える請求項1に記載の過給システム。
【請求項10】
前記還流管に取り付けられる開閉弁をさらに備え、
前記開閉弁は前記吸気管から前記排気管への流れを阻止する請求項1に記載の過給システム。
【請求項11】
前記開閉弁は前記付着物を分粒又は破砕するフィルタを有する請求項10に記載の過給システム。
【請求項12】
内燃機関のブローバイガス排出部及び吸気管の間に接続される還流管と、
前記過給機よりも下流側の前記吸気管と前記還流管との間に接続されるブロー管と、
前記ブロー管に取り付けられるブローバルブとを備え、
前記ブローバルブは前記吸気管内の圧力が所定の圧力よりも高くなったときに開放され、前記吸気管から前記還流管へ気体を流出させる過給システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−255960(P2008−255960A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101458(P2007−101458)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】