説明

遠隔操作システム及び電源充電式通信端末

【課題】通信端末を充電電力によって動作させる場合であっても、通信端末とその通信相手との間の遠隔通信の通信成立性を向上することができる端末充電式遠隔操作システム及び電源充電式通信端末を提供する。
【解決手段】充電用コンデンサ44の充電電圧残量から通常形式時のワイヤレス通信の通信可能時間を算出し、この通信可能時間から最大通信可能フレーム数を算出する。そして、最大通信可能フレームが規定フレーム数に満たない場合には、充電用コンデンサ44の充電電圧残量が残り僅かであるとして、ワイヤレス信号Swlを省略形式で発信する。この場合、ワイヤレス信号Swlのフレームを1つとし、残りの通信時間をプリアンブルに割り当ててワイヤレス信号Swlを発信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末の遠隔操作によって通信相手を動作させる遠隔操作システム及び電源充電式通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から周知のように、車両のキーシステムには、例えば電子キーによる遠隔操作によって各種車載機器を操作するワイヤレスキーシステム(例えば特許文献1等参照)が広く使用されている。このワイヤレスキーシステムには、例えば電子キーの遠隔操作で車両ドアを施解錠するワイヤレスドアロックシステムがある。同システムでは、電子キーで施錠ボタンが操作されると、電子キーから施錠要求が車両に発信されて車両ドアが施錠され、電子キーで解錠ボタンが操作されると、今度は電子キーから解錠要求が車両に発信されて車両ドアが解錠される。
【0003】
電子キーは、一般的に電源として電池を内蔵し、この電池を電源に電波発信等の各種動作を行う。ところで、電池は一般的に一次電池を使用しているので、電池切れがどうしても起こり、電池切れの都度、電池交換をユーザに課す必要がある。このような電池交換作業は非常に面倒であり、また突然の電池切れによって電子キーを使えなくなると、ユーザが困惑することにも繋がる懸念がある。そこで、通信環境下に存在する電力電波によって充電可能な蓄電デバイス(例えばコンデンサ等)を電子キーに乗せ、この蓄電デバイスの電力で電子キーを動作させる技術が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−213999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電デバイスは、通常の一次電池に比べて、保持できる電力がそれほど多くなく、極めて限られた電源であるという現状がある。このため、充電デバイスにはこまめに充電を行わなければならないが、もし仮に充電デバイスに充電できずに電子キーの使用回数が増えたり或いは使用時間が延びたりしてしまうと、電子キーが電力不足に陥ってしまう可能性も否めない。よって、背景技術で提案した技術は、通信途中に電力不足に陥る可能性、即ち通信が不成立として処理されてしまう可能性が高いという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、通信端末を充電電力によって動作させる場合であっても、通信端末とその通信相手との間の遠隔通信の通信成立性を向上することができる端末充電式遠隔操作システム及び電源充電式通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、電力電波を通信端末が受信した際には、当該通信端末の充電部が当該電波によって充電され、当該通信端末において遠隔操作が行われた際には、当該操作に応じた遠隔指示信号が前記充電部を電源として発信されて、通信対象との間の遠隔通信が実行される遠隔操作システムであって、前記通信端末に設けられ、前記遠隔指示信号を通信形式で発信するのに前記充電部の電力が充分か否かを確認する充電電力確認手段と、前記通信端末に設けられ、前記充電電力確認手段が充電不足を確認した場合、前記遠隔通信を省略形式で実行させる通信制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、通常形式で遠隔操作を行うのに充分な電力が充電部に残っていない場合には、遠隔通信が省略形式で実行される。このため、充電部の電圧残量が残り僅かとなった際には、通信に際して大きな電力を必要としない省略形式で遠隔通信が実行されるので、残り僅かの電力で遠隔通信を最後まで実行することが可能となる。よって、遠隔通信の途中で充電部の電圧がなくなって通信が途中で切れてしまう状況が生じ難くなるので、遠隔通信の通信成立性を高いものとすることが可能となる。
【0009】
本発明では、前記通信対象は、電波受信動作としてポーリングを行い、当該ポーリングのタイミングで前記遠隔指示信号を受信可能となっていることを要旨とする。
この構成によれば、通信対象の受信動作をポーリング式としたので、通信対象はポーリング周期という定期的なタイミングで起きればよい。このため、通信端末を電波受信のために常時起動させずに済むので、通信対象の電源の省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記遠隔指示信号は、データ内容が同じフレームを複数個並べて発信される形式をとり、前記通信対象は、前記ポーリングにおいて複数の当該フレームの何れかを、その先頭から取り込むことによって前記遠隔指示信号を受信することを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、遠隔指示信号を複数フレームで発信するので、通信相手がポーリングという受信動作を行う場合であっても、ポーリングに遠隔操作信号をその先頭からより確実にヒットさせることが可能となる。このため、通信相手が受信動作としてポーリングをとる場合であっても、遠隔通信をより確実に成立させることが可能となる。
【0012】
本発明では、前記省略形式は、前記通常形式に比べてフレーム数を減らして発信される形式であることを要旨とする。
この構成によれば、省略形式を単にフレーム数を減らす形式としたので、遠隔指示信号の省略形式への変更処理を簡素な処理とすることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記省略形式は、前記遠隔指示信号を前記ポーリングにヒットさせるプリアンブルと、前記通常形式に比べて数が減らされたフレームとにより構築する形式であることを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、遠隔指示信号をプリアンブルによってポーリングにヒットさせることが可能となるので、より確実に遠隔指示信号を通信相手に受け取らせることが可能となる。
【0015】
本発明では、前記充電電力確認手段は、前記充電部の電圧残量を基に前記通常形式時の前記遠隔通信の通信可能時間を算出するとともに、当該通信可能時間から最大通信可能フレーム数を算出し、前記通信制御手段は、前記最大通信可能フレーム数が通信形式の規定フレーム数より大きい値をとれば、前記遠隔通信を前記通常形式で実行させ、前記最大通信可能フレーム数が前記規定フレーム数よりも小さい値をとれば、前記遠隔通信を前記省略形式で実行させることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、充電部の残量電圧から遠隔通信の通信可能時間を算出し、この通信可能時間から求めた最大通信可能フレーム数を見るという簡素な形式によって、遠隔通信を通常形式で行うに際して充電部の電圧残量が充分か否かを確認することが可能となる。
【0017】
本発明では、前記充電電力確認手段は、前記充電部の電圧残量を基に前記通常形式時の前記遠隔通信の通信可能回数を算出し、前記通信制御手段は、前記通信可能回数に残りがあれば、前記遠隔通信を前記通信形式で実行させ、前記通信可能回数の残りがなくなれば、前記遠隔通信を前記省略形式で実行させることを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、充電部の電圧残量から算出した通信可能回数を見るという簡素な形式によって、遠隔通信を通常形式で行うに際して充電部の電圧残量が充分か否かを確認することが可能となる。
【0019】
本発明では、電力電波を受信した際には、当該電力電波によって自身の充電部が充電され、遠隔操作が行われた際には、当該操作に応じた遠隔指示信号が前記充電部を電源として発信されて、通信対象と遠隔通信が実行される電源充電式通信端末であって、前記遠隔指示信号を通常形式で発信するのに前記充電部の電力が充分か否かを確認する充電電力確認手段と、前記充電電力確認手段が充電不足を確認した場合、前記遠隔通信を省略形式で実行させる通信制御手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通信端末を充電電力によって動作させる場合であっても、通信端末とその通信相手との間の遠隔通信の通信成立性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態における電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】スマート通信の通信態様を示すタイミングチャート。
【図3】無線電力伝送システム及びワイヤレス通信形式切換装置の概略構成を示すブロック図。
【図4】ワイヤレス信号の信号内容を示す概念図。
【図5】充電用コンデンサの充電電圧の変化過程を示すグラフ図。
【図6】省略形式のワイヤレス通信の通信態様を示すタイミングチャート。
【図7】ワイヤレス通信の途中で電子キーが電池切れに陥った例を示すタイミングチャート。
【図8】第2実施形態におけるワイヤレス通信形式切換装置の概略構成を示すブロック図。
【図9】省略形式のワイヤレス通信の通信態様を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両に具体化した遠隔操作システム、電源充電式通信端末及びその電源制御方法の第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0023】
図1に示すように、車両1には、車両キーとして使用される電子キー2との間で無線通信によりキー照合を行って、このキー照合の成立を条件にドアロック施解錠やエンジン始動が許可又は実行される電子キーシステム3が設けられている。この電子キーシステム3は、車両1からIDコードの返信要求としてリクエスト信号Srqを電子キー2に発信させ、このリクエスト信号Srqに応答して電子キー2が返信してきたID信号Sidによって自動的にID照合を行うキー操作フリーシステムが含まれている。なお、車両1が通信相手に相当し、電子キー2が通信端末に相当する。
【0024】
このキー操作フリーシステムには、ドアロックの施解錠操作の際にキー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステムがある。この場合、車両1には、電子キー2との間でキー照合(ID照合)を行う照合ECU(Electronic Control Unit)4と、車載モータやリレー等の動作を管理するメインボディECU5とが設けられ、これらECU4,5が車内の一ネットワークであるLIN(Local Interconnect Network)6を介して接続されている。照合ECU4には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波(約134KHz)を発信可能な車外発信機7と、車内に同様のLF電波を発信可能な車内発信機8と、UHF(Ultra High Frequency)帯の一種であるRF(Radio Frequency:約312MHz)の電波を受信可能な車両チューナ9とが接続されている。また、メインボディECU5には、ドアロックの施解錠を実行するときの駆動源としてドアロックモータ10が接続されている。
【0025】
また、電子キー2には、電子キー2の各種動作を統括制御する通信制御回路11が設けられている。通信制御回路11は、例えば1チップのIC(Integrated Circuit)からなり、電子キー2の動作を統括管理する通信制御部12を備えている。通信制御部12は、CPU(Central Processing Unit)13やメモリ14等の各種デバイスを持ち、電子キー2が持つ固有のキーコードとしてIDコードがメモリ14に登録されている。
【0026】
電子キー2には、LF電波を受信可能なキー受信アンテナ15と、RF電波を発信可能なキー発信アンテナ16とが設けられている。キー受信アンテナ15は、通信制御回路11のAFE(Analog Front End)17を介して通信制御部12(CPU13)に接続されている。AFE17は、キー受信アンテナ15に接続されるとともに、キー受信アンテナ15で受信した受信電波を増幅して復調したり、或いは復調後の受信電波を解読したりして、処理後の受信データを通信制御部12に出力する。キー発信アンテナ16は、キー発信回路18を介して通信制御回路11に接続されている。キー発信回路18は、通信制御部12からの信号をRF電波に変換したり、増幅したりする回路である。
【0027】
図2に示すように、照合ECU4は、車両駐車時、車外発信機7からLF帯のウェイク信号19を断続的に発信させて、車両周辺にウェイク信号19の車外通信エリアを形成する。これにより、狭域無線通信(以降、スマート通信と記す)の成立可否を監視し、車両周囲における電子キー2の有無を見る。電子キー2がこの車外通信エリアに入り込んでウェイク信号19を受信すると、スマート通信が確立し、AFE17はウェイク信号19の正否を見るウェイクパターン照合を実行する。AFE17は、ウェイクパターン照合が成立することを確認すると、通信制御部12(CPU13)をそれまでのスリープ状態から起動状態に切り換える。通信制御部12は、起動状態に切り換わると、アック信号20をRF電波によってキー発信アンテナ16から発信させる。
【0028】
ところで、照合ECU4は、ウェイク信号19の発信に際して、車両チューナ9における電波の受け付け有無を確認する受信動作(受信準備動作)を、ウェイク信号19の発信動作間隔、即ちポーリング周期の周期サイクルで繰り返し実行している。この受信準備動作は、車両チューナ9を立ち上げるスタートアップ動作と、実際の電波内容を確認する電波内容確認動作とからなる。受信準備動作は、電波を受信すると一定の制限時間を持って延長され、その時間内で電波を正確に受信できるかどうかを見ることで受信可否が確認される。照合ECU4は、ウェイク発信の後の受信準備動作でアック信号20を受信すると、電子キー2がスマート通信の車外通信エリア内に進入したと判断する。このとき、照合ECU4は、アック返信を受け付けた周期でポーリングを終了し、以降は電子キー2からの電波返信タイミングに合わせて受信準備動作を実行する。
【0029】
照合ECU4は、アック信号20の受信によって車両周囲に電子キー2が存在することを認識すると、車両固有のIDとしてビークルID21を、車外発信機7からLF電波で発信させる。通信制御部12は、ビークルID21を受信すると、ビークルID21の正否を見るビークルID照合を行い、通信相手の車両1が正規のものか否かを確認する。このように、ビークルID照合を実施するのは、電子キー2の周囲に車両が複数存在して通信が混在する状況になっても、この中の正規車両のみとスマート通信を行うためである。通信制御部12は、ビークルID照合が成立したことを確認すると、アック信号22をRF電波によってキー発信アンテナ16から発信させる。
【0030】
照合ECU4は、ビークルID21を発信した後の所定時間内にアック信号22を受信すると、ビークルID照合が成立したことを認識する。照合ECU4は、ビークルID照合が成立したことを認識すると、チャレンジ23をLF電波により発信させる。チャレンジ23には、発信の度に毎回値が変わるチャレンジコード(乱数コード)と、電子キー2のキー番号とが含まれている。なお、キー番号は、何番目のマスターキーであるのか、又は何番目のサブキーであるのかを通知するものである。このように、キー番号の照合を実施するのは、もし仮に通信エリア内にマスターキー及びサブキーの両方が存在していても、これらが同時に通信を開始しないようにするためである。
【0031】
通信制御部12は、チャレンジ23を受信すると、まずはこのチャレンジ23の中のキー番号の正否を見る番号照合を実行し、自身がこのときのスマート通信の通信対象であるか否かを判断する。そして、この番号照合が成立すると、通信制御部12は、同じチャレンジ23内に含まれるチャレンジコードを、自身の暗号鍵によって演算することにより、レスポンスコードを生成する。通信制御部12は、レスポンスの生成作業が終了すると、自身に登録されたIDコードとこのレスポンスコードとを、レスポンス24としてキー発信アンテナ16からRF電波によって発信させる。通信制御部12は、レスポンス24の発信が終了すると、スマート通信の動作を終了する。
【0032】
照合ECU4は、チャレンジ23を電子キー2に発信する際、自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを演算して、自らもレスポンスコードを作成する。そして、照合ECU4は、電子キー2からレスポンス24を受信すると、電子キー2のレスポンスコードと、自身が演算したレスポンスコードとを照らし合わせて、レスポンス照合を実行する。照合ECU4は、このレスポンス照合が成立することを確認すると、同じレスポンス24内に含まれるIDコードと、自身のメモリ25に登録されたIDコードと、を比較してIDコード照合を行う。そして、照合ECU4は、レスポンス照合及びIDコード照合の両方が成立することを確認すると、いわゆるスマート照合(車外照合)が成立したと認識し、メインボディECU5によるドアロック施解錠動作を許可又は実行する。
【0033】
また、図1に示すように、キー操作フリーシステムには、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン26の始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。この場合、車内には、同システムの操作スイッチとしてプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ27が設けられている。エンジンスイッチ27は、照合ECU4及びメインボディECU5に接続されている。エンジンスイッチ27の操作機能には、エンジン始動停止機能の他に、電源遷移機能も割り当てられている。
【0034】
メインボディECU5には、エンジン26の点火制御や燃料噴射制御を管理するエンジンECU28が、車内の一ネットワークであるCAN(Controller Area Network)29を介して接続されている。メインボディECU5には、車載アクセサリに繋がるACC(Accessory)リレー30と、走行系の各種電装品に繋がるIG(Ignition)リレー31と、エンジンスタータ(図示略)に繋がるスタータリレー32とが接続されている。
【0035】
照合ECU4は、例えばカーテシスイッチ(図示略)により運転者の車内への乗車を確認すると、今度は車内発信機8からウェイク信号19の発信を開始して、車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU4は、電子キー2が車内通信エリアに入り込むと、この電子キー2との間でスマート通信(車内通信)を開始し、車外照合のときと同様の手順でID照合、いわゆるスマート照合(車内照合)を行う。そして、照合ECU4は、この車内照合が成立することを確認すると、エンジンスイッチ27のプッシュ操作による電源状態切換を許可する。
【0036】
電子キーシステム3には、電子キー2のボタン操作による遠隔操作によってドアロックを施解錠可能なワイヤレスキーシステムが含まれている。この場合、電子キー2には、例えば押しボタン式の施錠ボタン33及び解錠ボタン34が設けられている。例えば、施錠ボタン33が操作されると、電子キー2のIDコードと、車両1にドアロック施錠の動作開始を要求する機能コード(施錠要求コード)とを含んだワイヤレス信号Swlが、キー発信アンテナ16からRF電波により発信される。そして、このワイヤレス信号Swlを車両1が受信して無線通信(ワイヤレス通信)が確立し、ワイヤレス信号SwlのIDコードのID照合(ワイヤレス照合)が成立すると、続く施錠要求コードによってドアロックが施錠する。なお、ワイヤレス信号Swlが遠隔指示信号に相当する。
【0037】
ワイヤレス信号Swlは、図4に示すように、データ括りの単位であるフレーム35が複数(本例は3つ)並んだデータ配列をとっている。これらフレーム35,35…は、全て同じデータ内容(データ列)をとり、これら複数フレーム35,35…のうちの1つでも読み取ることができれば、ワイヤレス信号Swlの受信が成立する。このように、ワイヤレス信号Swlの発信に際して複数のフレーム35,35…を発信するのは、車両チューナ9で周期的に実行されるポーリングでフレーム35を途中から受信しても、その次のフレーム35を先頭から読み込ませることで、フレーム35を先頭から読み取り可能とするためである。
【0038】
各フレーム35,35…は、フレーム35の始まりを通知するフレームスタートビットと、電子キー2のIDコードと、施錠ボタン33や解錠ボタン34を操作する度にコードが変わるローリングコードと、操作ボタンが何であるのかを通知する機能コードとからなる。よって、フレーム35の先頭がフレームスタートビットによって認識され、続くIDコード及びローリングコードでワイヤレス信号Swlの照合が実行され、ワイヤレス信号Swlによる動作指示が機能コードによって指定される。ローリングコードは、IDコードとともにメモリ14に保持され、使用される度に値が1つずつカウントアップされる。
【0039】
図3に示すように、車両1には、車両1から電子キー2の電源となり得る電波(以降、電力電波Svvと記す)を電子キー2に発信して、この電力電波Svvによって電子キー2を動作させる無線電力伝送システム36が設けられている。本例の無線電力伝送システム36は、スマート通信時の電子キー2の電力を電力電波Svvによってまかなうシステムとなっている。即ち、電子キー2は、スマート通信の際、電力電波Svvを電源として動作する。電力電波Svvは、スマート通信が実行されている期間中、スマート通信に並行して電子キー2に供給される。
【0040】
この場合、車両1には、電力電波Svvの発信源として電力伝送装置37が設けられている。電力伝送装置37は、発信機7,8や車両チューナ9とともに照合ECU4に接続され、動作が照合ECU4によって管理されている。電力伝送装置37は、照合ECU4からの指令に基づき、電力電波SvvをRF電波により電子キー2に向けて発信可能となっている。また、電力電波Svvの発信エリア(電力電波エリア)は、リクエスト信号Srqよりも少し広いエリアに設定されている。
【0041】
また、照合ECU4には、電力伝送装置37の動作を管理する電力伝送管理部38が設けられている。電力伝送管理部38は、図2に示すように、電子キー2がLF電波(例えばウェイク信号19等)を受け取る若干前に電子キー2が電力電波Svvを受信できるように、LF電波よりも少し早いタイミングで電力電波Svvを発信させる。また、電力電波Svvの停止は、ウェイク信号19の発信停止の直後に行うのではなく、電子キー2が通信エリア内にいた場合にアック返信を行うであろう時間まで継続される。
【0042】
また、図3に示すように、電子キー2には、電子キー2において電力電波Svvを受信する受電通信部39が設けられている。受電通信部39は、電力電波Svvの受電アンテナ40と、電力電波Svvを整流及び電圧変換する受電回路41とからなる。受電回路41は、電子キー2内の電力線42を介して通信制御部12及びキー発信回路18に接続されている。受電回路41は、受電アンテナ40で受信した電力電波Svvを整流するとともに、通信制御回路11やキー発信回路18が必要とするレベルの電圧値に変換し、この電圧を無線電力Jmとしてこれらに出力する。また、通信制御回路11とキー発信回路18とは、各種データの通信経路である信号線43を介して接続されている。
【0043】
また、電子キー2には、同キー2の固有の電源として充電用コンデンサ44が設けられている。充電用コンデンサ44の電力は、電子キー2がワイヤレス通信を行うときのキー電源として使用される。充電用コンデンサ44は、電力線42に対して並列に結線されるとともに、受電回路41から出力される無線電力Jmを蓄電可能となっている。充電用コンデンサ44は、例えばワイヤレス通信を数回(例えば、3回〜4回)に亘り実行可能な量だけ充電可能となっている。なお、充電用コンデンサ44が受電部に相当する。
【0044】
図2に示すように、電子キー2が電力電波Svvの電力通信エリアに入り込むと、電子キー2は受電アンテナ40で電力電波Svvを受信する。そして、電力電波Svvは受電回路41で整流され、これが無線電力Jmとして電子キー2の電気回路に流される。このとき、まずは充電用コンデンサ44に電力が蓄電され、充電用コンデンサ44の蓄電が完了した後、無線電力Jmが通信制御回路11(通信制御部12、AFE17)及びキー発信回路18に供給される。そして、ウェイク信号19により起動状態に切り換わった通信制御部12がアック信号20を車両1に返信してスマート通信が確立すると、電力電波Svvの発信が継続される。一方、ウェイク信号19に合わせて電力電波Svvを発信したにも拘わらず、車両1にアック信号20が返信されない場合には、スマート通信が成立していないとして処理され、電力電波Svvの発信が次回のウェイク発信まで停止される。
【0045】
図3に示すように、電子キー2には、充電用コンデンサ44の充電電圧Vcを監視するとともに、充電電圧Vcが閾値を下回る場合に、以降のワイヤレス通信を、通常形式から省略形式に変えて実行するワイヤレス通信形式切換装置45が設けられている。なお、ワイヤレス通信の通常形式とは、ワイヤレス信号Swlを規定フレーム数(例えば3フレーム)で発信する形式である。また、ワイヤレス通信の省略形式とは、ワイヤレス信号Swlを規定フレーム数よりも少ないフレーム数で発信する形式である。なお、充電電圧Vcが充電部の電力に相当する。
【0046】
この場合、通信制御部12には、充電用コンデンサ44の充電電圧Vc、即ち充電電圧残量Vkをモニタする電圧モニタ部46が設けられている。ところで、充電電圧残量Vkは、図5に示すように、ワイヤレス通信を実行する度に消費されて徐々に値が減少し、通信可能電圧下限Vrを下回ると電子キー2が電池切れに陥る。電圧モニタ部46は、この充電電圧残量Vkの減少を監視し、例えば電子キー2においてワイヤレス通信が行われた際、ワイヤレス通信が完了した後に充電用コンデンサ44の電圧値を確認することで充電電圧残量Vkを把握する。即ち、電圧モニタ部46は、ワイヤレス通信の終了の都度、充電電圧残量Vkの残量確認を行っている。なお、電圧モニタ部46が充電電力確認手段を構成し、充電電圧残量Vkが電圧残量に相当する。
【0047】
図3に示すように、通信制御部12には、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkを電源としたワイヤレス通信の通信可能時間を算出するワイヤレス通信可能時間算出部47と、この通信可能時間におけるワイヤレス通信の最大通信可能フレーム数を算出するフレーム数算出部48とが設けられている。通信可能時間は、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkで、ワイヤレス通信をどれたけの時間において実行できるのかを表す数値である。また、最大通信可能フレーム数は、ワイヤレス通信の際に通信可能時間でフレーム35を最大で何個送ることができるのかを表す数値である。なお、ワイヤレス通信可能時間算出部47及びフレーム数算出部48が充電電力確認手段を構成する。
【0048】
通信制御部12には、算出した最大通信可能フレーム数からワイヤレス通信の通信形式を設定するワイヤレス通信形式設定部49が設けられている。ワイヤレス通信形式設定部49は、算出した最大通信可能フレーム数が、1回のワイヤレス通信の際に渡される規定フレーム数(本例は3フレーム)よりも多い場合、ワイヤレス通信の通信形式を通常形式に設定する。なお、ワイヤレス通信形式設定部49が通信制御手段に相当する。
【0049】
一方、ワイヤレス通信形式設定部49は、算出した最大通信可能フレーム数が、1回のワイヤレス通信の際に渡される規定フレーム数よりも少ない場合、ワイヤレス通信の通信形式を省略形式に設定する。本例の場合、図6に示すように、規定フレーム数よりも少ないフレーム数(例えば1つのみ)でワイヤレス信号Swlが発信されるとともに、通信可能時間の中の残り時間がプリアンブル50に当てられる。即ち、本例のワイヤレス信号Swlは、プリアンブル50→1フレーム35の順で発信される。なお、プリアンブル50は、車両チューナ9の動作状態を安定させるためのもので、1フレームのみからなる省略形式ワイヤレス信号Swlをポーリングにヒットさせるべく働く。
【0050】
次に、本例のワイヤレスキーシステムの動作を図6及び図7を使用して説明する。
電子キー2において施錠ボタン33や解錠ボタン34が押されるなどのワイヤレス操作が実行されると、電子キー2は充電用コンデンサ44を電源として、ワイヤレス信号SwlをRF電波によって車両1に発信する。そして、ワイヤレス信号Swlに含まれるIDコードが車両1のものと一致してワイヤレス照合が成立すると、そのワイヤレス信号Swlに含まれる機能コード、即ち電子キー2で実行した操作ボタンに応じた車載機器が動作する。
【0051】
ワイヤレス信号Swlの発信後、電圧モニタ部46は、ワイヤレス信号発信後に充電用コンデンサ44に残っている充電電圧、即ち充電電圧残量Vkを確認する。そして、ワイヤレス通信可能時間算出部47は、電圧モニタ部46が算出した充電電圧残量Vkからワイヤレス通信の通信可能時間を算出する。このとき、充電電圧残量Vkが多ければ、時間の長い通信可能時間が得られ、充電電圧残量Vkが少なければ、時間の短い通信可能時間が得られる。続いて、フレーム数算出部48は、この通信可能時間から最大通信可能フレーム数を算出する。そして、ワイヤレス通信形式設定部49は、この最大通信可能フレーム数と規定フレーム数とを比較し、ワイヤレス通信の通信形式を設定する。
【0052】
このとき、ワイヤレス通信形式設定部49は、最大通信可能フレーム数が規定フレーム数よりも多ければ、次回のワイヤレス通信の通信形式を通常形式に設定する。よって、次に電子キー2でワイヤレス操作が行われた際には、通常通り、規定フレーム数でワイヤレス信号Swlが発信される。
【0053】
ここで、図7に示すように、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが極めて低く、充電用コンデンサ44がワイヤレス通信の途中で電池切れになる場合も想定される。図7に示す例では、通信形式で発信されたワイヤレス信号Swlが、その1番目のフレーム35aの途中でポーリングにヒットし、2番目のフレーム35bから読み込みを開始するものの、その2番目のフレーム35bの読み込み途中で充電用コンデンサ44の電圧が通信可能電圧下限Vrを下回る、即ち電子キー2が電池切れに陥る例を挙げている。こうなると、車両チューナ9はフレーム35を1フレーム分全て取得することができず、結局のところワイヤレス通信が成立しない状況に陥る。
【0054】
そこで、最大通信可能フレーム数が規定フレーム数を下回る場合、即ち通信形式のワイヤレス通信ではその通信の途中で電子キー2が電池切れになってしまう場合には、図6に示すように、ワイヤレス通信の通信形式を省略形式に切り換え、ワイヤレス信号Swlをプリアンブル50と1つのフレーム35とで構築して発信する。このとき、車両チューナ9は、ポーリングのときにプリアンブル50を受信し、このプリアンブル50によって受信動作を継続する。そして、プリアンブル50の次にフレーム35の読み取りを開始し、このフレーム35の全データを受信した時点でワイヤレス通信が成立する状態となる。
【0055】
さて、本例においては、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが低いと判定された際には、次回のワイヤレス通信を通常形式ではなく、ワイヤレス信号Swl内に載せるフレームを少なくした省略形式で発信する。このため、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが低い状態となっても、ワイヤレス通信を成立させることが可能となる。よって、電子キー2が電池切れ寸前になる場合であっても、ワイヤレス通信を成立させることが可能となるので、ワイヤレス通信の通信確率性を向上することが可能となる。
【0056】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkから通常形式時のワイヤレス通信の通信可能時間を算出し、この通信可能時間から最大通信可能フレーム数を算出する。そして、最大通信可能フレームが規定フレーム数に満たない場合には、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが残り僅かであるとして、ワイヤレス信号Swlを省略形式で発信する。このため、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが残り少なくなっても、この際は通信に際して大きな電力を必要としない省略形式でワイヤレス信号Swlが発信されるので、残り僅かの電力でワイヤレス信号Swlを最後まで車両1に送り届けることが可能となる。よって、ワイヤレス通信の通信途中で充電用コンデンサ44の電圧が切れて通信が途中で終わってしまう状況が生じ難くなるので、ワイヤレス通信の通信成立性を高いものとすることができる。
【0057】
(2)車両チューナ9の受信動作をポーリング式としたので、車両チューナ9はポーリング周期という定期的なタイミングでのみ起動すればよい。このため、車両チューナ9は電波受信のために常時起動せずに済むので、車両1の電源(車載バッテリ)の省エネルギー化を図ることができる。
【0058】
(3)通常形式のワイヤレス通信の際、ワイヤレス信号Swlは複数フレーム(多フレーム)で発信されるので、車両チューナ9がポーリングという受信動作をとる場合であっても、ポーリングにワイヤレス信号Swlをその先頭からより確実にヒットさせることができる。このため、車両チューナ9が受信動作としてポーリングをとる場合であっても、ワイヤレス通信をより確実に成立させることができる。
【0059】
(4)ワイヤレス通信の省略形式は、通常形式時のフレーム数から単に数を減らす形式とされている。このため、ワイヤレス通信の通常形式から省略形式への変更処理を、通常形式に対して単にフレームを減らすだけという簡素な処理で済ますことができる。
【0060】
(5)ワイヤレス信号Swlを省略形式で発信する場合、フレーム35を1つとし、残りの通信時間をプリアンブル50に割り当ててワイヤレス信号Swlを発信する。このため、省略形式のワイヤレス信号Swlをプリアンブル50によってポーリングにヒットさせることが可能となるので、より確実にワイヤレス信号Swlを車両チューナ9に受信させることができる。
【0061】
(6)充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkから通信可能時間を算出し、この通信可能時間からワイヤレス通信時の最大通信可能フレーム数を算出し、最大通信可能フレーム数で以て充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが通常形式時のワイヤレス通信の電源として足りるか否かを判断する。よって、通信可能時間から求めた最大通信可能フレーム数を見るという簡素な形式によって、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが充分か否かを確認することができる。
【0062】
(7)電子キー2の電力充電先を充電用コンデンサ44としたので、コンデンサという安価な部品を電子キー2の電源とすることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図8及び図9に従って説明する。なお、本例は、第1実施形態に対して、充電電圧残量Vkの算出方式が異なっており、他の基本的な構成は同じである。よって、本例は、第1実施形態と同様部分には同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0063】
図8に示すように、通信制御部12には、充電用コンデンサ44の充電電圧を電源としたワイヤレス通信の通信可能回数を算出する通信可能回数算出部51が設けられている。通信可能回数算出部51は、充電用コンデンサ44への充電作業が終了した際に充電用コンデンサ44の充電電圧をモニタして通信可能回数を算出し、充電終了後の状態からワイヤレス通信を通常形式で何回実行できるのかを算出する。即ち、通信可能回数算出部51は、充電用コンデンサ44に充電が行われたことをトリガとして、充電の都度、通信可能回数の算出を実行する。なお、通信可能回数算出部51が充電電力確認手段を構成する。
【0064】
ワイヤレス通信形式設定部49は、通信可能回数算出部51から通信可能回数を取得し、この回数を保持する。そして、ワイヤレス通信形式設定部49は、ワイヤレス通信を実行する度に、通信可能回数を1つずつデクリメントしていき、次回のワイヤレス通信が通常形式で実行できるか否かを逐次把握する。そして、ワイヤレス通信形式設定部49は、通信可能回数が「0」になると、以降のワイヤレス通信を省略形式で実行させる。なお、このときの省略形式も、第1実施形態と同様にプリアンブル50と1つのフレーム35とから構築され、プリアンブル50の発信時間は予め決められた所定値に設定される。
【0065】
さて、電子キー2からワイヤレス信号Swlが発信されると、その信号発信の度に充電用コンデンサ44の電力が消費される。このとき、ワイヤレス通信形式設定部49は、充電終了時に保持した通信可能時間を通信実行の度に1つずつデクリメントしてワイヤレス通信の実行回数をカウントし、通信可能回数が「0」となると、通信形式を省略形式に変更する。即ち、送信可能回数(例えば2回)までは、通常形式でワイヤレス通信が実行され、それ以降(例えば3回目)は、充電用コンデンサ44の電力不足が懸念されることから、図9に示すようにワイヤレス通信が省略形式で実行される。
【0066】
従って、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが少ない際には、ワイヤレス信号Swlを1つのフレーム35のみで発信するので、限られた電力しか残っていない充電用コンデンサ44の電力で以てワイヤレス信号Swlを車両1に最後まで発信することが可能となる。よって、ワイヤレス通信の通信途中で電子キー2が電池切れに陥る状況が生じ難くなるので、通信成立性を向上することが可能となる。
【0067】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(5),(7)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(8)充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkから通信可能回数を算出し、この通信可能回数で以て充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが通常形式のワイヤレス通信の電源として足りるか否かを判断する。このため、通信可能回数を見るという簡素な形式によって、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが充分か否かを確認することができる。
【0068】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、電子キー2の充電部は、コンデンサ(充電用コンデンサ44)に限らず、例えば二次電池等の他の充電デバイスを使用してもよい。
【0069】
・第1及び第2実施形態において、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが通常形式時のワイヤレス通信の電源として足りるか否かの判断は、ワイヤレス通信を完了した後や、或いはワイヤレス通信のボタン操作が行われた通信開始直前のどちらでも可である。
【0070】
・第1及び第2実施形態において、省略形式の際のフレーム数は、1つに限らず、要は通常形式のフレーム数よりも数が少なければよい。
・第1及び第2実施形態において、ワイヤレス信号Swlの省略形式は、通常形式に対して単にフレーム数を減らすことに限らず、例えば情報内容自体を簡略化して送る形式を採用してもよい。
【0071】
・第1及び第2実施形態において、電子キー2の電力電波Svvの受け付けは、スマート通信に同期して車両1から取得することに限らず、照合に関係のない時間帯に取得するものでもよい。
【0072】
・第1及び第2実施形態において、電子キー2は、電力電波Svvを車両1から取得することに限らず、他の機器や装置、或いは通信環境下に浮遊しているノイズを電力電波Svvとして得てもよい。
【0073】
・第1及び第2実施形態において、ワイヤレスキーシステムは、車両1のドアロック施解錠を遠隔操作により行うワイヤレスドアロックシステムに限定されず、例えば車両1のスライドドアをボタン操作によって開閉するパワースライドドアシステムとしてもよい。
【0074】
・第1及び第2実施形態において、充電用コンデンサ44の充電電圧残量Vkが通常形式時のワイヤレス通信の電源として足りるか否かの判断方式は、第1実施形態や第2実施形態に述べた手順のものに限定されない。例えば、単に充電電圧残量Vkと閾値とを比較する判断方式を採用してもよい。
【0075】
・第1及び第2実施形態において、車両チューナ9は、受信動作をポーリングで行うことに限定されず、例えば常時起動をとるものでもよい。
・第1及び第2実施形態において、車両1には、キー操作フリーシステム及びワイヤレスキーシステムの両方が搭載されることに限らず、要は少なくともワイヤレスキーシステムが搭載されていればよい。
【0076】
・第1及び第2実施形態において、本例の技術思想の採用対象は、車両1に限定されず、2者間で無線通信が可能な他の機器や装置に応用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0077】
(イ)請求項1〜7のいずれかにおいて、前記充電部の電力確認は、前記遠隔通信の実行後又は実行前に、都度実行される。この構成によれば、充電部の充電残量を定期的に確認することが可能となるので、充電残量をより正確に把握することが可能となる。
【0078】
(ロ)請求項1〜7のいずれかにおいて、前記充電部の電力確認は、当該充電部への充電が行われた際に実行される。この構成によれば、充電残量の算出は充電部に充電がなされた後の最初の一回のみとなるので、充電残量計算数を少なく済ますことが可能となる。
【0079】
(ハ)請求項1〜7、前記技術的思想(イ),(ロ)のいずれかにおいて、前記通信端末とその通信相手との間には、電波を互いにやり取りする相互通信により通信を実行する相互通信システムが設けられ、前記通信相手は、前記相互通信システムの相互通信時に、前記電力電波を前記通信端末に発信して、前記通信端末の前記充電部に電力を充電する。この構成によれば、相互通信システムの通信インフラを使用して充電が行われるので、相互通信システムで2者間の通信が実行される都度、充電部に充電が行われる。このため、充電部にこまめに充電を行うことが可能となるので、通信端末に充電切れを発生し難くすることが可能となる。
【0080】
(ニ)電力電波を通信端末が受信した際には、当該通信端末の充電部が当該電波によって充電され、当該通信端末において遠隔操作が行われた際には、当該操作に応じた遠隔指示信号が前記充電部を電源として発信されて、2者間の遠隔通信が実行される電源充電式通信端末の電源切換方法であって、前記遠隔指示信号を通信形式で発信するのに前記充電部の電力が充分か否かを確認し、前記遠隔通信を前記通常形式で行うには前記充電部の電力が不足する場合、前記通信端末に前記遠隔通信を省略形式で実行させることを特徴とする電源充電式通信端末の電源切換方法。
【符号の説明】
【0081】
2…通信端末としての電子キー、35(35a,35b)…フレーム、44…受電部としての充電用コンデンサ、46…充電電力確認手段を構成する電圧モニタ部、47…充電電力確認手段を構成するワイヤレス通信可能時間算出部、48…充電電力確認手段を構成するフレーム数算出部、49…通信制御手段としてのワイヤレス通信形式設定部、50…プリアンブル、51…充電電力確認手段を構成する通信可能回数算出部、Svv…電力電波、Swl…遠隔指示信号としてのワイヤレス信号、Vc…充電部の電力としての充電電圧、Vk…電圧残量としての充電電圧残量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力電波を通信端末が受信した際には、当該通信端末の充電部が当該電波によって充電され、当該通信端末において遠隔操作が行われた際には、当該操作に応じた遠隔指示信号が前記充電部を電源として発信されて、通信対象との間の遠隔通信が実行される遠隔操作システムであって、
前記通信端末に設けられ、前記遠隔指示信号を通信形式で発信するのに前記充電部の電力が充分か否かを確認する充電電力確認手段と、
前記通信端末に設けられ、前記充電電力確認手段が充電不足を確認した場合、前記遠隔通信を省略形式で実行させる通信制御手段と
を備えたことを特徴とする遠隔操作システム。
【請求項2】
前記通信対象は、電波受信動作としてポーリングを行い、当該ポーリングのタイミングで前記遠隔指示信号を受信可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作システム。
【請求項3】
前記遠隔指示信号は、データ内容が同じフレームを複数個並べて発信される形式をとり、前記通信対象は、前記ポーリングにおいて複数の当該フレームの何れかを、その先頭から取り込むことによって前記遠隔指示信号を受信することを特徴とする請求項2に記載の遠隔操作システム。
【請求項4】
前記省略形式は、前記通常形式に比べてフレーム数を減らして発信される形式であることを特徴とする請求項2又は3に記載の遠隔操作システム。
【請求項5】
前記省略形式は、前記遠隔指示信号を前記ポーリングにヒットさせるプリアンブルと、前記通常形式に比べて数が減らされたフレームとにより構築する形式であることを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか一項に記載の遠隔操作システム。
【請求項6】
前記充電電力確認手段は、前記充電部の電圧残量を基に前記通常形式時の前記遠隔通信の通信可能時間を算出するとともに、当該通信可能時間から最大通信可能フレーム数を算出し、
前記通信制御手段は、前記最大通信可能フレーム数が通信形式の規定フレーム数より大きい値をとれば、前記遠隔通信を前記通常形式で実行させ、前記最大通信可能フレーム数が前記規定フレーム数よりも小さい値をとれば、前記遠隔通信を前記省略形式で実行させることを特徴とする請求項2〜5のうちいずれか一項に記載の遠隔操作システム。
【請求項7】
前記充電電力確認手段は、前記充電部の電圧残量を基に前記通常形式時の前記遠隔通信の通信可能回数を算出し、
前記通信制御手段は、前記通信可能回数に残りがあれば、前記遠隔通信を前記通信形式で実行させ、前記通信可能回数の残りがなくなれば、前記遠隔通信を前記省略形式で実行させることを特徴とする請求項2〜5のうちいずれか一項に記載の遠隔操作システム。
【請求項8】
電力電波を受信した際には、当該電力電波によって自身の充電部が充電され、遠隔操作が行われた際には、当該操作に応じた遠隔指示信号が前記充電部を電源として発信されて、通信対象と遠隔通信が実行される電源充電式通信端末であって、
前記遠隔指示信号を通常形式で発信するのに前記充電部の電力が充分か否かを確認する充電電力確認手段と、
前記充電電力確認手段が充電不足を確認した場合、前記遠隔通信を省略形式で実行させる通信制御手段と
を備えたことを特徴とする電源充電式通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−59931(P2011−59931A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208185(P2009−208185)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】