説明

配線モジュール及び半導体集積回路装置

【課題】ハードマクロと周辺部に配置された周辺バッファ回路との間で相対的な配置が変更された場合に、再度タイミング検証をやり直す必要のない配線モジュールを提供すること。
【解決手段】線対称の配線モジュール10であって、第1の端子11a、第2の端子11b及び第3の端子11cと、第1の端子11a及び第2の端子11bを接続する第1の配線12aと、第1の配線12aの中点及び第3の端子11cを接続する第2の配線12bと、を備え、第1の端子11a及び第2の端子11bを対称軸について互いに対称に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線モジュール及び半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
USB(Universal Serial Bus、ユニバーサル・シリアル・バス)の規格においては、図10を参照すると、D+データ用のデータ送受信信号線Z7及びD−データ用のデータ送受信信号線Z8によってシリアルデータ転送が行われる。図10におけるD+、D−は、それぞれD+データ、D−データに対するデータ送受信信号端子である。USB搭載製品を開発する場合には、USBケーブル側コネクタZ3に接続されるUSBコネクタZ4と、半導体チップのトランシーバIOセルZ5との間を結ぶ、データ送受信信号線Z7、Z8はノイズが影響しないようにプリント基板Z1上において互いに交差する事が禁じられている。
【0003】
特許文献1において、半導体集積回路装置のレイアウト方式が開示されている。半導体集積回路装置は、図9を参照すると、半導体チップ1の周辺部に配置された入出力用パッド2と周辺バッファ回路4が形成される部分との間に、入出力用パッド2と周辺バッファ回路4を接続するための配線領域5内に配線可能なトラックT1〜T4を備える。
【0004】
配線領域5を用いて配線を変更することによって、半導体チップ1の周辺部に配置された入出力用パッド2との対応関係を考慮することなく、周辺バッファ回路4を配置することができるため、コンピュータによる周辺バッファ回路4の自動配置配線が可能になる。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−113943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は、本発明者によってなされたものである。図10を参照すると、プリント基板Z1上のUSBコネクタZ4の配置により半導体チップのトランシーバIOセルZ5の配置が決定される。また、トランシーバIOセルZ5の配置に合わせて半導体チップのホストコントローラマクロZ6の配置も決定される。したがって、半導体チップZ2の設計後、プリント基板Z1のUSBコネクタZ4の位置に変更が生じ、データ送受信信号端子D+とD−との間で端子位置が入れ替わった場合には、半導体チップZ2のトランシーバIOセルZ5及びホストコントローラマクロZ6を再設計するとともに、配置配線、配置配線後のタイミング検証、及び、タイミングの合せ込みを再度実施する必要がある。
【0007】
一方、特許文献1に開示されたレイアウト方式においては、図9を参照すると、半導体チップ1の配置配線後において入出力用パッド2を入れ替える変更が発生した場合、入出力用パッド2と周辺バッファ回路4との接続は配線領域5の配線を変更することによって実現することができる。しかし、配線領域5の配線を入れ替えることによって、入出力用パッド2と周辺バッファ回路4との間を接続する配線が変更される。したがって、配線変更による遅延時間、入れ替えた配線に隣接する他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量の再計算が必要になる。また、配置配線後のタイミング検証結果によってはタイミング合せ込み調整が必要となる。なお、従来技術は、半導体集積回路装置の入出力用パッド2と周辺バッファ回路4との間の配線に関するものであるが、半導体チップに搭載するハードマクロと周辺バッファ回路との間の配線においても事情は同じである。
【0008】
そこで、ハードマクロと周辺部に配置された周辺バッファ回路との間で相対的な配置が変更された場合に、再度タイミング検証をやり直す必要のない配線モジュール及び半導体集積回路装置を提供することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る配線モジュールは、
線対称の配線モジュールであって、
第1、第2及び第3の端子と、
前記第1及び第2の端子を接続する第1の配線と、
前記第1の配線の中点及び前記第3の端子を接続する第2の配線と、を備え、
前記第1及び前記第2の端子を対称軸について互いに対称に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、ハードマクロと周辺部に配置された周辺バッファ回路との間で相対的な配置が変更された場合であっても、再度タイミング検証をやり直す必要のない配線モジュール及び半導体集積回路装置が提供される。
【0011】
その理由は次のとおりである。すなわち、第2の配線は、第1の端子と第2の端子とを接続する第1の配線の中点と第3の端子とを接続するため、第1の端子から第3の端子までの配線長と、第2の端子から第3の端子までの配線長とは同一である。したがって、第1の端子を第2の端子によって代替した場合に、両端子から第3の端子までの配線長は一定に保たれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る配線モジュールについて、図面を参照して説明する。
【0013】
本発明の第1の視点に係る配線モジュールは、図11を参照すると、線対称の配線モジュール10であって、第1、第2及び第3の端子(11a〜11c)と、第1の端子11a及び第2の端子11bを接続する第1の配線12aと、第1の配線12aの中点及び第3の端子11cを接続する第2の配線12bと、を備え、第1の端子11a及び第2の端子11bを対称軸について互いに対称に設けたことを特徴とする。
【0014】
第1の展開形態の配線モジュール10は、矩形であってもよい。
【0015】
第2の展開形態の配線モジュール10は、第1及び第2の端子(11a、11b)を矩形の配線モジュール10の一の辺に設けてもよい。
【0016】
第3の展開形態の配線モジュール10は、第3の端子11cを上記一の辺の対辺に設けてもよい。
【0017】
第4の展開形態の配線モジュール10は、凸形状の配線モジュールであってもよい。
【0018】
第5の展開形態の配線モジュール10は、第1の端子11aを凸形状の配線モジュールの突起部分の辺であって対称軸に平行な2つの辺の一方に設け、第2の端子11bを他方に設けてもよい。
【0019】
第6の展開形態の配線モジュール10は、第3の端子11cを突起部分に対向する辺に設けてもよい。
【0020】
第7の展開形態の配線モジュールは、第1の配線12aが対称軸について線対称であってもよい。
【0021】
第8の展開形態の配線モジュールは、第1、第2及び第3の端子(11a〜11c)並びに第1及び第2の配線(12a、12b)から成る組を複数組有するものであってもよい。
【0022】
第9の展開形態の半導体集積回路装置は、上記の配線モジュールを備えることが好ましい。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る接続用アダプタマクロ(配線モジュール)について説明する。
【0024】
半導体チップに搭載するハードマクロ同士又はハードマクロと周辺バッファ回路とを接続する際に、配線長及び配線経路が同一であって、隣接する他の信号配線へのクロストーク、バルク容量、他の信号からのクロストーク、バルク容量も同一である接続用アダプタマクロ(配線モジュール)を挟む。これによって、レイアウト設計後に端子配置の変更が生じた場合には、ハードマクロ又は接続用アダプタマクロのいずれか一方のみをミラー回転(鏡映)して配置配線する。このとき、配置配線後のタイミング検証及びタイミング合せ込みを実施することなく、レイアウト設計を行うことができる。
【0025】
本実施形態に係るアダプタマクロは、矩形の一辺に機能端子として第1の機能端子と第2の機能端子とを有し、それらの機能端子はマクロの中心点に対してY軸(中心点を通り、上記一辺に垂直に選ぶ。)対称な位置にそれぞれ配置し、前記機能端子同士を接続する配線の中間点(中点)に第1の分岐点を設け、第1の分岐点と接続する第2の分岐点を従属接続し、前記一辺と対となる辺(対辺)に第3の機能端子を配置し、従属接続された第2の分岐点と第3の機能端子を接続した構成であることが好ましい。
【0026】
また、接続用アダプタマクロは、第1の機能端子と第1の分岐点までの配線と第2の機能端子と第1の分岐点までの配線を左右対象、同一の配線長、かつ、同一の配線経路とし、隣接する他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量並びに他の信号からのクロストーク及びバルク容量も同一となるように配置配線をすることが好ましい。
【0027】
さらに、接続用アダプタマクロは、上記の機能端子を複数組有するものであってもよい。
【0028】
また、接続用アダプタマクロは、複数個の端子群を凸形状の凸上部の両辺に配置した構成であってもよい。
【0029】
接続用アダプタマクロは、2つの機能端子を接続する配線の中間点(中点)をY座標上に分岐点として設け、前記機能端子が出力端子である場合にはバッファを、前記機能端子が入力端子である場合には論理和回路ORを、前記機能端子と分岐点とを接続する配線上であって前記分岐点の近傍に配置した構成の接続用アダプタマクロを有することが好ましい。
【0030】
また、上記接続用アダプタマクロにおいて、バッファを論理積回路ANDに、論理和回路ORを論理積和回路ANDORに変更し、論理積回路ANDと論理積和回路ANDORの一方の入力を制御する端子を前記機能端子群と同一の辺に配置した構成であってもよい。
【0031】
また、上記接続用アダプタマクロを有する半導体集積回路装置であってもよい。
【実施例1】
【0032】
本発明の第1の実施例について図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る接続用アダプタマクロ(配線モジュール)の構成図を示す。ハードマクロAと周辺バッファ回路Cとの間に接続用アダプタマクロBを配置する。ハードマクロAの3つの機能端子D1〜D3を周辺バッファ回路Cの3つの機能端子H1〜H3に接続する例を示す。
【0033】
接続用アダプタマクロBは、機能端子E1〜E3、F1〜F3をハードマクロAに面する一の辺上に備え、機能端子E1とF1、E2とF2、E3とF3は、それぞれ接続用アダプタマクロBの中心点からY軸(すなわち、上記一の辺に垂直な対称軸)に対して対称な位置に配置する。
【0034】
機能端子E1とF1を接続する配線の中間点として分岐点J1を設ける。分岐点J1と同一X座標(X軸は上記Y軸と直行する方向に選ぶものとする。)上において機能端子E1及びF1とは反対の方向に分岐点J2、J3を設ける。分岐点J1から分岐点J2へ接続した後、分岐点J2から分岐点J3へは左右対称に2本の配線を形成し、分岐点J3から機能端子G1へ接続する。また、機能端子E2とF2とを接続する配線の中間点として分岐点K1を設ける。分岐点K1と同一X座標上で機能端子E2とF2の位置と反対方向に分岐点K2、K3を設ける。分岐点K1から分岐点K2へ接続した後、分岐点K2から分岐点K3へと左右対称に2本の配線を形成し、分岐点K3から機能端子G2へ接続する。さらに、機能端子E3及びF3を接続する配線の中間点を分岐点L1とし、分岐点L1から機能端子G3へ接続する。
【0035】
機能端子E1と分岐点J1を結ぶ配線と、機能端子F1と分岐点J1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等となるように形成する。また、機能端子E2と分岐点K1を結ぶ配線と、機能端子F2と分岐点K1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等となるように形成する。さらに、機能端子E3と分岐点L1を結ぶ配線と、機能端子F3と分岐点L1を結ぶ配線も、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等となるように形成する。
【0036】
ハードマクロAの機能端子D1〜D3のX座標は、接続用アダプタマクロBの機能端子E1〜E3又は機能端子F1〜F3の座標に合わせて配置される。また、周辺バッファ回路Cの機能端子H1〜H3のX座標は、接続用アダプタマクロBの機能端子G1〜G3の座標に合わせて配置される。
【0037】
図1において、ハードマクロAと接続用アダプタマクロBとは、それぞれの機能端子D1とF1、D2とF2、D3とF3を介して接続される。一方、接続用アダプタマクロBと周辺バッファ回路Cとは、それぞれの機能端子G1とH1、G2とH2、G3とH3を介して接続される。
【0038】
図2は、図1のハードマクロAをミラー回転配置(鏡映)した図である。鏡映されたハードマクロAと接続用アダプタマクロBとは、それぞれの機能端子D1とE1、D2とE2、D3とE3を介して接続される。接続用アダプタマクロBにおいてE1とF1、E2とF2、E3とF3は同一機能の機能端子であるため、図1と図2との間で、ハードマクロAから周辺バッファ回路Cへの配線は同等に保たれる。
【0039】
接続用アダプタマクロBを用いることによって、ハードマクロAのみをマクロの中心点よりY軸を基準に回転(以降ミラー回転配置という)した場合であっても、ハードマクロAをミラー回転配置することなく、接続用アダプタマクロB及び周辺バッファ回路Cをミラー回転配置した場合であっても、ハードマクロAから周辺バッファ回路Cへの接続における配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、他の信号からのクロストーク及びバルク容量による配線のタイミングは不変となる。
【0040】
図1において、接続用アダプタマクロBの機能端子E1とF1、E2とF2、E3とF3は、それぞれ周辺バッファ回路Cとの接続端子G1、G2、G3までの配線長、配線経路、隣接する他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量のいずれも同等となるように配線が形成されているため、全く同じ遅延時間を有する。したがって、チップの設計後においてボードの端子位置がミラー回転の位置に変更になった場合であっても、接続用アダプタマクロB及び周辺バッファ回路Cをミラー回転配置することによって、配置配線や配置配線後のタイミング検証結果に基づくタイミング調整を実施する必要がなくなる。
【実施例2】
【0041】
本発明の第2の実施例について、図面を参照して説明する。図3は、第2の実施例に係るアダプタマクロ(配線モジュール)Bの構成図である。図3を参照すると、ハードマクロAと周辺バッファ回路Cとの間に、接続用アダプタマクロBが配置される。ハードマクロAの3つの機能端子D1〜D3は、周辺バッファ回路Cの機能端子H1〜H3に接続されるものとする。ハードマクロAの機能端子D1、D2が入力端子であり、ハードマクロAの機能端子D3が出力端子である場合を考える。
【0042】
接続用アダプタマクロBは、出力の機能端子E1とF1、E2とF2、入力の機能端子E3とF3をハードマクロAと接する同一辺上に備える。また、E1とF1、E2とF2、E3とF3は、それぞれ接続用アダプタマクロBの中心点からY軸に対して対称な位置に配置される。
【0043】
出力の機能端子E1とF1を接続する配線の中間点として分岐点J1を設け、分岐点J1と出力の機能端子E1間にバッファBUF1を配置し、分岐点J1と出力の機能端子F1間にバッファBUF2を配置し、バッファBUF1とバッファBUF2は分岐点J1近傍にY軸対称な位置に配置する。バッファBUF1、バッファBUF2の入力は分岐点J1に接続し、バッファBUF1の出力は出力の機能端子E1に、バッファBUF2の出力は出力の機能端子F1に接続する。分岐点J1と同一X座標上で機能端子E1とF1の位置と反対方向に分岐点J2、J3として設け、分岐点J1から分岐点J2へ接続後、分岐点J2から分岐点J3へは左右対称に2本の配線を形成し、分岐点J3から機能端子G1へ接続する。
【0044】
出力の機能端子E2とF2を接続する配線の中間点として分岐点K1を設ける。分岐点K1と出力の機能端子E2との間にバッファBUF3を配置し、分岐点K1と出力の機能端子F2との間にバッファBUF4を配置する。バッファBUF3とバッファBUF4は、分岐点K1の近傍、かつ、Y軸対称な位置に配置する。バッファBUF3、バッファBUF4の入力は分岐点K1に接続する。バッファBUF3の出力は出力の機能端子E2に接続し、バッファBUF4の出力は出力の機能端子F2に接続する。分岐点K1から分岐点K2へ接続した後、分岐点K2から分岐点K3へは左右対称に2本の配線を形成し、分岐点K3から機能端子G2へ接続する。
【0045】
入力の機能端子E3、F3からの接続配線長が等しい中間点に論理和回路OR1を配置する。論理和回路OR1の入力に入力の機能端子E3及びF3を接続し、論理和回路OR1の出力を機能端子G3へ接続する。
【0046】
出力の機能端子E1と分岐点J1で結ぶ配線と、出力の機能端子F1と分岐点J1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等となるように形成する。また、出力の機能端子E2と分岐点K1を結ぶ配線と、出力の機能端子F2と分岐点K1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等となるように形成する。さらに、入力の機能端子E3と論理和回路OR1を結ぶ配線と、入力の機能端子F3と論理和回路OR1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等となるように形成する。
【0047】
ハードマクロAは入力の機能端子D1、D2、及び出力の機能端子D3、M1を備える。入力の機能端子D1、D2、及び出力の機能端子D3、M1の座標は接続用アダプタマクロBの出力の機能端子F1、F2、入力の機能端子F3の座標に合わせて配置される。出力の機能端子M1は出力の機能端子D3とハードマクロAの中心点を通るY軸について対称な位置に配置する。
【0048】
図3においてハードマクロAと接続用アダプタマクロBとは、それぞれの機能端子D1とF1、D2とF2、D3とF3を介して接続される。また、接続用アダプタマクロBの未使用入力の機能端子E3は、ハードマクロAのロウレベル出力の機能端子M1に接続される。さらに、接続用アダプタマクロBと周辺バッファ回路Cとは、それぞれの機能端子G1とH1、G2とH2、G3とH3を介して接続される。
【0049】
図4は図3のハードマクロAをミラー回転配置した図である。ミラー回転配置されたハードマクロAと接続用アダプタマクロBとは、それぞれの機能端子D1とE1、D2とE2、D3とE3を介して接続される。接続用アダプタマクロBの未使用入力の機能端子はE3からF3へと変わる。しかし、ハードマクロAをミラー回転配置する前と同じく、ハードマクロAのロウレベル出力の機能端子M1に接続されるとともに、接続用アダプタマクロBにおいて機能端子E1とF1、E2とF2、E3とF3は同等の機能端子である。したがって、図3と図4との間で、ハードマクロAから周辺バッファ回路Cへの配線は同等に保たれる。
【0050】
接続用アダプタマクロBを用いることによって、ハードマクロAのみをミラー回転配置した場合でも、ハードマクロAをミラー回転配置することなく接続用アダプタマクロB及び周辺バッファ回路Cのみをミラー回転配置した場合でも、ハードマクロAから周辺バッファ回路Cへの接続における配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量による配線のタイミングは変わらない。また、接続用アダプタマクロBの分岐点の近傍にバッファを配置したことによって、信号線経路の各分岐点から未使用出力端子までの配線負荷容量を分離し、動作速度を向上させるとともに、未使用入力の機能端子への外来ノイズの影響を低減することができる。
【0051】
すなわち、バッファBUF1〜BUF4、論理和回路OR1を配置することによって、
(1)分岐点からハードマクロAに接続されていない機能端子までの配線負荷容量を分離し、信号線経路の動作速度を向上させることができ、
(2)分岐点からハードマクロAに接続されていない機能端子までの配線によって拾われる外来ノイズの影響を低減することができる。
【実施例3】
【0052】
本発明の第3の実施例について図面を参照して説明する。図5は、本実施例に係る接続用アダプタマクロ(配線モジュール)の構成図である。ハードマクロAと周辺バッファ回路C間に、接続用アダプタマクロBを配置する。ハードマクロAの3つの機能端子D1〜D3を周辺バッファ回路Cの機能端子H1〜H3に接続する。本実施例においては、ハードマクロAの機能端子D1、D2は入力端子とし、機能端子D3は出力端子とする。
【0053】
接続用アダプタマクロBは出力の機能端子E1、E2、F1、F2、入力の機能端子E3、F3、P1をハードマクロAと接する同一の辺上に備える。機能端子E1とF1、E2とF2、E3とF3の位置関係は、それぞれ接続用アダプタマクロBの中心点からY軸に対して対称な位置とする。
【0054】
出力の機能端子E1とF1を接続する配線の中間点として分岐点J1を設ける。分岐点J1と出力の機能端子E1との間に論理積回路AND1を配置し、分岐点J1と出力の機能端子F1との間に論理積回路ANDB1を配置する。論理積回路AND1の出力は出力の機能端子E1に、論理積回路ANDB1の出力は出力の機能端子F1に接続する。
【0055】
論理積回路AND1、ANDB1は分岐点J1の近傍にY軸対称な位置に配置し、それぞれの一方の入力は分岐点J1に接続される。また、分岐点J1と分岐点J2とを接続した後、分岐点J2から分岐点J3へ左右対称に2本の配線を形成し、分岐点J3から機能端子G1へと接続する。
【0056】
出力の機能端子E2とF2を接続する配線の中間点として分岐点K1を設ける。分岐点K1と出力の機能端子E2間に論理積回路AND2を、分岐点K1と出力端子F2間に論理積回路ANDB2をそれぞれ配置する。論理積回路AND2の出力は出力の機能端子E2に、論理積回路ANDB2の出力は出力の機能端子F2に接続される。
【0057】
論理積回路AND2、ANDB2は分岐点K2の近傍にY軸対称な位置に配置し、それぞれの一方の入力は分岐点K1に接続される。分岐点K1と分岐点K2とを接続した後、分岐点K2から分岐点K3へは左右対称に2本の配線を形成し、分岐点K3から機能端子G2へ接続する。
【0058】
入力の機能端子E3、F3からの接続配線長が等しい箇所に論理和回路OR1を配置する。論理和回路OR1の一方の入力端子と入力の機能端子E3との間に論理積回路AND3を、論理和回路OR1の他方の入力端子と入力の機能端子F3との間に論理積回路ANDB3を配置する。論理積回路AND3、ANDB3は、論理和回路OR1の近傍に論理和回路OR1に対してY軸対称な位置に配置する。論理和回路OR1の出力は機能端子G3へ接続し、接続用アダプタマクロBの入力の機能端子P1は論理積回路AND1、ANDB1、AND2、ANDB2、AND3、ANDB3の他方の入力に接続する。接続用アダプタマクロBの入力端子P1はハードマクロAの入力の機能端子D1と同一の辺に配置する。
【0059】
出力の機能端子E1と分岐点J1を結ぶ配線と、出力の機能端子F1と分岐点J1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等になるように形成している。また、出力の機能端子E2と分岐点K1を結ぶ配線と、出力の機能端子F2と分岐点K1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等になるように形成している。さらに、入力の機能端子E3と論理和回路OR1を結ぶ配線と、入力の機能端子F3と論理和回路OR1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等になるように形成している。
【0060】
ハードマクロAは入力の機能端子D1、D2、及び出力の機能端子D3、M1、M2を持ち、端子D1、D2、D3は接続用アダプタマクロBの機能端子F1、F2、F3に合わせ配置する。
【0061】
また、出力の機能端子M1は接続用アダプタマクロBのP1にあわせて配置し、出力の機能端子M1と出力の機能端子M2はハードマクロAの中心点に対してY軸対称に配置する。
【0062】
図5においてハードマクロAと接続用アダプタマクロBはそれぞれの機能端子D1とF1、D2とF2、D3とF3、M1とP1が接続され、接続用アダプタマクロBと周辺バッファ回路Cは、それぞれの機能端子G1とH1、G2とH2、GD3とH3が接続される。
【0063】
ハードマクロAの機能端子M1はロウレベル出力端子であるため、接続用アダプタマクロBの出力の機能端子E1、E2に接続されている論理積回路AND1、AND2の出力はロウレベルに固定される。したがって、接続用アダプタマクロBの機能端子E1、E2はロウレベルに固定され、入力の機能端子E3はハイレベルであるかロウレベルであるかに関わらず、アダプタマクロBの出力の機能端子G3への論理に影響しない端子となる。
【0064】
図6は、図5のハードマクロAをミラー回転配置した図である。ミラー回転配置されたハードマクロAと接続用アダプタマクロBはそれぞれの機能端子D1とE1、D2とE2、D3とE3、M2とP1が接続される。接続用アダプタマクロBにおいて、機能端子E1とF1、E2とF2、E3とF3は同等の機能端子である。したがって、図5と図6との間で、ハードマクロAから周辺バッファ回路Cへの配線は同等に保たれる。
【0065】
接続用アダプタマクロBを用いることによって、ハードマクロAのみをミラー回転配置した場合であっても、ハードマクロAはミラー回転配置することなく接続用アダプタマクロB及び周辺バッファ回路Cのみをミラー回転配置した場合であっても、ハードマクロAから周辺バッファ回路Cへの接続における配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量による配線のタイミングは変わらない。また、接続用アダプタマクロBの各分岐点の近傍に論理積回路を配置することによって、各分岐点から未使用出力端子までの配線負荷容量を分離し、消費電力とノイズを低減することができ、未使用の入力端子から分岐点までの配線が拾う外来ノイズの影響を低減することもできる。
【0066】
すなわち、論理積回路AND1、ANDB1、AND2、ANDB2、AND3、ANDB3と論理和回路OR1を配置することによって、
(1)分岐点からハードマクロAに接続されていない機能端子までの配線負荷容量を駆動しないことにより、消費電力とノイズを低減することができ、
(2)分岐点からハードマクロAに接続されていない機能端子までの配線負荷容量を分離することにより、信号線経路の動作速度を向上させることができ、
(3)分岐点からハードマクロAに接続されていない機能端子までの配線が拾う外来ノイズの影響を低減することができる。
【実施例4】
【0067】
本発明の第4の実施例について図面を参照して説明する。図7は、本実施例に係る接続用アダプタマクロ(配線モジュール)の構成図を示す。図7を参照すると、凹形状のハードマクロAと周辺バッファ回路Cとの間に、凸形状の接続用アダプタマクロBが配置される。
【0068】
凸形状の接続用アダプタマクロBは、機能端子E1〜E3、F1〜F3を備える。機能端子E1〜E3及びF1〜F3は、凸形状の左右にそれぞれ接続用アダプタマクロBの中心点からY軸に対して対称な位置に配置する。
【0069】
機能端子E1とF1を接続する配線の中間点として分岐点J1を設ける。分岐点J1と同一X座標上で周辺バッファ回路Cの方向に分岐点J2、J3を設ける。分岐点J1から分岐点J2へと接続した後、分岐点J2から分岐点J3へ左右対称に2本の配線を形成し、分岐点J3から機能端子G1へ接続する。また、機能端子E2とF2を接続する配線の中間点として分岐点K1を設ける。分岐点K1と同一X座標上で周辺バッファ回路C方向に分岐点K2、K3を設ける。分岐点K1から分岐点K2へと接続した後、分岐点K2から分岐点K3へ左右対称に2本の配線を形成し、分岐点K3から機能端子G2へ接続する。さらに、機能端子E3及びF3を接続する配線の中間点に分岐点L1を設け、分岐点L1から機能端子G3へ接続する。
【0070】
機能端子E1と分岐点J1を結ぶ配線と、機能端子F1と分岐点J1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等になるように形成する。また、機能端子E2と分岐点K1を結ぶ配線と、機能端子F2と分岐点K1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等になるように形成する。さらに、機能端子E3と分岐点L1を結ぶ配線と、機能端子F3と分岐点L1を結ぶ配線は、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量が同等になるように形成する。
【0071】
ハードマクロAの機能端子D1〜D3のX座標は接続用アダプタマクロBの機能端子E1〜E3又は機能端子F1〜F3の座標に合わせる。また、周辺バッファ回路Cの機能端子H1〜H3の座標は接続用アダプタマクロBの機能端子G1〜G3の座標に合わせる。
【0072】
図7を参照すると、凹形状のハードマクロAと凸形状の接続用アダプタマクロBとは、それぞれの機能端子D1とE2、D2とF1、D3とF3を介して接続される。図8は、図7の凹形状のハードマクロAをミラー回転配置した図である。ミラー回転配置された凹形状のハードマクロAと凸形状の接続用アダプタマクロBとは、それぞれの機能端子D1とF2、D2とE1、D3とE3を介して接続される。凸形状の接続用アダプタマクロBにおいて、E1とF1、E2とF2、E3とF3は同等の機能端子である。したがって、図7と図8との間で、凹形状のハードマクロAから周辺バッファ回路Cへの配線は同等に保たれる。
【0073】
凸形状の接続用アダプタマクロBを用いることによって、凹形状のハードマクロAのみをミラー回転配置した場合であっても、凹形状のハードマクロAはミラー回転配置することなく凸形状の接続用アダプタマクロB及び周辺バッファ回路Cのみをミラー回転配置した場合であっても、凹形状のハードマクロAから周辺バッファ回路Cへの配線における、配線遅延時間、他の信号配線へのクロストーク及びバルク容量、並びに、他の信号からのクロストーク及びバルク容量による配線のタイミングは変わらない。
【0074】
すなわち、本実施例において、接続用アダプタマクロBを凸形状にすることによって、ハードマクロAと接続用アダプタマクロBの接触部分を増やすことができ、ハードマクロと接続用アダプタマクロの接続端子数が多い場合、ハードマクロA及び接続用アダプタマクロBのX方向の長さを伸ばすことなく多数の接続端子を配置することができる。
【0075】
以上の記載は実施例に基づいて行ったが、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1に係る接続用アダプタマクロ(配線モジュール)の構成図である。
【図2】本発明の実施例1において、ハードマクロを鏡映した構成図である。
【図3】本発明の実施例2に係る接続用アダプタマクロの構成図である。
【図4】本発明の実施例2において、ハードマクロを鏡映した構成図である。
【図5】本発明の実施例3に係る接続用アダプタマクロの構成図である。
【図6】本発明の実施例3において、ハードマクロを鏡映した構成図である。
【図7】本発明の実施例4に係る接続用アダプタマクロの構成図である。
【図8】本発明の実施例4において、ハードマクロを鏡映した構成図である。
【図9】従来のレイアウト構成を示す図である。
【図10】USBホストコントローラ搭載LSIとUSBコネクタの接続図である。
【図11】本発明の実施形態に係る配線モジュールの構成図である。
【符号の説明】
【0077】
1、Z2 半導体チップ
2 入出力用パッド
4 周辺バッファ回路(入出力バッファ回路)
5 配線領域
10 配線モジュール
11a〜11c 端子
12a、12b 配線
A ハードマクロ
AND1〜AND3 論理積回路
ANDB1〜ANDB3 1入力反転の論理積回路
B 接続用アダプタマクロ(配線モジュール)
BUF1〜BUF4 バッファ
C 周辺バッファ回路
D1〜D3、E1〜E3、F1〜F3、G1〜G3 機能端子
D+、D− データ送受信信号端子
J1〜J3、K1〜K3、L1 分岐点
M1、M2、P1 機能端子
OR1 論理和回路
T1〜T4 配線トラック
Z1 プリント基板
Z3 USBケーブル側コネクタ
Z4 USBコネクタ
Z5 トランシーバIOセル
Z6 ホストコントローラマクロ
Z7、Z8 データ送受信信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線対称の配線モジュールであって、
第1、第2及び第3の端子と、
前記第1及び第2の端子を接続する第1の配線と、
前記第1の配線の中点及び前記第3の端子を接続する第2の配線と、を備え、
前記第1及び前記第2の端子を対称軸について互いに対称に設けたことを特徴とする配線モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の矩形の配線モジュール。
【請求項3】
前記第1及び第2の端子を矩形の配線モジュールの一の辺に設けたことを特徴とする、請求項2に記載の配線モジュール。
【請求項4】
前記第3の端子を前記一の辺の対辺に設けたことを特徴とする、請求項3に記載の配線モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の凸形状の配線モジュール。
【請求項6】
前記第1の端子を凸形状の配線モジュールの突起部分の辺であって前記対称軸に平行な2つの辺の一方に設け、前記第2の端子を他方に設けたことを特徴とする、請求項5に記載の配線モジュール。
【請求項7】
前記第3の端子を前記突起部分に対向する辺に設けたことを特徴とする、請求項6に記載の配線モジュール。
【請求項8】
前記第1の配線は、前記対称軸について線対称であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一に記載の配線モジュール。
【請求項9】
前記第1、第2及び第3の端子並びに前記第1及び第2の配線から成る組を複数組有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一に記載の配線モジュール。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の配線モジュールを備えることを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−164263(P2009−164263A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340530(P2007−340530)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】