説明

金属めっき基板、その製造方法及びフレキシブルプリント配線板と多層プリント配線板

【課題】 屈曲可能で、寸法安定性、回路形成性、導体引き剥がし強度などに優れる金属めっき基板、それを用いてなるフレキシブルプリント配線板と多層プリント配線板を提供する。
【解決手段】 繊維基材に、硬化物の弾性率が500〜7000MPa(ASTM D−882に準じて測定)である接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートの少なくとも片面にめっき皮膜を形成し、該接着シートを加熱硬化させてなる金属めっき基板、この金属めっき基板を用いてなるフレキシブルプリント配線板、及び前記金属めっき基板を用いて得られた内層回路板に、回路を形成した各層を接着シートを介して一体的に接合してなる多層プリント配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属めっき基板、その製造方法及びフレキシブルプリント配線板と多層プリント配線板に関する。さらに詳しくは、本発明は、繊維基材に特定の接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートを用いて得られた、屈曲可能であって、寸法安定性、回路形成性、導体引き剥がし強度などに優れる、銅張積層板などの金属めっき基板、このものを効率よく製造する方法、及び前記金属めっき基板を用いてなるフレキシブルプリント配線板と多層プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高度化などの多様化に伴い、フレキシブル配線板の需要が増大している。このフレキシブル配線板は、一般に電気絶縁性フィルムと金属箔を必要により接着剤を介して積層一体化したフレキシブル印刷配線用基板上に回路を作製し、このフレキシブル回路板に、該回路の保護用としてカバーレイを、半硬化状態の接着剤層を介して貼合・硬化させ、一体化してなるものである。
このようなフレキシブル配線板は、屈曲性を有するため、電気機器や電子機器などの配線用として使用されており、その要求特性としては、接着性、耐熱性、耐溶剤性、電気特性、寸法安定性、長期耐熱性などに優れることが挙げられる。
さらに、近年においては、このフレキシブル配線板は、繰り返し屈曲、摺動部分の配線に多く使用されるようになり、また、その特徴を活かして、筐体空間への高密度配置のため、そのもの自体の薄さと、使用時における折り曲げなどの信頼性や極狭間隙への組み込みといった要望がますます強くなってきている。したがって、該フレキシブル配線板に対しては、前記の要求特性以外に、それ自体の薄さと共に、折り曲げ特性及び屈曲特性に優れることが要求される。
【0003】
このようなフレキシブル配線板に用いられるフレキシブル銅張積層板は、一般にポリイミドフィルムで絶縁層が構成されており、屈曲性には非常に優れているが、ガラスクロスなどの補強材が入っていないため、ハンドリング性が悪い、強度が低い、寸法安定性が悪いなどの欠点があった。
また、ポリイミドフィルムの表面にスパッタリングを施し、その上に電気めっきを施したポリイミド2層銅張積層板が知られている。しかしながら、このポリイミド2層銅張積層板は、屈曲性、回路形成性、寸法安定性には優れているものの、高価で、かつ導体の引き剥がし強度が低いという欠点を有している。
【0004】
他方、電子機器の高性能化、高速化に伴ってプリント配線板も高密度実装、高密度配線化が求められてきており、その要求を満足させるものとしてビルドアップ型多層プリント配線板が注目を浴びている。ビルドアップ型多層プリント配線板は、絶縁層、導体層及び層間接続のビアを一層ごとに形成し、積み上げていくものであり、絶縁層形成方法やビア形成方法によって様々な製造方法が知られている。
さらに、近年、電気・電子機器の小型化に伴い、多層プリント配線板は、ますます薄型化、高密度化が求められており、接着シート(熱硬化性樹脂シート)を用いたビルドアップ型多層プリント配線板が使用されるようになってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、屈曲可能で、寸法安定性、回路形成性、導体引き剥がし強度などに優れる、銅張積層板などの金属めっき基板、このものを効率よく製造する方法、及び前記金属めっき基板を用いてなるフレキシブルプリント配線板と多層プリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、繊維基材に、硬化物の弾性率が特定の範囲にある接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートの少なくとも片面に、めっき皮膜を形成し、該接着シートを加熱硬化させてなる金属めっき基板が、その目的に適合し得ること、そして、前記金属めっき基板は、例えば繊維基材に特定の接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートの少なくとも片面に、無電解めっき処理を施し、次いで電解めっき処理を施したのち、前記接着シートを加熱硬化させることにより得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)繊維基材に、硬化物の弾性率が500〜7000MPa(ASTM D−882に準じて測定)である接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートの少なくとも片面にめっき皮膜を形成し、該接着シートを加熱硬化させたことを特徴とする金属めっき基板、
(2)接着剤組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)エポキシ樹脂用硬化促進剤、(D)エラストマー及び(E)無機充填剤を含む組成物であって、該組成物の固形分量に基づき、前記(D)成分の含有量が5〜80質量%であり、かつ(E)成分の含有量が3〜50質量%である上記(1)項に記載の金属めっき基板、
(3)(D)成分のエラストマーが、合成ゴム、ゴム変性高分子化合物及び高分子エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも一種である上記(1)又は(2)項に記載の金属めっき基板、
(4)繊維基材がガラスクロスである上記(1)、(2)又は(3)項に記載の金属めっき基板、
(5)めっき皮膜が、熱硬化型接着シートの表面に設けられた無電解めっき皮膜上に、電解めっき皮膜が形成された構造を有する上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の金属めっき基板、
(6)銅張積層板である上記(1)〜(5)項のいずれかに記載の金属めっき基板、
【0008】
(7)繊維基材に、硬化物の弾性率が500〜7000MPa(ASTM D−882に準じて測定)である接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートの少なくとも片面に、無電解めっき処理を施し、次いで電解めっき処理を施したのち、前記接着シートを加熱硬化させることを特徴とする金属めっき基板の製造方法、
(8)接着剤組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)エポキシ樹脂用硬化促進剤、(D)エラストマー及び(E)無機充填剤を含む組成物であって、該組成物の固形分量に基づき、前記(D)成分の含有量が5〜80質量%であり、かつ(E)成分の含有量が3〜50質量%である上記(7)項に記載の金属めっき基板の製造方法、
(9)上記(1)〜(6)項のいずれかに記載の金属めっき基板を用いてなるフレキシブルプリント配線板、
(10)上記(1)〜(6)項のいずれかに記載の金属めっき基板を用いて得られた内層回路板に、回路を形成した各層を接着シートを介して一体的に接合してなる多層プリント配線板、及び
(11)接着シートがエポキシ樹脂を必須成分とする樹脂組成物からなるものである上記(10)項に記載の多層プリント配線板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繊維基材に特定の接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートを用いて得られた、屈曲可能であって、寸法安定性、回路形成性、導体引き剥がし強度などに優れる、銅張積層板などの金属めっき基板、このものを効率よく製造する方法、及び前記金属めっき基板を用いてなるフレキシブルプリント配線板と多層プリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の金属めっき基板について説明する。
本発明の金属めっき基板は、繊維基材に接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートの少なくとも片面にめっき皮膜を形成し、該接着シートを加熱硬化させたものである。
当該金属めっき基板に用いられる繊維基材に特に制限はなく、従来銅張積層板などに繊維基材として使用されている公知の基材の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。この繊維基材としては、ガラスクロス、ガラスペーパーなどの無機繊維基材、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維基材を例示することができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
繊維基材としては、ガラスクロスであることが好ましく、このガラスクロスとしては、種類は特に限定されることなく使用することができるが、IPC−EG−140に規定される平織りEガラスクロス等を使用することが好ましく、屈曲性をもたせるためには1080タイプや1037タイプといった50μm以下の厚さのものが特に好ましい。
【0011】
本発明の金属めっき基板において、前記繊維基材に含浸させる接着剤組成物としては、硬化物の弾性率が500〜7000MPaの範囲にあるものが用いられる。該弾性率が500MPa以上であればハンドリング性、強度、寸法精度などが良好であり、一方7000MPa以下であると適度の剛性を有し、折れや樹脂の脱落などが生じにくい。この硬化物の弾性率は、好ましくは500〜7000MPa、より好ましくは800〜5000MPaの範囲である。
本発明において、接着剤組成物の硬化物の弾性率は、ASTM D−882に準じて測定したものであり、厚さ50μmのフィルム状の硬化物を試験片として、セイコーインスツルメンツ社製「DMS6100」を用いて、周波数1Hzで測定した引張弾性率である。
【0012】
このような硬化物を与える接着剤組成物としては、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)エポキシ樹脂用硬化促進剤、(D)エラストマー及び(E)無機充填剤を含み、前記(D)成分の含有量が5〜80質量%であり、かつ(E)成分の含有量が3〜50質量%である組成物を好ましく用いることができる。
当該接着剤組成物における(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を含有するような多官能のエポキシ樹脂などを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、難燃性を付与する場合には、ブロム化エポキシ樹脂、りん変性エポキシ樹脂などの一般的な難燃機構をもたせたエポキシ樹脂を使用することができる。
【0013】
これらのエポキシ樹脂は、通常、溶剤に溶解して使用することができる。その溶剤は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂用硬化促進剤、エラストマーおよび所望により用いられる難燃剤を溶解するものであればよいが、接着剤組成物の塗布乾燥工程において溶剤が残留しないように沸点160℃以下の溶剤であることが望ましい。具体的な溶剤としてはメチルエチルケトン、トルエン、アセトン、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらは単独又は二種以上混合して使用することができる。
【0014】
前記(A)成分のエポキシ樹脂用硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化に使用されている化合物であれば特に制限はなく使用でき、例えば、アミン硬化系としてはジシアンジアミド、芳香族ジアミンなどが挙げられ、フェノール硬化系としてはフェノールノボラック樹脂、クエゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂などが挙げられ、これらは単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。
このエポキシ樹脂用硬化剤の含有量は、硬化性及び硬化物物性のバランスなどの点から、前記(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対し、通常1〜50質量部程度、好ましくは5〜30質量部の範囲で選定される。
【0015】
前記(C)成分のエポキシ樹脂用硬化促進剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化促進剤に使用されているものであり、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。これらの硬化促進剤は単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
このエポキシ樹脂用硬化促進剤の含有量は、硬化促進性及び硬化樹脂物性のバランスなどの点から、前記(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対し、通常0.1〜10質量部程度、好ましくは0.3〜5質量部の範囲で選定される。
【0016】
前記(D)成分のエラストマーとしては、常温付近でゴム弾性率を有するものであればよく、例えば、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム等の各種合成ゴム、ゴム変性の高分子化合物、高分子エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリイミド、変性ポリアミドイミド等が挙げられ、これらは単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、合成ゴム、ゴム変性高分子化合物および高分子エポキシ樹脂であることが好ましく、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムを特に好ましく使用することができる。
このエラストマーの含有量は、組成物の固形分量に基づき、通常5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%の範囲で選定される。該含有量が5質量%以上であれば弾性率が適度に低下し、樹脂の脱落などが発生しにくく、一方80質量%以下であれば繊維基材に対する含浸性が良好である。
【0017】
前記(E)成分の無機充填剤としては特に制限はなく、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、溶融シリカ、合成シリカ等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。この無機充填剤の粒径については特に制限はないが、平均粒径で、通常0.5〜5μm程度であり、好ましくは0.5〜2μmである。また、その含有量は、組成物の固形分量に基づき、3〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい、該含有量が3質量%以上であれば、得られる熱硬化型接着シートのタック性による作業性の低下や、寸法変化に悪影響を及ぼしにくくなり、一方50質量%以下であれば、適度の弾性率を有し、樹脂の脱落を抑制することができる。
【0018】
当該接着剤組成物には、前記の(A)〜(E)成分に加え、難燃性を付与する場合には、例えば臭素化合物、りん化合物、金属水和物などを配合することができ、さらには必要に応じて微粉末の無機質又は有機質の充填剤、顔料、劣化防止剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有させることができる。
当該接着剤組成物は、例えばメチルエチルケトン、トルエン、アセトン、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、シクロヘキサノンなど、又はこれらの混合物からなる媒体に、前記の各成分を均一に溶解又は分散させることにより、調製することができる。
本発明においては、このようにして得られた接着剤組成物を、前記媒体を用いて、繊維基材に含浸させるのに好適な濃度に調節し、従来公知の方法に従って、ガラスクロスなどの繊維基材に含浸、乾燥させて、熱硬化型接着シートを作製する。繊維基材としてガラスクロスを用いる場合、樹脂との接着性を向上させるために、ガラスクロスに、シラン化合物などのカップリング剤をコーティングすることが好ましい。
【0019】
本発明の金属めっき基板は、前記の熱硬化型接着シートの少なくとも片面に、めっき皮膜を形成し、該接着シートを加熱硬化させてなるものである。
前記めっき皮膜については特に制限されず、無電解めっき皮膜であってもよく、無電解めっき皮膜上に電解めっき皮膜が形成された構造のものであってもよいが、特に該熱硬化型接着シートの表面に設けられた無電解めっき皮膜上に、電解めっき皮膜が形成された構造を有するものが好ましい。また、めっき金属の種類としては、通常のプリント配線板用用途であれば、無電解銅めっき及び電解銅めっきが一般的である。この場合、得られる金属めっき基板は、銅張積層板となる。
本発明の金属めっき基板におけるめっき皮膜の厚さは、通常1〜35μm程度、好ましくは2〜8μmである。
【0020】
次に、本発明の金属めっき基板の製造方法について説明する。
本発明の方法においては、繊維基材に、硬化物の弾性率が500〜7000MPaである前記接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートの少なくとも片面に、まず無電解めっき処理を施し、次いで電解めっき処理を施したのち、前記接着シートを加熱硬化させることにより、所望の金属めっき基板を製造することができる。
本発明の方法において、前記無電解めっき処理及び電解めっき処理は、一般に以下に示す工程、すなわち、(1)デスミア処理工程(コンディショニング、デスミア)、(2)無電解めっき工程(コンディショニング、マイクロエッチング、プレキャタライジング、キャタライジング、アクセラレーティング、無電解めっき)及び(3)電解めっき工程を、順次施すことにより、実施される。
【0021】
[デスミア処理工程]
前記熱硬化型接着シートに無電解めっき処理を施す場合、下地となる樹脂面の状態がめっきの密着性、均一性に大きく影響する。したがって、この工程においては、まず、コンディショニング(樹脂膨潤処理)を行い、水洗後、デスミア処理を行う。該デスミア処理は、通常アルカリ性過マンガン酸カリウム溶液を用い、60〜80℃程度の温度で行われる。デスミア処理後、水洗し、必要に応じ還元処理したのち、水洗・乾燥処理を行ってから、次工程へ送られる。
【0022】
[無電解めっき工程]
この工程においては、前工程で得られたデスミア完了品に、まず界面活性剤を用いてコンディショニングを施し、樹脂表面への触媒吸着を容易にする。次いで、過硫酸塩又は硫酸−過酸化水素を含む溶液によるマイクロエッチング処理を行ったのち、硫酸による酸洗浄・水洗を行う。
次に、前記の処理品をキャタライジング液(キャタリストを含む)に浸漬し、無電解めっきを開始させる触媒を吸着させる。この際、キャタライジング液を安定化させるために、直前にプレキャタライジング液に浸漬(プレディップ)し、水洗せずに、そのままキャタライジング液に浸漬して、キャタライジング処理を行う。該キャタライジング液は錫−パラジウムの錯化合物又はコロイドを含む溶液である。
次いで、水洗後、錯化合物の不要な部分を除去する強酸性のアクセラレータ液に浸漬し、アクセラレーティングを行ったのち、水洗し、無電解めっき処理を施す。この無電解めっき処理が、無電解銅めっき処理の場合、その浴組成は、一般に
銅塩(CuSO4など)
還元剤(HCHOなど)
pH調整剤(NaOH、KOHなど)
キレート剤(EDTA、ロッシェル塩)
添加剤(ポリエチレングリコール、ピピリジルなど)
である。無電解銅めっき処理は、通常前記組成のめっき浴を用い、50℃程度の液に浸漬し、緩い攪拌と、ろ過を行いながら実施する。
無電解めっき処理後、水洗・乾燥処理したのち、次工程へ送られる。
【0023】
[電解めっき工程]
前記工程で得られた無電解めっき処理品を酸洗浄・水洗後、電解めっき処理する。この電解めっき処理が、電解銅めっき処理である場合には、めっき浴として、通常酸性硫酸銅浴を用い、従来公知の方法により硫酸銅めっきを行う。
所定の厚さに電解めっき処理を行ったのち、付着しためっき液を回収するために、ドラッグアウト槽にディップし、水洗後、必要に応じ防錆処理を行う。この防錆処理には、通常ベンゾトリアゾール系の防錆剤が用いられる。防錆処理後、水洗・乾燥処理する。
【0024】
このようにして、熱硬化型接着シートの少なくとも片面にめっき皮膜を形成したのち、該接着シートを、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜195℃の温度で加熱硬化することにより、本発明の金属めっき基板が得られる。
この金属めっき基板は、屈曲可能であって、寸法安定性、回路形成性、導体引き剥がし強度などに優れる。該金属めっき基板としては、特にフレキシブル銅張積層板が好適である。
【0025】
本発明はまた、前述の金属めっき基板を用いてなるフレキシブルプリント配線板及び多層プリント配線板を提供する。
本発明のフレキシブルプリント配線板は、当該金属めっき基板、好ましくはフレキシブル銅張積層板に回路を形成し、必要に応じ穴を開けスルーホールめっきを施し、次いで所定箇所に穴を開けたカバーレイを重ねて加熱加圧成形するといった一般的な方法で作製することができる。
また、本発明の多層プリント配線板は、前述の金属めっき基板を用いて得られた内層回路板に、回路を形成した各層を、接着シートを介して、一体的に接合してなる構造を有するものであり、例えばビルドアッププロセスなどにより作製することができる。前記接着シートとしては、エポキシ樹脂組成物を必須成分とする樹脂組成物からなるものが、好ましく用いられる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
(1)銅張積層板における導体引き剥がし強度
IPC TM−650 2.4.8に準拠した。
(2)補強板付きフレキシブルプリント配線板用基板における、プレス後及びリフロー後の寸法変化率
(イ)プレス後
IPC TM−650 2.4.39に準拠した。
(ロ)リフロー後
IPC TM−650 2.4.39に準拠した。
(3)補強板付きフレキシブルプリント配線板用基板の屈曲性
JIS C 6471に準拠した。
【0027】
実施例1
(1)ガラスクロス入り接着シートの作製
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム[日本ゼオン社製、商品名「ニポール1072」]36質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成社製、商品名「YDB−400」、エポキシ当量400]18.5質量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂[日本化薬社製、商品名「BREN S」、エポキシ当量284]18.5質量部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(アミン当量62)6.9質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部、水酸化アルミニウム20質量部、および老化防止剤のN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン1質量部を、メチルエチルケトン/トルエン質量比=6/4の混合媒体に溶解又は分散させて接着剤液を調製し、これをガラスクロス「AS1501/AS891AW」(旭シュエーベル社製1545type)に含浸、180℃で3分間乾燥することで、樹脂含有量40質量%のガラスクロス入り接着シートを製造した。
(2)銅張積層板の作製
上記(1)で得られたガラスクロス入り接着シートに、表1に示す条件でデスミア処理工程を、表2に示す条件で無電解銅めっき処理工程を、表3に示す条件で電解銅めっき処理工程を順次施したのち、170℃で60分間加熱硬化させ、板厚0.045mmの銅張積層板を作製した。この銅張積層板における導体の引き剥がし強度を測定し、結果を表4に示した。
(3)補強板付きフレキシブルプリント配線板用基板の作製
厚さ125μmのポリイミド補強板に、厚さ25μmのボンディングシート[京セラケミカル社製「TFA−880」]を120℃のラミネートロールで圧着したのち、板離形紙を剥がし、これに上記(2)で得られた銅張積層板を重ね、160℃、0.5MPaの条件で20分間加熱加圧接着し、補強板付きフレキシブルプリント配線板用基板を作製した。
この補強板付きフレキシブルプリント配線板用基板について、補強板プレス後、及びリフロー後の寸法変化率並びに屈曲性を求め、その結果を表4に示した。
【0028】
実施例2
(1)ガラスクロス入り接着シートの作製
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム「ニポール1072」(前出)9.5質量部、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂「YDB−400」(前出)35.9質量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂「BREN S」(前出)35.9質量部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(アミン当量62)13.4質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3質量部、水酸化アルミニウム5質量部、および老化防止剤のN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン0.5質量部を、メチルエチルケトン/トルエン質量比=6/4の混合媒体に溶解又は分散させて接着剤液を調製し、これをガラスクロス「AS1501/AS891AW」(旭シユエーベル社製1545type)に含浸、180℃で3分間乾燥することで、樹脂含有量40質量%のガラスクロス入り接着シートを製造した。
以下、実施例1の(2)及び(3)と同様に実施した。結果を表4に示す。
【0029】
比較例1
実施例1の接着剤液を乾燥後の厚さが35μmになるよう離形フィルムに塗布し、180℃で3分間乾燥することで接着シートを製造した。
ガラスクロス入り接着シートの代わりに、上記接着シートを用いた以外は、実施例1の(2)及び(3)と同様に実施した。結果を表4に示す。
【0030】
比較例2
実施例2の接着剤液を乾燥後の厚さが35μmになるよう離形フィルムに塗布し、180℃で3分間乾燥することで接着シートを製造した。
ガラスクロス入り接着シートの代わりに、上記接着シートを用いた以外は、実施例1の(2)及び(3)と同様に実施した。結果を表4に示す。
【0031】
比較例3
ガラスクロス入り接着シートの代わりに、厚さ25μmのポリイミドフィルム[宇部興産社製、商品名「ユーピレックスXT」]を用いた以外は、実施例1の(2)及び(3)と同様に実施した。結果を表4に示す。
【0032】
【表1】

(注)
マキュダイザ−9204:日本マクダーミッド社製、商品名
マキュダイザー9275:日本マクダーミッド社製、商品名
マキュダイザー9276:日本マクダーミッド社製、商品名
マキュダイザー9279:日本マクダーミッド社製、商品名
【0033】
【表2】

(注)
PR−312 :日本マクダーミッド社製、商品名
メテックスG−5S :日本マクダーミッド社製、商品名
メテックス9008L:日本マクダーミッド社製、商品名
マクチベート10 :日本マクダーミッド社製、商品名
メテックス9074 :日本マクダーミッド社製、商品名
メテックス9075 :日本マクダーミッド社製、商品名
CU−150AC :日本マクダーミッド社製、商品名
CU−150B :日本マクダーミッド社製、商品名
【0034】
【表3】

(注)
EC−103A :日本マクダーミッド社製、商品名
EC−103D :日本マクダーミッド社製、商品名
メテックスM−667:日本マクダーミッド社製、商品名
【0035】
【表4】

【0036】
表4から明らかなように、接着剤組成物に可塑性のある高分子成分を配合することで、硬化前にめっきが可能で、ガラスクロスに上記組成物を含浸させた接着シートを用いてなる屈曲可能で寸法安定性、回路形成性、引き剥がし強度、寸法安定性に優れためっき基板を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の金属めっき基板は、繊維基材に特定の接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートを用いて得られた、屈曲可能であって、寸法安定性、回路形成性、導体引き剥がし強度などに優れ、フレキシブルプリント配線板や多層プリント配線板などに好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材に、硬化物の弾性率が500〜7000MPa(ASTM D−882に準じて測定)である接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートの少なくとも片面にめっき皮膜を形成し、該接着シートを加熱硬化させたことを特徴とする金属めっき基板。
【請求項2】
接着剤組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)エポキシ樹脂用硬化促進剤、(D)エラストマー及び(E)無機充填剤を含む組成物であって、該組成物の固形分量に基づき、前記(D)成分の含有量が5〜80質量%であり、かつ(E)成分の含有量が3〜50質量%である請求項1に記載の金属
めっき基板。
【請求項3】
(D)成分のエラストマーが、合成ゴム、ゴム変性高分子化合物及び高分子エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の金属めっき基板。
【請求項4】
繊維基材がガラスクロスである請求項1、2又は3に記載の金属めっき基板。
【請求項5】
めっき皮膜が、熱硬化型接着シートの表面に設けられた無電解めっき皮膜上に、電解めっき皮膜が形成された構造を有する請求項1〜4のいずれかに記載の金属めっき基板。
【請求項6】
銅張積層板である請求項1〜5のいずれかに記載の金属めっき基板。
【請求項7】
繊維基材に、硬化物の弾性率が500〜7000MPa(ASTM D−882に準じて測定)である接着剤組成物を含浸させてなる熱硬化型接着シートの少なくとも片面に、無電解めっき処理を施し、次いで電解めっき処理を施したのち、前記接着シートを加熱硬化させることを特徴とする金属めっき基板の製造方法。
【請求項8】
接着剤組成物が(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)エポキシ樹脂用硬化促進剤、(D)エラストマー及び(E)無機充填剤を含む組成物であって、該組成物の固形分量に基づき、前記(D)成分の含有量が5〜80質量%であり、かつ(E)成分の含有量が3〜50質量%である請求項7に記載の金属めっき基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の金属めっき基板を用いてなるフレキシブルプリント配線板。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の金属めっき基板を用いて得られた内層回路板に、回路を形成した各層を接着シートを介して一体的に接合してなる多層プリント配線板。
【請求項11】
接着シートが、エポキシ樹脂を必須成分とする樹脂組成物からなるものである請求項10に記載の多層プリント配線板。


【公開番号】特開2006−108314(P2006−108314A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291738(P2004−291738)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】