説明

金属上に機能的に高品位とされたコンポジット表面層を生成するため熱プラズマを使用する方法

高温の化学的に活性な熱プラズマ流を利用して金属及びその窒化物又は炭化物からなるコンポジット構造物に変化せしめられるといった材料物質を処理する方法及びその方法で得られる製品。該複合している熱プラズマは活性なガス状、液状又は固体状の物質を制御可能に添加することを行う。得られた該表面層は基材を機能的に高品位化し、非常に優れたボンド(接着層)となり、それは剥離したり、砕けることに抵抗性を与え、硬さ、磨耗抵抗性や摩滅抵抗性、及び腐食抵抗性を顕著に高いものとし、摩擦係数が低いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属のための熱化学的処理及びコンポジット物質造形方法であって、窒化物、炭化物、及びその混合物などのセラミック構造体を形成することのできる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静止した環境下で行われるいくつかの硬さを高める方法が文献に記載されている。特には、次のようなものにより強化せしめられた低温プラズマガスを手段として用いたプラズマ窒化法というものがある:熱イオン放出源〔米国特許第5,294,264号明細書(特許文献1)及び米国特許第5,443,663号明細書(特許文献2)〕、塩浴〔米国特許第5,518,605号明細書(特許文献3); 米国特許第6,645,566号明細書(特許文献4)〕、粉末〔米国特許第6,105,374号明細書(特許文献5)〕、及び低温窒化法を手段として用いたもの〔米国特許第6,179,933号明細書(特許文献6)〕。イオンを注入する技術が提案されている〔米国特許第5,383,980号明細書(特許文献7); 米国特許第6,602,353号明細書(特許文献8)〕。
【0003】
また、基材に対して動くことが可能となっているレーザービームを該基材に向けて当たったゾーンの所で表面を溶融化することを行うといった非静的な方法も存在している。
レーザービームに関して固定された状態を保持する方向で窒素を該基材に吹き付け、そして不活性ガスをも被加工物に吹き付けるものもある〔欧州特許出願公開第491 075号明細書(特許文献9)〕。その方法では、窒素は不活性ガスと混合せしめられ、レーザービームと窒素-不活性ガスジェットとの両者が被加工物上に集中し、ガス状の混合物が液状のゾーンに当たるものである。当該ゾーンが噴霧状物に変化することを防止するためには、該ガスジェットの圧力を制限することが必要である。この方法は400〜1000 ミクロンの厚さをこえてTi合金を硬くすることを可能にする。
【0004】
米国特許第3,944,443号明細書(特許文献10)は窒素ガスとプロパン又はBF3のいずれかとを組み合わせて高温誘導プラズマを適用して、250 ミクロンまでの硬い表面層を作り上げることを記載している。被覆をされるべき対象物は電気的に絶縁されていなければならない。
米国特許第4,244,751号明細書(特許文献11)はプラズマトーチ(TIG)でもってAlの表面を溶融化して、硬い表面を得る手法を記載している(窒素分子をイオン化する手法は記載していない)。該表面層の厚さは <200 ミクロンである。米国特許第5,366,345号明細書(特許文献12)及び米国特許第4,451,302号明細書(特許文献13)はレーザー又は電子ビーム(e-ビーム)を使用して窒素中でその表面を溶融化して金属基材を硬くする手法を記載している。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,294,264号明細書
【特許文献2】米国特許第5,443,663号明細書
【特許文献3】米国特許第5,518,605号明細書
【特許文献4】米国特許第6,645,566号明細書
【特許文献5】米国特許第6,105,374号明細書
【特許文献6】米国特許第6,179,933号明細書
【特許文献7】米国特許第5,383,980号明細書
【特許文献8】米国特許第6,602,353号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第491 075号明細書
【特許文献10】米国特許第3,944,443号明細書
【特許文献11】米国特許第4,244,751号明細書
【特許文献12】米国特許第5,366,345号明細書
【特許文献13】米国特許第4,451,302号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
窒化法、浸炭法又は浸炭窒化法による金属基材の表面の熱化学的処理方法。本方法は、常温で高温イオン化ガスアークプラズマ流を使用することを基礎とするものである。本発明の方法はかなりの程度速い速度でかなりの程度比較的厚く(10,000ミクロンまでの厚さであるがそれに限定されるものではない)硬度を高めることが可能であり、そしてレーザーやその他のアークタイプの装置で必要とされるであろうものよりかなりの程度簡単で費用をかけることのない手段を使用してそれをできる。このことは表面を溶融化したりあるいは溶融化することなしに成し遂げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
窒素又は窒素含有ガス混合物を該プラズマ流の中に向ける。当該プラズマ流中では被加工物はプラズマ源の電極の一つである。非常に高いプラズマ温度では、窒素分子は原子にまで分裂し、その原子はイオン化しイオンとなる。そのイオンをガスプラズマ流、典型的にはAr又はHe、あるいはArとH2の混合物と混合し、高いエネルギーの活性イオン状態で金属基材表面に至らしめる。相当する非イオン化状態の分子の場合と比較してより迅速にイオンの吸収並びに反応が起こる。加えて、金属被加工物はプラズマを生み出す電極の一つであるので、該プラズマ流は金属基材表面を非常に迅速に加熱し、そしてその表面は数百分の一秒のオーダーの何分の一秒かで金属の溶融点の近くの温度に達する。
【0008】
表面溶融化処理なしでは、該基材の変化せしめられた層は、1 mm又はそれ以上の厚さまでであることができる。表面を溶融化処理すると、変化せしめられた層は、6 mm又はそれ以上の厚さまでであることができる。Ti-6Al-4V合金基材に関して、溶融化処理なしで得られた硬さは、ロックウェルC硬さ試験法により測定したところ約45〜85の範囲である。本方法は、Ti及びTi合金、並びにAl、Cr、Fe、Co、Ni、Nb、Ta、V、Zr、Mo、W、Si及びそれらの合金に使用できる。これらの金属は非常に硬い窒化物や炭化物を形成する。
【0009】
本発明は、限定することを意図しない実施例という方法で示され且つ添付の図面に示された特定の具体的な例を参照しつつより詳しく説明される。
図1は、本発明を実施するためのプラズマトーチ装置の概略図を示すもので、それは非消耗性のW電極(2)を保有しているプラズマ移行式アーク(PTA)トーチ(1)、ガスを打ち当てる冷却具(3)、プラズマ流(4)、窒素を該プラズマ流(5)に直接供給するために使用される粉末供給チャンネル、シールドガス流(6)、トーチ(アーク)ガス流(7)、混合ゾーン(8)、及び再溶融化をしたりあるいは再溶融化を伴わないで熱化学的に処理されたゾーン(9)を有している被加工物(10)を備えたものである。
図2は、高温N2プラズマを使用して溶融化しないで形成されたTi-6Al-4V合金基材上のTiN/Tiコンポジット表面層で、エッチング処理されたものの光学顕微鏡写真(高倍率)を示すもので、それは表面から基材まで機能的に高品位化された遷移部があることを示している:1-おおよそ60ミクロンの厚さのTiN層; 2-おおよそ100ミクロンまでの厚さを持つ高い窒素濃度のゾーン; 3-おおよそ2000ミクロンの厚さを持つ遷移部ゾーン; 4-最初のTi-6Al-4V合金基材。各ゾーンの硬さは微小硬度並びにロックウェルCで示した。イメージの高さは2500ミクロンである。
図3A〜3Cは、表面溶融化をして製造され且つエッチング処理されたTiN/Ti表面層の光学顕微鏡写真(高倍率)を示す。図中の書込みは、表面層のいろいろな所のロックウェルC硬さを示すもので、その硬さは表面近くで最も高くなって、表面から離れるに従い低下しており、それは機能的に高品位化された接合部であることを示している。ベースのTi-6Al-4V合金基材のロックウェルC硬さは34〜39である。イメージの高さは400ミクロンである。
図4は、図3Aの表面ゾーン1の走査型電子顕微鏡写真(SEM; 高倍率)を示すもので、それはTiN層と高い窒素濃度を有している中心部ゾーン2(図3B)との間は良好に結合していることを示している。
図5は、図3Cの遷移ゾーン3部でのエッチング処理されたTiN/Tiの光学顕微鏡写真(高倍率)を示すもので、それはコンポジット構造であることを示している。明色の相はTiNで、暗色の相はTi-6-4合金である。イメージの高さは100mミクロンである。
図6は、表面の溶融化なしでの高温熱プラズマに付されたTi-6Al-4V合金被加工物の外観を示しており、それはN2をプラズマ流の中に直接導入したときの効果を示している。
(a)Arプラズマ、(b)Ar/窒素プラズマ。領域aのロックウェルC硬さは、34〜40で、領域bのそれは、53〜66である。イメージの高さは1インチである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照するに、本発明を実施するためには、プラズマトーチ(1)が使用され、そこでは被加工物(ワークピース)は電極の一つを形成し、該電極からのプラズマ流(4)が約10〜50 mmのトーチヘッド部(1)から少し離れた位置にある適切な金属基材(10)にあたるものである。常圧下の窒素又は窒素含有ガス混合物をトーチ本体(1)内にある小さな直径(1〜3 mm)のノズル型筒状の孔部(5)を通して吹き込む。これらの筒状の孔は、普通、金属又はその他の粉末をプラズマアーク中へ流すためにプラズマ移行式アーク(PTA)トーチにおいて使用されている。このように該窒素流は約15°〜70°の相対角度でもってプラズマ流(4)中に向けられている。その混合ゾーン(8)は該基材(2)の表面の上約1〜30 mmのところに配置されるべきである。該ガス冷却ジェット(3)は該トーチ(1)に対して外側に配置されているが、スキャンを行う間該基材の上のプラズマが当たる位置の後ろ側に位置するようにそれに固定されて付けられている。該冷却ジェット(3)は冷却用アルゴン流を利用し、そのアルゴン流はいろいろな角度で該プラズマで加熱される領域(9)の上に向けて流されるものであり、またその角度は必要とされる冷却速度に基づいて選択される。加工処理領域での酸素からの追加の保護処理は、シールドガス、通常はアルゴン又はN2(6)によって達成できる。かかるシールドガスはトーチ本体の中にある環状の通路により導入される。別の方法としては、該シールドガスは加熱されている表面部が酸素と接触することを防止するシールドを形成するチューブ状の配置構造物により別々に送り込むこともできる。プラズマ流(4)の強さ(パワー)やトーチの移動速度は約5 mm〜25 mmの直径並びに約1 mm〜5 mmの深さを有している領域の金属基材(10)の温度上昇の程度を制御するように調節される。窒素は吸収され、活性プラズマ混合物流(8)と基材(10)との間の接触ゾーンで反応する。
【0011】
窒素流(5)の速度を約0.1メーター/秒(m/s)〜約10 m/sの範囲内に調節することにより、窒素をプラズマ混合ゾーン(8)中に浸入せしめ、窒素イオンを含有する活性アルゴンプラズマとする。窒素流の速度を変えると、処理された層(9)の窒素含量が変化することになる。表面層の組成及び構造を変えるための別の可能な方法としては、スキャンする間のトーチの動きを変えることであり、それは進行移動速度及びオシレーション速度や幅を包含しているものである。プラズマ流(4)のパワーが一定の場合、表面層の窒素含量はトーチ速度に半比例の関係を有している。約10 mm/min〜約500 mm/minの進行移動速度は有用な結果を与える範囲内であるものである。
【0012】
Ti-6Al-4V合金基材の場合に関しては、溶融化せずに処理した後の表面層中のTi原子に対するN原子の比率は、50%という比率を有する純TiN並びに0%という比率を有する純Tiに基づいて約5%〜約49%である。溶融化せずに処理した後の表面の硬さは約85 HRCまでである。処理された試料においては、表面層の硬さは表面からの距離が大きくなればなるほど低下する。この低減は表面からの距離が大きくなればなるほどTi原子に対するTiNの比率が対応して低下することに比例している。その表面を溶融化することなしに被覆がなされているTi-6Al-4V合金基材に関する図2及び表面溶融化をして被覆されたTi-6Al-4V合金基材に関する図3においてこのことは示されている。非処理のTi-6Al-4V合金基材の相当する硬さは、34〜39 HRCというものである。図4はTi-6Al-4V合金の上の窒化物表面層のSEMを示し、それは非常に高いTiN/Ti比を有している表面層の一番上層部の薄い層と低いTiN/Ti比を有している層との間が非常に良好に結合していることを示している。
【0013】
該窒化物表面は、αTi、βTi及びTiN結晶からなる3相構造を有している。加えて、当該合金の少しばかり硬さが大きいβ型構造で、それは冷却処理の間の急速な熱変態から誘導されるもので、それは窒化された部分とα/β型Ti-6Al-4V合金構造との間に入っている可能性がある。ある種の特別な用途では、表面層を堆積処理するための慣用的な加工手法をコーティング、特にはカーバイドコーティングを得るために利用できない。真空浸炭化処理では、典型的な前駆体としては水素を含有しているシクロヘキサンなどの炭化水素である。多くの鋼材及びチタンは水素に感受性があり、慣用の加工方法では処理することができない。一方、本PTA表面処理改変プロセスではカーボンブラックあるいはフラーレンなどの固体状炭素源を利用して、浸炭化処理し、水素と当該基材との悪影響を及ぼす反応を避けることができる。
限定することを意図していない次なる実施例を参照しながら本発明を説明する。
【実施例1】
【0014】
Ti-6-4合金基材を高速立体成形(rapid prototyping; RP)装置の不活性チェンバー内に置いた。該成形装置では、熱源としてプラズマ移行式アーク(PTA)溶接トーチを使用した。該トーチの位置並びに動作パラメーターは、コンピュータ制御の3-D CNC位置決め装置により制御せしめられた。また、トーチ動作パラメーターは、その同じコンピュータより制御せしめられた。当該高速製造装置の不活性ガスチェンバーは、酸素濃度が25 ppmの酸素となるまでArガスでパージせしめられた。Ar ガスは該PTAトーチのトーチガス孔を通して流された。窒素ガスはシールドガス孔を通して流された。いかなるガスも粉末供給チャネルを通して流すことはなかった。PTAトーチのアンペアは、52 ampsに設定せしめられた。トーチの進行速度は0.3 IPMに設定せしめられた。Ti-6Al-4V合金基材の表面は、基材の表面が溶融化することを避けるように、該トーチでもってスキャンせしめられた。室温にまで冷却した後、その基材のロックウェルC硬さ(RC)を測定したところ、38で、非処理Ti-6-4合金基材と同じであった。これは、例えば、炭化物又は窒化物を形成するための反応性のガスがない条件下では、硬さが高くなっている表面層はいかなるものも形成されないということを明確に示すものである。
【実施例2】
【0015】
粉末供給孔を通しての7 SCFHの窒素の流れと一緒に実施例1を繰り返した。室温にまで冷却した後、そのRCを測定したところ、65であった。
【実施例3】
【0016】
Ti 6-4合金被加工物を二つの異なる条件を使用してPTAトーチでもって処理した。得られた加工物を図6に示す。図の左側の領域の白線で囲んで示されたところの表面は、52 ampsのアンペアで且つ1.5 IPMのトーチ速度で処理され、シールドガスとしてN2が使用されたが、トーチの粉末供給孔を通してはいかなるN2も供給されることはなかった。このようにプラズマアーク中へ直接いかなるN2も供給されることはなかった。いかなる溶融化も表面が粗くなるいかなる変化も観察されなかった。RCは測定したところ34〜40であり、出発Ti-6-4合金被加工物について測定したものと同じ硬さであった。
図6の右側の領域では、アンペアは52 ampsに保持され、該トーチの速度は0.3 IPMにまで上げられ、シールドガスとしてN2を使用し、トーチ粉末供給孔を通してのN2の流れは4.5 SCFHであった。いかなる溶融化も観察されなかったが、その表面はでこぼこになっていた。これはTiNが形成されたことによるものである。TiNはTi金属よりも分子上の容積がより小さいものである。Tiの比容積は0.22cm3/gmであり、TiNの比容積は0.185cm3/gmであって、16%少ないものである。こうした容積の変化により、溶融化なしのPTAプラズマ窒化処理によりその表面がでこぼこしたものとなったのである。この領域(図6でのb)のロックウェルC硬さは53〜66であり、高温窒素プラズマを利用していない左側の部分のそれよりかなり高くなっていた。これらの結果はその表面で窒化が起こるためにはプラズマ流中にN2を導入しなければならないことを示すものである。これは、硬さが高まったこと、そしてでこぼこが多くなっていることが付随していることにより証拠付けられている。本実施例で記載の材料物質は300ワットの最大アンペアで16 lb/hrの溶接をする能力を有しているステライト(Stellite)、Excaliber モデルトーチを使用して製造された。本実施例のPTAプロセスにおける電圧は28±3ボルトに維持された。トーチの被加工物までの距離はおおよそ5〜8 mmに固定されていた。トーチのスポットのサイズはおおよそ3mmの直径であった。かくして本実施例の材料物質の電流密度はおおよそ0.2 KW/mm2であった。処理条件、特には、トーチのアンペア、被加工物/基材の距離、トーチの移動速度並びにトーチへのパワーの脈動状態などの条件を適切に調整することにより同じ結果を達成するためにその他のトーチ類を使用することができよう。
【実施例4】
【0017】
52 ampsのトーチのアンペア、7 SCFHの粉末供給孔を通しての窒素の流れ、そして0.15 IPMのトーチの移動速度でもって実施例2を繰り返した。室温にまで冷却した後、そのRCを測定したところ、70であった。
【実施例5】
【0018】
52 ampsのトーチのアンペア、5 SCFHの粉末供給孔を通しての窒素の流れ、そして0.3 IPMのトーチの移動速度でもって実施例2を繰り返した。室温にまで冷却した後、そのRCを測定したところ、55であった。
【実施例6】
【0019】
2%Cである鋼材を基材として使用し、45 ampsのトーチのアンペア、7 SCFHの粉末供給孔を通しての窒素の流れ、そして0.15 IPMのトーチの移動速度でもって実施例2を繰り返した。室温にまで冷却した後、そのRCを測定したところ、33であった。元の非処理の鋼材のRCは23であった。
【実施例7】
【0020】
Al材を基材として使用し、55 ampsのトーチのアンペア、7 SCFHの粉末供給孔を通しての窒素の流れ、そして0.15 IPMのトーチの移動速度でもって実施例2を繰り返した。室温にまで冷却した後、そのRCを測定したところ、15であった。元の非処理のAl材のRCは11であった。
【実施例8】
【0021】
25 ampsのトーチのアンペア、5 SCFHの粉末供給孔を通しての窒素及びプロパンの50/50混合物の流れ、そして0.2 IPMのトーチの移動速度でもって実施例2を繰り返した。変化せしめられた表面の組成は、TiNとTiCとが混ざったもので、それはTiCNの固溶体を含有していた。
【実施例9】
【0022】
25 ampsのトーチのアンペア、5 SCFHの粉末供給孔を通してのプロパンの流れ、そして0.4 IPMのトーチの移動速度でもって実施例2を繰り返した。変化せしめられた表面は、TiCから成るもので、それはRC 65〜75の硬さを有していた。
【実施例10】
【0023】
25 ampsのトーチのアンペア、5 SCFHの粉末供給孔を通しての三塩化ホウ素ガス及び水素ガスの流れ、そして0.4 IPMのトーチの移動速度でもって実施例2を繰り返した。変化せしめられた表面は、硼化チタンから成るもので、それはRC 65〜75の硬さを有していた。
【実施例11】
【0024】
4インチの直径、1/2インチの厚さのディスク状のTi-6-4合金基材をPTA SFFFユニットのチェンバー内に置いた。PTA SFFFプロセスの概略図を図1に示す。O2 レベルが酸素分析器、Model 1000 Oxygen Analyzer(Advanced Micro Instruments, Inc.)で測定して25 ppmとなるまでAr ガスでもって不活性ガスチェンバーをパージした。トーチガス及び遮蔽ガスとしてArを使用してPTAトーチをスタートせしめた。0.080インチの直径の連続しているTi-6-4合金ワイアー(線材)を該チェンバー中へ供給し、PTAトーチにより溶融し、該Ti基材上に堆積せしめた。該PTAトーチの動作パラメーターを調節し、該ディスク上に厚さおおよそ0.050インチのTi-6-4合金の層が堆積するように条件を決めた。次に、そのシールドガス及び不活性チェンバーガスをN2に切り替え、該ディスク上に別の層を堆積せしめた。室温にまで冷却し、PTAユニットから取り外し、堆積物を機械加工処理し、上部表面部平板を得た。その表面層のロックウェルC硬さを測定したところ68ロックウェルCであった。これを、Ar雰囲気を使用してPTA SFFFによりTi-6-4合金を堆積させたものの46ロックウェルCの結果と比較した。当該ディスクは、ギアーボックス中での性能をシミュレーションするディスク潤滑摩擦試験(disc lubricated friction)でのボールの中でウェデベン アソシエーツ(Wedeven Associates)により試験された。浸炭化されている9310ボールに対して動かして堆積化処理されたディスクの耐摩耗性を決定した。それは浸炭化されている9310ディスクに対して動かしている浸炭化されている9310ボールに匹敵するほどの性能を発揮することが見出された。両方の材料物質は浸炭化されている9310ボールに対して動かしているTi合金ディスクよりもはるかに優れた性能を発揮した。
【実施例12】
【0025】
6インチ×6インチ×1/2ンチの平板状のTi-6-4合金基材をPTA SFFFユニットのチェンバー内に置いた。O2 レベルが酸素分析器、Model 1000 Oxygen Analyzer(Advanced Micro Instruments, Inc.)で測定して25 ppmとなるまでAr ガスでもって不活性ガスチェンバーをパージした。トーチガス及び遮蔽ガスとしてArを使用してPTAトーチをスタートせしめた。-80/+320メッシュの間の粒子サイズの範囲を有しているTi-6-4合金球状粒子を該トーチ中へ供給し、PTAトーチにより溶融し、該Ti基材上に堆積せしめた。該PTAトーチの動作パラメーターを調節し、該基材上に1インチ×4インチのサイズのTi-6-4合金からなる多層が堆積するように条件を決めた。このものに付けられた厚さは全部でおおよそ0.5インチであった。次に、シールド ガス及び不活性チェンバーガスをN2に切り替え、別の層を試験バーに堆積せしめた。室温にまで冷却し、PTAユニットから取り外し、堆積物を機械加工処理し、上部表面部平板を得た。その表面層のロックウェルC硬さを測定したところ75ロックウェルCであった。
【実施例13】
【0026】
1インチ×6インチ×1/2インチの平板状のTi-6-4合金基材をPTA SFFFユニットのチェンバー内に置いた。O2 レベルが酸素分析器、Model 1000 Oxygen Analyzer(Advanced Micro Instruments, Inc.)で測定して25 ppmとなるまでN2 ガスでもって不活性ガスチェンバーをパージした。トーチガスとしてArを使用し、遮蔽ガスとしてN2を使用してPTAトーチをスタートせしめた。N2雰囲気で動作せしめられているがTi粉末あるいはワイアーを導入することはしていないPTAトーチにあててTi-6-4合金プレートの表面を加工した。該PTAトーチの動作パラメーターを調節し、高TiN含量であって全体の厚さおおよそ0.1インチの表面層を生成するように条件を決めた。室温にまで冷却し、PTAユニットから取り外し、堆積物を機械加工処理し、上部表面部平板を得た。TNを備えた面を持つプレートを機械加工し、おおよそ0.050インチの厚さのTiNを備えた滑らかな平面を得た。その表面層のロックウェルC硬さを測定したところ70ロックウェルCであった。0.33インチ×0.33インチ×4.0インチの寸法のプレートから試験用バーを機械加工した。該バーの4箇所についてTiN面について曲げ試験を行った。そのバーへの荷重は4000ポンドにまで上昇せしめられ、そこのところで試験を停止した。計算で求められた曲げ応力は216 Ksiであった。該バーは曲がり、0.1インチの湾曲を有するものとなった。TiN表面層やTi-6-4合金基材にはいかなるクラックも剥離も観察されなかった。また、バーはTi-6-4合金と比較して熱抵抗性につき試験を行った。おおよそ1インチ×3インチ×1インチの厚さという寸法を有している材料物質のそれぞれの試料をPTAチェンバーに置いて、プラズマアークにさらした。その電圧はおおよそ28ボルトであった。パワーレベルを最初は50に設定し、該試料をトーチによる加熱処理に付した。該試料が溶融化するのが観察されるまでパワーレベル(加熱入力)をおおよそ5 ampづつ上昇せしめた。Ti-6-4合金に関しては、これは80 ampsで起こった。Ti-6-4合金上のTiN面に関しては、パワーレベルが105 ampsになるまで溶融化は観察されないか、あるいは、Ti-6-4合金と比較して熱流動性が31%上昇した。100 ampsでは、該TiN 表面層にはいかなるダメージもクラックの発生もないように思われた。
【0027】
上述の記載は単に本発明の具体例を詳細に説明するためだけのものであり、その開示された具体例を様々に改変することは本件に添付の特許請求の範囲に請求項に規定された本発明の精神又はその範囲から逸脱することなく本明細書での開示にしたがって行うことができることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明を実施するためのプラズマトーチ装置の概略図を示す。
【図2】図2は、高温N2プラズマを使用して溶融化しないで形成されたTi-6Al-4V合金基材上のTiN/Tiコンポジット表面層で、エッチング処理されたものの光学顕微鏡写真(高倍率)を示す。イメージの高さは2500ミクロンである。
【図3】図3A〜3Cは、表面溶融化をして製造されたTiN/Ti表面層で、エッチング処理されたものの光学顕微鏡写真(高倍率)を示す。図中の書込みは、表面層のいろいろな所のロックウェルC硬さを示す。イメージの高さは400ミクロンである。
【図4】図4は、図3Aの表面ゾーンの走査型電子顕微鏡写真(SEM; 高倍率)を示す。
【図5】図5は、図3Cの遷移ゾーン部でのTiN/Tiで、エッチング処理されたものの光学顕微鏡写真(高倍率)を示す。明色の相はTiNで、暗色の相はTi-6-4合金である。イメージの高さは100mミクロンである。
【図6】図6は、表面の溶融化なしでの高温熱プラズマに付されたTi-6Al-4V合金被加工物の外観を示す。(a)Arプラズマ、(b)Ar/窒素プラズマ。イメージの高さは1インチである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマトーチを使用して、電気伝導性がある被加工物の上に高温プラズマを含有する窒素ガスを打ち当てて、該被加工物の上に表面層を付与する方法であって、当該被加工物及びプラズマアークは該トーチへの電力供給系との電気回路を完成しており、上記プラズマは窒素ガスをイオン化してその金属の融点より低い温度まで該基材の表面を加熱するに十分なエネルギーを有しており、そして該金属基材が窒素イオンと反応するようにせしめ、その金属のコンポジット表面層並びにその相当する金属窒化物を形成しており、当該表面層の組成は機能的に品位が向上せしめてあり、その結果金属に対する金属窒化物の比率がその表面の所では最大であり且つその表面からある程度の距離の所では零にまで少なくなっており、当該表面層はその非処理の金属のそれに比べて実質的に硬さが高くなっており、そして当該表面層は熱的なストレスや機械的なストレスがかかって剥離したり、砕けることに対して抵抗性であるに十分な程度該基材に対して優れた結合力を有しているものであることを特徴とする方法。
【請求項2】
該プラズマガスがAr又はHe、ArとH2の混合物を包含するもので、N2が制御されながらその熱プラズマガスに混合せしめられて均質な混合処理が達成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該プラズマトーチがプラズマ移行式アーク、TIG、又はMIGトーチを包含するものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該金属基材がTi、Ta、Cr、Fe、Ni、Co、Al、及びそれら金属の一種又はそれ以上のものの合金からなる群から選択された金属を包含するものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炭素含有ガスがそのN2 ガスに代えて使用されているか、あるいは、そのN2 ガスに付加して使用されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該表面層が約5ミクロンから約2500ミクロンの厚さを有しているものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
その硬さが高くなっていることがロックウェルC硬さで測定したとき少なくとも約10%高くなっているものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該基材がTi-6-4合金であり、被覆された基材の硬さがロックウェルC硬さ試験法で測定したとき、その非処理のTi-6-4合金の硬さ約34〜39に比べて、約45〜約85であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該基材表面がその基材の融点の温度より低い約100C〜約2000Cの温度にまで加熱せしめられるものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該プラズマ流が約3,0000C〜約10,0000Cの範囲の温度、約0.01〜約0.5 Mpaの圧力、そして約10〜約1000 W/ mm2の電力密度を有しているものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法で得られる製品。
【請求項12】
該金属基材がTi合金を包含するものであることを特徴とする請求項11に記載の製品。
【請求項13】
該金属基材がFe合金を包含するものであることを特徴とする請求項11に記載の製品。
【請求項14】
該金属基材がAl合金を包含するものであることを特徴とする請求項11に記載の製品。
【請求項15】
請求項5に記載の方法で得られる製品。
【請求項16】
請求項8に記載の方法で得られる製品。
【請求項17】
該金属基材がTi合金を包含するものであることを特徴とする請求項16に記載の製品。
【請求項18】
該金属基材がFe合金を包含するものであることを特徴とする請求項16に記載の製品。
【請求項19】
該金属基材がAl合金を包含するものであることを特徴とする請求項16に記載の製品。
【請求項20】
直接のアークプラズマ流を使用する金属被加工物の窒化処理、炭化処理、浸炭窒化処理又は硼化処理を包含する熱化学的処理法であって、上記金属被加工物を用意し;所定のパラメーターを有している最初の高温アークプラズマ流を創出し;上記プラズマ流の内部に窒素ガス及び/又は炭素含有ガス及び/又はBCl3を制御しながら混合し、該ガスを原子にまで分解し且つその原子を活性なプラズマ混合物が得られるようイオン化するようにし;当該基材の溶融温度よりも低い約5〜2000Cの温度まで当該基材を局所的に加熱するに十分な期間当該基材を上記活性なプラズマ混合物に制御しながら局所的に接触せしめ、窒素イオン及び/又は炭素イオンがその加熱せしめられた領域により吸収せしめられるようにし;上記加熱せしめられた領域を制御しながら冷却し、当該所定の最終的な構造並びに特性を得るように所定の相遷移をなさしめ;当該基材の全部又は一部が当該所定の最終的な構造並びに特性を得るように上記基材表面に沿って当該活性なプラズマ混合物流を繰り返し制御可能にスキャンするとの工程を含有していることを特徴とする処理法。
【請求項21】
該プラズマ流が約3,000〜10,0000Cの最初の温度、約 0.01〜0.5 Mpaの圧力、純アルゴン又は水素を5%まで含有しているアルゴンであるガス組成、及び10〜1000 W/mm2の電力密度を有しているものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
当該活性なガス又はガス混合物の方向並びに線形速度を制御する工程を含有しているものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
当該プラズマ流の中を流れる物質材料の方向並びに線形速度を制御する工程を含有しているものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
当該活性なガス又はガス混合物の方向並びに線形速度又は当該プラズマ流の中を流れる物質材料の方向並びに線形速度が、最初のプラズマ流のパラメーターに基づいて制御されているものであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
該プラズマトーチと基材表面との間の距離及び接触時間を制御する工程を含有しているものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項26】
軌道及び当該軌道の線形速度を制御する工程を含有しているものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項27】
最初の基材の温度と当該基材の表面と該プラズマ流が接触する地点の温度との間の温度差、当該基材の最初の温度、該基材の人工的な冷却又は予加熱処理パラメーターに基づいて冷却処理を制御する工程を含有しているものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項28】
高セラミック含量の表面層を有しており、当該表面層がTi基材又はTi合金基材に対して機能的に高品位化せしめられているものであることを特徴とするTi又はTi合金構造物。
【請求項29】
該表面層のセラミックがTiNを包含しているものであることを特徴とする請求項28に記載の構造物。
【請求項30】
該表面層のセラミックがTiCを包含しているものであることを特徴とする請求項28に記載の構造物。
【請求項31】
該表面層のセラミックがWCを包含しているものであることを特徴とする請求項28に記載の構造物。
【請求項32】
該表面層のセラミックがTiNとTiB2の混合物を包含しているものであることを特徴とする請求項28に記載の構造物。
【請求項33】
高エネルギー源での自由形状造形法を利用することを含んでいることを特徴とする請求項28に記載の構造物の製造方法。
【請求項34】
該高エネルギー源がプラズマ移行式アーク溶接トーチを包含していることを特徴とする請求項33に記載の処理方法。
【請求項35】
該高エネルギー源がTIG(ティグ;タングステン不活性ガス)溶接トーチを包含していることを特徴とする請求項33に記載の処理方法。
【請求項36】
該高エネルギー源がMIG (ミグ;金属不活性ガス)溶接トーチを包含していることを特徴とする請求項33に記載の処理方法。
【請求項37】
該高エネルギー源がE-ビーム溶接トーチ(電子ビーム溶接トーチ)を包含していることを特徴とする請求項33に記載の処理方法。
【請求項38】
該高エネルギー源がレーザーを包含していることを特徴とする請求項33に記載の処理方法。
【請求項39】
該表面層を堆積するためのN2 ガスを使用し且つTi又はTi合金源としてTi又はTi合金の粉末又はワイアー(線材)を供給材として使用して高エネルギー源でもって自由形状造形プロセスにより該構造物が製造されるものであることを特徴とする請求項28に記載の構造物。
【請求項40】
該Ti基材又はTi合金基材の表面を再溶解するためN2 ガスを使用し且つTiNを形成する高エネルギー源でもっての自由形状造形プロセスにより該構造物が製造されるものであることを特徴とする請求項28に記載の構造物。
【請求項41】
該表面層を堆積するためのメタンガスを使用し且つTi又はTi合金源としてTi又はTi合金の粉末又はワイアーを供給材として使用して高エネルギー源でもって自由形状造形プロセスにより該構造物が製造されるものであることを特徴とする請求項28に記載の構造物。
【請求項42】
該Ti基材又はTi合金基材の表面を再溶解するためメタンガスを使用し且つTiCを形成する高エネルギー源でもっての自由形状造形プロセスにより該構造物が製造されるものであることを特徴とする請求項28に記載の構造物。
【請求項43】
該表面層を堆積するためのN2 ガスを使用し且つTi又はTi合金源としてTi又はTi合金の粉末又はワイアーを供給材として使用しそして水素原子不含の炭素源を粉末供給物として使用して高エネルギー源でもって自由形状造形プロセスにより該構造物が製造されるものであることを特徴とする請求項28に記載の構造物。
【請求項44】
該水素原子不含の炭素源がカーボンブラック又はフラーレンを包含するものであることを特徴とする請求項43に記載の構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−534535(P2009−534535A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506730(P2009−506730)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/066812
【国際公開番号】WO2007/124310
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(501365022)マテリアルズ アンド エレクトロケミカル リサーチ コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】