説明

金属線圧縮体

【課題】筒状金網を圧縮してなる、切粉を含まない金属線圧縮体を提供することを目的とする。
【解決手段】ステンレス鋼線等の金属線が丸編み等で編まれることにより形成された始端部から終端部まで編み目が切れていない所定長の筒状金網12が、圧縮成形機15等により筒状金網12の筒長方向に圧縮されてなるガスケット10、ワッシャ−若しくは内管支持体等又は筒状金網12の筒径方向に圧縮されてなるフィルタ若しくは緩衝材等の金属線圧縮体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の内燃機関の排気管等のように高温の気体を通す管の接合部のガスケット等として用いられる、筒状金網を圧縮してなる金属線圧縮体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関の排気管等に用いられるガスケットには、耐熱性、気密性及び弾性が求められている。そのため、このようなガスケットは、図10に示すように、長尺の筒状の金網90をその編み目のところで切断して所望の長さにした筒状金網91をその筒長方向に圧縮して形成したものが用いられている。
【0003】
また、特許文献1に記載のように、長尺の筒状の金網90をその編み目のところで切断して所望の長さにした筒状金網91を一端から袋巻きにした後に圧縮して形成したものが用いられている。
【0004】
また、特許文献2に記載のように、長尺の筒状の金網90を径方向に潰した帯状金網を、その編み目のところで切断して所望の長さにし、この切断された帯状金網を端部が側方を向くようにして巻いた後に圧縮して形成したものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭53−7555号公報
【特許文献2】特開平10−220585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、筒状金網91の両端には、図11に示すように、それぞれ多数の切粉92が発生していることから、筒状金網91をその筒長方向に圧縮して形成したものは、製造に手間がかからないものの、脱落しやすい切粉92を多く含んでいた。
【0007】
また、特許文献1のものは、筒状金網91を一端から袋巻きにしたことで、脱落しやすい切粉92は少なくなったものの、依然として含んでいる上に、製造に手間がかかっていた。
【0008】
また、特許文献2のものは、帯状金網を端部が側方を向くようにしたことで、脱落しやすい切粉は少なくなったものの、依然として含んでいる上に、製造に手間がかかっていた。
【0009】
このように、切粉92を含んでいるガスケット95は、振動等の影響で使用中に切粉92が脱落してしまい、シール性が低下するおそれがあった。また、図12に示すように、熱等による排気管の膨張・収縮を吸収するため、排気管の途中等に設けられ、排気管の長さ方向にスライドするスライド性を備えた接合部(例えば、消音器96と排気管97との接合部)に用いた場合には、排気の脈動で排気管内で生じる負圧によって、脱落した切粉92が内燃機関の内部へと流入し、内燃機関に障害を生じさせるおそれもあった。
【0010】
そこで、本発明は、筒状金網を圧縮してなり、切粉を含まない金属線圧縮体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の金属線圧縮体は、金属線が編まれることにより形成された始端部から終端部まで編み目が切れていない所定長の筒状金網が、圧縮されてなる。
【0012】
また、金属線圧縮体は、特に限定はされないが、筒状金網が筒長方向に圧縮され、リング状又は底に孔を有するカップ状に形成されたものでもよいし、筒状金網が筒径方向に圧縮され、円盤状又は波板状に形成されたものでもよい。
【0013】
次に、本発明の金属線圧縮体の各要素の態様を以下に例示する。
【0014】
筒状金網は、一本の金属線で編まれていてもよいし、二本以上の金属線で編まれていてもよい。
【0015】
金属線圧縮体の用途としては、特に限定はされないが、リング状のものは、ガスケット、ワッシャー等が例示でき、底に孔を有するカップ状のものは、外管内に設けられた内管を摺動可能に支持する内管支持体等が例示でき、円盤状のものはフィルタ等が例示でき、波板状のものは緩衝材等が例示できる。
【0016】
ガスケットの場合の使用場所は、特に限定はされないが、自動車の排気管の接合部等が例示でき、具体的には、互いに重なり合う部位が互いに排気管の長さ方向にスライドする接合部(例えば、消音器と排気管との接合部)が例示できる。
【0017】
ワッシャーの場合の使用場所は、特に限定はされないが、自動車の内燃機関のエキゾーストカバーをボルト等で取着する部位等が例示できる。
【0018】
内管支持体の場合の使用場所は、特に限定はされないが、自動車の内燃機関の排気管等が例示できる。
【0019】
フィルタの場合の使用場所は、特に限定はされないが、ディーゼル機関等の排気管の排気浄化装置等が例示できる。
【0020】
緩衝材の場合の使用場所は、特に限定はされないが、自動車の内燃機関の排気浄化装置のケーシングと触媒担体との間の部位等が例示できる。
【0021】
筒状金網の編み方としては、特に限定はされないが、丸編み等が例示できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、筒状金網を圧縮してなり、切粉を含まない金属線圧縮体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1のガスケットの斜視図である。
【図2】同ガスケットに用いられる筒状金網の斜視図である。
【図3】同ガスケットの圧縮成形の模式図である。
【図4】本発明の実施例2のワッシャーの斜視図である。
【図5】本発明の実施例3の内管支持体を使用した排気管の模式図である。
【図6】本発明の実施例4のフィルタの圧縮成形の模式図である。
【図7】同フィルタを使用した排気浄化装置の模式図である。
【図8】本発明の実施例5の緩衝材の圧縮成形の模式図である。
【図9】同緩衝材を使用した排気浄化装置の模式図である。
【図10】従来のガスケットに用いられる筒状金網の斜視図である。
【図11】同筒状金網の端部付近を拡大した平面図である。
【図12】従来のガスケットによりシールした排気管の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1のガスケット10について、図1〜図3を用いて説明する。
【0025】
ガスケット10は、一本のステンレス鋼線11が丸編みで編まれることにより形成された始端部から終端部まで編み目が切れていない所定長の筒状金網12を、その筒長方向に圧縮して、図1に示すように、略円筒のリング状に形成したものである。なお、ガスケット10は、シール性等を向上させるため、ステンレス鋼線間の隙間にグラファイト等の目止め材が圧入されていてもよい。
【0026】
次に、ガスケット10の製造方法について説明する。
【0027】
先ず、一本のステンレス鋼線11を丸編みで編むことにより、始端部から終端部までの編み目が切れてなく、長さが略一個のガスケット10の形成に用いられる長さの略円筒状の筒状金網12を形成し、この筒状金網12の終端部から出た一本のステンレス鋼線11を切り代13として一定の長さだけ延ばし、その延ばした先の一本のステンレス鋼線11を再び丸編みで編むことにより、始端部から終端部までの編み目が切れてなく、長さが略一個のガスケット10の形成に用いられる長さとなている、略円筒状の筒状金網12を形成する。
【0028】
次に、図2のaに示すように、上記のようにして編まれた、ステンレス鋼線11の切り代13で一列に繋がっている複数の筒状金網12を、切り代13のステンレス鋼線11の略中央を切ることで、図2のbに示すように、一つ一つの筒状金網12に切り離す。この切り離された各筒状金網12の両端には、切り代13のステンレス鋼線11がその長さを約半分にした状態で付いている。なお、筒状金網12に付いている切り代13のステンレス鋼線11が長い場合には、切り代13のステンレス鋼線11を所望の長さに切断してもよい。
【0029】
そして、切り離された筒状金網12の一つを、図3に示すように、圧縮成形機15によってその筒長方向に圧縮して、略円筒のリング状に成形されたガスケット10を形成する。具体的には、図3のaに示すように、圧縮成形機15の雌型16の内部空間18に、両端に切り代13のステンレス鋼線11が付いた筒状金網12を入れて、図3のbに示すように、雌型16に筒状金網12をセットする。その後、図3のcに示すように、圧縮成形機15の雄型17を雌型16に挿入して、筒状金網12をその筒長方向に圧縮して成形し、リング状に形成する。そして、図3のdに示すように、リング状に形成されたガスケット10を雌型16から取り出す。
【0030】
ガスケット10は、筒状金網12の作製時に切粉が発生しないことから、切粉を含むことがない。
そのため、ガスケット10は、使用中に切粉が脱落してシール性が低下することがない。
また、自動車の消音器と排気管との接合部のシール材としてガスケット10を用いた場合には、使用中に切粉が脱落して自動車のエンジンに障害が生じることがない。
また、筒状金網12を巻く等の作業を行わないことから、製造の手間もかからない。
【実施例2】
【0031】
本発明の実施例2のワッシャー20について、図4を用いて説明する。
ワッシャー20は、図4に示すように、一本のステンレス鋼線11が丸編みで編まれることにより形成された始端部から終端部まで編み目が切れていない所定長の筒状金網12をその筒長方向に圧縮して、略円形で扁平のリング状に形成したものである。このワッシャー20は、形状がガスケット10と異なるだけで、製造方法は同じである。なお、筒状金網12が長い場合には、筒状金網12の端部を袋巻きにする場合もある。
【0032】
ワッシャー20は、筒状金網12の作製時に切粉が発生しないことから、切粉を含むことがない。
そのため、ワッシャー20は、使用中に切粉が脱落して締め付け性が低下することがない。
【実施例3】
【0033】
本発明の実施例3の内管支持体30について、図5を用いて説明する。
内管支持体30は、一本のステンレス鋼線11が丸編みで編まれることにより形成された始端部から終端部まで編み目が切れていない所定長の筒状金網を、その筒長方向に圧縮して、図5に示すように、底に連通孔31を有するカップ状、即ち、底を有する略円筒状で、底を貫通して円筒の内側と外側とを連通する連通孔31が底に設けられた形状に形成したものである。この内管支持体30は、形状がガスケット10と異なるだけで、製造方法は同じである。
【0034】
内管支持体30は、図5に示すように、排気管70内に設けられたパンチングメタルからなる内管71の端部に嵌着され、内管71を排気管70の長さ方向に摺動可能に支持している。
【0035】
内管支持体30は、筒状金網12の作製時に切粉が発生しないことから、切粉を含むことがない。
そのため、内管支持体30は、使用中に切粉が脱落して自動車の内燃機関に障害が生じることがない。
【実施例4】
【0036】
本発明の実施例4のフィルタ40について、図6、図7を用いて説明する。
フィルタ40は、一本のステンレス鋼線11が丸編みで編まれることにより形成された始端部から終端部まで編み目が切れていない所定長の筒状金網12を、その筒径方向に圧縮して、図6、図7に示すように、略円盤状に形成したものである。
【0037】
次に、フィルタ40の製造方法について、図6を用いて説明する。フィルタ40の製造方法は、筒状金網12を圧縮して円盤状に形成する工程だけがガスケット10の製造方法と異なり、その他の工程はガスケット10の製造方法と同じである。そこで、ガスケット10の製造方法と異なるところを説明する。
【0038】
図6のaに示すように、一つに切り離された筒状金網12を筒径方向に圧縮して、帯状金網41にする。そして、帯状金網41をその長さ方向(筒状金網12の筒長方向である)に巻回して渦巻状にした渦巻体42を、図6のbに示すように、圧縮成形機45の雌型46の内部空間48に入れる。その後、図6のcに示すように、圧縮成形機45の雄型47を雌型46に挿入して、渦巻体42の長さ方向(筒状金網12の筒径方向である)に圧縮して円盤状に形成する。そして、図6のdに示すように、円盤状に形成されたフィルタ40を雌型46から取り出す。
【0039】
フィルタ40は、図7に示すように、ディーゼル機関等の排気管の排気浄化装置80内で触媒担体81の下流(後方)に設けられて、排気ガスからパーティキュレートを除去する。
【0040】
フィルタ40は、筒状金網12の作製時に切粉が発生しないことから、切粉を含むことがない。
そのため、フィルタ40は、使用中に切粉が脱落してディーゼル機関等に障害が生じることがない。
【実施例5】
【0041】
本発明の実施例5の緩衝材50について、図8、図9を用いて説明する。
緩衝材50は、一本のステンレス鋼線11が丸編みで編まれることにより形成された始端部から終端部まで編み目が切れていない所定長の筒状金網12を、その筒径方向に圧縮して、図8、図9に示すように、波板状に形成したものである。
【0042】
次に、緩衝材50の製造方法について、図8を用いて説明する。緩衝材50の製造方法は、筒状金網12を圧縮して波板状に形成する工程だけがガスケット10の製造方法と異なり、その他の工程はガスケット10の製造方法と同じである。そこで、ガスケット10の製造方法と異なるところを説明する。
【0043】
図8のaに示すように、一つに切り離された筒状金網12を筒径方向に圧縮して、帯状金網51にし、帯状金網51をその幅方向(筒状金網12の筒径方向である)に四つ折にして折り重ねた折重金網52にする。その後、図8のbに示すように、折重金網52を、互いに等間隔で平行に延びる複数条の凹凸が付くように圧縮して、波板状に形成された緩衝材50を得る。緩衝材50に形成された凹凸は、幅方向に傾斜して延びている。
【0044】
緩衝材50は、図9に示すように、自動車の内燃機関の排気浄化装置86の触媒担体87の外周に巻かれて触媒担体87とケーシング88との間に介在し、触媒担体87の防振・制振を行う。
【0045】
緩衝材50は、筒状金網12の作製時に切粉が発生しないことから、切粉を含むことがない。
そのため、緩衝材50は、使用中に切粉が脱落して自動車の内燃機関に障害が生じることがない。
【0046】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0047】
10 ガスケット
11 ステンレス鋼線
12 筒状金網
13 切り代
20 ワッシャー
30 内管支持体
31 連通孔
40 フィルタ
50 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線(11)が編まれることにより形成された始端部から終端部まで編み目が切れていない所定長の筒状金網(12)が、圧縮されてなる金属線圧縮体。
【請求項2】
前記筒状金網(12)が筒長方向に圧縮され、前記金属線圧縮体(10、20、30)をリング状又は底に孔(31)を有するカップ状に形成した請求項1記載の金属線圧縮体。
【請求項3】
前記筒状金網(12)が筒径方向に圧縮され、前記金属線圧縮体(40、50)を円盤状又は波板状に形成した請求項1記載の金属線圧縮体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−19347(P2013−19347A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154017(P2011−154017)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(390029735)日本グラスファイバー工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】