説明

鉄道車両の駆動装置

【課題】鉄道車両の駆動装置の車両駆動用のインバータ装置の出力量が、出力要求の変化時のエンジン出力応答やエンジン過負荷からのエンジン出力制限量によって制限されないようにし車両の走行性能を向上させる。
【解決手段】車両に蓄電装置13を搭載し、出力要求の変化時やエンジンが過負荷となる場合に、蓄電装置13の放電出力を制御し、インバータ4の出力をエンジン1の出力によって制限されることなく、走行性能を向上させる。また、必要な出力要求に対し、出力要求からエンジン回転数を設定する制御器14によってエンジン1の出力と回転数が制御され、出力要求よりも大きい出力に対応するエンジン回転数に制御し、さらに、発電機2の負荷がエンジン1の出力を超えないように、エンジン過負荷信号と発電機回転数検出信号に対するエンジンの最大可能出力パタンから発電出力を制限してエンジンストールを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の駆動装置に係り、特に、列車にエンジンと発電機と蓄電装置を搭載し、主にエンジン発電機による電源を使用して列車を駆動する鉄道車両の駆動システム技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン発電機による電源を利用して列車を駆動する鉄道車両として例えば、電気式ディーゼル機関車がある。電気式ディーゼル機関車は、エンジンの出力を交流発電機で三相交流電力に変換した後、整流器により直流電力に変換され、その直流電力をインバータ装置によって三相交流電力に変換し、交流電動機を駆動することで、車両を駆動するものである。
【0003】
またエンジンの出力は、車両で必要となる負荷に応じて、最適な出力と回転数となるように制御され、かつ、エンジンの出力に応じて発電機の負荷がエンジンの出力より小さくなるように制御し、エンジンストールを防ぐことが必要となる。このシステム構成が、例えば、特許文献1に示されている。
【0004】
このようなシステムでは、主幹制御器のノッチ信号により車両駆動用インバータ装置の出力を調整し、エンジンの負荷量を制御しようとするものであり、エンジンの出力によってインバータ出力が制限される。例えば、ノッチ信号の変化時やエンジン過負荷時にエンジン出力よりもインバータ出力が上回らないように、エンジン出力が応答するまでのあいだ、インバータの出力が制限されようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−115907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなシステムでは、車両駆動用のインバータ装置の出力量が、エンジンの出力量によって制限されるため、車両の走行性能が低下し、列車の走行ダイヤが守れなくなるといった問題がある。
【0007】
この理由により、本発明の課題は、車両駆動用のインバータ装置の出力量をエンジンの出力応答やエンジン過負荷によって制限されないようにし、車両の走行性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄道車両の駆動装置は、エンジンコンバータ制御器は、統括制御部と、出力指令制御部と、エンジン出力指令生成部と、発電出力制御部を設け、統括制御部では、インバータ装置およびサービス電源用インバータ装置からの出力要求指令や運転台からのノッチ信号等によりエンジン発電機によって出力すべき出力要求信号を生成し、出力指令制御部では、統括制御器からの出力要求信号に基づいて、コンバータ発電電力を制御するためのコンバータ発電出力指令とエンジン出力を制御するためのエンジン出力指令を生成し、エンジン出力指令生成部では、エンジン出力指令に基づいてエンジン回転数指令を出力する。
【0009】
エンジン回転数指令は、その回転数におけるエンジンの最大出力がコンバータ発電出力指令よりも大きい出力に対応する指令値となるように設定する。前記エンジン回転数指令はエンジン出力制御器に入力し、エンジン出力制御器は、エンジンの回転数検出値を入力し、エンジンの燃料噴射量を出力することでエンジンの定回転数制御を行う。また、前記エンジン出力制御器はエンジンの過負荷状態時にエンジン過負荷信号を発電出力制御部と、統括制御部に出力する。
【0010】
発電出力指令部では、コンバータ発電出力指令と、エンジン過負荷信号と、前記回転数を演算する手段からの発電機のロータ周波数信号と、直流部電圧検出信号と、直流部電流検出信号に基づいてコンバータの出力を定電力制御し、さらにロータ周波数検出信号に対するエンジンの最大可能出力パタンを設け、コンバータの出力指令値をこのパタンにより定まる出力値以下となるように制限する。
【0011】
統括制御器ではエンジン過負荷信号、または、コンバータ出力とインバータ出力要求信号に基づいて蓄電装置の放電出力を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、鉄道車両の駆動装置に係り、主にエンジン発電機による電源を使用して列車を駆動する鉄道車両の駆動装置において、蓄電装置の放電出力を制御することによって、エンジンの出力応答や過負荷によらず、車両の走行性能を低下させることなく走行できるようになる。
【0013】
また、蓄電装置を搭載することによって、回生動作が可能となる上、蓄電装置からの電力補足によって、エンジンの出力を燃費の良い動作点で出力調整できるため燃費が向上でき、エンジンの出力余裕を小さく出来るため、エンジンの出力性能を向上することが出来る。
【0014】
蓄電装置の容量は、出力要求の変化時におけるエンジンの出力応答や過負荷時に出力を補足できる程度の容量を搭載すればよく,ハイブリッド車両のようにエンジン出力と蓄電装置の出力によって車両を加速するような車両において必要となる大容量の蓄電装置を搭載する必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の制御装置における実施例の基本構成例を示す図である。
【図2】図2は本発明の実施例における発電制御の構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は本発明の実施例における発電制御の詳細例を示す図である。
【図4】図4は本発明の実施例における放電出力指令制御の第一の例を示す図である。
【図5】図5は本発明の実施例における放電出力指令制御の第二の例を示す図である。
【図6】図6は本発明の実施例における蓄電装置からの出力補足の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明していく。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の制御装置における実施例の基本構成例を示す図である。エンジン1とエンジン1によって駆動され交流電力を出力する交流発電機2と、交流電力を直流電力に変換するコンバータ装置3と、直流電力を交流電力に変換するインバータ装置4と、鉄道車両を駆動する電動機5と、電動機5の出力を減速して輪軸7に伝達する減速機6と、サービス電源用インバータ装置8と、サービス電源用変圧器9と、車両の照明や空調装置等のサービス機器10と、エンジンコンバータ制御器11と、直流電圧変換装置12と、蓄電装置13と、エンジン出力制御器14と、位置検出器または回転数検出器15とを有して構成される。
【0018】
エンジン1は、エンジン制御器14からのエンジン出力指令SP_eng0に従って軸トルクを出力する。エンジン制御器14が出力するエンジン出力指令SP_engは、エンジン回転数検出値F_engと、エンジンコンバータ制御器11からのエンジン回転数指令SF_engを入力として、回転負荷によらずエンジンが定回転数となるように出力される。
【0019】
発電機2は、エンジン1の軸トルクを入力として、これを三相交流電力に変換して出力する。
【0020】
コンバータ装置3は、発電機2から出力される三相交流電力を入力として、これを指令された電力量に対応した直流電力に変換し出力する。ここで、コンバータ装置3は、エンジンコンバータ制御器11からのコンバータ出力指令SP_cnv0に従った出力となるように定電力制御をする。
【0021】
インバータ装置4は、コンバータ装置3から出力される直流電力を入力としてこれを三相交流電力に変換して出力する。
【0022】
電動機5は、インバータ装置4が出力する三相交流電力を入力としてこれを軸トルクに変換して出力する。ここで、インバータ装置4は、電動機5の出力トルクがエンジンコンバータ制御器11からのインバータ出力指令SP_inv0に基づいたトルクを出力するように可変電圧可変周波数制御をする。
【0023】
減速機6は、電動機5の軸トルク出力を回転数の減速により増幅して出力し、輪軸7を駆動して電気車を加減速する。
【0024】
サービス電源用インバータ装置8は、コンバータ装置3とインバータ装置4間の直流電力を入力としてこれを三相交流電力に変換して出力する。さらにサービス電源用変圧器9により車両の照明や空調装置等に供給するサービス電源電圧に調整してサービス機器10へ供給する。
【0025】
位置検出器または回転数検出器15は位置検出値θ_gen0または回転数検出値Fr_gen0をエンジンコンバータ制御器11へ入力する。
【0026】
エンジンコンバータ制御器11は、入力電力に相当するコンバータ出力指令SP_cnv0とエンジン回転数指令SF_engを、出力電力に相当するインバータ出力要求、およびサービス電源用インバータ装置の出力要求に基づいて決定して出力し、エンジン制御器14からのエンジン過負荷信号Load_engを入力しこの信号に基づいて、直流電圧変換装置12へ放電出力指令SP_batt0を出力する。コンバータ出力と蓄電装置からの放電電力が必要な出力要求を満たせない場合には、インバータ出力指令SP_inv0をインバータ装置4に出力し、出力電力を絞る機能を持つ。
【0027】
直流電圧変換装置12は、蓄電装置13とコンバータ装置3とインバータ装置4間の直流部と電力的に接続可能とするように配置され蓄電装置13に接続されている。また、直流電圧変換装置12は、蓄電装置13の電圧を直流部の電圧に昇圧または、直流部の電圧を蓄電装置13の電圧に降圧させる。蓄電装置13は、直流電圧変換装置12からの直流電力出力を入力され、または、直流電圧変換装置12に対して直流電力を出力できるように直流電圧変換装置12に接続される。
【0028】
この構成により、以下の動作を実現できる。エンジン1は、エンジンコンバータ制御器11からのエンジン回転数指令SF_engに基づき、エンジン出力制御器14が出力するエンジン出力指令SP_eng0によって定回転数制御をしながら所定の出力となる。
【0029】
一方、コンバータ装置3は、エンジンコンバータ制御器11からのコンバータ出力指令SP_cnv0に基づいて、発電機2から出力される三相交流電力を入力としてこれを指令された電力量に対応した直流電力に変換し出力する定電力制御を行う。
【0030】
エンジン回転数指令SF_engを、その回転数におけるエンジンの最大出力がコンバータ出力指令SP_cnv0よりも大きい出力に相当する回転数指令となるように、出力要求に対するエンジン回転数指令SF_engと、コンバータ出力指令SP_cnv0をエンジンコンバータ制御器11から出力することによって、コンバータの出力がエンジンの出力を超えることがないように制御でき、エンジン過負荷によるエンジンストールを防止できる。
【0031】
また、エンジン出力制御器14はエンジンの過負荷状態時にエンジン過負荷信号Load_engを出力し、エンジンコンバータ制御部11へ入力する。エンジンコンバータ制御部11はエンジン過負荷信号Load_engに基づいて直流電圧変換装置12へ放電出力指令SP_batt0を出力する。
【0032】
これによりエンジン過負荷時に蓄電装置13の放電出力を蓄電装置13の充電量の許す限り出力でき、エンジンの過負荷によるコンバータ出力制限時にもインバータ装置4およびサービス電源用インバータ装置8の電力を極力制限することなく供給できる。これによってインバータ装置の出力がエンジンの出力制限量によって制限されることなく出力でき、車両性能を向上することができる。
【0033】
なお蓄電装置の容量は、出力要求の変化時におけるエンジンの出力応答や過負荷時に出力を補足できる程度の容量を搭載すればよく,ハイブリッド車両のようにエンジン出力と蓄電装置の出力によって車両を加速するような車両において必要となる大容量の蓄電装置を搭載する必要が無い。例えば、エンジン出力1000kW級のエンジンを搭載しゼロ出力から最大出力までのエンジン出力応答が10〜15秒程度の場合には、10kWh程度の蓄電装置を搭載すればよい。
【0034】
このエンジンコンバータ制御器11の制御構成について図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施例における発電制御を示すブロック図の例である。
【0035】
エンジン1とエンジン1によって駆動され交流電力を出力する交流発電機2と、交流電力を直流電力に変換するコンバータ装置3と、コンバータ装置3の直流出力部に接続された直流電圧変換装置12と、直流電圧変換装置12からの直流電力を入力され、または、直流電圧変換装置12に対して直流電力を出力できるように接続された蓄電装置13と、エンジン出力制御器14と、位置検出器または回転数検出器15と、エンジンコンバータ制御器11と、電流検出器21と、電圧検出器22と、フィルタコンデンサ23を有しており、エンジンコンバータ制御器11は、回転数演算制御部16と、統括制御部17と、出力指令制御部18と、エンジン出力指令生成部19と、発電出力制御部20を有して構成される。
【0036】
エンジン1は、エンジン制御器14からのエンジン出力指令SP_eng0に従って軸トルクを出力する。エンジン制御器14が出力するエンジン出力指令SP_engは、エンジン回転数検出値F_engと、エンジンコンバータ制御器11からのエンジン回転数指令SF_engを入力として、回転負荷によらずエンジンが定回転数となるように出力される。
【0037】
また、エンジン制御器14はエンジン過負荷時にエンジン過負荷信号Load_engをエンジンコンバータ制御器11に出力し、発電出力制御部20と、統括制御部17とへ入力する。 発電機2は、エンジン1の軸トルクを入力として、これを三相交流電力に変換して出力する。
【0038】
コンバータ装置3は、発電機2から出力される三相交流電力を入力として、これを指令された電力量に対応した直流電力に変換して出力する。ここで、コンバータ装置3は、発電出力制御部20からのコンバータ出力指令SP_cnv0に従った出力となるように定電力制御をする。
【0039】
回転数演算部16は、位置検出器または回転数検出器15から検出した位置検出値θ_gen0または回転数検出値Fr_gen0から発電機の回転数Fr_gen1を演算し、発電出力制御部20へ出力する。
【0040】
統括制御部17は、必要な出力要求SP_outを出力する。この出力要求SP_outは、例えば、主幹制御器からの運転指令や、インバータ装置4およびサービス電源用インバータ装置8からの出力要求指令や、他に電源供給源がある場合にコンバータ装置3で必要となる出力分を演算して決定される。
【0041】
出力指令制御器18は、出力要求SP_outを入力として、エンジン出力指令生成部19へエンジン出力指令SP_eng1を出力し、発電出力制御部20へコンバータ出力指令SP_cnv1を出力する。
【0042】
エンジン出力指令生成部19は、エンジン出力指令SP_eng1を入力とし、これに対応したエンジン回転数SF_engをエンジン出力制御器14へ出力する。
【0043】
発電出力制御部20は、コンバータ出力指令SP_cnv1と、電流検出器21で検出した直流電流値Id_cnvと、電圧検出器22で検出した直流電圧値Vd_cnvと、回転数演算部16からの発電機回転数検出値Fr_gen1を入力とし、コンバータ装置3へ、コンバータ出力指令SP_cnv0を出力する。
【0044】
この制御構成により、以下の動作を実現できる。エンジン1は、出力要求SP_outに対し、エンジン出力生成部19からのエンジン回転数指令SF_engに基づき、エンジン制御器14が出力するエンジン出力指令SP_eng0によって定回転数制御をしながら回転負荷によらず出力要求を満たす出力となる。
【0045】
一方、コンバータ装置3は、発電出力制御部20からのコンバータ出力指令SP_cnv0に基づいて、発電機2から出力される三相交流電力を入力としてこれを指令された電力量に対応した直流電力に変換し出力する定電力制御を行い、出力要求を満たす発電出力となる。これによってエンジン出力とコンバータ出力を出力要求に応じた出力で協調運転される。
【0046】
ここで、エンジン出力指令生成部19から出力するエンジン回転数指令SF_engを、発電出力制御部20で設定するコンバータ出力指令SP_cnv0よりも大きい出力に相当する回転数指令となるように、出力要求に対するエンジン回転数指令SF_engを設定し、さらにエンジンの回転数に対する可能最大出力のパタンからコンバータ出力指令SP_cnv0を出力制限することによって、コンバータの出力がエンジンの出力を超えないように制御でき、エンジン過負荷によるエンジンストールを防止できる。
【0047】
また、エンジン出力制御器14はエンジンの過負荷状態時にエンジン過負荷信号Load_engを出力し、統括部17へ入力する。統括制御部17はエンジン過負荷信号Load_engに基づいて直流電圧変換装置12へ放電出力指令SP_batt0を出力する。発電出力制御部20は、エンジン過負荷信号Load_engに基づいてコンバータ出力を絞る。
【0048】
これによりエンジン1の過負荷時に蓄電装置13の放電出力を蓄電装置13の充電量の許す限り出力でき、エンジン過負荷によるコンバータ出力制限時にもインバータ装置4およびサービス電源用インバータ装置8の電力を極力制限することなく供給できる。これによってインバータ装置の出力が、エンジンの出力制限量によって制限されることなく出力でき、車両性能を向上することができる。
【0049】
さらに、この制御の詳細について図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施例における発電制御の詳細例を示す図である。
【0050】
エンジン1と、コンバータ装置3と、出力指令制御部18と、エンジン出力指令生成部19と、発電出力制御部20と、回転数演算部16と、エンジン出力制御器14で構成される。
【0051】
エンジン出力指令生成部19は、エンジン出力指令SP_eng1からエンジン回転数指令SF_engを決定するパタン特性A27を有し、SF_engを出力する。ここで、パタン特性A27は、例えば、エンジンの回転数に対する最適出力特性を基に、エンジン出力指令値に対する最適回転数指令値を出力するパタン特性とすることで、エンジンの最適出力特性に近い回転数と出力で運転させ、さらにエンジン出力指令SP_eng1に対応する回転数指令値を大きく設定すれば、常にコンバータ出力よりも大きなエンジン出力が出力可能な回転数で設定され、エンジン出力よりもコンバータ出力が大きくなることを防止できる。この考え方は後述する図4の例で説明をする。
【0052】
発電出力制御部20は、発電機出力指令SP_cnv1を入力とし、エンジン過負荷信号Load_engに基づいてパタン特性B29によって設定されるコンバータ出力指令を制限するコンバータ出力指令制限量SP_cnv2を加算器26によって減算して出力し、この出力指令を1以下に設定されるゲインA(gainA)を乗算器24によって乗算し、コンバータ出力指令SP_cnv3を出力する。
【0053】
低位選択器25は、回転数演算部16の出力する発電機回転数Fr_gen1から出力パタン特性M28によって決定される出力SP_cnv_Lim0と乗算器24の出力SP_cnv3のうち小さいほうを選択して出力する。ここで、発電機回転数はエンジンと軸を直結している場合は、エンジン回転数と等しく、出力パタン特性M28は、エンジンの回転数に対する最大可能出力特性以下に設定され、例えば、エンジンの回転数に対する最大可能出力特性にある余裕ゲイン(1以下)を乗算した値を設定する。
【0054】
これにより、コンバータの出力指令SP_cnv0がある回転数におけるエンジンの最大可能出力値よりも小さく設定され、コンバータ出力指令設定値からエンジン過負荷を防ぐことができる。また、エンジン過負荷時にコンバータ出力指令を制限することで、エンジンの負荷を抑えることができる。
【0055】
図4には、統括制御部17におけるエンジン過負荷信号に基づいて放電出力指令を生成する制御構成例を示している。エンジン過負荷信号Load_engから放電出力指令SP_batt0を設定するパタン特性C30により放電出力指令を生成する。統括制御部17はエンジン過負荷信号Load_engに基づいて直流電圧変換装置12へ放電出力指令SP_batt0を出力する。
【0056】
これによりエンジン過負荷時に蓄電装置13の放電出力を蓄電装置13の充電量の許す限り出力でき、エンジンの過負荷によるコンバータ出力制限時にもインバータ装置4およびサービス電源用インバータ装置8の電力を制限することなく供給でき走行性能を低下させずに走行できる。
【0057】
また、図3に示した出力要求SP_outが急増したような場合、エンジンの出力応答よりも出力要求の変動が大きくなり、エンジンの過負荷状態となる。このような出力要求の急増時にも、放電出力指令SP_batt0を出力することにより、エンジンの出力応答でインバータ装置4およびサービス電源用インバータ装置8の電力を制限する必要がなく、出力要求を極力満たせるようにでき、インバータ出力量がエンジンの出力制限量に制限されることがなくなる。
【0058】
図4の実施例では、エンジンの過負荷信号Load_engに基づいて放電出力指令SP_batt0を生成する方式を説明したが、図5に示すように、コンバータ出力とインバータ出力要求の出力差分信号ΔPaに基づいて、放電出力指令SP_batt0を設定するパタン特性D31により放電出力指令を生成するようにしてもよい。
【0059】
このように統括制御器17は、出力要求と実際のコンバータ出力および蓄電装置13からの放電出力に応じて、コンバータ出力と、インバータ出力およびサービス電源用インバータ出力の電力バランスが崩れないように統括的に電力指令の制御を行う。
【0060】
図6には本発明の実施例における蓄電装置からの出力補足の例を示す。今、図6に示したように横軸に車両速度をとるとインバータ出力は速度に従って比例上昇し、その後ほぼ一定出力となる。
【0061】
このとき、エンジンの回転数もインバータの必要な出力に応じて回転数を上昇させていくが、エンジンの最適出力特性で回転数指令すなわちエンジン出力を操作させる場合に、図の領域Dのようにエンジンの最適出力に対しインバータの出力要求が大きくなる領域がある。
【0062】
このとき、例えば、エンジンの最適出力から超えた分の出力をエンジン過負荷信号とすると、これに応じて蓄電装置の放電出力を図のSP_batt0Aとし、斜線部の電力を蓄電装置から出力補足することで、エンジンはエンジンの最適動作点上で出力すればよいのでエンジン効率が向上し、インバータ出力もエンジンの出力で制限されることがない。
【符号の説明】
【0063】
1 エンジン
2 発電機
3 コンバータ装置
4 インバータ装置
5 電動機
6 減速機
7 車輪
8 サービス電源用インバータ装置
9 サービス電源用変圧器
10 サービス機器
11 エンジンコンバータ制御器
12 直流電圧変換装置
13 蓄電装置
14 エンジン出力制御器
15 位置検出器・回転数検出器
16 回転数演算部
17 統括制御部
18 出力指令制御部
19 エンジン出力指令生成部
20 発電出力制御部
21 電流検出器
22 電圧検出器
23 フィルタコンデンサ
24 乗算器
25 低位選択器
26a,26b 加算器
27 エンジン出力−回転数指令パタン特性A
28 回転数−コンバータ出力指令制限パタン特性M
29 エンジン過負荷信号−コンバータ出力指令制限パタン特性B
30 エンジン過負荷信号−放電出力指令パタン特性C
31 出力差分信号−放電出力指令パタン特性D

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される発電手段が発生する交流電力を直流電力に変換するコンバータ手段を有する直流電力発生手段と、
前記直流電力を交流電力に変換するインバータ手段と、
前記インバータ手段によって変換された交流電力により駆動される電動機と、
前記直流電力よりサービス機器の交流電力に変換するサービス電源用インバータ装置と、
前記直流電力を充電および放電する機能を持つ蓄電装置と、
蓄電装置の電圧を直流部の電圧に昇圧または、直流部の電圧を蓄電装置の電圧に降圧させる直流電圧変換装置を備える鉄道車両の駆動システムにおいて、
エンジン出力指令に基づいたエンジン回転数に対応して回転負荷によらず該指令回転数となるよう定回転数制御を行い、エンジンの過負荷時にエンジンコンバータ制御器へエンジン過負荷信号を出力するエンジン出力制御器と、
エンジンコンバータ制御器を有し、前記エンジンコンバータ制御器は、インバータ装置およびサービス電源用インバータ装置で必要な電力に応じて設定される出力要求信号を出力する統括制御部と、
出力要求信号からコンバータ発電電力を制御するためのコンバータ発電出力指令およびエンジン出力を制御するためのエンジン出力指令を出力する出力指令制御部と、
エンジン出力指令に基づいてエンジン回転数指令を出力するエンジン出力指令生成部と、
コンバータ発電出力指令に基づいてコンバータの出力を制御する手段を有する発電出力指令部を有し、
前記エンジンコンバータ制御器はエンジン過負荷信号に基づいて、エンジンの過負荷状態のときに前記統括制御部より蓄電装置へ放電出力要求信号を出力して蓄電装置の出力を制御し、インバータ装置およびサービス電源用インバータ装置への供給電力を補足する機能を有していることを特徴とする鉄道車両の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両の駆動装置において、
前記エンジンコンバータ制御器はコンバータ出力信号とインバータ出力要求信号に基づいて、前記統括制御部より蓄電装置へ放電出力要求信号を出力して蓄電装置の出力を制御し、インバータ装置およびサービス電源用インバータ装置への供給電力を補足する機能を有していることを特徴とする鉄道車両の駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の鉄道車両の駆動装置において、
前記エンジンコンバータ制御器はエンジン出力制御器に対し、前記直流電力発生手段のコンバータ発電出力指令よりも大きい出力に対応する回転数指令を出力することを特徴とする鉄道車両の駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載の鉄道車両の駆動装置において、
前記直流電力発生手段のコンバータ発電出力指令は、前記発電機回転数を演算する手段からの発電機回転数信号に基づき、予め設定されたエンジンの回転数に対するエンジン最大可能出力パタンによって最大出力を制限して出力することを特徴とする鉄道車両の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−148460(P2011−148460A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12741(P2010−12741)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】