説明

閉ループフィードバックを備えた開ループトルク制御

バリエータトルク制御システムは、バリエータ(100)の実出力トルクが、予測出力トルクにほぼ一致するようにバリエータ出力を調整する。一例では、既存のトルク制御マップの圧力値は、バリエータ(100)の現在の動作に基づいて算出された圧力補足値でリアルタイムに補足される。各マップ圧力値用の圧力補足値は、前に適用した同じまたは別のマップ値に基づいて導出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許開示は、静油圧式トルク制御型トランスミッションに関し、より詳細には、バリエータ(variator)トルク制御マップの誤りを補償するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無段変速機(CVT)などの多くの高性能トランスミッションシステムでは、トルクまたは回転数を連続可変伝達する機能を提供するためにトルク制御要素を使用している。そのようなトランスミッションの例には、動力伝達列が2つの入力によって駆動される分割トルク型トランスミッションがあり、それらの入力の一方は、油圧式バリエータなどからのトルク制御された入力とすることができる。かかるシステムでは、制御信号に基づいて結果的に得られたシステムの実動作が、予測された動作と一致するように、バリエータを正確に制御できることが一般的に望ましい。
【0003】
この目的を達成するために、システムの中には、入力圧力または圧力差をバリエータの出力トルクに対応づける校正マップまたはトルク制御マップを使用するものもある。それにもかかわらず、トルク制御マップの登録データの中には、実際の動作状態のもとで、部品の摩耗、遊び、または制御システム内のスロップ(slop)などのために誤ったものとなって、システムの予測された動作と実際の動作との間に望ましくない不一致をもたらすものもあり得る。
【0004】
前述の背景の説明は、単に読者の助けとなることを意図されている。本発明を限定することを意図しているのではなく、したがって、先行システムの特定の要素が、本発明で使用するのに不適切であることを示すとみなすべきではないし、興味を起こさせる問題を解決することを含めて、本明細書で説明する技術革新を実施するのに必須である任意の要素を示すことも意図していない。本明細書で説明する技術革新の実施および応用は、添付の特許請求の範囲によって限定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、アクチュエータ圧力信号に応答して、油圧式アクチュエータを有するバリエータの出力トルクを制御する方法が提供される。この態様の方法は、第1の所望トルクを示す信号をオペレータインターフェイスから受け取ることを含む。バリエータの動作に関連する複数のパラメータを評価し、これらをアクチュエータ圧力信号用の第1のマップ値に対応づける。第1のマップ値をアクチュエータ圧力信号として油圧式アクチュエータに適用し、バリエータの第1の実出力トルクを測定し、これを第1の実出力トルクと比較して圧力補足値を導出する。第2の所望トルクを示す信号を受け取ると、バリエータの動作に関連する複数のパラメータを再評価して、アクチュエータ圧力信号用の第2のマップ値を求め、次いで、この第2のマップ値を圧力補足値により修正して、調整したアクチュエータ圧力信号を生成する。
【0006】
開示したシステムおよび方法のさらなるおよび代替の特徴と態様とが、以下の説明から分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】適用された制御圧力差に基づいて可変出力トルクを供給するバリエータの詳細な模式図である。
【図2】図1に示すようなバリエータにある角度可変斜板のピストンを制御する油圧式アクチュエータの詳細な模式図である。
【図3】バリエータの入力回転数1800RPMで、アクチュエータ圧力差、バリエータ入力回転数、およびバリエータ出力回転数を予測される出力トルクと関連付ける4次元マップの3次元部分である。
【図4】バリエータを効果的に制御するための、アクチュエータに関連する制御用部品およびデータ流れの簡略化した論理図である。
【図5】実トルクと予測トルクとを一致させるために、トルク制御マップの値を補足する、一例によるプロセスを示す流れ図である。
【図6】実トルクと予測トルクとを一致させるために、トルク制御マップの値を補足するさらなるプロセスを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、バリエータトルク制御システムを改良するシステムおよび方法に関する。バリエータの実出力トルクが所望出力トルクと近似的にさらに一致するように、説明するシステムを使用してバリエータ出力をトルク制御する。トルク制御マップは、動作環境の変化、機械のばらつき、耐性の変化などのために誤ったものになりやすいことがある。一例では、説明するトルク制御システムは、マップ値をそれぞれ適用する前に、算出した圧力補足値をマップ値に加えて、バリエータの所望トルクと実トルクとの間の相互関係を改善する。さらなるおよび代替の態様が以下の説明から明らかになるであろう。
【0009】
図1は、適用された、斜板アクチュエータ104内の制御圧力差に基づいて、可変出力トルクを供給するバリエータ100の詳細な模式図である。バリエータ100は、ポンプ101およびモータ102を含む。ポンプ101は、斜板アクチュエータ104によって調整される、角度可変の斜板103を含む。それぞれのチャンバ内の複数のピストン105は、スライド接点を介して斜板103に乗っているので、ピストン105の移動範囲は、斜板103の角度によって調整される。ピストン105のチャンバは、ポンプ入力シャフト109によって回転されるポンプ担体108内に形成されている。
【0010】
モータ102は、それぞれのチャンバ内に複数のピストン106を含んだ同様な構成を備えている。モータ102のピストン106は、固定した斜板107にスライド可能に係合している。当然のことながら、可変容積を可能にするために、斜板107の角度は可変とすることもできる。ポンプ101にあるピストン105のチャンバは、チャンバおよびつなぎ導管(図示せず)を満たす油圧油によって、モータ102にあるピストン106のチャンバと流体連通している。ピストン106のチャンバは、モータ出力シャフト111を回転させるモータ担体110内に形成されている。斜板103の角度が変わると、ポンプ101のピストン105によって移動される流体の量(ひいては、ピストン106のチャンバから受け入れるまたは取り込む流体容積)が変わる。
【0011】
これらの相互関係のために、斜板103に加わる正味の力とともにトルクが変化し、斜板103の角度とともにモータ102の出力回転数が変わる。概略的には、この例では油差圧に基づいて作動する斜板アクチュエータ104は、例えば、2つの圧力バルブのそれぞれに対して1つのソレノイドバルブ(図示せず)を介して駆動され、トランスミッションコントローラなどからの適切な入力信号によって電子制御される。このように、コントローラは、斜板アクチュエータ104に付属するソレノイドバルブに電気信号を加えることで、バリエータ100のトルクを制御することができる。
【0012】
図2は、図1に示すようなバリエータ100にある角度可変の斜板(図示せず)にかかる作動力を制御する油圧式アクチュエータ104の詳細な模式図である。アクチュエータ104は、主として、反対側にある2つのピストン200、201をそれぞれのシリンダ202、203内に含んだ複数の相互間連要素を備えている。ピストン200、201は、それらのそれぞれのシリンダ202、203の穴と協同して、加圧した油圧油を収容するそれぞれの圧力チャンバ204、205を形成している。
【0013】
ピストン200、201は、中央ピボットピン207が取り付けられたバー206によって連結されている。中央ピボットピン207は、バー206の横方向位置によって、斜板アーム209の位置、ひいては、斜板自体(図示せず)の角度が決まるように、斜板アーム209のスロット208内で干渉する。バー206は、対抗するスプリング212によって中央位置に付勢される。バー206がこの中央位置から移動すると、変位に比例する復元力がスプリング212により発生する。
【0014】
バー206の横方向位置、速度、および加速度は、ピストン200、201に作用する力の総計によって決まる。ピストン200、201に作用する力は、以下の情報源、すなわち、(1)チャンバ204、205内の圧力と、(2)ピストン200、201の変位によって決まる、スプリング212からの力と、(3)トルク、ポンプ回転数、モータ回転数などによって決まる、斜板を通じて作用する旋回力とから得られる。それぞれの圧力バルブ210、211は、チャンバ204、205内の圧力を独立して制御する。一例として、圧力バルブ210、211は、供給圧力で決まる限度内の、印加電流によって調整される圧力で油圧油を供給するソレノイドバルブである。したがって、図示した例では、各バルブ210、211は、少なくとも(入力A、Cとして示した)電流入力と(入力B、Dとして示した)流体入力とを有する。通常、ソレノイドバルブは、ゼロから、流体入力B、Dでの流体圧力までの任意の圧力で流体を供給することができる。
【0015】
図1を踏まえて図2を検討すると、出力111で供給されるトルクは、バルブ210、211によって加えられる圧力差に直接関連すると分かるであろう。特に、油圧回路内の流体圧力は、バルブ210、211によって加えられる圧力差に関連する。したがって、トルク制御用途では、バルブ210、211のソレノイド電流の組み合わせ(または、アクチュエータ104内の加えられた圧力差)を出力111での予測される連動出力トルクと正確に関連づけることが望ましい。
【0016】
第1のステップとして、所定のマップを使用して、特定の圧力差を特定の予測出力トルクと関連づける。実際上、これらの値の間の関係はまた、以下のもの、すなわち(1)(容積センサによって直接測定した、またはモータ回転数/ポンプ回転数、例えば、正規化したモータ回転数から算出した)ピストン104のポンプ押しのけ容積と、(2)入力(ポンプ)回転数とに依存する。したがって、4次元マップが、様々な値を関連づけるために使用される。
【0017】
図3は、バリエータ入力回転数を1800RPMに設定した、表示できない次元のかかるマップを示している。上に述べたように、図示した面300は、予測出力トルク(左水平軸)をアクチュエータ104内の加えられた圧力差(垂直軸)と既知の正規化したバリエータ用モータ回転数または容積(右水平軸、正規化されている)とに関連付ける。バリエータの絶対入力回転数が異なると、残りの変量の関係を示す3次元面も異なったものになる。
【0018】
一実施形態では、特殊フィードバックループにより、マップから提供された値がリアルタイムに修正されて、バリエータ100の実トルク出力が所望トルクに近似的にさらに一致する。バリエータ制御プロセスを詳細に説明する前に、制御基礎構造とシステム内の情報の流れとを説明する。図4は、バリエータ100を効果的に制御する、図2の機械部品にかかわる制御部品およびデータ流れの簡略化した論理図400である。特に、ソレノイドバルブ210、211によりバリエータ100の動作を制御するために、バリエータコントローラ401が設けられている。バリエータコントローラ401は、専用のバリエータコントローラとすることができるが、より一般的には、トランスミッションなどの、バリエータ100にかかわるより大型のシステムも制御する。コントローラ401は、任意の適切な構成とすることができるが、一例では、コンピュータ可読媒体に保存されたコンピュータ可読命令に従って動作する、データ入力部および制御出力部を有するマイクロプロセッサ回路を含むデジタルプロセッサシステムを備える。通常、プロセッサは、プログラム命令を保存する長期(不揮発性)メモリと連携し、さらには、オペランドおよび処理中の結果(または処理によってもたらされる結果)を保存する短期(揮発性)メモリとも連携する。
【0019】
動作時、コントローラ401は、バリエータシステム100から複数のデータ入力信号を受け取り、システム100に複数の制御出力信号を供給する。特に、コントローラ401は、回路圧力センサ402または他のトルク検出装置もしくはセンサに接続された第1のデータ入力部を有する。単一の圧力センサを使用することもできるが、より正確な圧力測定値を得るために、複数のセンサを使用するのが望ましい。回路圧力センサ402は、バリエータ100の内部油圧回路内(すなわち、ピストン105、106の間)の油圧を検出し、検出した圧力に関する信号を供給するように配置、構成されている。コントローラ401の第2のデータ入力部は、ポンプ回転数センサ403に接続されている。ポンプ回転数センサ403は、バリエータ入力シャフト108の回転数を検出し、検出した入力回転数に関する信号を供給するように配置、構成されている。モータ回転数センサ404は、コントローラ401の第3のデータ入力部に接続されている。モータ回転数センサ404は、バリエータ出力シャフト110の回転数を検出し、検出した出力回転数に関するデータを供給するように配置、構成されている。当然のことながら、(例えば、アクチュエータ104のストロークから導出された)ポンプ容積、または(例えば、角度センサから得られた)斜板103の角度を、正規化したモータ回転数の代わりに入力として使用することができる。
【0020】
所望トルクを検出するために、コントローラ401はまた、例えば、アクセル設定部などのオペレータインターフェイス407からデータ入力信号を受け取る。オペレータは、人間でもよいし、自動化されていてもよく、オペレータインターフェイスは適宜変わってもよい。バリエータコントローラ401はまた、図3に示すような4次元出力マップ300を読み込む。
【0021】
上記の利用可能な各種入力に基づいて、コントローラ401は、バリエータ100が所望出力トルクとほぼ一致する出力トルクを供給するように、適切な制御信号を算出して提供する。特に、コントローラ401は、アクチュエータ104の動作、ひいてはバリエータ100の動作を制御する、調整した2つのソレノイド制御信号405、406を提供する。調整したソレノイド制御信号405、406には、第1のアクチュエータ圧力バルブ210を制御する第1の調整済みソレノイド制御信号405と、第2のアクチュエータ圧力バルブ211を制御する第2の調整済みソレノイド制御信号406とが含まれる。
【0022】
図5は、実トルクと予測トルクをさらに一致させるためにマップ300の値を補足する、一例によるプロセスを示す流れ図500である。第1の段階501で、コントローラ401は、オペレータインターフェイス407から受け取った情報から所望トルクを算出する。所望トルクは、オペレータ入力、例えば、アクセル位置から直接算出されるか、または、例えば、トランスミッションの動作から間接的に算出される値とすることができ、トランスミッションの状態は、現在および過去のオペレータ入力に基づいている。段階502で、コントローラ401は、回路圧力センサ402から送られた回路圧力と、ポンプ回転数センサ403から送られたポンプ回転数と、モータ回転数センサ404から送られたモータ回転数とを含めたバリエータの状態を読み込む。
【0023】
コントローラ401は、段階503でマップ300を読み込み、所望トルクを発生させるのに必要とされるアクチュエータ圧力差を特定する。段階504で、コントローラ401は、特定されたアクチュエータ圧力差に圧力補足値Pを加えて、調整したアクチュエータ圧力差を生成する。プロセス500が初回の通過時に実行されている場合、圧力補足値Pは、ゼロまたは初期デフォルトオフセット値に設定することができる。プロセス500が、2回目またはその後の通過時に実行されている場合、圧力補足値Pは、下記の態様で前の通過時に設定される。
【0024】
段階505で、コントローラ401は、段階504の調整したアクチュエータ圧力差に基づいて、調整したソレノイド電流信号1(405)および調整したソレノイド電流信号2(406)を出力する。段階506で、コントローラ401は、回路圧力センサ402から回路圧力を再度読み込み、バリエータ100の実出力トルクを算出する。特に、当業者ならば、バリエータの出力トルクがバリエータの内部油圧に関連し、この内部油圧から直接計算され得ると分かるであろう。
【0025】
段階507で、コントローラ401は、段階501での所望トルクを段階506での実トルクと比較し、(所望トルクに基づく)所望圧力と(実トルクに基づく)実圧力との差を表す誤差圧力差信号Pを生成する。段階508で、コントローラ401は、ゲインGを誤差圧力差信号Pに適用して、圧力補足値Pを生成する。一例では、ゲインはGxP=Pであるような乗法性ゲインである。しかし、本開示の範囲内のゲインの特徴および適用は、前述の例によって限定されるものではない。したがって、例えば、ゲインは、比例、積分、および/または微分(PID)とすることができるのは当然のことである。さらに、ゲインは、可変または固定値とすることができ、一例では、ゲインGは、一の位のない端数、例えば0.5である。プロセスは、再度所望トルクを読み込むために、段階508から段階501に戻る。
【0026】
プロセス500を実行することによって、マップ300のあらゆる誤りの影響が最小限になるので、バリエータ100の実出力トルクは、オペレータインターフェイスから送られた所望トルクと近似的にさらに一致する。当然のことながら、ゲインGが1に設定されない限り、かつプロセス500を複数回通過している間にバリエータの状態がほとんど変わらないままでない限り、通常では実トルクが所望トルクと正確に一致することはないが、実トルクと所望トルクとの間の差は、補正することなくマップ300を使用して発生した差に比べて、通常では大幅に小さくなる。所望トルクと実トルクをほぼ一致させる能力は多くの状況で重要である。例えば、多くのトランスミッションでは、入力トルクは、円滑なシフト動作を確実にするために、シフト操作中に制御される。かかる状況において、予測出力トルクと密接に関連する実出力トルクを発生させる能力は、こうしてシフト動作の質を高める。
【0027】
代替の実施形態では、トルク制御プロセスは、圧力補正ではなくてトルクコマンド補正によって機能する。この実施形態は、トルク制御マップ間の相関が、1つまたは複数の変量において非線形であるシステムに特によく適している。トルク制御プロセス600の段階601〜606は、プロセス500の段階501〜506と同様である。ステージ607で、コントローラ401は、段階601での所望トルクを段階606での実トルクと比較し、トルク誤差信号Tを生成する。段階608で、コントローラ401は、Tを現在の所望トルクに加えて、補正した所望トルクを生成する。当然のことながら、オペレータインターフェイス407から送られた所望トルクが、段階601の実行と段階608の実行との間に変化した場合、段階608では新たな所望トルクが使用される。プロセスは、段階608から段階602に戻って、補正した所望トルクを発生させるのに必要なアクチュエータ圧力差を算出する。当然のことながら、プロセス600を通り抜ける2回目の通過およびその後に連続する通過時に、補正した所望トルクが所望トルクの代わりに使用される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本明細書で説明したバリエータトルク制御システムの産業上の応用性は、前述の説明から容易に分かるであろう。バリエータの実出力トルクが所望出力トルクとほぼ一致するように、バリエータ出力をトルク制御する技術を説明した。トルク制御マップは前もって決められ、動作環境の変化、機械のばらつき、耐性変化などのために不正確になる。説明したトルク制御システムは、マップ値をそれぞれ適用する前に、算出した圧力補足値を各マップ値に加えて、バリエータの所望または予測出力トルクと実出力トルクとの間の相関を改善する。一例では、圧力補足値は、直前に適用した同じまたは別のマップ値に基づいて導出される。
【0029】
本開示例は、バリエータの出力トルクが予測出力トルク値にほぼ一致するのが望ましい油圧式バリエータを使用する任意のシステムに適用可能である。例えば、特に重産業機械用の多くのトランスミッションシステムは、等速トランスミッションなどの、バリエータを採用する部品であって、したがって、本明細書における教示を適用することで恩恵を受け得る部品を使用している。そのような機械では、前述の教示を適用することで、トランスミッション入力(すなわち、バリエータ出力)でのトルク制御がより正確になって、シフト動作の性能をより良好にし、利用者の体験を改善することができる。したがって、例えば、そのようなトランスミッションを使用する重産業機械は、シフト挙動においてバリエータのトルクに関連する障害に遭遇することなく、広範囲に変化する動作環境で、長期にわたり動作することができる。つまり、バリエータのトルク制御マップは、時間とともに、および/または様々な環境間で不正確になることがあるが、それにもかかわらず、関連するトランスミッションのシフト動作の質は、本システムを使用することによって維持される。
【0030】
当然のことながら、前述の説明は、開示したシステムおよび技術の例を提示している。一方、開示内容の他の実施については、前述の例とは細部で異なっていてもよいと考えられる。本発明または本発明の実施例についての言及はすべて、その時点で説明される特定の例について言及することを意図されており、より一般的に、本発明の範囲に関する限定を含むよう意図されるものではない。特定の部分に対する差別および軽視の言葉はすべて、これらの部分を選好しないことを示すよう意図されているが、別途に示されていない限り、本発明の範囲からそのようなものを完全に除外することを意図されるものではない。
【0031】
本明細書における各値の範囲の記載は、本明細書に別途に指摘がない限り、単に、その範囲に包含される各別個の値を個々に参照する簡便な方法となることを意図されており、各別個の値は、これが本明細書に個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書で説明したすべての方法は、本明細書で別途に指摘がない限り、または別途に文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。
【0032】
したがって、本発明は、準拠法が許可する通り、添付の特許請求の範囲に記載の内容についてのすべての修正形態および等価物を含む。さらに、本発明は、本明細書に別途に指摘がない限り、または別途に文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明のあり得るすべての変形形態における上記要素の任意の組み合わせを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ圧力信号(405、406)に応答して、油圧式アクチュエータ(103)を有するバリエータ(100)の出力トルクを制御する方法であって、
オペレータインターフェイス(407)から第1の所望トルクを示す信号を受け取り(501)、
バリエータの動作に関連する複数のパラメータを評価し(502)、
複数のパラメータをアクチュエータ圧力信号用の第1のマップ値に関連付けるためにマップ(300)を読み込み、第1の所望トルクは第1のマップ値に対応し(503)、
アクチュエータ圧力信号(405、406)として第1のマップ値を油圧式アクチュエータ(100)に適用し(505)、
バリエータ(100)の第1の実出力トルクを測定し(506)、第1の実出力トルクを第1の所望出力トルクと比較して、誤差値を導出し(507)、
誤差値に基づいて圧力補足値を導出し(507)、
オペレータインターフェイス(407)から第2の所望トルクを示す信号を受け取り(501)、
バリエータ(100)の動作に関連する複数のパラメータを再評価し(502)、
複数の変量をアクチュエータ圧力信号用の第2のマップ値に関連付けるためにマップ(300)を読み込み(503)、第2の所望トルクは第2のマップ値に対応し、
圧力補足値によって第2のマップ値を修正して、調整したアクチュエータ圧力信号(405、406)を生成し(504)、
調整したアクチュエータ圧力信号を油圧式アクチュエータ(103)に適用して(505)、バリエータ(100)の出力トルクを調整すること
を含む方法。
【請求項2】
オペレータインターフェイス(407)から第1の所望トルクを示す信号を受け取ること(501)には、アクセルインターフェイス(407)から信号を受け取ることが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アクチュエータ圧力信号は圧力差に相当する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
アクチュエータ圧力信号には、アクチュエータ(103)を制御するために、少なくとも2つのそれぞれのソレノイドバルブ(210、211)に送られる少なくとも2つのソレノイド電流信号(405、406)が含まれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
誤差値に基づいて圧力補足値を導出すること(507)には、誤差値にゲイン係数を乗じて圧力補足値を生成することが含まれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
圧力補足値によって第2のマップ値を修正すること(504)には、圧力補足値を第2のマップ値に加えて、調整したアクチュエータ圧力信号を生成することが含まれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ゲイン係数は、可変ゲイン値および固定ゲイン値からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ゲイン係数は小数値を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
バリエータ(100)は、内部油圧回路、ポンプ(100)、およびモータ(101)を含み、バリエータ(100)の動作に関連する複数のパラメータには、内部油圧回路の回路圧力、バリエータのポンプ回転数、およびバリエータのモータ回転数が含まれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
バリエータ(100)の第1の実出力トルクを測定することには、回路圧力を第1の実出力トルクに変換することが含まれる、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−528242(P2010−528242A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510280(P2010−510280)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/005218
【国際公開番号】WO2008/147493
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】