説明

集積回路

【課題】従来構造において二酸化シリコンのごく薄い層で起こる問題を回避しながら、特徴サイズを小さくして、集積化/極小化を増加させるような、ゲート誘電体構造とその製造方法を提供する。
【解決手段】基板とゲート電極との間に形成された、誘電体材料層を有するゲートスタック構造と、その製造方法を提供し、この誘電体材料層は、2.5nm以下の電気的厚さを有し、そして二酸化シリコン以外の、少なくとも1つの層を有する。基板上に誘電体材料層を堆積し、この誘電体材料層の上に直接導電層を堆積することにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路のゲートスタック構造と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフ技術の進歩と、ゲート酸化物層の厚さを低減することにより、金属、酸化物、半導体技術は、0.25μmの特徴サイズにまで縮まっている。電子システムにおける、シリコンベースの集積回路の仕様は、産業の進展とともにギガスケールの集積に発展している。特徴サイズが減少するに連れて、キャパシタンスの密度要件も増加している。当業者には明らかなように、MOSトランジスタのゲート構造は、平行なプレートキャパシタを近似し、ゲート層と半導体層が電極を構成している。キャパシタンスを増加させるために、キャパシタの電極間のスペースを減少させるか、あるいは高誘電率の材料を使用するかのいずれかが必要である。ところが、例えば、非常に薄い(3.5nm以下)の二酸化シリコン層のような、従来の誘電体は、電極間のスペースを低減させる障害となっている。例えば、二酸化シリコンの2.5nmのトンネル限界に近づくと、トンネル電流は許容可能値を越えてしまう。二酸化シリコンよりも高い誘電率を有する材料を使用することにより、所望のキャパシタンスを得ることができるが、一方、薄い誘電体層を使用する問題点も減少する。
【0003】
高い誘電率を有する誘電体による積層ゲート構造の一例は、米国特許出願第08/995435号に開示されている。前掲の特許出願に開示された一実施例は、酸化基板上に成長し、高密度化された二酸化シリコン層と、高い誘電率(高k)の材料層と、この高k材料層の上に形成された二酸化シリコンの堆積層とを有する。
【0004】
この堆積した酸化物層を、この堆積した二酸化シリコン層の上に形成した高kの誘電体材料と、ポリシリコン製のゲート電極との間のバッファ層として用いている。例えば、高kの層が、五酸化タンタル層の場合には、堆積SiO2層は、高k層をポリシリコン製ゲートから緩衝して、五酸化タンタルがポリシリコン層により還元するのを阻止している。これにより、高k層内のタンタル元素が発生するのを阻止し、そして高k層内での短絡を阻止している。前掲の特許出願における積層したゲート誘電体材料を使用したトランジスタは、従来の構造に比較して、インタフェーストラップサイトの濃度が低く、トンネリング電圧を改善し、固定チャージ(Qf)が無視可能となり、インタフェースキャリアの移動度が改善し、有効誘電体の厚さが薄くなる特徴がある。
【0005】
前掲の特許出願の誘電体製のゲート積層体は、キャパシタンス密度を増加させることにより、極小化が可能となるが、さらに現在では特徴サイズを低減する必要がある。前述したように、デバイスの大きさを小さくし、集積化を容易にするために、誘電体の厚さを低減する必要がある。二酸化シリコンのような従来の誘電体材料の誘電体厚さを低減すると、キャパシタンスが増加し、その結果、二酸化シリコン層の厚さの加減に直面することになる。したがって、二酸化シリコンの厚さと、同じキャパシタンスを有するような誘電体材料が必要とされ、そして単純なプロセスで処理でき、二酸化シリコンのごく薄い層の電気的な欠点を受けないようにすることが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、従来構造において二酸化シリコンのごく薄い層で起こる問題を回避しながら、特徴サイズを小さくして、集積化/極小化を増加させるような、ゲート誘電体構造とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板とゲート電極との間に形成された、誘電体材料層を有するゲートスタック構造と、その製造方法を提供し、この誘電体材料層は、2.5nm以下の等価電気厚さを有し、そして二酸化シリコン以外の、少なくとも1つの層を有する。
【0008】
本発明の構造体は、基板上に誘電体材料層を堆積し、この誘電体材料層の上に直接導電層を堆積することにより形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例の断面図。
【図2】成長酸化物層を形成する、代表的なプロセスパラメータを表す表。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す、本発明の一実施例においては、酸化可能基板101は、その上に成長酸化物層を有し、その下に成長した二酸化シリコン層を有する。成長酸化物層とその下の酸化物層とは、102で示されている。高い誘電率を有する材料の層は、103で示されており、ゲート電極は104で示されている。一実施例においては、酸化可能基板101は、モノクリスタラインシリコンであるが、ポリシリコン、あるいはシリコンのエピタキシャル成長層のような酸化可能層である。高k誘電率材料層103は、リーク電流を押さえ、そしてTa25製で、ゲート電極104はタングステン等の金属製である。
【0011】
図1に示した構造においては、層102と高k誘電率材料層103の積層体の等価電気厚さは、2.5nm以下である。(本出願においては、等価電気厚さは、二酸化シリコンの特定の値のキャパシタンスを有する、特定の誘電体層の構造を意味する。例えば、五酸化タンタルの6.0nm厚の単一の層は、二酸化シリコンの単一の1.0nm厚の層の等価電気厚さを有する。)しかし、高k誘電率材料層103は、3.0nm以上の厚さを有し、これにより、製造プロセスが簡単になり、ごく薄い二酸化シリコン層の処理の問題、および性能の問題を解決できる。上記の実施例は、単なる一実施例で、本発明のゲートスタック構造体は、基板とゲート電極との間に配置された誘電体材料層であり、この誘電体材料層は、2.5nm以下の等価電気厚さを有し、二酸化シリコン以外の少なくとも1つの層を有する。
【0012】
薄い酸化物ゲート誘電体層の欠陥の主要なファクタは、成長の際導入される極小孔(micropores)と酸化物層内の本来的なストレスである。二酸化シリコン内に形成された、マイクロポアネットワークは、拡散マス位相とリーク電流に対する短絡パスを引き起こす。さらにまた、二酸化シリコン層内のストレスは、マイクロポアのサイズと密度の両方を増加させる。そのため、低欠陥密度を有する薄い誘電体層を開発する際には、初期欠陥密度を減らすことばかりでなく、ストレス収納層を用いて、シリコンと二酸化シリコンのインタフェース近傍に、局部的ストレス傾斜を減少させることが必要である。このために、誘電体層内にインタフェースを用い、ストレスのクッションと欠陥のシンク(取り込み)として機能することが必要である。本発明の一実施例においては、この層は、インタフェースにおける酸化反応により、第1成長酸化物層の下に成長した二酸化シリコン層(ストレスフリー酸化物層とも称する)である。この酸化物層は、擬似平行状態のもとで成長し、アニールされる(annealed out)トラップとなり、そして、新たに成長したに酸化シリコンにより形成された、ほぼ平面上の、ほとんどストレスフリーのシリコン−二酸化シリコンインタフェースとなる。
【0013】
Si−SiO2インタフェースにおける、成長酸化物層の詳細は、次の文献に開示されている。米国特許第4851370号と米国特許出願第08/995435号、Stacked−ε, Gate Dielectric For Giga Scale Integration Of Metal−Oxide−Semiconductor Technologies, Applied Physics Letters, Vol. 72, No. 22, June 1, 1998(Roy et al 著)と、MOS Transistors With Stacked SiO−Ta−SiO Gate Dielectric To Giga−Scale Integration Of The MOS Technologies, IEEE Electron Letters, Vol. 19, No. 11, November 1998(Kizilyalli et al 著)の開示である。ゲート誘電体層をスケーリングするために、等価電気的厚さを低減するのと適応しながら、本発明は、上記の文献に議論された、堆積酸化物を省くものである。このため、ポリシリコン以外のゲート材料を選択することにより、ゲート電極を高k材料(例えば、五酸化タンタル)の上に直接形成することができる。
【0014】
高k材料層の上の、二酸化シリコンの堆積層を省くことにより利点がある。例えば、等価電気的厚さを低減できる。さらにまた、誘電体積層構造体中の二酸化シリコンの上部層を除くことにより、キャパシタンスを増加させることができる。これらはキャパシタ構造中の積層誘電体層は、直列のキャパシタに等価であるという事実から発生する。したがって、堆積酸化物層を省くことにより、キャパシタンスが増加し、より薄い誘電体材料層の堆積が可能となり、かくして、ごく薄いフィルムの処理の危険性、二酸化シリコンのごく薄い層のトンネル現象の問題を回避できる。さらにまた、高k材料の層の上に、金属ゲート誘電体層を直接形成することにより、堆積された二酸化シリコンのバッファ層を省くことができる。
【0015】
図1に戻って、モノクリスタラインシリコンである酸化可能基板101は、その上に成長した、薄い二酸化シリコン層を有する。この層の厚さは、3−8Åのオーダーで、低圧(1Torr以下)で、650−850℃で熱成長で形成される。この二酸化シリコン層は、誘電体スタックの第1層であり、シリコン製基板のパシベーション層として用いられる。熱成長した二酸化シリコン層は、高速熱酸化により形成されるが、この酸化ステップは、低温プラズマの酸化プロセス、あるいはUV O3プロセスでも実行することができる。紫外線波長放射を用いて、オゾンを活性化することは公知である。このプラズマ酸化を用いて、成長酸化物層を形成することができる。図2は、低温プラズマプロセスと、UVオゾンプロセスの両方のプロセスパラメータを表す表である。基板は、酸化可能シリコンであるが、他の基板も用いることができる。このような基板の例には、III−V半導体と、SiGe半導体が含まれる。
【0016】
二酸化シリコン層が成長した後、高k誘電率材料層103を堆積する。一実施例においては、この高k誘電率材料層103は、MOCVD、あるいは他の技術により堆積されたTa25製である。
【0017】
ストレスフリーの二酸化シリコン層を形成する酸化/アニールステップは、650℃で0.9Torr 酸化雰囲気(例えばN2とO2)で行われ、その結果、平面上でストレスフリーのシリコン−二酸化シリコンインタフェース105が形成できる。この層の厚さは、3−5Åのオーダーであり、これは、酸化種(この場合酸素)の拡散位相から生成する。さらにまた、ストレスフリーの酸化物層の形成の詳細は、前掲の文献に開示されている。
【0018】
酸化/アニールプロセスにおいては、周囲の酸素が高k層を横切り、その結果、その下に成長酸化物層を形成する。二酸化シリコンの成長層と、シリコンの酸化可能基板101と高k誘電率材料層103との間のストレスフリーの酸化物層102により、高k誘電体層の相変化温度(phase transformation temperature )が上昇する。例えば、五酸化タンタルの場合には、結晶相変化温度は、850℃のオーダーに上昇し、これは、Ta25の結晶を回避する多くの処理ステップに対し、十分高いものである。別報として、高k誘電体層の結晶相変化をさらに増加させたい場合には、適宜のインプラント、あるいはドーパントを追加することも可能である。本発明の一実施例においては、Ta25製の高k層は、適宜のドーズ量とエネルギーで窒素を注入すること、あるいは適宜の濃度のアルミでドーピングすることもできる。これにより、相変化温度を950℃に上げることができ、これは、ソース/ドレイン活性化アニールステップに対し、十分高いものである。
【0019】
その後、ゲート電極104を誘電体材料層の上に堆積する。このゲート電極は、W、またはWxSiyのような金属を含む。しかし、他の材料も使用することができる。これらは、窒素珪化物(例えばWSixy、TaSixy、MoSixy)と、窒化金属(Ta、Ti、Moの窒化物)を含む。本発明は、例えば、WxSiy/WSixy/WxSiyの多層のゲート電極材料の仕様も含む。
【0020】
本発明の一実施例においては、ゲート電極は、ポリシリコン以外の材料製である。本明細書においては、誘電体材料層は、2.5nm以下の等価電気圧を有し、二酸化シリコン以外の、少なくとも1つの層を有するゲート誘電体層を意味する。本発明の一実施例においては、この誘電体層は、成長酸化物層であり、その下にストレスフリーの酸化物層が成長し、その上に、高k誘電体材料層を有する。この高k誘電体材料層は、0.5〜1.5nmのオーダーの等価電気圧(二酸化シリコンに対し)を有する。これは、約3.0〜6.0nmの厚さを有するTa25製の層に相当する(translates)。これは、厚さの範囲を単に示したもので、15.0nm厚のTa25の層を有することも可能である。ここで重要なことは、Ta25は、代表的な高kの代表例であり、他の材料も用いることもできる点である。特に、ZrO2、TiO2、およびペルボスカイト型の材料を用いて、本発明のごく薄い高kの高誘電率のゲート誘電体構造を構成することもできる。最後に、上記の材料および組み合わせ以外に、他の材料および組み合わせも用いることができ、これにより、25Å、あるいはそれ以下の等価電気厚さを達成する誘電体材料層を形成することができる。しかし、いずれの場合にも、選択されたゲート材料は、誘電体材料層の誘電特性に悪影響を及ぼすものであってはならない。例えば、上記したように、ポリシリコンは、高kの材料の上に直接形成してはならない。その理由は、高k層のリーク電流が増加し、誘電特性を劣化させるからである。
【0021】
本発明の高k誘電体材料の積層構造体は、高性能のアナログ、および混成信号CMOS回路を有する集積回路で使用することができる。シリコン製IC上に、アナログと混成信号CMOS回路を有することは、GaAsと、SiGeベースのデバイスに対し、製造のコスト、および複雑さの観点から際だった効果がある。等価電気厚さを低減できることは、極小化が可能となり、集積化を改善できる。スケーリングルールは、材料パラメータと構造、物理的寸法の選択に際し、当業者にとってガイドとなる。MOSデバイス物理学、およびスケーリングルールを解析することは、ポアッソンの方程式と電流密度方程式から得られる。MOSデバイスにおいては、ゲート長さを低減することは、最小化を達成するために必要なことである。ゲート長さ(LG)の低減を達成するためと、特定のアスペクト比を維持するために、酸化物厚さ(tox)を減らさなければならない。しかし、上記したように、非常に薄い二酸化シリコン層を形成することは、処理の観点から、複雑となる。さらにまた、トンネリング現象が問題であり、また、チャネルコントロールパラメータは、二酸化シリコン層が薄すぎる場合には、悪影響を及ぼす。
【0022】
上記したように、堆積により形成されたSiO2層を削除することにより、様々な利点がある。特に、等価電気厚さを低減でき、デバイスの寸法をスケーリングルールのパラメータ内で小さくできる。さらに、酸化物層の等価電気厚さを小さくできるために、ゲート長さLGも、それに比例して短くなる。LGを短くすることにより、本質的トランスコンダクタンスgmが増加する。本質的トランスコンダクタンスgmは、次式で近似できる。
【数1】

ここで、εoxは、ゲート誘電体材料の誘電率で、vsatは、飽和速度である。
【0023】
従って、本発明によれば、ゲート長さが短くなる結果、デバイスのトランスコンダクタンスが増加することになる。さらいまた、ゲート長さを減らすことにより、飽和速度が増加し、次式で与えられるカットオフ周波数ftも増加する。
【数2】

ここで、ftはカットオフ周波数である。
【0024】
最後に、Lgを低減し、vsatを増加させ、gmを増加させることにより、有効ftは増加し、不可キャパシタンスCloadの範囲にわたって、ほぼ一定となる。本発明は、toxを20Åのオーダーに、そしてLgを0.18μm以下のオーダーに、そしてカットオフ周波数を30GHz以上に、そしてアナログと混声信号CMOS回路にきわめて適したものとなる。
【0025】
[発明の効果]
本発明は、様々な範囲の集積回路に適応できる。例えば、CRAM、FLASH、アナログと混声信号CMOS回路に適応できる。本発明による、高品質のシリコン−二酸化シリコンインタフェースは、インタフェーストラップ密度を低下させ、一方、高誘電率の五酸化タンタル層が、リーク電流を押さえる。最後に、タングステン金属が、ポリシリコン製のゲート電極で発生する、ディプレーションの問題を低減する。本発明は、ゲート誘電体層の信頼性を改善し、ゲートのリークを低減し、しきい値電圧を低くし、サブしきい値特性を改善し、そして低電圧の二重ゲートへの適応性を有する。
【符号の説明】
【0026】
101 酸化可能基板
102 酸化物層
103 高k誘電率材料層
104 ゲート電極
105 シリコン−二酸化シリコンインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(101)と、
前記基板の上に形成された誘電体材料層(103)と、
前記誘電体材料層の上に形成された電極(104)と、
を有し、
前記誘電体材料層(103)は、2.5nm以下の等価電気厚さを有し、かつ二酸化シリコン以外の少なくとも1つの層を含む
ことを特徴とする集積回路。
【請求項2】
前記電極(104)は、W、WxSiy、WSixy、TaSixy、MoSixy、Ta、Ti、Moからなるグループから選択された、材料製である
ことを特徴とする請求項1記載の集積回路。
【請求項3】
前記高k誘電体材料層(103)は、Ta25、ZrO2、TiO2と、ペロボスカイト型材料からなるグループから選択された材料製である
ことを特徴とする請求項1記載の集積回路。
【請求項4】
前記高k誘電体層は、窒素がドーピングされている
ことを特徴とする請求項1記載の集積回路。
【請求項5】
基板と、
前記基板の上に形成された高k誘電体材料層と、
少なくとも1つの高k誘電体材料層と、
前記高k誘電体材料層の上に直接形成された電極と、
を有することを特徴とする集積回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−118673(P2010−118673A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−843(P2010−843)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【分割の表示】特願2000−189026(P2000−189026)の分割
【原出願日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】