電動ブレーキ装置
【課題】
電動ブレーキ装置に関わるノイズの影響を低減する。
【解決手段】
ブレーキパッドをディスクに押圧するモータ1311と、モータ1311を収納する金属製筐体1301と、バッテリ1261から電動モータ1311に電力を伝達する正極側の電力線1600aと、電動モータ1311と車両のグランドとを接続する負極側のグランド線1600bと、金属製筐体1301とバッテリ1261の負極側またはインバータの負極側を電気的に接続する導体を備える。
電動ブレーキ装置に関わるノイズの影響を低減する。
【解決手段】
ブレーキパッドをディスクに押圧するモータ1311と、モータ1311を収納する金属製筐体1301と、バッテリ1261から電動モータ1311に電力を伝達する正極側の電力線1600aと、電動モータ1311と車両のグランドとを接続する負極側のグランド線1600bと、金属製筐体1301とバッテリ1261の負極側またはインバータの負極側を電気的に接続する導体を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車などに適用される電動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の自動車などに適用されるブレーキは、単に運転者のブレーキ操作をアシストするだけではなく、安全性向上のため、運転者のブレーキ操作に関係なく衝突回避のための制動力を発生したり、車両挙動を自動的に安定させたりするための仕組みが様々考えられている。
【0003】
このように自動的に制動力を発生するために、または運転者の細かな要求を具現化するために、例えば、電動モータと、この電動モータの回転を減速させる減速機と、この減速機によって減速された回転をピストンの直線運動に変換させる回転直動変換機構と、ピストンに取り付けられた車輪とともに回転するディスクロータを押圧させるブレーキパッドとを有する電動ブレーキ装置(例えば特許文献1)を用いて、運転状態や環境状態に応じて電動モータを制御することが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−137081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電動ブレーキは、モータや当該モータを駆動する駆動回路などがノイズを放射する。そのノイズの強度によっては、車両に搭載された機器を誤動作させるおそれがある。また通信機器にあっては受信した音声の音質低下を引き起こす原因となり、画像や映像にあっては画質の低下をもたらすなどの影響が考えられる。
【0006】
こうした背景から、電動ブレーキ装置を含め、車両に搭載する電装品が許容される放射ノイズレベルは、国際規格や、自動車メーカ独自規格により規定されている。よって、電動ブレーキ装置を車両に搭載するには、これらの規格を下回る放射ノイズレベルに抑える必要がある。
【0007】
また、逆に車両に搭載された他のデバイスが、電動ブレーキに対してノイズを放射する可能性もある。
【0008】
本発明の目的は、電動ブレーキ装置に関わるノイズの影響を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
制動力を発生させる電動モータを収納する金属製筐体と、電動モータと車両のグランドとを接続する負極側の電力供給線とを電気的に接続する第1導体とを備える電動ブレーキ装置である。
【発明の効果】
【0010】
電動ブレーキ装置に関わるノイズの影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2は、本発明の一実施形態をなす電動ブレーキ装置を搭載した車両のブレーキシステムの概略構成図を示す。なお、走行のための駆動機構の説明は省略する。
【0012】
第1電動ブレーキ装置1201は、右側の前輪1211側に、車軸1221に近接して搭載される。第2電動ブレーキ装置1202は、左側の前輪1212側に、車軸1221に近接して搭載される。第3電動ブレーキ装置1203は、右側の後輪1213側に、車軸1222に近接して搭載される。第4ブレーキ装置1204は、左側の後輪1214側に、車軸1222に近接して搭載される。
【0013】
各電動ブレーキ装置1201〜1204は基本的な構造は同じであるが、前輪側に対応する第1電動ブレーキ装置1201及び第2電動ブレーキ装置1202は、後輪側に対応する第3ブレーキ装置1203及び第4電動ブレーキ1204より大きな制動力を発生するように構成されることが好ましい。
【0014】
前輪の車軸1221および後輪の車軸1222には、それぞれの車軸に固定されたディスクロータ1231〜1234が設けられる。図2では図示されていないが、各電動ブレーキ装置の機構部1241〜1244は、ディスクロータ1231〜1234の各面側に対向する一対のブレーキパッドを備える。さらに、機構部1241〜1244に備えられた電動モータは回転トルクを発生し、回転トルクに基づきブレーキパッドで各ディスクロータ1231〜1234を挟むように押圧することによって制動力を発生させる。
【0015】
各電動ブレーキ装置1201〜1204において、各電動モータを駆動するための電流を制御する電気回路部1251〜1254は、それぞれの機構部1241〜1244に固定される一体構造になっている。電気回路部1251〜1254は、車軸方向において、機構部1241〜1244に備えられたブレーキパッドとは反対側の面に取り付けられる。
【0016】
前輪側の第1電動ブレーキ装置1201および第2電動ブレーキ装置1202には、第1バッテリ1261から第1電源ライン1271を介して電力が供給される。後輪側の第3電動ブレーキ装置1203および第4電動ブレーキ装置1204には、第2バッテリ
1262から第2電源ライン1272を介して電力が供給される。
【0017】
なお、右前輪の第1電動ブレーキ装置1201および左後輪の第4電動ブレーキ装置
1204には第1バッテリ1261から電力が供給され、左前輪の第2電動ブレーキ装置1202および右後輪の第3電動ブレーキ装置1203には第2バッテリ1262から電力が供給されるようにしてもよい。電源ラインを2系統にすることで一方の電源ラインに異常が発生しても他方の電源ラインによる制動が可能で、安全性が向上する。
【0018】
図2に示した車両のブレーキシステムにおいて、ブレーキペダル1281のストロークまたはペダル踏力に関する情報は、ペダル操作量検出器1282により検出され、データ信号線1290を介して制御回路1299に入力される。制御回路1299は、例えば車室内に配置され、各電動ブレーキの電気回路部に対し、ブレーキシステムとして上位の制御処理を行う(以下「上位制御回路」と記す)。
【0019】
上位制御回路1299は、第1〜第4電動ブレーキ装置1201〜1204から、それぞれデータ信号線1291〜1294を介して、第1〜第4電動ブレーキ装置1201〜1204の状態、たとえば押し付け力の現在値、動作モード現在値の情報等を受信する。さらに電動モータの状態を監視しながら、ブレーキペダル1281のストロークまたはペダル踏力に関する情報に応じた制御信号をデータ信号線1291〜1294を介して、各電動ブレーキ装置1201〜1204に送信し、各電動ブレーキ装置1201〜1204を制御する。なお、上位制御装置1299は、車室内に配置される。
【0020】
上述のように、電動ブレーキ装置は、発生させるべきブレーキ指令を電気信号として取得し、その信号変化に応じてブレーキ力を制御できる。この電気信号は、アナログ信号や通信化された信号など、どのような形態でも実現することが可能である。
【0021】
なお、上位制御回路1299は、各電動ブレーキ装置1201〜1204をそれぞれ単独に制御したり、前輪側の第1電動ブレーキ装置1201と第2ブレーキ装置1202を一グループとするとともに後輪側の第3電動ブレーキ装置1203と第4ブレーキ装置
1204を他のグループとして各グループを制御したり、あるいは、前輪側の第1電動ブレーキ装置1201と後輪側の第4電動ブレーキ装置1204を一グループとするとともに前輪側の第2電動ブレーキ装置1202と後輪側の第3電動ブレーキ装置1203を他のグループとして各グループを制御したりしてもよい。グループ分けして制御することで、制御の応答性の改善,制御回路の処理負荷低減,フェールセーフの処理機能の増大といった効果が得られる。
【0022】
このような構成からなる自動車の電動ブレーキ装置1201〜1204は、たとえばサスペンション等を介することなく車体に直接取り付けられることから振動による影響を受けやすく、また、雨天時の走行によって水分が内部に侵入し易いという環境下で使用されることになる。
【0023】
また、この実施例において電動ブレーキ装置1201〜1204は、上述したように機構部1241〜1244に制御回路を含む電気回路部1251〜1254が一体化して構成され、該制御回路には多数の半導体装置が備えられている。半導体装置は熱によって特性が変化する性質を有することから、車輪と共に回転するディスクロータ1231〜1232に対する機構部1241〜1244内のブレーキパッドの押圧によって発生する高熱の摩擦熱が該電気回路部1251〜1254へ伝導されるのを極力抑制させる必要が生じ、また、半導体装置がそれ自体で発生する熱においても効率よく放散させる必要が生じる。
【0024】
図3は、図2の電動ブレーキ装置の概念図を示す。以下、第1電動ブレーキ装置1201を代表例として、電動ブレーキ装置を説明する。
【0025】
電動ブレーキ装置1201は、互いに対向して配置される一対のブレーキパッド1306,1307を備える。車軸の回転に伴って回転するディスクロータ1231の一部が各ブレーキパッド1306,1307の間に配置される。
【0026】
電動ブレーキ装置1201は、機構部1241と電気回路部1251とが互いに一体化されて構成される。
【0027】
機構部1241と電気回路部1251は領域的に別個であるため、該機構部1241と電気回路部1251を構造的に分離させることも可能である。
【0028】
機構部1241は、筐体1301内に、たとえば三相モータからなる電動モータ1311と、電動モータ1311の回転を減速する減速機1321と、減速機1321によって減速された電動モータ1311の回転運動を直線運動に変換してピストン1331を進退動させる回転直動機構1326を備える。
【0029】
ブレーキパッド1307は、ピストン1331に取り付けられ、ピストン1331の推力によりディスクロータ1231を一方の面側から押圧する。この際に、ディスクロータ1231の一方の面側からの押圧力を反力として電動ブレーキ装置1201が図中矢印α方向に移動することにより、ブレーキパッド1306がディスクロータ1231を他方の面側から押圧する。
【0030】
機構部1241は、パーキングブレーキ(PKB)機構1341を備える。パーキングブレーキ機構1341は、ピストン1331がディスクロータ1231に推力を供給している状態のまま電動モータ1311の回転を止めることにより、電動モータ1311に電力を供給することなく、制動力を保持することができる。
【0031】
電動モータ1311の近傍には、電動モータ1311の回転角を検出する回転角検出センサ1351,電動モータ1311の駆動によって生じる推力を検出する推力センサ1353、及び電動モータ1311の温度を検出するモータ温度センサ1355が配置される。回転角検出センサ1351,推力センサ1353、及びモータ温度センサ1355の出力信号は、電気回路部1251内に配置される下位制御回路1399に出力される。
【0032】
電気回路部1251は、車体側に配置されるバッテリ1261から電力供給を受ける。また、エンジンコントロールユニット1381,ATコントロールユニット1383,ペダル操作量検出器1282等が接続されたCAN(Control Area Network)を介して、あるいは該LANから上位制御回路1299を介して、種々の制御信号を取得する。
【0033】
電気回路部1251は、インバータ回路1391及び下位制御装置1399を備える。インバータ回路1391は、電動モータ1311に印加する電圧を制御するための回路である。下位制御回路1399は、CAN経由により制御信号を取得し、さらに機構部1241側からの回転角検出センサ1351,推力センサ1353、及びモータ温度センサ1355等の出力情報信号を取得し、これらの信号に基づいてインバータ回路1391を制御する。
【0034】
電動モータ1311は、インバータ回路1391からの出力を取得し、ピストン1331に所定の推力を発生させるように回転トルクを発生する。なお、図中符号1395は車両側の構造物を示している。
【0035】
図4は、図3の電気回路部1251の回路構成図を示す。
【0036】
図中太線枠1251は図3に示された電気回路部1251に相当し、さらに一点鎖線枠1391は図3に示されたインバータ回路1391に相当する。図中点線枠1503は、機構部1241内の回路に相当する。
【0037】
図4に示された機構部1241内回路及び電気回路部は、図示されていないが、金属製の筐体で被われているため、飛び石等の外的傷害の要因から保護される。また、伝熱性の高い金属製の筐体を用いることにより、各回路等から発生する熱の放熱を図ることができる。さらに、遮蔽性の高い金属製の筐体を用いることにより、電磁波等に対するシールド効果を備える。
【0038】
機構部1503においても、飛び石等の外的傷害の要因から保護と、モータが発生するノイズと電磁波等に対するシールド効果とを備えるため金属筐体であり、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体の接続点または面は電気的導通するように接続する。このとき、グランドとそれぞれの金属筐体間の電位差を測定し、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体を測定した電位差が同じであることが好ましい。電位差が異なると、金属筐体をノイズが伝導する場合、電位差が異なる不連続点または面でノイズの反射を生じ、電位差が異なる不連続点または面から該電動ブレーキ装置外へノイズを放射する。
【0039】
電気回路部1251の回路において、車両内の電源ラインを介して供給される電力が、電源回路1511に供給される。電源回路1511により安定化された電力(Vcc,
Vdd)は、中央制御回路(CPU)1599に供給される。なお、電源回路1511からの電源(Vcc)は、VCC高電圧検知回路1513によって検知される。VCC高電圧検知回路1513が高電圧を検知した場合には、フェールセーフ回路1515を動作させる。
【0040】
フェールセーフ回路1515は、後述の三相モータインバータ1517に供給する電力をスイッチングするリレー1519を動作させる。VCC高電圧検知回路1513によって高電圧が検知された場合、電力の供給をOFF状態にする。
【0041】
フィルタ回路1521は、リレー1519を介して電気回路部1251内に供給される電力のノイズを除去し、ノイズが除去された電力を三相モータインバータ1517に供給する。
【0042】
中央制御回路1599は、上位制御回路1299からの制御信号を、CAN通信インターフェース回路1523を介して取得し、また機構部1241側に配置された推力センサ1353,回転角検出センサ1351及びモータ温度センサ1355からの出力信号を、それぞれ、推力センサインターフェース回路1525、回転角検出センサインターフェース回路1527及びモータ温度センサインターフェース回路1529を介して取得する。現時点における電動モータ1311の状況等に関する情報を取得し、上位制御回路1299からの制御信号に基づきフィードバック制御をすることにより、電動モータ1311に適切な回転トルクを発生させる。すなわち、中央制御回路1599は、上位制御回路1299からの制御信号及び各センサの検出値に基づいて、三相モータプリドライバ回路1531に適切な信号を出力させる。
【0043】
三相モータインバータ1517には、相電流モニタ回路1533および相電圧モニタ回路1535が具備される。相電流モニタ回路1533および相電圧モニタ回路1535は、それぞれ相電流および相電圧を監視し、監視結果を中央制御回路1599に出力する。中央制御回路1599は、監視結果に応じて、三相モータプリドライバ回路1531を適切に動作させる。
【0044】
なお、三相モータインバータ1517は、電動モータ1311を駆動させる電流および電圧を制御することから、出力が比較的大きな半導体装置を内蔵する。このため、半導体装置の動作によって高熱が発生することになるが、後に詳述する構成によってその対策がなされる。
【0045】
また、中央制御回路1599は、上位制御回路1299からの制御信号、および各センサの検出値等に基づいて、パーキングブレーキ(以下、PKB)ソレノイドドライバ回路1537を介して、機構部1241内のPKBソレノイド1342を動作させ、パーキングブレーキを作用させる。PKBソレノイドドライバ回路1537は、三相モータインバータ1517に供給される電源が供給される。
【0046】
また、電気回路部1251は、中央制御回路1599との間で信号の送受がなされる監視用制御回路1539、たとえば故障情報等が格納されたEEPROMからなる記憶回路1541を備える。
【0047】
電気回路部1251は、機構部1241との間での結線は多いが、機構部1241以外の回路(バッテリ1261,上位制御装置1299)との間の結線は極めて少ない。これにより、機構部1241と電気回路部1251との一体構造からなる電動ブレーキ装置
1201の製造工程において、機構部1241と電気回路部1251との間の複雑な結線を行い、電動ブレーキ装置1201が完成した後に、電動ブレーキ装置1201を車体に取り付ける際には、バッテリ1261あるいは上位制御装置1299との間の結線を極めて容易に行うことができる。
【0048】
次に、図5〜図11にかけて、本実施形態の具体的なハードウェア構成を詳細に説明する。
【0049】
図5は、図3の電気回路部1251の各構成部材の分解斜視図を示す。
【0050】
I/Fモジュール200は、機構部1241の筐体に取り付けられ、機構部1241側に配置された端子(図示せず)と電気回路部1251の端子と電気的に接続するための中継機能を有する配線基板である。また、I/Fモジュール200の素材は合成樹脂であるため、ブレーキパッド部からの熱の伝達が極力少なくすることができる。
【0051】
さらに、I/Fモジュール200は、機構部1241の側に配置された端子を貫通させるための開口部を有する。この開口部は、電気回路部1251と前記機構部1241の内部空間を、I/Fモジュール200を介して同一空間とする連通穴としての機能を有する。
【0052】
シール202は、I/Fモジュール200の機構部1241側の面の周辺に、I/Fモジュール200の中央部を囲むように配置する。I/Fモジュール200は、シール202を介して機構部1241の筐体に取り付けられるため、機構部1241とI/Fモジュール200との間からの水分や異物等の浸入を阻止することができる。
【0053】
インナーケース300は、I/Fモジュール200に取り付けられる。また、インナーケース300の素材は合成樹脂であるため、ブレーキパッド部からの熱の伝達が極力少なくすることができる。インナーケース300は、シール302を介してI/Fモジュール200に取り付けられるため、インナーケース300とI/Fモジュール200との間からの水分や異物等の浸入を阻止することができる。
【0054】
インナーケース300は、後述する電子部品を搭載する基板としての機能を有する。インナーケース300のI/Fモジュール200の側の面には、アルミ製の金属板402および制御回路基板404が、順次搭載される。アルミ製の金属板402により、捻り等による制御回路基板404の損傷を回避することができる。
【0055】
インナーケース300とI/Fモジュール200とが互いに対向する面には、シール
302を含む周辺部を除く部分に凹陥部(図示せず)が形成される。この凹陥部内に、金属板402および制御回路基板404は配置される。
【0056】
壁部305は、インナーケース300のI/Fモジュール200と反対側の面において、その面の領域をおよそ二分割した一方の領域を囲むように形成される。壁部305の内部の領域には、比較的大型の電子部品406、たとえばコンデンサあるいはリアクタンス等が搭載される(以下、電子搭載領域)。他方の領域には、領域の一部に比較的面積の大きな透孔306が形成される。透孔306の内部には、パワーモジュール408が配置される。
【0057】
パワーモジュール408は、図5に示された三相モータインバータ回路118,相電流モニタ回路134、および相電圧モニタ回路136をモールド化したものである。
【0058】
さらに、インナーケース300のI/Fモジュール200と反対側の面には、アウターケース500が取り付けられる。アウターケース500は、開口部504を備える。この開口部504により、インナーケース300の電子部品搭載領域316が外部から目視されるようになり、作業性が向上する。さらに、アウターケース500は、インナーケース300の周側面,壁部305の周側面,透孔306,透孔306の周辺をそれぞれ被うように取り付けられる。アウターケース500は、金属製、たとえば表面にアルマイト処理がなされたアルミ合金等であり、また電気回路部1251の外周面の大部分を被うため、外部の衝撃から回路を保護する。
【0059】
アウターケース500のインナーケース300側の面であって、透孔306および透孔306の周囲に対向する部分には、シール502が透孔306を囲むように配置される。シール502は、開口部504から透孔306を通して、インナーケース300のI/Fモジュール200側の面に水分が侵入するのを防止する。
【0060】
電動ブレーキ装置の外部側から電源あるいは制御信号等を供給するハーネス600は、ハーネスストッパ602によって、アウターケース500に固定される。ハーネス600内の各配線(図示せず)は、インナーケース300の壁部305に形成される透孔(図示せず)を通して、壁部305内の電子部品搭載領域316に導かれる。
【0061】
I/Fモジュール200,インナーケース300,アウターケース500は、それぞれの四隅に形成されたねじ孔に、アウターケース500側から挿入されるボルト700a,700b(図示せず),700c,700dを挿入することよって一体化され、かつ機構部1241に取り付けられる。
【0062】
カバー800は、アウターケース500の開口部504を被うように、アウターケース500にねじ止めされる。カバー800の素材は、金属、たとえばアルミ合金である。
【0063】
図6は、図5のアウターケース500の詳細な構成図を示す。また、図6(a)は、インナーケース300と対向して配置される側の面(内側面)から観た斜視図であり、図6(b)は、インナーケース300と対向して配置される側と反対側の面(外側面)から観た斜視図である。
【0064】
アウターケース500の外輪郭は、インナーケース300の外輪郭とほぼ同様の形状である。大径孔512a,512b,512c,512dが、アウターケース500のそれぞれの四隅に形成される。この大径孔に前述のボルト700a,700b,700c,
700dが挿入され、電気回路1251を機構部1241に固定させる。
【0065】
図6(a)に示されるアウターケース500の内側面の開口部504を除く面には、略矩形状の溝502aが形成される。溝502aには、前述のシール502(図示せず)が埋め込まれる。
【0066】
溝502aで囲まれる領域内には、後述のパワーモジュール408を固定させるためのねじ孔510a,510bが形成される。
【0067】
ねじ孔511a,511bは、前述のねじ孔510a,510bのそれぞれ近接するように形成される。前述の溝502aは、ねじ孔511a,511bを溝502aで囲まれる領域内に位置づけるため、ねじ孔511a,511bの個所で迂回するようにて形成される。ねじ孔511a,511bは、図7にて後述されるねじ孔310a,310bと同軸配置される。さらに、図8にて後述されるねじ320a,320bによって、アウターケース500は、インナーケース300に固定される。
【0068】
図6(b)に示される突出体508が、アウターケース500の外面に形成される。このため、アウターケース500の外気と触れる表面積の増大し、放熱効果を増大させることができる。
【0069】
壁部505は、インナーケース300の壁部305の外方に、壁部305と当接して形成され、インナーケース300の壁部305とともに電子部品搭載領域316の外枠となる。このため、電子部品搭載領域316の外枠の機械的強度が向上する。
【0070】
上端面が連結されるブリッジ505aが、壁部505に形成される。さらに、開口部
505bが、ブリッジ505aに形成される。アウターケース500をインナーケース
300に組み込んだ場合、図7にて後述されるインナーケース300の突壁部305aが、開口部505bに位置づけられる。さらに、ブリッジ505aが、該突壁部305aの周側面を被う。
【0071】
開口部504を塞ぐカバー800をねじ止めするためのねじ孔512a,512b,
512cが、壁部505の周囲の一部に形成される。
【0072】
図6(b)に示されるように、後述されるハーネス600を固定するハーネス固定部
506は、アウターケース500の外側面に形成される。また、突出した台部の中央に開口部504側に指向する方向に溝506aが形成される。ハーネス固定部506は、後述されるハーネスストッパ602により、ハーネス600を挟んで固定する。また、ハーネス固定部506には、溝506aの両脇に、ハーネスストッパ602を固定させるためのねじ孔507a,507bが形成される。
【0073】
図7は、図5のインナーケース300の構成図を示す。図7(a)は、インナーケース300のI/Fモジュール200と対向する側の面(内側面)から観た斜視図である。図7(b)は、内側面と反対側の面(外側面)から観た斜視図であり、内部に埋設された配線も示される。
【0074】
インナーケース300は、後述する電子部品を搭載する基板としての機能を有する。インナーケース300は、合成樹脂製であり、機構部1241からの熱の伝達を抑制することができる。
【0075】
図7(a)に示されるように、インナーケース300の外輪郭は、I/Fモジュール
200の外輪郭とほぼ同様の形状である。また、大径孔304a,304b,304c,304dは、インナーケース300の四隅のそれぞれに形成される。大径孔304a,
304b,304c,304dにボルト700a,700b,700c,700dを挿入することによって、インナーケース300を含む電気回路部1251は、機構部1241に固定される。孔308a,308bには、I/Fモジュール200に形成された突注体208a,208bが挿入される。
【0076】
矩形状の比較的大きな透孔306は、インナーケース300の中央部から若干ずれた位置に形成される。後述のパワーモジュール408が、透孔306に配置される。
【0077】
端子312a,312bは、透孔306の各周辺のうち対辺関係にある二辺に並設され、パワーモジュール408から突出して形成されている電極(端子)と溶接によって接続される。端子314は、電子部品搭載領域316の裏面側に形成される。小型の電子部品が、端子314付近に配置され、この電子部品の電極と端子314とが接続される。
【0078】
透孔306の周辺において、端子312a,312bが並設された部分を除いた残りの対辺関係にある各二辺の付近に、透孔310a,310bが形成される。透孔310a,310bは、アウターケース500に、インナーケース300及びパワーモジュール408を固定させる際のねじ孔となる。
【0079】
インナーケース300をI/Fモジュール200と対向させて定位置に配置させた場合、端子孔群318にはI/Fモジュール200に形成された二股端子210がそれぞれ挿入され、また端子孔群320には、二股端子212がそれぞれ挿入される。これら端子孔は、各二股端子210,212の二股部に当接される端子を内蔵する。
【0080】
図7(b)に示されるように、インナーケース300の外側面には、前述された透孔
306と電子部品搭載領域316が設けられる。電子部品搭載領域316は、壁部305によって囲まれるように形成される。電子部品搭載領域316に形成された凹陥部322は、コンデンサ等の電子部品を搭載し、この凹陥部322の形状は、コンデンサ等の電子部品の形状に合わせられる。凹陥部322の近傍には、端子324が植設される。端子
324は、前述の電子部品の電極と接続される。このため、各電子部品をその定位置に配置され、インナーケース300に埋設された配線層と誤りなく電気的に接続させることができる。インナーケース300に埋設された配線層は、信号の送受を行う比較的線幅の小さい配線層(通信系バス)と、高電圧となる電源が供給される線幅の大きな配線層(パワー系バス)とからなる。
【0081】
大径孔304a,304b,304c,304dが形成されるインナーケース300の周辺部と、この周辺部から若干内側に及んだ中央部との間には、段差部310が形成され、中央部に凹陥部が形成される。この凹陥部には、後述の制御回路基板404等が配置され、また、インナーケース300とI/Fモジュール200との間に空気層が形成される。この空気層により、機構部1241から電子部品への熱伝達を抑制することができる。
【0082】
溝302aは、大径孔304a,304b,304c,304dを外側に配置するように、かつインナーケース300の中央部を囲むように、形成される。この溝302aには、前述のシール302(図示せず)が組み込まれる。このため、インナーケース300とI/Fモジュール200との間の空気層に、水分や異物等の浸入することを防止することができる。
【0083】
透孔326a,326bには、インナーケース300をI/Fモジュール200と対向させて定位置に配置させた場合、I/Fモジュール200に形成された端子214a,
214bが挿入される。そして、端子214a,214bの先端は、透孔326a,326bを通してインナーケース300の外側面(電子部品搭載領域316)に突出する。
【0084】
また、透孔326a,326bの大きさは、挿入される端子214a,214bよりも大きく形成される。そのため、電動ブレーキ内の空気が、透孔326a,326bを介して、充分に対流することができる。したがって、電動ブレーキ装置内の局所的な気圧変動を抑え、シール等の密閉機能の低下を抑制することができる(気圧調整機能)。
【0085】
壁部305の肉厚を大きくした突壁部305aは、前記透孔306と対向する壁部305に形成される。突壁部305aには、透孔305bが、透孔306側から電子部品搭載領域316側へ貫通するように形成される。この肉厚となっている突壁部305aに、後述するハーネス600の先端に取り付けられたフランジ606を固定することより、ハーネス600の先端部が、強固に固定される。そして、ハーネス600内の各配線は、透孔
305bを通して、電子部品搭載領域316に導かれる。
【0086】
図8は、図5のインナーケース300へパワーモジュール408,金属板402、および制御回路基板404を取り付ける際の工程を示す。
【0087】
まず、図8(a)に示すように、後述されるハーネス600を取り付けた電子部品搭載基板900の内側面には、電子部品328a〜328dよりも比較的小型の電子部品328e,328fが搭載される。さらに、電子部品搭載基板900の内側面の前記透孔306の部分には、パワーモジュール408が配置される。パワーモジュール408は、ねじ孔
(図示せず)を備え、ねじ410a,410bは、このねじ孔を通してアウターケース
500に形成されているねじ孔510a,510b(図示せず)に螺入し、パワーモジュール408を固定する。
【0088】
なお、パワーモジュール408を搭載する前のインナーケース300の裏面は、アウターケース500によって閉塞されたインナーケース300の透孔306が凹陥部として形成され、この凹陥部にパワーモジュール408が収納される。この場合、凹陥部の底面は金属で形成されたアウターケース500の一部であり、パワーモジュール408はこのアウターケース500に接触するようにして配置される。このため、パワーモジュール408の発生熱がアウターケース500を介して放熱され、制動力制御の信頼性が向上する。さらに、図示されていないが、アウターケース500とパワーモジュール408との間には、放熱グリスあるいは放熱シートが介在され、パワーモジュール408からアウターケース500への熱伝達の効率向上を図るようにしてもよい。
【0089】
また、パワーモジュール408は、その側面にパワーモジュール408の電極となる端子を備える。パワーモジュール408がインナーケース300上の定位置に配置されると、パワーモジュール408の端子は、インナーケース300の端子312a,312bと接触する。パワーモジュール408の端子とインナーケース300の端子は、たとえば溶接によって互いに電気的に接続される。なお、パワーモジュール408の端子とインナーケース300の端子の先端部は、略90度折り曲げられ、その折り曲げられた先端部の面同士が接触する。そのため、インナーケース300の内側面からの溶接作業が容易になり、組立作業性が向上する。
【0090】
次に、図8(b)に示すように、絶縁シート400が、パワーモジュール408の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される。これにより、パワーモジュール408の各端子部と、次に説明する金属板402との電気的な絶縁を図る。絶縁シート400の材料は、たとえばポリイミド樹脂が用いられるため、パワーモジュール408の各端子部と金属板402との間は150℃以上の耐熱性を有し、かつ200kV/mmの絶縁性を有する。
【0091】
なお、絶縁シート400は、パワーモジュール408の端子部を被うようして延在され、パワーモジュール408の上面に接着されている。また、絶縁シート400は、パワーモジュール408をアウターケース500に固定させたねじ410a,410bの頭部を被うことなく、ねじ410a,410bの頭部を回避させた切り欠き400aを有するパターンとして形成される。
【0092】
次に、図8(c)に示すように、たとえばアルミプレートからなる金属板402が、絶縁シート400の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される。これにより、金属板402の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される制御回路基板404を機械的に補強させることができる。さらに、制御回路基板404の発生熱を効率的に放熱することができる。
【0093】
また、金属板402は、パワーモジュール408および絶縁シート400を充分に被う大きさである。そして、金属板402に形成された透孔408a,408bは、パワーモジュール408のアウターケース500への固定用のねじ410a,410bの頭部を、この透孔408a,408bから突出させることなく、かつ露出させている。これにより、金属板402を絶縁シート400に密着させて配置でき、かつ、金属板402の上面に後述の制御回路基板404を密着させて配置させることができため、電動ブレーキ装置の小型化に寄与する。
【0094】
さらに、金属板402は、後述の制御回路基板404と対向する面において、パターン化された凹部402dが形成される。一方、制御回路基板404は、金属板402と対向する面において、たとえば検査チェック用の端子(図示せず)が露出している場合がある。凹部402dは、検査チェック用の端子が凹部402dの形成領域内に対向するように形成され、検査チェック用の端子と金属板402との直接の接触を回避させる。このため、検査チェック用の各端子が金属板402と電気的に接続されるのを防止するとともに、電動ブレーキ装置の小型化に寄与する。さらに、凹部402dは、金属板402の上面に制御回路基板404を接着材を用いて接着させる場合、この接着剤の逃しの機能をも有する。
【0095】
そして、図8(d)に示すように、制御回路基板404が、金属板402の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される。制御回路基板404は、その基板がたとえばセラミックで形成され、その上面(金属板402と反対側の面)には、比較的大きな電子部品328gが搭載される。制御回路基板404の基板がセラミックであることにより、制御回路基板の耐熱性及び耐振動性が向上する。また、制御回路基板404は金属板404の上面に配置されることから、何らかの原因、たとえばピストン1331からの過大な反力によって、たとえばインナーケース300等に歪みが生じた場合でも、制御回路基板
404の破損を防止することができる。
【0096】
制御回路基板404には、各電子部品414が搭載され、また配線層412a〜412cが基板表面にあるいは基板内に埋設される。この配線層と接続される端子340a〜340cが、制御回路基板404の周辺の一部に並列されて形成される。これら対応する端子間、たとえば端子340aと端子412aは、アルミニウムからなるワイヤのボンディングによって互いに電気的に接続される。
【0097】
そして、制御回路基板404の電子部品が搭載された側に、ゲル状の部材(図示しない)が塗布される。これにより、制御回路基板404の電子部品414やワイヤボンディングを塵や結露等から保護することができ、さらに振動の伝達を緩和させることもできる。
【0098】
図9は、本実施形態で使用されるハーネス600の詳細図を示す。
【0099】
電力線1600aは、電動ブレーキ装置に搭載された電動アクチュエータを動作させるための電力を供給する。電動ブレーキ装置を接地するグランド線1600bは、電力線
1600aと対になる。電力線用被覆部材1606は、電力線1600a及びグランド線1600bを被覆し、電力線1600aを外部からの衝撃から保護する。
【0100】
信号線1601a〜1601dは、ブレーキペダルの踏込量等に応じた推力指令信号や、電動ブレーキ装置の起動終了命令信号等を伝送する。
【0101】
通信線用被覆部材1605は、通信線1601a〜1601dを被覆し、通信線を外部からの衝撃から保護する。さらに、シールド材により、通信線用被覆部材1605を覆うことにより、通信線1601a〜1601dからのラジオノイズの放射を低減してもよい。空気連通部材1603は、空気を通すことができる部材である。ハーネス600の両端部に露出された空気連通部材1603の気圧差が、所定値以上となったときに、気圧が高いハーネス600の端部から、気圧が低いハーネス600の端部へ空気が流れる。このため、ハーネス600によって繋がれた両空間の気圧差は、所定範囲内に抑えられる。なお、空気連通部材1603の素材は、高分子化合物、例えば植物や科学的プロセスによって製造される繊維材料が適している。
【0102】
シールド材1604は、ノイズの放射を防止するために空気連通部材1603の外側を覆う。車体と電動ブレーキ装置とを繋ぐハーネス600は、ばね下という振動が多い環境で使用され、また車体に固定されるために厳しい屈曲性が要求される。シールド材1604に金属製の細線を編んだシート状のものを使用することにより、ハーネス600の耐振動性及び屈曲性を向上させることができる。
【0103】
被覆部材1602は、シールド材1604外側を覆い、外部の衝撃による、シールド材の破損や、通信線及び電源線の断線を防止する。被覆部材1602の素材は、防水機能さらに屈曲性に優れた高分子化合物が使用される。
【0104】
図10は、図9にて説明した電子部品搭載基板900にハーネス600を取り付ける際の工程を示す。
【0105】
図10(a)は、電子部品搭載基板900の外側面を示す。の電子部品搭載基板900は、インナーケース300に形成された突壁部305aに、透孔305bの周囲を囲むようにしてリング状のシール305sが備えつけられる。
【0106】
図10(b)は、ハーネス600が定位置に配置された電子部品搭載基板900を示す。フランジ606は、ハーネス600を挿入する透孔(図示せず)と、この透孔を間にして形成されるねじ孔610c,610を備える。ハーネス600を挿入する透孔は突壁部305aに備えられた透孔305bと、ねじ孔610c,610dは突壁部305aに備えられたねじ孔305c,305と対応させ、それぞれの中心軸を一致させる。
【0107】
なお、ハーネス600は、フランジ606の端部から若干離間した個所において、ハーネス固定部506の溝506a内に配置される。この溝506aにより、ハーネス600の長手方向に交叉する方向の移動が規制される。
【0108】
次に、図10(c)に示すように、ハーネス600のフランジ606は、ボルト614c,614dにより突壁部305aに固定される。この際、ハーネス600のフランジ606は、シール305sを介して突壁部305aに密着される。このため、水分が突壁部305aとフランジ606の界面を通して壁部305の内部の電子部品搭載領域316に浸透するのを防止できる。
【0109】
さらに、図10(c)に示すように、ハーネスストッパ602が、ハーネス固定部506の上方にハーネス600を挟持するように載置される。
【0110】
ハーネスストッパ602の挟持部の形状は、ハーネス600に形状に合わせるように、たとえば半円筒状である。また、ハーネス600を間にした各両端部には、ねじ孔610a,610bが形成される。
【0111】
次に、図10(d)に示すように、ハーネスストッパ602は、ボルト612a,612bによりハーネス固定部506に固定される。ボルト612a,612bは、ハーネスストッパ602のねじ孔610a,610bからハーネス固定部506の対応するねじ孔に螺入されて固定される。このため、ハーネス600は、ハーネス固定部506とハーネスストッパ602との間に挟持され、この挟持による押圧力によって、その軸方向の移動が規制される。
【0112】
なお、アウターケース500に取り付けられるハーネス600の装置本体からの引き出しは、制動時の電動ブレーキ装置の移動におけるその方向に対して、一旦は直角方向に延在され、その後は自由な方向に延在される。そのため、制動時の電動ブレーキ装置の移動にあって、ハーネス600に常時遊びを有するようにハーネス600の引き回しを行うことができる。したがって、ハーネス600の緊張状態にともなう断線を防止することができる。
【0113】
そして、図10(e)に示すように、ハーネス600から電子部品搭載領域316に引き出された各配線608が、各端子324に、たとえば溶接により接続される。各端子
324は、インナーケース300に植設された配線層を接続され、電子部品搭載領域316の表面に突出して形成される。
【0114】
なお、フランジ600に替えて、電動ブレーキ装置と着脱自在なコネクタを用いるようにしてもよい。電子部品搭載基板900側のコネクタは、電子部品搭載領域316付近、たとえば壁部305に設置され、電子部品搭載領域316内の電子部品328a〜328dと導線等により電気的に接続される。そして、ハーネス600側のコネクタが、前述の電子部品搭載基板900側のコネクタに嵌合され、電気的に接続される。
【0115】
図11は、図3の電動ブレーキ装置の具体的な内部構成の断面図を示す。
【0116】
図11中の線分X−Xは、機構部1241と電気回路部1251の境界を示し、線分X−Xの図中左側は機構部1241を、図中右側は電気回路部1251を示す。
【0117】
機構部1241と電気回路部1251は、それぞれ金属製の筐体で覆われており、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体の接続点(面)は電気的導通するように接続する。このとき、グランドとそれぞれの金属筐体間の電位差を測定し、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体を測定した電位差が同じであることが好ましい。電位差が異なると、金属筐体をノイズが伝導する場合、電位差が異なる不連続点(面)でノイズの反射を生じ、電位差が異なる不連続点(面)から該電動ブレーキ装置外へノイズを放射する。
【0118】
太線枠1341内は図3に示されたパーキングブレーキ機構1341に相当し、太線枠1321内は図3に示された減速機1321に相当し、太線枠1326内は回転直動変換機構1326に相当する。図1において、図3において付した符号と同一の符号の部分は、図3で示した部材と同一の部材を示す。
【0119】
電動モータ1311は、ブラシレスの三相モータであり、筐体1301に固定されたステータと、このステータ内に配置されたロータとを備える。
【0120】
電動モータ1311は、上位制御装置1299からの指令に応じてロータを所望トルクで所望角度だけ回転させるように作動する。ロータの回転角は、回転角度センサ1351によって検出される。回転角度センサ1351は、減速機1321と電動モータ1311との間に設置される(ロータとステータの場所に確認)。
【0121】
減速機1321は、電動モータ1311の回転を減速し、電動モータ1311のトルクを増大させる。そのため、電動モータ1311は小型のものを用いることができる。
【0122】
スラストプレート1421は、機構部1241内の電気回路部1251側に配置され、ピストン1331の推力を反力として受ける機能を有する。推力センサ1353が、スラストプレート1241の中央部に配置される。
【0123】
さらに、スラストプレート1421は、機構部1241の筐体1301の端面(図中線分X−Xの部分)に対して、ブレーキパッド部側へ若干奥まった箇所に配置される。筐体1301を除いた機構部1241の構成部材と電気回路部1251との間には、隙間(空間)が形成される。一方、推力センサ1353は、筐体1301の端面(図中線分X−Xの部分)を越えて電気回路部1251側に若干突出する。しかしながら、電気回路部1251に備えられたインターフェースモジュール(以下、I/Fモジュール)200は、推力センサ1353との干渉を回避するように凹陥部が形成される。
【0124】
筐体1301を含む機構部1241の各構成部材の大部分は、金属製であるため、熱の伝導効率が高い。そのため、ブレーキパッド部(ブレーキパッド1306,1307およびその周辺部)からの熱は、周辺の機構部1241に伝達され、筐体1301を介して外部へ放熱され易い。
【0125】
また、電気回路部1251は、機構部1241を間にして、ブレーキパッド部と反対側の面に形成されるため、電気回路部1251へ熱の伝達が極力少なくなる。さらに、機構部1241の構成部材と電気回路部1251との間には、上述した隙間(空間)が形成されるため、機構部1241から電気回路部1251への熱の伝導をさらに少なくなる。
【0126】
さて、図2における電動ブレーキ装置1201〜1204が放射するノイズは、制動時、すなわちモータ動作時に増大する。発生したノイズは、発生するノイズの強度により、該電動ブレーキ装置を搭載する車両に搭載されている機器を誤動作させる可能性が有る。また、通信機器にあっては受信した音声の音質低下を引き起こす原因となり、画像や映像にあっては画質の低下をもたらす。こうした背景から、電動ブレーキ装置を含め、車両に搭載する電装品が許容される放射ノイズレベルは、国際規格や、自動車メーカ独自規格により規定されている。よって、該電動ブレーキ装置を車両に搭載するには、これらの規格を下回る放射ノイズレベルに抑えなくてはならない。
【0127】
そこで、ノイズ対策として図3における機構部1241を覆う筐体と電気回路部1251を覆う筐体とを、接続点または面で電気的に導通し、電気回路部内で、ハーネスのシールドを介してグランドに接続する。また、ノイズを含む交流成分に対しては、電気回路部の電源とグランド間にコモンモードコンデンサ実装する。
【0128】
また、図4で説明した通り、機構部1241内回路及び電気回路部は遮蔽性の高い金属製の筐体で被われているため、電磁波等に対するシールド効果を備える。また、図3の機構部1241においても、モータが発生するノイズと電磁波等に対するシールド効果とを備えるため金属筐体で被われており、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体の接続点または面は電気的導通するように接続する。機構部1241を覆う筐体と電気回路部1251を覆う筐体とは、例えば図5のボルト700a,700b,700c,700dによって、図12に示すように接続する。このとき、グランドとそれぞれの金属筐体間の電位差を測定し、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体を測定した電位差が同じであることが好ましい。電位差が異なると、金属筐体をノイズが伝導する場合、電位差が異なる不連続点または面でノイズの反射を生じ、電位差が異なる不連続点または面から該電動ブレーキ装置外へノイズを放射する。
【0129】
図1は、図2の実施形態における電動ブレーキ装置の回路構成図を示す。
【0130】
バッテリ1261は、電動ブレーキ装置や他の車載電装品に電力を供給する。図4に示したように中央制御回路1599は、車体側に設置された上位制御装置1299から送信される要求推力指令信号と、電動ブレーキ装置に内蔵されたセンサの出力信号を処理し、電動ブレーキ装置が要求推力指令に応じた推力を発生するように、PWM信号を三相モータプリドライバ1531に出力する。三相モータプリドライバ1531は、中央制御回路
1599からのPWM信号の電圧レベルを変化させ、三相モータインバータ1517に出力する。三相モータインバータ1517は、三相モータプリドライバ1531からのPWM信号に応じて、内蔵されたトランジスタをスイッチングして、モータ1311に印加される電圧を制御し、モータ1311への通電電流を制御する。モータ1311は、通電電流に応じて、回転トルクを発生させる。
【0131】
このような電気回路部1251から放射される主なノイズは、モータにおける磁界と電界の変化によるものと、三相モータインバータ1517のトランジスタのオンオフ時におけるスイッチングによるものがある。また、中央制御回路1599が出力するPWM信号と三相モータプリドライバ1531が出力するPWM信号によってもノイズが発生する。さらに、制御基板上に設置されたCPU動作用クロックや、中央制御回路1599が出力するCPU駆動監視用信号によってもノイズは発生する。
【0132】
車載電装品が発生するノイズは、電源線を介して、電動ブレーキ装置や他の電装品へ伝わる。また、電動ブレーキ装置のバックアップ用電源としてオルタネータを用いる場合があり、オルタネータが発生するノイズは、電源線を介して電動ブレーキ装置に侵入してしまう。
【0133】
図1のコモンモードコイル1007aは、制御回路部内において、バッテリ1261のプラス側と三相モータインバータ1517との間に実装され、コモンモードコイル1007bは、三相モータインバータ1517とバッテリ1261のマイナス側に実装される。
【0134】
コモンモードコイル1007a,1007bは、電装品が発生するノイズを除去して電気回路部1251へのノイズの侵入を防ぎ、さらに電動ブレーキ装置内部で発生するノイズを車体側に侵入することを防ぐ。ノーマルモードコイル1008は、コモンモードコイル1007aの後段に実装され、コモンモードコイル1007a,1007bでは低減することができない周波数特性のノイズを低減する。これにより、電気回路部内の制御回路の誤動作を防止することができる。
【0135】
なお、コモンモードコイル1007a,1007bは、固有の周波数特性を有し、その選定は、他の機器に影響を与えるノイズの周波数に合わせたものを選択する。
【0136】
コモンモードコンデンサ1006aは、電力線1600aによって伝導されたノイズをグランド線1600bに落とす。コモンモードコンデンサ1006bは、シールド材1604に照射されたノイズをグランド線1600bに落とす。
【0137】
コモンモードコンデンサ1006a,1006bの容量は、低減すべきノイズ周波数をシミュレーションや測定により導き出すことにより決定する。
【0138】
モータ1311で発生したノイズは、モータ1311と金属製筐体1301間に生じる浮遊容量成分1010を介して筐体1301に逃される。ここで、筐体1301が接地されていない場合、筐体1301からノイズが放射される。
【0139】
そこで、グランド強化線1004cは、グランド強化線1004aを介して、筐体1301とシールド材1604とを接続する。これにより、筐体1301と電気回路部1251との間において、電位の不連続点または面がなくなり電位の安定化が図れ、ノイズの放射を低減することができる。
【0140】
すなわち、筐体1301に照射されるノイズは、グランド強化線1004a,1004cを介して、シールド材1604に落とされ、バッテリのグランド1001または、コモンモードコンデンサ1006bを介してバッテリグランド1001へ落とされる。これにより、電動ブレーキ装置内部へのノイズの侵入及び、外部へのノイズの放射を防止することができる。
【0141】
グランド強化線1004cをシールド材1604に接続する場合、ノイズは、シールド材1604を介してバッテリグランド1001に落ちる。このとき、グランド強化線
1004bは、コモンモードコイル1007aと三相モータインバータ1517との間に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図2の実施形態における電動ブレーキ装置の回路構成図を示す。
【図2】本発明の一実施形態をなす電動ブレーキ装置を搭載した車両のブレーキシステムの概略構成図を示す。
【図3】図2の電動ブレーキ装置の概念図を示す。
【図4】図3の電気回路部1251の回路構成図を示す。
【図5】図3の電気回路部1251の各構成部材の分解斜視図を示す。
【図6】図5のアウターケース500の詳細な構成図を示す。
【図7】図5のインナーケース300の構成図を示す。
【図8】図5のインナーケース300へパワーモジュール408,金属板402、および制御回路基板404を取り付ける際の工程を示す。
【図9】本実施形態で使用されるハーネス600の詳細図を示す。
【図10】図9にて説明した電子部品搭載基板900にハーネス600を取り付ける際の工程を示す。
【図11】図3の電動ブレーキ装置の具体的な内部構成の断面図を示す。
【図12】図11の制御装置における、内部構成断面図を示す。
【符号の説明】
【0143】
1006 コモンモードコンデンサ
1007 コモンモードコイル
1008 ノーマルモードコイル
1311 モータ
1517 三相モータインバータ
1600a 電力線
1600b グランド線
1604 シールド材
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車などに適用される電動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の自動車などに適用されるブレーキは、単に運転者のブレーキ操作をアシストするだけではなく、安全性向上のため、運転者のブレーキ操作に関係なく衝突回避のための制動力を発生したり、車両挙動を自動的に安定させたりするための仕組みが様々考えられている。
【0003】
このように自動的に制動力を発生するために、または運転者の細かな要求を具現化するために、例えば、電動モータと、この電動モータの回転を減速させる減速機と、この減速機によって減速された回転をピストンの直線運動に変換させる回転直動変換機構と、ピストンに取り付けられた車輪とともに回転するディスクロータを押圧させるブレーキパッドとを有する電動ブレーキ装置(例えば特許文献1)を用いて、運転状態や環境状態に応じて電動モータを制御することが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−137081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電動ブレーキは、モータや当該モータを駆動する駆動回路などがノイズを放射する。そのノイズの強度によっては、車両に搭載された機器を誤動作させるおそれがある。また通信機器にあっては受信した音声の音質低下を引き起こす原因となり、画像や映像にあっては画質の低下をもたらすなどの影響が考えられる。
【0006】
こうした背景から、電動ブレーキ装置を含め、車両に搭載する電装品が許容される放射ノイズレベルは、国際規格や、自動車メーカ独自規格により規定されている。よって、電動ブレーキ装置を車両に搭載するには、これらの規格を下回る放射ノイズレベルに抑える必要がある。
【0007】
また、逆に車両に搭載された他のデバイスが、電動ブレーキに対してノイズを放射する可能性もある。
【0008】
本発明の目的は、電動ブレーキ装置に関わるノイズの影響を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
制動力を発生させる電動モータを収納する金属製筐体と、電動モータと車両のグランドとを接続する負極側の電力供給線とを電気的に接続する第1導体とを備える電動ブレーキ装置である。
【発明の効果】
【0010】
電動ブレーキ装置に関わるノイズの影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2は、本発明の一実施形態をなす電動ブレーキ装置を搭載した車両のブレーキシステムの概略構成図を示す。なお、走行のための駆動機構の説明は省略する。
【0012】
第1電動ブレーキ装置1201は、右側の前輪1211側に、車軸1221に近接して搭載される。第2電動ブレーキ装置1202は、左側の前輪1212側に、車軸1221に近接して搭載される。第3電動ブレーキ装置1203は、右側の後輪1213側に、車軸1222に近接して搭載される。第4ブレーキ装置1204は、左側の後輪1214側に、車軸1222に近接して搭載される。
【0013】
各電動ブレーキ装置1201〜1204は基本的な構造は同じであるが、前輪側に対応する第1電動ブレーキ装置1201及び第2電動ブレーキ装置1202は、後輪側に対応する第3ブレーキ装置1203及び第4電動ブレーキ1204より大きな制動力を発生するように構成されることが好ましい。
【0014】
前輪の車軸1221および後輪の車軸1222には、それぞれの車軸に固定されたディスクロータ1231〜1234が設けられる。図2では図示されていないが、各電動ブレーキ装置の機構部1241〜1244は、ディスクロータ1231〜1234の各面側に対向する一対のブレーキパッドを備える。さらに、機構部1241〜1244に備えられた電動モータは回転トルクを発生し、回転トルクに基づきブレーキパッドで各ディスクロータ1231〜1234を挟むように押圧することによって制動力を発生させる。
【0015】
各電動ブレーキ装置1201〜1204において、各電動モータを駆動するための電流を制御する電気回路部1251〜1254は、それぞれの機構部1241〜1244に固定される一体構造になっている。電気回路部1251〜1254は、車軸方向において、機構部1241〜1244に備えられたブレーキパッドとは反対側の面に取り付けられる。
【0016】
前輪側の第1電動ブレーキ装置1201および第2電動ブレーキ装置1202には、第1バッテリ1261から第1電源ライン1271を介して電力が供給される。後輪側の第3電動ブレーキ装置1203および第4電動ブレーキ装置1204には、第2バッテリ
1262から第2電源ライン1272を介して電力が供給される。
【0017】
なお、右前輪の第1電動ブレーキ装置1201および左後輪の第4電動ブレーキ装置
1204には第1バッテリ1261から電力が供給され、左前輪の第2電動ブレーキ装置1202および右後輪の第3電動ブレーキ装置1203には第2バッテリ1262から電力が供給されるようにしてもよい。電源ラインを2系統にすることで一方の電源ラインに異常が発生しても他方の電源ラインによる制動が可能で、安全性が向上する。
【0018】
図2に示した車両のブレーキシステムにおいて、ブレーキペダル1281のストロークまたはペダル踏力に関する情報は、ペダル操作量検出器1282により検出され、データ信号線1290を介して制御回路1299に入力される。制御回路1299は、例えば車室内に配置され、各電動ブレーキの電気回路部に対し、ブレーキシステムとして上位の制御処理を行う(以下「上位制御回路」と記す)。
【0019】
上位制御回路1299は、第1〜第4電動ブレーキ装置1201〜1204から、それぞれデータ信号線1291〜1294を介して、第1〜第4電動ブレーキ装置1201〜1204の状態、たとえば押し付け力の現在値、動作モード現在値の情報等を受信する。さらに電動モータの状態を監視しながら、ブレーキペダル1281のストロークまたはペダル踏力に関する情報に応じた制御信号をデータ信号線1291〜1294を介して、各電動ブレーキ装置1201〜1204に送信し、各電動ブレーキ装置1201〜1204を制御する。なお、上位制御装置1299は、車室内に配置される。
【0020】
上述のように、電動ブレーキ装置は、発生させるべきブレーキ指令を電気信号として取得し、その信号変化に応じてブレーキ力を制御できる。この電気信号は、アナログ信号や通信化された信号など、どのような形態でも実現することが可能である。
【0021】
なお、上位制御回路1299は、各電動ブレーキ装置1201〜1204をそれぞれ単独に制御したり、前輪側の第1電動ブレーキ装置1201と第2ブレーキ装置1202を一グループとするとともに後輪側の第3電動ブレーキ装置1203と第4ブレーキ装置
1204を他のグループとして各グループを制御したり、あるいは、前輪側の第1電動ブレーキ装置1201と後輪側の第4電動ブレーキ装置1204を一グループとするとともに前輪側の第2電動ブレーキ装置1202と後輪側の第3電動ブレーキ装置1203を他のグループとして各グループを制御したりしてもよい。グループ分けして制御することで、制御の応答性の改善,制御回路の処理負荷低減,フェールセーフの処理機能の増大といった効果が得られる。
【0022】
このような構成からなる自動車の電動ブレーキ装置1201〜1204は、たとえばサスペンション等を介することなく車体に直接取り付けられることから振動による影響を受けやすく、また、雨天時の走行によって水分が内部に侵入し易いという環境下で使用されることになる。
【0023】
また、この実施例において電動ブレーキ装置1201〜1204は、上述したように機構部1241〜1244に制御回路を含む電気回路部1251〜1254が一体化して構成され、該制御回路には多数の半導体装置が備えられている。半導体装置は熱によって特性が変化する性質を有することから、車輪と共に回転するディスクロータ1231〜1232に対する機構部1241〜1244内のブレーキパッドの押圧によって発生する高熱の摩擦熱が該電気回路部1251〜1254へ伝導されるのを極力抑制させる必要が生じ、また、半導体装置がそれ自体で発生する熱においても効率よく放散させる必要が生じる。
【0024】
図3は、図2の電動ブレーキ装置の概念図を示す。以下、第1電動ブレーキ装置1201を代表例として、電動ブレーキ装置を説明する。
【0025】
電動ブレーキ装置1201は、互いに対向して配置される一対のブレーキパッド1306,1307を備える。車軸の回転に伴って回転するディスクロータ1231の一部が各ブレーキパッド1306,1307の間に配置される。
【0026】
電動ブレーキ装置1201は、機構部1241と電気回路部1251とが互いに一体化されて構成される。
【0027】
機構部1241と電気回路部1251は領域的に別個であるため、該機構部1241と電気回路部1251を構造的に分離させることも可能である。
【0028】
機構部1241は、筐体1301内に、たとえば三相モータからなる電動モータ1311と、電動モータ1311の回転を減速する減速機1321と、減速機1321によって減速された電動モータ1311の回転運動を直線運動に変換してピストン1331を進退動させる回転直動機構1326を備える。
【0029】
ブレーキパッド1307は、ピストン1331に取り付けられ、ピストン1331の推力によりディスクロータ1231を一方の面側から押圧する。この際に、ディスクロータ1231の一方の面側からの押圧力を反力として電動ブレーキ装置1201が図中矢印α方向に移動することにより、ブレーキパッド1306がディスクロータ1231を他方の面側から押圧する。
【0030】
機構部1241は、パーキングブレーキ(PKB)機構1341を備える。パーキングブレーキ機構1341は、ピストン1331がディスクロータ1231に推力を供給している状態のまま電動モータ1311の回転を止めることにより、電動モータ1311に電力を供給することなく、制動力を保持することができる。
【0031】
電動モータ1311の近傍には、電動モータ1311の回転角を検出する回転角検出センサ1351,電動モータ1311の駆動によって生じる推力を検出する推力センサ1353、及び電動モータ1311の温度を検出するモータ温度センサ1355が配置される。回転角検出センサ1351,推力センサ1353、及びモータ温度センサ1355の出力信号は、電気回路部1251内に配置される下位制御回路1399に出力される。
【0032】
電気回路部1251は、車体側に配置されるバッテリ1261から電力供給を受ける。また、エンジンコントロールユニット1381,ATコントロールユニット1383,ペダル操作量検出器1282等が接続されたCAN(Control Area Network)を介して、あるいは該LANから上位制御回路1299を介して、種々の制御信号を取得する。
【0033】
電気回路部1251は、インバータ回路1391及び下位制御装置1399を備える。インバータ回路1391は、電動モータ1311に印加する電圧を制御するための回路である。下位制御回路1399は、CAN経由により制御信号を取得し、さらに機構部1241側からの回転角検出センサ1351,推力センサ1353、及びモータ温度センサ1355等の出力情報信号を取得し、これらの信号に基づいてインバータ回路1391を制御する。
【0034】
電動モータ1311は、インバータ回路1391からの出力を取得し、ピストン1331に所定の推力を発生させるように回転トルクを発生する。なお、図中符号1395は車両側の構造物を示している。
【0035】
図4は、図3の電気回路部1251の回路構成図を示す。
【0036】
図中太線枠1251は図3に示された電気回路部1251に相当し、さらに一点鎖線枠1391は図3に示されたインバータ回路1391に相当する。図中点線枠1503は、機構部1241内の回路に相当する。
【0037】
図4に示された機構部1241内回路及び電気回路部は、図示されていないが、金属製の筐体で被われているため、飛び石等の外的傷害の要因から保護される。また、伝熱性の高い金属製の筐体を用いることにより、各回路等から発生する熱の放熱を図ることができる。さらに、遮蔽性の高い金属製の筐体を用いることにより、電磁波等に対するシールド効果を備える。
【0038】
機構部1503においても、飛び石等の外的傷害の要因から保護と、モータが発生するノイズと電磁波等に対するシールド効果とを備えるため金属筐体であり、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体の接続点または面は電気的導通するように接続する。このとき、グランドとそれぞれの金属筐体間の電位差を測定し、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体を測定した電位差が同じであることが好ましい。電位差が異なると、金属筐体をノイズが伝導する場合、電位差が異なる不連続点または面でノイズの反射を生じ、電位差が異なる不連続点または面から該電動ブレーキ装置外へノイズを放射する。
【0039】
電気回路部1251の回路において、車両内の電源ラインを介して供給される電力が、電源回路1511に供給される。電源回路1511により安定化された電力(Vcc,
Vdd)は、中央制御回路(CPU)1599に供給される。なお、電源回路1511からの電源(Vcc)は、VCC高電圧検知回路1513によって検知される。VCC高電圧検知回路1513が高電圧を検知した場合には、フェールセーフ回路1515を動作させる。
【0040】
フェールセーフ回路1515は、後述の三相モータインバータ1517に供給する電力をスイッチングするリレー1519を動作させる。VCC高電圧検知回路1513によって高電圧が検知された場合、電力の供給をOFF状態にする。
【0041】
フィルタ回路1521は、リレー1519を介して電気回路部1251内に供給される電力のノイズを除去し、ノイズが除去された電力を三相モータインバータ1517に供給する。
【0042】
中央制御回路1599は、上位制御回路1299からの制御信号を、CAN通信インターフェース回路1523を介して取得し、また機構部1241側に配置された推力センサ1353,回転角検出センサ1351及びモータ温度センサ1355からの出力信号を、それぞれ、推力センサインターフェース回路1525、回転角検出センサインターフェース回路1527及びモータ温度センサインターフェース回路1529を介して取得する。現時点における電動モータ1311の状況等に関する情報を取得し、上位制御回路1299からの制御信号に基づきフィードバック制御をすることにより、電動モータ1311に適切な回転トルクを発生させる。すなわち、中央制御回路1599は、上位制御回路1299からの制御信号及び各センサの検出値に基づいて、三相モータプリドライバ回路1531に適切な信号を出力させる。
【0043】
三相モータインバータ1517には、相電流モニタ回路1533および相電圧モニタ回路1535が具備される。相電流モニタ回路1533および相電圧モニタ回路1535は、それぞれ相電流および相電圧を監視し、監視結果を中央制御回路1599に出力する。中央制御回路1599は、監視結果に応じて、三相モータプリドライバ回路1531を適切に動作させる。
【0044】
なお、三相モータインバータ1517は、電動モータ1311を駆動させる電流および電圧を制御することから、出力が比較的大きな半導体装置を内蔵する。このため、半導体装置の動作によって高熱が発生することになるが、後に詳述する構成によってその対策がなされる。
【0045】
また、中央制御回路1599は、上位制御回路1299からの制御信号、および各センサの検出値等に基づいて、パーキングブレーキ(以下、PKB)ソレノイドドライバ回路1537を介して、機構部1241内のPKBソレノイド1342を動作させ、パーキングブレーキを作用させる。PKBソレノイドドライバ回路1537は、三相モータインバータ1517に供給される電源が供給される。
【0046】
また、電気回路部1251は、中央制御回路1599との間で信号の送受がなされる監視用制御回路1539、たとえば故障情報等が格納されたEEPROMからなる記憶回路1541を備える。
【0047】
電気回路部1251は、機構部1241との間での結線は多いが、機構部1241以外の回路(バッテリ1261,上位制御装置1299)との間の結線は極めて少ない。これにより、機構部1241と電気回路部1251との一体構造からなる電動ブレーキ装置
1201の製造工程において、機構部1241と電気回路部1251との間の複雑な結線を行い、電動ブレーキ装置1201が完成した後に、電動ブレーキ装置1201を車体に取り付ける際には、バッテリ1261あるいは上位制御装置1299との間の結線を極めて容易に行うことができる。
【0048】
次に、図5〜図11にかけて、本実施形態の具体的なハードウェア構成を詳細に説明する。
【0049】
図5は、図3の電気回路部1251の各構成部材の分解斜視図を示す。
【0050】
I/Fモジュール200は、機構部1241の筐体に取り付けられ、機構部1241側に配置された端子(図示せず)と電気回路部1251の端子と電気的に接続するための中継機能を有する配線基板である。また、I/Fモジュール200の素材は合成樹脂であるため、ブレーキパッド部からの熱の伝達が極力少なくすることができる。
【0051】
さらに、I/Fモジュール200は、機構部1241の側に配置された端子を貫通させるための開口部を有する。この開口部は、電気回路部1251と前記機構部1241の内部空間を、I/Fモジュール200を介して同一空間とする連通穴としての機能を有する。
【0052】
シール202は、I/Fモジュール200の機構部1241側の面の周辺に、I/Fモジュール200の中央部を囲むように配置する。I/Fモジュール200は、シール202を介して機構部1241の筐体に取り付けられるため、機構部1241とI/Fモジュール200との間からの水分や異物等の浸入を阻止することができる。
【0053】
インナーケース300は、I/Fモジュール200に取り付けられる。また、インナーケース300の素材は合成樹脂であるため、ブレーキパッド部からの熱の伝達が極力少なくすることができる。インナーケース300は、シール302を介してI/Fモジュール200に取り付けられるため、インナーケース300とI/Fモジュール200との間からの水分や異物等の浸入を阻止することができる。
【0054】
インナーケース300は、後述する電子部品を搭載する基板としての機能を有する。インナーケース300のI/Fモジュール200の側の面には、アルミ製の金属板402および制御回路基板404が、順次搭載される。アルミ製の金属板402により、捻り等による制御回路基板404の損傷を回避することができる。
【0055】
インナーケース300とI/Fモジュール200とが互いに対向する面には、シール
302を含む周辺部を除く部分に凹陥部(図示せず)が形成される。この凹陥部内に、金属板402および制御回路基板404は配置される。
【0056】
壁部305は、インナーケース300のI/Fモジュール200と反対側の面において、その面の領域をおよそ二分割した一方の領域を囲むように形成される。壁部305の内部の領域には、比較的大型の電子部品406、たとえばコンデンサあるいはリアクタンス等が搭載される(以下、電子搭載領域)。他方の領域には、領域の一部に比較的面積の大きな透孔306が形成される。透孔306の内部には、パワーモジュール408が配置される。
【0057】
パワーモジュール408は、図5に示された三相モータインバータ回路118,相電流モニタ回路134、および相電圧モニタ回路136をモールド化したものである。
【0058】
さらに、インナーケース300のI/Fモジュール200と反対側の面には、アウターケース500が取り付けられる。アウターケース500は、開口部504を備える。この開口部504により、インナーケース300の電子部品搭載領域316が外部から目視されるようになり、作業性が向上する。さらに、アウターケース500は、インナーケース300の周側面,壁部305の周側面,透孔306,透孔306の周辺をそれぞれ被うように取り付けられる。アウターケース500は、金属製、たとえば表面にアルマイト処理がなされたアルミ合金等であり、また電気回路部1251の外周面の大部分を被うため、外部の衝撃から回路を保護する。
【0059】
アウターケース500のインナーケース300側の面であって、透孔306および透孔306の周囲に対向する部分には、シール502が透孔306を囲むように配置される。シール502は、開口部504から透孔306を通して、インナーケース300のI/Fモジュール200側の面に水分が侵入するのを防止する。
【0060】
電動ブレーキ装置の外部側から電源あるいは制御信号等を供給するハーネス600は、ハーネスストッパ602によって、アウターケース500に固定される。ハーネス600内の各配線(図示せず)は、インナーケース300の壁部305に形成される透孔(図示せず)を通して、壁部305内の電子部品搭載領域316に導かれる。
【0061】
I/Fモジュール200,インナーケース300,アウターケース500は、それぞれの四隅に形成されたねじ孔に、アウターケース500側から挿入されるボルト700a,700b(図示せず),700c,700dを挿入することよって一体化され、かつ機構部1241に取り付けられる。
【0062】
カバー800は、アウターケース500の開口部504を被うように、アウターケース500にねじ止めされる。カバー800の素材は、金属、たとえばアルミ合金である。
【0063】
図6は、図5のアウターケース500の詳細な構成図を示す。また、図6(a)は、インナーケース300と対向して配置される側の面(内側面)から観た斜視図であり、図6(b)は、インナーケース300と対向して配置される側と反対側の面(外側面)から観た斜視図である。
【0064】
アウターケース500の外輪郭は、インナーケース300の外輪郭とほぼ同様の形状である。大径孔512a,512b,512c,512dが、アウターケース500のそれぞれの四隅に形成される。この大径孔に前述のボルト700a,700b,700c,
700dが挿入され、電気回路1251を機構部1241に固定させる。
【0065】
図6(a)に示されるアウターケース500の内側面の開口部504を除く面には、略矩形状の溝502aが形成される。溝502aには、前述のシール502(図示せず)が埋め込まれる。
【0066】
溝502aで囲まれる領域内には、後述のパワーモジュール408を固定させるためのねじ孔510a,510bが形成される。
【0067】
ねじ孔511a,511bは、前述のねじ孔510a,510bのそれぞれ近接するように形成される。前述の溝502aは、ねじ孔511a,511bを溝502aで囲まれる領域内に位置づけるため、ねじ孔511a,511bの個所で迂回するようにて形成される。ねじ孔511a,511bは、図7にて後述されるねじ孔310a,310bと同軸配置される。さらに、図8にて後述されるねじ320a,320bによって、アウターケース500は、インナーケース300に固定される。
【0068】
図6(b)に示される突出体508が、アウターケース500の外面に形成される。このため、アウターケース500の外気と触れる表面積の増大し、放熱効果を増大させることができる。
【0069】
壁部505は、インナーケース300の壁部305の外方に、壁部305と当接して形成され、インナーケース300の壁部305とともに電子部品搭載領域316の外枠となる。このため、電子部品搭載領域316の外枠の機械的強度が向上する。
【0070】
上端面が連結されるブリッジ505aが、壁部505に形成される。さらに、開口部
505bが、ブリッジ505aに形成される。アウターケース500をインナーケース
300に組み込んだ場合、図7にて後述されるインナーケース300の突壁部305aが、開口部505bに位置づけられる。さらに、ブリッジ505aが、該突壁部305aの周側面を被う。
【0071】
開口部504を塞ぐカバー800をねじ止めするためのねじ孔512a,512b,
512cが、壁部505の周囲の一部に形成される。
【0072】
図6(b)に示されるように、後述されるハーネス600を固定するハーネス固定部
506は、アウターケース500の外側面に形成される。また、突出した台部の中央に開口部504側に指向する方向に溝506aが形成される。ハーネス固定部506は、後述されるハーネスストッパ602により、ハーネス600を挟んで固定する。また、ハーネス固定部506には、溝506aの両脇に、ハーネスストッパ602を固定させるためのねじ孔507a,507bが形成される。
【0073】
図7は、図5のインナーケース300の構成図を示す。図7(a)は、インナーケース300のI/Fモジュール200と対向する側の面(内側面)から観た斜視図である。図7(b)は、内側面と反対側の面(外側面)から観た斜視図であり、内部に埋設された配線も示される。
【0074】
インナーケース300は、後述する電子部品を搭載する基板としての機能を有する。インナーケース300は、合成樹脂製であり、機構部1241からの熱の伝達を抑制することができる。
【0075】
図7(a)に示されるように、インナーケース300の外輪郭は、I/Fモジュール
200の外輪郭とほぼ同様の形状である。また、大径孔304a,304b,304c,304dは、インナーケース300の四隅のそれぞれに形成される。大径孔304a,
304b,304c,304dにボルト700a,700b,700c,700dを挿入することによって、インナーケース300を含む電気回路部1251は、機構部1241に固定される。孔308a,308bには、I/Fモジュール200に形成された突注体208a,208bが挿入される。
【0076】
矩形状の比較的大きな透孔306は、インナーケース300の中央部から若干ずれた位置に形成される。後述のパワーモジュール408が、透孔306に配置される。
【0077】
端子312a,312bは、透孔306の各周辺のうち対辺関係にある二辺に並設され、パワーモジュール408から突出して形成されている電極(端子)と溶接によって接続される。端子314は、電子部品搭載領域316の裏面側に形成される。小型の電子部品が、端子314付近に配置され、この電子部品の電極と端子314とが接続される。
【0078】
透孔306の周辺において、端子312a,312bが並設された部分を除いた残りの対辺関係にある各二辺の付近に、透孔310a,310bが形成される。透孔310a,310bは、アウターケース500に、インナーケース300及びパワーモジュール408を固定させる際のねじ孔となる。
【0079】
インナーケース300をI/Fモジュール200と対向させて定位置に配置させた場合、端子孔群318にはI/Fモジュール200に形成された二股端子210がそれぞれ挿入され、また端子孔群320には、二股端子212がそれぞれ挿入される。これら端子孔は、各二股端子210,212の二股部に当接される端子を内蔵する。
【0080】
図7(b)に示されるように、インナーケース300の外側面には、前述された透孔
306と電子部品搭載領域316が設けられる。電子部品搭載領域316は、壁部305によって囲まれるように形成される。電子部品搭載領域316に形成された凹陥部322は、コンデンサ等の電子部品を搭載し、この凹陥部322の形状は、コンデンサ等の電子部品の形状に合わせられる。凹陥部322の近傍には、端子324が植設される。端子
324は、前述の電子部品の電極と接続される。このため、各電子部品をその定位置に配置され、インナーケース300に埋設された配線層と誤りなく電気的に接続させることができる。インナーケース300に埋設された配線層は、信号の送受を行う比較的線幅の小さい配線層(通信系バス)と、高電圧となる電源が供給される線幅の大きな配線層(パワー系バス)とからなる。
【0081】
大径孔304a,304b,304c,304dが形成されるインナーケース300の周辺部と、この周辺部から若干内側に及んだ中央部との間には、段差部310が形成され、中央部に凹陥部が形成される。この凹陥部には、後述の制御回路基板404等が配置され、また、インナーケース300とI/Fモジュール200との間に空気層が形成される。この空気層により、機構部1241から電子部品への熱伝達を抑制することができる。
【0082】
溝302aは、大径孔304a,304b,304c,304dを外側に配置するように、かつインナーケース300の中央部を囲むように、形成される。この溝302aには、前述のシール302(図示せず)が組み込まれる。このため、インナーケース300とI/Fモジュール200との間の空気層に、水分や異物等の浸入することを防止することができる。
【0083】
透孔326a,326bには、インナーケース300をI/Fモジュール200と対向させて定位置に配置させた場合、I/Fモジュール200に形成された端子214a,
214bが挿入される。そして、端子214a,214bの先端は、透孔326a,326bを通してインナーケース300の外側面(電子部品搭載領域316)に突出する。
【0084】
また、透孔326a,326bの大きさは、挿入される端子214a,214bよりも大きく形成される。そのため、電動ブレーキ内の空気が、透孔326a,326bを介して、充分に対流することができる。したがって、電動ブレーキ装置内の局所的な気圧変動を抑え、シール等の密閉機能の低下を抑制することができる(気圧調整機能)。
【0085】
壁部305の肉厚を大きくした突壁部305aは、前記透孔306と対向する壁部305に形成される。突壁部305aには、透孔305bが、透孔306側から電子部品搭載領域316側へ貫通するように形成される。この肉厚となっている突壁部305aに、後述するハーネス600の先端に取り付けられたフランジ606を固定することより、ハーネス600の先端部が、強固に固定される。そして、ハーネス600内の各配線は、透孔
305bを通して、電子部品搭載領域316に導かれる。
【0086】
図8は、図5のインナーケース300へパワーモジュール408,金属板402、および制御回路基板404を取り付ける際の工程を示す。
【0087】
まず、図8(a)に示すように、後述されるハーネス600を取り付けた電子部品搭載基板900の内側面には、電子部品328a〜328dよりも比較的小型の電子部品328e,328fが搭載される。さらに、電子部品搭載基板900の内側面の前記透孔306の部分には、パワーモジュール408が配置される。パワーモジュール408は、ねじ孔
(図示せず)を備え、ねじ410a,410bは、このねじ孔を通してアウターケース
500に形成されているねじ孔510a,510b(図示せず)に螺入し、パワーモジュール408を固定する。
【0088】
なお、パワーモジュール408を搭載する前のインナーケース300の裏面は、アウターケース500によって閉塞されたインナーケース300の透孔306が凹陥部として形成され、この凹陥部にパワーモジュール408が収納される。この場合、凹陥部の底面は金属で形成されたアウターケース500の一部であり、パワーモジュール408はこのアウターケース500に接触するようにして配置される。このため、パワーモジュール408の発生熱がアウターケース500を介して放熱され、制動力制御の信頼性が向上する。さらに、図示されていないが、アウターケース500とパワーモジュール408との間には、放熱グリスあるいは放熱シートが介在され、パワーモジュール408からアウターケース500への熱伝達の効率向上を図るようにしてもよい。
【0089】
また、パワーモジュール408は、その側面にパワーモジュール408の電極となる端子を備える。パワーモジュール408がインナーケース300上の定位置に配置されると、パワーモジュール408の端子は、インナーケース300の端子312a,312bと接触する。パワーモジュール408の端子とインナーケース300の端子は、たとえば溶接によって互いに電気的に接続される。なお、パワーモジュール408の端子とインナーケース300の端子の先端部は、略90度折り曲げられ、その折り曲げられた先端部の面同士が接触する。そのため、インナーケース300の内側面からの溶接作業が容易になり、組立作業性が向上する。
【0090】
次に、図8(b)に示すように、絶縁シート400が、パワーモジュール408の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される。これにより、パワーモジュール408の各端子部と、次に説明する金属板402との電気的な絶縁を図る。絶縁シート400の材料は、たとえばポリイミド樹脂が用いられるため、パワーモジュール408の各端子部と金属板402との間は150℃以上の耐熱性を有し、かつ200kV/mmの絶縁性を有する。
【0091】
なお、絶縁シート400は、パワーモジュール408の端子部を被うようして延在され、パワーモジュール408の上面に接着されている。また、絶縁シート400は、パワーモジュール408をアウターケース500に固定させたねじ410a,410bの頭部を被うことなく、ねじ410a,410bの頭部を回避させた切り欠き400aを有するパターンとして形成される。
【0092】
次に、図8(c)に示すように、たとえばアルミプレートからなる金属板402が、絶縁シート400の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される。これにより、金属板402の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される制御回路基板404を機械的に補強させることができる。さらに、制御回路基板404の発生熱を効率的に放熱することができる。
【0093】
また、金属板402は、パワーモジュール408および絶縁シート400を充分に被う大きさである。そして、金属板402に形成された透孔408a,408bは、パワーモジュール408のアウターケース500への固定用のねじ410a,410bの頭部を、この透孔408a,408bから突出させることなく、かつ露出させている。これにより、金属板402を絶縁シート400に密着させて配置でき、かつ、金属板402の上面に後述の制御回路基板404を密着させて配置させることができため、電動ブレーキ装置の小型化に寄与する。
【0094】
さらに、金属板402は、後述の制御回路基板404と対向する面において、パターン化された凹部402dが形成される。一方、制御回路基板404は、金属板402と対向する面において、たとえば検査チェック用の端子(図示せず)が露出している場合がある。凹部402dは、検査チェック用の端子が凹部402dの形成領域内に対向するように形成され、検査チェック用の端子と金属板402との直接の接触を回避させる。このため、検査チェック用の各端子が金属板402と電気的に接続されるのを防止するとともに、電動ブレーキ装置の小型化に寄与する。さらに、凹部402dは、金属板402の上面に制御回路基板404を接着材を用いて接着させる場合、この接着剤の逃しの機能をも有する。
【0095】
そして、図8(d)に示すように、制御回路基板404が、金属板402の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される。制御回路基板404は、その基板がたとえばセラミックで形成され、その上面(金属板402と反対側の面)には、比較的大きな電子部品328gが搭載される。制御回路基板404の基板がセラミックであることにより、制御回路基板の耐熱性及び耐振動性が向上する。また、制御回路基板404は金属板404の上面に配置されることから、何らかの原因、たとえばピストン1331からの過大な反力によって、たとえばインナーケース300等に歪みが生じた場合でも、制御回路基板
404の破損を防止することができる。
【0096】
制御回路基板404には、各電子部品414が搭載され、また配線層412a〜412cが基板表面にあるいは基板内に埋設される。この配線層と接続される端子340a〜340cが、制御回路基板404の周辺の一部に並列されて形成される。これら対応する端子間、たとえば端子340aと端子412aは、アルミニウムからなるワイヤのボンディングによって互いに電気的に接続される。
【0097】
そして、制御回路基板404の電子部品が搭載された側に、ゲル状の部材(図示しない)が塗布される。これにより、制御回路基板404の電子部品414やワイヤボンディングを塵や結露等から保護することができ、さらに振動の伝達を緩和させることもできる。
【0098】
図9は、本実施形態で使用されるハーネス600の詳細図を示す。
【0099】
電力線1600aは、電動ブレーキ装置に搭載された電動アクチュエータを動作させるための電力を供給する。電動ブレーキ装置を接地するグランド線1600bは、電力線
1600aと対になる。電力線用被覆部材1606は、電力線1600a及びグランド線1600bを被覆し、電力線1600aを外部からの衝撃から保護する。
【0100】
信号線1601a〜1601dは、ブレーキペダルの踏込量等に応じた推力指令信号や、電動ブレーキ装置の起動終了命令信号等を伝送する。
【0101】
通信線用被覆部材1605は、通信線1601a〜1601dを被覆し、通信線を外部からの衝撃から保護する。さらに、シールド材により、通信線用被覆部材1605を覆うことにより、通信線1601a〜1601dからのラジオノイズの放射を低減してもよい。空気連通部材1603は、空気を通すことができる部材である。ハーネス600の両端部に露出された空気連通部材1603の気圧差が、所定値以上となったときに、気圧が高いハーネス600の端部から、気圧が低いハーネス600の端部へ空気が流れる。このため、ハーネス600によって繋がれた両空間の気圧差は、所定範囲内に抑えられる。なお、空気連通部材1603の素材は、高分子化合物、例えば植物や科学的プロセスによって製造される繊維材料が適している。
【0102】
シールド材1604は、ノイズの放射を防止するために空気連通部材1603の外側を覆う。車体と電動ブレーキ装置とを繋ぐハーネス600は、ばね下という振動が多い環境で使用され、また車体に固定されるために厳しい屈曲性が要求される。シールド材1604に金属製の細線を編んだシート状のものを使用することにより、ハーネス600の耐振動性及び屈曲性を向上させることができる。
【0103】
被覆部材1602は、シールド材1604外側を覆い、外部の衝撃による、シールド材の破損や、通信線及び電源線の断線を防止する。被覆部材1602の素材は、防水機能さらに屈曲性に優れた高分子化合物が使用される。
【0104】
図10は、図9にて説明した電子部品搭載基板900にハーネス600を取り付ける際の工程を示す。
【0105】
図10(a)は、電子部品搭載基板900の外側面を示す。の電子部品搭載基板900は、インナーケース300に形成された突壁部305aに、透孔305bの周囲を囲むようにしてリング状のシール305sが備えつけられる。
【0106】
図10(b)は、ハーネス600が定位置に配置された電子部品搭載基板900を示す。フランジ606は、ハーネス600を挿入する透孔(図示せず)と、この透孔を間にして形成されるねじ孔610c,610を備える。ハーネス600を挿入する透孔は突壁部305aに備えられた透孔305bと、ねじ孔610c,610dは突壁部305aに備えられたねじ孔305c,305と対応させ、それぞれの中心軸を一致させる。
【0107】
なお、ハーネス600は、フランジ606の端部から若干離間した個所において、ハーネス固定部506の溝506a内に配置される。この溝506aにより、ハーネス600の長手方向に交叉する方向の移動が規制される。
【0108】
次に、図10(c)に示すように、ハーネス600のフランジ606は、ボルト614c,614dにより突壁部305aに固定される。この際、ハーネス600のフランジ606は、シール305sを介して突壁部305aに密着される。このため、水分が突壁部305aとフランジ606の界面を通して壁部305の内部の電子部品搭載領域316に浸透するのを防止できる。
【0109】
さらに、図10(c)に示すように、ハーネスストッパ602が、ハーネス固定部506の上方にハーネス600を挟持するように載置される。
【0110】
ハーネスストッパ602の挟持部の形状は、ハーネス600に形状に合わせるように、たとえば半円筒状である。また、ハーネス600を間にした各両端部には、ねじ孔610a,610bが形成される。
【0111】
次に、図10(d)に示すように、ハーネスストッパ602は、ボルト612a,612bによりハーネス固定部506に固定される。ボルト612a,612bは、ハーネスストッパ602のねじ孔610a,610bからハーネス固定部506の対応するねじ孔に螺入されて固定される。このため、ハーネス600は、ハーネス固定部506とハーネスストッパ602との間に挟持され、この挟持による押圧力によって、その軸方向の移動が規制される。
【0112】
なお、アウターケース500に取り付けられるハーネス600の装置本体からの引き出しは、制動時の電動ブレーキ装置の移動におけるその方向に対して、一旦は直角方向に延在され、その後は自由な方向に延在される。そのため、制動時の電動ブレーキ装置の移動にあって、ハーネス600に常時遊びを有するようにハーネス600の引き回しを行うことができる。したがって、ハーネス600の緊張状態にともなう断線を防止することができる。
【0113】
そして、図10(e)に示すように、ハーネス600から電子部品搭載領域316に引き出された各配線608が、各端子324に、たとえば溶接により接続される。各端子
324は、インナーケース300に植設された配線層を接続され、電子部品搭載領域316の表面に突出して形成される。
【0114】
なお、フランジ600に替えて、電動ブレーキ装置と着脱自在なコネクタを用いるようにしてもよい。電子部品搭載基板900側のコネクタは、電子部品搭載領域316付近、たとえば壁部305に設置され、電子部品搭載領域316内の電子部品328a〜328dと導線等により電気的に接続される。そして、ハーネス600側のコネクタが、前述の電子部品搭載基板900側のコネクタに嵌合され、電気的に接続される。
【0115】
図11は、図3の電動ブレーキ装置の具体的な内部構成の断面図を示す。
【0116】
図11中の線分X−Xは、機構部1241と電気回路部1251の境界を示し、線分X−Xの図中左側は機構部1241を、図中右側は電気回路部1251を示す。
【0117】
機構部1241と電気回路部1251は、それぞれ金属製の筐体で覆われており、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体の接続点(面)は電気的導通するように接続する。このとき、グランドとそれぞれの金属筐体間の電位差を測定し、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体を測定した電位差が同じであることが好ましい。電位差が異なると、金属筐体をノイズが伝導する場合、電位差が異なる不連続点(面)でノイズの反射を生じ、電位差が異なる不連続点(面)から該電動ブレーキ装置外へノイズを放射する。
【0118】
太線枠1341内は図3に示されたパーキングブレーキ機構1341に相当し、太線枠1321内は図3に示された減速機1321に相当し、太線枠1326内は回転直動変換機構1326に相当する。図1において、図3において付した符号と同一の符号の部分は、図3で示した部材と同一の部材を示す。
【0119】
電動モータ1311は、ブラシレスの三相モータであり、筐体1301に固定されたステータと、このステータ内に配置されたロータとを備える。
【0120】
電動モータ1311は、上位制御装置1299からの指令に応じてロータを所望トルクで所望角度だけ回転させるように作動する。ロータの回転角は、回転角度センサ1351によって検出される。回転角度センサ1351は、減速機1321と電動モータ1311との間に設置される(ロータとステータの場所に確認)。
【0121】
減速機1321は、電動モータ1311の回転を減速し、電動モータ1311のトルクを増大させる。そのため、電動モータ1311は小型のものを用いることができる。
【0122】
スラストプレート1421は、機構部1241内の電気回路部1251側に配置され、ピストン1331の推力を反力として受ける機能を有する。推力センサ1353が、スラストプレート1241の中央部に配置される。
【0123】
さらに、スラストプレート1421は、機構部1241の筐体1301の端面(図中線分X−Xの部分)に対して、ブレーキパッド部側へ若干奥まった箇所に配置される。筐体1301を除いた機構部1241の構成部材と電気回路部1251との間には、隙間(空間)が形成される。一方、推力センサ1353は、筐体1301の端面(図中線分X−Xの部分)を越えて電気回路部1251側に若干突出する。しかしながら、電気回路部1251に備えられたインターフェースモジュール(以下、I/Fモジュール)200は、推力センサ1353との干渉を回避するように凹陥部が形成される。
【0124】
筐体1301を含む機構部1241の各構成部材の大部分は、金属製であるため、熱の伝導効率が高い。そのため、ブレーキパッド部(ブレーキパッド1306,1307およびその周辺部)からの熱は、周辺の機構部1241に伝達され、筐体1301を介して外部へ放熱され易い。
【0125】
また、電気回路部1251は、機構部1241を間にして、ブレーキパッド部と反対側の面に形成されるため、電気回路部1251へ熱の伝達が極力少なくなる。さらに、機構部1241の構成部材と電気回路部1251との間には、上述した隙間(空間)が形成されるため、機構部1241から電気回路部1251への熱の伝導をさらに少なくなる。
【0126】
さて、図2における電動ブレーキ装置1201〜1204が放射するノイズは、制動時、すなわちモータ動作時に増大する。発生したノイズは、発生するノイズの強度により、該電動ブレーキ装置を搭載する車両に搭載されている機器を誤動作させる可能性が有る。また、通信機器にあっては受信した音声の音質低下を引き起こす原因となり、画像や映像にあっては画質の低下をもたらす。こうした背景から、電動ブレーキ装置を含め、車両に搭載する電装品が許容される放射ノイズレベルは、国際規格や、自動車メーカ独自規格により規定されている。よって、該電動ブレーキ装置を車両に搭載するには、これらの規格を下回る放射ノイズレベルに抑えなくてはならない。
【0127】
そこで、ノイズ対策として図3における機構部1241を覆う筐体と電気回路部1251を覆う筐体とを、接続点または面で電気的に導通し、電気回路部内で、ハーネスのシールドを介してグランドに接続する。また、ノイズを含む交流成分に対しては、電気回路部の電源とグランド間にコモンモードコンデンサ実装する。
【0128】
また、図4で説明した通り、機構部1241内回路及び電気回路部は遮蔽性の高い金属製の筐体で被われているため、電磁波等に対するシールド効果を備える。また、図3の機構部1241においても、モータが発生するノイズと電磁波等に対するシールド効果とを備えるため金属筐体で被われており、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体の接続点または面は電気的導通するように接続する。機構部1241を覆う筐体と電気回路部1251を覆う筐体とは、例えば図5のボルト700a,700b,700c,700dによって、図12に示すように接続する。このとき、グランドとそれぞれの金属筐体間の電位差を測定し、電気回路部の金属筐体と機構部の金属筐体を測定した電位差が同じであることが好ましい。電位差が異なると、金属筐体をノイズが伝導する場合、電位差が異なる不連続点または面でノイズの反射を生じ、電位差が異なる不連続点または面から該電動ブレーキ装置外へノイズを放射する。
【0129】
図1は、図2の実施形態における電動ブレーキ装置の回路構成図を示す。
【0130】
バッテリ1261は、電動ブレーキ装置や他の車載電装品に電力を供給する。図4に示したように中央制御回路1599は、車体側に設置された上位制御装置1299から送信される要求推力指令信号と、電動ブレーキ装置に内蔵されたセンサの出力信号を処理し、電動ブレーキ装置が要求推力指令に応じた推力を発生するように、PWM信号を三相モータプリドライバ1531に出力する。三相モータプリドライバ1531は、中央制御回路
1599からのPWM信号の電圧レベルを変化させ、三相モータインバータ1517に出力する。三相モータインバータ1517は、三相モータプリドライバ1531からのPWM信号に応じて、内蔵されたトランジスタをスイッチングして、モータ1311に印加される電圧を制御し、モータ1311への通電電流を制御する。モータ1311は、通電電流に応じて、回転トルクを発生させる。
【0131】
このような電気回路部1251から放射される主なノイズは、モータにおける磁界と電界の変化によるものと、三相モータインバータ1517のトランジスタのオンオフ時におけるスイッチングによるものがある。また、中央制御回路1599が出力するPWM信号と三相モータプリドライバ1531が出力するPWM信号によってもノイズが発生する。さらに、制御基板上に設置されたCPU動作用クロックや、中央制御回路1599が出力するCPU駆動監視用信号によってもノイズは発生する。
【0132】
車載電装品が発生するノイズは、電源線を介して、電動ブレーキ装置や他の電装品へ伝わる。また、電動ブレーキ装置のバックアップ用電源としてオルタネータを用いる場合があり、オルタネータが発生するノイズは、電源線を介して電動ブレーキ装置に侵入してしまう。
【0133】
図1のコモンモードコイル1007aは、制御回路部内において、バッテリ1261のプラス側と三相モータインバータ1517との間に実装され、コモンモードコイル1007bは、三相モータインバータ1517とバッテリ1261のマイナス側に実装される。
【0134】
コモンモードコイル1007a,1007bは、電装品が発生するノイズを除去して電気回路部1251へのノイズの侵入を防ぎ、さらに電動ブレーキ装置内部で発生するノイズを車体側に侵入することを防ぐ。ノーマルモードコイル1008は、コモンモードコイル1007aの後段に実装され、コモンモードコイル1007a,1007bでは低減することができない周波数特性のノイズを低減する。これにより、電気回路部内の制御回路の誤動作を防止することができる。
【0135】
なお、コモンモードコイル1007a,1007bは、固有の周波数特性を有し、その選定は、他の機器に影響を与えるノイズの周波数に合わせたものを選択する。
【0136】
コモンモードコンデンサ1006aは、電力線1600aによって伝導されたノイズをグランド線1600bに落とす。コモンモードコンデンサ1006bは、シールド材1604に照射されたノイズをグランド線1600bに落とす。
【0137】
コモンモードコンデンサ1006a,1006bの容量は、低減すべきノイズ周波数をシミュレーションや測定により導き出すことにより決定する。
【0138】
モータ1311で発生したノイズは、モータ1311と金属製筐体1301間に生じる浮遊容量成分1010を介して筐体1301に逃される。ここで、筐体1301が接地されていない場合、筐体1301からノイズが放射される。
【0139】
そこで、グランド強化線1004cは、グランド強化線1004aを介して、筐体1301とシールド材1604とを接続する。これにより、筐体1301と電気回路部1251との間において、電位の不連続点または面がなくなり電位の安定化が図れ、ノイズの放射を低減することができる。
【0140】
すなわち、筐体1301に照射されるノイズは、グランド強化線1004a,1004cを介して、シールド材1604に落とされ、バッテリのグランド1001または、コモンモードコンデンサ1006bを介してバッテリグランド1001へ落とされる。これにより、電動ブレーキ装置内部へのノイズの侵入及び、外部へのノイズの放射を防止することができる。
【0141】
グランド強化線1004cをシールド材1604に接続する場合、ノイズは、シールド材1604を介してバッテリグランド1001に落ちる。このとき、グランド強化線
1004bは、コモンモードコイル1007aと三相モータインバータ1517との間に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図2の実施形態における電動ブレーキ装置の回路構成図を示す。
【図2】本発明の一実施形態をなす電動ブレーキ装置を搭載した車両のブレーキシステムの概略構成図を示す。
【図3】図2の電動ブレーキ装置の概念図を示す。
【図4】図3の電気回路部1251の回路構成図を示す。
【図5】図3の電気回路部1251の各構成部材の分解斜視図を示す。
【図6】図5のアウターケース500の詳細な構成図を示す。
【図7】図5のインナーケース300の構成図を示す。
【図8】図5のインナーケース300へパワーモジュール408,金属板402、および制御回路基板404を取り付ける際の工程を示す。
【図9】本実施形態で使用されるハーネス600の詳細図を示す。
【図10】図9にて説明した電子部品搭載基板900にハーネス600を取り付ける際の工程を示す。
【図11】図3の電動ブレーキ装置の具体的な内部構成の断面図を示す。
【図12】図11の制御装置における、内部構成断面図を示す。
【符号の説明】
【0143】
1006 コモンモードコンデンサ
1007 コモンモードコイル
1008 ノーマルモードコイル
1311 モータ
1517 三相モータインバータ
1600a 電力線
1600b グランド線
1604 シールド材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪側に搭載された電動ブレーキ装置であって、
車輪とともに回転するディスクロータを押圧するブレーキパッドと、
回転トルクを発生する電動モータと、
前記回転トルクを前記ブレーキパッドの押圧力に変換する回転直動変換機構と、
少なくとも前記電動モータを収納する金属製筐体と、
前記車両に設置された電源装置から前記電動モータに電力を伝達する正極側の電力供給線と、
前記電動モータと前記車両のグランドとを接続する負極側の電力供給線と、
前記金属製筐体と前記負極側の電力供給線とを電気的に接続する第1導体と、
を備える電動ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記正極側の電力供給線に設置された第1誘電素子と前記負極側の電力供給線に設置された第2誘電素子との相互作用により前記正極側及び負極側の電力供給線を伝導するノイズを除去するノイズ除去手段と、
前記ノイズ除去手段と前記電動モータとの間における前記負極側の電力供給線と、前記金属製筐体とを電気的に接続する第2導体と、
を備える電動ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記第1導体と第2導体は、前記金属製筐体と接続された単一の導体から分岐している電動ブレーキ装置。
【請求項4】
車両の車輪側に搭載された電動ブレーキ装置であって、
車輪とともに回転するディスクロータを押圧するブレーキパッドと、
回転トルクを発生する電動モータと、
前記回転トルクを前記ブレーキパッドの押圧力に変換する回転直動変換機構と、
少なくとも前記電動モータを収納する金属製筐体と、
前記車両に設置された電源装置からの直流電流を交流電流に変換し、前記電動モータを駆動するインバータと、
前記電源装置から前記インバータに直流電流を伝達する正極側の電力供給線と、
前記インバータと前記車両のグランドとを接続する負極側の電力供給線と、
前記正極側及び負極側の電力供給線の間に直列接続された複数のコンデンサと、
前記金属製筐体と前記複数のコンデンサの接続部のいずれか一つとを電気的に接続された第1導線と、
を備える電動ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動ブレーキ装置であって、
少なくとも前記インバータと前記正極側の電力供給線と前記負極側の電力供給線と前記複数のコンデンサとを収納する制御回路用筐体と、
前記正極側の電力供給線と接続される電源線と、
前記負極側の電力供給線と接続されるグランド線と、
少なくとも該電源線及び該グランド線を覆い、前記複数のコンデンサの接続部のいずれか一つと電気的に接続されたシールド膜と、
該シールド膜を覆う外皮とを有し、車体に設置された機器と電気的に接続されたハーネスと、を備え、
前記第1導線は、前記シールド膜と接続される電動ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項4に記載の電動ブレーキ装置はさらに、
前記正極側の電力供給線に設置された第1誘電素子と前記負極側の電力供給線に設置された第2誘電素子との相互作用により前記正極側及び負極側の電力供給線を伝導するノイズを除去するノイズ除去手段と、
前記ノイズ除去手段と前記インバータとの間における前記負極側の電力供給線と、前記金属製筐体とを電気的に接続する第2導体と、
を備える電動ブレーキ装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記第1導体と第2導体は、前記金属製筐体と接続された単一の導体から分岐している電動ブレーキ装置。
【請求項1】
車両の車輪側に搭載された電動ブレーキ装置であって、
車輪とともに回転するディスクロータを押圧するブレーキパッドと、
回転トルクを発生する電動モータと、
前記回転トルクを前記ブレーキパッドの押圧力に変換する回転直動変換機構と、
少なくとも前記電動モータを収納する金属製筐体と、
前記車両に設置された電源装置から前記電動モータに電力を伝達する正極側の電力供給線と、
前記電動モータと前記車両のグランドとを接続する負極側の電力供給線と、
前記金属製筐体と前記負極側の電力供給線とを電気的に接続する第1導体と、
を備える電動ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記正極側の電力供給線に設置された第1誘電素子と前記負極側の電力供給線に設置された第2誘電素子との相互作用により前記正極側及び負極側の電力供給線を伝導するノイズを除去するノイズ除去手段と、
前記ノイズ除去手段と前記電動モータとの間における前記負極側の電力供給線と、前記金属製筐体とを電気的に接続する第2導体と、
を備える電動ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記第1導体と第2導体は、前記金属製筐体と接続された単一の導体から分岐している電動ブレーキ装置。
【請求項4】
車両の車輪側に搭載された電動ブレーキ装置であって、
車輪とともに回転するディスクロータを押圧するブレーキパッドと、
回転トルクを発生する電動モータと、
前記回転トルクを前記ブレーキパッドの押圧力に変換する回転直動変換機構と、
少なくとも前記電動モータを収納する金属製筐体と、
前記車両に設置された電源装置からの直流電流を交流電流に変換し、前記電動モータを駆動するインバータと、
前記電源装置から前記インバータに直流電流を伝達する正極側の電力供給線と、
前記インバータと前記車両のグランドとを接続する負極側の電力供給線と、
前記正極側及び負極側の電力供給線の間に直列接続された複数のコンデンサと、
前記金属製筐体と前記複数のコンデンサの接続部のいずれか一つとを電気的に接続された第1導線と、
を備える電動ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動ブレーキ装置であって、
少なくとも前記インバータと前記正極側の電力供給線と前記負極側の電力供給線と前記複数のコンデンサとを収納する制御回路用筐体と、
前記正極側の電力供給線と接続される電源線と、
前記負極側の電力供給線と接続されるグランド線と、
少なくとも該電源線及び該グランド線を覆い、前記複数のコンデンサの接続部のいずれか一つと電気的に接続されたシールド膜と、
該シールド膜を覆う外皮とを有し、車体に設置された機器と電気的に接続されたハーネスと、を備え、
前記第1導線は、前記シールド膜と接続される電動ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項4に記載の電動ブレーキ装置はさらに、
前記正極側の電力供給線に設置された第1誘電素子と前記負極側の電力供給線に設置された第2誘電素子との相互作用により前記正極側及び負極側の電力供給線を伝導するノイズを除去するノイズ除去手段と、
前記ノイズ除去手段と前記インバータとの間における前記負極側の電力供給線と、前記金属製筐体とを電気的に接続する第2導体と、
を備える電動ブレーキ装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記第1導体と第2導体は、前記金属製筐体と接続された単一の導体から分岐している電動ブレーキ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−238987(P2008−238987A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83249(P2007−83249)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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