説明

電動式のケーブル駆動装置および電動式パーキングブレーキ

【課題】左右のインナーケーブルの張力を均一にすることができ、耐久性が高い電動式のケーブル駆動装置を提供する。
【解決手段】モータMと、そのモータMの出力軸に連結される減速機G1と、その減速機G1の出力側に連結され、異形断面の輪郭部分を備えた回転シャフト12と、その回転シャフト12に軸方向移動自在に設けられる入力ギヤ29と、その入力ギヤ29を噛み合う出力ギヤ30を備えると共に軸方向移動自在に設けられるスクリューシャフト35と、そのスクリューシャフト35に螺合されると共に、軸方向移動自在に、かつ、回転が拘束されるようにガイドされるナット部材34と、スクリューシャフト35およびナット部材34にそれぞれ連結される第1インナーケーブル15および第2インナーケーブル16とを備えているケーブル駆動装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動式のケーブル駆動装置およびそれを用いた自動車などの電動式パーキングブレーキに関する。自動車などには、モータバイク、三輪自動車、パワーアシスト式自転車、ゴルフカート、フォークリフトなどの各種車両が含まれる。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特表2001−513179号公報
【0003】
特許文献1には、図12に示すような、車両用の駐車ブレーキ100が開示されている。この駐車ブレーキ100は、外周に歯車101が形成され、内周にスプラインハブが形成されると共に、軸方向に移動しないように、かつ、回転自在に支持される構成部材102と、その構成部材の内周のスプラインハブと噛み合い、軸方向に移動自在に設けられる中空のスプライン103と、そのスプラインの内周に形成される雌ネジと螺合する雄ネジ部材(スピンドル)104とを備えている。
【0004】
スプライン103の一端には第1ブレーキケーブル105が係止され、雄ネジ部材104の一端には第2ブレーキケーブル106が係止されている。そして構成部材102の外周の歯車101はモータMによって駆動され、モータが一方向に回転すると、スプライン103の雌ネジと雄ネジ部材104とが相対的に螺進して左右のブレーキケーブル105、106同士が引き合う。それにより左右のブレーキがかかる。
【0005】
他方、モータMが逆方向に回転すると、スプライン103の雌ネジと雄ネジ部材104が前記とは逆周りに相対的に回転し、左右のブレーキケーブル105、106同士が引き合う張力を弱める。それによりブレーキが解除される。スプライン103と雄ネジ部材104とからなるテレスコピック装置は、構成部材102に対して軸方向移動自在であるので、左右のブレーキには同一の力が加わる。このように特許文献1の駐車ブレーキは、モータによってパーキングブレーキをかけたり解除したりすることができ、左右のブレーキ力を均等にすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の駐車ブレーキ100は、左右のブレーキケーブル105、106同士を互いに引っ張り合わせる構成にしているので、両者の張力を均等にすることができ、スペースも小さくて済む。しかし雌ネジを備えたスプライン103にケーブルが連結されているので、すなわち減速機の最終的な出力部にスプラインが設けられているので、スプラインハブからスプラインに伝達すべきトルクが大きい。そのためスプラインハブおよびスプラインに高い加工精度を要し、耐久性が問題になる。さらに伝達トルクが大きいため、スプラインの摺動部の抵抗も大きくなり、推進力効率が低い。
【0007】
本発明は機構が簡単で、しかも電動パーキングブレーキに用いたときに左右のブレーキ力をほぼ均等にすることができる電動式ケーブル駆動装置および電動式パーキングブレーキを提供することを課題としている。さらに本発明は軸方向に移動自在のトルク伝達部がなく、あるいはトルク伝達部がある場合でもその伝達すべきトルクが小さくて済む、耐久性が高い電動式のケーブル駆動装置および電動式パーキングブレーキを提供することを第2の技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動式のケーブル駆動装置(請求項1)は、モータと、そのモータの出力軸に連結される減速機と、その減速機の出力側に連結され、異形断面の輪郭部分を備えた回転シャフトと、その回転シャフトとトルク伝達可能に、かつ、軸方向移動自在に設けられる第1ネジ部材と、その第1ネジ部材に螺合されると共に、軸方向移動自在に、かつ、回転が拘束されるようにガイドされる第2ネジ部材と、前記第1ネジ部材に対して同心状に回転自在に連結され、軸方向に延びる第1インナーケーブルと、前記第2ネジ部材に一端が連結され、第1インナーケーブルと反対側に延びる第2インナーケーブルとを備えていることを特徴としている。
【0009】
このような電動式のケーブル駆動装置においては、前記第1ネジがナット部材であり、前記第2ネジがスクリューシャフトであるものが好ましい(請求項2)。その場合、前記回転シャフトに入力ギヤが軸方向移動自在に、かつ、トルク伝達可能に支持されており、前記ナット部材に前記入力ギヤと噛み合う出力ギヤが設けられており、前記入力ギヤと出力ギヤとを、それらが軸方向に一緒に移動するように支持するギヤボックスを備えているものが好ましい(請求項3)。
【0010】
本発明の電動式ケーブル駆動装置の第2の態様(請求項4)は、モータと、そのモータの出力軸に連結される減速機と、その減速機の出力部材に、軸方向移動自在に、かつトルク伝達可能に連結され、異形断面の輪郭部分を備えたスクリューシャフトと、そのスクリューシャフトの雄ネジに螺合されると共に、軸方向移動自在に、かつ、回転が拘束されるようにガイドされるナット部材と、前記スクリューシャフトに対して同心状に回転自在に連結され、軸方向に延びる第1インナーケーブルと、前記ナット部材に一端が連結され、第1インナーケーブルと反対側に延びる第2インナーケーブルとを備えていることを特徴としている。
【0011】
このような電動式のケーブル駆動装置においては、さらにハウジングを有し、そのハウジングに対し、前記モータと減速機とがインナーケーブルが延びている方向にスライド自在に設けられているものが好ましい(請求項5)。
【0012】
本発明の電動式のケーブル駆動装置の第3の態様(請求項6)は、モータと、そのモータの出力軸に連結される減速機と、その減速機の出力側に連結される第1ネジ部材と、その第1ネジ部材に螺合されると共に、軸方向移動自在に、かつ、回転が拘束されるようにガイドされる第2ネジ部材と、前記第1ネジ部材に対して同心状に回転自在に連結され、軸方向に延びる第1インナーケーブルと、前記ナット部材に一端が連結され、第1インナーケーブルと反対側に延びる第2インナーケーブルと、ハウジングとを備え、前記モータおよび減速機がハウジングに対してインナーケーブルが延びている方向にスライド自在に支持されていることを特徴としている。
【0013】
本発明の電動式のケーブル駆動装置の第4の態様(請求項7)は、モータと、そのモータの出力軸に連結される減速機と、その減速機の出力部材に対し、軸方向移動自在に、かつトルク伝達可能に連結される楕円ないし矩形断面の輪郭部分を備えたナット部材と、そのナット部材に螺合されると共に、軸方向移動自在に、かつ、回転が拘束されるようにガイドされるスクリューシャフトと、前記ナット部材に対して同心状に回転自在に連結され、軸方向に延びる第1インナーケーブルと、前記スクリューシャフトに一端が連結され、第1インナーケーブルと反対側に延びる第2インナーケーブルとを備えていることを特徴としている。
【0014】
前記いずれの電動式のケーブル駆動装置においても、前記第1インナーケーブルまたは第2インナーケーブルの張力を検出する荷重検出装置が設けられているものが好ましい(請求項8)。前記荷重検出装置は、前記第1ネジ部材と第1インナーケーブルの間、または第2ネジ部材と第2インナーケーブルの間に介在される、インナーケーブルを引き込む方向に付勢するバネと、インナーケーブルの位置を検出する位置センサとからなるものが好ましい(請求項9)。
【0015】
さらに前記いずれの電動式のケーブル駆動装置においても、前記モータの回転に応じてパルスを発生するパルス発生手段と、そのパルス発生手段の出力パルスをカウントしてインナーケーブルの操作量に換算する手段とを備えているものが好ましい(請求項9)。
【0016】
本発明の自動車などの電動式パーキングブレーキ(請求項10)は、前記いずれかのケーブル駆動装置と、前記第1インナーケーブルおよび第2インナーケーブルの他端側が連結される車輪のブレーキレバーと、それらのブレーキレバーをブレーキ解除側に付勢するバネと、ブレーキレバーと連結されるブレーキ用摩擦部材とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のケーブル駆動装置(請求項1)は、モータが一方向に回転すると、減速機が回転し、その減速機の出力側に連結されている回転シャフトが回転する。それによりその回転シャフトとトルク伝達可能に設けられる第1ネジ部材が回転する。そして第1ネジ部材の回転に伴い、回転が拘束されている第2ネジ部材は、第1ネジ部材との螺合が進み、あるいは後退するので、第1ネジ部材に対して軸方向に駆動される。それにより、第1ネジ部材に連結されている第1インナーケーブルと第2ネジ部材に連結されている第2インナーケーブを、たとえばブレーキを効かせるためにケーブル駆動装置の内部側に引き込む。
【0018】
そのとき、第1インナーケーブルと第2インナーケーブルとがいわば軸方向に直列的に連結された状態である。しかも第1ネジ部材は回転シャフトに対して軸方向移動自在であるので、第1インナーケーブルの張力と第2インナーケーブルの張力が異なる場合でも、第1ネジ部材は第1インナーケーブルと第2インナーケーブルの張力が均等になるまで移動し、両者の引き力がほぼ均等になる。
【0019】
モータが他方向に回転すると、回転シャフトが前述とは逆方向に回転し、第1ネジ部材と第2ネジ部材とは前述とは逆方向に相対的に軸方向に移動する。それにより第1インナーケーブルおよび第2インナーケーブルを引く力を弱める。その場合も、第1インナーケーブルと第2インナーケーブルの張力がほぼ均等になるように第1ネジ部材が軸方向に移動する。
【0020】
前記第1ネジがナット部材であり、前記第2ネジがスクリューシャフトである場合(請求項2)は、ナット部材の表面に回転シャフトからトルク伝達すればよいので、回転シャフトからナット部材へのトルク伝達が容易である。
【0021】
前記回転シャフトに入力ギヤが軸方向移動自在に、かつ、トルク伝達可能に支持されており、前記ナット部材に前記入力ギヤと噛み合う出力ギヤが設けられており、前記入力ギヤと出力ギヤとを、それらが軸方向に一緒に移動するように支持するギヤボックスを備えている場合(請求項3)は、ナット部材の軸方向の移動ストロークを大きくすることができ、しかも入力ギヤと出力ギヤのギヤ比を適切に選択することにより、その部分で減速作用をさせることもできる。
【0022】
本発明のケーブル駆動装置の第2の態様(請求項4)では、前述のケーブル駆動装置と同様に、モータが一方向に回転すると、スクリューシャフトが回転し、第1インナーケーブルと第2インナーケーブルを引き込むように操作する。モータが逆方向に回転すると、スクリューシャフトが逆方向に回転し、ナット部材がスクリューシャフトから離れる方向に移動する。それにより両方のインナーケーブルが張力を弱めるように互いに離れる。そしてスクリューシャフトが減速機の出力部材に対して軸方向移動自在に連結されているので、第1インナーケーブルと第2インナーケーブルの張力が均等になるようにスクリューシャフトが移動する。
【0023】
このような電動式のケーブル駆動装置が、ハウジングを有し、そのハウジングに対し、前記モータと減速機とがインナーケーブルが延びている方向にスライド自在に設けられている場合(請求項5)は、第1スクリューシャフトと減速機の出力部材との間のスライドストロークに加えて、モータと減速機のハウジングに対する軸方向のスライドストロークが加わる。それにより全体のスライドストロークが長くなる。逆に言えば、必要な軸方向のスライドストロークを第1ネジと回転部材の間と、減速機のストロークの両方に割り振ることができるので、ケーブル駆動装置の軸方向の長さをコンパクトにすることができる。
【0024】
本発明のケーブル駆動装置の第3の態様(請求項6)は、モータが一方向に回転すると、減速機が回転し、その出力側に連結される第1ネジ部材が回転する。そして第1ネジ部材の回転に伴い、回転が拘束されている第2ネジ部材は、第1ネジ部材との螺合が進み、あるいは後退するので、第1ネジ部材に対して軸方向に駆動される。それにより、第1ネジ部材に連結されている第1インナーケーブルと第2ネジ部材に連結されている第2インナーケーブを、たとえばケーブル駆動装の内部側に引き込む。そのとき、モータおよび減速機はベースに対してスライド自在であるので、第1インナーケーブルと第2インナーケーブルの張力がほぼ均等になる。
【0025】
モータが他方向に回転すると、第1ネジ部材が前述とは逆方向に回転し、第1ネジ部材と第2ネジ部材の螺進方向が前述とは逆になり、両者は相対的に前記とは逆方向に移動する。それにより第1インナーケーブルおよび第2インナーケーブルを引く力を弱める。その場合も、第1インナーケーブルと第2インナーケーブルの張力はほぼ均等である。
【0026】
本発明の電動式のケーブル駆動装置の第4の態様(請求項7)は、ナット部材が楕円ないし矩形断面の輪郭部分を備えており、その部分で減速機の出力部材と軸方向移動自在に、かつ、トルク伝達可能に連結されているので、スプラインとスプラインハブによる結合のような高精度の部品が不要であり、製造が容易である。
【0027】
前記第1インナーケーブルまたは第2インナーケーブルの張力を検出する荷重検出装置が設けられている場合(請求項8)は、インナーケーブルに過剰な負荷が加わったとき、ただちにワーニング手段で運転者に異常であることを認知させたり、モータを停止させるなど、適切な対応をとることができる。それによりインナーケーブルの操作対象あるいは装置自体の安全性を確保することができる。
【0028】
さらにインナーケーブルの送り出し操作のときに、無負荷になった時点でモータを停止させるようにすると、インナーケーブルに永久伸びが生じた場合には、余分にケーブルを送り出すことがない。したがってインナーケーブルに弛みが生じにくく、つぎにインナーケーブルを引っ張るときも余分な引っ張り操作が不要である。
【0029】
前記荷重検出装置が、前記第1ネジ部材と第1インナーケーブルの間、または第2ネジ部材と第2インナーケーブルの間に介在される、インナーケーブルを引き込む方向に付勢するバネと、インナーケーブルの位置を検出する位置センサとからなる場合(請求項9)は、第1ネジの軸方向の移動と無関係に、バネ・荷重の比例関係を利用した荷重検出装置を構成することができる。そのため、インナーケーブルの張力を容易に検出することができる。
【0030】
前記モータの回転に応じてパルスを発生するパルス発生手段の出力をカウントしてインナーケーブルの操作量に換算する手段を備えている場合(請求項10)は、インナーケーブルの操作量を高精度で検出することができる。それにより、モータを回転させた後、適切なタイミングで停止させることができる。また、前述の張力検出装置の出力と組み合わせて、異常が発生したことを検出するなど、種々の制御に用いることができる。
【0031】
本発明の電動式パーキングブレーキ(請求項11)は、前述のケーブル駆動装置を用いているので、高精度のスプラインやスプラインハブを要せず、耐久性が高く、しかも左右の車輪のブレーキ力をほぼ均等にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
つぎに図面を参照しながら本発明のケーブル駆動装置および電動式パーキングブレーキの実施の形態を説明する。図1は本発明のケーブル駆動装置の一実施形態を示す一部断面平面図、図2は図1のケーブル駆動装置の作動状態を示す一部断面平面図、図3は図1のIII-III線断面図、図4aおよび図4bはそれぞれ図1のケーブル駆動装置におけるトルク伝達部の他の実施形態を示す正面図、図5は本発明の電動式パーキングブレーキの一実施形態を示す概略平面図、図6は本発明のケーブル駆動装置の他の実施形態を示す一部断面平面図、図7は図5のケーブル駆動装置の変形例の作動状態を示す一部断面平面図、図8は本発明のケーブル駆動装置のさらに他の実施形態を示す一部断面平面図、図9は本発明のケーブル駆動装置のさらに他の実施形態を示す一部断面平面図、図10は図9のケーブル駆動装置の要部斜視図、図11aは図9におけるナット部材の正面図、図11bは本発明に関わるナット部材の他の実施形態を示す正面図である。
【0033】
図1に示すケーブル駆動装置10は、ベースとなるハウジング11と、そのハウジングに取り付けられるモータMと、ハウジング11内に収容され、モータMの回転を減速する第1減速機G1と、その第1減速機G1の出力シャフト12とハウジング11に取り付けたガイドロッド13に摺動自在に設けられる第2減速機G2と、その第2減速機G2の出力部に連結されるネジ−ナット機構14と、そのネジ−ナット機構14によって互いに逆向きに往復駆動される第1インナーケーブル15および第2インナーケーブル16とを備えている。なお符号17は第1インナーケーブル15とネジ−ナット機構14との間に介在され、第1インナーケーブル15の張力を検出する荷重検出装置である。
【0034】
第1減速機G1は、図3に示すように、モータMの出力シャフトに固定されるピニオン21と、ハウジング11に取り付けた第1ロッド22によって回転自在に支持される第1ギヤ23と、ハウジング11に取り付けた第2ロッド24によって回転自在に支持される第2ギヤ25とを備えている。第1ギヤ23はピニオン21と噛み合う大径ギヤ23aと、その大径ギヤ23aと共周りする小径ギヤ23bとを有する。第2ギヤ25は、第1ギヤ23の小径ギヤ23bと噛み合う大径ギヤ25aと、その大径ギヤと共周りする異形断面の出力シャフト(回転シャフト)12とからなる。
【0035】
ここにいう異形断面は、円形以外の断面形状であり、その外周に、被駆動部材をトルク伝達可能に、かつ、軸方向移動自在に設けることができるものである。異形断面の出力シャフト12としては、スプライン軸が好ましい。ただし図4aのように断面小判型ないし楕円形の出力シャフト12aとすることもでき、図4bに示すように矩形状の出力シャフト12b、さらに多角形状の出力シャフトなど、種々の形態にすることができる。この実施形態では、異形断面の出力シャフト12は第2ギヤ25の一部を構成しており、前述の第2ロッド24の周囲に回転自在に支持されている。出力シャフト12の端部、とくに両端を回転自在に支持してもよい。その場合は第2ロッド24は不要であり、中実にすることができる。
【0036】
上記のように構成される第1減速機G1は、モータMの回転を、ピニオン21、第1ギヤ23および第2ギヤ25を介して2段階で減速して、つぎの第2減速機G2に伝える。
【0037】
図1に戻って、第2減速機G2は、前述の第1減速機G1の出力シャフト12およびガイドロッド13によって軸方向移動自在にガイドされるギヤボックス28と、そのギヤボックス28内に収容され、出力シャフト12の周囲に軸方向移動自在に、かつ、トルク伝達可能に設けられる小径の入力ギヤ29と、ギヤボックス28内に収容され、入力ギヤ29と噛み合う大径の出力ギヤ30とからなる。ギヤボックス28は、入力ギヤ29および出力ギヤ30を直接支持する必要はなく、入力ギヤ29と出力ギヤ30とを一緒に軸方向にスライドさせる機能を備えていればよい。なお、入力ギヤ29と出力ギヤ30の間に、第1減速機G1の第1ギヤ23のような大径ギヤ23aと小径ギヤ23bを備えた中間ギヤを介在させてもよい。
【0038】
この実施形態では、ギヤボックス28は、入力ギヤ29の両側に設けた断面円形部分をベアリングないし軸受けブッシュ31を介して回転自在に保持すると共に、出力30の両側に設けた断面円形部分をベアリングないし軸受けブッシュ32を介して回転自在に保持することにより、入力ギヤ29と出力ギヤ30を軸方向に一緒に移動させるようにしている。そしてギヤボックス28が軸方向のどの位置にある場合でも、入力ギヤ29から出力ギヤ30にトルク伝達されるときに、ギヤ比に応じた減速作用が奏される。
【0039】
前記ネジ−ナット機構14は、第2減速機G2の出力ギヤ30と一体化された筒状のナット部材34と、そのナット部材34に形成された雌ネジと螺合する雄ネジを備えたスクリューシャフト35とからなる。ナット部材34はその一端(図1の右側)がギヤボックス28を介してハウジング11に回転自在、かつ、軸方向移動自在に支持されているが、他端(図1の左側)近辺をハウジング11によって回転自在に、かつ軸方向移動自在に支持するのが好ましい。
【0040】
この実施形態では、ナット部材34の他端に、スィーベルジョイント36を介して略U字状の連結ブラケット37が相対的に回転自在に連結されており、その連結ブラケット37に第1インナーケーブル15の一端が連結されている。すなわち、第1インナーケーブル15の一端に固定されているケーブルエンド38はピン39によってジョイント40に係止され、そのジョイント40には、摺動ロッド41の基部41aがネジ連結されている。ネジ連結の目的は、ジョイント40と摺動ロッド41を使用し、バネ42のクリアランス(ガタ)を詰めるためである。
【0041】
摺動ロッド41は連結ブラケット37の底部37aを貫通しており、摺動ロッド41の径大の頭部41bと連結ブラケット37の底部37aとの間に、圧縮コイルスプリングからなるバネ42が介在されている。バネ42は摺動ロッド41を囲むように配置されている。そして連結ブラケット37内には、摺動ロッド41の頭部41bの位置を検出するセンサ43あるいは近接スイッチが設けられている。センサとしてはホールICセンサが好ましい。ただしリミットスイッチとすることもできる。第1インナーケーブル15の張力に応じて長さが変化するバネ42、それによって位置が変化する摺動ロッド41およびその摺動ロッド41の位置を検出するセンサ43は、前述の荷重検出装置17を構成している。
【0042】
スクリューシャフト35の端部には、第2インナーケーブル16の一端が連結されている。スクリューシャフト35はガイド44によって、回転しないように、かつ、軸方向移動自在にガイドされている。そのようなガイドはハウジング11に設けることができる。このケーブル駆動装置10では、第1インナーケーブル15と第2インナーケーブル16が同心状に配置されている。また、それらのインナーケーブル15、16はネジ−ナット機構14と同心状であり、モータMの回転軸と平行である。
【0043】
前記インナーケーブル15、16は、金属素線を撚り合わせた可撓性を有するものであり、プルコントロールケーブルに用いられるインナーケーブル(内索)が採用される。金属素線を撚り合わせた撚り線の外周に合成樹脂製のコートを設けることもある。それらのインナーケーブル15、16のハウジング11から出ている部分は、図5に示すように、コントロールケーブルのアウターケーシング(導管)45によって、自動車の左右の車輪(通常は後輪)のブレーキ機構50、50まで案内され、係止される。
【0044】
左右のアウターケーシング45、45はそれぞれ断面角形の金属線を密に螺旋状に巻いた鎧層とその外周に設けられる合成樹脂製の被覆とからなる。内面に合成樹脂製のチューブ状のライナが設けられる場合もある。
【0045】
アウターケーシング45の端部には、従来公知の筒状のケーシングキャップ46にカシメなどで固定され、そのケーシングキャップ46に設けられているフランジおよび雄ネジを利用してハウジング11に固定される。
【0046】
前記のように構成されるネジ−ナット機構14においては、出力ギヤ30とナット部材34が回転すると、ナット部材34と螺合しているスクリューシャフト35は、ガイドによって回転が拘束されているので、ナット部材34に対して相対的に回転し、軸方向に移動する。すなわち右ネジの場合、ナット部材34が手前側(図1の左側から見たときの時計方向)に回転すると、図2に示すように、スクリューシャフト35がナット部材34に入り込むように相対的に移動する。それによりスクリューシャフト35とナット部材34の螺合が深くなり、両者で構成されるナット−ネジ機構14全体の長さが短くなる。したがってナット部材34に連結されている第1インナーケーブル15およびスクリューシャフト35に連結されている第2インナーケーブル16がケーブル駆動装置10に引き込まれ、ブレーキ作用が奏される。
【0047】
さらにネジ−ナット機構14自体はハウジング11に対して軸方向に固定されていないので、左右のパーキングブレーキの反力が不均等な場合は、それらの反力を均一にするようにネジ−ナット機構14がギヤボックス28と一緒に軸方向に移動する。それにより左右の反力がほぼ均等になり、ブレーキの効きもほぼ均等になる。なお、ナット部材34が一回転するときにスクリューシャフト35がネジの1ピッチ分(1リード分)移動するので、この機構でも減速作用が奏される。さらにこのネジ−ナット機構14は、モータMを停止させている状態でも、ブレーキ側からの力によってモータ側を回転させない自己拘束性を備えているので、電動式パーキングブレーキにとって有用な構成要素である。
【0048】
モータMが逆方向に回転すると、前述とは逆にナット部材34はスクリューシャフト35から抜け出るように回転し、ネジ−ナット機構14の全体の長さが長くなる。それによって第1インナーケーブル15および第2インナーケーブル16を引っ張る力がなくなる。それによってブレーキ操作を解除することができる。
【0049】
図1、図2のケーブル駆動装置10では、ナット部材34は回転する側であるので、本発明における第1ネジ部材である。スクリューシャフト35は回転しない側であるので、本発明における第2ネジ部材である。なお、スクリューシャフト35に出力ギヤ30を設けてギヤボックス28で回転自在に支持し、ナット部材34を回転しないように、かつ、軸方向移動自在に支持することもできる。その場合はスクリューシャフト35が第1ネジ部材であり、ナット部材が第2ネジ部材である。
【0050】
さらに図1、図2のケーブル駆動装置10では、出力シャフト12の外周に入力ギヤ29を軸方向移動自在に嵌合し、ナット部材34に設けた出力ギヤ30を入力ギヤ29と噛み合わせているが、出力シャフト12をスプライン軸とし、出力ギヤ30をその出力シャフト12に直接噛み合わせることもできる。
【0051】
前記モータMは、たとえば3相のコイル相を備えたDCブラシレスモータが用いられる。そしてモータMのロータとそのロータと対向するハウジング11などの固定要素との間、あるいは第1ギヤ23などの回転部材とハウジング11などの固定要素との間に、コイル相の磁極を反転励磁させるための位置検出用センサを設けてインナーケーブル15、16の操作ストロークを検出するのが好ましい。
【0052】
そのようなセンサとしては、ロータに設けられる3個の検出用磁石とモータハウジングに設けられるホールICセンサ(ホール効果素子センサ)との組み合わせが好適である。検出用磁石に代えて、コイルと作用する駆動用の磁石を用いることもできる。そのほうが構成が簡単である。3個のホールICセンサのほか、光センサなど、他のセンサを用いることもできる。それらのセンサの出力はコンパレータなどの増幅回路、コイルの磁極を反転させる転流回路などを備えたモータドライバに送られる。
【0053】
本発明のケーブル駆動装置では、前記ケーブルの位置検出センサのパルス出力をケーブル位置演算回路に送り、パルス数をカウントし、ケーブル位置を示す信号に換算するのが好ましい。得られたケーブル位置信号は、基本的にケーブルによる操作対象の位置信号として、マイクロプロセッサに送られ、ブレーキのON/OFF操作などのための操作スイッチ、各種のインターロック信号に基づいてモータMの正転、停止、逆転の制御、回転数の制御信号を作成し、モータドライバを介してモータMを回転/停止させる。
【0054】
また、インナーケーブルの永久伸びの補償、ブレーキ用摩擦部材の摩耗などによるケーブル基準位置の変化は、毎回あるいは数回のブレーキ操作のたびに演算され、記憶され、適切なブレーキ操作のために用いることができる。インナーケーブルの永久伸びの補償をする場合、たとえばインナーケーブルを送り出す操作において荷重検出装置17が無負荷状態を検出したときにモータを停止させると共に、ケーブル位置の基準位置をゼロに再設定するなどにより行うことができる。
【0055】
つぎに図5を参照して前記ケーブル駆動装置を備えた電動式パーキングブレーキの実施形態を説明する。図5の電動式パーキングブレーキ54は、前述のケーブル駆動装置10と、そのケーブル駆動装置10から左右に延びるコントロールケーブル55、55と、それらのコントロールケーブル55、55の他端側に連結されるブレーキ機構50、50とからなる。ブレーキ機構50は、ブレーキドラムと、そのブレーキドラムに取り付けられるブレーキシューと、ブレーキドラムを戻し方向(矢印R方向)に付勢するリターンスプリングと、コントロールケーブル55のインナーケーブル15、16で作動するパーキングレバーとを備えた公知のものである。
【0056】
この電動パーキングブレーキ54は、通常の状態ではリターンスプリングの付勢力でブレーキドラムが一方向に回動してブレーキ解除の状態になっている。そして運転者がスイッチを入れるとケーブル駆動装置10のモータMが一方向に回転し、図1のナット部材34が回転し、スクリューシャフト35をナット部材34の内部に引き込む。それによりナット部材34およびスクリューシャフト35に連結されているインナーケーブル15、16が引っ張られ、図5のコントロールケーブル55のインナーケーブル15、16を引く。それによりパーキングレバーがブレーキ作動方向に回動してブレーキがかかる。
【0057】
このブレーキ作用のときは、前述のケーブル操作位置検出回路であらかじめ記憶されているデータと比較して停止信号が出され、モータが停止する。さらに荷重検出装置17の出力が制御回路に送られ、所定の上限の値を超えたときに、モータMを停止させるように構成している。そして前記ケーブルの操作量の検出回路がケーブルの位置を検出し、ブレーキが掛かっているまでケーブルが移動していないにも関わらず、ケーブルの荷重が所定値を越えたときは、システム異常と判断し、ワーニングランプやワーニングブザーなどで運転者に故障を認知させることができる。
【0058】
運転者がブレーキを解除する場合は、スイッチの操作によりモータMを逆方向に回転させ、ナット部材34からスクリューシャフト35を送り出す。それによりインナーケーブル15、16は図5のブレーキ機構50のリターンスプリングの付勢力により引き戻される。モータMを停止させるタイミングでは、ブレーキが充分に掛かっている状態で、しかもインナーケーブル15、16に弛みが生じない状態である必要がある。
【0059】
そこで前記制御回路では、インナーケーブル15、16の送り出し操作のときに、無負荷になった時点でモータMを停止させるようにしている。そのため、インナーケーブル15、16に永久伸びが生じた場合には、余分にインナーケーブル15、16を送り出すことがない。したがってインナーケーブル15、16に弛みが生じにくく、つぎにインナーケーブル15、16を引っ張るときも余分な引っ張り操作が不要である。さらに前述のようにケーブル駆動装置10のモータMの制御は高精度であるので、ブレーキ操作は適切に行われ、摩擦部材の無駄な摩耗が抑制されると共に、インナーケーブル15、16の弛みや張り過ぎに基づく損耗が抑制される。
【0060】
上記のような電動式パーキングブレーキ54は、通常は駐車時に用いられる。ただし緊急時にサービスブレーキに代わる非常用ブレーキとして操作できるようにしておくのが好ましい。前記実施形態ではモータMとして3相のブラシレスモータを用いているが、ブラシ付きのモータであってもよく、3相以上の励磁形式のモータも使用しうる。
【0061】
ブラシ付きのモータのように、内部にパルス発生手段を備えていないモータを用いる場合は、モータの出力軸、あるいは減速機のギヤ、ナット部材などの回転によってパルスを発生する手段を設けるのが好ましい。そのようなパルス発生手段は、回転軸やギヤなどの回転部材に設けられる検出用磁石(基本的に多極磁石1個)と、ケーシングなどの固定要素に設けられるホールICセンサ(ホール効果素子センサ)との組み合わせが好適である。
【0062】
つぎに図6、図7を参照して本発明のケーブル駆動装置の他の実施形態を説明する。このケーブル駆動装置60は、ギヤボックス28をハウジング11に取り付けた2本のガイドロッド61、61によってインナーケーブル15、16が延びている方向に摺動自在に設け、さらにモータMをギヤボックス28に取り付けている。また、第2減速機(図1の符号G2)を省略して、第1減速機G1の第1ギヤ23の小径ギヤ23bを出力ギヤ30と噛み合わせ、その出力ギヤ30に対し、スクリューシャフト35の一部(スライド部)35aをトルク伝達可能に、かつ、軸方向スライド自在に連結している。それにより、モータMは第1減速機G1と共に軸方向に移動自在であり、さらにスクリューシャフト35が第1減速機G1に対して軸方向に移動自在である。
【0063】
スクリューシャフト35のスライド部はスプライン軸とすることもでき、図4aの出力シャフト12aのような小判形ないし楕円状にすることもできる。また、図4bの出力シャフト12bと同様に角形にしたり、多角形状にすることもできる。出力ギヤ30には、それらのスクリューシャフト35のスライド部を軸方向移動自在に、かつ、トルク伝達可能に嵌合する形状の孔が形成されている。さらに出力ギヤ30には、ケーブルの操作位置を検出するセンサ62を設けている。
【0064】
そしてスクリューシャフト35の雄ネジと螺合する雌ネジを備えたナット部材34が、ハウジング11に対して回転しないように、かつ、軸方向移動自在に設けられている。このものもナット部材34とスクリューシャフト35とでネジ−ナット機構14を構成している。ただしこの実施形態ではナット部材34は回転しない側であるので、第2ネジ部材であり、スクリューシャフト35は回転する側であるので、第1ネジ部材である。ただし図1,図2の場合と同様に、出力ギヤ30をナット部材34に設け、そのナット部材34にスクリューシャフト35を螺合し、スクリューシャフト35を軸方向移動自在に、かつ、回転しないようにガイドすることもできる。
【0065】
図6のケーブル駆動装置60では、ナット部材34は、図1の場合より短くしており、スクリューシャフト35の進入を受け入れる筒状ないしU字状の連結ブラケット37に固定している。なお、連結ブラケット37をハウジング11に対して回転しないように、かつ、軸方向移動自在にガイドしてもよい。
【0066】
連結ブラケット37には、前述の場合と同様に、荷重検出装置17を介して第2インナーケーブル16の一端が係止されている。スクリューシャフト35の端部には、スィーベルジョイント63を介して第1インナーケーブル15が連結されている。他の構成は図1のケーブル駆動装置10と同様であり、同一の作用効果を奏する。
【0067】
さらにこのケーブル駆動装置60は、モータMおよびギヤボックス28の全体を摺動自在に構成しているので、減速機のギヤなどのトルク伝達要素の途中に、トルク伝達可能で、かつ、軸方向にスライドする機構、たとえばスプラインとスプラインハブとの組み合わせを設ける必要がない。さらにこのケーブル駆動装置60では、ギヤボックス28を軸方向に移動自在に設ける構成と、スクリューシャフト35を出力ギヤ30に対してトルク伝達可能に、かつ、軸方向移動自在に設ける構成の両方を採用しているので、ハウジング11の軸方向の長さを短くすることができる。
【0068】
ただし、スクリューシャフト35を出力ギヤ30に対して軸方向移動自在に設ける構成を省略して、スクリューシャフト35が出力ギヤ30に対して相対的に移動しないように構成することもできる。その場合はスクリューシャフト35と出力ギヤ30とは別個の形成して互いに固定してもよく、あるいは一体に成型してもよい。スクリューシャフト35あるいは出力ギヤ30は、ギヤボックス28に対してスラスト荷重を支えるベアリングで回転自在に、かつ、軸方向の力を伝達するように支持させる。
【0069】
その場合でも、ギヤボックス28がガイドロッド61、61によってインナーケーブル15、16の軸方向にスライド自在であるので、第1インナーケーブル15と第2インナーケーブル16の間の張力のバランスをとることができる。さらに第1インナーケーブル15と第2インナケーブル16のバランスをとるためのストロークが短くなるが、全体の構成がシンプルになる。
【0070】
また、図6に示すケーブル駆動装置60では、図7に示すように、ギヤボックス28を第1インナーケーブル15側(図7の右側)に付勢するバネ64を設けてもよい。このようなバネ64は、圧縮コイルスプリングで構成し、ハウジング11の内壁とギヤボックス28との間に介在させ、それぞれガイドロッド61の周囲に配置すればよい。このようなバネ64を設ける場合は、ギヤボックス28を一方向に押しつけることができるので、振動を抑制し、ガタ・異音の発生を抑制することができる。
【0071】
つぎに図8を参照して本発明のケーブル駆動装置のさらに他の実施形態を説明する。図8に示すケーブル駆動装置70は、前述とは逆に、図6のケーブル駆動装置60におけるスクリューシャフト35を出力ギヤ30に対してトルク伝達自在、かつ軸方向移動自在とする構成を残し、ガイドロッド61を省略して、ギヤボックス28をハウジング11に固定したものである。すなわち図6のケーブル駆動装置60におけるギヤボックス28の移動自在の構成を省略したものである。
【0072】
スクリューシャフト35を出力ギヤ30に対して軸方向移動自在かつトルク伝達可能に設けている点、ならびにスクリューシャフト35に第1インナーケーブル15を連結し、ナット部材34に第2インナーケーブル16を連結している点などは、図6のケーブル駆動装置60と実質的に同一である。このケーブル駆動装置70では、図6の場合に比して第1インナーケーブル15と第2インナーケーブル16のバランスをとるためのストロークが短くなるが、全体の構成がシンプルになる。
【0073】
なお、図8のケーブル駆動装置70では、ナット部材34を保持する連結ブラケット37を軸方向移動自在に、かつ、回転しないようにガイドする第1ガイド部材71を設けている。さらにスィーベルジョイント63を軸方向移動自在に、かつ、回転しないようにガイドする第2ガイド部材72を設けている。第1ガイド部材71は、スクリューシャフト35の雄ネジとナット部材34の螺合に基づく、進行および後退を確実にすると共に、第2インナーケーブル16にねじりが加わらないようにするためのものである。第2ガイド部材72は、第1インナーケーブル15にねじり力が加わらないようにするためのものであり、そにれよりインナーケーブルの撚りがほどけるおそれがない。図示していないが、図1のケーブル駆動装置10の第1インナーケーブル15、あるいは図6のケーブル駆動装置60の第1インナーケーブル15および第2インナーケーブル16についても、同様のガイド部材71、72を設けるのが好ましい。
【0074】
第1インナーケーブル15および第2インナーケーブル16は、第1アウターケーシング45aおよび第2アウターケーシング45bによってそれぞれ摺動自在にガイドされている。第1アウターケーシング45aおよび第2アウターケーシング45bの端部はそれぞれケーシングキャップ46、46によってハウジング11に固定されている。このような第1および第2アウターケーシング45a、45bによる第1および第2インナーケーブル15、16のガイドは、図1のケーブル駆動装置10や図6のケーブル駆動装置60についても同様に採用することができる。
【0075】
図9に示すケーブル駆動装置74は、図8のケーブル駆動装置70とは逆に、ナット部材34を第1ネジ部材として出力ギヤ30に対し、軸方向移動自在に、かつトルク伝達可能に嵌合させている。ナット部材34には、第2ネジ部材であるスクリューシャフト35を螺合している。そしてナット部材34に対し、連結部材37を介して第1インナーケーブル15を回転を伝えないように、回転自在に連結し、連結部材37を第1ガイド部材71によって回転しないように、かつ、軸方向移動自在にガイドしている。
【0076】
他方、スクリューシャフト35は、その端部にスライド部35bを設け、そのスライド部35bを第2ガイド部材72によって回転しないように、かつ、軸方向移動自在にガイドしている。
【0077】
ナット部材34の輪郭は、図10aに示すように、略小判形ないし長円の形状を呈している。出力ギヤ30には、このナット部材34と軸方向移動自在に嵌合する小判形ないし長円形の孔が形成されている。それによりナット部材34は出力ギヤ30に対し、トルク伝達可能に、かつ、軸方向移動自在に嵌合される。
【0078】
小判形の形状に代えて、図11bに示すような、正方形ないし矩形の輪郭を備えたナット部材34およびその形状の空所を備えた出力ギヤ30を採用することもできる。
【0079】
前記実施形態では、荷重検出装置として、圧縮コイルスプリングの力と長さの比例関係を利用したが、引っ張りコイルバネを採用することもできる。また、市販の歪みゲージをプレートに固定して構成することもできる。そのような荷重センサは、インナーケーブルに荷重が加わり、プレートが弾性伸び変形すると、歪みゲージの電気抵抗が変化する。その変化をホイーストンブリッジなどで精密に測定することにより、荷重を検出することができる。
【0080】
前記実施形態では荷重検出装置17は第1インナーケーブル15のみに設けている。これは、ギヤボックス28などの軸方向のスライドにより、左右のインナーケーブル15、16同士の張力が均衡されるため、一方のインナーケーブルの張力のみを検出するだけで足りるからである。なお、荷重検出機構17を図1のスクリューシャフト35と第2インナーケーブル16との間に介在させることもできる。さらに第1インナーケーブル15の途中、あるいは第2インナーケーブル16の途中に介在させることもできる。
【0081】
いずれの場合も、荷重検出装置17により、パーキングブレーキの操作時にインナーケーブル15、16に過大な張力が加わっていないか、弛みが生じていないかを検出することができる。ブレーキをかける操作の時に過大な張力が検出された場合は、一時モータMを停止させ、2〜3回程度ブレーキをかける操作をしても過大な張力が残る場合は、異常が発生したとして、ドライバーに知らせるべく表示灯を点灯し、あるいはブザーを鳴らす。さらにモータMを停止させるようにしてもよい。
【0082】
図6のケーブル駆動装置60では、ハウジング11を車体に固定し、ギヤボックス28をハウジング11に対してインナーケーブル15、16が延びている方向に移動自在に支持している。しかしこれとは逆に、ギヤボックス28を車体に対して固定し、ハウジング11を車体に対してインナーケーブル15、16が延びている方向に移動自在に配置することもできる。
【0083】
その場合は、たとえば第1インナーケーブル15の張力が第2インナーケーブル16の張力よりも大きくなったとき、第1インナーケーブル15をガイドする第1アウターケーシング45aの軸方向の圧縮力が第2インナーケーブル16をガイドする第2アウターケーシング45bの圧縮力より大きくなるため、ハウジング11が第2インナーケーブル16側に押されて移動する。第2インナーケーブル16の張力が第1インナーケーブル15の張力より大きくなったときは、上記とは逆にハウジング11が第1インナーケーブル15側に移動する。それによって両方のアウターケーシング45a、45bの圧縮力がバランスされ、結果としてインナーケーブル15、16の張力がバランスされる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のケーブル駆動装置の一実施形態を示す一部断面平面図である。
【図2】図1のケーブル駆動装置の作動状態を示す一部断面平面図である。
【図3】図1のIII-III線断面図である。
【図4】図4aおよび図4bはそれぞれ図1のケーブル駆動装置におけるトルク伝達部の他の実施形態を示す正面図である。
【図5】本発明の電動式パーキングブレーキの一実施形態を示す概略平面図である。
【図6】本発明のケーブル駆動装置の一実施形態を示す一部断面平面図である。
【図7】図6のケーブル駆動装置の変形例の作動状態を示す一部断面平面図である。
【図8】本発明のケーブル駆動装置のさらに他の実施形態を示す一部断面平面図である。
【図9】本発明のケーブル駆動装置のさらに他の実施形態を示す一部断面平面図である。
【図10】図9のケーブル駆動装置の要部斜視図である。
【図11】図11aは図9におけるナット部材の正面図であり、図11bは本発明に関わるナット部材の他の実施形態を示す正面図である。
【図12】従来のケーブル駆動装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0085】
10 ケーブル駆動装置
11 ハウジング
M モータ
G1 第1減速機
12 出力シャフト
13 ガイドロッド
G2 第2減速機
14 ネジ−ナット機構
15 第1インナーケーブル
16 第2インナーケーブル
17 荷重検出装置
21 ピニオン
22 第1ロッド
23 第1ギヤ
23a 大径ギヤ
23b 小径ギヤ
24 第2ロッド
25 第2ギヤ
25a 大径ギヤ
12a、12b 出力シャフト
28 ギヤボックス
29 入力ギヤ
30 出力ギヤ
31、32 軸受けブッシュ
34 ナット部材
35 スクリューシャフト
36 スィーベルジョイント
37 連結ブラケット
37a 底部
38 ケーブルエンド
39 ピン
40 ジョイント
41 摺動ロッド
41a 基部
41b 頭部
42 バネ
43 センサ
44 ガイド
45 アウターケーシング
46 ケーシングキャップ
50 ブレーキ機構
54 電動式パーキングブレーキ
55 コントロールケーブル
60 ケーブル駆動装置
61 ガイドロッド
62 回転センサ
63 スィーベルジョイント
64 バネ
70 ケーブル駆動装置
71 第1ガイド部材
72 第2ガイド部材
45a 第1アウターケーシング
45b 第2アウターケーシング
74 ケーブル駆動装置
35b スライド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
そのモータの出力軸に連結される減速機と、
その減速機の出力側に連結され、異形断面の輪郭部分を備えた回転シャフトと、
その回転シャフトとトルク伝達可能に、かつ、軸方向移動自在に設けられる第1ネジ部材と、
その第1ネジ部材に螺合されると共に、軸方向移動自在に、かつ、回転が拘束されるようにガイドされる第2ネジ部材と、
前記第1ネジ部材に対して同心状に回転自在に連結され、軸方向に延びる第1インナーケーブルと、
前記第2ネジ部材に一端が連結され、第1インナーケーブルと反対側に延びる第2インナーケーブルとを備えている電動式のケーブル駆動装置。
【請求項2】
前記第1ネジがナット部材であり、前記第2ネジがスクリューシャフトである請求項1記載の電動式のケーブル駆動装置。
【請求項3】
前記回転シャフトに入力ギヤが軸方向移動自在に、かつ、トルク伝達可能に支持されており、
前記ナット部材に前記入力ギヤと噛み合う出力ギヤが設けられており、
前記入力ギヤと出力ギヤとを、それらが軸方向に一緒に移動するように支持するギヤボックスを備えている請求項2記載の電動式のケーブル駆動装置。
【請求項4】
モータと、
そのモータの出力軸に連結される減速機と、
その減速機の出力部材に、軸方向移動自在に、かつトルク伝達可能に連結され、異形断面の輪郭部分を備えたスクリューシャフトと、
そのスクリューシャフトの雄ネジに螺合されると共に、軸方向移動自在に、かつ、回転が拘束されるようにガイドされるナット部材と、
前記スクリューシャフトに対して同心状に回転自在に連結され、軸方向に延びる第1インナーケーブルと、
前記ナット部材に一端が連結され、第1インナーケーブルと反対側に延びる第2インナーケーブルとを備えている電動式のケーブル駆動装置。
【請求項5】
ハウジングを有し、
そのハウジングに対し、前記モータと減速機とがインナーケーブルが延びている方向にスライド自在に設けられている請求項4記載の電動式のケーブル駆動装置。
【請求項6】
モータと、
そのモータの出力軸に連結される減速機と、
その減速機の出力側に連結される第1ネジ部材と、
その第1ネジ部材に螺合されると共に、軸方向移動自在に、かつ、回転が拘束されるようにガイドされる第2ネジ部材と、
前記第1ネジ部材に対して同心状に回転自在に連結され、軸方向に延びる第1インナーケーブルと、
前記ナット部材に一端が連結され、第1インナーケーブルと反対側に延びる第2インナーケーブルと、
ハウジングとを備え、
前記モータおよび減速機がハウジングに対してインナーケーブルが延びている方向にスライド自在に支持されている、電動式のケーブル駆動装置。
【請求項7】
モータと、
そのモータの出力軸に連結される減速機と、
その減速機の出力部材に対し、軸方向移動自在に、かつトルク伝達可能に連結される楕円ないし矩形断面の輪郭部分を備えたナット部材と、
そのナット部材に螺合されると共に、軸方向移動自在に、かつ、回転が拘束されるようにガイドされるスクリューシャフトと、
前記ナット部材に対して同心状に回転自在に連結され、軸方向に延びる第1インナーケーブルと、
前記スクリューシャフトに一端が連結され、第1インナーケーブルと反対側に延びる第2インナーケーブルとを備えている電動式のケーブル駆動装置。
【請求項8】
前記第1インナーケーブルまたは第2インナーケーブルの張力を検出する荷重検出装置が設けられている請求項1〜7のいずれかに記載の電動式のケーブル駆動装置。
【請求項9】
前記荷重検出装置が、前記第1ネジ部材と第1インナーケーブルの間、または第2ネジ部材と第2インナーケーブルの間に介在される、インナーケーブルを引き込む方向に付勢するバネと、インナーケーブルの位置を検出する位置センサとからなる請求項8記載の電動式のケーブル駆動装置。
【請求項10】
前記モータの回転に応じてパルスを発生するパルス発生手段と、そのパルス発生手段の出力パルスをカウントしてインナーケーブルの操作量に換算する手段とを備えている請求項1〜9のいずれかに記載のケーブル駆動装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のケーブル駆動装置と、前記第1インナーケーブルおよび第2インナーケーブルの他端側が連結される車輪のブレーキレバーと、それらのブレーキレバーをブレーキ解除側に付勢するバネと、ブレーキレバーと連結されるブレーキ用摩擦部材とを備えている自動車などの電動式パーキングブレーキ。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−32064(P2008−32064A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203994(P2006−203994)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコ−ポレ−ション (362)
【Fターム(参考)】