説明

電圧駆動型素子のゲート駆動回路

【課題】IGBT等の電圧駆動型素子のターンオン動作時に、コレクタ電流の大小の判定を行うことなくコレクタ電圧の時間変化量を制御可能とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路を提供する。
【解決手段】ゲート信号(VG)を抵抗(R2)を介してベース端子に入力するNPNトランジスタ(Q2)を、IGBT(Q1)のゲート端子に抵抗(R1)を介して接続し、直列接続したコンデンサ(C1)とダイオード(D2)とをIGBT(Q1)のコレクタ端子とNPNトランジスタ(Q2)のベース端子との間に接続することにより、IGBT(Q1)のターンオン動作時に、IGBT(Q1)のコレクタ電圧の時間変化量(dVce/dt)に基づいて、ゲート電流(Ig1)を制御し、ゲート電荷の充電速度を調整可能とする。また、コンデンサ(C1)に蓄積した電荷をターンオフ時に放電するダイオード(D1)をコンデンサ(C1)、ゲート信号(VG)間に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧駆動型素子のゲート駆動回路に関し、特に、電圧駆動型素子のターンオン動作時のノイズの抑制とターンオン損失の低減を可能とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の大電力を要する装置・機器の電力を制御するために適用されるスイッチング回路やインバータ回路には、電圧駆動型素子の一つであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられることが多い。
【0003】
しかし、近年、IGBTの高速化に伴い、スイッチングする際の放射ノイズが大きな問題になりつつある。この放射ノイズの発生要因としては、特許文献1に示す特開2003−125574号公報「絶縁ゲートトランジスタの駆動回路および電力変換装置と電力用半導体モジュール」にも記載されているように、IGBTに流れるコレクタ電流が小さい小電流領域において動作する場合、大電流領域における動作に比して、IGBTのターンオン動作時のコレクタ電流の時間的な変化がもたらす電流や電圧の振動が、放射ノイズに大きく起因している。
【0004】
一般に、IGBTのターンオン動作においては、IGBTのコレクタ電流(導通電流)の小電流領域における放射ノイズ量と、IGBTのコレクタ電流(導通電流)の大電流領域におけるターンオン損失とが、トレードオフの関係にあることが良く知られている。
【0005】
このため、放射ノイズ低減と低損失との両立を図るために、特許文献2に示す特開平5−328746号公報「電圧形スイッチング素子制御方法およびその装置」に記載されているように、IGBTに流れるコレクタ電流(導通電流)をリアルタイムに監視して、コレクタ電流(導通電流)が小電流領域にあると判別した時には、IGBTのゲート抵抗を大きくして、IGBTのスイッチング速度を遅くすることによって、放射ノイズを低減するようにし、逆に、コレクタ電流(導通電流)が大電流領域にあると判別した時には、IGBTのゲート抵抗を小さくして、スイッチング速度を速くすることによって、ターンオン損失を低減するという技術が提案されている。
【特許文献1】特開平5−328746号公報
【特許文献2】特開2003−125574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来技術では、IGBTやパワーMOSFET等の電圧駆動型素子に流れるコレクタ電流が、あらかじめ定めた所定電流よりも大きいかあるいは小さいかを判別し、コレクタ電流が小さいことに応答して、スイッチング速度(すなわちゲート電荷の充電速度)を遅くするように、動作定数すなわちゲート抵抗を大きい値に切り替え、逆に、コレクタ電流が大きいことに応答して、スイッチング速度(すなわちゲート電荷の充電速度)を速くするように、動作定数すなわちゲート抵抗を小さい値に切り替えるという構成になっているため、コレクタ電流の電流レベルを判定するまでは、スイッチング速度を変更するためのゲート抵抗の切り替え制御を行うことができないという問題がある。
【0007】
この結果、例えば、IGBT等の電圧駆動型素子のゲート抵抗が大きい値に設定されていた場合、コレクタ電流の大小の判定が完了する時点では、ターンオン損失の大部分が既に確定してしまっているため、たとえ、コレクタ電流が大きいことを判別して、ゲート抵抗を小さい値に切り替えたとしても、ターンオン損失を低減することが困難であるという問題がある。
【0008】
ここで、一般に、電気自動車等の大電力の制御を行うスイッチング回路やインバータ回路にIGBT等の電圧駆動型素子を適用し、電圧駆動型素子のコレクタに誘導性の負荷を接続するような形態においては、電圧駆動型素子に流れるコレクタ電流が小電流領域にある場合には、電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が大きく、逆に、電圧駆動型素子に流れるコレクタ電流が大電流領域にある場合には、電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が小さくなるという関係にある。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、IGBT等の電圧駆動型素子のターンオン動作時に、コレクタ電流の大小の判定を行うことなく、コレクタ電圧の時間変化量を制御可能とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題を解決するために、電圧駆動型素子のターンオン動作時に、電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量に基づいて、電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電圧駆動型素子のゲート駆動回路によれば、電圧駆動型素子のターンオン動作時に、電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量に基づいて、電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を直接調整するように構成しているので、従来技術とは異なり、電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が大きくなる傾向があるコレクタ電流の小電流領域においては、電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を遅くするように調整することにより、コレクタ電圧の時間変化量を小さくして、放射ノイズを抑制しつつ、電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が小さくなる傾向があるコレクタ電流の大電流領域においては、電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を速くするように調整することにより、コレクタ電圧の時間変化量を大きくして、ターンオン損失を低減することができるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明による電圧駆動型素子のゲート駆動回路の最良の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(本発明の回路構成例)
図1は、本発明による電圧駆動型素子のゲート駆動回路の一構成例を示す回路図であり、電気自動車等の大電力の制御を行うスイッチング回路やインバータ回路などを構成するために、誘導性の負荷をコレクタに接続した電圧駆動型素子を駆動するゲート駆動回路として適用した場合の一例について示している。なお、図1には、電圧駆動型素子としてIGBTを用いた場合について示しているが、本発明の適用対象とする電圧駆動型素子としては、IGBTに限らず、パワーMOSFETなど他の電圧駆動型素子であっても構わない。
【0014】
図1に例示するような回路構成を採用することによって、負荷をコレクタに接続したIGBT(Q1)のゲートに電圧を印加することによって駆動するような電圧駆動型のIGBT(Q1)をターンオン動作させる際に、IGBT(Q1)のコレクタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)に基づいて、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を調整することを可能としている。この結果、IGBT(Q1)のコレクタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が、IGBT(Q1)に流れるコレクタ電流(Ic)の電流量の如何によらず、あらかじめ定めた許容範囲内に収まるように、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を調整することも可能である。
【0015】
すなわち、IGBT(Q1)のコレクタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)に基づいて、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を調整する際に、IGBT(Q1)のコレクタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が大きいほど、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度をより遅くするように調整し、逆に、IGBT(Q1)のコレクタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が小さいほど、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度をより速くするように調整することを可能としており、もって、IGBT(Q1)のコレクタ電流の大小の如何によらず、IGBT(Q1)のコレクタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)をあらかじめ定めた許容範囲内に収めるように動作させることを可能とし、放射ノイズの発生を抑制しつつ、ターンオン損失の低減も実現可能としている。
【0016】
次に、かかる動作を実現している図1の電圧駆動型素子のゲート駆動回路(100)の回路構成について、まず説明する。
【0017】
図1の電圧駆動型素子のゲート駆動回路(100)において、IGBT(Q1)のゲート端子(G)は、抵抗(R3)とNPNトランジスタ(Q3)とを介して電源電圧(Vcc)に接続され、また、抵抗(R3)とNPNトランジスタ(Q3)との接続点からPNPトランジスタ(Q4)を介して基準電位(Vee)に接続されている。
【0018】
また、NPNトランジスタ(Q3)とPNPトランジスタ(Q4)との双方のベース端子は、ゲート信号(VG)の出力端子に接続されており、双方のベース端子に入力されるゲート信号(VG)によって、NPNトランジスタ(Q3)およびPNPトランジスタ(Q4)をオン/オフさせることによって、IGBT(Q1)のゲート電荷の充放電動作を行わせるように構成されている。
【0019】
すなわち、抵抗(R3)とNPNトランジスタ(Q3)とは、IGBT(Q1)のターンオン動作時にIGBT(Q1)のゲート電荷を充電する第一のゲート電荷充電回路を形成し、抵抗(R3)とPNPトランジスタ(Q4)とは、IGBT(Q1)のターンオフ動作時にIGBT(Q1)のゲート電荷を放電するゲート電荷放電回路を形成している。
【0020】
なお、基準電位(Vee)は、IGBT(Q1)のエミッタ端子(E)と同電位であり、ゲート駆動回路(100)が動作するための基準の電位である。また、ゲート信号(VG)は、IGBT(Q1)をターンオンさせるオン信号の出力中は、電源電圧(Vcc)と同電位のHiレベルになり、IGBT(Q1)をターンオフさせるオフ信号の出力中は、基準電位(Vee)と同電位のLoレベルになる。
【0021】
また、IGBT(Q1)のターンオン動作時にIGBT(Q1)のゲート電荷を充電する第二のゲート電荷充電回路として、IGBT(Q1)のゲート端子(G)は、前述した第一のゲート電荷充電回路と並列に、抵抗(R1)とNPNトランジスタ(Q2)とを介して電源電圧(Vcc)に接続されている。
【0022】
NPNトランジスタ(Q2)のベース端子は、当該NPNトランジスタ(Q2)のベース電位を調整するためのベース抵抗(R2)を介して、ゲート信号(VG)の出力端子に接続されており、ベース端子にベース抵抗(R2)を介して入力されるゲート信号(VG)によって、NPNトランジスタ(Q2)をオンさせることによって、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電動作を行うように構成されている。
【0023】
ここで、第二のゲート電荷充電回路におけるゲート抵抗(R1)の抵抗値を、第一のゲート電荷充電回路におけるゲート抵抗(R3)の抵抗値よりも小さな値に調整して、IGBT(Q1)へのゲート電荷の充電を、第一のゲート電荷充電回路よりも第二のゲート電荷充電回路が支配的に行うように設定し、第一のゲート電荷充電回路を、IGBT(Q1)のターンオン動作の安定性を図るための動作を行うように設定することも可能である。
【0024】
また、IGBT(Q1)のターンオン動作時に、IGBT(Q1)へのゲート電荷の充電動作を行う第二のゲート電荷充電回路には、IGBT(Q1)がターンオンする際のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)に応じて、NPNトランジスタ(Q2)のベース電位およびベース電流(Ib)が調整されるように、抵抗(R2)とNPNトランジスタ(Q2)のベース端子との接続点は、ダイオード(D2)とコンデンサ(C1)とを介して、IGBT(Q1)のコレクタ端子(C)に接続されている。
【0025】
ここで、ダイオード(D2)は、IGBT(Q1)がターンオンして、IGBT(Q1)のコレクタ電圧がNPNトランジスタ(Q2)のベース電位よりも低下した場合にのみ、コンデンサ(C1)方向へ充電用の整流電流が導通するように、抵抗(R2)とNPNトランジスタ(Q2)のベース端子との接続点側に、ダイオード(D2)のアノード端子を接続し、IGBT(Q1)のコレクタ端子(C)側に、ダイオード(D2)のカノード端子を接続する。
【0026】
すなわち、第二のゲート電荷充電回路においては、IGBT(Q1)のターンオン動作時にIGBT(Q1)のゲート電荷を充電する動作を行うゲート電荷充電用トランジスタとして、ターンオン動作を指示するゲートオン信号(すなわちゲート信号(VG))を抵抗(R2)を介してベース端子に入力するNPNトランジスタ(Q2)を用い、該NPNトランジスタ(Q2)をIGBT(Q1)のゲート端子に抵抗(R1)を介して接続するとともに、ターンオン動作時の電荷を蓄積するコンデンサ(C1)を、IGBT(Q1)のコレクタ端子(C)とNPNトランジスタ(Q2)のベース端子との間に接続するように構成している。
【0027】
さらに、コンデンサ(C1)に整流用のダイオード(D2)を直列に接続し、IGBT(Q1)のターンオン動作時においてNPNトランジスタ(Q2)のベース端子からIGBT(Q1)のコレクタ端子(C)の方向へ電流が流れてコンデンサ(C1)に電荷を蓄積させるように構成している。ここで、直列接続したダイオード(D2)の代わりに、例えばスイッチング素子を用いて、コンデンサ(C1)への電荷の蓄積動作をIGBT(Q1)のターンオン動作時のみに限るような回路構成とするようにしてももちろん構わない。
【0028】
なお、コンデンサ(C1)の容量値、ベース抵抗(R2)、NPNトランジスタ(Q2)などの回路定数の決定に当たっては、IGBT(Q1)のターンオン動作時に、IGBT(Q1)のコレクタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が、IGBT(Q1)に流れるコレクタ電流(Ic)の電流量の如何によらず、あらかじめ定めた許容範囲内に収まるように、IGBT(Q1)のターンオン動作時にコンデンサ(c1)に流れる電流を適切な電流量に調整することができる回路定数を用いるようにしている。
【0029】
さらに、IGBT(Q1)のターンオン動作時にコンデンサ(C1)に充電した電荷を、IGBT(Q1)のターンオフ期間に放電するための放電手段となる放電回路が備えられており、該放電手段として、ダイオード(D1)が、コンデンサ(C1)とダイオード(D2)との接続点と、ゲート信号(VG)の出力端子との間に接続されている。ここで、ダイオード(D1)が接続されるゲート信号(VG)は、IGBT(Q1)のターンオフ動作と同期して基準電位に設定される回路部の一つであり、IGBT(Q1)のターンオフ動作時において、コンデンサ(C1)に蓄積された電荷をダイオード(D1)を介して基準電位へ放電するように動作させることができる。
【0030】
すなわち、ダイオード(D1)は、コンデンサ電圧(Vc1)としてHiレベルに充電されているコンデンサ(C1)側から、IGBT(Q1)のターンオフ期間においてはLoレベル(基準電位(Vee)と同電位)になるゲート信号(VG)の出力端子の方向に、コンデンサ(C1)の充電電荷を放電する整流電流が導通するように、コンデンサ(C1)とダイオード(D2)との接続点側に、ダイオード(D1)のアノード端子を接続し、ゲート信号(VG)の出力端子側に、ダイオード(D1)のカノード端子を接続している。
【0031】
かかる放電回路を形成することにより、ゲート信号(VG)が、IGBT(Q1)をターンオフさせるために、Hiレベル(電源電圧(Vcc)と同電位)からLoレベル(基準電位(Vee)と同電位)に切り替わると、IGBT(Q1)のゲート電荷の放電用のPNPトランジスタ(Q4)をオンさせて、IGBT(Q1)のゲート電荷をPNPトランジスタ(Q4)を介して放電させると同時に、Hiレベルに充電されているコンデンサ(C1)から、基準電位(Vee)と同電位のLoレベルに切り替わったゲート信号(VG)の出力端子の方向に、コンデンサ(C1)の充電電荷を放電する整流電流が流れる。
【0032】
(図1の回路構成例における作用)
次に、図1に示した電圧駆動型素子のゲート駆動回路(100)の作用について図2、図3を用いて説明する。ここに、図2、図3は、いずれも、本発明の一実施例である図1の回路構成例において、IGBT(Q1)がターンオン動作した際の各部の信号波形を示すタイムチャートであり、ゲート信号(VG)をLoレベルからHiレベルに変化させることによって、コレクタ端子(C)に誘導性の負荷を接続したIGBT(Q1)がターンオン動作を開始した際の各部の信号波形を示している。なお、図2は、IGBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)が小さい小電流領域におけるIGBT(Q1)のターンオン動作時の各部の信号波形を示し、図3は、IGBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)が大きい大電流領域におけるIGBT(Q1)のターンオン動作時の各部の信号波形を示している。
【0033】
図2、図3において、ゲート信号(VG)は、図示していない外部のコントローラから入力される信号波形であり、ゲート電流Ig0は、第一のゲート電荷充電回路を形成するNPNトランジスタ(Q3)、抵抗(R3)を介して、IGBT(Q1)のゲート(G)へ流れる電流の信号波形である。また、ベース電流(Ib)は、第二のゲート電荷充電回路を形成するNPNトランジスタ(Q2)のベースに流れる電流の信号波形であり、ゲート電流Ig1は、第二のゲート電荷充電回路を形成するNPNトランジスタ(Q2)、抵抗(R1)を介して、IGBT(Q1)のゲート(G)へ流れる電流の信号波形である。
【0034】
また、ゲート電圧(Vge)は、IGBT(Q1)のゲート・エミッタ間の電圧変化を示す信号波形であり、微分電流(Idiff)は、第二のゲート電荷充電回路に接続したコンデンサ(C1)を充電するように流れる電流の信号波形である。また、R2両端電圧(Vr)は、第二のゲート電荷充電回路を形成するNPNトランジスタ(Q2)のベースに接続した抵抗(R2)の両端にかかる電圧変化を示す信号波形である。
【0035】
また、コンデンサ電圧(Vc1)は、コンデンサ(C1)とダイオード(D2)との接続点における電圧変化を示す信号波形であり、コレクタ・エミッタ間電圧(Vce)は、IGBT(Q1)のコレクタとエミッタ間の電圧変化を示す信号波形であり、IGBT(Q1)のコレクタ電圧の時間的変化を示している。また、コレクタ電流(Ic)は、IGBT(Q1)のコレクタに流れるコレクタ電流(導通電流)の信号波形である。
【0036】
以下、IGBT(Q1)のコレクタ電流が小さい小電流領域にあった場合のIGBT(Q1)のターンオン動作時の各部の信号波形を示す図2の波形図に基づいて、図1のゲート駆動回路100の回路動作について詳細に説明する。
【0037】
ゲート信号(VG)をLoレベル(基準電位(Vee)と同電位)からHiレベル(電源電圧(Vcc)と同電位)に変化させると、IGBT(Q1)のゲート電荷充電用の第一のゲート電荷充電回路を形成するNPNトランジスタ(Q3)は、オフからオンヘと状態遷移し、一方、IGBT(Q1)のゲート電荷放電用のゲート電荷放電回路を形成するPNPトランジスタ(Q4)は、オンからオフへ状態遷移して、抵抗(R3)を介して、電源電圧(Vcc)からゲート電荷を充電するためのゲート電流(Ig0)が、IGBT(Q1)のゲート(G)端子に向かって流れる。
【0038】
さらに、IGBT(Q1)のゲート電荷充電用の第二のゲート電荷充電回路を形成するゲート電荷充電用のNPNトランジスタ(Q2)も、HiレベルのVG信号が抵抗(R2)を介して印加されることにより、ベース電流(Ib)が流れて、オフからオンヘ状態遷移して、抵抗(R1)を介して、電源電圧(Vcc)からゲート電荷を充電するためのゲート電流(Ig1)が、IGBT(Q1)のゲート(G)端子に向かって流れる。
【0039】
この結果、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電が開始され、IGBT(Q1)のゲート電圧(ゲート・エミッタ間電圧)Vgeが上昇し始める。IGBT(Q1)のゲート端子(G)へのゲート電荷の充電が進み、IGBT(Q1)のゲート電圧Vgeが、ターンオン電圧閾値に達すると、IGBT(Q1)がターンオン動作を開始し、コレクタ電流(Ic)が流れ出すとともに、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ電圧(Vce)は低下し始める。
【0040】
IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)が低下を開始すると、コレクタ・エミッタ間電圧(Vce)としては、負の時間変化量(dVce/dt)が発生する。負の時間変化量(dVce/dt)によって、NPNトランジスタ(Q2)のベース電圧よりもIGBT(Q1)のコレクタ電圧すなわちコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)が低下した状態に達すると、コンデンサ(C1)には、IGBT(Q1)のコレクタ端子(C)に向かって、コンデンサ(C1)を充電する微分電流(Idiff)が流れ出す。
【0041】
ここで、微分電流(Idiff)は、Hiレベル(電源電圧(Vcc)と同電位)のゲート信号(VG)の出力端子から、抵抗(R2)、ダイオード(D2)およびコンデンサ(C1)を通って、IGBT(Q1)のコレクタ端子(C)ヘと流れるため、抵抗(R2)の両端電圧(Vr)は上昇するとともに、NPNトランジスタ(Q2)のベース電流(Ib)は減少に転じ、ゲート電流(Ig1)も減少し始める。
【0042】
この結果、第二のゲート電荷充電回路がIGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度に支配的な影響を及ぼすように設定されている場合には、IGBT(Q1)のゲート端子(G)へのゲート電荷の充電速度もより大きく低下し、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)もより小さく抑えられるようになり、IGBT(Q1)のコレクタ(C)に流れるコレクタ電流(Ic)も急増せずに平坦な小さい値に抑えられる。
【0043】
IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が小さくなると、コンデンサ(C1)に流れる微分電流(Idiff)が減少し、NPNトランジスタ(Q2)のベース抵抗(R2)の両端電圧(Vr)も低下する。NPNトランジスタ(Q2)のベース抵抗(R2)の両端電圧(Vr)が低下すると、IGBT(Q1)のゲート電荷を充電するゲート電流(Ig1)が増加し、IGBT(Q1)のゲート端子(G)へのゲート充電速度が速くなるように調整される。
【0044】
ここで、ゲート信号(VG)が、Hiレベルに切り替わった時点での、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度は、IGBT(Q1)のゲート端子(G)へ流れ込むゲート電流(Ig0)およびゲート電流(Ig1)の大きさによって決定され、ゲート電流(Ig0)およびゲート電流(Ig1)は、以下の式(1)、式(2)で表すことができる。
【0045】
Ig0=(VG−Vge−Vbe3)/R3 …(1)
Ig1=(VG−Vge−Vbe2−Vr)/R1 …(2)
ただし、VG…ゲート信号(VG)のHiレベル電圧(電源電圧Vcc)
Vge…IGBT(Q1)ゲート・エミッタ間電圧
Vbe2…NPNトランジスタ(Q2)ベース・エミッタ間電圧
Vbe3…NPNトランジスタ(Q3)ベース・エミッタ間電圧
Vr…抵抗(R2)の両端電圧
また、このとき、コンデンサ(C1)に流れる微分電流Idiffと式(2)における抵抗(R2)の両端電圧Vrとは、以下のように表される。
【0046】
Idiff=C1×dVce/dt …(3)
Vr=R2×(Ib+Idiff) …(4)
ただし、Ib…NPNトランジスタ(Q2)のベース電流
dVce/dt…IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ間電圧
(Vce)の時間変化量
すなわち、式(1)、式(2)に示すように、ゲート電流(Ig0)は抵抗(R3)によって決定され、ゲート電流(Ig1)は、抵抗(R1)および抵抗(R2)の両端電圧(Vr)によって決定される。ここで、図2には明示していないが、前述したように、抵抗(R1)の抵抗値を、抵抗(R3)に比して、小さな値に設定して、第二のゲート電荷充電回路を形成するNPNトランジスタ(Q2)からのゲート電流(Ig1)を、第一のゲート電荷充電回路を形成するNPNトランジスタ(Q3)からのゲート電流(Ig0)よりも大きくするようにしても良い。
【0047】
前述したように、IGBT(Q1)のゲート端子(G)へのゲート電荷の充電が進むと、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)が下降を開始し、式(3)、式(4)に示すように、コンデンサ(C1)には、IGBT(Q1)のコレクタ端子(C)に向かって、微分電流(Idiff)が流れて、NPNトランジスタ(Q2)のベース抵抗(R2)の両端電圧(Vr)は上昇する。NPNトランジスタ(Q2)のベース抵抗(R2)の両端電圧(Vr)が上昇すると、式(2)、に示すように、IGBT(Q1)のゲート電荷を充電するゲート電流(Ig1)が減少し、IGBT(Q1)のゲート端子(G)へのゲート充電速度が遅くなるように調整される。
【0048】
さらに、IGBT(Q1)のゲート端子(G)へのゲート充電速度が遅くなると、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の下降速度が遅くなり、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が小さくなる。この結果、式(3)、式(4)に示すように、コンデンサ(C1)に流れる微分電流(Idiff)が小さくなり、NPNトランジスタ(Q2)のベース抵抗(R2)の両端電圧(Vr)も低下する。NPNトランジスタ(Q2)のベース抵抗(R2)の両端電圧(Vr)が低下すると、式(2)に示すように、IGBT(Q1)のゲート電荷を充電するゲート電流(Ig1)が増加し、IGBT(Q1)のゲート端子(G)へのゲート充電速度が速くなるように調整される。
【0049】
すなわち、IGBT(Q1)のターンオン過程において、IGBT(Q1)のゲート充電時のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が大きくなると、IGBT(Q1)のゲート電荷を充電するゲート電流(Ig1)は減少して、ゲート電荷の充電速度が低下し、この結果として、コレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が小さくなると、ゲート電流(Ig1)は増加して、ゲート電荷の充電速度が上昇する。このような負帰還動作によって、IGBT(Q1)のゲート充電時のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)は、コレクタ電流の大小の如何によらず、あらかじめ定めた許容範囲内に収めることができるようになる。
【0050】
かくのごとく、図2の小電流領域におけるターンオン動作の場合のように、IGBT(Q1)のコレクタ(C)に流れるコレクタ電流(Ic)が小さく、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が大きいときは、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が小さくなるように、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を遅くするフィードバックをかけて、IGBT(Q1)のターンオン速度を遅くするようなネガティブ・フィードバック(負帰還動作)を行うことができる。
【0051】
一方、図3の大電流領域におけるターンオン動作の場合のように、IGBT(Q1)のコレクタ(C)に流れるコレクタ電流(Ic)が大きく、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が小さいときは、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)が大きくなるように、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を速くするフィードバックをかけて、ターンオン速度を速くするようなネガティブ・フィードバック(負帰還動作)を行うことができる。
【0052】
而して、本発明の一実施例を示す図1のIGBT(Q1)のゲート駆動回路(100)のような回路構成を用いることにより、従来技術とは異なり、図2のような小電流領域でのターンオン動作時であっても、図3のような大電流領域でのターンオン動作時であっても、IGBT(Q1)のターンオン動作時のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)は、あらかじめ定めた許容範囲(例えば、650V/μs〜850V/μs)内に収めることができるとともに、IGBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)をリアルタイムに監視して、その大小を判別して、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を調整するような、コレクタ電流(Ic)のモニタリング動作を行う必要もない。
【0053】
その結果、図2に示すように、小電流領域でのターンオン動作時のIGBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)やコレクタ電圧(Vce)の変化を小さく抑えて、放射ノイズの発生や素子の破壊を防止することが可能になり、かつ、図3に示すように、大電流領域でのターンオン動作時のIGBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)の立ち上がり時間、コレクタ・エミッタ電圧(Vce)の立ち下がり時間を短くし、IGBT(Q1)のターンオン損失(ターンオン遅延時間)を低減することが可能になる。
【0054】
なお、図2、図3のIGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)およびコレクタ電流(Ic)に一点鎖線で示している電圧波形および電流波形は、図5に示すような従来技術を適用した回路構成においてターンオン動作を行っている場合を示している。ここに、図5は、従来の電圧駆動型素子のゲート駆動回路の一構成例を示す回路図であり、図1に示す本発明の回路構成例から、第二のゲート電荷充電回路に接続したコンデンサ(C1)、ダイオード(D2)およびダイオード(D1)を削除した形態のものである。すなわち、図5に示すように、従来技術においては、本発明とは異なり、IGBT(Q1)のターンオン動作時に、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)をフィードバックして、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を調整するような負帰還回路構成を採用していない。この結果、小電流領域でのターンオン動作時のIGBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)の変化も大きくなり、放射ノイズの発生を防ぐことができなくなる恐れがあるとともに、大電流領域でのターンオン動作時のIGBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)の立ち上がり時間やコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の立ち下がり時間が長くなり、IGBT(Q1)のターンオン損失が大きくなってしまう。
【0055】
本発明の一実施例として図1に示したIGBT(Q1)のゲート駆動回路(100)のもう一つの特徴は、IGBT(Q1)のターンオン動作時にコンデンサ(C1)に充電された電荷を、ターンオフ時に、放電できるように構成している点である。すなわち、図1においては、前述したように、ダイオード(D1)が、コンデンサ(C1)とダイオード(D2)との接続点と、ゲート信号(VG)の出力端子との間に接続されており、IGBT(Q1)のターンオフ動作時に、コンデンサ(C1)側からゲート信号(VG)の出力端子の方向に、コンデンサ(C1)の充電電荷を放電する整流電流が導通するように、コンデンサ(C1)とダイオード(D2)との接続点側に、ダイオード(D1)のアノード端子を接続し、ゲート信号(VG)の出力端子側に、ダイオード(D1)のカノード端子を接続するように構成している。
【0056】
したがって、図1のような、コンデンサ(C1)の電荷の放電回路を備えている回路構成においては、ゲート信号(VG)がHiレベルからLoレベルに変化する都度、すなわち、IGBT(Q1)がオン状態からターンオフする都度、IGBT(Q1)のターンオン動作時に充電されていたコンデンサ(C1)の電荷を、ダイオード(D1)を介して、ターンオフ時にはLoレベル(基準電位Veeと同電位)に設定されるゲート信号(VG)の出力端子側へと放電することになる。このため、IGBT(Q1)のターンオンごとにコンデンサ(C1)に流れる微分電流(Idiff)は飽和してしまうことがなく、第二のゲート電荷充電回路を形成するNPNトランジスタ(Q2)は、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)に応じて、ゲート電流(Ig1)を調整し、もって、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を調整するという、所望の動作を安定して行うことができる。
【0057】
なお、コンデンサ(C1)に充電された電荷を放電する放電手段となる放電回路として、図1のダイオード(D1)の代わりに、ゲート信号(VG)に同期してオンオフするようなスイッチング素子を用いるように構成しても、前述の場合と同様の作用を得ることができる。図4は、本発明による電圧駆動型素子のゲート駆動回路の図1とは異なる他の構成例を示す回路図であり、コンデンサ(C1)に充電された電荷を放電する放電回路用のスイッチング素子として、PNPトランジスタ(Q5)を用いている場合を示している。
【0058】
すなわち、図4のゲート駆動回路(100A)においては、コンデンサ(C1)とダイオード(D2)との接続点と、基準電位(Vee)とに、PNPトランジスタ(Q5)のエミッタ端子とコレクタ端子とをそれぞれ接続し、ゲート信号(VG)の出力を、PNPトランジスタ(Q5)のベースに入力して、ゲート信号(VG)がHiレベルからLoレベルに変化した時に、つまり、IGBT(Q1)のターンオフ動作と同期して、PNPトランジスタ(Q5)がオン状態に切り替わって、コンデンサ(C1)の放電動作を行うように構成している。
【0059】
図4の回路構成では、ゲート信号(VG)に同期して、ゲート信号(VG)がHiレベルの期間は、PNPトランジスタ(Q5)はオフであり、コンデンサ(C1)に充電される電荷は、そのまま蓄積されており、ゲート信号(VG)がLoレベルになった時点で、PNPトランジスタ(Q5)がオンに切り替わり、コンデンサ(C1)に充電されていた電荷が、基準電位(Vee)側に放電されることになる。
【0060】
なお、コンデンサ(C1)の電荷を放電する放電回路として用いるスイッチング素子としては、図4に示したPNPトランジスタ(Q5)のみに限るものではなく、MOSFET等を用いても、全く同様の効果が得られる。
【0061】
以上に詳細に説明したように、本実施例によれば、負荷を接続している電圧駆動型素子の一例であるIGBT(Q1)と第二のゲート電荷充電回路用のNPNトランジスタ(Q2)との間を接続するコンデンサ(C1)を備えて、IGBT(Q1)のターンオン動作時に、IGBT(Q1)のコレクタ電圧の時間変化量に基づいて、電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を調整するように構成している。
【0062】
したがって、大電力を要する装置等の電力を制御するためのスイッチング回路やインバータ回路等に適用した場合のように、電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が大きくなる傾向があるコレクタ電流の小電流領域においては、電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を遅くするように調整することにより、コレクタ電圧の時間変化量を小さくして、放射ノイズを抑制しつつ、電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が小さくなる傾向があるコレクタ電流の大電流領域においては、電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を速くするように調整することにより、コレクタ電圧の時間変化量を大きくして、ターンオン損失を低減することができるという、従来技術とは全く異なる効果を得ることができる。
【0063】
さらに、IGBT(Q1)のターンオフ動作時に、ターンオン動作時にコンデンサ(C1)に蓄積された電荷を放電させる放電手段を備えているので、ゲート信号(VG)がHiレベルからLoレベルに変化する都度、すなわち、IGBT(Q1)がオン状態からターンオフする都度、IGBT(Q1)のターンオン動作時にコンデンサ(C1)に蓄積された電荷を、基準電位Veeへと放電することできる。
【0064】
したがって、IGBT(Q1)のターンオンごとにコンデンサ(C1)に流れる微分電流(Idiff)は飽和することがなく、第二のゲート電荷充電回路を形成するNPNトランジスタ(Q2)は、IGBT(Q1)のコレクタ・エミッタ電圧(Vce)の時間変化量(dVce/dt)に応じて、ゲート電流(Ig1)を調整し、もって、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を調整するという、所望の動作を安定して行うことができる。
【0065】
なお、以上に説明した実施例においては、電圧駆動型素子の一例としてIGBT(Q1)を用い、IGBT(Q1)のコレクタ電圧の時間変化量(dVce/dt)が、IGBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)の大小の如何によらず、あらかじめ定めた許容範囲内に収まるように、コレクタ電圧の時間変化量(dVce/dt)を用いて、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を調整するようにする場合を示したが、場合によっては、IGBT(Q1)のコレクタ端子(C)に流れるコレクタ電流(Ic)そのもの(すなわち、電圧駆動型素子の導通電流そのもの)を用いて、IGBT(Q1)のゲート電荷の充電速度を調整するような回路構成とし、IGBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)の電流量が小さい時は、ゲート電荷の充電速度を遅くし、GBT(Q1)のコレクタ電流(Ic)の電流量が小さい時以外は、ゲート電荷の充電速度を速くするように制御するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による電圧駆動型素子のゲート駆動回路の一構成例を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施例である図1のIGBTのゲート駆動回路の小電流領域におけるIGBTターンオン動作時の各部の信号波形を示す波形図である。
【図3】本発明の一実施例である図1のIGBTのゲート駆動回路の大電流領域におけるIGBTターンオン動作時の各部の信号波形を示す波形図である。
【図4】本発明による電圧駆動型素子のゲート駆動回路の他の構成例を示す回路図である。
【図5】従来の電圧駆動型素子のゲート駆動回路の一構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0067】
100,100A…ゲート駆動回路、C…コレクタ端子、C1…コンデンサ、D1,D2…ダイオード、dVce/dt…コレクタ・エミッタ間電圧時間変化量、E…エミッタ端子、G…ゲート端子、Ib…ベース電流、Ic…コレクタ電流、Idiff…微分電流、Ig0,Ig1…ゲート電流、R1,R2,R3,R4…抵抗、Q1…IGBT、Q2,Q3…NPNトランジスタ、Q4,Q5…PNPトランジスタ、Vc1…コンデンサ電圧、Vcc…電源電圧、Vce…コレクタ・エミッタ間電圧、Vee…基準電位、VG…ゲート信号、Vge…ゲート・エミッタ間電圧(ゲート電圧)、Vr…抵抗(R2)の両端電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレクタに負荷を接続した電圧駆動型素子のゲートに電圧を印加することによって該電圧駆動型素子を駆動する電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記電圧駆動型素子のターンオン動作時に、前記電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量に基づいて、当該電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を調整することを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量に基づいて、当該電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を調整する際に、当該電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が、あらかじめ定めた許容範囲内に収まるように、当該電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度を調整することを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路は、当該電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が大きいほど、当該電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度をより遅くするように調整し、当該電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が小さいほど、当該電圧駆動型素子のゲート電荷の充電速度をより速くするように調整することを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記電圧駆動型素子のターンオン動作時に当該電圧駆動型素子のゲート電荷を充電する動作を行うゲート電荷充電用トランジスタとターンオン動作時の電荷を蓄積するコンデンサとを備え、前記ゲート電荷充電用トランジスタを前記電圧駆動型素子のゲート端子に抵抗を介して接続し、前記コンデンサを当該電圧駆動型素子のコレクタ端子と前記ゲート電荷充電用トランジスタのベース端子との間に接続することを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項5】
請求項4に記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記ゲート電荷充電用トランジスタが、前記電圧駆動型素子のターンオン動作を指示するゲートオン信号を抵抗を介してベース端子に入力するNPNトランジスタからなっていることを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項6】
請求項5に記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記電圧駆動型素子のコレクタ端子と前記ゲート電荷充電用トランジスタのベース端子との間に接続した前記コンデンサに整流用のダイオードを直列に接続し、当該電圧駆動型素子のターンオン動作時に前記ゲート電荷充電用トランジスタのベース端子から当該電圧駆動型素子のコレクタ端子の方向へ電流が流れて前記コンデンサに電荷を蓄積させることを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項7】
請求項5または6に記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記電圧駆動型素子のターンオン動作時に、当該電圧駆動型素子のコレクタ電圧の時間変化量が、当該電圧駆動型素子に流れるコレクタ電流の電流量の如何によらず、あらかじめ定めた許容範囲内に収まるように、当該電圧駆動型素子のターンオン動作時に前記コンデンサに流れる電流を調整することを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項8】
請求項6または7のいずれかに記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記電圧駆動型素子のターンオフ動作時に、当該電圧駆動型素子のターンオン動作で前記コンデンサに蓄積されていた電荷を放電する放電手段を備えていることを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項9】
請求項8に記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記放電手段として、前記コンデンサと整流用の前記ダイオードとの接続点と、当該電圧駆動型素子のターンオフ動作と同期して基準電位に設定される回路部との間に、ダイオードを接続し、ターンオフ動作時に前記コンデンサに蓄積された電荷を前記ダイオードを介して基準電位へ放電することを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項10】
請求項8に記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記放電手段として、前記コンデンサと整流用の前記ダイオードとの接続点と、基準電位との間に、当該電圧駆動型素子のターンオフ動作と同期してオン状態に切り替わるスイッチング素子を接続し、ターンオフ動作時に前記コンデンサに蓄積された電荷を前記スイッチング素子を介して基準電位へ放電することを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。
【請求項11】
請求項10に記載の電圧駆動型素子のゲート駆動回路において、前記スイッチング素子が、PNPトランジスタまたはMOSFETからなっていることを特徴とする電圧駆動型素子のゲート駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−86068(P2008−86068A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260260(P2006−260260)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】