説明

電子制御装置、および、電子制御装置の制御方法

【課題】異常状態のCPUにより、エンジン等の制御対象が制御されるのを抑制することが可能な電子制御装置を提供する。
【解決手段】クロック信号に基づいて動作する電子制御装置100において、メインCPU2は、第2のWDT信号SWDT2のパルス幅t2が予め設定された第1の範囲から外れていることを検出した場合には、第2の信号生成装置7の発振周波数の異常を検出したことを示す第1の異常検出信号SD1を出力し、サブCPU4は、第1のWDT信号SWDT1のパルス幅t1が予め設定された第2の範囲から外れていることを検出した場合には、第1の信号生成装置6の発振周波数の異常を検出したことを示す第2の異常検出信号SD2を出力する。第1、第2の異常検出信号SD1、SD2が出力された場合には、電子制御装置100の動作を強制的に停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジンの駆動を制御する電子制御装置、および、電子制御装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、車両用のエンジンのエンジン駆動制御装置(ECU:Engine Control Unit)においては、エンジンの運転状態を検出する各種検出信号に基づいて、燃料噴射制御や点火制御等とともに、ノックコントロール、スロットルコントロール、燃料ポンプ制御、EGR(Exhaust Gas Recirculation)制御等の各種制御が実行される。そして、その制御対象が大幅に拡大される傾向にある。
【0003】
このため、上記従来の電子制御装置では、複数のCPUを有するマルチCPU構成を有する(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特に、2個のCPUを用いる2CPU構成のエンジン駆動制御装置が広く用いられている。ここで、図3は、従来のエンジン駆動制御装置100Aの構成の一例を示す図である。 マルチCPU構成のエンジン駆動制御装置100Aでは、それぞれのメインCPU2、サブCPU4において、全ての処理を分配して実行する。
【0005】
さらに、この2つのCPU2、4に対しては、例えば、CPU2、3を動作させるためのクロック信号CLK1、CLK2を発生する水晶振動子x1、x2が設けられている。
【0006】
さらに、この2つのCPU2、4に対しては、該クロック信号CLK1、CLK2に基づいて生成された第1、第2のWDT信号SWDT1、SWDT2に基づいて、異常を監視する第1、第2の監視回路1、3がそれぞれ設けられている。
【0007】
そして、各監視回路1、3において検出された異常状態に応じて、対応するCPU2、4のフェイルが検出される。
【0008】
そして、例えば、一方のCPU2がフェイルした場合には、他方のCPU4が該一方のCPU2の処理も合わせて実行することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−293320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、既述の特許文献1に記載の従来技術では、例えば、該クロック信号の発振周波数に誤差が生じた場合には、該クロック信号に対応するWDT信号の周波数にも誤差が発生し、このWDT信号に基づいて動作する監視回路が、異常の検出を行うまでの時間に差が生じ得る。
【0011】
これにより、CPUの異常を、適切に検出することができなくなる問題があった。
【0012】
さらに、この場合、異常状態のCPUによりエンジンが制御され、適切にエンジンを制御することができない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る実施例に従った電子制御装置は、
クロック信号に基づいて動作する電子制御装置であって、
第1のクロック信号を生成するための第1の信号生成装置と、
前記第1のクロック信号に基づいて動作し、第1の制御信号を出力するとともに、前記第1のクロック信号に基づいて生成した第1のWDT信号を出力するメインCPUと、
前記第1のWDT信号に基づいて前記メインCPUの動作を監視し、前記メインCPUの動作に異常が発生した場合には、第1のリセット信号を出力して前記メインCPUをリセットする第1の監視回路と、
第2のクロック信号を生成するための第2の信号生成装置と、
前記第2のクロック信号に基づいて動作し、第2の制御信号を出力するとともに、前記第2のクロック信号に基づいて生成した第2のWDT信号を出力するサブCPUと、
前記第2のWDT信号に基づいて前記サブCPUの動作を監視し、前記サブCPUの動作に異常が発生した場合には、第2のリセット信号を出力して前記サブCPUをリセットする第2の監視回路と、を備え、
前記メインCPUは、前記第2のWDT信号が入力され、前記第2のWDT信号のパルス幅が予め設定された第1の範囲から外れていることを検出した場合には、前記第2の信号生成装置の発振周波数の異常を検出したことを示す第1の異常検出信号を出力し、
前記サブCPUは、前記第1のWDT信号が入力され、前記第1のWDT信号のパルス幅が予め設定された第2の範囲から外れていることを検出した場合には、前記第1の信号生成装置の発振周波数の異常を検出したことを示す第2の異常検出信号を出力する
ことを特徴とする。
【0014】
前記電子制御装置において、
前記第1の異常検出信号または前記第2の異常検出信号が出力された場合には、前記電子制御装置の動作を強制的に停止するようにしてもよい。
【0015】
前記電子制御装置において、
前記第1のWDT信号は、前記第1の信号生成装置の発振周波数と同じ周波数を有し、前記第2のWDT信号は、前記第2の信号生成装置の発振周波数と同じ周波数を有するようにしてもよい。
【0016】
前記電子制御装置において、
前記メインCPUと前記サブCPUとは、所定の処理を冗長処理するようにしてもよい。
【0017】
前記電子制御装置において、
前記電子制御装置は、ECUであるようにしてもよい。
【0018】
前記電子制御装置において、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号の何れかには、燃料噴射制御、点火制御、ノックコントロール、スロットルコントロール、燃料ポンプ制御、EGR制御のための信号が含まれるようにしてもよい。
【0019】
前記電子制御装置において、
前記電子制御装置は、車両に搭載され、前記車両に搭載されたエンジンを制御するようにしてもよい。
【0020】
前記電子制御装置において、
エンジンの運転状態を検出する検出信号に基づいて、前記メインCPUおよび前記サブCPUは、前記第1の制御信号および前記第2の制御信号を出力するようにしてもよい。
【0021】
前記電子制御装置において、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号に応じて動作する制御回路を、さらに備えるようにしてもよい。
【0022】
前記電子制御装置において、
前記制御回路は、前記第1の制御信号および前記第2の制御信号に基づいて、エンジンの動作を制御するようにしてもよい。
【0023】
前記電子制御装置において、
前記第1のWDT信号は、第1のフィルタ用キャパシタを介して前記第1の監視回路に入力され、
前記第2のWDT信号は、第2のフィルタ用キャパシタを介して前記第2の監視回路に入力されるようにしてもよい。
【0024】
前記電子制御装置において、
前記第1の信号生成装置の発振周波数は、前記第2の信号生成装置の発振周波数と等しくなるように設定されているようにしてもよい。
【0025】
前記電子制御装置において、
前記第1の範囲は、前記第2の範囲と等しいようにしてもよい。
【0026】
前記電子制御装置において、
前記電子制御装置は、強制的な停止後、外部信号に応じて、動作を再開するようにしてもよい。
【0027】
前記電子制御装置において、
前記外部信号は、使用者により入力されるようになっているようにしてもよい。
【0028】
前記電子制御装置において、
前記第1の信号生成装置は、第1の水晶振動子を有し、
前記第2の信号生成装置は、第2の水晶振動子を有するようにしてもよい。
【0029】
前記電子制御装置において、
前記第1の信号生成装置は、
前記第1の水晶振動子の一端と接地との間に接続され、前記第1の水晶振動子の励振レベル、発振周波数を調整するための第1の調整キャパシタと、
前記第1の水晶振動子の他端と前記接地との間に接続され、前記第1の水晶振動子の励振レベル、発振周波数を調整するための第2の調整キャパシタと、をさらに有し、
前記第2の信号生成装置は、
前記第2の水晶振動子の一端と前記接地との間に接続され、前記第2の水晶振動子の励振レベル、発振周波数を調整するための第3の調整キャパシタと、
前記第2の水晶振動子の他端と前記接地との間に接続され、前記第2の水晶振動子の励振レベル、発振周波数を調整するための第4の調整キャパシタと、をさらに有するようにしてもよい。
【0030】
本発明の一態様に係る実施例に従った電子制御装置の制御方法は、
第1のクロック信号を生成するための第1の信号生成装置と、前記第1のクロック信号に基づいて動作し、第1の制御信号を出力するとともに、前記第1のクロック信号に基づいて生成した第1のWDT信号を出力するメインCPUと、前記第1のWDT信号に基づいて前記メインCPUの動作を監視し、前記メインCPUの動作に異常が発生した場合には、第1のリセット信号を出力して前記メインCPUをリセットする第1の監視回路と、第2のクロック信号を生成するための第2の信号生成装置と、前記第2のクロック信号に基づいて動作し、第2の制御信号を出力するとともに、前記第2のクロック信号に基づいて生成した第2のWDT信号を出力するサブCPUと、前記第2のWDT信号に基づいて前記サブCPUの動作を監視し、前記サブCPUの動作に異常が発生した場合には、第2のリセット信号を出力して前記サブCPUをリセットする第2の監視回路と、を備える電子制御装置の制御方法であって、
前記メインCPUが、前記第2のWDT信号のパルス幅が予め設定された第1の範囲から外れていることを検出した場合には、前記第2の信号生成装置の発振周波数の異常を検出したことを示す第1の異常検出信号を出力し、
一方、前記サブCPUが、前記第1のWDT信号のパルス幅が予め設定された第2の範囲から外れていることを検出した場合には、前記第1の信号生成装置の発振周波数の異常を検出したことを示す第2の異常検出信号を出力することを特徴とする。
【0031】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記第1の異常検出信号または前記第2の異常検出信号が出力された場合には、前記電子制御装置の動作を強制的に停止するようにしてもよい。
【0032】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記第1のWDT信号は、前記第1の信号生成装置の発振周波数と同じ周波数を有し、前記第2のWDT信号は、前記第2の信号生成装置の発振周波数と同じ周波数を有するようにしてもよい。
【0033】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記メインCPUと前記サブCPUとは、所定の処理を冗長処理することを特徴とするようにしてもよい。
【0034】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記電子制御装置は、ECUであるようにしてもよい。
【0035】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号の何れかには、燃料噴射制御、点火制御、ノックコントロール、スロットルコントロール、燃料ポンプ制御、EGR制御のための信号が含まれるようにしてもよい。
【0036】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記第1の信号生成装置の発振周波数は、前記第2の信号生成装置の発振周波数と等しくなるように設定されているようにしてもよい。
【0037】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記第1の範囲は、前記第2の範囲と等しいようにしてもよい。
【0038】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記電子制御装置は、強制的な停止後、外部信号に応じて、動作を再開するようにしてもよい。
【0039】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記外部信号は、使用者により入力されるようになっているようにしてもよい。
【0040】
前記電子制御装置の制御方法において、
前記第1の信号生成装置は、第1の水晶振動子を有し、
前記第2の信号生成装置は、第2の水晶振動子を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明の一態様に係る電子制御装置では、例えば、メインCPUは、第2のWDT信号のパルス幅が予め設定された第1の範囲から外れていることを検出した場合には、第2の水晶振動子の発振周波数の異常を検出したことを示す第1の異常検出信号を出力し、一方、サブCPUは、第1のWDT信号のパルス幅が予め設定された第2の範囲から外れていることを検出した場合には、第1の水晶振動子の発振周波数の異常を検出したことを示す第2の異常検出信号を出力する。
【0042】
これにより、一方のCPUの水晶振動子の発振周波数に誤差が生じた場合に、他方のCPUが該一方のCPUに異常が発生したことを検出することができる。
【0043】
さらに、この第1、第2の異常検出信号に応じて電子制御装置の動作を強制的に停止することにより、異常状態のCPUにより、エンジンが制御されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の一態様である実施例1に係る駆動制御システム1000の構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、図1に示す駆動制御システム1000のエンジン駆動制御装置100の構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、従来のエンジン駆動制御装置100Aの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に係る各実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0046】
図1は、本発明の一態様である実施例1に係る駆動制御システム1000の構成の一例を示す図である。
【0047】
図1に示すように、駆動制御システム1000は、電子制御装置であるエンジン駆動制御装置(ECU:Engine Control Unit)100と、モータ102と、エンジン(内燃機関)103と、センサ104と、を備える。
【0048】
モータ102は、エンジン103のクランク軸にトルクを付与するようになっている。ここでは、モータ102は、エンジン103のクランク軸にトルクを授受可能に連結されている。すなわち、このモータ102は、電動機と発電機の両方の機能を併せ持つ。このモータ102は、図示しないバッテリに回生電力を充電し、または、該バッテリから駆動するための電力を供給されるようになっている。
【0049】
センサ104は、例えば、エンジン103の回転数およびクランク角等を検出し、この検出結果に応じた検出信号を出力するようになっている。
【0050】
エンジン駆動制御装置100は、クロック信号に基づいて動作し、該検出信号等に基づいて、エンジン102の状態を判断し、モータ101を制御することにより、エンジン103の駆動を制御するようになっている。このエンジン駆動制御装置100は、例えば、車両(図示せず)に搭載され、該車両に搭載されたエンジン103を制御する。
【0051】
ここで、図2は、図1に示す駆動制御システム1000のエンジン駆動制御装置100の構成の一例を示す図である。
【0052】
図1に示すように、エンジン駆動制御装置100は、第1の監視回路1と、メインCPU(Central Processing Unit)2と、第2の監視回路3と、サブCPU4と、制御回路5と、第1の信号生成装置6と、第2の信号生成装置7と、を備える。
【0053】
第1の信号生成装置6は、第1のクロック信号CLK1を生成するようになっている。
【0054】
この第1の信号生成装置6は、図2に示すように、例えば、第1の水晶振動子x1と、第1の調整キャパシタC1aと、第2の調整キャパシタC1bと、を有する。
【0055】
第1の水晶振動子x1は、メインCPU2の端子X1OUTに一端が接続され、メインCPU2の端子X1INに他端が接続されている。
【0056】
第1の調整キャパシタC1aは、第1の水晶振動子x1の一端と接地との間に接続されている。この第1の調整キャパシタC1aは、第1の水晶振動子x1の励振レベル、発振周波数を調整するための素子である。
【0057】
第2の調整キャパシタC1bは、第1の水晶振動子x1の他端と接地との間に接続されている。この第2の調整キャパシタC2bは、第1の調整キャパシタC1aと同様に、第1の水晶振動子x1の励振レベル、発振周波数を調整するための素子である。
【0058】
また、メインCPU2は、端子X1OUT、X1INを介して入力される第1のクロック信号CLK1、および、既述の検出信号等に基づいて動作するようになっている。
【0059】
このメインCPU2は、端子CON1から第1の制御信号SCON1を出力するとともに、第1のクロック信号CLK1に基づいて生成した第1のWDT(Watch Dog Timer)信号SWDT1を端子T1OUTから出力する。このメインCPU2の端子T1INと接地との間には、抵抗R1aと抵抗R1bとが直列に接続されている。
【0060】
第1のWDT信号SWDT1は、第1の信号生成装置6(すなわち、第1の水晶振動子x1)の発振周波数と同じ周波数を有する。この第1のWDT信号SWDT1は、第1のフィルタ用キャパシタC1cを介して第1の監視回路1に入力される。
【0061】
第1の監視回路1は、第1のWDT信号SWDT1に基づいてメインCPU2の動作を監視するようになっている。
【0062】
そして、この第1の監視回路1は、メインCPU2の動作に異常が発生した場合には、第1のリセット信号RESET1を出力してメインCPU2をリセットする。例えば、第1の監視回路1は、第1のWDT信号SWDT1のパルスが所定期間以上反転しない場合には、メインCPU2の動作に異常が発生したと判断する。
【0063】
また、第2の信号生成装置7は、第2のクロック信号CLK2を生成するようになっている。
【0064】
この第2の信号生成装置7は、図2に示すように、例えば、第2の水晶振動子x2と、第3の調整キャパシタC2aと、第4の調整キャパシタC2bと、を有する。
【0065】
第2の水晶振動子x2は、サブCPU4の端子X2OUTに一端が接続され、サブCPU4の端子X2INに他端が接続されている。
【0066】
第3の調整キャパシタC2aは、第2の水晶振動子x2の一端と接地との間に接続されている。この第3の調整キャパシタC2aは、第2の水晶振動子x2の励振レベル、発振周波数を調整するための素子である。
【0067】
第4の調整キャパシタC2bは、第2の水晶振動子x2の他端と接地との間に接続されている。この第4の調整キャパシタC2bは、第3の調整キャパシタC2aと同様に、第2の水晶振動子x2の励振レベル、発振周波数を調整するための素子である。
【0068】
また、サブCPU4は、端子X2OUT、X2INを介して入力される第2のクロック信号CLK2、および、既述の検出信号等に基づいて動作するようになっている。
【0069】
このサブCPU4は、端子CON2から第2の制御信号SCON2を出力するとともに、第2のクロック信号CLK2に基づいて生成した第2のWDT信号SWDT2を端子T2OUTから出力する。このサブCPU4の端子T2INと接地との間には、抵抗R2aと抵抗R2bとが直列に接続されている。
【0070】
第2のWDT信号SWDT2は、第2の信号生成装置7(すなわち、第2の水晶振動子x2)の発振周波数と同じ周波数を有する。この第2のWDT信号SWDT2は、第2のフィルタ用キャパシタC2cを介して第2の監視回路2に入力される。
【0071】
例えば、メインCPU2およびサブCPU4は、エンジン103の運転状態を検出する検出信号に基づいて、既述の第1の制御信号SCON1および第2の制御信号SCON2を出力する。したがって、例えば、第1の制御信号SCON1および第2の制御信号SCON2の何れかには、燃料噴射制御、点火制御、ノックコントロール、スロットルコントロール、燃料ポンプ制御、EGR(Exhaust Gas Recirculation)制御のための信号等が含まれる。
【0072】
なお、これらのメインCPU2とサブCPU4とは、所定の処理を冗長処理するようになっている。
【0073】
第2の監視回路3は、第2のWDT信号SWDT2に基づいてサブCPU4の動作を監視するようになっている。
【0074】
そして、この第2の監視回路3は、サブCPU4の動作に異常が発生した場合には、第2のリセット信号RESET2を出力してサブCPU2をリセットする。例えば、第2の監視回路3は、第2のWDT信号SWDT2のパルスが所定期間以上反転しない場合には、サブCPU4の動作に異常が発生したと判断する。
【0075】
ここで、メインCPU2は、抵抗R1aおよび端子T1INを介して第2のWDT信号SWDT2が入力されるようになっている。そして、メインCPU2は、第2のWDT信号SWDT2のパルス幅t2が予め設定された第1の範囲から外れていることを検出した場合には、第2の信号生成装置7の発振周波数の異常(すなわち、サブCPU4の故障)を検出したことを示す第1の異常検出信号SD1を、端子TD1から制御回路5に出力するようになっている。
【0076】
一方、サブCPU4は、抵抗R2aおよび端子T2INを介して第1のWDT信号SWDT1が入力されるようになっている。そして、サブCPU4は、第1のWDT信号SWDT1のパルス幅t1が予め設定された第2の範囲から外れていることを検出した場合には、第1の信号生成装置6の発振周波数の異常(すなわち、メインCPU2の故障)を検出したことを示す第2の異常検出信号SD2を、端子TD1から制御回路5に出力するようになっている。
【0077】
なお、第1の信号生成装置6の発振周波数は、例えば、第2の信号生成装置7の発振周波数と等しくなるように設定されている。この場合、該第1の範囲は、該第2の範囲と等しくなるように設定される。
【0078】
また、制御回路5は、既述の第1の制御信号SCON1および第2の制御信号SCON2が入力され、第1の制御信号SCON1および第2の制御信号SCON2に応じて動作するようになっている。そして、制御回路5は、第1の制御信号SCON1および第2の制御信号SCON2に基づいて、例えば、燃料噴射制御、点火制御、ノックコントロール、スロットルコントロール、燃料ポンプ制御、EGR制御等のエンジン103の動作を制御する。
【0079】
また、制御回路5は、第1の異常検出信号SD1または第2の異常検出信号SD2がメサブCPU4またはインCPU2から出力された場合には、エンジン駆動制御装置100の動作を強制的に停止するようになっている。
【0080】
これにより、異常状態のCPUにより、エンジン等の制御対象が制御されるのを抑制することができる。
【0081】
なお、エンジン駆動制御装置100は、上記強制的な停止後、外部信号(図示せず)に応じて、動作を再開する。この場合、該外部信号は、例えば、エンジン駆動制御装置100の使用者により入力されるようになっている。
【0082】
次に、以上のような構成を有する駆動制御システム1000のエンジン駆動制御装置100の制御方法の一例について、説明する。
【0083】
例えば、サブCPU4の故障等により第2の信号生成装置7の発振周波数に異常が発生すると、第2のWDT信号SWDT2のパルス幅t2が該第1の範囲から外れる。
【0084】
これに応じて、メインCPU2が、第2のWDT信号SWDT2のパルス幅t2が該第1の範囲から外れていることを検出した場合には、第2の信号生成装置7の発振周波数の異常(すなわち、サブCPU4の故障)を検出したことを示す第1の異常検出信号SD1を出力する。
【0085】
そして、制御回路5は、メインCPU2から出力された第1の異常検出信号SD1を受けると、エンジン駆動制御装置100の動作を強制的に停止する。
【0086】
これにより、異常状態のサブCPU4により、エンジン等の制御対象が制御されるのを抑制することができる。
【0087】
一方、例えば、メインCPU2の故障等により第1の信号生成装置6の発振周波数に異常が発生すると、第1のWDT信号SWDT1のパルス幅t1が該第2の範囲から外れる。
【0088】
これに応じて、サブCPU4が、第1のWDT信号SWDT1のパルス幅t1が該第2の範囲から外れていることを検出した場合には、第1の信号生成装置6の発振周波数の異常(すなわち、メインCPU2の故障)を検出したことを示す第2の異常検出信号SD2を出力する。
【0089】
そして、制御回路5は、サブCPU4から出力された第1の異常検出信号SD1を受けると、エンジン駆動制御装置100の動作を強制的に停止する。
【0090】
これにより、異常状態のメインCPU2により、エンジン等の制御対象が制御されるのを抑制することができる。
【0091】
以上のように、本発明の一態様に係る電子制御装置(エンジン駆動制御装置)では、例えば、メインCPUは、第2のWDT信号のパルス幅が予め設定された第1の範囲から外れていることを検出した場合には、第2の水晶振動子の発振周波数の異常を検出したことを示す第1の異常検出信号を出力し、一方、サブCPUは、第1のWDT信号のパルス幅が予め設定された第2の範囲から外れていることを検出した場合には、第1の水晶振動子の発振周波数の異常を検出したことを示す第2の異常検出信号を出力する。
【0092】
これにより、一方のCPUの水晶振動子の発振周波数に誤差が生じた場合に、他方のCPUが該一方のCPUに異常が発生したことを検出することができる。
【0093】
さらに、この第1、第2の異常検出信号に応じて電子制御装置の動作を強制的に停止することにより、異常状態のCPUにより、制御対象であるエンジンが制御されるのを抑制することができる。
【0094】
すなわち、本発明の一態様に係る電子制御装置は、より適切に制御対象であるエンジンを制御することができる。
【0095】
なお、既述の図1においては、エンジン103とモータ102とが一体になった場合について例示しているが、エンジン103とモータ102とが別体になっていてもよい。
【0096】
また、各実施例においては、モータ102は、電動機と発電機の両方の機能を併せ持つ場合について示している。
【0097】
しかし、モータ102がエンジン103のクランク軸にトルクを与えるように連結され、電動機の機能のみを持つようにしても、本発明の作用・効果を奏することができる。この場合、発電機として機能するモータが別途用意される。
【0098】
また、既述の図2においては、第1、第2の信号生成装置6、7の第1、第2の水晶振動子x1、x2により第1、第2のクロック信号CLK1、2を生成する場合について例示しているが、第1、第2の信号生成装置6、7が他の素子やデバイスにより第1、第2のクロック信号CLK1、2を生成するようにしてもよい。
【0099】
また、実施例では、制御回路5が、第1の異常検出信号SD1または第2の異常検出信号SD2がメインCPU2またはサブCPU4から出力された場合には、エンジン駆動制御装置100の動作を強制的に停止するようにした。しかし、第1の異常検出信号SD1または第2の異常検出信号SD2に応じて、他の制御回路、メインCPU2、または、サブCPU4が、エンジン駆動制御装置100の動作を停止するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 第1の監視回路
2 メインCPU
3 第2の監視回路
4 サブCPU
5 制御回路
6 第1の信号生成装置
7 第2の信号生成装置
100 電子制御装置(ECU)
102 モータ
103 エンジン(内燃機関)
104 センサ
1000 駆動制御システム
x1 第1の水晶振動子
C1a 第1の調整キャパシタ
C1b 第2の調整キャパシタ
x2 第2の水晶振動子
C2a 第3の調整キャパシタ
C2b 第4の調整キャパシタ
C1c 第1のフィルタ用キャパシタ
C2c 第2のフィルタ用キャパシタ
CLK1 第1のクロック信号
CLK2 第2のクロック信号
SCON1 第1の制御信号
SCON2 第2の制御信号
SD1 第1の異常検出信号
SD2 第2の異常検出信号
SWDT1 第1のWDT信号
SWDT2 第2のWDT信号
R1IN、X1IN、X1OUT、T1IN、CON1、TD1、T1OUT、R2IN、X2IN、X2OUT、T12N、CON2、TD2、T2OUT 端子
R1a、R1b、R2a、R2b 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号に基づいて動作する電子制御装置であって、
第1のクロック信号を生成するための第1の信号生成装置と、
前記第1のクロック信号に基づいて動作し、第1の制御信号を出力するとともに、前記第1のクロック信号に基づいて生成した第1のWDT信号を出力するメインCPUと、
前記第1のWDT信号に基づいて前記メインCPUの動作を監視し、前記メインCPUの動作に異常が発生した場合には、第1のリセット信号を出力して前記メインCPUをリセットする第1の監視回路と、
第2のクロック信号を生成するための第2の信号生成装置と、
前記第2のクロック信号に基づいて動作し、第2の制御信号を出力するとともに、前記第2のクロック信号に基づいて生成した第2のWDT信号を出力するサブCPUと、
前記第2のWDT信号に基づいて前記サブCPUの動作を監視し、前記サブCPUの動作に異常が発生した場合には、第2のリセット信号を出力して前記サブCPUをリセットする第2の監視回路と、を備え、
前記メインCPUは、前記第2のWDT信号が入力され、前記第2のWDT信号のパルス幅が予め設定された第1の範囲から外れていることを検出した場合には、前記第2の信号生成装置の発振周波数の異常を検出したことを示す第1の異常検出信号を出力し、
前記サブCPUは、前記第1のWDT信号が入力され、前記第1のWDT信号のパルス幅が予め設定された第2の範囲から外れていることを検出した場合には、前記第1の信号生成装置の発振周波数の異常を検出したことを示す第2の異常検出信号を出力する
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記第1の異常検出信号または前記第2の異常検出信号が出力された場合には、前記電子制御装置の動作を強制的に停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記第1のWDT信号は、前記第1の信号生成装置の発振周波数と同じ周波数を有し、前記第2のWDT信号は、前記第2の信号生成装置の発振周波数と同じ周波数を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記メインCPUと前記サブCPUとは、所定の処理を冗長処理することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記電子制御装置は、ECUであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号の何れかには、燃料噴射制御、点火制御、ノックコントロール、スロットルコントロール、燃料ポンプ制御、EGR制御のための信号が含まれる
ことを特徴とする請求項5に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記電子制御装置は、車両に搭載され、前記車両に搭載されたエンジンを制御することを特徴とする請求項5または6に記載の電子制御装置。
【請求項8】
エンジンの運転状態を検出する検出信号に基づいて、前記メインCPUおよび前記サブCPUは、前記第1の制御信号および前記第2の制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項6または7に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号に応じて動作する制御回路を、さらに備える
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項10】
前記制御回路は、前記第1の制御信号および前記第2の制御信号に基づいて、エンジンの動作を制御する
ことを特徴とする請求項9に記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記第1のWDT信号は、第1のフィルタ用キャパシタを介して前記第1の監視回路に入力され、
前記第2のWDT信号は、第2のフィルタ用キャパシタを介して前記第2の監視回路に入力される
ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項12】
前記第1の信号生成装置の発振周波数は、前記第2の信号生成装置の発振周波数と等しくなるように設定されている
ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項13】
前記第1の範囲は、前記第2の範囲と等しいことを特徴とする請求項12に記載の電子制御装置。
【請求項14】
前記電子制御装置は、強制的な停止後、外部信号に応じて、動作を再開することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項15】
前記外部信号は、使用者により入力されるようになっていることを特徴とする請求項14に記載の電子制御装置。
【請求項16】
前記第1の信号生成装置は、第1の水晶振動子を有し、
前記第2の信号生成装置は、第2の水晶振動子を有することを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項17】
前記第1の信号生成装置は、
前記第1の水晶振動子の一端と接地との間に接続され、前記第1の水晶振動子の励振レベル、発振周波数を調整するための第1の調整キャパシタと、
前記第1の水晶振動子の他端と前記接地との間に接続され、前記第1の水晶振動子の励振レベル、発振周波数を調整するための第2の調整キャパシタと、をさらに有し、
前記第2の信号生成装置は、
前記第2の水晶振動子の一端と前記接地との間に接続され、前記第2の水晶振動子の励振レベル、発振周波数を調整するための第3の調整キャパシタと、
前記第2の水晶振動子の他端と前記接地との間に接続され、前記第2の水晶振動子の励振レベル、発振周波数を調整するための第4の調整キャパシタと、をさらに有する
ことを特徴とする請求項16に記載の電子制御装置。
【請求項18】
第1のクロック信号を生成するための第1の信号生成装置と、前記第1のクロック信号に基づいて動作し、第1の制御信号を出力するとともに、前記第1のクロック信号に基づいて生成した第1のWDT信号を出力するメインCPUと、前記第1のWDT信号に基づいて前記メインCPUの動作を監視し、前記メインCPUの動作に異常が発生した場合には、第1のリセット信号を出力して前記メインCPUをリセットする第1の監視回路と、第2のクロック信号を生成するための第2の信号生成装置と、前記第2のクロック信号に基づいて動作し、第2の制御信号を出力するとともに、前記第2のクロック信号に基づいて生成した第2のWDT信号を出力するサブCPUと、前記第2のWDT信号に基づいて前記サブCPUの動作を監視し、前記サブCPUの動作に異常が発生した場合には、第2のリセット信号を出力して前記サブCPUをリセットする第2の監視回路と、を備える電子制御装置の制御方法であって、
前記メインCPUが、前記第2のWDT信号のパルス幅が予め設定された第1の範囲から外れていることを検出した場合には、前記第2の信号生成装置の発振周波数の異常を検出したことを示す第1の異常検出信号を出力し、
一方、前記サブCPUが、前記第1のWDT信号のパルス幅が予め設定された第2の範囲から外れていることを検出した場合には、前記第1の信号生成装置の発振周波数の異常を検出したことを示す第2の異常検出信号を出力する
ことを特徴とする電子制御装置の制御方法。
【請求項19】
前記第1の異常検出信号または前記第2の異常検出信号が出力された場合には、前記電子制御装置の動作を強制的に停止する
ことを特徴とする請求項18に記載の電子制御装置の制御方法。
【請求項20】
前記第1のWDT信号は、前記第1の信号生成装置の発振周波数と同じ周波数を有し、前記第2のWDT信号は、前記第2の信号生成装置の発振周波数と同じ周波数を有する
ことを特徴とする請求項18または19に記載の電子制御装置の制御方法。
【請求項21】
前記メインCPUと前記サブCPUとは、所定の処理を冗長処理することを特徴とする請求項18ないし20のいずれか一項に記載の電子制御装置の制御方法。
【請求項22】
前記電子制御装置は、ECUであることを特徴とする請求項18ないし21のいずれか一項に記載の電子制御装置の制御方法。
【請求項23】
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号の何れかには、燃料噴射制御、点火制御、ノックコントロール、スロットルコントロール、燃料ポンプ制御、EGR制御のための信号が含まれる
ことを特徴とする請求項22に記載の電子制御装置の制御方法。
【請求項24】
前記第1の信号生成装置の発振周波数は、前記第2の信号生成装置の発振周波数と等しくなるように設定されている
ことを特徴とする請求項18ないし23のいずれか一項に記載の電子制御装置の制御方法。
【請求項25】
前記第1の範囲は、前記第2の範囲と等しいことを特徴とする請求項24に記載の電子制御装置の制御方法。
【請求項26】
前記電子制御装置は、強制的な停止後、外部信号に応じて、動作を再開することを特徴とする請求項18ないし25のいずれか一項に記載の電子制御装置の制御方法。
【請求項27】
前記外部信号は、使用者により入力されるようになっていることを特徴とする請求項26に記載の電子制御装置の制御方法。
【請求項28】
前記第1の信号生成装置は、第1の水晶振動子を有し、
前記第2の信号生成装置は、第2の水晶振動子を有することを特徴とする請求項18に記載の電子制御装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−107522(P2012−107522A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254935(P2010−254935)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】