説明

電子装置、配線体及び電子装置の製造方法

【課題】放熱性を向上しつつ導体層に加えられる熱応力を緩和できる電子装置を提供する。
【解決手段】LED発光装置18は、放熱板1と、放熱板1よりも熱伝導率及び弾性率が低く、放熱板1に積層された接着剤2と、接着剤2の放熱板1とは反対側に積層された導体層21と、導体層21の接着剤2とは反対側に実装されたLEDランプ15とを有する。接着剤2は、薄肉部2dと、薄肉部2dよりも厚い厚肉部2bとを有する。導体層21は、薄肉部2dに配置され、LEDランプ15が実装されるインナーリード6aと、厚肉部2bに配置される配線部6cと、薄肉部2dと厚肉部2bとの段差部2cに配置され、インナーリード6aと配線部6cとを接続する湾曲部6eとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板付きLED発光装置等の電子装置、放熱板付き配線板等の配線体、及び、前記電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放熱性を向上させるために、放熱板を取り付けた電子装置が知られている。例えば、特許文献1のLED発光装置は、金属で構成された放熱板と、放熱板上に積層された絶縁層と、絶縁層上に積層された導体層(配線パターン)と、導体層上に実装されたLEDとを有している。LEDにおいて生じた熱は、導体層及び絶縁層を介して放熱板に伝達され、放熱板から大気へ放散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−81234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子装置の各部材においては、部材間の熱膨張差によって熱応力が生じる。例えば、特許文献1のLED発光装置では、LEDにおいて生じた熱により、放熱板が他の部材に比較して大きく膨張し、導体層に引張応力が加えられる。このような熱応力は、導体層の耐久性に影響を及ぼす。
【0005】
本発明の目的は、放熱性を向上しつつ導体層に加えられる熱応力を緩和できる電子装置、配線体及び電子装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子装置は、基体と、前記基体よりも熱伝導率及び弾性率が低く、前記基体に積層された接着層と、前記接着層の前記基体とは反対側に積層された導体層と、前記導体層の前記接着層とは反対側に実装された電子部品と、を有し、前記接着層は、薄肉部と、前記薄肉部よりも厚い厚肉部と、を有し、前記導体層は、前記薄肉部に配置され、前記電子部品が実装される実装部と、前記厚肉部に配置される配線部と、前記薄肉部と前記厚肉部との段差部に配置され、前記実装部と前記配線部とを接続する湾曲部と、を有する。
【0007】
好適には、前記導体層の前記接着層とは反対側に積層されており、前記電子部品が配置される開口部が形成された絶縁基材を更に有し、前記薄肉部は、平面視において前記開口部内に収まっている。
【0008】
好適には、前記導体層は、前記薄肉部から前記厚肉部に亘って配置され、前記電子部品と非接続の状態で前記電子部品に対向する放熱パターンを有する。
【0009】
好適には、前記基体と前記接着剤との間に介在する絶縁膜を更に有する。
【0010】
好適には、前記基体は、金属により形成され、前記絶縁膜は、前記金属の酸化皮膜である。
【0011】
本発明の配線体は、基体と、前記基体よりも熱伝導率及び弾性率が低く、前記基体に積層された接着層と、前記接着層の前記基体とは反対側に積層された導体層と、を有し、前記接着層は、薄肉部と、前記薄肉部よりも厚い厚肉部と、を有し、前記導体層は、前記薄肉部に配置される実装部と、前記厚肉部に配置される配線部と、前記薄肉部と前記厚肉部との段差部に配置され、前記実装部と前記配線部とを接続する湾曲部と、を有する。
【0012】
本発明の電子装置の製造方法は、基体と導体層とを前記基体よりも熱伝導率及び弾性率が低い接着剤を間に挟んで積層する工程と、積層された前記導体層を前記基体側へ加圧する工程と、加圧後の前記導体層に電子部品を実装する工程と、を有し、前記加圧する工程では、前記電子部品が実装される部分が、他の少なくとも一部よりも高い圧力で加圧される。
【0013】
好適には、前記加圧する工程より前において、前記導体層の前記接着層とは反対側に積層され、前記電子部品が実装される部分を露出させる開口部が形成された絶縁基材を設ける工程を更に有し、前記加圧する工程では、前記開口部に前記絶縁基材の厚さよりも厚いスペーサを配置し、前記絶縁基材及び前記スペーサを共に所定の平面により前記基体側へ加圧する。
【0014】
好適には、前記絶縁基材を設ける工程は、前記積層する工程よりも前において、前記絶縁基材に開口部を形成し、前記開口部が形成された前記絶縁基材と前記導体層とを積層して接着し、配線板を形成する工程であり、前記積層する工程では、前記導体層を前記基体側に、前記絶縁基材を前記基体とは反対側に向けて、前記配線板を前記基体に積層する。
【0015】
好適には、前記積層する工程より前において、前記基体の前記接着剤が設けられる側の面に絶縁膜を形成する工程を更に有する。
【0016】
本発明の別の観点の電子装置の製造方法は、絶縁基材に開口部を形成し、前記開口部が形成された前記絶縁基材と導体層とを積層して接着し、配線板を形成する工程と、前記導体層を基体側に、前記絶縁基材を前記基体とは反対側に向けて、前記配線板と前記基体とを積層して接着する工程と、前記基体に接着された前記導体層の、前記開口部から露出する部分に電子部品を実装する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放熱性を向上しつつ導体層に加えられる熱応力を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)ないし(D)は、本発明の第1の実施形態に係る放熱板付きプリント配線板に用いられるTABテープの製造工程を示す断面図である。
【図2】図1に示す製造方法により製造されるTABテープを示す平面図である。
【図3】(A)ないし(C)は、この発明に用いる放熱板付きプリント配線板の製造工程を示す断面図である。
【図4】図3の続きを示す断面図である。
【図5】図3及び図4に示す放熱板付きプリント配線板に、LEDランプを搭載したLED発光装置の断面図である。
【図6】図5に示すLED発光装置に加工を加えた別のLED発光装置を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る放熱板付きプリント配線板の製造方法を示す断面図である。
【図8】図7に示す方法で製造した放熱板付きプリント配線板に、LEDランプを搭載したLED発光装置の断面図である。
【図9】図8に示すLED発光装置に加工を加えた別のLED発光装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
(LED発光装置の構成の概要)
図5は、本発明の第1の実施形態に係るLED発光装置18を示す断面図である。
【0020】
LED発光装置18は、放熱板付きプリント配線板(配線体)10と、配線体10に実装されたLEDランプ15とを有している。配線体10は、放熱板1と、放熱板1に積層された接着剤2と、接着剤2に積層されたプリント配線板3とを有している。以下、LED発光装置18の製造方法を説明しつつ、LED発光装置18の詳細を説明する。
【0021】
(LED発光装置の製造方法)
図1(A)ないし図1(D)は、プリント配線板3の製造方法を示す断面図である。
【0022】
図1(A)に示すように、可撓性を有する絶縁基材4の表面に接着剤5を積層した積層基材27を用意する。接着剤5には、塵埃を防ぐためのカバーフィルム25が貼られている。絶縁基材4は、例えば、ポリイミド等の樹脂により形成されている。接着剤5は、例えば、エポキシ系の樹脂により形成されている。積層基材27は、図1の紙面貫通方向に長い長尺状に形成されている。
【0023】
そして、図1(B)に示すように、積層基材27を金型で打ち抜く。これにより、スプロケットホール7、LEDランプ搭載用開口部4a及び外部接続端子用開口部4bが形成される。なお、スプロケットホール7、LEDランプ搭載用開口部4a及び外部接続端子用開口部4bは、それぞれ別個の金型により打ち抜かれてもよいし、共通の金型により打ち抜かれてもよい。
【0024】
スプロケットホール7は、積層基材27の両縁に沿って長さ方向(図1の紙面貫通方向)に一定間隔置きに形成される(図2参照)。LEDランプ搭載用開口部4aは、例えば、積層基材27の幅方向(図1の左右方向)の中央において、積層基材27の長さ方向に一定間隔置きに形成される。外部接続端子用開口部4bは、例えば、積層基材27の幅方向においてLEDランプ搭載用開口部4aの両側に形成される。
【0025】
次に、積層基材27の長さ方向にカバーフィルム25を剥がしながら熱と圧力を加え、銅箔をラミネートした後、更に熱を加えてエポキシ系の接着剤5を硬化させる。これにより、図1(C)に示すように、銅箔により形成された導体層21が積層基材27に積層される。
【0026】
次に、図1(D)に示すように、導体層21をパターニングする。パターニングは、例えば、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィ法により行われる。なお、パターニングにおいて、積層基材27の搬送は、スプロケットホール7を用いて行われてよい。
【0027】
以上のとおり、TABテープ(プリント配線板3)は、絶縁基材4にLEDランプ搭載用開口部4a等の開口部を形成した後、絶縁基材4に導体層21を積層することにより形成される。
【0028】
図2は、TABテープ(プリント配線板3)の平面図である。なお、図1(D)は、図2のI−I線矢視方向の断面図である。なお、図2においては、図面の理解を容易化するために、導体層21にハッチングを付している。
【0029】
導体層21には、パターニングされることにより、第1配線パターン6A、第2配線パターン6B(以下、単に「配線パターン6」といい、両者を区別しないことがある。)、及び、放熱パターン23が形成されている。
【0030】
配線パターン6は、LEDランプ15に電圧を印加するためのものである。放熱パターン23は、LED発光装置18の放熱性を向上させるためのものである。2つの配線パターン6及び放熱パターン23は、互いに接続されていない(独立している)。
【0031】
配線パターン6は、LEDランプ搭載用開口部4aから露出するインナーリード6aと、LEDランプ搭載用開口部4aの外側に配置された配線部6cとを有している。配線部6cは、外部接続端子用開口部4bから露出する外部接続端子6bを含んでいる。インナーリード6aは、LEDランプ15が実装される部分である。外部接続端子6bは、LED発光装置18と他の機器とを接続するための部分である。
【0032】
放熱パターン23は、LEDランプ搭載用開口部4a及びその外側に跨って設けられており、LEDランプ搭載用開口部4aにおいては、LEDランプ15に対向する。ただし、LEDランプ15には接続されない。
【0033】
各部の平面形状は適宜に設定されてよい。例えば、LEDランプ搭載用開口部4aの平面形状は矩形である。LEDランプ搭載用開口部4aにおいて、導体層21は、T字状に区切られている。そして、インナーリード6aは、矩形状に形成されている。
【0034】
図3及び図4は、配線体10の製造工程を示す断面図である。
【0035】
配線体10の製造工程では、図3(A)に示すような短尺状の放熱板1を用意する。放熱板1の材料は、熱伝導率の高い物であることが好ましく、例えば、アルミニウム等の金属である。
【0036】
そして、図3(B)に示すように、放熱板1の一面に保護フィルム2a付きのシート状の接着剤2を圧力と熱を加えて貼り付ける。接着剤2は、電気絶縁性が良く熱伝導率が比較的高くヤング率または貯蔵弾性率が比較的低い物が好ましい。例えば、接着剤2として、エポキシ樹脂を主体にした、東レ(株)製の商品名「TSAシリーズ」が用いられてよい。
【0037】
次に、図3(C)に示すように、保護フィルム2aを剥がし、次いで、接着剤2とプリント配線板3の配線パターン面を対面させ位置決めした後、圧力と熱を加えて貼り合わせる。また、前記と異なる別の方法では、図3(B)に示す接着剤2と放熱板1の貼り付けを行わないようにする。そして、図示しないが保護フィルム2a付きのシート状の接着剤2をプリント配線板3の配線パターン面に圧力と熱を加えて貼り合わせる。次に、接着剤2に設けられた保護フィルム2aを剥がした後、図3(C)に示すように、接着剤2と放熱板1を対面させて位置決めし、圧力と熱を加えて貼り合わせるようにしてもよい。
【0038】
次に、図4(A)に示すように、LEDランプ搭載用開口部4a内に第1圧力シート8Aを配置し、第1圧力シート8A及びプリント配線板3の上に第2圧力シート8Bを配置する。第1圧力シート8A及び第2圧力シート8Bは、例えば、液晶ポリマーのフィルムなど、適度に弾性変形および塑性変形する材料により形成されている。
【0039】
そして、放熱板1から第2圧力シート8Bまでの積層体をプレス用下治具9bとプレス用上治具9aで挟み、圧力を加えた状態で加熱して接着剤2を硬化させる。なお、圧力、加熱温度、加熱時間は適宜に設定されてよい。例えば、170℃の温度で70分間の加熱が行われる。
【0040】
第1圧力シート8Aは、積層基材27よりも厚く形成されている。従って、接着剤2及び導体層21は、LEDランプ搭載用開口部4a内に位置する領域が、他の領域(隣接する領域)よりも高い圧力で圧縮される。
【0041】
その結果、接着剤2には、LEDランプ搭載用開口部4a内に位置する薄肉部2dと、LEDランプ搭載用開口部4aの外側に位置し、薄肉部2dよりも厚い厚肉部2bとが形成される。薄肉部2dと厚肉部2bとは、段差部2cを介して隣接している。
【0042】
また、導体層21においては、薄肉部2d上のインナーリード6aが厚肉部2b上の配線部6cよりも放熱板1に近接する。これに伴い、インナーリード6aと配線部6cとの間には、段差部2cに配置され、断面図において湾曲した湾曲部6eが形成される。
【0043】
特に図示しないが、放熱パターン23においても、LEDランプ搭載用開口部4a内の部分は、その外側の部分よりも放熱板1に近接し、LEDランプ搭載用開口部4a内の部分とその外側の部分との間には湾曲部が形成される。
【0044】
インナーリード6aは、配線部6cよりも高い圧力により接着剤2に押し付けられていることから、インナーリード6aと接着剤2との接着性は相対的に高くなる。
【0045】
なお、配線部6cと放熱板1との間隔Xは、概ね、加圧前の接着剤2の厚さと同等であり、例えば、50μmである。インナーリード6aと放熱板1との間隔Yは、例えば、間隔Xの1/10程度であり、5μm程度である。間隔Yは、第1圧力シート8Aの厚さと積層基材27の厚さとの差、加熱温度、加圧圧力などを適宜に調整することにより、調整可能である。更に間隔Yの調整には、プレス用下治具9bとプレス用上治具9aの間にストッパーを設け、そのストッパーを調整する方法を併用しても良い。湾曲部6eの形状(屈曲度等)は、間隔Yの調整により調整可能であるとともに、第1圧力シート8Aの面積を調整することなどによっても調整可能である。
【0046】
その後、プレス用下治具9bとプレス用上治具9aによる圧力を開放し、第1圧力シート8A及び第2圧力シート8Bを取り除いて図4(B)に示すような、配線体10を形成する。
【0047】
次に、図5に示すような、LEDランプ15を用意する。LEDランプ15は、LED搭載基板11と、LED搭載基板11上にスタッドバンプ13を介して実装されたLED素子12と、LED素子12等を封止する封止部14とを有している。
【0048】
LED搭載基板11は、例えば、基材11aと、LED基材11aの表裏に形成された回路パターン11b及び11cと、回路パターン11b及び11cを接続するビアパターン11dとを有している。
【0049】
基材11aは、例えば、セラミック(Al)により形成されている。回路パターン11b及び11c、並びに、ビアパターン11dは、例えば、銅により形成されている。スタッドバンプ13は、例えば、金により形成されている。LED素子12は、例えば、砒化ガリウム(GaAs)を用いて形成されている。封止部14は、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはガラスにより形成されている。
【0050】
そして、図5に示すように、LEDランプ15は、LEDランプ搭載用開口部4a内に配置され、回路パターン11cとインナーリード6aとが半田接合部16により接着されることにより、配線体10に実装される。半田接合部16は、例えば、Sn−Pb半田により形成されている。
【0051】
以下に、各部材の熱伝導率、熱膨張率、弾性率等の一例を示す。
<放熱板1(アルミニウム)>
熱伝導率:240W/mK程度、熱膨張率:23×10−6/℃程度、ヤング率:70GPa程度
<接着剤2(TSAシリーズ)>
絶縁破壊電圧:100kV/mm以上、熱伝導率:3W/m・K程度、熱膨張率:54×10−6/℃程度、貯蔵弾性率:0.08GPa程度
<絶縁基材4(ポリイミド)>
熱伝導率:0.2W/m・K程度、熱膨張率:30×10−6/℃程度、貯蔵弾性率:5GPa程度
<接着剤5(エポキシ系)>
熱伝導率:0.2W/m・K程度、熱膨張率:50×10−6/℃程度、貯蔵弾性率:1GPa以下程度
<導体層21(銅)>
熱伝導率:420W/m・K程度、熱膨張率:16.8×10−6/℃程度、ヤング率:120GPa程度
<基材11a(セラミック)>
熱伝導率:30W/m・K程度、熱膨張率:7×10−6/℃程度、ヤング率:300GPa程度
<回路パターン11bと11c(銅)>
熱伝導率:420W/m・K程度、熱膨張率:16.8×10−6/℃程度、ヤング率:120GPa程度
<スタッドバンプ13(金)>
熱伝導率:317W/m・K程度、熱膨張率:14.3×10−6/℃程度、ヤング率:78GPa程度
<LED素子12(砒化ガリウム)>
熱膨張率:6.9×10−6/℃程度、ヤング率:140GPa程度、
<封止部14(エポキシ樹脂)>
熱伝導率:0.2W/m・K程度、熱膨張率:60×10−6/℃程度、貯蔵弾性率:0.7GPa程度
<半田接合部16(Sn−Pb半田)>
熱伝導率:50W/m・K程度、熱膨張率:24×10−6/℃程度、ヤング率:19GPa程度
【0052】
次に、LED発光装置18の作用を説明する。
【0053】
LED発光装置18は、外部接続端子6bと、他の機器の端子とが半田等を介して接続されることにより、他の機器と接続される。そして、他の機器から2つの配線パターン6に互いに異なる電位が付与されることにより、LED素子12が発光する。この際、LED素子12は熱も発生する。
【0054】
LED素子12から発生した熱は、封止部14に伝わり更にその先の空気中に放熱される。ところが、この伝熱経路にある封止部14には、熱伝導率の低いエポキシ樹脂を用いているので、効率の良い放熱は望めない。
【0055】
また別の熱伝導経路として、LED素子12から発生した熱は、LEDランプ15の構成部材を通ってインナーリード6aに伝達され、配線パターン6を経由してプリント配線板用接着剤5に伝達され、更にその先の絶縁基材4に伝わり空気中に放熱される。この伝熱経路では、LEDランプ15の構成部材の熱伝導率は高く、またその先に接続する半田接合部16およびインナーリード6aと外部接続端子6bを含む配線パターン6も熱伝導率が高いので効率よく伝達される。ところが、その先に接続するプリント配線板用接着剤5と絶縁基材4の熱伝導率が低いので、効率の良い放熱は望めない。
【0056】
次に、更に別の伝熱経路として、LED素子12から発生した熱は、前記と同様に熱伝導率の高いLEDランプ15の構成部材と半田接合部16(Sn−Pb半田)を通り、インナーリード6aに効率良く伝達される。
【0057】
そして、インナーリード6aに伝わった熱は、更にその先の接着剤2を経由して放熱板1に伝達される。ここで、接着剤2の熱伝導率は放熱板1等に比較して低い。しかし、図5に示すように、インナーリード6aと放熱板1との距離Yは、配線部6cと放熱板1との距離Xよりも短いことから、インナーリード6aに伝わった熱は相対的に効率よく放熱板1に伝達される。
【0058】
熱伝導に関しては、θを熱抵抗、Lを経路長、λを熱伝導率、Aを伝熱面積とすると、
θ=L/λ・A
の式が成り立つ。もちろん、熱抵抗θが小さいほど熱が伝わりやすくなり、発熱体の温度を下げることができる。
【0059】
従って、例えば、インナーリード6aにおける経路長L(間隔Y)が配線部6cにおける経路長L(間隔X)の1/10程度になることにより、インナーリード6aの配置位置における接着剤2の熱抵抗θは、配線部6cの配置位置における接着剤2の熱抵抗θの
1/10程度になる。
【0060】
このようにして放熱板1に伝達された熱は、放熱板1の面積が広く空気との接触面積も広いので、効率よく空気中に放散される。そのため、LED素子12の温度を下げることができる。
【0061】
次に、LED発光装置(照明装置)18が消灯状態から点灯状態になった場合の、各構成部材の熱膨張について述べる。このLED発光装置(照明装置)18が点灯すると、LED素子12から発生した熱は、接続されたスタッドバンプ13、回路パターン11b、基材11a、回路パターン11cおよび半田接合部16、インナーリード6a、接着剤2、そして放熱板1の順に伝達される。
【0062】
そして、このように伝達されることで各構成部材の温度は上昇し、各部材毎の熱膨張率に基づき膨張しようとする。各構成部材は熱膨張率に基づき膨張しようとするが、各構成部材の熱膨張率は異なるので、接続する構成部材間では、互いにその動きを抑制しようとする力が発生する。そのため、各構成部材には、圧縮応力、引張応力、ずれ応力などが発生する。これらの応力の元になる力は、接続された各構成部材の大きさや厚さそして、熱膨張率、ヤング率または貯蔵弾性率の相互作用によって生じる。そして、各構成部材から発生する力の大きさには差があるので、その力の差の方向と大きさに基づき圧縮、引張、ずれ、などの応力が生じる。具体的には、以下のとおりである。
【0063】
LEDランプ15は、基材11aおよび封止部14を主にして構成されている。封止部14は、基材11aに比較して、熱膨張率が大きい(例えば8倍以上)ので大きく膨張しようとするが、貯蔵弾性率は低い(軟らかい)ので、基材11aの熱膨張に及ぼす影響は無視できる程度である。
【0064】
次に、回路パターン11cおよび半田接合部16は、基材11aに接続しているので、基材11aの熱膨張率に基づき移動しようとする。基材11aのヤング率は高いので、回路パターン11cおよび半田接合部16は、強い力で移動しようとする。それと同時に、回路パターン11cおよび半田接合部16に接続するインナーリード6aの接続部位も基材11aの熱膨張に基づき移動しようとする。そして、インナーリード6aを含む配線パターン6は、インナーリード6aの接続部位を基点にして、その熱膨張率に基づき膨張しようとする。
【0065】
配線パターン6には接着剤2が接続され、更にその先には放熱板1が接続されている。そして、この放熱板1は、その熱膨張率に基づき膨張しようとする。また、放熱板1は、ヤング率が高く、その厚さも厚いので、強い力で膨張しようとする。
【0066】
このように、各構成部材は膨張しようとするが、放熱板1の熱膨張量とインナーリード6aの移動量(基材11aの熱膨張量)には差がある。また、放熱板1の熱膨張量と配線パターン6の熱膨張量にも差がある。従って、配線パターン6には応力が加えられる。本実施形態では、放熱板1の熱膨張率は、基材11aの熱膨張率及び配線パターン6の熱膨張率よりも高いことから、配線パターン6には、LEDランプ15から離れる方向への引張応力が作用する。
【0067】
しかし、インナーリード6aと配線部6cとの間には湾曲部6eが設けられていることから、湾曲部6eがバネのように作用し、配線パターン6において生じる応力が緩和される。
【0068】
また、配線部6cにおいては、貯蔵弾性率が小さく、軟らかい接着剤2が比較的厚い厚さで、配線部6cと放熱板1との間に介在していることから、放熱板1と配線部6cとの間における応力の伝達が緩和され、ひいては、配線パターン6において生じる応力が緩和される。
【0069】
なお、絶縁基材4もその熱膨張率に基づき膨張し、配線パターン6との間で応力を生じるが、接着剤5によって応力の伝達が緩和される。
【0070】
次に、LED発光装置(照明装置)18が点灯状態から消灯状態に変化した場合について述べる。点灯状態から消灯状態に変化した場合は、各構成部材の温度が下降し、それぞれの熱膨張率に基づき収縮する。しかし、膨張時と同様に、湾曲部6e、接着剤2および接着剤5の作用により、応力の伝達が緩和される。
【0071】
ところで、前記は複数のLEDランプ15を複数のLEDランプ搭載用開口部4aに搭載し、LED発光装置18を形成したが、図6に示すように、搭載されたLEDランプ15の単位毎に切り分けてLED発光装置18(照明装置)を形成してもよい。
【0072】
以上の実施形態において、LED発光装置18は本発明の電子装置の一例であり、放熱板1は本発明の基体の一例であり、接着剤2は本発明の接着層の一例であり、インナーリード6aは本発明の実装部の一例であり、LEDランプ15は本発明の電子部品の一例であり、第1圧力シート8Aは本発明のスペーサの一例であり、第2圧力シート8Bの第1圧力シート8A側の表面は本発明の所定の平面の一例である。
【0073】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態のLED発光装置(照明装置)18の製造方法について述べる。
【0074】
まず、図3(A)に示すような短尺状の放熱板1(アルミ)を用意し、その表面の少なくとも一面には電気的な絶縁特性を持つアルマイト処理膜17を形成する。アルマイト処理膜17の厚さは、例えば、10μmないし50μm程度である。電気的な絶縁特性を良くするために、クラックの発生が少ないアルマイト処理膜17を形成することが好ましい。
【0075】
次に、第1の実施形態(図3(B)及び図3(C))と同様に、放熱板1のアルマイト処理膜17を施した面に、接着剤2を介在させて、プリント配線板3を積層する。
【0076】
次に、図7に示すように、第1の実施形態の図4(A)と同様に、第1圧力シート8A及び第2圧力シート8Bを介して、放熱板1からプリント配線板3までの積層体を加圧、加熱する。これにより、第1の実施形態と同様に、配線パターン6には、インナーリード6aと配線部6cとを接続し、インナーリード6aを配線部6cよりも放熱板1に近接させる湾曲部6eが形成される。
【0077】
この時、インナーリード6aと放熱板1との間にある接着剤2の厚さYは、第1の実施形態と同様に、適宜な大きさ(例えば5μm程度)に設定される。ただし、この形態の場合、放熱板1には電気的な絶縁特性を持つアルマイト処理膜17が施してあるので、接着剤2の厚さYが、第1の実施形態の厚さY以下であっても良く、またインナーリード6aと放熱板1が接触していても良い。
【0078】
次に、第1の実施形態(図4(B))と同様に、プレス用下治具9bとプレス用上治具9aによる圧力を開放した後、第1圧力シート8A及び第2圧力シート8Bを取り除いて配線体10を形成する。
【0079】
そして、図8に示すように、配線体10に形成されたLEDランプ搭載用開口部4aにLEDランプ15を配置した後、回路パターン11cとインナーリード6aを、半田接合部16で接続して、LEDランプ15を導体層21に実装し、LED発光装置18を形成する。
【0080】
アルマイト処理膜17は、比抵抗値が4×1015Ω・cm程度、熱伝導率が30W/m・K程度、熱膨張率が7×10−6/℃程度、ヤング率が300GPa程度で有り、放熱板1(アルミ)より、熱膨張率が低く、ヤング率は高い。しかし、アルマイト処理膜17は、放熱板1の厚さに対して薄いので、放熱板1(アルミ)の熱膨張に与える影響は小さい。また、アルマイト処理膜17の熱伝導率は、接着剤2の熱伝導率3W/m・K程度と比較して10倍程度高いので、放熱板1から効率よく放熱することができる。
【0081】
この形態では、仮にインナーリード6aが放熱板に接触したとしても、絶縁性を確保できるので、より信頼性の高いLED発光装置18を形成することができる。
【0082】
また、図9に示すように、搭載されたLEDランプ15の単位毎に切り分けて、LED発光装置18(照明装置)を形成してもよい。
【0083】
第2の実施形態において、アルマイト処理膜17は、本発明の絶縁膜及び酸化皮膜の一例である。
【0084】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0085】
電子装置は、LED発光装置に限定されない。換言すれば、配線体(10)に実装される電子部品はLEDに限定されない。配線体に実装される電子部品は、例えば、IC、チップ型の抵抗、チップ型のインダクタであってもよい。
【0086】
配線体(10)は、基体(1)に配線板(3)を貼り付けて構成されるものに限定されない。例えば、基体上において、導体層や絶縁層の成膜やパターニングが順次行われることにより、導体層や絶縁層が形成されてもよい。
【0087】
基体(1)に配線板(3)を貼り付けて配線体(10)を構成する場合、配線板は、TABテープに限定されない。配線板は、絶縁基材と導体層とが積層された後に、開口部(4a)等が形成されるフレキシブル基板であってもよい。また、配線板(3)は、導体層の両面が絶縁層により覆われているものであってもよい。さらに、配線板としてTABテープを用いる場合、TABテープは、3層のものに限定されず、2層のものであってもよいし、1層のものであってもよい。
【0088】
ただし、3層又は2層のTABテープを用い、当該TABテープを、導体層(21)を基体(1)側に向けて基体に貼り付けると、導体層が放熱板に近づき(導体層と接着剤(2)との間に絶縁基材が介在せず)、放熱性が向上する。さらに、簡便に、開口部(4a)が形成された絶縁層(4)により導体層を覆うことができ、製造コストが削減される。
【0089】
基体(1)は、導電性を有するものや金属に限定されない。ただし、一般的には、熱伝導率が高い材料は、導電性を有している。導電性の基体と接着剤(2)との間に介在する絶縁膜(17)は、酸化皮膜に限定されない。絶縁膜として、絶縁性があり、熱伝導率の高い樹脂層が形成されてもよい。
【0090】
導体層(21)、接着層(2)及び基体(1)を積層方向において加圧するときに、電子部品(15)が実装される領域を他の領域よりも高い圧力で加圧する方法は、スペーサを用いる方法に限定されない。例えば、ピンなどにより、電子部品が実装される領域のみを加圧したり、電子部品が実装される領域に対向する位置に凸部が形成された金型により電子部品が実装される領域及びその周囲の領域を加圧してもよい。また、スペーサを用いる場合においては、実施形態の第2圧力シート8Bは省略されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 放熱板(基体)
2 接着剤(接着層)
2b 厚肉部
2c 段差部
2d 薄肉部
3 プリント配線板(TABテープ)
4 絶縁基材
4a LEDランプ搭載用開口部
4b 外部接続端子用開口部
5 プリント配線板用接着剤
6A 第1配線パターン
6B 第2配線パターン
6a インナーリード(実装部)
6b 外部接続端子
6c 配線部
6e 湾曲部
7 スプロケットホール
8A 第1圧力シート
8B 第2圧力シート
9a プレス用上治具
9b プレス用下治具
10 放熱板付きプリント配線板(配線体)
11 LED素子搭載基板
11a セラミックス基材
11b 回路パターン
11c 回路パターン
11d ビアパターン
12 LED素子
13 スタッドバンプ
14 封止部
15 LEDランプ
16 半田接合部
17 アルマイト処理膜
18 LED発光装置
21 導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体よりも熱伝導率及び弾性率が低く、前記基体に積層された接着層と、
前記接着層の前記基体とは反対側に積層された導体層と、
前記導体層の前記接着層とは反対側に実装された電子部品と、
を有し、
前記接着層は、
薄肉部と、
前記薄肉部よりも厚い厚肉部と、
を有し、
前記導体層は、
前記薄肉部に配置され、前記電子部品が実装される実装部と、
前記厚肉部に配置される配線部と、
前記薄肉部と前記厚肉部との段差部に配置され、前記実装部と前記配線部とを接続する湾曲部と、
を有する電子装置。
【請求項2】
前記導体層の前記接着層とは反対側に積層されており、前記電子部品が配置される開口部が形成された絶縁基材を更に有し、
前記薄肉部は、平面視において前記開口部内に収まっている
請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記導体層は、前記薄肉部から前記厚肉部に亘って配置され、前記電子部品と非接続の状態で前記電子部品に対向する放熱パターンを有する
請求項1又は2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記基体と前記接着剤との間に介在する絶縁膜を更に有する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記基体は、金属により形成され、
前記絶縁膜は、前記金属の酸化皮膜である
請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
基体と、
前記基体よりも熱伝導率及び弾性率が低く、前記基体に積層された接着層と、
前記接着層の前記基体とは反対側に積層された導体層と、
を有し、
前記接着層は、
薄肉部と、
前記薄肉部よりも厚い厚肉部と、
を有し、
前記導体層は、
前記薄肉部に配置される実装部と、
前記厚肉部に配置される配線部と、
前記薄肉部と前記厚肉部との段差部に配置され、前記実装部と前記配線部とを接続する湾曲部と、
を有する配線体。
【請求項7】
基体と導体層とを前記基体よりも熱伝導率及び弾性率が低い接着剤を間に挟んで積層する工程と、
積層された前記導体層を前記基体側へ加圧する工程と、
加圧後の前記導体層に電子部品を実装する工程と、
を有し、
前記加圧する工程では、前記電子部品が実装される部分が、他の少なくとも一部よりも高い圧力で加圧される
電子装置の製造方法。
【請求項8】
前記加圧する工程より前において、前記導体層の前記接着層とは反対側に積層され、前記電子部品が実装される部分を露出させる開口部が形成された絶縁基材を設ける工程を更に有し、
前記加圧する工程では、前記開口部に前記絶縁基材の厚さよりも厚いスペーサを配置し、前記絶縁基材及び前記スペーサを共に所定の平面により前記基体側へ加圧する
請求項7に記載の電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁基材を設ける工程は、前記積層する工程よりも前において、前記絶縁基材に開口部を形成し、前記開口部が形成された前記絶縁基材と前記導体層とを積層して接着し、配線板を形成する工程であり、
前記積層する工程では、前記導体層を前記基体側に、前記絶縁基材を前記基体とは反対側に向けて、前記配線板を前記基体に積層する
請求項8に記載の電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記積層する工程より前において、前記基体の前記接着剤が設けられる側の面に絶縁膜を形成する工程を更に有する
請求項7〜9のいずれか1項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項11】
絶縁基材に開口部を形成し、前記開口部が形成された前記絶縁基材と導体層とを積層して接着し、配線板を形成する工程と、
前記導体層を基体側に、前記絶縁基材を前記基体とは反対側に向けて、前記配線板と前記基体とを積層して接着する工程と、
前記基体に接着された前記導体層の、前記開口部から露出する部分に電子部品を実装する工程と、
を有する電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−108905(P2011−108905A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263595(P2009−263595)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(391022186)新藤電子工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】