説明

電子部品及びその製造方法

【課題】
耐湿性に優れ、電極間の電気的接続及び振動部を含む封止領域への気密性を確実なものとし、さらに大型化が抑えられた電子部品を提供すること。
【解決手段】
圧電基板の一面に振動部及び第1の電極が設けられた圧電素子と第2の電極を備えた配線基板とを含む電子部品において、第1の電極及び第2の電極の一方側に設けられ、第1の電極及び第2の電極の他方側に接続されたバンプと、振動部を囲う環状の第1の金属層と、前記第1の金属層に沿って設けられ、第1の金属層と配線基板との間を封止して振動部の配置領域を気密空間とするバンプより固相線温度が低いはんだ材料と、を備えた電子部品を構成することで気密空間への透湿及びはんだ材料の外方への広がりが抑えられ、またバンプが溶融して広がるスペースを省くことができる。また電極間の電気的接続と配置領域の封止とを別工程にて行えるので高い気密性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に振動波を発する振動部が設けられた圧電素子を含んだ電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子の一つとして例えば表面弾性波(surface acoustic wave:SAW)素子が挙げられる。このSAW素子は固体の表面に沿って伝搬する表面弾性波を利用した素子であり、例えば圧電基板の一面に複数の対となるIDTと呼ばれる櫛歯電極が設けられた構造となっている。そして一の対となる櫛歯電極に電気信号を印加すると前記櫛歯電極の周囲に電界が発生し、その櫛歯電極の励振により発生したSAWが圧電基板の表面を伝搬して他の対となる櫛歯電極を励振し、その櫛歯電極において前記SAWが電気信号に変換される。例えばSAW素子の一つであるSAWフィルタはこのような変換を利用してフィルタ作用を得ており、例えば携帯型の電子機器などに広く用いられている。
【0003】
SAW素子は櫛歯電極の湿気による腐食及び衝撃による破損を防ぐために櫛歯電極の周囲に当該櫛歯電極が振動し、SAWが伝播するための空間である能動領域を確保することが必要であり、そのため配線基板に実装され、能動領域が気密になるように封止部材が設けられることで一つの電子部品(SAWデバイス)として製造されることがある。そして封止部材として用いる材料やこの封止を行う方法についてはこれまでに様々な検討がなされてきた。
【0004】
例えば特許文献1及び特許文献2にはSAWフィルタの圧電基板の機能面に櫛歯電極を囲むように感光性樹脂材料からなる能動領域への樹脂の流入を防止する堰が設けられ、この堰の外周及び圧電基板の周囲を覆うようにペースト状の樹脂が供給された後にこの樹脂が硬化されて外装樹脂となり、当該外装樹脂と前記堰とに囲まれることで能動領域が封止されているSAWデバイスが示されている。
【0005】
また特許文献3にはSAWフィルタの圧電基板の機能面に入出力電極及び櫛歯電極を囲うように第1の金属層が設けられる一方で、配線基板の実装面の前記第1の金属層に対応する位置に環状の第2の金属層が設けられ、印刷により配線基板側の基板電極上にはんだバンプを、また配線基板側の第2の金属層上にはんだ層を夫々形成することが示されている。これらははんだバンプ及びはんだ層にクリームはんだが用いられている。そして例えば超音波熱圧着により前記はんだバンプを介して基板電極上に入出力電極を仮固定した後に、圧電基板及び配線基板をリフロー炉を通し、前記はんだバンプを溶融してSAWフィルタの入出力電極と配線基板の基板電極との電気的接続を行うと同時に前記はんだ層を溶融して第1の金属層と第2の金属層とを接合し、こうして能動領域が封止されることが示されている。
【0006】
特許文献4にはSAWフィルタの圧電基板の側面全周に亘り第1の金属層を設ける一方、配線基板の実装面に当該実装面への圧電基板の投影領域を囲むように第2の金属層を設け、圧電基板側の入出力電極と配線基板側の基板電極とをはんだ材料を介して接合してSAWフィルタと配線基板とを電気的に接続した後、さらに前記第1の金属層及び第2の金属層にかかるように筒状にはんだ材料を供給することによって能動領域が封止されたSAWデバイスが示されている。
【0007】
特許文献5にはSAWフィルタの圧電基板の機能面に入出力電極及び櫛歯電極を囲うように環状の第1の金属層が設けられる一方で、配線基板の実装面に前記第1の金属層に対応する位置に環状の第2の金属層が設けられ、圧電基板を配線基板に対して加圧し、これにより圧電基板の入出力電極と配線基板の基板電極とを熱圧着して両者の電気的接続を行うと同時に第1の金属層と第2の金属層とを熱圧着して能動領域を封止したSAWデバイスが示されている。
【0008】
しかし特許文献1及び特許文献2に記載のSAWデバイスにおいて能動領域を封止している堰及び外装樹脂はともに有機物により構成されており、有機物は金属などの無機物に比べて一般に透湿性が高いため櫛歯電極の腐食が充分に抑えることができないおそれがある。これらのSAWデバイスにおいて例えば櫛歯電極にSiO2(酸化シリコン)による保護膜を形成するかまたは前記外装樹脂の厚さを大きくすることにより前記腐食を抑えることも考えられるが、前記保護膜を形成した場合はこの保護膜が櫛歯電極の振動に影響を与えることによってSAWフィルタの電気特性が低下するおそれがある。また外装樹脂の厚さを大きくした場合はこれらのSAWデバイスが大型化してしまうおそれがある。
【0009】
また特許文献3に記載のSAWデバイスにおいては入出力電極接続用のバンプ及び封止用はんだ層としてクリームはんだを用いて、クリームはんだの溶融により電極間の接続と封止とを同時に行うようにしているため、はんだバンプの溶融時に各電極にぬれてこのはんだバンプの占有面積が大きくなる。その結果としてSAWデバイスの小型化が妨げられるおそれがある。
また例えばこの特許文献3でははんだ材料としてSn(すず)−Sb(アンチモン)系及びSn−Ag(銀)系のはんだを用いることが示唆されているが、これらのはんだ材料は一般に固相線温度が低く例えば218〜245℃程度であるため、SAWデバイスをリフローにより他の電子機器に実装する場合にリフロー炉の熱によりはんだバンプ及びはんだ層が再度溶融し、SAWフィルタと配線基板との電気的接続が損なわれ、またリフロー後はんだ層が固化した際に各部に均一に固着されず、能動領域の気密性が低下するおそれがある。
【0010】
また特許文献4に記載のSAWデバイスにおいてはSAWフィルタの圧電基板の側面全周に亘り第1の金属層が設けられているが、一般にSAWフィルタは圧電基板に櫛歯電極が形成された後に所定の大きさに切断されることにより製造されること及び圧電基板1枚の厚さが例えば0.3〜0.5mm程度であることを考慮すると、既述のように圧電基板の側面全周に亘り金属層を設けるのは技術的に困難であり、実現できたとしても高コストになるおそれがある。
さらに前記SAWデバイスにおいて封止を行うためにSAWフィルタの圧電基板の側周面から配線基板上を外方側に広がるように筒状にはんだが供給されることになるため、例えば既述の特許文献3に記載のSAWデバイスのようにSAWフィルタの機能面に金属層を設けその金属層にはんだを供給して封止を行う場合に比べて実装基板上においてはんだが供給される領域が大きくなる。その結果としてSAWデバイスの大型化を招くおそれがある
【0011】
さらに特許文献5に記載のSAWデバイスは入出力電極と基板電極とを熱圧着すると同時に第1の金属層と第2の金属層とを熱圧着しているが、配線基板は通常セラミックスなどから構成されているため反りを有していることがあり、そのため電極間及び金属層間を均一に熱圧着することが難しく、接続不良や気密性が確保されないといった不具合の懸念が大きい。
【0012】
以上のような事情から耐湿性及び生産性に優れ、また他の電子機器に実装するために加熱された際における電極間の電気的接続及び封止領域への気密性に与える影響が抑えられ、さらに大型化が抑えられたSAWデバイスが求められていた。
【0013】
【特許文献1】特開平8−316778(段落0009、0010及び図2)
【特許文献2】特開2004−64732(段落0024及び図1)
【特許文献3】特開2004−153579(段落0045〜0047、0061、0062及び図2)
【特許文献4】特開平9−289429(段落0010及び図1)
【特許文献5】特開2004−214469(段落0040及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、圧電素子を配線基板に実装し、振動部が気密空間とされる電子部品において、耐湿性に優れ、また電極間の電気的接続及び封止領域への気密性を確実なものとし、さらに大型化が抑えられる電子部品及び電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の電子部品は圧電基板の一面側に振動部及び第1の電極が設けられた圧電素子と、前記圧電素子が実装され、前記第1の電極に電気的に接続される第2の電極を備えた配線基板と、を含む電子部品において、前記第1の電極及び第2の電極の一方側に予め設けられ、圧電基板を配線基板に実装するときに第1の電極及び第2の電極の他方側に接続されたバンプと、前記基板の一面側に少なくとも振動部を囲うように設けられた環状の第1の金属層と、前記第1の金属層に沿って設けられ、当該第1の金属層と配線基板との間を封止して振動部の配置領域を気密空間とする、前記バンプよりも固相線温度が低いはんだ材料からなる封止部材と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
例えば前記圧電素子は弾性表面波素子であり、前記封止部材は例えば金、銀、アンチモン及び銅から選択される金属とすずとを主成分とするはんだ材料である。また前記配線基板における前記封止部材と接触する領域には、第2の金属層が設けられていてもよく、バンプとこのバンプに接続される第1の電極及び第2の電極の他方側とは少なくとも表面が金からなっていてもよい。
【0017】
本発明の電子部品の製造方法はその一面側に振動部及び第1の電極が設けられると共に少なくとも前記振動部を囲むように環状に第1の金属層が設けられた圧電素子を用い、前記第1の電極に対応する位置に第2の電極が設けられた配線基板上に前記圧電素子の一面側を対向させて、第1の電極及び第2の電極の一方側に固定されているバンプを第1の電極及び第2の電極の他方側に当接させる工程と、次いで、予め前記第1の金属層に対応するように配線基板上に設けられるかまたは第1の金属層に設けられた封止部材をなすはんだ材料の固相線温度よりも低い温度で、前記バンプを第1の電極及び第2の電極の他方側に少なくとも加圧により接続する工程と、その後、前記はんだ材料を前記バンプの固相線温度よりも低い温度で加熱し溶融させて当該はんだ材料により配線基板と第1の金属層との間の封止を行う工程と、を含むことを特徴とする。
なお「少なくとも加圧により」、とは加圧処理のみを行う場合及び加圧、加熱の両方の処理を行う場合を含む。
【0018】
また本発明の他の電子部品の製造方法は、その一面側に振動部及び第1の電極が設けられると共に少なくとも前記振動部を囲むように環状に第1の金属層が設けられた圧電素子を用い、前記第1の電極に対応する位置に第2の電極が設けられた配線基板上に前記圧電素子の一面側を対向させて、第1の電極及び第2の電極の一方側に固定されているバンプを第1の電極及び第2の電極の他方側に当接させる工程と、次いで、前記バンプを第1の電極及び第2の電極の他方側に少なくとも加圧により接続する工程と、その後、溶融した封止部材をなすはんだ材料を前記第1の金属層に沿って配線基板上に供給し配線基板と第1の金属層との間の封止を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
既述の電子部品の製造方法において前記配線基板における前記封止部材と接触する領域には、第2の金属層が設けられていてもよく、またバンプを少なくとも加圧により第1の電極または第2の電極に接続するための手法は、例えば超音波の振動による接続である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧電素子側の振動部をはんだ材料により囲うことで気密空間を形成しており、はんだ材料は透湿、吸湿がほとんど無く機密性に優れた材料であることから、気密空間への透湿が抑えられ、空間内の振動部の腐食を抑えられる結果として電子部品の高い耐候性が得られる。また圧電素子側の基板の側周面を囲うようにはんだ材料を設ける場合に比べてはんだ材料の外方への広がりを抑えることができるので電子部品の大型化を抑えることができる。
また圧電素子側の電極及び配線基板側の電極を互いに接続するためのバンプに対して固相線温度の低いはんだ材料を封止用のはんだ材料(封止部材)として用い、バンプと電極との電気的接続は例えば熱圧着(加熱した状態で圧着する工程)のように少なくとも加圧により行い、また圧電素子の振動部の配置領域の気密のための封止についてははんだ材料の溶融により行うようにしている。このため従来のようにバンプとしてはんだを用いその溶融により電極間の電気的接続を行う場合に比べ、はんだが広がるスペースを省くことができ、その結果として当該電子部品の小型化を図ることができると共に配線基板や圧電基板が反りを有していた場合でもバンプと電極との電気的接続を行う工程と振動部の配置領域(能動領域)の封止を行う工程とを夫々別工程にて行うことができるため、バンプと基板電極との電気的接続を確実なものとし、またはんだ材料を各部に高い均一性を持って固着させることができるので前記空間の充分な気密性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る電子部品を圧電素子としてSAW素子の一つであるSAWフィルタを備えたSAWデバイス10に適用した実施の形態について、図面を参照しながら説明する。このSAWデバイス10は図1に示すようにSAW素子であるSAWフィルタ1、配線基板2、封止部材であるはんだ材料3及び外装樹脂層4により構成されている。なお本明細書ではSAW素子が含まれた電子部品をSAWデバイスと呼ぶ。
【0022】
図2は前記SAWフィルタ1を機能面(表面)側から見た斜視図であり、11は圧電基板、12A、12Bは振動部をなす夫々一対の櫛歯電極(IDT)である。13は櫛歯電極12A、12Bの外方側の端部に夫々設けられた例えばAu(金)からなる第1の電極である入出力電極であり、14は入出力電極13上に夫々設けられた例えばAuからなるバンプである。前記櫛歯電極12A(12B)とバンプ14とは入出力電極13を介して電気的に接続されている。またこの機能面には例えば当該圧電基板11の周縁に沿って櫛歯電極12A、12B及び入出力電極13を囲むように環状に形成された第1の金属層15が設けられており、この例において前記第1の金属層15の表面はAuにより構成されている。なお前記櫛歯電極の形状及びレイアウトはこの例に限られない。
【0023】
次に図1及び図3を用いて配線基板2について説明する。図3は配線基板2の前記SAWフィルタ1が実装される実装面を示している。この配線基板2として用いられる基板としては特に制約はなく例えばプリント基板、セラミック基板、シリコン基板などが用いられ、またこの配線基板2はフレキシブル構造であってもよい。この例では配線基板2は前記圧電基板11よりも大きく形成されており、前記実装面には前記圧電基板11の入出力電極13に対応する位置に例えば表面がAuにより覆われた第2の電極である4つの基板電極21が夫々設けられている。各基板電極21は配線基板2の内部に設けられた配線パターン22を介して配線基板2の裏面に設けられた例えば4つの裏面電極23に夫々電気的に接続されており、また前記実装面において第1の金属層15に対応する位置に4つの基板電極21を囲むように第2の金属層24が設けられている。この例において第2の金属層24は前記第1の金属層15に重なり合う形状を有しており、その表面は例えばAuにより構成されている。なお図1では配線基板2及び配線パターン22は略解的に記載してあるが配線基板2は2層構造とされていて、両層は夫々基板電極21、裏面電極23に連続する導電路が形成されており、これら導電路間を配線パターンで接続して、配線パターン22が構成されている。
【0024】
封止部材であるはんだ材料3はこの例ではAu-Snからなる合金により構成されており、Auのはんだ全体に対する割合は例えば80%、Snのはんだ全体に対する割合は例えば20%であり、またその固相線温度は例えば280〜310℃である。このはんだ材料3は配線基板2の第2の金属層24上に環状に供給されており、第1の金属層15及び第2の金属層24に夫々密着するように固着されている。なお圧電基板11、第1の金属層15、第2の金属層24及びはんだ材料3により囲まれる領域は能動領域31であり、既述の各部材により封止されることで気密空間となっており、後述するようにこの能動領域31において櫛歯電極12A,12Bが振動し、櫛歯電極12A,12Bにより発せられたSAWが伝播するようになっている。またこの能動領域31においては基板電極21上に前記SAWフィルタ1のバンプ14が加熱された状態で例えば超音波を接合すべき部位に印加しながら圧着されており、例えばこのバンプ14を介して裏面電極23と櫛歯電極12A(12B)が電気的に接続されている。
【0025】
外装樹脂層4は例えばエポキシ樹脂を主成分とした熱硬化性材料からなり、はんだ材料3、圧電基板11、第1の金属層15及び第2の金属層24が覆われるように配線基板2上に設けられている。なおこのSAWデバイス10の全体の高さは例えば1mmであり、能動領域31の高さ(圧電基板11と配線基板2との間の長さ)は例えば20μmである。
【0026】
ところでこのSAWデバイス10において封止部材として既述のはんだ材料3に代えて他の金属により構成されるはんだ材料を用いてもよく、またバンプ14もAuにより構成されることに限られず、例えばそのバンプ14の表面のみがAuにより構成され、表面以外の部分がAu以外の金属で構成されていてもよいが、例えば後述するように当該SAWデバイス10の製造工程においてはんだ材料3を溶融させ能動領域31の封止を行う際にバンプ14が溶融することを防ぐために、はんだ材料3はバンプ14を構成する材質の固相線温度よりも低い固相線温度を有するものとする。
【0027】
また第1の金属層15の表面もAuにより構成することに限られないがこの第1の金属層15の表面を構成する材質としては前記能動領域31を気密にするためにはんだ材料3を構成する材質に対して親和性が高いものが用いられる。ここで親和性が高いとははんだ材料3が加熱されることにより溶融した際に第1の金属層15にぬれ、当該第1の金属層15に密着することをいう。
【0028】
なお当該SAWデバイス10において能動領域31が気密になっていればよいため第2の金属層24の表面としてははんだ材料3がなじむ材質により構成されていればよく、Auにより構成されることに限られない。またはんだ材料3が配線基板2になじむ場合はこの第2の金属層24を設けなくてもよい。ここではんだ材料がなじむとは溶融したはんだ材料がぬれ、この溶融したはんだ材料が冷却され固化した際に固着されることをいう。
【0029】
ところで既述の実施形態においてはSAWデバイス10の耐衝撃性を高めるとともにまた能動領域31の気密性を高めるため外装樹脂層4が設けられているが図4で示すようにこの外装樹脂層4を設けないデバイス構成としてもよい。この図4で示すSAWデバイスは外装樹脂層4が設けられていないこと及び配線基板2が圧電基板11と同じ大きさに形成されていることを除き図1で示したSAWデバイス10と同様に構成されている。
また外装樹脂層4を設ける代わりに例えば金属、ガラスあるいはセラミックスなどの無機材料からなる層をはんだ材料3、圧電基板11、第1の金属層15及び第2の金属層24が覆われるように設けてもよく、前記金属からなる層を設ける場合は例えばニッケルなどをはんだ材料3、圧電基板11、第1の金属層15及び第2の金属層24が覆われるようにメッキしてもよい。
【0030】
以上のように構成されたSAWデバイス10においては、例えば裏面電極23を介して櫛歯電極12Aに電気信号が印加されるとこの櫛歯電極12Aが励振されSAWが発生し、前記SAWが能動領域31を伝播する。このSAWにより櫛歯電極12Bが励振されると当該櫛場電極12Bにおいて所定の周波数帯域を有する電気信号が発生し、この電気信号は櫛歯電極12Bに電気的に接続された裏面電極23に出力されるようになっている。
【0031】
この実施形態に係るSAWデバイス10によれば、SAWフィルタ1側の櫛歯電極12A,12Bをはんだ材料3により囲うことで気密空間である能動領域31を形成しており、はんだ材料3は透湿、吸湿がほとんど無く機密性に優れた材料であることから、能動領域31への透湿が抑えられ、能動領域31内の櫛歯電極12A,12Bの腐食を抑えられる結果としてSAWデバイス10の高い耐候性が得られる。またSAWフィルタ1の圧電基板11の側周面を囲うようにはんだ材料3を設ける場合に比べてはんだ材料3の外方への広がりを抑えることができるので当該SAWデバイス10の大型化を抑えることができる。
またこの例ではSAWフィルタ1の入出力電極13に固定されたバンプ14と配線基板側の基板電極21とを超音波のエネルギーにより加熱してAu−Auの熱圧着を達成していることから機械的にも電気的にもこれらの間で確実な接合が図られている。そしてバンプ14に対して固相線温度の低いはんだ材料3を封止用のはんだ材料(封止部材)として用い、バンプ14と基板電極21との電気的接続は熱圧着により行い、またSAWフィルタ1の櫛歯電極12A,12Bを囲う能動領域31の気密のための封止についてははんだ材料3の溶融により行うようにしている。このため従来のようにバンプ14としてはんだを用いその溶融により電極間の電気的接続を行う場合に比べ、前記はんだが広がるスペースを省くことができ、その結果として当該SAWフィルタ1の小型化を図ることができる。そして配線基板2や圧電基板11が反りを有していた場合でもバンプ14と基板電極21との電気的接続を行う工程と能動領域31の封止を行う工程とを夫々別工程にて行うことができるため、バンプ14と基板電極21との間を確実に電気的接続することができ、また圧電基板11の周縁部においてもはんだ材料3の溶融により封止が行われることから、はんだ材料3が各部に均一に固着し、そのため前記能動領域31に対する確実な気密性が得られ、その結果信頼性の高いSAWデバイス10が得られる。
【0032】
なお既述のSAWデバイス10において例えばバンプ14が入出力電極13上に設けられる代わりに基板電極21上に設けられ、このバンプ14と入出力電極13とが加熱されることにより圧着されていてもよい。また入出力電極13及びバンプ14が第1の金属層15の外方に夫々設けられるとともに基板電極21が第2の金属層24の外に設けられ、既述のSAWデバイス10と同様にバンプ14と入出力電極13とが加熱された状態で圧着されていてもよい。即ちバンプ14による入出力電極13、基板電極21の接続部位は、はんだ材料3により囲まれる気密空間の外に位置してもよい。さらにまた入出力電極13は、Auに限られずAl(アルミニウム)などにより構成されていてもよいし、バンプ14及び基板電極21は、熱圧着されるものであれば上記の材質に限られない。
【0033】
次にこの図1で示したSAWデバイスの製造工程の一例について図5〜図7を用いて説明するが先にこの製造工程で用いる大型配線基板20について説明すると、この大型基板20においてSAWフィルタ1が実装される各実装領域には既述の配線基板2と同様のレイアウトで基板電極21、第2の金属層24が夫々設けられており、また大型基板20の裏面には各基板電極21と電気的に接続された裏面電極23が設けられ、いわば大型配線基板20は前記配線基板2が多数水平方向に連なった構造となっている。この例では各工程に要する時間の短縮を図るためにこの大型配線基板20の各実装領域に多数のSAWフィルタ1を実装し、後述する各工程における処理を一括で行うようにしている。
【0034】
先ず例えば印刷法により大型配線基板20の第2の金属層24上にペースト状のはんだ材料3を当該はんだ材料3が略均一な高さを持つように環状に成膜し、この大型基板20を例えばヒータブロック上に載置する。続けて大型配線基板20の各実装領域において基板電極21上にSAWフィルタ1のバンプ14が位置し、第1の金属層15と第2の金属層24とが対向するようにSAWフィルタ1の位置合わせを行う(図5(a))。なおはんだ材料3の成膜方法としてはこのような印刷法に限らず例えばメッキ法を用いて行ってもよく、またペースト状のはんだをディスペンスすることで行ってもよい。
【0035】
既述のように位置合わせを行った後にバンプ14を基板電極21に当接させ、前記ヒータブロックを介して大型配線基板20及びSAWフィルタ1を加熱し、さらに例えば超音波フリップチップボンダなどを用いて圧電基板11を予め設定された圧力にて大型配線基板2に対し加圧しつつ予め設定された周波数を有する超音波振動をバンプ14に与えることにより当該バンプ14を振動させ、バンプ14と基板電極21とを超音波熱圧着する(図5(b))。このようにバンプ14と基板電極21とを超音波熱圧着すればバンプ14と基板電極21との接続に要する時間を例えば1秒以内に抑えることができるため、例えばバンプ14を超音波により振動させずに当該バンプ14と基板電極21とを加熱した状態で圧着させる場合に比べてSAWデバイス10の製造時間を短縮でき、その結果SAWデバイス10の生産性を高くすることができる。なおこの超音波熱圧着工程における加熱は、圧電基板11または配線基板2の反りによって溶融したはんだ材料3の一部のみが第1の金属層15に付着し、能動領域31の充分な気密性が得られなくなることを防ぐために、はんだ材料3の固相線温度よりも低い温度で行うようにする。
【0036】
続いて前記超音波熱圧着により接合された大型配線基板20とSAWフィルタ1とを例えばリフロー炉内に搬入し、窒素雰囲気にて予め設定された温度で加熱することによりはんだ材料3を溶融させる。この溶融したはんだ材料3が熱により膨張して圧電基板11の第1の金属層15にぬれ、密着することにより能動領域31が気密封止される(図5(c))。ただしバンプ14が溶融されることを防ぐために、このリフロー炉における加熱はバンプ14の固相線温度よりも低い温度で行うものとする。
【0037】
前記リフロー炉において加熱が行われる際にはんだ材料3の形状が変化し、前記封止が行われる様子を図7に示した。図7(a)は前記リフロー炉による加熱が行われる前のはんだ材料3を示しており、この例においては第1の金属層15とはんだ材料3との間には例えば5〜15μm程度の隙間Lが設けられている。リフロー炉によりはんだ材料3が加熱されるとはんだ材料3の体積は膨張し、またはんだ材料3が溶融すると当該はんだ材料3は第2の金属層24にぬれるとともに図7(b)に示すように環状に供給されたはんだ材料3の全周に亘り外周側と内周側との間が表面張力により盛り上がる。さらにはんだ材料3が加熱されることにより膨張して第1の金属層15に接触すると図7(c)で示すようにはんだ材料3が第1の金属層15にぬれ、密着することによって能動領域31が封止される。
ところで前記隙間は5μm以下でもよく、またはんだ材料3が溶融した際に当該はんだ材料3が第1の金属層15に密着し能動領域31が封止され、製造されるSAWデバイス10の機能が損なわなければこの隙間Lが設けられず、はんだ材料3が第1の金属層15に当接していてもよい。なおこの隙間Lを所望の大きさにするためには例えば第1の金属層15及び第2の金属層24の厚さをこの隙間Lの大きさに対応した厚さになるように予め形成しておくことになる。
【0038】
既述のように封止が行われた後、リフロー炉からSAWフィルタ1及び大型配線基板20を搬出して、はんだ材料3が冷却されて固化した後に図6(a)に示すように例えばエポキシ樹脂を主成分としたペースト状の熱硬化性樹脂を圧電基板11及びはんだ材料3の表面が覆われるように大型配線基板20上に供給する。その後当該樹脂を加熱して硬化させることにより外装樹脂層4を形成し、必要なSAWデバイス10が含まれる単位ごとに、大型配線基板20と外装樹脂層4とを共に鉛直軸に沿って切断することで、SAWデバイス10が製造される(図6(b))。
【0039】
ところで既述のSAWデバイス10の製造方法において前記超音波熱圧着を行う前に第2の金属層24上にはんだ材料3を成膜し、そのはんだ材料3を加熱により溶融させる代わりに、既述のようにバンプ14と基板電極21との超音波熱圧着を行った後に例えば噴流式はんだ槽や溶融式はんだ供給装置などにより溶融されたはんだ材料3を図8(a)に示すようにディスペンサ5を介して第2の金属層24上に、当該第2の金属層24と第1の金属層15との間に設けられている隙間を塞ぐように供給することで能動領域31の封止を行い、その後既述の製造方法と同様に外装樹脂層4を形成し、SAWデバイスが含まれる単位ごとに外装樹脂層4及び大型配線基板20を切断してSAWデバイス10を製造してもよい(図8(b))。なおこのような製造方法によりSAWデバイス10を製造する場合、第2の金属層24上に供給されたはんだ材料3が大型配線基板20上に流れ落ちることを防ぐために例えば図8に示すように第2の金属層24の周縁部が圧電基板11の側周面よりも外方に広がるように設けられていてもよい。
【0040】
なお既述のSAWデバイス10の製造方法においてはバンプ14と基板電極21とを超音波熱圧着により接続しているが、この超音波熱圧着に代えて例えばバンプ14と基板電極21とを加圧しながらこれらのバンプ14及び基板電極21にはんだ材料3の固相線温度よりも低い熱を加え、固層拡散によって両者を圧着して接続してもよい。
またバンプ14及び基板電極21の夫々の表面が例えば金または銅により構成される場合はバンプ14における基板電極21への接触面と基板電極21におけるバンプ14への接触面とを夫々平坦化し、またそれらの接触面上のパーティクルを取り除いて清浄化した後、例えば熱を加えずにバンプ14と電極21とを加圧することで両者を圧着して接続してもよい。
【0041】
既述の実施形態はSAW素子としてSAWフィルタ1を含んだSAWデバイスについて説明してきたがSAWフィルタ1の代わりに例えば圧電基板11に振動部として櫛歯電極や反射器などが設けられたSAW素子であるSAW共振子を含んだSAWデバイスなどであってもよいし、圧電素子としてSAW素子以外のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る電子部品であるSAWデバイスの一例を示した縦断側面図である。
【図2】前記SAWデバイスを構成するSAWフィルタの一例を示した斜視図である。
【図3】前記SAWデバイスを構成する配線基板の実装面の一例を示した平面図である。
【図4】本発明に係る電子部品であるSAWデバイスの他の一例を示した縦断側面図である。
【図5】先に説明したSAWデバイスの製造方法の一例を示した工程図である。
【図6】先に説明したSAWデバイスの製造方法の一例を示した工程図である。
【図7】SAWデバイスの製造工程においてSAWデバイスを構成するはんだの変化を示した説明図である。
【図8】本発明に係る電子部品であるSAWデバイスの製造方法の他の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 SAWフィルタ
14 バンプ
15 第1の金属層
2 配線基板
21 基板電極
24 第2の金属層
3 はんだ材料
31 能動領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の一面側に振動部及び第1の電極が設けられた圧電素子と、
前記圧電素子が実装され、前記第1の電極に電気的に接続される第2の電極を備えた配線基板と、を含む電子部品において、
前記第1の電極及び第2の電極の一方側に予め設けられ、圧電基板を配線基板に実装するときに第1の電極及び第2の電極の他方側に接続されたバンプと、
前記圧電基板の一面側に少なくとも振動部を囲うように設けられた環状の第1の金属層と、
前記第1の金属層に沿って設けられ、当該第1の金属層と配線基板との間を封止して振動部の配置領域を気密空間とする、前記バンプよりも固相線温度が低いはんだ材料からなる封止部材と、を備えたことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記配線基板における前記封止部材と接触する領域には、第2の金属層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
バンプとこのバンプに接続される第1の電極及び第2の電極の他方側とは少なくとも表面が金からなることを特徴とする請求項1記載の電子部品。
【請求項4】
前記圧電素子が弾性表面波素子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の電子部品。
【請求項5】
前記封止部材が金、銀、アンチモン及び銅から選択される金属とすずとを主成分とするはんだ材料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の電子部品。
【請求項6】
その一面側に振動部及び第1の電極が設けられると共に少なくとも前記振動部を囲むように環状に第1の金属層が設けられた圧電素子を用い、前記第1の電極に対応する位置に第2の電極が設けられた配線基板上に前記圧電素子の一面側を対向させて、第1の電極及び第2の電極の一方側に固定されているバンプを第1の電極及び第2の電極の他方側に当接させる工程と、
次いで、予め前記第1の金属層に対応するように配線基板上に設けられるかまたは第1の金属層に設けられた封止部材をなすはんだ材料の固相線温度よりも低い温度で、前記バンプを第1の電極及び第2の電極の他方側に少なくとも加圧により接続する工程と、
その後、前記はんだ材料を前記バンプの固相線温度よりも低い温度で加熱し溶融させて当該はんだ材料により配線基板と第1の金属層との間の封止を行う工程と、を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項7】
その一面側に振動部及び第1の電極が設けられると共に少なくとも前記振動部を囲むように環状に第1の金属層が設けられた圧電素子を用い、前記第1の電極に対応する位置に第2の電極が設けられた配線基板上に前記圧電素子の一面側を対向させて、第1の電極及び第2の電極の一方側に固定されているバンプを第1の電極及び第2の電極の他方側に当接させる工程と、
次いで、前記バンプを第1の電極及び第2の電極の他方側に少なくとも加圧により接続する工程と、
その後、溶融した封止部材をなすはんだ材料を前記第1の金属層に沿って配線基板上に供給し配線基板と第1の金属層との間の封止を行う工程と、を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記配線基板における前記封止部材と接触する領域には、第2の金属層が設けられていることを特徴とする請求項6乃至7のいずれか一つに記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
バンプを少なくとも加圧により第1の電極または第2の電極に接続する手法は、超音波の振動による接続であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一つ記載の電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−20073(P2007−20073A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201697(P2005−201697)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】