説明

電子部品及び電子部品を製造する方法

本発明は、電子部品(15)であって、導電性のコンタクト(2)とプリント基板(7)とが設けられていて、該プリント基板(7)が、第1のプラスチックから成る周壁(16)によって被覆されている形式のもの、並びに、電子部品を製造する方法に関する。このような電子部品は、伝動装置のオイルパン内において使用される。本発明によれば、導電性のコンタクト(2)が、第2のプラスチックから成るフレーム(4)によって被覆されている。第1のプラスチックは熱硬化性樹脂であり、第2のプラスチックは熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、伝動装置オイルに対するバリアではなく、熱硬化性樹脂の形状付与のため、導電性のコンタクトの予備位置決めのため、及び熱硬化性樹脂の機械的な後加工を回避するために働く。このようにして舌片又はフラッシュスキンのような突出部は発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品であって、導電性のコンタクトとプリント基板とが設けられていて、該プリント基板が、第1のプラスチックから成る周壁によって被覆されている形式のもの関する。本発明はまた、このような電子部品を製造する方法に関する。
【0002】
このような電子部品は、伝動装置のオイルパン内において使用される。プラスチック被覆は、熱硬化性樹脂を用いて行われる。熱硬化性樹脂は、その硬化後にはもはや変形不能であり、かつ極めて抵抗性能に優れた材料である。プリント基板上には、抵抗、集積回路、導電性の給電路が配置されている。プラスチック被覆体は、抵抗、集積回路及び導電性の給電路がオイルと直に接触することを阻止し、これにより、プリント基板に配置された抵抗と集積回路とが電気的な短絡することを防止する。導電性のコンタクトは、プラスチック被覆体から突出していて、プリント基板に配置された抵抗及び集積回路と、オイルパンの内部又は外部に配置された電子装置とを導電接続している。オイルパンの内部において、導電性のコンタクトはカプセル化されているので、その結果電気的な短絡が阻止されている。
【0003】
コンタクトレールとして形成されている導電性のコンタクトは、打抜きグリッドから製造される最終製品である。打抜きグリッドは金属薄板から打ち抜かれている。打抜きグリッドは導電性のコンタクトレールと、これらのコンタクト部材をそのポジションにおいて保持する結合部材とを有している。プラスチックによる被覆成形の後で、金属製の結合部材は除去される。この際に金属製の切り屑もしくはチップが発生する。このようなチップがコンタクトレールに付着したままになると、伝動装置パンの内部においてオイルが汚れてしまう。
【0004】
熱硬化性樹脂は、低い粘性を有していて、圧力下で、2つの型半部によって形成された内室内に押し込まれる。この内室内にはプリント基板と打抜きグリッドとが固定されている。プリント基板及び打抜きグリッドの周囲に熱硬化性樹脂を射出することは、従って、型半部の当接箇所における型半部の面倒なシール作業を必要とする。打抜きグリッドが熱硬化性樹脂から進出する領域が、特に問題である。打抜きグリッドのこれらの進出箇所は、型半部の当接箇所を規定しており、逆に型半部の当接箇所が打抜きグリッドの進出箇所を規定している。そして手間のかかるシール作業を行うにもかかわらず、プラスチックによる被覆成形中に、型半部の当接箇所において、特に打抜きグリッドの進出箇所において、フラッシュスキン(Flashhaut)と呼ばれる突出した薄いプラスチックフラップつまりプラスチックの薄いばりが発生してしまう。このようなプラスチックフラップは、不都合な廃棄物であり、電子部品の完成後に除去されねばならない。しかしながらこのようなプラスチックフラップの残りがプラスチック被覆に残っている場合、又は除去されたプラスチックフラップが電子部品のコンタクトレールに付着しままになっている場合には、伝動装置パンの内部におけるオイルが汚されてしまう。
【0005】
両方の型半部はその当接箇所において分割平面を規定している。この分割平面は電子部品のほぼ真ん中を延びている。この真ん中の分割平面に基づいて、空気抜きには問題がある。プラスチックによる被覆中に、型とプラスチックとの間に空気もしくは気泡が侵入してしまい、このような侵入した気泡は、プラスチック被覆体の外面における切欠きとして見ることができる。これらの切欠きはプラスチック被覆体を損傷し、その結果、これらの切欠きに基づいて、抵抗と集積された半導体との間における持続的な電気絶縁が損なわれてしまう。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、伝動装置のオイルパン内において使用される単純な電子部品を提供すること及びこのような電子部品を製造する簡単な方法を提供することである。そしてこの場合、プリント基板に配置された抵抗及び回路の電気絶縁を保証することが望まれている。さらに伝動装置パンの内部におけるオイルは、電子部品のプラスチック余剰部及び金属製のチップによって汚されないことが望まれている。そしてまた、空気もしくは気泡の侵入は阻止されることが望まれている。
【0007】
これらの課題を解決するために本発明の構成では、冒頭に述べた形式の電子部品において請求項1の特徴部記載のように、すなわち、導電性のコンタクトが、第2のプラスチックから成るフレームによって取り囲まれている、もしくは被覆されている。第2のプラスチックから成るフレームは、補助手段として働き、これによって電子部品を簡単に製造することができる。第1のプラスチックによる被覆成形中に、両型半部は少なくとも部分的に、第2のプラスチックから成るフレームに接触もしくは載置している。これにより型半部と打抜きグリッドとの間における直接的な接触は回避されている。プラスチックフレームは、型半部のための極めて優れた適宜なシール手段である。プラスチックによる被覆中に打抜きグリッドの進出箇所において発生するフラッシュスキンつまり薄いばりは、回避される。さらにプラスチックフレームは加工が容易である。スプル(Anguss)のため及び空気抜きのための通路は、第2のプラスチックから成るフレームに成形される。工具半部を充填するために働く、フレーム内における通路がスプルと呼ばれている。空気抜きは、フレームの全周にわたって、フレームの互いに反対側を向いた2つの表面において実施することができる。
【0008】
電子部品を簡単に製造するために、本発明による方法では、以下に記載の方法ステップ、すなわち、導電性のコンタクトと結合部材とを備えたグリッドを製造し、該グリッドを、第2のプラスチックから成るフレーム内において固定し、グリッドの結合部材を除去し、プリント基板を、フレーム内に挿入し、グリッドの導電性のコンタクトに載置し、プリント基板を第1のプラスチックによって被覆するもしくは取り囲む、という方法ステップを用いて、電子部品を製造するようにした。
【0009】
本発明による電子部品の有利な構成では、第2のプラスチックから成るフレームが、プリント基板を取り囲んでいる。プリント基板全体が取り囲まれると、両型半部の当接面をその全周囲にわたって、フレームを用いて互いに切り離し、かつフレームを用いてシールすることができる。
【0010】
本発明の別の有利な構成では、フレーム部分のフレーム面が、プリント基板の周面に向けられている。プリント基板はその装着表面に抵抗及び集積回路を取り付けられている。装着表面に対して垂直な方向における長さは、プリント基板、抵抗及び集積回路から成る全体に関して、プリント基板の周面に対して平行な長さよりも短い。これによって、前記垂直な方向においては、フレームの容量を最少にすることができ、ひいては材料を節減することができる。
【0011】
本発明の別の有利な構成では、フレームがプリント基板に対して間隔をおいて位置している。このように構成されていると、プリント基板を第1のプラスチックによって完全に取り囲むもしくは被覆することができる。
【0012】
本発明の別の有利な構成では、フレームとプリント基板との間の間隔が、導電性のコンタクトを用いて規定可能である。これらの導電性のコンタクトは、フレーム内において固定されている。導電性のコンタクトの端部材は、プリント基板における開口を貫いて案内され、その結果プリント基板はフレームに対して位置決めされている。本発明の別の有利な構成では、第2のプラスチックが熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、所定の温度範囲にわたって変形可能なプラスチックである。この工程は逆にすることができ、つまりこの工程は、冷却と、溶融流動状態になるまでの再加熱とによって、任意の回数繰り返すことができる。この場合に注意すべきことは、過熱によって材料の熱分解が生じないようにすることである。この点において、熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂及びエラストマと異なっている。熱可塑性樹脂は簡単に加工することができ、通路は簡単に形成可能である。
【0013】
熱可塑性樹脂は、伝動装置オイルに対するバリアもしくは障壁ではなく、熱硬化性樹脂を形状付与するため、打抜きグリッドを予備位置決めするため及び熱硬化性樹脂の機械的な後加工を回避するために働く。そして、舌片又はフラッシュスキンのような突出部は発生しない。電子部品は荒っぽい環境において使用可能である。
【0014】
本発明の別の有利な構成では、第1のプラスチックから成る周壁と、第2のプラスチックから成るフレームとが同一平面を成している。このようになっていると、簡単かつ確実な空気抜きを達成することができる。
【0015】
本発明のさらに別の有利な構成では、導電性のコンタクトの間における結合部材が、フレームの内側及び外側に配置されている。このようになっていると、コンタクトレールの確実な位置決めを達成することができる。
【0016】
本発明のさらに別の有利な構成では、フレームが突出部を有している。ノーズ及び突起として形成されたこれらの突出部は、受容装置、例えば別の被覆用プラスチック、又はオイル伝動装置パンの金属製の受容装置内に、電子部品をセンタリング及び位置決めするために働く。
【0017】
次に図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】導電性のコンタクトと結合部材とを備えた打抜きグリッドを示す平面図である。
【図2】導電性のコンタクトと結合部材とを備えた打抜きグリッドを示す側面図である。
【図3】プラスチックフレームに固定された打抜きグリッドを、結合部材が除去された状態で示す平面図である。
【図4】プラスチックフレームに固定された打抜きグリッドを、結合部材が除去された状態で示す側面図である。
【図5】フレーム内に挿入されかつ打抜きグリッドに装着されたプリント基板を示す平面図である。
【図6】フレーム内に挿入されかつ打抜きグリッドに装着されたプリント基板を、一部を断面して示す側面図である。
【図7】プリント基板を被覆するプラスチックを備えた電子部品を示す平面図である。
【図8】プリント基板を被覆するプラスチックを備えた電子部品を示す側面図である。
【0019】
以下において、異なった図面においても、類似又は同じエレメントは同一符号で示されている。
【0020】
図1及び図2には、金属薄板から打ち抜かれて予備変形された部材1が示されており、この部材は以下においては、打抜きグリッド(Stanzgitter)と呼ぶ。この打抜きグリッド1は、導電材料から製造されていて、コンタクトレールとして形成された導電性のコンタクト2を有している。これらの導電性のコンタクトレール2は、結合部材3を用いて互いに結合され、かつそのポジションを保持されている。
【0021】
図3及び図4には、第1のプラスチックから成るフレーム4に固定された導電性のコンタクトレール2が示されている。フレーム4は導電性のコンタクトレール2を部分的に包埋もしくは被覆している。打抜きグリッド1の結合部材3は除去されているので、コンタクトレール2は互いに電気的に絶縁されていて、フレーム4によって固定されてそのポジションを保持されている。ノーズ5及び突起6として形成された突出部は、フレーム4をセンタリング及び固定するために働く。
【0022】
図5及び図6には、導電性のコンタクトレール2に装着されたプリント基板7が示されている。導電性のコンタクトレール2の端部材8は、プリント基板7に設けられた開口を貫通していて、プリント基板7における導体路と導電接続されている。プリント基板7は抵抗9と集積回路10とを有している。集積回路10はホール素子である。これらのホール素子10は、セレクトレバーのポジションを確認するために働く。プリント基板7はプラスチックフレーム4に対して間隔をおいて位置している。フレーム4は4つの縦長のフレーム部分11を有しており、これらのフレーム部分11のうち、それぞれ2つのフレーム部分11は互いに平行に配置されている。そして各1つのフレーム部分11が、内側に向けられた表面12を有している。プリント基板7は、抵抗9及びホール素子10が配置される装着表面13と、この装着表面13に対して垂直に配置された周面14とを有している。内側に向けられたフレーム表面12はそれぞれ、プリント基板7の各1つの周面と向かい合っている。
【0023】
図7及び図8には、第2のプラスチックから成るフレーム4を備えた電子部品15と、第1のプラスチックから成っていてプリント基板7を取り囲んでいる周壁16とが示されている。第1のプラスチックは熱硬化性樹脂であり、第2のプラスチックは熱可塑性樹脂である。周壁16を製造する材料は、第1のプラスチック、つまり熱硬化性樹脂である。そしてフレーム4を製造する材料は、第2のプラスチック、つまり熱可塑性樹脂である。プリント基板7とコンタクトレール2とを被覆するもしくは取り囲むために働く型の型半部17,18は、フレーム4に、周壁16とフレーム4とが継ぎ目箇所19において互いに同一平面を成すように、接触もしくは載置されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(15)であって、導電性のコンタクト(2)とプリント基板(7)とが設けられていて、該プリント基板(7)が、第1のプラスチックから成る周壁(16)によって被覆されている形式のものにおいて、導電性のコンタクト(2)が、第2のプラスチックから成るフレーム(4)によって取り囲まれていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
第2のプラスチックから成るフレーム(4)が、プリント基板(7)を取り囲んでいる、請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
フレーム部分(11)のフレーム面(12)が、プリント基板(7)の周面(14)に向けられている、請求項2記載の電子部品。
【請求項4】
フレーム(4)がプリント基板(7)に対して間隔をおいて位置している、請求項2記載の電子部品。
【請求項5】
フレーム(4)とプリント基板(7)との間の間隔が、導電性のコンタクト(2)を用いて規定可能である、請求項4記載の電子部品。
【請求項6】
第2のプラスチックが熱可塑性樹脂である、請求項1記載の電子部品。
【請求項7】
第1のプラスチックから成る周壁(16)と、第2のプラスチックから成るフレーム(4)とが同一平面を成している、請求項1記載の電子部品。
【請求項8】
導電性のコンタクトの間における結合部材(3)が、フレーム(4)の内側及び外側に配置されている、請求項1記載の電子部品。
【請求項9】
フレーム(4)が突出部(5,6)を有している、請求項1記載の電子部品。
【請求項10】
導電性のコンタクト(2)とプリント基板(7)とを備えていて、該プリント基板(7)が、第1のプラスチックから成る周壁(16)によって被覆されている形式の電子部品(15)を製造する方法であって、以下に記載の方法ステップ、すなわち、
導電性のコンタクト(2)と結合部材(3)とを備えたグリッド(1)を製造し、
該グリッド(1)を、第2のプラスチックから成るフレーム(4)内において固定し、
グリッド(1)の結合部材(3)を除去し、
プリント基板(7)を、フレーム(4)内に挿入し、グリッド(1)の導電性のコンタクト(2)に載置し、
プリント基板(7)を第1のプラスチックによって被覆する
という方法ステップを特徴とする、電子部品を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−509525(P2011−509525A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541736(P2010−541736)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067820
【国際公開番号】WO2009/087035
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】